TECHNOLOGY EXPLAINER
二酸化チタンと光触媒
― 光で表面を「掃除する」白い粉
二酸化チタン(TiO2)は、塗料や紙の白色顔料として古くから使われてきた材料です。ナノサイズの粒子にして紫外光を当てると、表面で有機物を分解し、水になじむ表面に変わることから、防汚・抗菌・空気や水の浄化に使われます。 素材の側から見ると、性能を決めるのは結晶形と粒子の大きさ、そして「光がどれだけ届くか」で、屋内の弱い紫外光では光の量そのものが律速になりえます。 この記事では、アナターゼとルチルの違い、バンドギャップと紫外光応答、可視光応答化(ドーピングなど)の考え方とその代償、用途、評価規格(JISとISOの番号は光触媒工業会の一覧で確認)、そしてナノ二酸化チタンの安全性評価(IARC、NIOSH、EFSA、EU)を、論文と公的文書にもとづいて整理します。

- 二酸化チタンと光触媒とは何か(3行でつかむ)
- アナターゼとルチル ― バンドギャップと紫外光
- 光触媒で何が起きるか ― 二つの反応
- 素材技術者の視点①:活性は「結晶形」だけでなく「電荷が表面に届くか」で決まる
- 可視光応答化 ― ドーピングなどの考え方
- 素材技術者の視点②:可視光で動くかわりに、紫外の活性が落ちる
- 用途 ― 防汚・抗菌・水処理
- 光の量の計算 ― 屋内の紫外光は何個の光子か
- 評価・標準の読み方
- 素材技術者の視点③:試験法の数字は「光の条件」とセットで読む
- ナノ二酸化チタンの安全性評価(公的評価)
- 確認できなかったことと、まとめ
- 用語集
- 参考資料(一次情報)
- 主張と出典の対応表(監査)
事実=公表資料・論文・法令に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・見通しなど、現時点で確定していない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
本記事は材料・原理・評価・規制の解説であり、特定の製品や企業の優劣を示すものでも、健康・安全に関する個別の助言でもありません。
「ナノだから危険/安全」とは言えず、形状・サイズ・表面・暴露の経路で結果が違います。光触媒工業会の記述は業界団体の記述であり、公的機関の評価ではありません。
ナノ材料の定義は本シリーズ「ナノ材料の定義と規制」編で扱います。
1. 二酸化チタンと光触媒とは何か(3行でつかむ)
- 何か:橋本・入江・藤嶋の総説は、光触媒の候補材料のなかで、TiO2は最も効率のよい光活性、最も高い安定性、最も低いコストをもち、白色顔料として古くから使われてきたため安全性は歴史によって保証されている、と述べています(著者らの見解)事実。紫外光を当てたときに、吸着物の酸化還元反応と、TiO2自身が水になじむ表面に変わる現象の二つの反応が表面で進みます
- 何でできるか:結晶形はおもにアナターゼとルチルで、バンドギャップはおよそ3.2 eVと3.0 eVです。そのため紫外光が必要です(Luttrellらの記述)事実(第2章)
- どこが難しいか:可視光への拡張(ドーピングなど)は、紫外の活性を落とす代償を伴いえます。屋内では光の量が足りないこと、評価の光の条件、そしてナノTiO2の安全性評価を、経路別に分けて理解する必要があります事実(第6・8・11章)
光触媒の性能は、「材料の性能」と「光の量」の積で決まります。 アナターゼやドーピングで材料を磨いても、表面に届く光の子(光子)の数が桁で足りなければ、反応は進みません。 屋内の紫外光は小さく、本記事の計算では、1時間に表面に降る紫外の光子は、表面の原子の数の数十倍にとどまります(第8章)。 数字を読むときは、どの光を、どれだけ当てて測った値かを必ず確かめます(本記事による解説)。
2. アナターゼとルチル ― バンドギャップと紫外光
TiO2には複数の結晶形があり、最も一般的なのはアナターゼとルチルです。Luttrell らは、TiO2のバンドギャップは3 eVより大きく(ルチルが約3.0、アナターゼが約3.2)、そのため純粋なTiO2はおもに紫外光で働くと述べています事実。 また、最も一般的な市販の光触媒粉末は、ルチルとアナターゼの両方の結晶子からなるDegussa P25(現Evonik)で、異なる結晶形の混合に相乗効果があることが知られている、と述べています事実。 「P25とは何か」を、結晶組成の分析、単離した純粋な粒子からの再構成、光触媒活性の試験で調べた論文もあります(Ohtani ら。題名による)事実。
波長λ[nm]とエネルギーE[eV]の関係 E ≒ 1239.84 ÷ λ から、吸収が始まる波長(吸収端)を見積もります本稿の計算。
- アナターゼ(約3.2 eV):約387 nm / ルチル(約3.0 eV):約413 nm
- 参考:窒素ドープの報告(Asahi ら)で「可視光」とされた波長は500 nm未満で、500 nmは約2.48 eV
前提と限界:吸収端は、バンドギャップが直接か間接か、粒径、欠陥によってずれます。上の値はバンドギャップから換算した目安です。 光触媒工業会は、TiO2は可視光を吸収せず、400 nm以下の紫外線が必要と説明しています(業界団体の記述)事実。
3. 光触媒で何が起きるか ― 二つの反応
光触媒の歴史は、藤嶋と本多が1972年に、半導体の電極(TiO2)で水が光によって分解されることを報告した論文(題名「Electrochemical Photolysis of Water at a Semiconductor Electrode」)に始まります事実。 橋本らの総説は、紫外光を当てたTiO2の表面で進む光化学反応を、次の二つに整理します事実。
- 光で誘起される、吸着物の酸化還元反応。20世紀の初めから知られていた反応で、有機物の分解や、悪臭・有害ガスの除去、抗菌につながる
- 光で誘起される親水化。20世紀の終わりに見つかった現象で、TiO2の表面そのものが水になじむ状態に変わる
酸化還元反応の仕組みを、光触媒工業会は次のように説明しています(業界団体の記述)。光があたると電子(e−)と正孔(h+)ができ、空気中のO2とe−、H2Oとh+がそれぞれ反応して、表面にスーパーオキサイドイオン(O2−)と水酸ラジカル(•OH)という二種類の活性酸素ができ、有機物を分解する事実。

形状・色・寸法は説明用です。数値・原文の対応は下の元図で確認できます。
元のSVG模式図と正確な説明を見る
