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自己修復材料とビトリマー
― 「傷が治る」という一言の裏にある、修復条件と修復効率の定義
切っても、傷がついても、くっついて元に戻る材料は、論文では珍しくありません。ただし「何%治った」という数字は、何の特性を、どんな温度・時間・圧着条件で、どの試料と比べたかによって意味が変わります。 この記事では、修復の仕組み(外因型のマイクロカプセルと、内因型の動的共有結合・水素結合・イオン相互作用)、網目を組み換えながら不溶のまま加工できる「ビトリマー」、そして修復効率の読み方を、一次情報の範囲で整理します。

- 自己修復材料とは何か(3行でつかむ)
- 修復の仕組みの地図 ― 外因型(カプセル)と内因型(動的な結合)
- ビトリマー ― 網目の組み換えと、2つの転移温度
- 素材技術者の視点①:「ビトリマー」の線引きは揺れている
- 本稿の計算:温度を下げると、緩和時間は何桁延びるか
- 修復効率の読み方 ― 何が、何%戻ったのか
- 応用の切り口 ― コーティング、ゴム、電子皮膚
- 限界と、確認できなかったこと
- 評価・標準の読み方
- 用語集
- 参考資料(一次情報)
- 主張と出典の対応表(監査)
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・予定であり、実績が確認できていない事項
このほか、材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。推測は太字で示します。
ここに出てくる修復効率・温度・時間は、特定の材料を、論文が定めた条件で試験した研究室の結果です。量産品の寿命や、実際の使用環境での修復を示すものではありません。 修復効率の定義は論文ごとに異なり、異なる論文の数字を並べて優劣をつけることはしていません。製品名や企業の優劣も論じません。
1. 自己修復材料とは何か(3行でつかむ)
- 傷や亀裂のあとで、特性が戻る材料:自己修復高分子は、損傷が起きたその場で、損傷に応じて修復する能力をもつ高分子と複合材料です。修復は、外からの操作なしに進む(自律型)場合も、熱や圧力などの外部エネルギーを要する場合もあります事実[参考資料2]
- 方式は大きく3つ:カプセル型、血管型、内因型(高分子そのものが修復する)の3つの方式で実証されてきました。研究の大部分は、準静的な破壊のあとの機械的な健全性の回復に集中してきました事実[参考資料2]
- 「何%治った」は条件つきの数字:修復効率は、戻った特性を元の特性で割った比で表すのが一般的ですが、標準の測り方はなく、修復する特性(強度を基準にする方法、靭性を基準にする方法、視覚的な評価など)も、時間も温度も、論文によって違います事実[参考資料16・17・18]
修復効率の数字は、「何が」「どの条件で」「何と比べて」戻ったかが書かれて初めて意味を持ちます。 Guo らの弾性体では、破断面を水中で合わせると効率93%、切断面を24時間空気中に離して置いてから合わせると68%と、条件で値が変わります。しかもその効率は「破断ひずみ」の比として定義されています事実[参考資料13]。
本稿は、この分野の入口として、仕組みと評価の読み方に集中します。マイクロカプセルそのものの作り方(殻材、芯材、粒径)は本シリーズ「マイクロカプセル」編で、弾性体の化学は「ポリウレタンとエラストマー」編で、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の違いは「熱可塑性と熱硬化性」編で、エポキシは「エポキシ樹脂」編で扱います。
2. 修復の仕組みの地図 ― 外因型(カプセル)と内因型(動的な結合)
Blaiszik らの総説は、自己修復を実証した概念的な方式として、カプセル型、血管型、内因型の3つを挙げています事実[参考資料2]。 この記事では、修復成分を材料の外から埋め込む方式を「外因型」(カプセル型、血管型)、高分子の結合そのものが動いて修復する方式を「内因型」と呼びます(呼び方は本記事による整理です)。

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(1) 外因型の代表例 ― DCPD と Grubbs 触媒のカプセル
White らは2001年に、マイクロカプセルに封入した修復剤が、亀裂が入ると放出され、材料に埋め込んだ触媒に触れて重合し、亀裂面を接着する構造材料を報告しました。破壊試験で靭性が最大75%回復したとされます事実[参考資料1]。 この系は、DCPD(ジシクロペンタジエン)を修復剤、Grubbs 触媒を重合の触媒とする組み合わせです事実[参考資料19]。同じ総説は、この組み合わせは触媒の化学的・熱的な耐久性の低さ、母材への分散の悪さ、高価なことから、実用化には至っていない、と述べています[参考資料19]。論文本文の試験条件は、本稿では確認していません。
注意したいのは「最大75%」です。どの試験片、どの破壊試験で、何と比べた値かは要旨からは分かりません。一度亀裂が通った場所のカプセルは使い切ってしまうため、同じ場所を繰り返し修復することは、この方式の弱点になりえます(本記事による解説)。
(2) 内因型の代表例 ― 熱で組み換わる網目、水素結合のゴム、光で修復する塗膜
| 例(年) | 仕組み | 報告された内容(原文の範囲) |
|---|---|---|
| Chen ら(2002) | 熱で結合が外れ、冷却で再び結合する網目(熱で再接合できる架橋ポリマー) | 透明で、室温以下では市販のエポキシ樹脂に匹敵する機械特性をもつ固体。120 ℃ を超えると、モノマー間の結合の約30%(固体NMRによる)が外れ、冷えると再び結合する。この過程は完全に可逆で、触媒や追加のモノマーなしに、破断した部品を複数回修復できる[4] |
| Cordier ら(2008) | 脂肪酸と尿素から作る、水素結合の超分子ゴム | ゴムのように数倍に伸びて戻り、切断しても、破断面を合わせると室温で修復する。簡単な原料から合成でき、再加工もできる。一方、ひずみの回復は遅く、応力がかかるとクリープする[5] |
| Ghosh と Urban(2009) | オキセタン置換キトサンを入れたポリウレタン網目 | 損傷でオキセタン環が開き、紫外線を当てるとキトサン鎖が切れて、反応性の末端と架橋を作り、修復する。1時間以内に修復できるとされる[7] |
| Rekondo ら(2014) | 芳香族ジスルフィドの交換を使うポリ(ウレア・ウレタン) | 触媒なしで、室温で定量的な修復効率を示すとされる[6] |
すべて事実(各論文の要旨の範囲)。論文本文の試験条件(試験片の形状、時間、修復効率の定義)は、本稿では確認していない項目があります。
修復には、結合や鎖が損傷面をまたいで動く必要があります。Yang と Urban は、自己修復高分子の主な課題として、ガラス転移温度(Tg)の高い機能材料でも修復と刺激応答を示すものの設計を挙げています事実[参考資料3]。 Cordier らの超分子ゴムが室温で修復する一方でクリープすることは[参考資料5]、「動きやすい結合は、使用中も動く」という矛盾をよく示しています。
