COMPANY PROFILE / 機能性材料
村田製作所
― 「良い電子部品は良い材料から」。チタン酸バリウムの誘電体と、PZTの圧電セラミックスを自社でつくる
村田製作所は、スマートフォンやサーバーに大量に載る積層セラミックコンデンサ(MLCC)で知られる電子部品メーカーです。 1944年に、セラミックコンデンサの製造から始まりました。 本稿は、同社の全体ではなく、機能性セラミックス、つまり「誘電体(MLCC)」と「圧電セラミックス」に絞って扱います。 同社は技術の説明で、MLCCの誘電体にチタン酸バリウム(BaTiO3)、圧電材料にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を使うと明記しています。 2026年3月期のキャパシタ(MLCCを含む区分)の売上は9,364億円で、全社売上の51.1%です。 一方、圧電部品だけの売上は、どの開示にも載っていません。本稿は推計せず、確認できたことと、できなかったことを分けて書きます。
- 30秒でわかる村田製作所と、機能性材料での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(全社は簡潔に)
- 機能性材料にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は機能性材料で何を目指しているか
- 機能性材料分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかる村田製作所と、機能性材料での立ち位置
(従:素材・原料)セラミック原料も自社でつくる
PZT圧電セラミックス会社の技術説明に明記
キャパシタ売上が30.0%増サーバー・データセンター向けが中心
村田製作所の機能性セラミックスは、2つの顔を持っています 事実。 ひとつは、売上の半分を占める誘電体(MLCC)です。 これは同社の中核事業で、会社の中期方針も「キャパシタで世界シェア1位をめざす」と書いています。 もうひとつは、超音波センサー、マイクロブロア、アクチュエータなどに使う圧電セラミックスで、同社の技術ページでは「PZTを使う」と書かれていますが、事業としての規模は開示されていません。 本稿は、規模の大きいMLCCと、規模が見えない圧電を、同じ重みで扱いません。 圧電側は、EUの鉛の適用除外の期限(2027年)という、規制の時間軸があることも押さえます。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は「株式会社村田製作所」で、英文では Murata Manufacturing Co., Ltd.、ブランド表記は Murata。 本稿では会社全体の事業(高周波モジュール、電池、通信モジュールなど)は扱いません。 ロゴは同社の公式サイトのベクター画像を取得して設置しています。
公式サイト:https://corporate.murata.com/en-global3. 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
本稿では、村田製作所を部品・デバイスメーカー(主たる類型)に分類し、セラミック原料を自社でつくる点で素材・原料メーカー(従たる類型)にもまたがるとみます 本稿の計算。 有価証券報告書には、「原料の製造」を主な事業に含む事業所(滋賀県の Yokaichi Plant など)と、中国のFoshan Murata Materials(原料製造、出資比率90.0%)が載っています。 同社は、材料技術の方針を「良い電子機器は良い電子部品から、良い電子部品は良い材料から」と説明し、無機・金属・有機の材料技術を持つとしています。 本シリーズの技術解説「強誘電体と誘電材料」「圧電材料と無鉛化」で扱う物性や無鉛化の動きは、そちらに任せ、本稿は村田製作所の事業と製品に絞ります。
4. 会社の規模(全社は簡潔に)
会社全体の規模を、機能性セラミックスに関わる部分を中心に示します 事実。
| 指標(3月期、百万円) | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 売上収益(全社) | 1,743,352 | 1,830,856 | 前期比5.0%増 |
| 営業利益 | 279,702 | 281,835 | 売上収益営業利益率は15.4% |
| キャパシタ(MLCCを含む) | 831,845 | 936,418 | 全社売上の51.1%。前期比12.6%増 |
| インダクタ・EMIフィルタ | 201,273 | 223,316 | フェライト系の部品が中心(本稿では詳述しない) |
| 機能デバイス(センサー、タイミングデバイス) | 97,822 | 107,074 | 前期比9.5%増。圧電部品の内訳は非開示 |