図の読み方・元図の説明:TiO₂光触媒で起きること(概念図) / バンド図と光励起 / 伝導帯 / 価電子帯 / 紫外光 / e⁻ / h⁺ / Eg / アナターゼ:約3.2 eV → 約387 nm / ルチル:約3.0 eV → 約413 nm / (バンドギャップはLuttrellら、波長は本稿の換算) / 表面で進む二つの反応 / ① 吸着物の酸化還元 / e⁻ + O₂ → O₂⁻(スーパーオキサイド) / h⁺ + H₂O → •OH(水酸ラジカル) / → 有機物の分解、悪臭の除去、抗菌 / (光触媒工業会の説明にもとづく) / ② 光誘起の親水化 / TiO₂の表面が水になじむ状態に変わる / → 水をかけると汚れが浮いて流れる / → 曇り止め / (橋本らの総説、光触媒工業会の説明) / ※ 概念図です。エネルギーの数値、反応の詳細な経路、速度は示していません。参考資料2・3・19の記述にもとづく説明用です。
4. 素材技術者の視点①:活性は「結晶形」だけでなく「電荷が表面に届くか」で決まる
- 一般則とその理由の未解決:Luttrell らは、一般にアナターゼはルチルより活性が高いが、その理由には合意がないと述べています事実。考えられる説明として、バンドギャップや価電子帯の位置、間接遷移による電荷の寿命の長さ、電荷の輸送の違いを挙げています。
- 膜厚を変えた実験:同じ論文は、高品質なエピタキシャル膜で膜厚を変えて光触媒活性を調べ、アナターゼでは約5 nmの膜厚まで活性が上がり、ルチルでは約2.5 nmで最大になったと報告しました。深いところで励起された電荷が表面反応に寄与するのはアナターゼのほうだということです事実。
- 粒子設計への含意:粒子が小さすぎると光を吸収する量が減り、大きすぎると深部の電荷は表面に届かず再結合する、という釣り合いがあります。「表面に届く電荷」の観点では、粒径と結晶性(欠陥)が結晶形と同じくらい効くと読めます(本記事による解説。具体的な最適粒径は本稿では確認していません)。
- 混合相:P25のようにアナターゼとルチルを混ぜた粉末の活性が高い例は広く知られています(Luttrell らの記述)。一方、市販の「酸化チタン」の結晶組成・粒径・表面積は製品ごとに違うので、論文や試験の結果を比べるときは、どの試料で測ったかを確かめます(本記事による解説)。
5. 可視光応答化 ― ドーピングなどの考え方
TiO2が紫外光しか使えないことは、屋内や太陽光の大部分を使えないことを意味します。そこで、可視光でも働くようにする試みが続けられてきました。代表例は次のとおりです。
- 窒素ドープ:Asahi らは2001年、TiO2−xNxの膜と粉末が、500 nm未満の可視光で、メチレンブルーとアセトアルデヒドの分解、膜表面の親水性の点で、TiO2より向上したと報告しました。置換位置に入った窒素が、バンドギャップの狭窄と光触媒活性に不可欠であることを、第一原理計算とX線光電子分光で確かめた、と述べています事実。
- 炭素ドープ:Irie らは、TiCの酸化アニールでつくった黄色の炭素ドープのアナターゼ粉末で、炭素が酸素の位置に入り、吸収端が長波長側へずれ、400〜530 nmの可視光で2-プロパノールがアセトンを経てCO2に分解されたと報告しました事実。
- 表面の修飾(グラフト):Irie らは、TiO2とWO3の光触媒にCu(II)イオンを担持して、可視光に感度をもつ効率のよい光触媒をつくる論文を発表しています(題名による。内容は本稿では確認していません)事実。
- 水素化による表面の乱れ(「黒いTiO2」):Chen らは2011年、ナノ結晶のTiO2の表面層に水素化で乱れを入れて、太陽光の吸収を増やす、バンドギャップを狭める従来のドーピングとは異なる方法を示しました。水中の有機分子の光酸化と、犠牲試薬を使った水素の生成で、太陽光による光触媒活性を示した、と述べています事実。
6. 素材技術者の視点②:可視光で動くかわりに、紫外の活性が落ちる
- 可視光の量子収率は紫外より低い:Irie らは、窒素濃度の低いTiO2−xNx粉末(x が0.02未満)を、吸収した光子数をそろえて2-プロパノールの気相分解で比較しました。xの値によらず、可視光の量子収率は紫外光より低く、可視光応答は価電子帯の上にできた孤立した狭いバンドによる、と解釈しています事実。
- ドーピングが紫外の活性を下げる:同じ論文は、窒素濃度を上げると、紫外光での量子収率が下がることも示し、ドーピングの場所が再結合の場所にもなりうると述べています事実。
- 読み方:可視光応答化は、「光を吸う」ことと「電荷を使う」ことのトレードオフです。吸収スペクトルが長波長に伸びたことと、反応が速くなったことは別で、比較は同じ吸収光子数あたりの収率で行う必要があります(本記事による解説)。
- 安定性と再現性:ドーピング量・位置、焼成条件、表面の状態で結果が変わります。本稿では、可視光応答型の光触媒の長期の耐久性を示す一次資料は確認していません。
7. 用途 ― 防汚・抗菌・水処理
(1) 防汚(セルフクリーニング)
防汚の仕組みは、二つの反応に対応します(第3章)。表面の有機物の汚れが酸化分解されること、そして親水化によって、雨水などが汚れの下に入り込み、汚れを浮かせて流すことです(光触媒工業会の説明)事実。 光で表面が水と親和する現象は、1997年に「Light-induced amphiphilic surfaces」の題名でWangらがNatureに報告しています(題名による)事実。 光触媒工業会は、効果は表面にあるものだけに作用し、離れたものは分解できないこと、光の量と光が当たる面積におおむね比例すること、効果が出ない場合の多くは光(紫外線)不足であること、表面に分解できない物質(無機物や多量の汚れ)が付いて効果がなくなることがあり、その場合は水洗して光に当てると回復できること、固定している樹脂の劣化や剥がれで寿命になることがある、と説明しています(業界団体の記述)事実。
(2) 抗菌
光触媒による殺菌の最初期の報告として、Matsunaga らは1985年、白金を担持したTiO2(TiO2/Pt)の粉末を金属ハライドランプの下で培養液に入れると、細胞内の補酵素A(CoA)が光電気化学的に酸化されて呼吸が阻害され、103個/mLの乳酸菌・酵母・大腸菌が60〜120分で完全に殺菌されたと報告しました事実。 Maness らは1999年、近紫外光を当てたTiO2の存在下で、大腸菌K-12の細胞が死ぬ機構の中心が脂質の過酸化であることを、細胞膜の損傷の指標(マロンジアルデヒドの生成)で示しました。生成は30分の照射で指数関数的に増え、細胞の呼吸活性の77〜93%が同時に失われ、細胞の死と時間経過が並行した、と述べています事実。 どちらも実験室の細菌・条件での報告で、実際の製品の表面で同じ効果が出ることを示すものではありません(本記事による解説)。 光触媒工業会は、抗菌を目的とした製品の多くは、光が少ない場所でも効果が得られるように銀などの抗菌剤を加えている、と説明しています(業界団体の記述)事実。