素材から見ると、設計の鍵は「修復したいときだけ動き、使うときは動かない」ようにすることです。熱、光、触媒など、スイッチを入れる刺激を設計する発想がここにあります。次章のビトリマーは、そのスイッチを温度の依存性(交換反応の速度)に任せた網目です(本記事による解説)。
3. ビトリマー ― 網目の組み換えと、2つの転移温度
(1) 何が新しかったか
従来の高分子は、熱で流れるが溶けやすい熱可塑性か、加工後は形を変えられない熱硬化性かのどちらかでした。Montarnal らは2011年に、交換反応で、重合体を解重合させずに網目の位相(つながり方)を組み換えられるエポキシ網目を報告しました。この網目は不溶で、加工もでき、粘度がガラス転移温度の近くで急に変わるのではなく、石英ガラスのようにアレニウス型で緩やかに変わると述べています事実[参考資料8]。 Denissen らの総説は、これを交換型の「適応共有結合網目(CAN)」の一つとして整理し、こうした材料をビトリマーと呼んだのは Leibler らであると説明しています事実[参考資料9]。
| 網目の種類 | 結合の交換のしかた | 加熱したときの様子(総説の記述) |
|---|---|---|
| 熱硬化性(従来) | 交換しない永久結合 | 再成形・再加工・リサイクルが難しい[9] |
| 解離型 CAN | 結合が先に切れ、別の位置で再結合する(例:フランとマレイミドのディールス・アルダー付加体) | 加熱で結合が減り、粘度が急に下がる熱可塑性に近い振る舞いと説明されてきた[9] |
| 会合型 CAN(ビトリマー) | 新しい結合ができてから元の結合が切れる。架橋密度は一定 | 解重合せず、粘度はアレニウス型に緩やかに下がる[9] |
すべて事実(Denissen ら[参考資料9])。ただし、この「解離型は熱可塑性に近い」という区別そのものが、実測では当てはまらない場合が多いという批判があります(第4章)。
(2) 2つの転移温度 ― Tg と Tv
ビトリマーの粘弾性は、2つの転移温度で説明されます。1つは通常のガラス転移温度 Tg、もう1つは、結合交換の速さが変形の時間より速くなって網目が流れ出す温度で、Leibler らはトポロジー凍結転移温度 Tvと名づけました。Tv は、慣習的に粘度が1012 Pa·sに達する温度として定義されます事実[参考資料9]。
- Tg が Tv より低い場合:低温のガラス状 → Tg を超えるとゴム状(交換が遅く網目は固定)→ Tv を超えると粘弾性液体になる
- 交換が速くて、Tv が Tg より低いと見積もられる場合:網目の組み換えは分子の局所運動(セグメント運動)に支配される。このとき Tv は「仮想的な値」で、Tg を超えて初めて流動が始まり、さらに加熱すると、拡散支配から交換反応支配(アレニウス型)に移る
事実[参考資料9]。Tg と Tv は、架橋密度、モノマーの剛直さ、交換反応の速さ(触媒量など)、交換できる基の密度で調整できます。
(3) どんな化学で組み換えるか ― 例と、その弱点
用語補足:ここでのTBDは触媒 1,5,7-triazabicyclo[4.4.0]dec-5-ene の略称で、未確定事項を表す記号ではありません。Denissenらの総説[参考資料9]に基づきます。
| 交換の化学 | 総説に記載の特徴 | 弱点・注意(総説の記述) |
|---|---|---|
| エステル交換(エポキシ/酸・無水物系) | 触媒の量と種類で活性化エネルギーと Tv を調整できる。TBD・酢酸亜鉛・トリフェニルホスフィンの活性化エネルギーは、それぞれ106、86、43 kJ/mol。室温では交換は無視できるほど遅い | 速い加工には、多い触媒量と高温が必要。触媒の老化・溶出、エステルの加水分解が長期安定性の課題。剛直なモノマー(Tg が75 ℃ 超)では触媒が溶けにくい |
| ビニローグウレタンのアミン交換 | 触媒なしで交換する。緩和時間は150 ℃ で約3分、触媒なしの活性化エネルギーは約60 kJ/mol。加水分解に対して安定 | 網目に残る少量のアミンの酸化による劣化が、長期使用では要注意 |
| トリアゾリウム塩のアルキル交換 | 活性化エネルギー140 kJ/mol(臭化物イオンの網目)。緩和時間は130 ℃ で約30分から200 ℃ で数秒まで | 交換の機構は、総説の時点で未確定 |
| ジスルフィド交換 | 芳香族ジスルフィドのメタセシスを使う Odriozola らのポリ(ウレア・ウレタン)は、水素結合と網目の組み換えが重なって、室温で定量的に修復する | 水素結合のために、線形の範囲の変形では室温での応力緩和は小さく、緩和は単一の過程ではない |
すべて事実(Denissen ら[参考資料9])。値は総説時点(2015年6月)の報告で、後の研究で更新されている可能性があります。
Denissen らは、ビトリマーを使い道のある温度範囲では「クリープしない従来の熱硬化網目」として振る舞わせ、加熱したときだけ網目が組み換わって制御された流動を起こすのが理想だと述べています。Tv は、加工できるようになる温度を示すと同時に、耐クリープ性を失う温度でもあります。このため、適切な速度の交換反応を見つけることが、この分野の主要な課題の一つです事実[参考資料9]。
素材から見ると、触媒が必要な系では触媒を網目に残したまま使うことになります。触媒の老化や溶出[参考資料9]は、使用中のクリープ、加工回数による特性変化、接着剤や封止材として使うときの残留成分の問題に直結します。触媒なしで交換する系(ビニローグウレタンなど)は、この問題を避ける代わりに、残るアミンの酸化など別の弱点を抱えます(本記事による解説)。 エポキシの網目の基本は、本シリーズ「エポキシ樹脂」編を参照してください。交換反応の機構と物性の関係は Winne らの総説[参考資料12]、触媒や副反応を含む反応性の設計は Guerre らの総説[参考資料11]が整理しています。
4. 素材技術者の視点①:「ビトリマー」の線引きは揺れている
Denissen らの定義では、ビトリマーは「会合型の交換反応で網目が組み換わる」CAN であり、解離型の CAN は熱可塑性に近い振る舞いをするとされてきました。ところが Elling と Dichtel は、応力緩和や粘度の温度依存性が報告されている解離型 CAN をすべて調べ、いずれもアレニウス型の関係を示したと報告しています事実[参考資料10]。 さらに、会合型と解離型で、通常の再加工の温度範囲(100〜200 ℃ 程度)に大きな違いがあるという証拠はほとんどないと述べ、「ビトリマー」という用語をこれ以上使わないことを提案しています事実[参考資料10]。
同じ論文は、解離型でも、架橋が少しだけ外れる条件では、会合型と区別のつかない応力緩和を示すこと、また、温度をさらに上げると解離型では架橋密度が急に下がる(ゲル・ゾル転移)という違いが現れることを指摘しています。ポリウレタンの網目は、80〜160 ℃ では貯蔵弾性率が一定の「ゴム状平坦部」を示し、180 ℃ を超えると架橋密度が急に下がる例として示されています事実[参考資料10]。
