COMPANY PROFILE / 機能性材料
プロテリアル
― 旧・日立金属。ネオジム磁石「NEOMAX」で、重希土を使わない焼結磁石を前面に出している非上場の素材メーカー
プロテリアルは、2023年1月に日立金属から社名を変えた素材メーカーで、特殊鋼、電線、磁性材料などを手がけます。 本稿は、そのうち磁石(NEOMAX)と軟磁性材料に絞ります。1982年にネオジム磁石を発明した住友特殊金属の流れをくみ、 焼結ネオジム磁石の特許を世界で600件超持つと会社は述べています。 2025年7月には重希土を使わない焼結磁石(磁気特性の代表値つき)を発表し、2026年10月にはドイツのFEVと、 その磁石とアモルファス合金を組み合わせたxEV駆動モーターのシミュレーション検証を公表しました。 会社の現在の形態は非上場で、2022年10月に Bain Capital 主導の連合が公開買付けを完了しています。 磁石単独の売上や生産量は、本稿が確認した範囲では開示されていません。
- 30秒でわかるプロテリアルと、機能性材料での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(簡潔に)
- 機能性材料にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は機能性材料で何を目指しているか
- 機能性材料分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるプロテリアルと、機能性材料での立ち位置
Bain Capital主導の連合が株主2022年10月に公開買付けが完了。2023年1月に社名変更
部品・デバイス(従)中心:ネオジム焼結磁石 NEOMAX と軟磁性材料
世界600件超うち日本が200件超(会社の2025年8月の告知)
共同検証(2026年10月)シミュレーションの結果で、製品の保証値ではない
プロテリアルは、重希土を使う量を減らす技術(粒界拡散)と、まったく使わない焼結磁石の双方を、世代ごとの磁気特性の表で公開している数少ない磁石メーカーの一つです 事実。 同時に、焼結ネオジム磁石の特許を持つ立場から、信越化学工業、TDK、欧州の磁石メーカーなどに特許を実施許諾していることも公式に告知しています。 一方、上場企業ではないため磁石の売上・利益・設備投資は開示されておらず、統合報告書が「積極投資の重点分野」として挙げるのは航空機と、パワーエレクトロニクス用の窒化ケイ素基板などです 未確定/将来。 磁石は大きな事業ですが、会社の投資の物語の中心かどうかは、公開資料からは読み取れません。
2. ロゴと社名の表記について
表記の注意:社名は2023年1月4日に「日立金属株式会社」から「株式会社プロテリアル(Proterial, Ltd.)」に変わりました。 会社の統合報告書は、社名の「PRO」を Professional・Progressive・Proactive の3つの意味で説明しています。 会社の歴史は1910年にさかのぼり、公式サイトは「現在の法人は2021年4月に正式に設立された」と記しています。 磁石のブランド名「NEOMAX」は、住友特殊金属が前身です。日立グループの会社ではなくなっている点に注意してください。 ロゴは公式サイトに掲載されているものです。
公式サイト:https://www.proterial.com/e/3. 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
プロテリアルは素材・原料メーカーが主で、焼結ネオジム磁石(NEOMAX)、フェライト磁石(NMF)、ボンド磁石、軟磁性材料(アモルファス合金 Metglas、ナノ結晶 FINEMET、ソフトフェライト)を持ちます。 磁気応用品やコア部品も扱うため、部品・デバイスの側面もあります。 永久磁石の基本は本シリーズの技術解説「永久磁石とレアアース」、重希土を使わない・減らす磁石は「レアアースフリー磁石」で扱っています。 同じ分野の企業解説では、同じ焼結磁石を作る信越化学工業(本稿の特許許諾先でもある)と、新しい材料の Niron Magnetics、 希土類の採掘・分離から磁石までの MP Materials があります。
4. 会社の規模(簡潔に)
会社全体の規模を簡潔に示します。磁石の事業規模は、本稿が確認した範囲では数値で得られません 事実。
| 指標 | 数値 | 時点・条件 |
|---|---|---|
| 連結売上高 | 7,473億円 | 2026年3月期(会社の表記は FY2025) |
| (参考)連結売上高 | 1兆332億円 | 2024年3月期(FY2023、統合報告書2024)。その後に売却された事業を含む期間がある |
| 従業員数 | 連結 16,456人 単体 5,101人 | 2026年3月末 |
| (参考)連結従業員数 | 21,456人 | 2024年3月末(統合報告書2024) |
| 資本金 | 10億円 | 2026年7月1日 |
