🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

金属有機構造体 技術解説

← 機能性材料の解説一覧へ戻る

TECHNOLOGY EXPLAINER

金属有機構造体(MOF)
― 「穴を設計できる結晶」を、壊さずに・量で作る

MOF(金属有機構造体)は、金属イオンと有機分子を組み合わせて、規則正しい細孔をもつ結晶にした材料です。 2025年のノーベル化学賞は、北川進・Richard Robson・Omar M. Yaghi の3氏に「金属–有機構造体の開発」で贈られました。 この記事では、構造、比表面積の数字の読み方(BETとLangmuirの違い)、合成と安定性、公式資料で確認できる工業生産の例、ガス吸着・分離・触媒・水回収の用途の段階を、論文・ノーベル賞の公式文書・企業の公式ページにもとづいて整理します。

構成:Nobel Prize の公式発表と「Scientific background」、Nature、Science、JACS、PNAS ほかの査読論文、Atomis・Svante の公式ページを一次情報として使用/最終更新 2026年10月

金属有機構造体の構造・工程を示す解説画像
概念図(AI生成イメージ)。溶液から得た結晶粉末をろ過して洗う、実験室の場面を表現したものです。実在の装置・製品・粉末の色を示すものではありません。
この記事の構成
  1. MOFとは何か(3行でつかむ)
  2. 構造 ― 金属ノードと有機リンカー
  3. 細孔と比表面積 ― 数字はどのモデルで出したか
  4. 本稿の計算:モデルが違うと、同じ材料で何倍違うか
  5. 素材技術者の視点①:比表面積の数字は、活性化とモデルで読む
  6. 合成と安定性 ― 水・熱・圧力
  7. 工業生産の実例 ― 公式資料で確認できる範囲
  8. 用途 ― ガス吸着・分離・触媒・水回収の段階
  9. 2025年ノーベル化学賞の公式発表との関係
  10. 素材技術者の視点②:実験室の結晶から、使える形へ
  11. 確認できなかったこと/このシリーズの他の記事との分担
  12. 評価・標準の読み方
  13. 用語集
  14. 参考資料(一次情報)
  15. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=論文・公式文書・企業の公式ページに記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・見通しであり、実績が確認できていない事項
このほか、材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
企業の値・発表は「メーカー公称」「会社の発表」と明記します。ノーベル賞の公式発表は、発見・開発への評価であり、個々の製品の性能や安全を保証するものではありません。 ナノ材料の規制・定義は、本シリーズ「ナノ材料の定義と規制」編で扱います。

1. MOFとは何か(3行でつかむ)

MOFは、金属イオン(ノード)を、長い有機分子(リンカー)でつなぎ、空洞をもつ結晶にした材料です。 2025年10月8日、スウェーデン王立科学アカデミーは、ノーベル化学賞を北川進(京都大学)、Richard Robson(メルボルン大学)、Omar M. Yaghi(カリフォルニア大学バークレー校)の3氏に「for the development of metal–organic frameworks」で贈ると発表しました事実[参考資料1]。

  • 定義:IUPACの推奨では、MOFは「空隙になりうる部分をもつ有機配位子による配位ネットワーク」とされ、配位高分子の一部です事実[参考資料2]
  • 数:2013年の総説は、20,000種超のMOFが報告され、典型的な多孔度は結晶体積の50%超、比表面積は1,000〜10,000 m²/gの範囲だと整理しています事実[参考資料3]。ノーベル賞の公式発表は「数万種」としています事実[参考資料1]
  • 課題:実験室で作れることと、水・熱・圧力に耐えて、量産でき、使える形(成形体)になることは別です。公式の技術背景は、安定性・量産性・費用が改善して産業規模の利用に至ったと述べ、新しい企業も生まれたとします事実[参考資料2]
この記事でいちばん大事な一行

MOFの数字(比表面積・細孔・吸着量)は、「どの材料を、どう活性化し、どのモデルで解析した値か」とセットで読みます。 同じ材料でも、BETとLangmuirで比表面積は1.3倍以上違います(第4章)。 そして、論文の最高値は、粉末のまま・実験室規模での値です。使える形にするには、安定性と成形が別の課題になります(本記事による解説)。

2. 構造 ― 金属ノードと有機リンカー

MOFの設計の基本は、どの金属ノードに、どの長さのリンカーをつなぐかです。 Yaghiらは、同じノード(二次構成単位、SBU)で、リンカーを長くして同じ網(トポロジー)を保ち、空洞の大きさを調整する「等網状(isoreticular)」の考え方を示しました。例として、IRMOF-16の細孔は2.8 nm、IRMOF-74-XIは最大9.8 nmの開口を持つと報告されています事実[参考資料2]。

金属有機構造体の構造・工程を示す解説画像
図1 概念画像(ImageGenで生成)。金属ノードと有機リンカーがつくる、空洞のある網の模型です。右は同じ網を長いリンカーで広げた考え方で、すべてのMOFが同じ形になるわけではありません。 [参考資料2]
形状・色・寸法は説明用です。数値・原文の対応は下の元図で確認できます。
元のSVG模式図と正確な説明を見る

図の読み方・元図の説明:MOFの構造:ノードとリンカー、リンカーを長くすると空洞が広がる(概念図) / 二次元に単純化した模式図です。実際は三次元の網で、リンカーの形・ノードの数は材料ごとに違います / 短いリンカー:小さな空洞 / 長いリンカー:大きな空洞(同じ網) / 赤=金属ノード 灰=有機リンカー 点線の四角=空洞 / リンカーを延ばすと、空洞は大きくなる / 同じ網でリンカーだけを替えると、空洞の大きさと機能を調整できる(等網状の考え方) / ※ 等網状の考え方と、細孔の例(IRMOF-16:2.8 nm、IRMOF-74-XI:最大9.8 nm)はノーベル賞の技術背景文書[参考資料2]の記述です。 / ※ 図は説明用の二次元の模式図で、実際の結晶構造・寸法ではありません。