Elling と Dichtel は、交換機構を理解することの重要性を認めたうえで、材料を選ぶときには、Tg、活性化エネルギー、ゲル・ゾル転移温度と分解温度、反応する基の種類のほうが重要だと結論しています事実[参考資料10]。 応力緩和から緩和時間 τ* を求めるときは、応力が初期値の37%(1/e)に下がる時間を使いますが、これは単一のマクスウェル模型に合うことを仮定しています。実際の網目は多くの緩和モードをもつため、より複雑な模型(Kohlrausch–Williams–Watts など)を検討すべきだとも指摘されています[参考資料10]。
実務では、「ビトリマーです」と書かれた資料を読むとき、(a)何℃から何℃まで応力緩和を測ったか、(b)活性化エネルギーはいくらか、(c)貯蔵弾性率の平坦部がどこまで続くか、(d)モデル化合物で交換機構を確かめたか、を確認するのが先です(本記事による解説)。名称が会合型か解離型かは、これらの数字ほどには使い道を決めません。
5. 本稿の計算:温度を下げると、緩和時間は何桁延びるか
応力緩和の時間 τ が活性化エネルギー Ea のアレニウス型(τ ∝ exp(Ea/RT))に従うと仮定して、150 ℃ の緩和時間を基準に、低い温度での時間の延びを計算します本稿の計算。Ea は、Elling と Dichtel の表1にある報告値から例として選びました(ビニローグウレタンの一例 60、酢酸亜鉛を触媒とするエステル交換 88、カルバモイル基交換 111 kJ/mol)[参考資料10]。
- 150 ℃ → 100 ℃:Ea=60 で約9.8倍、88 で約28.6倍、111 で約68.6倍
- 150 ℃ → 25 ℃(室温):Ea=60 で約1.3×103倍、88 で約3.6×104倍、111 で約5.6×105倍
- 具体例:150 ℃ で緩和時間が3分の網目(Denissen らが記すビニローグウレタンの値[9])で Ea=60 とすると、100 ℃ では約29分、25 ℃ では約2.7日になる計算
前提と限界:この外挿は、交換反応が唯一の律速で、Tg より上という前提に立ちます。実際には Tg 以下では分子運動が止まるため成り立たず(第3章)、水素結合などが重なる系では緩和が単純なアレニウス型にならない場合があります。また、Ea は温度範囲と網目によって変わります[参考資料10]。この計算は、「少し冷やすと、修復や再成形の時間が1桁以上延びる」ことの感覚をつかむためのもので、特定の材料の修復時間の予測には使えません。
6. 修復効率の読み方 ― 何が、何%戻ったのか
修復効率は、修復後の特性を、元の特性で割った比として書かれるのが普通です。ただし、割る対象の特性が論文ごとに違います。Wool と O’Connor は、亀裂の修復を「表面の再配列、接近、濡れ、拡散、ランダム化」の段階で説明し、機械特性の回復率 R を時間・温度・圧力・分子量の関数として扱いました事実[参考資料16]。 Li と Feng の章は、修復効率の評価を強度を基準にする方法と靭性を基準にする方法(モードI、モードII、混合モードの破壊靭性)に分けて整理しています事実[参考資料17]。 コーティングの分野では、2024年の総説が、自己修復の評価には視覚的な方法と定量的な方法があり、標準化された確立済みの方法はまだないと述べています事実[参考資料18]。
| 確認する項目 | どう数字が変わるか | 一次情報で確認できた例 |
|---|---|---|
| ① 戻った特性 | 靭性、強度、破断ひずみ、導電率、外観(傷の見え方)は別の量。同じ材料でも、どれを比べるかで効率が違う | White ら:靭性が最大75%回復[1]/Guo ら:効率は破断ひずみの比として定義[13]/Tee ら:導電率と機械特性を別に報告[14] |
| ② 割る対象(分母) | 同じ試料の修復前か、傷のない別の試料か。試験片の形、切断の方法、試験速度が揃っているか | 本稿の調査範囲では、論文間で揃っているとは言えない(解説)。Panahi らの総説は、効率の式と項の定義を整理している[18] |
| ③ 温度と時間 | 修復が進むのは時間と温度の関数(拡散や交換反応の速さ) | Chen ら:120 ℃ を超えて外れた結合が冷却で再結合[4]/Guo ら:室温で10分[13]/Tee ら:導電率は15秒、機械特性は約10分[14] |
| ④ 損傷後の経過 | 切断面を離して置く間に、表面が変化する。放置後の効率は低くなりうる | Guo ら:24時間離して置いたあとでも68%±2%[13] |
| ⑤ 環境 | 水中・低温・酸・アルカリで修復の進み方が変わる | Guo ら:水中93%、−10 ℃ の30%食塩水で89%、pH 0 で88%、pH 14 で84%[13] |
| ⑥ 繰り返し | 同じ場所を何回修復できるか。カプセル型は修復剤を使い切る | Guo ら:切断と修復を複数回繰り返せると報告[13]。カプセル型の限界は第2章(解説) |
②は解説、それ以外は事実(各論文の要旨・本文の記載。Guo らは Nature Communications の本文、他は要旨)。
応力−ひずみ曲線を、原点から破断点までの三角形で近似できると仮定します本稿の計算。元の試料の破断強度を S、破断ひずみを ε とすると、破断までに吸収するエネルギーの目安(曲線の下の面積)は S × ε ÷ 2 です。 修復後に強度も破断ひずみも元の80%(0.8 S、0.8 ε)に戻ったとすると、面積は 0.8 × 0.8 = 0.64、つまり64%です。
前提と限界:数値は例示で、実在の材料のデータではありません。実際の曲線は三角形ではなく、強度の比と面積の比が単純な積にはなりません。それでも、「強度80%」「ひずみ80%」と「靭性の目安80%」は別の主張であることは確かです。論文が何を分子にしているかを見ずに、数字の大小だけで比べることはできません。
Tee らの電子皮膚用の複合材料(超分子ポリマーに、ニッケルの微粒子を分散)は、破断後に導電率が約90%の効率で、15秒の修復時間のあとに回復し、機械特性は約10分で完全に回復したと報告されています事実[参考資料14]。同じ試料でも、電気の通り道がつながる時間と、力を支えられる時間は違います。
素材から見ると、修復効率を一つの数字で語ると、用途に必要な特性を見逃します。配線なら「導電率が戻る時間」、シール材や被覆なら「液体や気体を通さなくなる時間」、構造材なら「荷重を支える時間」がそれぞれ別の問題です。購入側・設計側は、用途に必要な特性だけを、使用条件で測った値を求めるのが先です(本記事による解説)。
7. 応用の切り口 ― コーティング、ゴム、電子皮膚
(1) コーティング ― 傷が「見えなくなる」と「守る」は別
Ghosh と Urban のポリウレタン網目は、損傷でオキセタン環が開き、紫外線を当てるとキトサン鎖の切断によって反応性の末端と架橋ができ、1時間以内に修復できるとされます事実[参考資料7]。塗装や包装などの用途が挙げられています。 一方、塗膜の自己修復の評価は、前述のように視覚的な評価と定量的な評価に分かれ、標準の方法はありません[参考資料18]。
傷が目で見えなくなった(外観の回復)ことと、下地を守れる(バリア性や防食性の回復)ことは、別の評価です(本記事による解説)。防食の観点は、本シリーズ「抗菌・防食コーティング」編で扱います。塗膜の引っかき抵抗の試験として ISO 1518-1 などがありますが、これは自己修復の効率を測る規格ではなく、塗膜が引っかきで下地まで貫通される最小の荷重などを求める方法です(第9章)。