(3) 水処理
Ibhadon と Fitzpatrick の総説は、光触媒を、水と空気中の低濃度の汚染物質(生物、有機物、無機物)を処理する多用途で低コスト、環境に優しい技術とし、除去の難しい有機汚染物質や微生物を水から除く先進酸化技術として、世界の多くの地域で商業化が進んでいる、と述べています事実。 一方、具体的なデータとして、Mehling らは下水処理場の二次処理水で、浮かせた固定化球状TiO2触媒を太陽光で試験しました。微量汚染物質は9時間の照射後に平均55%まで分解されましたが、物質ごとの分解のしやすさに最大3.5倍の差があり、物質ごとの吸着の挙動が反応の性能を決める主な制限でした。吸着の制限が強いほど、分解の速度は擬一次から擬ゼロ次に変わりました。ジクロフェナクは約190 mWh/m²の放射量で95%の分解率に達した、と報告しています事実。 つまり、水処理では、光の量、触媒の固定のしかた、物質ごとの吸着が結果を決め、一つの数字で「分解できる」とは言えません(本記事による解説)。 なお、光触媒工業会は、水を光で酸素と水素に分解する技術は、効率が不足していて実用化にはもう少し時間がかかりそうと述べています(業界団体の記述。本シリーズ「水素エネルギー」編の光電気化学セルも参照)事実。

8. 光の量の計算 ― 屋内の紫外光は何個の光子か
光触媒工業会は、屋内の紫外線量の目安として、1,000ルクスの明るさでの紫外線量を次のように示しています(µW/cm²):白熱電球60W 5、普通形蛍光ランプW色 7・N色 13・D色 14、三波長蛍光ランプW色 8・N色 9・D色 10、窓ガラス越しの太陽光 15。 紫外線量は照度に比例するので、例えば蛍光ランプ(三波長形N色)で500ルクスなら4.5 µW/cm²、カバー付きの照明器具では表の値より大幅に少なくなる、と説明しています(業界団体の記述)事実。
上の4.5 µW/cm²を、仮に波長365 nmの光(光子エネルギー 1239.84 ÷ 365 ≒ 3.40 eV ≒ 5.44×10-19 J)として光子の数に直します本稿の計算。
- 光子の数 = 4.5×10-6 W/cm² ÷ 5.44×10-19 J ≒ 8.3×1012 個/cm²/秒
- 1時間では 8.3×1012 × 3,600 ≒ 3.0×1016 個/cm²
- 表面の吸着サイトの密度を仮に1015 個/cm²とすると、サイト1個あたり、1時間に約30個の光子(毎秒では約0.008個)
前提と限界:波長365 nm、サイト密度1015/cm²は仮定です。上はすべての光子が吸収され、量子収率が100%の場合の上限で、実際は、薄い膜での吸収の割合、再結合、散乱で、反応に使われる光子はこれより少なくなります。照明の種類によって紫外線量は数倍違います。 それでも、サイト1個に毎秒0.01個にも届かない光子の流れは、屋内の光触媒の反応が「光の量」に強く制約される理由を示しています(本記事による解説)。
9. 評価・標準の読み方
光触媒の性能評価には、機能ごとにJISとISOの試験法があります。下の表は、光触媒工業会の一覧「光触媒性能評価試験法のJIS/ISO制定状況(制定年度あるいは最新改訂年度、2025年4月現在)」に載る規格の番号と年を整理したものです。右端は、光触媒工業会がPIAJ製品認証で使っている性能判定基準(業界団体の自主基準)で、JISやISOの規定そのものではありません事実。
| 試験項目 | JIS(年) | ISO(年) | 光触媒工業会の判定基準(製品認証) |
|---|---|---|---|
| セルフクリーニング:水接触角(紫外光) | R 1703-1(2020) | ISO 27448(2009) | 限界接触角が30°以下 |
| セルフクリーニング:メチレンブルー分解(紫外光) | R 1703-2(2014) | ISO 10678(2010) | 分解活性指数が5 nmol/L/min以上 |
| 空気浄化:窒素酸化物(紫外光) | R 1701-1(2016) | ISO 22197-1(2016) | 窒素酸化物除去性能が0.50 µmol以上 |
| 空気浄化:アセトアルデヒド/トルエン/ホルムアルデヒド(紫外光) | R 1701-2・-3・-4(2016) | ISO 22197-2(2019)・-3(2019)・-4(2021) | 各0.17 µmol/h以上 |
| 空気浄化:窒素酸化物(可視光応答型) | R 1751-1(2013) | ISO 17168-1(2018) | (本稿では確認していない) |
| 抗菌(紫外光) | R 1702(2020) | ISO 27447(2019) | 抗菌活性値 RL≧2.0(UV照度は訴求値)、光照射の効果ΔR≧0.3 |
| 抗菌(可視光応答型) | R 1752(2020) | ISO 17094(2014) | RF-I≧2.0(照度500 lux)、ΔR≧0.3 |
| 抗ウイルス(紫外光/可視光) | R 1706(2020)/R 1756(2020) | ISO 18061(2014)/ISO 18071(2016) | VL≧2.0(UV:訴求値)/VF-I≧2.0(500 lux)、ΔV≧0.3 |
| 水質:ジメチルスルホキシド分解 | R 1704(2007) | ISO 10676(2010) | (本稿では確認していない) |
| 光源(紫外光/可視光) | R 1709(2014)/R 1750(2012) | ISO 10677(2011)/ISO 14605(2013) | — |
※ 規格の番号と制定・改訂年は光触媒工業会の一覧(2025年4月現在)による。規格の正式な題名と本文は、規格団体(JISC・ISO)のサイトでは確認できなかった。判定基準は同会のPIAJ製品認証のもの。
光触媒工業会の用語解説は、抗菌活性値を「光触媒抗菌加工をした製品と無加工の製品に細菌を接種し、光照射後の生菌数を測定し、無加工製品に対する生菌数の対数値の差」と説明しています事実。これを数に直します本稿の計算。
- RL = 2.0 は、生菌数が無加工製品の 10-2 = 1/100(99%の減少)
- 光照射の効果 ΔR = 0.3 は、100.3 ≒ 約2倍の生菌数の差(暗所に置いた場合と比べて)
前提と限界:上は定義から換算した数で、試験の細菌の種類や条件は規格で決められています。特定の製品の効果を示すものではありません。