| 代表者 | Sean M. Stack(代表取締役会長・社長・CEO) | 2026年7月1日 |
売上高と従業員数の減少は、会社が2023年12月〜2024年8月に北米の自動車用鋳鉄の子会社(Waupaca Foundry)、配管機器の子会社と事業を売却したことを含んで比較する必要があります 事実。 売却の影響額は会社が数値を示していないため、本稿は計算しません。 磁石(磁性材料)の売上・営業利益は、本稿が読んだ会社の資料のテキストには記載がなく、確認できませんでした 未確定/将来。
5. 機能性材料にかけているリソース
4点それぞれについて、一次情報で確認できたか/できなかったかを表にします。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 磁石の人員数は確認できなかった。2025年11月に営業部門(Marketing & Sales Division)内に「モーターソリューション部」を設置し、素材単体ではなくモーター・駆動システム視点で価値を検証・提案する体制をとる。全社の研究組織としてGlobal Research & Innovative Technology Center(GRIT、2017年設立) | 事実(人数は確認できず) |
| 金(設備投資・研究開発) | 磁石の設備投資・研究開発費は確認できなかった。統合報告書2024は、積極的な投資先として航空機分野(経済産業省の供給確保計画の認定、補助金は最大75億円の見込み)と、窒化ケイ素・炭化ケイ素基板を挙げる。磁石向けの金額は記載なし | 事実(磁石向けは確認できず) |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | 2007年に住友特殊金属の磁石事業と統合(NEOMAX)。2016年に中国・南通でネオジム磁石の製造会社を設立。2018年に Santoku Corporation を子会社化(ネオジム磁石の原料から製品までの流れの最適化が目的、会社の記述)。2023年12月〜2024年8月に Waupaca Foundry、Ward, Inc.、配管機器事業を売却。特許の実施許諾:Neorem Magnets Oy、Vacuumschmelze、信越化学工業、TDKなど | 事実 |
| 大学・研究機関・公的資金との連携 | 物質・材料研究機構(NIMS)と磁石メーカー4社による「磁石材料オープンプラットフォーム(Magnet MOP)」に参加(2022年5月発足、希少元素に頼らない高性能永久磁石の開発が目的。会社の記述)。島根大学の次世代たたら共創センター(NEXTA)で、アモルファスモーターコアの量産化の研究に参加。FEV(ドイツ)との共同検証 | 事実 |
主要な製品・設備の状況
| 製品 | 内容(会社の発表) | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 焼結ネオジム磁石 NEOMAX(重希土を減らす拡散技術 M-Diffusion) | NMX-G1NH:重希土の使用量が従来の拡散技術の約5分の1(Tb換算のシミュレーション値)。Br 1.42 T、HcJ 1,830 kA/m以上(代表値) | 量産中(2019年開始) | 2019年〜 | 出典6 |
| 重希土フリー磁石 第3世代 NMX-F1SH-HF | Br 1.40 T、HcJ 1,671 kA/m以上(代表値)。量産工場が試作サンプルを提供 | サンプル提供 | 2025年7月 | 出典6 |
| 重希土フリー磁石 第4世代 NMX-G1NH-HF | Br 1.42 T、HcJ 1,830 kA/m以上。研究設備で達成した値。量産工場は2026年4月から試作サンプルの依頼に対応する予定(会社の計画) | 研究設備で達成/サンプルは計画 | 2025年7月(発表) | 出典6 |
| フェライト磁石 NMF(試作モーター) | BEV・PHEVの駆動モーターに必要な出力100 kW超を、フェライト磁石のモーターで確認(会社の検証) | 検証 | 2023〜2024年 | 出典12 |
| アモルファス合金のモーターコア用接着積層リボン | 連続積層・接着で占積率90%超(会社の記述) | 開発 | 2024年2月 | 出典12・13 |
| 磁石の工場 | 磁石の製造拠点の所在地・能力は、公式の英語サイトと統合報告書2024のテキストでは確認できなかった | ― | ― | 出典1・3 |