(2) ゴム・弾性体 ― 切っても、戻って伸びる
Cordier らの超分子ゴムは、水素結合で鎖と架橋をつくり、室温で破断面を合わせると修復します。一方でクリープし、ひずみの回復も遅いと、論文自身が記しています[参考資料5]。 Rekondo らは、芳香族ジスルフィドの交換を使い、触媒なしで室温で修復するポリ(ウレア・ウレタン)を報告しました[参考資料6]。 Guo らは、水素結合の強弱とジスルフィドのメタセシスをポリジメチルシロキサン(PDMS)の鎖に組み合わせ、切れ目のない試料で14,000%、切れ目のある試料で1,300%まで伸びる弾性体が、室温では10分で修復すると報告しています事実[参考資料13]。
加硫ゴムの永久架橋と、熱可塑性エラストマーの物理架橋の違いは、「ポリウレタンとエラストマー」編が詳しく扱っています。自己修復ゴムは、その二つの間に「動く架橋」を置いた設計と見ることもできます(本記事による解説)。
(3) 電子皮膚 ― 修復するのは「電気の道」
Tee らの材料は、導電率を、ニッケル粒子の量で調整でき、最大で40 S/cm に達し、圧力と曲げの両方に感度をもつとされます事実[参考資料14]。 Kang、Tok、Bao の総説(Nature Electronics, 2019)は、自己修復する電子材料の開発状況、装置への応用、実用化の課題を整理しています[参考資料15]。
電子皮膚の評価では、材料単体の導電率の回復と、配線や素子を載せた状態での機能の回復は別です。装置としての信頼性は、本稿の調査範囲では確認していません。
8. 限界と、確認できなかったこと
(1) 論文本文の試験条件
White ら(2001)、Chen ら(2002)、Cordier ら(2008)、Ghosh と Urban(2009)、Rekondo ら(2014)、Tee ら(2012)の本文は、本稿では要旨の範囲でしか確認していません。試験片の形状、試験速度、修復効率の定義は記載していません。Chen らの網目の化学(フランとマレイミドの反応を使った網目と一般に紹介されます)も、本文では確認していません。
(2) 血管型、カプセルの作り方
血管型の設計と、マイクロカプセルの殻材・粒径・分散は、扱っていません。マイクロカプセルは本シリーズ「マイクロカプセル」編で扱います。
(3) 実用化の状況
自己修復コーティングや自己修復ゴムの実際の製品、市場での採用、寿命は、一次情報(企業の技術資料・公的文書)で確認できていないため、記載していません。ビトリマーの産業での採用状況も確認していません。
(4) 標準の試験方法
自己修復の効率を測るための標準の試験方法(ISO・IEC・JIS)は、本稿の調査範囲では確認できませんでした。コーティング分野の2024年の総説も、確立された標準の方法はまだないと述べています[参考資料18]。
(5) 資料間の違い
酢酸亜鉛を触媒とするエステル交換系の活性化エネルギーは、Denissen らの総説では86 kJ/mol、Elling と Dichtel の表では88 kJ/mol と記載があります。測定条件や丸めの違いによると考えられますが(推測)、どちらが正しいかは元の論文で確認していません。
- 自己修復の方式は、外因型(カプセル型・血管型)と内因型(動的な結合)に分けて考えられます。カプセル型は修復剤を使い切り、内因型は「動く結合」ゆえに使用中のクリープと両立が課題です事実/解説
- ビトリマーは、交換反応で網目を組み換えながら不溶のまま流れる網目で、Tg と Tv の2つの転移温度で説明されます。Tv は耐クリープ性を失う温度でもあります事実
- 「ビトリマー」の線引きは揺れています。解離型の網目も、報告されたものはいずれもアレニウス型の応力緩和を示しました。名前より、Tg、活性化エネルギー、ゲル・ゾル転移温度を読むべきです事実
- 修復効率は、戻った特性、分母、温度・時間、環境で変わります。標準の測り方はなく、例では強度とひずみが各80%でも面積は64%になります事実/本稿の計算
9. 評価・標準の読み方
自己修復材料の評価で測るのは、修復の前後で、同じ特性を同じ試験で測った値の比です。測る特性は、引張強度・破断ひずみ(機械特性)、破壊靭性(亀裂に対する抵抗)、塗膜の引っかき抵抗、Tg や動的粘弾性(修復や流動がどの温度で起こるか)、応力緩和(ビトリマーの結合交換の速さ)、導電率(電子皮膚)などです。 規格が定めているのは、これらの個々の特性の試験方法です。「修復効率」そのものを測る標準の方法は、本稿の調査範囲では確認できませんでした[参考資料18]。
| 評価項目 | ISO | IEC・IEEE | JIS | ASTM | 測定条件で値が変わる点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 引張強度・破断伸び(プラスチック、フィルム)事実 | ISO 527-1:2019(通則)、ISO 527-3:2018(厚さ1 mm 未満のフィルム・シートの試験条件) | 確認できなかった | JIS K 7161-1(プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則)、JIS K 7127(同-第3部:フィルム及びシートの試験条件) | D638(Tensile Properties of Plastics の試験方法) | 試験速度、試験片の形状・厚さ、修復した面の位置、温度 |
| 引張特性(ゴム・エラストマー)事実 | ISO 37:2024(加硫ゴム・熱可塑性ゴムの引張応力-ひずみ特性) | 確認できなかった | JIS K 6251(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方) | D412(加硫ゴム・熱可塑性エラストマーの引張) | ダンベル試験片の形状、引張速度、温度、切断面の合わせ方 |
| 破壊靭性(モードI)事実 | ISO 13586:2018(3点曲げとコンパクト試験片による、硬質・半硬質プラスチックのモードI破壊靭性) | 確認できなかった | 対応するJISを確認できなかった | D5045(プラスチックの平面ひずみ破壊靭性とひずみエネルギー解放率) | 予き裂の鋭さ、試験片の形状・厚さ、修復後の亀裂面の扱い |
| ガラス転移温度 Tg(DSC)事実 | ISO 11357-2:2020(ガラス転移温度とステップ高さ) | 確認できなかった | JIS K 7121(プラスチックの転移温度測定方法) | D3418(ポリマーの転移温度と融解・結晶化のエンタルピーをDSCで測る方法) | 昇温速度、熱履歴、中点か開始点かの読み方(解説) |
| 動的粘弾性(DMA)事実 | ISO 6721-1:2019(通則。変形モードによる結果は直接比較できないことがある) | 確認できなかった | JIS K 7244-1(プラスチック-動的機械特性の試験方法-第1部:通則) | D4065(プラスチックの動的機械特性の求め方と報告の実施基準) | 周波数、昇温速度、変形モード(引張・曲げ・せん断) |