| 研究開発費(全社) | 149,274 | 158,870 | うち「コンポーネント」事業は57,083百万円 |
| 設備投資(全社) | 180,471 | 247,778 | うち「コンポーネント」事業は187,749百万円 |
| 連結従業員(人) | 72,572 | 74,302 | 各期末 |
| 最新の四半期(4〜6月、百万円) | 2025年 | 2026年 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益(全社) | 416,154 | 502,264 | 20.7%増 |
| キャパシタ | 217,330 | 282,508 | 30.0%増(サーバー・データセンター向けが主) |
上の数字は全社または事業区分のもので、「キャパシタ」の中にはMLCC以外も含まれ、MLCC単独の売上は開示されていません。 決算短信は「キャパシタ区分にMLCCを含む」と書くのみです。 同様に、圧電部品の売上・利益・人員・研究開発費も、決算短信にも有価証券報告書にも出てきません 未確定/将来。 「機能デバイス」区分の説明には、センサーとタイミングデバイスに加えて「アクチュエータの売上が増えた」との記述があるものの、圧電セラミックスを使う製品の合計は読み取れません。 なお、会社は2027年3月期の通期予想(売上収益1兆9,600億円、営業利益3,800億円)を出していますが、これは会社の予想です 未確定/将来。
5. 機能性材料にかけているリソース
4点それぞれについて、公式資料で確認できたか/できなかったかを示します。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 全社の連結従業員は74,302人(2026年3月期末)。研究開発拠点は、京都の本社・長岡事業所と、2020年開設の「みなとみらいイノベーションセンター」(横浜市)など。材料研究や圧電部門の人数は非公表 | 事実/確認できず |
| 金 | 研究開発費は全社で1,589億円(「コンポーネント」事業で571億円)。設備投資は全社で2,478億円(「コンポーネント」事業で1,877億円)。2027年3月期の設備投資は2,500億円、研究開発費は1,670億円を計画(会社の予想) | 事実 |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | 原料製造の中国子会社 Foshan Murata Materials(資本金68.9百万ドル、出資比率90.0%)。米国に企業内ベンチャーキャピタルWONDERSTONE Venturesを新設(2026年3月期)。戦略投資は、実行・承認済みの案件で283億円。PCM・圧電に限った買収・出資は確認できなかった | 事実/確認できず |
| 大学・研究機関・公的資金との連携 | 有価証券報告書は、外部との技術交流・共同開発によるオープンイノベーションと、共創プロジェクト「KUMIHIMO Tech Camp with Murata 2025-2026」を挙げる。個別の大学名、圧電・誘電材料に限った公的助成は、本稿が調べた資料では確認できなかった | 確認できず |
主要な設備の状況は次のとおりです。
| 設備 | 工場・設備 | 規模 | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| 部品の生産設備(出雲村田製作所) | 島根県出雲市ほか | 投資予定額 580億円(能力の増加は非公表) | 新設・増強の計画(自己資金) | 2026年3月〜2027年3月 | 出典1 |
| 部品の生産設備(福井村田製作所) | 福井県越前市ほか | 投資予定額 320億円 | 計画(自己資金) | 2026年3月〜2027年3月 | 出典1 |
| 原料・デバイス・モジュールの生産設備(野洲事業所) | 滋賀県野洲市 | 投資予定額 150億円 | 計画(自己資金) | 2026年3月〜2027年3月 | 出典1 |
| タイ・中国(無錫)・フィリピンの生産設備 | 各海外子会社 | 200億円・120億円・80億円 | 計画 | 2026年3月〜2027年3月 | 出典1 |
| セラミック原料などの生産設備 | 提出会社(単体)の機械装置の増加(2026年3月期)として記載 | 金額は非公表 | 導入済み | 2026年3月期 | 出典1 |