MOFの構造:ノードとリンカー、リンカーを長くすると空洞が広がる(概念図) 二次元に単純化した模式図です。実際は三次元の網で、リンカーの形・ノードの数は材料ごとに違います 短いリンカー:小さな空洞 長いリンカー:大きな空洞(同じ網) 赤=金属ノード 灰=有機リンカー 点線の四角=空洞 リンカーを延ばすと、空洞は大きくなる 同じ網でリンカーだけを替えると、空洞の大きさと機能を調整できる(等網状の考え方) ※ 等網状の考え方と、細孔の例(IRMOF-16:2.8 nm、IRMOF-74-XI:最大9.8 nm)はノーベル賞の技術背景文書[参考資料2]の記述です。 ※ 図は説明用の二次元の模式図で、実際の結晶構造・寸法ではありません。
図1 概念図(ベクター作図)。金属ノードと有機リンカーからなる網と、リンカーを長くしたときの空洞の変化を表しました[参考資料2]。二次元の模式図で、実在のMOFの構造・寸法ではありません。

代表的な骨格を、報告された数字つきで整理します(いずれも論文・公式文書の記述で、試料・測定条件が異なります)。

骨格構成報告された特徴(条件つき)
HKUST-1Cu(II)–カルボン酸のパドルホイール、BTCリンカー細孔は約1 nmのチャネル、骨格は240 ℃まで安定(熱重量分析と高温の単結晶回折)事実[参考資料7]。窒素吸着でBET 約690 m²/g、Langmuir 約920 m²/g、細孔容積 約0.3 cm³/g事実[参考資料2]
MOF-5Zn₄O–カルボン酸クラスター、BDCリンカー溶媒を完全に除いても結晶性を保ち、300 ℃まで加熱しても安定。ほとんどの結晶性ゼオライトより高い見かけの比表面積と細孔容積事実[参考資料6]。Langmuir 約2,900 m²/g(窒素)、細孔容積 約0.6 cm³/mL事実[参考資料2]
MIL-101Cr–テレフタル酸巨大な単位胞(約702,000 ų)、約30〜34 Åの超大細孔、窒素のLangmuir 比表面積 約5,900 ± 300 m²/g事実[参考資料8]
UiO-66系Zr₆クラスター(Zr–O結合)分解温度500 ℃超、ほとんどの化学薬品に耐え、10 トン/cm²の圧力でも結晶性を保つと報告事実[参考資料10]
ZIF-8Zn–イミダゾラート(ゼオライトの網)Langmuir 1,810 m²/g、550 ℃まで熱的に安定、沸騰したアルカリ水と有機溶媒に耐える(ZIF-8、-11)事実[参考資料9]
CALF-20Zn系(CO₂用の骨格)CO₂を物理吸着し、相対湿度40%でも優先的に吸着、150 ℃の排ガス条件でも性能を保つと報告事実[参考資料14]

各論文・文書の記述。BETとLangmuirの違い、試料の活性化・測定条件が異なるため、行どうしの優劣を示す表ではありません(第3・4章)。

3. 細孔と比表面積 ― 数字はどのモデルで出したか

MOFの比表面積は、窒素の吸着等温線から、BETモデルまたはLangmuirモデルで求めた値が多く報告されます。 ノーベル賞の技術背景文書は、同じ骨格でもモデルによって値を並べています事実[参考資料2]。

骨格報告された比表面積(モデル)備考(出典の記述)
HKUST-1BET 約690 m²/g / Langmuir 約920 m²/g細孔容積 約0.3 cm³/g。窒素の吸着事実[参考資料2]
MOF-5Langmuir 約2,900 m²/g細孔容積 約0.6 cm³/mL。ゼオライトの比表面積は数百 m²/g、活性炭はそれより高い値に達しうる(文書の比較)事実[参考資料2]
MOF-177Langmuir 約4,500 m²/gCO₂・H₂の吸着で注目された事実[参考資料2]
MOF-210Langmuir >10,000 m²/g / BET 約6,240 m²/gCO₂の吸着量 2,400 mg/g(MOF-200も)。吸着の条件は文書に記載なし事実[参考資料2]
NU-110BET 約7,140 m²/g超臨界CO₂による活性化で、細孔の崩壊を避けて得た。BETの最高値クラスとして報告事実[参考資料12]
DUT-60BET 約7,839 m²/g利用可能な細孔容積 約5.0 cm³/g事実[参考資料2]

各文書の記述。試料・活性化・吸着の条件が異なるため、行どうしの優劣を示す表ではありません。

BETの数字を使ってよいのか、という疑問も論文で扱われています。 Waltonらは2007年に、モンテカルロ・シミュレーションで窒素の等温線を作り、BET法で求めた比表面積が、結晶構造から幾何学的に計算した「到達できる表面積」とよく一致し、実験の報告値ともよく合うと報告しました。ただし、MOFの細孔は平坦でなく、細孔を満たす吸着が起きるものもあるので、BETの数字が本当に意味を持つのかという問題が出発点でした事実[参考資料11]。 Farhaらは2012年に、細孔を崩さずに溶媒を除く超臨界CO₂による活性化で、BET 約7,000 m²/gの2つのMOFを得たと報告し、リンカーを三重結合を含む効率の良い単位にすれば、仮想的な最大比表面積は約14,600 m²/g以上(従来の想定は約10,500 m²/g)になりうると計算しています事実[参考資料12]。

同じ骨格で、モデルを変えると比表面積はどうなるか(報告値と本稿の計算) ノーベル賞の技術背景文書の数字。棒の長さ = 比表面積(m²/g)。横軸は 0〜10,000 を 500 px に対応 HKUST-1 BET 690 Langmuir 920(BETの1.33倍) MOF-210 BET 6,240 Langmuir >10,000(グラフの端を超える。BETの1.60倍以上) 参考 グラフェンの両面の計算値 約2,630(グラフェン編) NU-110 BET 7,140(約2.7倍) ※ 690・920・6,240・10,000超は技術背景文書[参考資料2]、NU-110の7,140は Farha らと同文書[参考資料12・2]、2,630は本稿のグラフェン編の計算です。 ※ 1.33倍(920÷690)、1.60倍以上(10,000÷6,240)、約2.7倍(7,140÷2,630)は本記事の算出です。 ※ グラフェン両面の値は、フレームワークとの面積の「同じ物差し」での比較ではなく、桁の目安です。
図2 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。ノーベル賞の技術背景文書の値[参考資料2]と Farha らの値[参考資料12]から作図しました。倍率は本記事の算出で、異なる試料・条件の値どうしの比較ではなく、同じ材料のモデル違いの比です。