| 塗膜の引っかき抵抗事実 | ISO 1518-1:2023(針を一定荷重で引っかき、塗膜が貫通されるかを調べる方法) | 確認できなかった | JIS K 5600-5-5(塗料一般試験方法-塗膜の機械的性質-引っかき硬度(荷重針法))。ISO 1518との対応は未確認 | D7027(高分子塗膜・プラスチックの引っかき抵抗を、計装式の引っかき装置で調べる方法) | 針の先端径、荷重、速度、下地。自己修復の効率を測る方法ではない |
| 応力緩和(ビトリマー)、導電率の回復、修復効率そのもの事実 | 確認できなかった | 確認できなかった | 確認できなかった | 確認できなかった | 温度範囲、ひずみ量、緩和時間の定義(初期値の1/eなど)[10] |
規格の番号と題名は、ISO は ISO の公式ページ、JIS は日本産業標準調査会(JISC)のJIS検索で確認しました。ASTM規格は、ASTMのサイトを開かず、それ以外の公開資料(査読論文の本文・参考文献欄)で番号と題名の記載を確認した範囲です。ASTMの欄は、試験の内容・条件・合否基準を書いていません。表の整理は本稿の計算です。
規格の位置づけ ― 国際規格、国内規格、業界規格
- ISO は国際規格、JIS は国内規格、ASTM は米国の標準化団体が発行する規格です。JIS の番号の並びが ISO と似ているもの(JIS K 7161-1 と ISO 527-1、JIS K 7127 の題名が「第3部」であること)がありますが、国際規格との一致の程度(一致・修正など)は、JIS の本文を確認していないため、本稿では確認できていません(推測:対応していると考えられる)
- ISO 11357-2 は2020年版(第3版)で、2013年版は廃止されています[参考資料25]。ISO 37 は2024年版(第7版)で、2017年版は廃止されています[参考資料22]。同じ規格番号でも、版が違えば手順が違う場合があります
読むときの注意
- 規格は「試験方法」であり、材料の性能を保証しません。自己修復の論文が規格に準拠した引張試験を使っていても、それは「測り方」が規格に沿うだけで、「修復効率」の定義が標準化されたことにはなりません
- 同じ名前の特性でも、規格や版で手法が違います。引張強度は、試験片の形状と速度で変わります。ISO 6721-1 は、変形モードが違うと動的機械特性の結果が直接比較できない場合があると明記しています[参考資料26]
- メーカーや論文の値は、準拠した規格・版・試験条件を併記して読みます。修復後の試験で、試験片の再成形や切断面の合わせ方がどう扱われているかは、規格ではなく、論文の方法欄で決まります(本記事による解説)
- 規格値の範囲と、実使用条件のずれに注意します。規格の試験は多くが室温・一定の速度ですが、自己修復の効率が問われるのは、使用中の温度・湿度・繰り返しの下です
10. 用語集
- 自己修復材料
- 損傷が起きたあとに、自律的に、または熱・光などの刺激で、特性が回復する材料。
- 外因型
- 修復剤を粒や管で外から埋め込む方式(カプセル型、血管型)。本記事の呼び方。
- 内因型
- 高分子の結合そのものが動いて修復する方式。本記事の呼び方。
- CAN(適応共有結合網目)
- 交換できる共有結合で架橋した網目。会合型と解離型がある。
- ビトリマー
- 会合型の交換で網目が組み換わり、粘度がアレニウス型で変わる網目。Leibler らの命名。
- 会合型/解離型
- 新しい結合ができてから古い結合が切れる型/結合が先に切れて別の位置で再結合する型。
- Tg
- ガラス転移温度。ガラス状とゴム状の境。
- Tv
- トポロジー凍結転移温度。結合交換が変形より速くなって網目が流れ出す温度。粘度1012 Pa·sで定義するのが慣習。
- 応力緩和
- 一定のひずみを与えたときに、応力が時間とともに下がる現象。
- 修復効率
- 修復後の特性を元の特性で割った比。何の特性かは論文で異なる。
- DCPD
- ジシクロペンタジエン。カプセル型の修復剤として使われた例がある。
- ゲル・ゾル転移
- 架橋が外れて網目が流れ出す転移。解離型の網目が高温で示す。
11. 参考資料(一次情報)
- White S. R. ほか “Autonomic healing of polymer composites”, Nature 409, 794–797 (2001), DOI 10.1038/35057232 — nature.com/articles/35057232
- Blaiszik B. J. ほか “Self-Healing Polymers and Composites”, Annu. Rev. Mater. Res. 40, 179–211 (2010), DOI 10.1146/annurev-matsci-070909-104532 — doi.org/10.1146/annurev-matsci-070909-104532
- Yang Y., Urban M. W. “Self-healing polymeric materials”, Chem. Soc. Rev. 42, 7446–7467 (2013), DOI 10.1039/C3CS60109A — doi.org/10.1039/c3cs60109a
- Chen X. ほか “A Thermally Re-mendable Cross-Linked Polymeric Material”, Science 295, 1698–1702 (2002), DOI 10.1126/science.1065879 — doi.org/10.1126/science.1065879
- Cordier P. ほか “Self-healing and thermoreversible rubber from supramolecular assembly”, Nature 451, 977–980 (2008), DOI 10.1038/nature06669 — nature.com/articles/nature06669
- Rekondo A. ほか “Catalyst-free room-temperature self-healing elastomers based on aromatic disulfide metathesis”, Mater. Horiz. 1, 237–240 (2014), DOI 10.1039/C3MH00061C — doi.org/10.1039/c3mh00061c
- Ghosh B., Urban M. W. “Self-Repairing Oxetane-Substituted Chitosan Polyurethane Networks”, Science 323, 1458–1460 (2009), DOI 10.1126/science.1167391 — doi.org/10.1126/science.1167391
- Montarnal D. ほか “Silica-Like Malleable Materials from Permanent Organic Networks”, Science 334, 965–968 (2011), DOI 10.1126/science.1212648 — doi.org/10.1126/science.1212648