10. 素材技術者の視点③:試験法の数字は「光の条件」とセットで読む
- 暗所の効果が混ざる:光触媒工業会の用語解説は、抗菌活性値に光を照射しない条件で得られる生菌数の減少分も含まれると述べています事実。そのため、光があって初めて効くことを示すには、暗所と比べた光照射の効果ΔRを見る必要があります。判定基準が RL≧2.0 と ΔR≧0.3 の二つを求めているのは、この区別のためと読めます(本記事による解説)。
- 光の条件が基準に入っている:紫外光の抗菌・抗ウイルスの基準は「UV照度:訴求値」、つまり商品が想定している使用場所の紫外線の強さで測ることになっています。可視光応答型は500 luxで、これは光触媒工業会が「簡単な作業ができる程度の明るさ」(居間、台所、教室など)に当たる段階として設定したものです事実。異なる光の強さの値は比べられないので、数字には必ず照度が付きます(本記事による解説)。
- 試験の光源も規格がある:紫外光源(JIS R 1709)と可視光源(JIS R 1750)の規格があり、光源の分光分布が違えば、同じ「照度」でも、触媒の吸収する光子数が違うことになります(本記事による解説。第8章の計算の考え方)。
- 寿命・耐久の評価:光触媒工業会は、認証の条件として効果の持続性と安全性に関するデータを取得し、開示できる状況を維持することを求めています事実。耐候・摩耗後の評価をどう行うかの具体的な規格は、本稿では確認していません。
11. ナノ二酸化チタンの安全性評価(公的評価)
ここで扱うのは、公的機関による、TiO2粒子の評価です。評価の対象(職場での吸入、食品添加物としての経口)と結論が違うため、経路ごとに分けて読みます。「ナノだから危険」「ナノだから安全」と一般化することも、特定の製品の使用の可否を判断することもできません。 光触媒工業会の「現時点では無害と考えられる」という記述は業界団体の見解で、公的機関の評価ではありません。本記事は健康・安全に関する個別の助言ではありません。
(1) 吸入(職場での暴露)
- IARC(国際がん研究機関):2006年2月のIARCモノグラフ作業部会は、カーボンブラック、二酸化チタン、タルクを再評価しました(結論はモノグラフ93巻に掲載。Baanらが結論を要約)。二酸化チタンについて、製造業の疫学研究ではがん原性の証拠は不十分、げっ歯類の発がん試験の結果は十分な証拠とし、総合評価は「ヒトに対して発がん性があるかもしれない(グループ2B)」としました。作業部会は、吸入した粒子が高濃度で長期にわたると、肺の肺胞での排出機構が損なわれ、肺の負荷が過剰になり、慢性の炎症から発がんに至りうること、また超微粒子では、微粒子より低い質量濃度で排出が損なわれることを記しています事実。
- NIOSH(米国労働安全衛生研究所):2011年のCurrent Intelligence Bulletin 63は、職場での吸入暴露だけを扱い、非職業の暴露に当てはめてはならないとしたうえで、時間加重平均(1日10時間まで、週40時間)の勧告暴露限度として微粒子TiO2で2.4 mg/m³、超微粒子(人工のナノスケールを含む)で0.3 mg/m³を示しました。超微粒子TiO2は職業上の発がん性の可能性があると判断し、微粒子については分類するにはデータが不十分、としています事実。
- EUのCLP(分類・表示):RAC(欧州化学機関のリスク評価委員会)は2017年9月14日の意見で、TiO2を吸入による発がん性区分2とすることを提案し、欧州委員会の委任規則(EU)2020/217(2019年10月4日付、2020年2月18日官報)が、「空気力学径10 µm以下の粒子を1%以上含む粉末」のTiO2に「Carc. 2、H351(吸入)」を定めました。適用開始は2021年9月9日でした事実。
- その後の裁判:一般裁判所は2022年11月23日の判決(T-279/20ほか)で、この委任規則2020/217を取り消しました。EU司法裁判所は2025年8月1日の判決(C-71/23 P、C-82/23 P)で、上訴を棄却しました事実。取消し後のEUでの分類の扱いや、新たな提案の有無は、本稿では確認できていません 未確定/将来
(2) 経口(食品添加物)
- EFSA(欧州食品安全機関):2021年の意見は、食品添加物のTiO2(E 171)を、ナノ粒子の試験データなど新しい証拠にもとづいて再評価しました。E 171の構成粒子で、最小の外径が100 nm未満のものは個数で50%未満と評価し、一般毒性・臓器毒性ではE 171(1日1,000 mg/kg体重まで)にも、ナノ粒子(30 nm超)の最高用量(1日100 mg/kg体重)にも有害な影響は見られなかったとしました。一方で、TiO2粒子がDNAの鎖切断と染色体損傷を起こしうること、物理化学的性質と遺伝毒性の結果の明確な相関がなく、粒径のカットオフ値も特定できなかったことなどから、遺伝毒性の懸念を排除できず、多くの不確実性があるとして、E 171は食品添加物として使用する場合に安全とはもはや考えられないと結論しました事実。
- EUの規則:委員会規則(EU)2022/63(2022年1月14日付)は、食品添加物の規則を改め、E 171を食品の分類(附属書IIのD部・E部)では許可しないものとしました。2022年2月7日より前の規則で製造された食品は、2022年8月7日まで市場に出せ、その後も賞味期限・消費期限まで残れます。医薬品の着色料としてのE 171は、規則の施行から3年以内に委員会が維持の必要性を見直すとされています事実。
(3) 光触媒の製品では何が違うか
上の評価は、TiO2の粒子そのもの(粉末の吸入、食品添加物として摂取)についてのものです。光触媒の製品では、TiO2はバインダー(結合材)で固定された被膜や成形品に含まれていて、使用や加工の場面で粒子として飛散する量は、製品や工程によって違います(本記事による解説)。 光触媒工業会は、認証製品については、急性経口毒性、皮膚一次刺激性、変異原性、皮膚感作性などを同会のルールにしたがって製品ごとに確認していると説明しています(業界団体の記述)事実。 どの暴露がどの程度あるかは、製品・工程ごとの評価が必要で、本記事はその判断をしません。粉体を扱う工程(調合、スプレー、研磨)に関しては、第(1)の職場の勧告限度と、各国の法令・事業者の安全データシートを確認してください。
- 粒径の扱いの違い:NIOSHは微粒子と超微粒子(ナノスケールを含む)で勧告限度を分けています(2.4と0.3 mg/m³)。IARCは、超微粒子で肺の排出が損なわれるのがより低い質量濃度であることを記しています。一方、EFSAは、遺伝毒性の結果と物理化学的性質に明確な相関はなく、粒径のカットオフ値も特定できなかったとしています事実。粒径が効くかどうかは、エンドポイントと経路で違う、という整理になります(本記事による解説)。