4. 本稿の計算:モデルが違うと、同じ材料で何倍違うか

本稿の計算:LangmuirとBETの比、水回収の収量

本稿の計算

  • HKUST-1:920 ÷ 690 = 約 1.33 倍(LangmuirがBETより大きい)
  • MOF-210:10,000 ÷ 6,240 = 1.60倍以上(Langmuirは「10,000超」なので下限)
  • NU-110とグラフェン:7,140 ÷ 2,630 = 約 2.7 倍(グラフェンの両面の計算値は、本稿のグラフェン編の計算で、結合長0.142 nmの仮定)
  • 水回収の例(第8章の数字を使用):MOF-801を最大1.2 kg使った試作装置が、1 kgあたり100 gを1日で得たとすると、1.2 × 100 = 約 120 g/日(約0.12 L/日)

前提と限界:BETとLangmuirの比は、HKUST-1とMOF-210という2例だけの数字で、他のMOFにそのまま当てはまりません。Langmuirは単分子層吸着のモデルで、超微細孔では大きな値が出やすい、という一般的な理解は、本稿の出典では確認していません。グラフェンとの比は、桁の目安として並べたもので、MOFの値は窒素吸着の見かけの面積です。水回収の計算は、1.2 kgの全量が同じ収量で働くという単純化です(解説)。

5. 素材技術者の視点①:比表面積の数字は、活性化とモデルで読む

素材技術者の読みどころ:数字の前に、粉末をどう乾かしたかを聞く

MOFの比表面積は、試料を測る前の「活性化」(細孔から溶媒を除く工程)で大きく変わります。Farhaらは、超臨界CO₂を使う活性化が、溶媒を除くときの細孔の崩壊を避け、BET 約7,000 m²/gの試料を得る鍵だったと述べています事実[参考資料12]。 受け入れ・比較のときの確認は、次のとおりです(以下は本記事による解説)。

  • モデルと範囲:BETかLangmuirか。BETなら、相対圧の範囲と、それが微細孔の吸着に適切かどうか(Waltonらは、結晶構造から計算した面積との一致でBETの妥当性を調べた)
  • 活性化の条件:溶媒の置換・乾燥の方法(加熱真空、超臨界CO₂など)、温度、時間。崩壊した試料は低い値になります
  • 吸着ガス:窒素か、アルゴンか、CO₂か。ノーベル賞の文書の数字は窒素の吸着です
  • 水分・溶媒の残り:保管で水を吸うMOFでは、測定の前後で値が変わります(第6章)
  • 体積あたりか質量あたりか:m²/gの数字が大きくても、粉末の充填密度が低いと、体積あたりの吸着量は小さくなります(解説。本稿の出典では密度の数字を確認していません)

6. 合成と安定性 ― 水・熱・圧力

実験室の標準的な合成法は、金属塩と有機リンカーを溶媒中で加熱して結晶化させるソルボサーマル法です。Atomisは、自社の技術ページで、この方法を「バッチ効率が悪い」「大量の有機溶剤を使う」「高温高圧のプロセスである」とし、スケールアップに多くの課題があったと述べています事実(会社の記述)[参考資料19]。

安定性は、「何に対して」で分けて読みます。Howarthらの総説は、化学的な安定性(酸性・塩基性・中性の水溶液中)、熱的安定性、機械的安定性の3つがそれぞれ重要で、設計原理と合成戦略が整理されてきたと述べています事実[参考資料13]。 Cavkaらは、Zr₆クラスターのMOFで、強いZr–O結合と、μ₃-OHの出入りで骨格を保つ性質により、分解温度500 ℃超、ほとんどの化学薬品に耐え、10 トン/cm²の外圧でも結晶性が残ると報告しています。そして、多くのMOFの熱的・化学的・機械的な安定性の低さが、大規模な工業利用を制限するいちばんの性質だろうとも述べています事実[参考資料10]。

骨格ごとに報告された安定性(本記事による整理) 「—」は、本稿が参照した資料に記載が見つからなかった項目(性質がないという意味ではありません) 骨格 熱 化学(水・アルカリなど) 機械(圧力) HKUST-1 240 ℃まで安定 — — MOF-5 300 ℃まで(脱溶媒後) — — ZIF-8、ZIF-11 550 ℃まで 沸騰アルカリ水・有機溶媒に耐える — UiO-66系(Zr) 分解温度 500 ℃超 ほとんどの化学薬品に耐える 10 トン/cm²でも結晶 熱に強くても、水に強いとは限らない。3つの軸で別々に確認する ※ 値は Chui[参考資料7]、Li[参考資料6]、Park[参考資料9]、Cavka[参考資料10]の各論文の要旨の記述です。測定法・条件は論文ごとに違います。 ※ 「熱に強くても水に強いとは限らない」は、表の「—」を含む本記事の読み方(解説)で、特定の骨格が水に弱いという主張ではありません。
図3 概念図(ベクター作図)。骨格ごとに、論文で報告された熱・化学・機械の安定性を整理しました[参考資料7・6・9・10]。測定法・条件が異なり、優劣の比較ではありません。空欄(—)は「確認できなかった」の意味です。

7. 工業生産の実例 ― 公式資料で確認できる範囲

MOFの工業生産・商用化については、公式資料で確認できた範囲だけを書きます。ノーベル賞の技術背景文書は、MOFの産業界での役割を、次のように述べています。産業界は発見と用途の拡大に継続して関わり、既存の大企業だけでなく、発見と商用化に特化した新しい企業も生まれた。高い化学的・熱的安定性をもつ骨格を、費用効果が高く、拡大可能な形で作れることも示された事実[参考資料2]。