- Denissen W., Winne J. M., Du Prez F. E. “Vitrimers: permanent organic networks with glass-like fluidity”, Chem. Sci. 7, 30–38 (2016), DOI 10.1039/C5SC02223A(オープンアクセス) — doi.org/10.1039/c5sc02223a
- Elling B. R., Dichtel W. R. “Reprocessable Cross-Linked Polymer Networks: Are Associative Exchange Mechanisms Desirable?”, ACS Cent. Sci. 6, 1488–1496 (2020), DOI 10.1021/acscentsci.0c00567(オープンアクセス) — doi.org/10.1021/acscentsci.0c00567
- Guerre M. ほか “Vitrimers: directing chemical reactivity to control material properties”, Chem. Sci. 11, 4855–4870 (2020), DOI 10.1039/D0SC01069C(オープンアクセス) — doi.org/10.1039/d0sc01069c
- Winne J. M., Leibler L., Du Prez F. E. “Dynamic covalent chemistry in polymer networks: a mechanistic perspective”, Polym. Chem. 10, 6091–6108 (2019), DOI 10.1039/C9PY01260E — doi.org/10.1039/c9py01260e
- Guo H. ほか “Universally autonomous self-healing elastomer with high stretchability”, Nat. Commun. 11, 2037 (2020), DOI 10.1038/s41467-020-15949-8(オープンアクセス) — doi.org/10.1038/s41467-020-15949-8
- Tee B. C.-K. ほか “An electrically and mechanically self-healing composite with pressure- and flexion-sensitive properties for electronic skin applications”, Nat. Nanotechnol. 7, 825–832 (2012), DOI 10.1038/nnano.2012.192 — nature.com/articles/nnano.2012.192
- Kang J., Tok J. B.-H., Bao Z. “Self-healing soft electronics”, Nat. Electron. 2, 144–150 (2019), DOI 10.1038/s41928-019-0235-0 — nature.com/articles/s41928-019-0235-0
- Wool R. P., O’Connor K. M. “A theory of crack healing in polymers”, J. Appl. Phys. 52, 5953–5963 (1981), DOI 10.1063/1.328526 — doi.org/10.1063/1.328526
- Li G., Feng X. “Healing efficiency characterization of self-healing polymers”, in Recent Advances in Smart Self-Healing Polymers and Composites, Elsevier, 27–55 (2022), DOI 10.1016/B978-0-12-823472-3.00005-9 — repository.lsu.edu/mechanical_engineering_pubs/1571
- Panahi ほか(Panahi, Khorasani, Mensah) “A review of the characterization methods for self-healing assessment in polymeric coatings”, Prog. Org. Coat. 186, 108055 (2024), DOI 10.1016/j.porgcoat.2023.108055(要旨の内容は European Coatings の紹介記事で確認) — doi.org/10.1016/j.porgcoat.2023.108055
- Kontiza A., Kartsonakis I. A. “Smart Composite Materials with Self-Healing Properties: A Review on Design and Applications”, Polymers 16, 2115 (2024), DOI 10.3390/polym16152115(オープンアクセス) — doi.org/10.3390/polym16152115
- ISO “ISO 527-1:2019 Plastics — Determination of tensile properties — Part 1: General principles” — iso.org/standard/75824.html
- ISO “ISO 527-3:2018 Plastics — Determination of tensile properties — Part 3: Test conditions for films and sheets” — iso.org/standard/70307.html
- ISO “ISO 37:2024 Rubber, vulcanized or thermoplastic — Determination of tensile stress-strain properties” — iso.org/standard/86892.html
- ISO “ISO 13586:2018 Plastics — Determination of fracture toughness (GIC and KIC) — Linear elastic fracture mechanics (LEFM) approach” — iso.org/standard/67721.html
- ISO “ISO 1518-1:2023 Paints and varnishes — Determination of scratch resistance — Part 1: Constant-loading method” — iso.org/standard/83330.html