- 形が変わると経路が変わる:粉体、分散液、被膜、成形品で、暴露の経路と量が違います。評価書がどの形・どの経路についてのものかを最初に確かめることが、誤読を防ぎます(本記事による解説)。
- 規制は段階を区別する:RACの意見(提案)、委任規則の採択・官報・適用開始、裁判所の取消し、と段階があります。いまの時点で何が有効かは、日付と段階で確かめます(図6)。
12. 確認できなかったことと、まとめ
- 規格の正式な題名と本文:JIS・ISOの番号と年は光触媒工業会の一覧(2025年4月現在)によります。規格団体のサイトは開けず、題名・本文・試験条件(光の強さなど)は確認できていません。
- 可視光応答型の判定基準:可視光応答型の窒素酸化物(JIS R 1751-1)と水質(JIS R 1704)の光触媒工業会の判定基準は確認していません。
- 可視光応答型光触媒の耐久性:長期の耐久性を示す一次資料は確認していません。Cu(II)担持の論文の内容も、題名のみの確認です。
- 最適な粒径:光触媒に最適な粒径や膜厚は、材料・用途で違い、本稿では確認していません(Luttrellらの膜厚の結果は、エピタキシャル膜での実験)。
- EUでの取消し後の分類の扱い:2022年の取消し、2025年の上訴棄却の後に、EUのTiO2の分類がどうなったか、新たな提案があるかは確認できていません。
- 日本の公的評価:日本の行政機関・研究機関によるナノTiO2の評価、日本での規制の扱いは調べていません。
- 製品ごとの効果・安全:個別の製品は評価していません。
- 光触媒は紫外光で電子と正孔をつくり、酸化還元と親水化の二つの反応を起こす。アナターゼ約3.2 eV(約387 nm)、ルチル約3.0 eV(約413 nm)事実本稿の計算
- アナターゼが常に良いわけではない。活性は、電荷が表面に届くかで決まる面もある。理由には合意がない事実
- 可視光応答化には代償がある。窒素ドープでは、可視光の量子収率は紫外より低く、窒素濃度を上げると紫外の量子収率が下がった事実
- 屋内では光の量が律速になりうる。仮定を置いた計算で、サイト1個あたり毎秒0.01個に届かない光子本稿の計算
- 評価規格の数字は光の条件とセットで読む。抗菌活性値は暗所の減少を含むので、光の効果ΔRを併せて見る事実
- 安全性評価は、経路ごとに読む。吸入:IARC 2B、NIOSHの勧告限度、EUの分類は2022年に取消し。経口:EFSAは食品添加物E 171を安全とは考えられないとし、EUは食品での使用を認めない改正をした事実。取消し後の分類の扱いは未確定/将来
13. 用語集
- 光触媒
- 光を吸収して触媒作用を示す材料。TiO2が代表的。
- アナターゼ/ルチル
- TiO2の代表的な結晶形。バンドギャップは約3.2 eV/約3.0 eV。
- バンドギャップ
- 電子が入れないエネルギーの幅。吸収できる光の波長を決める。
- 正孔(ホール)
- 励起で電子が抜けたあとの空席。酸化反応を担う。
- 活性酸素
- スーパーオキサイドイオン、水酸ラジカルなど、酸化力の強い酸素の化学種。
- 親水化
- 光で表面が水とのなじみがよい状態に変わること。
- P25
- アナターゼとルチルの混合した市販のTiO2粉末(Degussa、現Evonik)。
- ドーピング
- 少量の元素を加えて電子構造を変えること。
- 量子収率
- 吸収した光子あたりに起きた反応の割合。
- 抗菌活性値(R)
- 無加工品との生菌数の対数値の差。暗所での減少も含む。
- 光照射の効果(ΔR)
- 光を当てた場合と暗所に置いた場合の生菌数の対数値の差。
- PIAJ
- 光触媒工業会。製品認証と評価法の標準化を行う業界団体。
- CLP
- EUの物質・混合物の分類・表示・包装の規則(規則(EC)No 1272/2008)。
- E 171
- 食品添加物としてのTiO2の番号。
14. 参考資料(一次情報)
- Fujishima A, Honda K「Electrochemical Photolysis of Water at a Semiconductor Electrode」Nature 1972;238:37–38 — doi.org/10.1038/238037a0
- Hashimoto K, Irie H, Fujishima A「TiO2 Photocatalysis: A Historical Overview and Future Prospects」Jpn J Appl Phys 2005;44:8269 — doi.org/10.1143/jjap.44.8269
- Luttrell T ほか「Why is anatase a better photocatalyst than rutile? – Model studies on epitaxial TiO2 films」Sci Rep 2014;4:4043 — doi.org/10.1038/srep04043
- Ohtani B ほか「What is Degussa (Evonik) P25? Crystalline composition analysis, reconstruction from isolated pure particles and photocatalytic activity test」J Photochem Photobiol A 2010;216:179–182 — doi.org/10.1016/j.jphotochem.2010.07.024
- Scanlon DO ほか「Band alignment of rutile and anatase TiO2」Nat Mater 2013;12:798–801(題名のみ確認) — doi.org/10.1038/nmat3697
- Wang R ほか「Light-induced amphiphilic surfaces」Nature 1997;388:431–432(題名のみ確認) — doi.org/10.1038/41233
- Asahi R ほか「Visible-Light Photocatalysis in Nitrogen-Doped Titanium Oxides」Science 2001;293:269–271 — doi.org/10.1126/science.1061051
