主要成果
Googleの研究チームは、量子プロセッサ「Willow」において、量子計算の重要なリソースとなる「マジック状態」の生成エラーを約40倍削減する手法を実証しました。具体的には、T状態と呼ばれる量子状態において99.99%という高い論理フィデリティ(意図した形式と保護された量子状態がどれだけ一致しているかの指標)を報告しています。この成果は、将来的な誤り訂正量子コンピュータにおいて、計算リソースの消費を抑え、ハードウェア要求量を低減させる可能性を示しています。
技術・詳細
今回の成果は、「マジック状態の栽培(magic-state cultivation)」と呼ばれる手法によるものです。このプロセスは、少数の量子ビットでエンコードされた不完全な状態から開始し、一連のチェックを通じて不適切な準備試行を検出し、合格したものだけを保持する「ポストセレクション(事後選択)」というフィルタリング処理を行います。いわば工場の品質管理のように、不合格品を排除し、高品質な状態のみを計算に利用する仕組みです。
実験には、正方形格子状に配置された105個の超伝導量子ビットを備えたWillowプロセッサが使用されました。また、プロセッサのキャリブレーションを最適化するためにAIの一種である「強化学習」を導入しています。データ収集直前の約4時間、フィードバックに基づいて制御を調整するトレーニングを行った結果、回路が検出するエラー率が低下し、論理エラー確率と保持される試行の割合がともに約1桁改善されました。
背景・業界の文脈
量子コンピュータは熱や電磁干渉などの外乱に弱く、計算結果が損なわれやすい性質があります。これを防ぐため、複数の物理量子ビットに情報を分散させて保護する「論理量子ビット」による誤り訂正が行われます。しかし、誤り訂正コード内では直接実行することが困難な操作があり、それを実現するために「マジック状態」という外部リソースが必要になります。一部の推定では、マジック状態の生成に量子コンピュータの容量の最大95%が消費される可能性が指摘されており、これが実用的なマシン構築における大きな障壁となっていました。
今後の展望
研究チームは、準備した状態を2つの異なる量子誤り訂正形式間で転送することにも成功しており、より大規模な計算アーキテクチャへの接続に向けた初期テストを完了しています。一方で、実用的なスケールで問題が完全に解決したわけではありません。特にストレージテストでは、シミュレーションの予測よりも約7倍高いエラーが発生しており、今後は準備した状態を保存・利用するためのより優れた手法の開発や、より大規模な実証実験が必要であるとしています。
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