有価証券報告書は、同社の製造会社の中に「原料の製造」を行う会社と事業所があること、また2026年3月期に「セラミック原料などの生産設備」への機械装置投資があったことを書いています 事実。 同社の技術ページは、BaTiO3の高純度粉末をサブミクロンまで微細化し、シート成形し、制御した炉で焼結する、という流れを説明しています。 MLCCでは、誘電体粉末の微細化・均一化、シート成形での表面の平滑化が、薄層化・多層化の限界を決めます。 つまり、粉体(原料)から自社で管理することが、部品の性能と信頼性に直結する、という設計です。 同時に、2027年3月期に野洲事業所へ投じる150億円は「原料・デバイス・モジュール」の生産設備とされており、原料の内製の拡大もうかがえますが、原料の生産能力の数値は非公表です 未確定/将来。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1944年10月 | 京都で創業し、セラミックコンデンサの製造を開始 | セラミック誘電体が事業の出発点 |
| 1962年 | Yokaichi Plant(滋賀県)を設置。福井村田製作所に出資 | 国内生産網の拡大の始まり |
| 1983年〜1987年 | 出雲村田製作所(1983年)、金沢村田製作所(1984年)、野洲事業所(1987年)を設立 | 現在も設備投資の対象となる拠点 |
| 1994年 | 中国に無錫村田電子を設立 | 海外の部品生産の拡大 |
| 2025年7月10日 | 0402インチ(1.0×0.5mm)で47µFのMLCCの量産を開始(同社調べで世界初)。0603インチの同容量品に比べ実装面積は約60%減 | 誘電体層と内部電極の微細化の成果 |
| 2026年4月8日 | 車載用のMLCC7品番の量産を開始。1206インチで100µF(これまで1210インチ)、0402インチで1µF(25 Vdc)など。同社調べで、各定格電圧・サイズで世界最大の容量 | 粒子の微細化と均一化の技術の成果と同社が説明 |
| 2026年3月期 | 電子部品業界で初めて、銀のクローズドループ・リサイクルを開始(同社の説明)。米国にCVC「WONDERSTONE Ventures」を新設 | 資源制約への対応と、外部のスタートアップとの連携 |
| 2026年4月30日 | 2026年3月期の決算を発表。MLCCの売上が、サーバー向けを中心に増加 | AI・データセンター需要の取り込み |
7. 今後の計画
会社の予想は、会社の目標であり、達成された事実ではありません 未確定/将来。 決算短信は、売上の増加要因としてサーバー向けのキャパシタと電源モジュールを、減少要因としてスマートフォン向けの多層樹脂基板などを挙げています。 同社の中期方針(Medium-Term Direction 2027)は、エッジデバイス、モビリティ、ITインフラを中核分野とし、キャパシタ、およびインダクタ・EMIフィルタで世界シェア1位をめざすと書いています。
圧電セラミックスの売上目標/MLCCの生産能力の数値/原料の増産量/無鉛の圧電材料の製品化計画/PZTからの切り替えの時期は、公式資料に記載がありません 未確定/将来。
8. この会社は機能性材料で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 機能性セラミックスの事業の中心はMLCCで、圧電は別の位置づけ | キャパシタが売上の51.1%。圧電を使う製品は、売上1,071億円の「機能デバイス」区分(センサー、タイミングデバイス)の一部で、独立した区分や数字がない | 推測 |
| MLCCの競争力を、材料(粉体・組織制御)に置いている | 2026年4月の発表で「独自のセラミック材料と、粒子の微細化・均一化技術」を成果の理由に挙げ、技術ページで、コアシェル構造やNi内部電極への対応を説明している | 事実 |
| AI・サーバー向けの需要に、設備投資を集中している | 2027年3月期の設備投資2,500億円は「サーバー向けに需要が伸びる製品の増産が中心」と決算短信に記載 | 事実 |
| 鉛を含むPZTを、当面は使い続ける前提で事業を組んでいる | 技術ページがPZTを使う圧電材料技術を説明し、無鉛への言及がない。EUの適用除外(2027年末まで)が根拠になりうる | 推測 |
最後の行は、会社の方針ではなく本稿の観察です。 同社の技術ページは、圧電材料の説明でPZTを例に挙げ、温度特性と圧電特性を用途に合わせて設計すると書き、鉛を使わない圧電材料や、その移行に触れていません 事実。 一方、EUのRoHS指令は、圧電セラミックス(PZT)に含まれる鉛を、2027年12月31日までの適用除外としています(第10章)。 ここから、「規制が変わるまでは、PZTを前提に製品を作る」と読むのが自然だと本稿は考えます 未確定/将来。 ただし、無鉛材料の研究を同社が行っていないと言っているわけではありません。公開資料では確認できなかった、というだけです。
9. 機能性材料分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
誘電体:MLCC