- ISO “ISO 11357-2:2020 Plastics — Differential scanning calorimetry (DSC) — Part 2: Determination of glass transition temperature and step height” — iso.org/standard/77310.html
- ISO “ISO 6721-1:2019 Plastics — Determination of dynamic mechanical properties — Part 1: General principles” — iso.org/standard/73142.html
- 日本産業標準調査会(JISC) JIS検索「JIS K 7161-1 プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則」 — jisc.go.jp(K7161-1)
- 日本産業標準調査会(JISC) JIS検索「JIS K 7127 プラスチック-引張特性の試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件」 — jisc.go.jp(K7127)
- 日本産業標準調査会(JISC) JIS検索「JIS K 6251 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」 — jisc.go.jp(K6251)
- 日本産業標準調査会(JISC) JIS検索「JIS K 7121 プラスチックの転移温度測定方法」 — jisc.go.jp(K7121)
- 日本産業標準調査会(JISC) JIS検索「JIS K 7244-1 プラスチック-動的機械特性の試験方法-第1部:通則」 — jisc.go.jp(K7244)
- 日本産業標準調査会(JISC) JIS検索「JIS K 5600-5-5 塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第5節:引っかき硬度(荷重針法)」 — jisc.go.jp(K5600-5)
- ASTM規格の番号・題名の確認に使った公開資料(ASTMのサイトは参照していない): D638 は Talecka ほか, Materials 17, 4095 (2024), DOI 10.3390/ma17164095/D412 は Vasconcelos ほか, Bioengineering 13, 199 (2026), DOI 10.3390/bioengineering13020199/D5045 は Roberts ほか, Front. Bioeng. Biotechnol. 1, 13 (2013), DOI 10.3389/fbioe.2013.00013/D3418 は Nambi Gowri ほか, Polymers 17, 544 (2025), DOI 10.3390/polym17040544/D4065 は Park ほか, Sci. Rep. 5, 12356 (2015), DOI 10.1038/srep12356/D7027 は Skin Res. Technol. 31, e70072 (2025) の参考文献欄 — doi.org/10.3390/ma17164095(ほか)
12. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| 自己修復高分子・複合材料の定義(損傷した場所で修復、自律型と外部エネルギーを要するもの)、3つの方式(カプセル型、血管型、内因型)、研究の大部分が準静的破壊後の機械的健全性の回復に集中 | Blaiszik ら(2010)の要旨 出典2 https://doi.org/10.1146/annurev-matsci-070909-104532 | 事実 |
| マイクロカプセル封入の修復剤が亀裂で放出され、埋め込んだ触媒で重合して亀裂面を接着、靭性が最大75%回復 | White ら(2001)の要旨 出典1 https://www.nature.com/articles/35057232 | 事実 |
| DCPD と Grubbs 触媒の組み合わせ、触媒の耐久性・分散・価格のため実用化に至っていないという総説の記述 | Kontiza と Kartsonakis(2024) 出典19 https://doi.org/10.3390/polym16152115 | 事実 |
| 自己修復高分子の分類(共有結合、超分子集合体、イオン相互作用ほか)、高 Tg の機能材料の設計が課題 | Yang と Urban(2013)の要旨 出典3 https://doi.org/10.1039/c3cs60109a | 事実 |
| 熱で再接合できる網目(120 ℃ 超で約30%の結合が外れ、冷却で再結合、触媒不要、複数回) | Chen ら(2002)の要旨 出典4 https://doi.org/10.1126/science.1065879 | 事実 |
| 脂肪酸と尿素の超分子ゴムが室温で修復、再加工できる一方、ひずみ回復が遅くクリープする | Cordier ら(2008)の要旨 出典5 https://www.nature.com/articles/nature06669 | 事実 |
| 芳香族ジスルフィド交換のポリ(ウレア・ウレタン)が触媒なしで室温で定量的な修復効率 | Rekondo ら(2014)の要旨 出典6 https://doi.org/10.1039/c3mh00061c | 事実 |
| オキセタン置換キトサンのポリウレタンが紫外線で1時間以内に修復 | Ghosh と Urban(2009)の要旨 出典7 https://doi.org/10.1126/science.1167391 | 事実 |
| 交換反応で解重合せずに網目を組み換えるエポキシ網目、不溶で加工可能、粘度がアレニウス型 | Montarnal ら(2011)の要旨 出典8 https://doi.org/10.1126/science.1212648 | 事実 |
| CAN の会合型・解離型、ビトリマーの定義、Tg と Tv(1012 Pa·s)、触媒と活性化エネルギー(TBD 106、Zn(OAc)2 86、PPh3 43 kJ/mol)、ビニローグウレタン(約3分/150 ℃、約60 kJ/mol)、トリアゾリウム塩(140 kJ/mol)、ジスルフィド交換、触媒の老化・溶出・加水分解、剛直なモノマーでの触媒の溶解性 | Denissen ら(2016) 出典9 https://doi.org/10.1039/c5sc02223a | 事実 |
| 解離型 CAN も報告された限りアレニウス型、通常の再加工温度では区別が小さいこと、「ビトリマー」の使用に対する提案、表1・表2の活性化エネルギー、ポリウレタンの例(80〜160 ℃ で平坦部、180 ℃ 超で架橋密度が急減)、τ* の定義(37%)と単一マクスウェル模型の仮定 | Elling と Dichtel(2020) 出典10 https://doi.org/10.1021/acscentsci.0c00567 | 事実 |