- Irie H, Watanabe Y, Hashimoto K「Nitrogen-Concentration Dependence on Photocatalytic Activity of TiO2−xNx Powders」J Phys Chem B 2003;107:5483–5486 — doi.org/10.1021/jp030133h
- Irie H, Watanabe Y, Hashimoto K「Carbon-doped Anatase TiO2 Powders as a Visible-light Sensitive Photocatalyst」Chem Lett 2003;32:772–773 — doi.org/10.1246/cl.2003.772
- Irie H ほか「Efficient visible light-sensitive photocatalysts: Grafting Cu(II) ions onto TiO2 and WO3 photocatalysts」Chem Phys Lett 2008;457:202–205(題名のみ確認) — doi.org/10.1016/j.cplett.2008.04.006
- Chen X ほか「Increasing Solar Absorption for Photocatalysis with Black Hydrogenated Titanium Dioxide Nanocrystals」Science 2011;331:746–750 — doi.org/10.1126/science.1200448
- Matsunaga T ほか「Photoelectrochemical sterilization of microbial cells by semiconductor powders」FEMS Microbiol Lett 1985;29:211–214 — doi.org/10.1111/j.1574-6968.1985.tb00864.x
- Maness P-C ほか「Bactericidal Activity of Photocatalytic TiO2 Reaction: toward an Understanding of Its Killing Mechanism」Appl Environ Microbiol 1999;65:4094–4098 — doi.org/10.1128/aem.65.9.4094-4098.1999
- Ibhadon AO, Fitzpatrick P「Heterogeneous Photocatalysis: Recent Advances and Applications」Catalysts 2013;3:189–218 — doi.org/10.3390/catal3010189
- Mehling S ほか「Floating immobilized TiO2 catalyst for the solar photocatalytic treatment of micro-pollutants within the secondary effluent of wastewater treatment plants」Water Sci Technol 2023;87:1082–1095 — doi.org/10.2166/wst.2023.066
- 光触媒工業会(PIAJ)「光触媒性能評価試験法のJIS・ISO制定状況(2025年4月現在)」 — piaj.gr.jp
- 光触媒工業会(PIAJ)「認証機能と性能判定基準」 — piaj.gr.jp
- 光触媒工業会(PIAJ)「用語解説」 — piaj.gr.jp
- 光触媒工業会(PIAJ)「光触媒入門」「光触媒のQ&A」「屋内における可視光の照度について」 — piaj.gr.jp
- 光触媒工業会(PIAJ)「ランプからの紫外線量」 — piaj.gr.jp
- Baan RA「Carcinogenic Hazards from Inhaled Carbon Black, Titanium Dioxide, and Talc not Containing Asbestos or Asbestiform Fibers: Recent Evaluations by an IARC Monographs Working Group」Inhal Toxicol 2007;19(Suppl 1):213–228 — doi.org/10.1080/08958370701497903
- NIOSH「Current Intelligence Bulletin 63: Occupational Exposure to Titanium Dioxide」2011(DHHS (NIOSH) Publication No. 2011-160) — doi.org/10.26616/nioshpub2011160
- EFSA Panel on Food Additives and Flavourings「Safety assessment of titanium dioxide (E171) as a food additive」EFSA Journal 2021;19(5):6585 — doi.org/10.2903/j.efsa.2021.6585
- 欧州委員会 委員会規則(EU)2022/63(2022年1月14日)「…as regards the food additive titanium dioxide (E 171)」 — eur-lex.europa.eu
- 欧州委員会 委任規則(EU)2020/217(2019年10月4日付、官報 L 44/1、2020年2月18日)— TiO2の調和分類 — eur-lex.europa.eu
- EU一般裁判所 判決 2022年11月23日、併合事件 T-279/20、T-288/20、T-283/20 — eur-lex.europa.eu
- EU司法裁判所 判決 2025年8月1日、併合事件 C-71/23 P、C-82/23 P — eur-lex.europa.eu
- Chen X, Mao SS「Titanium Dioxide Nanomaterials: Synthesis, Properties, Modifications, and Applications」Chem Rev 2007;107:2891–2959(さらに読む総説。本稿は数値を引用していない) — doi.org/10.1021/cr0500535
15. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| TiO₂が最も効率のよい光活性・最も高い安定性・最も低いコストをもち、白色顔料として古くから使われて安全性は歴史で保証されるという著者らの見解。紫外光で進む二つの反応(吸着物の酸化還元と光誘起の親水化)。前者が20世紀初めから、後者が20世紀末に知られたこと | 橋本らの総説(2005)[参考資料 2]https://doi.org/10.1143/jjap.44.8269 | 事実 |
| 1972年に半導体電極でTiO₂により水の光分解を報告した論文があること(題名による) | Fujishima・Honda(1972)[参考資料 1]https://doi.org/10.1038/238037a0 | 事実 |
| TiO₂のバンドギャップが3 eVより大きく(ルチル約3.0、アナターゼ約3.2)紫外光で働くこと。P25がルチルとアナターゼの混合の粉末であること。アナターゼは一般にルチルより活性が高いが理由に合意がないこと。膜厚を変えた実験でアナターゼは約5 nm、ルチルは約2.5 nmで最大 | Luttrellら(2014)[参考資料 3]https://doi.org/10.1038/srep04043 | 事実 |
| P25の結晶組成の分析・単離粒子からの再構成・光触媒活性の試験を扱った論文があること(題名による) | Ohtaniら(2010)[参考資料 4]https://doi.org/10.1016/j.jphotochem.2010.07.024 | 事実 |
| ルチルとアナターゼのバンド整列を扱った論文があること(題名による) | Scanlonら(2013)[参考資料 5]https://doi.org/10.1038/nmat3697 | 事実 |
| 光で表面が水になじむ現象を扱った論文(Light-induced amphiphilic surfaces、1997年)があること(題名による) | Wangら(1997)[参考資料 6]https://doi.org/10.1038/41233 | 事実 |
| TiO₂₋ₓNₓ(窒素ドープ)の膜と粉末が500 nm未満の可視光でメチレンブルーとアセトアルデヒドの分解・親水性で向上し、置換位置の窒素がバンドギャップの狭窄と活性に不可欠であること | Asahiら(2001)[参考資料 7]https://doi.org/10.1126/science.1061051 | 事実 |
| 低窒素濃度(x<0.02)の粉末で、同じ吸収光子数で可視光の量子収率が紫外光より低く、窒素濃度を上げると紫外光での量子収率が下がり、ドープの場所が再結合の場所にもなりうること | Irieら(2003)窒素[参考資料 8]https://doi.org/10.1021/jp030133h | 事実 |
| TiCの酸化アニールでつくった炭素ドープのアナターゼ粉末で、400〜530 nmの可視光で2-プロパノールがCO₂に分解されたこと | Irieら(2003)炭素[参考資料 9]https://doi.org/10.1246/cl.2003.772 | 事実 |
| TiO₂とWO₃の光触媒にCu(II)イオンを担持した可視光感度の光触媒の論文があること(題名による) | Irieら(2008)Cu(II)[参考資料 10]https://doi.org/10.1016/j.cplett.2008.04.006 | 事実 |
| 水素化による表面層の乱れで太陽光の吸収を増やす黒いTiO₂の報告と、水中の有機分子の光酸化・犠牲試薬を使った水素生成での活性 | Chenら(2011)[参考資料 11]https://doi.org/10.1126/science.1200448 | 事実 |
| TiO₂/Pt粉末で金属ハライドランプの照射下、補酵素Aの酸化と呼吸の阻害を介して10³個/mLの乳酸菌・酵母・大腸菌が60〜120分で完全に殺菌されたこと | Matsunagaら(1985)[参考資料 12]https://doi.org/10.1111/j.1574-6968.1985.tb00864.x | 事実 |
| TiO₂の近紫外光照射で大腸菌K-12が死ぬ機構が脂質の過酸化で、MDA生成が30分で指数関数的に増え、呼吸活性の77〜93%が失われたこと | Manessら(1999)[参考資料 13]https://doi.org/10.1128/aem.65.9.4094-4098.1999 | 事実 |
| 光触媒が水と空気中の低濃度の汚染物質を処理する多用途で低コスト・環境に優しい技術で、除去の難しい有機汚染物質や微生物を水から除く先進酸化技術として多くの地域で商業化が進んでいること | Ibhadon・Fitzpatrick(2013)[参考資料 14]https://doi.org/10.3390/catal3010189 | 事実 |
| 下水処理場の二次処理水で、浮かせた固定化球状TiO₂を太陽光で試験した結果:9時間で平均55%、物質ごとに最大3.5倍の差、吸着が主な制限、ジクロフェナクは約190 mWh/m²で95% | Mehlingら(2023)[参考資料 15]https://doi.org/10.2166/wst.2023.066 | 事実 |
| JIS・ISOの番号と制定・改訂年(2025年4月現在):R 1703-1/ISO 27448、R 1703-2/ISO 10678、R 1701-1〜-4/ISO 22197-1〜-4、R 1751-1/ISO 17168-1、R 1702/ISO 27447、R 1752/ISO 17094、R 1706/ISO 18061、R 1756/ISO 18071、R 1704/ISO 10676、R 1709/ISO 10677、R 1750/ISO 14605 | 光触媒工業会 JIS・ISO制定状況[参考資料 16]https://www.piaj.gr.jp/registered_products/jis-iso/ | 事実 |
| 光触媒工業会のPIAJ製品認証の性能判定基準(限界接触角30°以下、分解活性指数5 nmol/L/min以上、NOx除去0.50 µmol以上、各0.17 µmol/h以上、抗菌RL≧2.0とΔR≧0.3、可視光は500 lux、抗ウイルスVL≧2.0とΔV≧0.3)。UV照度は「訴求値」であること。効果の持続性と安全性のデータの維持を求めること | 光触媒工業会 性能判定基準[参考資料 17]https://www.piaj.gr.jp/registered_products/performance_criteria/ | 事実 |