事例公式資料の記述(条件つき)種別
Atomis(日本)の量産京都大学の北川進特別教授の研究を基盤とし、実験室の標準的な合成法(ソルボサーマル法)の課題(バッチ効率の悪さ、大量の有機溶剤、高温高圧)を解決する複数の独自製法を開発し、2023年に20 t/年の生産能力をもつパイロットプラントを竣工したとしています。10万種以上の独自の構造データベース(POROS)も持つと述べています事実(会社の記述)[参考資料19]会社の発表(パイロット)
Atomis のガス容器2026年9月1日、特殊効果演出の会社が、液化炭酸ガスの容器として次世代高圧ガス容器「CubiTan」の活用を開始したと発表。運搬の負担の軽減と安全管理の効率化を目指す事実(会社の発表。この発表には、CubiTanの材料とMOFの関係の記載はなく、本稿では確認していません)[参考資料20]会社の発表(顧客での導入)
Svante(カナダ)のCO₂回収「MOFを構造化した吸着体(フィルター)に塗布した固体吸着剤」を、炭素回収の「次世代の商用技術」と位置づけ、同社の固体吸着剤CALF-20は、CO₂濃度12%以上に最適としています。低濃度の排ガスには、BASFのアミン系液体(OASE blue)を提供するとしています事実(会社の記述)[参考資料21]。ノーベル賞の技術背景文書は、CALF-20の高く選択的なCO₂の容量が、産業規模での炭素回収への応用を促したと述べます事実[参考資料2]会社の発表(商用の位置づけ)
「構造化」の課題多孔性の網状材料を、エネルギー用途の工業規模に使うための「構造化」(成形)の総説は、構造化の戦略を進めることが、実験室の研究と産業での利用の隔たりを埋める鍵だと論じています事実(抄録の一部)[参考資料18]総説

BASFなど他の企業のMOFの生産量・仕様は、本稿では公式資料で確認できなかったため記載していません(第11章)。

本稿の計算:20 t/年の生産能力は、1日あたりどれくらいか

本稿の計算

  • 20 t = 20,000 kg。20,000 ÷ 365 = 約 55 kg/日(年間を通して100%稼働という単純化)

前提と限界:Atomisの20 t/年は、会社が述べるパイロットプラントの生産能力で、実際の生産量・販売量ではありません。どの骨格をどの収率・純度で作るかも、同ページに記載がありません。

金属有機構造体の構造・工程を示す解説画像
図4 概念図(AI生成イメージ)。パイロット規模で、MOFの粉末を取り出して袋詰めする場面を表現したものです。特定の企業・工場・製品の外観を示すものではありません。

8. 用途 ― ガス吸着・分離・触媒・水回収の段階

用途ごとに「確認できた段階」を並べる(本記事による整理) ● = 査読論文・公式文書・会社の公式ページで確認できた / ○ = 本稿の調査範囲では確認できなかった 用途 論文で報告 試作・屋外試験 会社が製品として発表 ガス吸着・貯蔵 CO₂の分離・回収 水の回収 触媒 Kondo 1997 ほか Lin 2021(CALF-20) 産業規模の応用と述べる文書 Svante(会社の記述) Kim 2017 Arizona砂漠(Fathieh 2018) Mondloch 2015 ※ ○は「存在しない」ではなく「本稿では確認できなかった」の意味です。ガス貯蔵の「製品」は、第7章のとおり、MOFとの関係を確認できませんでした。
図5 概念図(ベクター作図)。用途ごとの段階を整理しました[参考資料5・14・21・2・15・16・17]。整理は本記事のもので、会社の記述は会社の発表であり、第三者の検証ではありません。
用途報告・記述(条件つき)段階
ガス吸着・貯蔵Kitagawaらは1997年に、Co・Ni・Znと4,4′-ビピリジンの配位高分子で、骨格を変形させずに、CH₄・N₂・O₂が1〜36 atmで可逆に吸着されると報告しました。チャネルの断面は約3×6 Åと約3×3 Å事実[参考資料5]。ノーベル賞の文書は、Al-soc-MOF-1のメタン容量が米国エネルギー省の基準を超えたこと、MOF-177が常温・中程度の圧力で水素の容量が高いことを挙げています事実[参考資料2]論文(実験室)。容器・製品での採用は未確認
CO₂の分離・回収亜鉛系MOF(CALF-20)は、CO₂を物理吸着し、相対湿度40%でもCO₂を優先して吸着し、150 ℃の排ガス条件でも性能を保つ。結合部位が細孔の中心にあり、水分子の水素結合ネットワークができない事実[参考資料14]論文+会社の発表(第7章)
水の回収Kimらは、狭い相対湿度の範囲で吸水が急に増えるMOFを使い、太陽光だけで加熱して、相対湿度20%で1 kgのMOFあたり1日2.8 Lの水を得たと報告事実[参考資料15]。Fathiehらは、MOF-801を最大1.2 kg使った試作装置を、実験室のあと米国アリゾナの砂漠で試験し、自然冷却と周囲の日射だけで、1 kgあたり1日夜のサイクルで100 gの水を得たと報告。アルミ系のMOF-303は2倍超の量を出す。零下の露点でも動作したと述べる事実[参考資料16]屋外試験(試作)。製品は未確認
触媒・分解Mondlochらは、極めて広いチャネルと優れた化学的安定性をもつ多孔性MOFが、リン酸エステル結合をもつ化学兵器剤の触媒的な分解に効果的であると報告事実[参考資料17]。ノーベル賞の文書は、MIL-101が触媒や、H₂・CO₂の貯蔵に使われたと述べる事実[参考資料2]論文(実験室)
本稿の計算:2つの水回収の数字は、同じ尺度ではない

本稿の計算

  • Kimらの「1 kgあたり1日2.8 L」= 2,800 g ÷ 100 g = Fathiehらの「1 kgあたり1日100 g」の約 28 倍
  • Fathiehらの試作装置:1.2 kg × 100 g/kg = 約 120 g/日(約0.12 L)