| ビトリマーの化学反応性の制御、動的共有結合の反応機構と物性の関連(さらに詳しい総説として紹介) | Guerre ら(2020)の要旨 出典11 https://doi.org/10.1039/d0sc01069c Winne ら(2019)の要旨 出典12 https://doi.org/10.1039/c9py01260e | 事実 |
| PDMS 系の弾性体(14,000%/1,300%)、修復効率=破断ひずみの比、水中93%、−10 ℃ の30%食塩水89%、pH 0 で88%、pH 14 で84%、24時間離して置いて68%±2%、繰り返し可能 | Guo ら(2020) 出典13 https://doi.org/10.1038/s41467-020-15949-8 | 事実 |
| ニッケル粒子入り超分子ポリマー(導電率最大40 S/cm、導電率は約90%の効率で15秒、機械特性は約10分で回復) | Tee ら(2012)の要旨 出典14 https://www.nature.com/articles/nnano.2012.192 | 事実 |
| 自己修復電子材料と装置の開発状況・課題を整理した総説 | Kang ら(2019)の要旨 出典15 https://www.nature.com/articles/s41928-019-0235-0 | 事実 |
| 亀裂修復の段階と回復率 R の関数形 | Wool と O’Connor(1981)の要旨 出典16 https://doi.org/10.1063/1.328526 | 事実 |
| 修復効率の評価(強度基準と靭性基準、モードI・II・混合) | Li と Feng(2022)の章の要旨 出典17 https://repository.lsu.edu/mechanical_engineering_pubs/1571 | 事実 |
| 塗膜の自己修復の評価に標準の確立した方法がないこと、視覚的方法と定量的方法の分類 | Panahi ら(2024)の要旨(European Coatings の紹介記事で確認) 出典18 https://doi.org/10.1016/j.porgcoat.2023.108055 | 事実 |
| ISO 527-1:2019、ISO 527-3:2018、ISO 37:2024、ISO 13586:2018、ISO 1518-1:2023、ISO 11357-2:2020、ISO 6721-1:2019 の番号・題名・版・適用範囲 | ISO の公式ページ 出典20 https://www.iso.org/standard/75824.html 出典21 https://www.iso.org/standard/70307.html 出典22 https://www.iso.org/standard/86892.html 出典23 https://www.iso.org/standard/67721.html 出典24 https://www.iso.org/standard/83330.html 出典25 https://www.iso.org/standard/77310.html 出典26 https://www.iso.org/standard/73142.html | 事実 |
| JIS K 7161-1、K 7127、K 6251、K 7121、K 7244-1、K 5600-5-5 の番号・題名 | 日本産業標準調査会(JISC)のJIS検索 出典27 https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=K7161-1 出典28 https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=K7127 出典29 https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=K6251 出典30 https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=K7121 出典31 https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=K7244 出典32 https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=K5600-5 | 事実 |
| ASTM D638、D412、D5045、D3418、D4065、D7027 の番号と題名(ASTMのサイトは参照せず、査読論文の本文・参考文献欄の記載で確認) | 査読論文(オープンアクセス)の記載 出典33 https://doi.org/10.3390/ma17164095(ほか、参考資料の末尾に列挙) | 事実 |
| 緩和時間の温度変化(150 ℃ 基準で、100 ℃ では約9.8/28.6/68.6倍、25 ℃ では約1.3×103/3.6×104/5.6×105倍)、3分の網目の例(100 ℃ で約29分、25 ℃ で約2.7日)。強度・ひずみ各80%で面積64% | 本稿の計算。アレニウス式による外挿で、Tg 以下・複数緩和には適用できない。面積比は三角形近似の例示で、実在の材料のデータではない | 本稿の計算 |
| White ら・Chen ら・Cordier ら・Ghosh と Urban・Rekondo ら・Tee らの論文本文の試験条件、血管型の詳細、マイクロカプセルの作り方、自己修復製品の実用化状況、ビトリマーの産業採用状況、修復効率を測る標準の試験方法(ISO・IEC・IEEE・JIS)、JIS と ISO の一致の程度 | 本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため記載していない | 解説 |
| 「治るほど動けるなら強さ・流れないことの両立が課題」「触媒を残して使う問題」「ビトリマーという言葉より読むべき数字」「電気と機械で戻る速さが違う」「傷が見えなくなることと守ることは別」という読み取り。外因型・内因型の呼び方と図2の整理 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない | 解説 |
| 図3・図4・図5・図6・図2が実際の観察像・実データではなく説明のための作図であること。図1と図7がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月10日/出典は一次情報(査読論文、規格団体のページ)に限定しています。多くの論文は要旨の範囲で確認しており、本文の試験条件は確認していないものがあります。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 自己修復製品の実用化状況、ビトリマーの産業採用状況、修復効率の標準の試験方法については、確認できなかったため記載していません。 修復効率・温度・時間は特定の材料を論文が定めた条件で試験した結果であり、他の材料や実際の使用条件に一般化できません。 図はすべて説明用の概念図です。図2〜図6はベクター作図、図1と図7はAI生成イメージであり、いずれも実際の顕微鏡像・実験データ・製品の実物を示すものではありません。