会社の2025年7月の発表は、モーターが100℃以上の高温にさらされるため、磁石の耐熱性(保磁力 HcJ)を確保する目的で、これまで重希土(テルビウム・ジスプロシウム)を加えてきたと説明します 事実。 同社の資料の表では、重希土を加える従来の組成のNMX-S41EHは Br 1.28 T・HcJ 1,989 kA/m以上、 従来の拡散技術のNMX-U48SHは Br 1.40 T・HcJ 1,830 kA/m以上、独自の拡散技術 M-DiffusionのNMX-G1NHは同じHcJでBr 1.42 T、 重希土の使用量は従来の拡散の約5分の1とされます(Tb換算のシミュレーション値)。 さらに重希土フリーの世代は、第1世代 NMX-S49F(Br 1.39 T、HcJ 1,273 kA/m以上)から、第4世代 NMX-G1NH-HF(Br 1.42 T、HcJ 1,830 kA/m以上)へ、 HcJ の下限を約1.4倍に上げた(1,830÷1,273)と読めます 本稿の計算。 会社は、その改善を「不純物の制御と、組成・プロセスの最適化」によると説明しますが、具体的な組成や熱処理条件は明かしていません。
これらはすべて会社の代表値で、保証値ではなく、測定温度などの条件は発表文に記載がありません。 また第4世代の値は研究設備で達成したもので、量産品の値ではありません。他社の磁石の値と並べて優劣を論じることは、本稿はしません。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1910年 | 前身の戸畑鋳物が創業(会社の沿革) | 鋳物から始まった素材メーカー |
| 1956年〜1967年 | 日立製作所の金属事業を引き継ぎ、日立金属工業を設立。1967年に日立金属に社名変更 | 日立グループの素材会社に |
| 1982年 | 住友特殊金属が、ネオジム磁石を発明(会社の記述) | NEOMAXの源流 |
| 2003年 | 米国ハネウェルのアモルファス金属事業(Metglas)を買収 | 軟磁性材料の強化 |
| 2007年 | 日立金属と住友特殊金属の磁性材料事業を統合し、NEOMAXが発足 | 磁石事業の統合 |
| 2016〜2018年 | 中国・南通でネオジム磁石の製造会社を設立(2016年)。Santoku Corporation を子会社化(2018年) | 生産と原料の流れの強化 |
| 2019年 | M-Diffusionを用いた重希土削減磁石の量産を開始(会社の表) | 重希土を減らす量産品 |
| 2022年10月 | Bain Capital、Japan Industrial Partners(JIP)、Japan Industrial Solutions(JIS)の連合が日立金属の株式の公開買付けを完了。日立製作所は、買付け後の自己株式取得への売却により連結子会社から外れる予定と発表 | 日立グループを離れ、プライベート・エクイティ主導へ |
| 2023年1月 | 社名を日立金属からプロテリアルに変更。連合による資本再編(統合報告書) | 新体制 |
| 2023年12月〜2024年8月 | Waupaca Foundry、Ward, Inc.、配管機器事業を売却 | 事業ポートフォリオの見直し |
| 2024年2月 | モーターコア用のアモルファス合金接着積層リボンを開発 | 磁石以外のモーター材料 |
| 2025年7月 | 重希土フリーの焼結ネオジム磁石(第3・第4世代)を発表 | 重希土の使用量を減らすのではなく、ゼロにする方向 |
| 2025年8月 | 焼結希土類磁石の特許と実施許諾の状況を告知(中国の輸出規制強化への懸念に言及) | 特許の位置づけの明示 |
| 2025年11月 | 営業部門内に「モーターソリューション部」を設置 | 素材から駆動システムの視点へ |
| 2026年10月 | FEVと、アモルファス合金コアと重希土フリー磁石を組み合わせたxEV駆動モーターの設計をシミュレーションで検証。アーヘン自動車コロキウム(10月5〜7日)で発表 | 材料の価値をシステムで示す試み |
7. 今後の計画
試作サンプルの依頼に対応2025年7月発表時の会社の計画(実施の確認は未)
いずれも会社の計画・発言であり、達成された事実ではありません 未確定/将来。 FEVとの検証値(出力300 kW、モーター重量27%減、効率97.9%など)はシミュレーション結果で、会社自身が「保証された製品値ではない」と明記しています。
次はいずれも公式資料で確認できませんでした 未確定/将来。
磁石(NEOMAX)の売上・営業利益・生産量・世界シェア/磁石の工場の所在地と能力/ 磁石向けの設備投資額/第4世代の重希土フリー磁石の試作サンプルを実際に提供した事実/ 上場廃止の公告そのもの(会社の統合報告書は2023年1月の資本再編と新しい株主を述べているが、本稿は上場廃止の公文書を確認していない)/ Santoku Corporation の現在の保有状況/NIMSの公式ページでの Magnet MOP の記載。
8. この会社は機能性材料で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 磁石単体ではなく、モーター・駆動システムの価値で売ろうとしている | 2025年11月にモーターソリューション部を設置。FEVとの共同検証は、磁石、アモルファスコア、ギア比まで含めたモーター設計 | 推測 |