同社の技術ページによると、MLCCの誘電体はチタン酸バリウム(BaTiO3)で、容量と耐電圧を決める「決定的な材料」です。 高純度の粉末をサブミクロンまで微細化し、シートに成形して、制御した炉で焼結します 事実。 製造工程は、同社のFAQによれば「内部電極の印刷 → シートの積層 → 圧着 → 切断 → 焼結 → 外部電極の塗布・焼付け → めっき → 測定・梱包」の8工程です。
| 発表(メーカー公称) | 仕様 | 日付・条件 |
|---|---|---|
| 47µF MLCC(GRM158R60E476ME01、GRM158C80E476ME01) | 0402インチ(1.0×0.5 mm)。定格2.5 Vdc、±20%。X5R(−55〜+85℃)とX6S(−55〜+105℃)の2品種。0603インチの同容量品に比べ実装面積は約60%減、同サイズの従来22µF品の約2.1倍の容量 | 2025年7月10日発表。「同社調べ(2025年7月9日時点)で世界初の量産」 |
| 車載用MLCC 7品番(GCM系列) | 2.5〜4 Vdc定格で100µF(1206インチ)、0201インチで2.2µF、25 Vdc定格で0402インチ1µFなど。AEC-Q200の認定品。1206インチ100µFは、従来1210インチだった容量で、実装面積は約36%減 | 2026年4月8日発表。「同社調べ(2026年4月7日時点)で、各定格電圧とサイズの組み合わせで世界最大の容量」 |
圧電セラミックス:超音波センサー・マイクロブロア・アクチュエータ
同社の製品ページによると、圧電セラミックスを使う主な製品は次のとおりです 事実。
| 製品(メーカー公称) | 用途・特徴 | 条件・注記 |
|---|---|---|
| 空中用の超音波センサー | 超音波を空中に出し、物体の反射を受信する。侵入警報、自動ドア、車載の駐車支援での距離測定など。300 kHzの高周波型(二重送り検知用)、40 kHzの開放構造型、48 kHzの防滴型などがある | 同社は「長年にわたる独自の圧電セラミック技術」と説明 |
| マイクロブロア(MZB3005T06) | セラミックの超音波振動を駆動源とする、薄型の圧電ポンプ(エアポンプ) | 駆動共振周波数21.5〜24.5 kHz。流量は18 Vdcで155 mL/min以上、静圧は19.5 Vdcで50 kPa以上。測定は周囲温度18〜28℃、気圧950〜1020 hPa。ポンプの金属表面が60℃を超えると流量と圧力が大きく低下する。自動車用途(付属品を含む)には使えないと明記 |
| 圧電アクチュエータ | 電圧で変位する圧電セラミックスの性質を使い、位置制御や微細な駆動制御に用いる | 個別の仕様は本稿では取り上げない |
同社の技術ページは、MLCC用のBaTiO3の微構造として「強誘電体のコアを、非強誘電体のシェルが包むコアシェル構造」を挙げています 事実。 添加物はシェルに固溶し、シェルとコアの体積比が特性を大きく左右する、と書かれています。 例として、希土類のジスプロシウム(Dy)をシェルに固溶させると、容量の温度特性が平坦になり、部品の寿命が延びると説明しています。 ここで効く設計上のトレードオフは、温度による容量変化の小ささ(シェルを厚く)と、高い容量(強誘電性のコアを大きく)の兼ね合いで、焼成条件と添加量の最適化がその調整になります(技術ページの記述の範囲での整理)。
Ni内部電極:低コストなNi電極を使うには、還元雰囲気で焼いても誘電体が劣化しない「耐還元性」の設計が決定的だと、同社は書いています。 薄層化の過程で不均一や異常部が問題になり、粉末の微細化・均一化と、シート成形時の基材表面の平滑化で信頼性を確保した、という説明です。
希土類(Dy)は、資源制約と、中国の輸出管理(レアアース)の対象になりうる材料です。同社の有価証券報告書は、鉱物資源の逼迫と調達リスクを一般に挙げていますが、Dyの使用量や調達先、代替の状況は開示していません 未確定/将来。
PZT:同社の技術ページは、PZTなどの圧電材料の「圧電特性と温度特性を用途に合わせて設計する」と書き、超音波距離センサーと精密制御のマイクロアクチュエータに必須の機能だとしています。 鉛を含むため、次の規制の位置づけが重要です。
EUのRoHS指令(Directive 2011/65/EU)の附属書IIIは、鉛の適用除外を定めています。 2025年9月8日に採択された欧州委員会委任指令 (EU) 2025/2363(2025年11月21日にEU官報で公表)は、次のとおり定めています 事実。
(1) 7(c)-I「ガラスまたはセラミック(コンデンサの誘電体セラミックを除く。例:圧電デバイス)に鉛を含む電気・電子部品」:2027年6月30日に失効(全カテゴリー)。 (2) 新設の7(c)-VI:「圧電のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックス」と「正の温度係数(PTC)を持つセラミックス」に含まれる鉛:2027年12月31日に失効。 (3) 7(c)-II「定格125 V AC/250 V DC以上のコンデンサの誘電体セラミック」の鉛:2027年12月31日に失効(鉛を含む誘電体の話で、チタン酸バリウム(BaTiO3)の化学式には鉛は含まれません)。