前提と限界:前者は相対湿度20%の条件での報告(本稿が参照した要旨の紹介文では、実験室か屋外かの区別を確認できませんでした)、後者は砂漠の屋外試験の実測(自然冷却のみ、1日夜に1サイクル)です。試験の条件も、MOFの量の見積もり方も違い、28倍は「どちらかが劣る」という意味ではなく、前提(サイクル数・冷却・日射・湿度)が違う数字を並べると桁が変わる、ということを示す値です。120 g/日は、1.2 kgの全量が同じ収量で働いたとする本稿の単純化です。

9. 2025年ノーベル化学賞の公式発表との関係

MOFの主な節目(論文・公式文書の記述から本記事が抜き出したもの) すべての報告を網羅した年表ではありません 1989 1995 1997 1999 2005・2008 2012 2018・2021 2023 2025 Robson:Cuイオン と四本腕の分子 (崩れやすい) Yaghi:「MOF」の 語、350 ℃まで安定 Kitagawa:気体の 可逆な吸着 MOF-5、HKUST-1 安定で多孔質 MIL-101(大細孔)、 UiO-66(高安定) NU-110 など BET 約7,000 m²/g 水の屋外試験 CALF-20(2021) Atomis:20 t/年 パイロット竣工 ノーベル化学賞 (10月8日発表) ※ 出典:1989〜2021年は各論文[参考資料2・4・5・6・7・8・10・12・16・14]。 ※ 2023年は Atomis の発表[参考資料19]、2025年は公式発表[参考資料1]。節目の選び方は本記事によるもので、網羅的ではありません。
図6 概念図(ベクター作図)。主な節目を年表にしました[参考資料2・1]。節目の選び方は本記事のもので、網羅的な年表ではありません。

2025年10月8日の公式発表は、受賞理由を「金属–有機構造体の開発」とし、MOFを「金属イオンが要石として働き、長い有機分子でつながれて、大きな空洞をもつ結晶になった材料」と説明しています。 設計次第で、特定の物質を捕らえて貯蔵するように作れる、化学反応を進められる、電気を通せる、とも書かれています事実[参考資料1]。

  • Robson:1989年、銅イオンと、各腕の先に銅イオンに引かれる化学基をもつ四本腕の分子を組み合わせ、整った広い結晶を作りました。ダイヤモンドに無数の空洞が入ったようなもので、可能性を直ちに見抜いたものの、不安定ですぐ崩れた、とされます事実[参考資料1]
  • Kitagawa と Yaghi:1992〜2003年に、それぞれ独立に画期的な発見をしました。Kitagawaは、気体が構造に出入りできることを示し、MOFが柔らかく作れると予測しました。Yaghiは、非常に安定なMOFを作り、合理的な設計で新しい望ましい性質を与えられることを示しました事実[参考資料1]
  • 用途の記述:公式発表は、MOFが「砂漠の空気から水を集める、二酸化炭素を捕まえる、有毒な気体を貯蔵する、化学反応を触媒する」ことに使える、と書きます。続けて、PFASを水から分離する、環境中の微量の医薬品を分解する、CO₂を捕まえる、砂漠の空気から水を集めるなどが、人類の大きな課題の解決に寄与しうるとしています事実[参考資料1]
公式発表の用途の記述本稿で確認できた根拠と段階
砂漠の空気から水を集めるFathiehら(2018):試作装置の屋外試験、1 kgあたり1日夜100 g(第8章)。製品は未確認事実[参考資料16]
CO₂を捕まえるLinら(2021)の論文、Svante の会社の記述(第7章)事実[参考資料14・21]
化学反応を触媒するMondlochら(2015)の化学兵器剤の分解(実験室)事実[参考資料17]
有毒な気体を貯蔵する本稿では、一次資料を確認できなかった
PFASの分離、環境中の医薬品の分解ノーベル賞の技術背景文書の図の説明にUiO-67がPFAS吸着に使われたとあるが、元の論文は本稿では確認していない事実[参考資料2]

ノーベル賞の公式発表は、発見・開発への評価です。個々の製品の性能・安全・実用化の時期を保証するものではありません(解説)。

10. 素材技術者の視点②:実験室の結晶から、使える形へ

素材技術者の読みどころ:粉末の最高値と、成形体の実力は別の話
  • 形:Svanteは、MOFを構造化した吸着体(フィルター)に塗布して使うと述べています事実[参考資料21]。粉末のままでは、装置の圧力損失・飛散・充填密度が問題になるためと考えられます(解説)。構造化の総説も、構造化が実験室と産業のギャップを埋める鍵だと論じます事実[参考資料18]
  • 機械的な強さ:UiO-66系は10 トン/cm²でも結晶性が残ると報告されています事実[参考資料10]。成形(加圧・結合剤)で細孔がふさがるか、比表面積がどう変わるかは、骨格ごとに違い、本稿の出典では数字を確認していません(解説)
  • 水との付き合い:CALF-20は、相対湿度40%でもCO₂を優先して吸着すると報告されています事実[参考資料14]。実際の排ガスは水分を含むので、湿度条件つきの選択性を見ます(解説)
  • 数字の読み方:比表面積は活性化とモデル(第3・5章)、水回収の収量は条件(第8章)、会社の生産能力は「能力」であって実績ではありません(第7章)
  • 量産の難しさ:ソルボサーマル法は、バッチ効率・有機溶剤の量・高温高圧が課題とされます事実(会社の記述)[参考資料19]。原料(リンカー)のコスト・溶剤の回収も、素材側の設計項目です(解説)

11. 確認できなかったこと/このシリーズの他の記事との分担

(1) 本稿の調査範囲で確認できなかったこと

  • BASFなど、Atomis・Svante以外の企業のMOFの生産量・仕様・価格の公式資料は確認できませんでした未確定/将来
  • Atomisの量産しているMOFの種類・収率・純度、CubiTanの材料とMOFの関係、SvanteのCALF-20の生産規模(トン数)は、公式ページで確認できませんでした
  • 公式発表が挙げる有毒な気体の貯蔵、PFASの分離、医薬品の分解について、本稿では一次の論文を確認していません
  • MOFの毒性・環境への放出(金属の溶出など)と、規制上の位置づけは、本稿では確認していません。個別の安全の助言もしません
  • 比表面積の測定の規格(吸着法の国際規格)の番号・内容は、規格団体の公式ページで確認できなかったため記載していません
  • 水回収のコスト・サイクル寿命・長期の実地データは確認できませんでした未確定/将来