| 差別化の軸は重希土の削減・ゼロ化と、特許 | 世代ごとの磁気特性表の公開。会社は、重希土フリー技術の開発と特許出願に集中していると記載。拡散・重希土フリー・低酸素プロセスの特許は、原則として許諾していないと記載 | 事実 |
| 特許の実施許諾は、事業の一部として管理されている | 2025年8月の告知で、許諾先を製造拠点ごとの条件つきで列挙。信越化学工業・TDKには中国での製造販売に制限 | 推測 |
| 磁石は会社の投資の最優先分野ではない可能性 | 統合報告書2024が積極投資の例として挙げるのは航空機分野と、窒化ケイ素・炭化ケイ素基板 | 推測 |
| 磁石の代替(フェライト磁石)も同時に提案している | フェライト磁石のモーターで100 kW超の出力を確認し、駆動モーター用途を提案開始と記載 | 事実 |
2025年8月の告知は、中国による「希土類材料の輸出規制の強化」により、希土類磁石の製造・供給に深刻な影響が出ることへの懸念から出した、と説明しています 事実。 そのうえで、600件超の特許のうち、重希土の拡散・削減・フリー・低酸素プロセスの特許は原則として許諾していない、とも述べています。 ここから、会社は供給網の混乱のなかで、特許を通じた磁石業界での立ち位置を明確にしたと読めます。 ただし、会社がその意図を述べたわけではありません 未確定/将来。本稿の解釈です。
9. 機能性材料分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
磁石の製品は、焼結ネオジム磁石 NEOMAX、高性能異方性リング磁石、フェライト磁石 NMFです。 用途として、自動車、電子機器、家電のモーターが挙げられ、磁気応用品としてリニアモーター、ボイスコイルモーター、シンクロトロン用アンジュレーターなども扱います 事実。 表面処理は、アルミニウム被膜、ニッケルめっき、エポキシ被膜、不動態化(M-1)から選べます(標準被膜厚:アルミ2 μm以上、ニッケル5 μm以上、エポキシ7 μm以上。いずれも標準値)。
| 世代・技術(会社の呼称) | 材料コード | 重希土の使用量(比較) | Br [T] | HcJ [kA/m] | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 重希土を加える従来組成 | NMX-S41EH | 10(Tb換算) | 1.28 | 1,989以上 | 比較の基準 |
| 従来の拡散技術 | NMX-U48SH | 1 | 1.40 | 1,830以上 | 代表例 |
| M-Diffusion | NMX-G1NH | 約1/5 | 1.42 | 1,830以上 | 量産中(2019年〜) |
| M-Diffusionの改良 | NMX-H1EH | 約1/5 | 1.45 | 1,989以上 | 試作サンプル提供可 |
| 重希土フリー 第1世代 | NMX-S49F | 0 | 1.39 | 1,273以上 | ― |
| 重希土フリー 第2世代 | NMX-S49FH | 0 | 1.39 | 1,512以上 | ― |
| 重希土フリー 第3世代 | NMX-F1SH-HF | 0 | 1.40 | 1,671以上 | 試作サンプル提供可(2025年7月) |
| 重希土フリー 第4世代 | NMX-G1NH-HF | 0 | 1.42 | 1,830以上 | 研究設備で達成。量産工場のサンプルは2026年4月から(計画) |
上の値は会社の2025年7月の発表の表(メーカー公称の代表値で、保証値ではない)です。重希土の使用量は「Tb換算のシミュレーション値」で、基準(従来の拡散技術)を1として示されています。測定温度などの条件は記載されていません 事実。 このほか軟磁性材料では、アモルファス合金 Metglas(2003年から変圧器用のコア材を提供。待機時損失を従来材の約3分の1にすると会社は説明)、 ナノ結晶軟磁性材料 FINEMET(1988年に世界で初めて商品化)、ソフトフェライト、メタルパウダーコアなどを扱います。
FEVとの検証は、モーターのコアをケイ素鋼板から、鉄損の小さいアモルファス合金の薄帯に替え、磁石も重希土フリーのネオジム磁石にした設計の電磁界シミュレーションです。 基準モデル(230 kW、8極72スロット、最高回転数14,900 rpm)に対し、検証案は12極72スロット、最高回転数20,000 rpm、ギア比10.8→14.4で、 ピーク出力300 kW、モーター重量72.8%(27%減)、WLTPクラス3での効率は95.5%→97.9%という結果です 事実。 材料側から見ると、アモルファス合金は高回転での鉄損が小さいため、最高回転数を上げて小型化する設計が成り立ちます。 ただしアモルファスは硬くて薄く、打ち抜きや積層の難しさが課題で、会社は連続積層・接着で占積率90%超を実現したとしています。