加盟国は2026年6月30日までに国内法を整え、2026年7月1日から適用するとされています(同指令第2条)。 これらは採択・公表済みの規定で、提案段階ではありません。 適用除外は、失効前に更新が申請される場合があり、失効が直ちに使用禁止を意味するかは、更新の可否によります。 村田製作所の個別の製品が、どの除外項目に依拠しているかは、公開資料で確認できませんでした。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| キャパシタへの依存 | 有価証券報告書は、キャパシタが売上の51%を占め、依存度が高いことをリスクとして挙げる。10%超の顧客グループはない | 事実 |
| 需要の変動と販売価格の下落 | 会社の予想は、増産による利益増の要因に対して、販売価格の下落と固定費の増加を減益要因として挙げる。AIサーバー向けの需要に投資を寄せるため、需要の変化の影響を受ける | 事実 |
| 原料と鉱物資源の調達 | 鉱物資源の需給が逼迫し、長期に枯渇のリスクがある。調達の混乱や価格の急騰は生産停止や納期遅延を招きうる、と同社が記載。銀はクローズドループ・リサイクルを開始 | 事実 |
| 鉛の適用除外の期限 | PZT圧電セラミックスの鉛の除外は2027年12月31日に失効(更新は未定)。圧電部品の事業規模は非公表で、影響は評価できない | 事実/確認できず |
| 化学物質規制の強化 | 同社は、製品に含まれる化学物質などの環境規制が強まり、対応費用が増えると見込み、対応が困難な場合は事業の一部撤退もありうるとリスクに書く | 事実 |
| 自動車用途の制限 | マイクロブロアは、自動車用途には使えないと製品ページに明記。圧電製品の用途は個別に確認が必要 | 事実 |
| 競合との価格・容量競争 | 同社自身が、キャパシタで世界シェア1位をめざすと書く一方、他社との比較は有価証券報告書に具体的な社名・数値がない。本稿も優劣を判断しない | 事実 |
12. 用語集
- MLCC(積層セラミックコンデンサ)
- 誘電体セラミックの薄いシートと金属の内部電極を何層も重ね、焼き固めた小型のコンデンサ。
- BaTiO3(チタン酸バリウム)
- 誘電率の高い強誘電体。MLCCの誘電体の主成分として使われる。
- コアシェル構造
- 粒子の中心(コア)と外側(シェル)で性質が違う構造。MLCCの誘電体では、強誘電体のコアを非強誘電体のシェルが包む。
- PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)
- 代表的な圧電セラミックス。圧力を電気に、電気を変形・振動に変える。鉛を含む。
- 圧電
- 力を加えると電圧が生じ、電圧を加えると変形する性質。
- RoHS指令
- 電気・電子機器の特定有害物質(鉛など)の使用を制限するEUの指令。用途ごとに期限付きの適用除外がある。
- AEC-Q200
- 車載用の受動部品に求められる信頼性試験の規格。
- 有価証券報告書
- 日本の上場会社が、金融商品取引法にもとづき提出する年次報告書。

13. 出典
- 村田製作所 有価証券報告書(第90期、2025年4月1日〜2026年3月31日)の英訳版 Annual Securities Report(2026年7月10日に同社サイトで公開。原文は関東財務局に提出)。事業の内容、沿革、研究開発費、設備投資、主要設備と計画、リスク。 https://corporate.murata.com/-/media/corporate/about/newsroom/news/irnews/irnews/2026/0710/90_annualsecuritiesreport.ashx?la=en&cvid=20260709072633000000
- 村田製作所 Consolidated Financial Results for the Year Ended March 31, 2026 (Under IFRS)(決算短信、2026年4月30日)。売上収益、事業区分別の売上、見通し。 https://corporate.murata.com/-/media/corporate/about/newsroom/news/irnews/irnews/2026/0430/25q4-e-fls.ashx?la=en&cvid=20260430013812000000