(2) このシリーズの他の記事との分担

ナノ材料全般の定義・規制は「ナノ材料の定義と規制」編、MOFを含む多孔体のガス分離を含む水素関連は水素エネルギー分野の記事、薬物送達でのMOFの利用は「リポソームとナノキャリア」編で扱います。グラフェンの比表面積の計算は、本シリーズ「グラフェン」編にあります。

この記事のまとめ
  • MOFは、金属ノードと有機リンカーの結晶で、ノーベル化学賞(2025年)の対象です。受賞者は北川進・Robson・Yaghi事実
  • 比表面積は、モデルと活性化で読みます。HKUST-1はBET 約690、Langmuir 約920 m²/g(約1.33倍)、MOF-210は6,240と10,000超(1.60倍以上)事実本稿の計算
  • 安定性は熱・化学・機械の3軸で別です。UiO-66系は500 ℃超、ZIF-8は550 ℃・沸騰アルカリ水事実
  • 工業生産は、会社の発表の範囲で確認できます。Atomisは2023年に20 t/年のパイロットを竣工、Svanteは固体吸着剤CALF-20を提供事実(会社の発表)
  • 水回収の屋外試験は、1 kgあたり1日夜100 g。1日2.8 Lの実験室の見込みとは条件が違います事実本稿の計算
  • 公式発表の用途は「寄与しうる」という表現で、段階は用途ごとに違います。事実

12. 評価・標準の読み方

初めて読むときは、「どの数字が大きいか」より先に、次の順番で比較の条件を揃えてください。以下は本記事の編集上の確認手順で、規格が定める合格値や試験条件ではありません。

① 何を測ったか
吸着量、選択性、再生エネルギー、安定性。単位と、材料・部品・完成システムのどこを測った値かを確認します。
② どの条件か
温度、圧力、混合ガス、湿度、活性化、吸脱着の繰返し。条件が異なる結果は、まず別の結果として読みます。
③ 比較で間違えやすい点
単一ガス・乾燥条件での吸着量を、実排ガスの分離性能と同じにしない
④ 規格の役割は何か
規格番号・名称・発行年・適用範囲を発行機関の資料で確認します。試験方法、安全性、相互接続、管理体制のどれを扱う規格かを分けて読みます。規格名の記載だけで、試験実施・適合・認証まで済んでいるとは判断しません。

比較を始めるためのメモ:対象/単位/測定条件/試料数とばらつき/比較対象/規格の版/確認できない点を、ひとまとまりで残しましょう。公開概要しか確認できない規格の数値条件や合格基準は、推測して補いません。

13. 用語集

MOF(金属有機構造体)
金属イオンと有機リンカーからなる、空洞をもつ配位ネットワーク。IUPACの定義では、配位高分子の一部。
金属ノード/SBU
骨格の「節」にあたる金属イオンまたは金属クラスター(二次構成単位)。
リンカー
金属ノードをつなぐ有機分子。長さを変えると空洞の大きさが変わる。
等網状(isoreticular)
同じ網(トポロジー)と同じノードで、リンカーだけを替える設計の考え方。
BET比表面積
窒素の吸着から求める比表面積。MOFのような微細孔の材料では、適用範囲に注意が要る。
Langmuir比表面積
単分子層吸着のモデルから求める比表面積。同じ材料でもBETより大きく出ることがある。
活性化
細孔から溶媒を除いて、吸着できる状態にする工程。方法によって細孔が崩れる。
ソルボサーマル法
溶媒中で加熱して結晶を成長させる、実験室の標準的な合成法。
物理吸着
化学結合を作らない弱い力での吸着。脱離にかかるエネルギーが小さい。
CALF-20
亜鉛系のMOF。CO₂を物理吸着し、湿度のある排ガスでも使えると報告された。
構造化(成形)
粉末のMOFを、フィルター・ペレットなどの使える形にすること。
PFAS
有機フッ素化合物の総称。水中の除去が課題で、MOFでの吸着が研究されている。

14. 参考資料(一次情報)