会社は、これらの数値は特定条件のシミュレーション結果で、製品の保証値ではないと明記しています。 また重希土フリー磁石の磁気特性は発表時点で研究設備での達成値を含み、量産品の実機での検証は、この発表からは分かりません。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 重希土・希土類の調達 | 会社は、中国の輸出規制の強化が磁石の製造・供給に深刻な影響を及ぼすことへの懸念を示す。中国商務部・税関総署は2025年4月4日の公告第18号で、ジスプロシウム・テルビウムを含む中重希土の関連品目に輸出管理を実施した。その後の措置の経緯は、本稿では政府文書で確認していない | 事実 |
| 磁石事業の透明性 | 磁石の売上・利益・工場の能力が確認できず、事業の採算や競争力を外部から検証できない | 事実 |
| 重希土フリー磁石の量産化 | 第4世代は研究設備での達成値で、量産と顧客評価の実績は発表時点で未確認 | 事実(目標は未確定) |
| 特許をめぐる環境の変化 | 特許には期限があり、また許諾先の拡大・各社の技術進歩で、特許による立場は変わりうる。許諾の範囲や条件が事業に与える影響は公表されていない | 推測 |
| 投資優先度と事業再編 | 会社は2023〜2024年に複数の事業を売却し、航空機・パワーエレクトロニクスへの投資を優先。磁石への資金配分は公表されていない | 推測 |
| 株主構成 | プライベート・エクイティ主導の株主のもとで、将来の事業の売却・再編が起こりうる。会社は特定の計画を示していない | 推測 |
12. 用語集
- NEOMAX
- プロテリアルの希土類焼結磁石のブランド名。ネオジム・鉄・ボロン系。
- M-Diffusion
- プロテリアル独自の拡散技術。重希土の使用量を従来の拡散より減らす。
- 重希土フリー(HRE-free)
- テルビウム・ジスプロシウムなどの重希土を使わない磁石。
- 残留磁束密度(Br)
- 磁化後に磁石に残る磁束の強さ。単位は T(テスラ)。
- 保磁力(HcJ)
- 逆向きの磁界に耐えて磁化を保つ強さ。単位は kA/m。
- アモルファス合金
- 結晶構造を持たない金属。電磁鋼板より鉄損が小さい。Metglas はプロテリアルの商品名。
- FINEMET
- プロテリアルのナノ結晶軟磁性材料。ノイズ対策やコア材に使われる。
- Magnet MOP
- NIMSと磁石メーカーによる、希少元素に頼らない磁石材料の開発プラットフォーム。

13. 出典
- プロテリアル Corporate Summary(会社概要)。創業、資本金、代表者、従業員数(2026年3月末)、2026年3月期の連結売上高、本社。 https://www.proterial.com/e/corp/profile.html
- プロテリアル Corporate History (Detailed)(沿革)。日立金属から社名変更(2023年1月)、NEOMAX、中国の磁石製造会社設立など。 https://www.proterial.com/e/corp/history.html
- プロテリアル 製品ページ「Magnetic Materials」。NEOMAX、NMF、リング磁石、磁気応用品。 https://www.proterial.com/e/products/magnetic/
- プロテリアル 製品ページ「Nd-Fe-B Magnets NEOMAX」。表面処理の種類と標準被膜厚、重希土削減材料の記述。 https://www.proterial.com/e/products/magnetic/neomax.html
- プロテリアル ニュースリリース「Proterial and FEV Jointly Validate xEV Traction Motor Concept Using Amorphous Alloy and High-Performance Heavy-Rare-Earth-Free Magnet Technology」(2026年10月5日)。 https://www.proterial.com/e/press/2026/n1005.html
- プロテリアル ニュースリリース「Proterial Develops High-Performance Heavy-Rare-Earth-Free Neodymium Sintered Magnet for Electric Vehicle Driving Motors」(2025年7月22日)。 https://www.proterial.com/e/press/2025/n0722b.html
- プロテリアル 告知「Sintered Nd-Fe-B Magnets」(2025年8月5日)。焼結希土類磁石の特許と実施許諾先、中国の輸出規制への言及。 https://www.proterial.com/e/pdf/pi20250805ec.pdf
- プロテリアル The Proterial Report 2024「CEO’s Message」。新しい株主、事業の売却、航空機・窒化ケイ素基板への投資。 https://www.proterial.com/e/sustainability/integrated_report/pdf/2024_06.pdf