| 抗菌活性値が無加工品との生菌数の対数値の差で、暗所での減少分も含まれること。光照射の効果が暗所との差であること。JIS R 1702・1703・1701・1704・1706の位置づけ。UV光源がJIS R 1709に規定されること | 光触媒工業会 用語解説[参考資料 18]https://www.piaj.gr.jp/guidance/glossary/ | 事実 |
| 光触媒工業会の説明:O₂⁻と•OHの二種の活性酸素、親水性、400 nm以下の紫外線が必要、効果は表面のものにだけ作用、光の量と面積に比例、光不足が多い原因、水洗と光で回復、樹脂の劣化で寿命、抗菌製品の多くが銀などを加えること、水分解は効率不足、安全性は製品ごとに急性経口毒性・皮膚刺激性・変異原性・皮膚感作性を確認、500 luxの定義 | 光触媒工業会 Q&A・入門[参考資料 19]https://www.piaj.gr.jp/guidance/faq/ | 事実 |
| 照明ごとの1,000ルクスあたりの紫外線量(µW/cm²):白熱電球5、普通形蛍光W7・N13・D14、三波長蛍光W8・N9・D10、窓ガラス越し太陽光15。500ルクス三波長N色で4.5 µW/cm² | 光触媒工業会 ランプの紫外線量[参考資料 20]https://www.piaj.gr.jp/guidance/uv-rays/ | 事実 |
| IARC作業部会(2006年2月)によるTiO₂の評価:疫学は不十分、げっ歯類は十分、グループ2B。肺の排出機構の損傷と超微粒子での低い質量濃度 | Baan(2007)IARC[参考資料 21]https://doi.org/10.1080/08958370701497903 | 事実 |
| NIOSH CIB 63(2011年):職場の吸入のみ、勧告限度は微粒子2.4 mg/m³、超微粒子0.3 mg/m³(1日10時間まで・週40時間のTWA)。超微粒子は職業上の発がん性の可能性、微粒子は分類するにはデータ不十分 | NIOSH CIB 63[参考資料 22]https://doi.org/10.26616/nioshpub2011160 | 事実 |
| EFSA(2021年):E 171の構成粒子で最小外径100 nm未満は個数で50%未満、一般毒性・生殖毒性に影響なし、DNA鎖切断・染色体損傷の可能性、遺伝毒性の懸念を排除できず、E 171は食品添加物として安全とは考えられない | EFSA(2021)[参考資料 23]https://doi.org/10.2903/j.efsa.2021.6585 | 事実 |
| 規則(EU)2022/63(2022年1月14日):E 171を食品の分類で許可しないこと、2022年2月7日前に製造の食品は2022年8月7日まで市場に出せること、医薬品の着色料としての見直し | 規則(EU)2022/63[参考資料 24]https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32022R0063 | 事実 |
| 委任規則(EU)2020/217(2019年10月4日付、官報2020年2月18日):RAC意見(2017年9月14日)、空気力学径10 µm以下の粒子を1%以上含む粉末のTiO₂にCarc. 2・H351(吸入)、適用開始2021年9月9日 | 委任規則(EU)2020/217[参考資料 25]https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32020R0217 | 事実 |
| 一般裁判所の判決(2022年11月23日)が委任規則2020/217を取り消したこと | EU一般裁判所 判決(2022)[参考資料 26]https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:62020TJ0279 | 事実 |
| EU司法裁判所の判決(2025年8月1日、C-71/23 P・C-82/23 P)が上訴を棄却したこと | EU司法裁判所 判決(2025)[参考資料 27]https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:62023CJ0071 | 事実 |
| アナターゼ3.2 eVは約387 nm、ルチル3.0 eVは約413 nm、500 nmは約2.48 eV(E ≒ 1239.84 ÷ λ) | 本稿の計算 | 本稿の計算 |
| 4.5 µW/cm²(365 nmと仮定)が約8.3×10¹²個/cm²/秒、1時間で約3.0×10¹⁶個/cm²、サイト密度10¹⁵/cm²(仮定)で1時間に約30個(毎秒約0.008個) | 本稿の計算 | 本稿の計算 |
| 抗菌活性値2.0は生菌数1/100(99%減)、ΔR 0.3は約2倍の差 | 本稿の計算 | 本稿の計算 |
| 活性は結晶形だけでなく電荷が表面に届くかと粒径・結晶性の釣り合いにも依存するという読み取り、可視光応答化の吸収と電荷利用のトレードオフ、光触媒の性能が光の量で制約されるという整理、抗菌活性値とΔRの区別、評価書の対象の形と経路を確かめるという整理、光触媒の製品での暴露が製品・工程ごとに違うという整理 | 解説(本稿) | 解説 |
| 取消し後のEUでのTiO₂の分類の扱いと新たな提案の有無、規格の正式な題名・本文・試験条件、可視光応答型の判定基準、日本の公的評価 | 本稿の調査範囲では確認できなかった | 未確定/将来 |
最終更新:2026年10月/出典は一次情報(査読論文、IARC・NIOSH・EFSAの公的評価、EUの法令と判決)と、光触媒工業会の資料(業界団体の記述として区別)に限定しています。 JIS・ISOの番号と年は光触媒工業会の一覧によるもので、規格の正式な題名・本文・試験条件は規格団体のサイトで確認できていません。光触媒工業会の判定基準は同会の自主基準で、JISやISOの規定ではありません。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 取消し後のEUでの分類の扱い、規格の本文と試験条件、可視光応答型の判定基準、日本の公的評価、可視光応答型光触媒の長期の耐久性は、一次情報で確認できなかったため記載していません。 本記事は材料・原理・評価・規制の解説であり、特定の製品・企業の優劣を示すものでも、健康・安全に関する個別の助言でもありません。 ヒーロー画像と図4はAI生成イメージ、そのほかの図はベクター作図であり、いずれも実際の装置・製品・測定結果を示すものではありません。