  1. The Royal Swedish Academy of Sciences 「Press release: Nobel Prize in Chemistry 2025」2025年10月8日(英語) — nobelprize.org
  2. The Nobel Committee for Chemistry 「Scientific Background to the Nobel Prize in Chemistry 2025: Metal–Organic Frameworks」2025年10月8日(PDF、英語) — nobelprize.org
  3. Furukawa H, Cordova KE, O’Keeffe M, Yaghi OM 「The Chemistry and Applications of Metal-Organic Frameworks」Science 2013;341:1230444(総説) — doi.org/10.1126/science.1230444
  4. Yaghi OM, Li G, Li H 「Selective binding and removal of guests in a microporous metal–organic framework」Nature 1995;378:703–706 — doi.org/10.1038/378703a0
  5. Kondo M, Yoshitomi T, Matsuzaka H, Kitagawa S, Seki K 「Three-Dimensional Framework with Channeling Cavities for Small Molecules: {[M2(4,4′-bpy)3(NO3)4]·xH2O}n (M = Co, Ni, Zn)」Angew Chem Int Ed Engl 1997;36:1725–1727 — doi.org/10.1002/anie.199717251
  6. Li H, Eddaoudi M, O’Keeffe M, Yaghi OM 「Design and synthesis of an exceptionally stable and highly porous metal-organic framework」Nature 1999;402:276–279 — doi.org/10.1038/46248
  7. Chui SS-Y ほか 「A Chemically Functionalizable Nanoporous Material [Cu3(TMA)2(H2O)3]n」Science 1999;283:1148–1150 — doi.org/10.1126/science.283.5405.1148
  8. Férey G ほか 「A Chromium Terephthalate-Based Solid with Unusually Large Pore Volumes and Surface Area」Science 2005;309:2040–2042 — doi.org/10.1126/science.1116275
  9. Park KS ほか 「Exceptional chemical and thermal stability of zeolitic imidazolate frameworks」Proc Natl Acad Sci USA 2006;103:10186–10191 — doi.org/10.1073/pnas.0602439103
  10. Cavka JH ほか 「A New Zirconium Inorganic Building Brick Forming Metal Organic Frameworks with Exceptional Stability」J Am Chem Soc 2008;130:13850–13851 — doi.org/10.1021/ja8057953
  11. Walton KS, Snurr RQ 「Applicability of the BET Method for Determining Surface Areas of Microporous Metal−Organic Frameworks」J Am Chem Soc 2007;129:8552–8556 — doi.org/10.1021/ja071174k
  12. Farha OK ほか 「Metal–Organic Framework Materials with Ultrahigh Surface Areas: Is the Sky the Limit?」J Am Chem Soc 2012;134:15016–15021 — doi.org/10.1021/ja3055639
  13. Howarth AJ ほか 「Chemical, thermal and mechanical stabilities of metal–organic frameworks」Nat Rev Mater 2016;1:15018(総説) — doi.org/10.1038/natrevmats.2015.18
  14. Lin J-B ほか 「A scalable metal-organic framework as a durable physisorbent for carbon dioxide capture」Science 2021;374:1464–1469 — doi.org/10.1126/science.abi7281
  15. Kim H ほか 「Water harvesting from air with metal-organic frameworks powered by natural sunlight」Science 2017;356:430–434(要旨の紹介文を確認) — doi.org/10.1126/science.aam8743
  16. Fathieh F ほか 「Practical water production from desert air」Sci Adv 2018;4:eaat3198 — doi.org/10.1126/sciadv.aat3198
  17. Mondloch JE ほか 「Destruction of chemical warfare agents using metal–organic frameworks」Nat Mater 2015;14:512–516(要約を確認) — doi.org/10.1038/nmat4238
  18. Asgari M ほか 「The structuring of porous reticular materials for energy applications at industrial scales」Chem Soc Rev 2025;54:4701–4744(抄録の一部を確認) — doi.org/10.1039/d5cs00166h
  19. Atomis 「Technologies」技術のページ(日本語)、「量産化技術」の記述(2026年10月確認)。会社の記述 — atomis.co.jp
  20. Atomis 「次世代高圧ガス容器『CubiTan』が特殊効果演出領域で導入開始」ニュースリリース、2026年9月1日(日本語) — atomis.co.jp
  21. Svante Technologies 「Technology」製品・技術のページ(英語、2026年10月確認)。会社の記述 — svanteinc.com

15. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
2025年10月8日、ノーベル化学賞が北川進(京都大学)、Richard Robson(メルボルン大学)、Omar M. Yaghi(カリフォルニア大学バークレー校)に「for the development of metal–organic frameworks」で贈られると発表。金属イオンが要石で、長い有機分子でつながれ、大きな空洞をもつ結晶。砂漠の空気から水を集める、CO₂を捕まえる、有毒な気体を貯蔵する、化学反応を触媒する、に使える。Robson(1989年)、Kitagawa・Yaghi(1992〜2003年)の業績。数万種のMOF、PFAS分離・医薬品分解・CO₂回収・水回収に寄与しうるという記述ノーベル賞 公式発表[参考資料 1]https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2025/press-release/事実
技術背景文書:IUPACによるMOFの定義、1997年のKitagawaのCH₄・N₂・O₂の吸着、1998年のYaghiのZn(BDC)(Langmuir約300 m²/g)、MOF-5(Langmuir約2,900 m²/g、細孔容積約0.6 cm³/mL)、HKUST-1(240 ℃まで安定、細孔約1 nm、BET約690・Langmuir約920 m²/g)、等網状(IRMOF-16:2.8 nm、IRMOF-74-XI:最大9.8 nm)、MOF-177(Langmuir約4,500)、MOF-210(Langmuir>10,000、BET約6,240)、DUT-60(BET約7,839、細孔容積約5.0 cm³/g)、NU-110(BET約7,140)、CO₂吸着量2,400 mg/g、Al-soc-MOF-1のメタン容量、産業界の役割(新しい企業、費用効果と拡大可能性)ノーベル賞 技術背景文書[参考資料 2]https://www.nobelprize.org/uploads/2025/10/advanced-chemistryprize2025.pdf事実
20,000種超のMOF、典型的な多孔度が結晶体積の50%超、比表面積1,000〜10,000 m²/g(総説)Furukawaら 2013(Science)[参考資料 3]https://doi.org/10.1126/science.1230444事実
1995年、微細孔のMOFを報告(「MOF」の語を使い始めた論文)。ゲスト除去後も350 ℃まで熱的に安定Yaghiら 1995(Nature)[参考資料 4]https://doi.org/10.1038/378703a0事実
Co・Ni・Znと4,4′-ビピリジンの配位高分子が、CH₄・N₂・O₂を1〜36 atmで骨格の変形なしに可逆に吸着。チャネル約3×6 Åと約3×3 ÅKondoら 1997(Angew Chem)[参考資料 5]https://doi.org/10.1002/anie.199717251事実
MOF-5:脱溶媒後も結晶性を保ち、300 ℃まで加熱しても安定、ほとんどの結晶性ゼオライトより高い見かけの比表面積と細孔容積Liら 1999(Nature)[参考資料 6]https://doi.org/10.1038/46248事実
HKUST-1:細孔約1 nm、アクセス可能な多孔度約40%、骨格は240 ℃まで安定Chuiら 1999(Science)[参考資料 7]https://doi.org/10.1126/science.283.5405.1148事実
MIL-101:単位胞約702,000 ų、細孔約30〜34 Å、窒素のLangmuir比表面積約5,900 ± 300 m²/gFéreyら 2005(Science)[参考資料 8]https://doi.org/10.1126/science.1116275事実
ZIF-8・ZIF-11:Langmuir 1,810 m²/g、550 ℃まで熱的に安定、沸騰したアルカリ水と有機溶媒に耐えるParkら 2006(PNAS)[参考資料 9]https://doi.org/10.1073/pnas.0602439103事実
Zr₆クラスターのMOF:分解温度500 ℃超、ほとんどの化学薬品に耐え、10 トン/cm²でも結晶性が残る。多くのMOFの低い安定性が大規模利用を制限するCavkaら 2008(JACS)[参考資料 10]https://doi.org/10.1021/ja8057953事実
BETの適用:シミュレーションで、BET法の比表面積が結晶構造から計算した到達可能な表面積とよく一致。微細孔・細孔を満たす吸着の問題の指摘Walton・Snurr 2007(JACS)[参考資料 11]https://doi.org/10.1021/ja071174k事実
超臨界CO₂による活性化で、BET約7,000 m²/gの2つのMOFを得た。仮想的な最大比表面積約14,600 m²/g以上(従来の想定約10,500)Farhaら 2012(JACS)[参考資料 12]https://doi.org/10.1021/ja3055639事実
MOFの化学的(酸・塩基・中性の水溶液)・熱的・機械的安定性の総説(設計原理と合成戦略)Howarthら 2016(Nat Rev Mater)[参考資料 13]https://doi.org/10.1038/natrevmats.2015.18事実
CALF-20(亜鉛系):CO₂を物理吸着、相対湿度40%でも優先して吸着、150 ℃の排ガス条件で性能を維持、結合部位が細孔の中心で水の水素結合網ができないLinら 2021(Science)[参考資料 14]https://doi.org/10.1126/science.abi7281事実
相対湿度20%で1 kgのMOFあたり1日2.8 Lの水(太陽光で加熱)Kimら 2017(Science)[参考資料 15]https://doi.org/10.1126/science.aam8743事実
MOF-801を最大1.2 kg使った試作装置の実験室とアリゾナの砂漠での試験、1 kgあたり1日夜のサイクルで100 g、自然冷却と周囲の日射のみ。MOF-303は2倍超。零下の露点でも動作Fathiehら 2018(Sci Adv)[参考資料 16]https://doi.org/10.1126/sciadv.aat3198事実
広いチャネルと優れた化学的安定性をもつ多孔性MOFが、リン酸エステル結合をもつ化学兵器剤の触媒的な分解に効果的Mondlochら 2015(Nat Mater)[参考資料 17]https://doi.org/10.1038/nmat4238事実
多孔性の網状材料の構造化(成形)が、実験室の研究と産業の利用のギャップを埋める鍵であるという論旨(抄録の一部)Asgariら 2025(Chem Soc Rev)[参考資料 18]https://doi.org/10.1039/d5cs00166h事実
Atomis:京都大学の北川進特別教授の研究を基盤、ソルボサーマル法の課題(バッチ効率、大量の有機溶剤、高温高圧)、複数の独自製法の開発、2023年に20 t/年のパイロットプラント竣工、10万種以上の構造データベース(POROS)会社の記述。 Atomis 技術ページ[参考資料 19]https://www.atomis.co.jp/technology/事実
Atomis:2026年9月1日、特殊効果演出の会社が、液化炭酸ガスの容器として次世代高圧ガス容器「CubiTan」の活用を開始。この発表にCubiTanの材料とMOFの関係の記載はない会社の発表。 Atomis ニュース(2026年9月)[参考資料 20]https://www.atomis.co.jp/news/3855/事実
Svante:MOFを構造化した吸着体(フィルター)に塗布した固体吸着剤を炭素回収の次世代の商用技術とする、CALF-20はCO₂濃度12%以上に最適、低濃度にはBASFのOASE blueを提供会社の記述。 Svante 技術ページ[参考資料 21]https://www.svanteinc.com/technology/事実
HKUST-1の920÷690、MOF-210の10,000÷6,240、NU-110÷グラフェン両面(2,630)の約2.7倍、MOF-801 1.2 kg×100 g/kg=約120 g/日、Kimの2,800 g÷Fathiehの100 g=約28倍、20 t/年÷365日=約55 kg/日本稿の計算。グラフェン両面の値(結合長0.142 nm)、1.2 kgの全量が同じ収量で働くこと、年間100%稼働は本稿が置いた仮定。水回収の2つの数字は条件が違う値の比。本稿の計算
BASFなど他社のMOFの生産量・仕様、Atomisの量産品の種類・収率・純度とCubiTanの材料、SvanteのCALF-20の生産規模、有毒ガスの貯蔵・PFAS分離・医薬品分解の一次論文、MOFの毒性・規制、吸着の規格、水回収のコストと寿命本稿の調査範囲で一次資料を確認できなかったため記載していない(解説)。未確定/将来
比表面積の数字を活性化・モデル・吸着ガスで読む整理、安定性を熱・化学・機械の3軸で見る整理、粉末の最高値と成形体の実力は別という読み方、公式発表の用途の記述と確認できた段階の対応、用途段階の整理、年表の節目の選び方公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各著者・機関が表明した見解ではない。解説
図1・図3・図5・図6が説明のための作図であること。図2は本稿の計算を含む作図であること。ヒーロー画像と図4がAI生成イメージであること本記事による注記。解説

最終更新:2026年10月9日/出典は一次情報(Nobel Prizeの公式発表と技術背景文書、査読論文、企業の公式ページ)に限定しています。構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 他社のMOFの生産量・仕様、Atomisの量産品の詳細とCubiTanの材料、SvanteのCALF-20の生産規模、有毒ガスの貯蔵・PFAS分離・医薬品分解の一次論文、MOFの毒性・規制、吸着の規格、水回収のコストと寿命は、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 企業の記述(Atomis、Svante)は会社の発表であり、第三者の検証ではありません。ノーベル賞の公式発表は発見・開発への評価で、個々の製品の性能や安全を保証するものではありません。 第3章・第8章の値は、試料・活性化・条件が異なる報告で、優劣を示すものではありません。 図はすべて説明用の概念図です。図1・図3・図5・図6はベクター作図、図2は本稿の計算を含む作図、ヒーロー画像と図4はAI生成イメージであり、いずれも実際の結晶構造・顕微鏡像・製品の実物を示すものではありません。