- プロテリアル The Proterial Report 2024「Overview of Corporate Governance」。Bain Capital主導の連合による2023年1月の資本再編。 https://www.proterial.com/e/sustainability/integrated_report/pdf/2024_25.pdf
- プロテリアル The Proterial Report 2024「Milestones in Creating Value」。NEOMAX(2007年)、Santoku Corporation(2018年)。 https://www.proterial.com/e/sustainability/integrated_report/pdf/2024_07.pdf
- プロテリアル The Proterial Report 2024「Proterial’s Strengths of Value Creation」。Magnet Materials Open Platform(NIMSと磁石メーカー4社)。 https://www.proterial.com/e/sustainability/integrated_report/pdf/2024_09.pdf
- プロテリアル The Proterial Report 2024「Providing Environmental Value As a Green Enabler」。xEV向け磁石の供給量(会社推計)、フェライト磁石モーター、アモルファスコア。 https://www.proterial.com/e/sustainability/integrated_report/pdf/2024_13.pdf
- プロテリアル The Proterial Report 2024「R&D Activities & Achievements」。NMX-G1NH、フェライト磁石モーターの検証など。 https://www.proterial.com/e/sustainability/integrated_report/pdf/2024_15.pdf
- プロテリアル The Proterial Report 2024「Proterial’s Businesses」。2023年度の連結売上高・従業員数、事業の構成。 https://www.proterial.com/e/sustainability/integrated_report/pdf/2024_10.pdf
- プロテリアル The Proterial Report 2024(軟磁性材料の特集)。FINEMET、島根大学の次世代たたら共創センター(NEXTA)。 https://www.proterial.com/e/sustainability/integrated_report/pdf/2024_12.pdf
- Bain Capital Bain Capital-Led Consortium Announces Successful Close of Tender Offer for Hitachi Metals’ Common Shares(2022年10月26日)。 https://www.baincapital.com/news/bain-capital-led-consortium-announces-successful-close-tender-offer-hitachi-metals-common
- 日立製作所 Notice Regarding Completion of Tender Offer for Shares of Hitachi Metals by K.K. BCJ-52(2022年10月26日)。 https://www.hitachi.com/New/cnews/month/2022/10/f_221026.pdf
- 中華人民共和国商務部・税関総署 公告2025年第18号「一部の中重希土関連品目に輸出管理を実施する決定」(2025年4月4日、英語版)。 https://english.mofcom.gov.cn/Policies/AnnouncementsOrders/art/2025/art_0dd87cbee7b045bf93fabe6ab2faceee.html
- プロテリアル 公式サイト(ロゴの取得元)。 https://www.proterial.com/e/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月10日/Troy Technical
本稿は、プロテリアルの公式サイトとニュースリリース、統合報告書、特許の告知、Bain Capital・日立製作所の発表、中国商務部の公式発表に基づきます。磁気特性などの数値は会社の代表値であり、保証値ではありません。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。