- 村田製作所 Consolidated Financial Results for the Three Months Ended June 30, 2026 (Under IFRS)(決算短信、2026年7月31日)。2026年4〜6月の売上。 https://corporate.murata.com/-/media/corporate/about/newsroom/news/irnews/irnews/2026/0731/26q1-e-fls.ashx?la=en&cvid=20260731015630000000
- 村田製作所 Inorganic Materials Technology(公式の技術ページ。BaTiO3、コアシェル構造、Ni内部電極、PZT、フェライトの説明)。2026年10月10日に取得。 https://corporate.murata.com/en-global/technology/technology-platform/materials-technology/inorganic-materials
- 村田製作所 Materials Technology(公式の技術ページ。材料技術の方針)。2026年10月10日に取得。 https://corporate.murata.com/en-global/technology/technology-platform/materials-technology
- 村田製作所 Murata Begins World’s First Mass Production of 47µF Multilayer Ceramic Capacitor in 0402-inch Size(2025年7月10日)。 https://www.murata.com/news/capacitor/ceramiccapacitor/2025/0710
- 村田製作所 Murata begins mass production of seven automotive MLCCs with world-leading capacitance for their rated voltage and size(2026年4月8日)。 https://www.murata.com/en-us/news/capacitor/ceramiccapacitor/2026/0408
- 村田製作所 What is the production process of Multilayer Ceramic Capacitors?(公式FAQ)。2026年10月10日に取得。 https://www.murata.com/support/faqs/capacitor/ceramiccapacitor/conf/0002
- 村田製作所 Ultrasonic Sensors(公式製品ページ)。2026年10月10日に取得。 https://www.murata.com/en-us/products/sensor/ultrasonic
- 村田製作所 Micro Mechatronics(マイクロブロア、アクチュエータ)。2026年10月10日に取得。 https://www.murata.com/en-us/products/mechatronics
- 村田製作所 Microblower MZB3005T06(公式製品ページ。仕様と使用上の注意)。2026年10月10日に取得。 https://www.murata.com/en-us/products/mechatronics/fluid/overview/lineup/microblower_mzb3005t06
- 欧州委員会 Commission Delegated Directive (EU) 2025/2363 of 8 September 2025 amending Directive 2011/65/EU as regards an exemption for lead in glass or ceramic components(OJ L, 21.11.2025)。EU官報(Publications Office経由で本文を確認)。 http://data.europa.eu/eli/dir_del/2025/2363/oj
- 村田製作所 公式サイト(ロゴの取得、会社概要の確認)。 https://corporate.murata.com/en-global
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月10日/Troy Technical
本稿の数値は、村田製作所の有価証券報告書・決算短信・公式の技術ページ・製品ページと、EU官報に載る公式文書に基づきます。製品の性能値は同社の説明(メーカー公称)で、測定条件が異なる値を並べて優劣を判断していません。「世界初」「世界最大」は同社調べの主張です。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。