COMPANY PROFILE / 機能性材料
アスペン・エアロゲル
― 「空気が97%」のシリカ素材を、EV電池の熱暴走対策と石油・LNG設備の断熱に売る会社
Aspen Aerogels(アスペン・エアロジェルズ)は、シリカエアロゲルをブランケット(布のように曲がるシート)にして量産している米国の素材会社です。 会社の説明では、シリカエアロゲルは体積の97%が空気で、熱を伝えにくいのが特徴です。 売り先は大きく2つあります。ひとつは製油所・LNG設備などの配管の断熱材(エネルギー産業向け)、もうひとつは電気自動車(EV)の電池パックで熱暴走の広がりを抑える薄い遮熱材(PyroThin)です。 2025年12月期の売上は271.1百万ドルで、前年から40%減りました。理由は、最大顧客のGM向けの需要が北米のEV生産の減少で落ち込んだことです。 さらに2026年には、主力工場のある East Providence で火災(1月)と爆発事故(4月8日)が起き、5月に段階的な再開に入っています。 本稿は、何を作り、誰に売り、どこで作り、いま何が起きているかを、米国SECへの提出書類を中心に整理します。
- 30秒でわかるAspen Aerogelsと、機能性材料での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- 機能性材料にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は機能性材料で何を目指しているか
- 機能性材料分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるアスペン・エアロゲルと、機能性材料での立ち位置
ノースボロー30 Forbes Road
(従:部品)エアロゲルを作り、EV向けは加工部品にして納める
ブランケット体積の97%が空気(会社の説明)
エネルギー産業 102.2単位は百万ドル。2025年12月期
Aspenは「新しい用途(EV)で量産を立ち上げたが、その売上が1社の需要に大きく左右された素材会社」です 事実。 EV向けの遮熱材(Thermal Barrier)の売上は、2023年に110.1百万ドル、2024年に306.8百万ドル、2025年に168.9百万ドルと、2年で急増し、次の年に急減しました。 10-Kは、2025年にGMが需要を減らし、それが事業に「大きな悪影響」を与えたと書いています。 一方、石油・ガス設備向けのエネルギー産業向け断熱材は、2008年の17.2百万ドルから2025年の102.2百万ドルまで、年平均11%で伸びてきた長期の事業です。 この会社を読むときは、素材(エアロゲル)の価値と、1つの用途・1社の顧客への集中という事業構造の弱さを分けて見る必要があります。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Aspen Aerogels, Inc.、通称は Aspen。 製品ブランドは Pyrogel(高温用)、Cryogel(低温・極低温用)、PyroThin(EV電池用)で、いずれも同社の商標です。 プロセスシミュレーションのソフトで知られる別の会社(Aspen Technology)とは関係がありません。 ロゴは同社の公式サイトのベクター画像を取得して設置しています。
公式サイト:https://www.aerogel.com/3. 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
本稿では、Aspenを素材・原料メーカー(主たる類型)に分類し、EV向けでは部品(従たる類型)にもまたがるとみます 本稿の計算。 中心にある材料はシリカエアロゲルのブランケットで、機能は「熱を通しにくくすること(断熱・遮熱)」です。 10-Kは、製造工程の最後に「加工(Fabrication)」として、切断・積層・多層部品の生産があると書いています。 EV向けのPyroThinは、材料そのものではなく、顧客の電池パックに合わせて加工した多層部品として納められます。 本シリーズの技術解説「ハイドロゲルとエアロゲル」で扱うエアロゲルの種類や性質は、そちらに任せ、本稿はAspenの事業と製品に絞ります。
4. 会社の規模
Aspenは比較的小さな上場会社なので、全社の数字をそのまま示します 事実。
| 指標(12月期、百万ドル) | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 売上(合計) | 238.7 | 452.7 | 271.1 |
| エネルギー産業向け | 128.6 | 145.9 | 102.2 |
| EV向け遮熱材(Thermal Barrier) | 110.1 | 306.8 | 168.9 |
| 純損益 | ▲45.8 | 13.4 | ▲389.6 |
| 研究開発費 | 16.4 | 18.1 | 13.4 |
| 出荷量(百万平方フィート) | 28.4 | 28.5 | 20.6 |
| 項目 | 内容 | 時点 |
|---|---|---|
| 従業員 | 854人(米国278人、米国外576人。メキシコの従業員の多くは労働組合の対象) | 2025年12月31日 |
| 2026年上半期の売上 | 87.7百万ドル(前年同期は156.7百万ドル、44%減)。EV向け45.7、エネルギー産業向け42.0 | 2026年6月30日までの6か月 |
| 2026年4〜6月の売上 | 49.8百万ドル(前年同期は78.0百万ドル)。純損失23.3百万ドル | 2026年第2四半期 |
| 現金 | 2025年末は制限なしの現金等が156.9百万ドル、2026年6月末は151.7百万ドル | 各期末 |
| 特許 | 登録済み400件、出願中438件(米国と外国) | 2025年12月31日 |
2025年の純損失389.6百万ドルの大部分は、建設を中止した第2工場(ジョージア州 Statesboro)の減損286.6百万ドルなどの一時的な費用です 事実。 10-Kは、この種の減損は2026年には繰り返さないため、2026年は純損失が改善する見込みと書いています。 同時に、10-Kと2026年6月期の10-Qは、EV向け遮熱材の売上が2026年に前年より減ると見込んでいます 未確定/将来。 損失の大きさだけでは、素材の価値を判断できません。
5. 機能性材料にかけているリソース
4点それぞれについて、公式資料で確認できたか/できなかったかを示します。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 従業員854人(2025年末)。研究・設計の拠点として、2023年に開設した Advanced Thermal Barrier Center(マサチューセッツ州 Marlborough、約59,000平方フィートの設計・試作拠点)がある。研究開発に携わる人数は非公表 | 事実/確認できず |
| 金 | 研究開発費13.4百万ドル(2025年、売上の約4.9%)。設備などへの投資キャッシュは、2024年が86.3百万ドル、2025年が37.4百万ドル。2026年の設備投資は、East Providence の復旧費用を除いて10百万ドル未満を見込む(会社の見通し) | 事実 |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | メキシコの加工会社 OPE Manufacturer Mexico は、Prodensa との契約で設立し、のちに名目額で買収(10-K)。Statesboro の工場資産は売却先を探している(2026年8月の発表では、売却の基本合意書が期限切れで、買い手を募集中) | 事実 |
| 大学・研究機関・公的資金との連携 | 米国エネルギー省(DOE)の融資事務局への融資の申請は、2025年に取り下げ。大学・研究機関との共同研究は10-Kに記載なし(同社の事例集には、大学の蒸気配管での導入例があるが、これは顧客としての利用) | 事実/確認できず |
| 企業との連携 | GMからは、最大100百万ドルの融資枠の提供を受けたが、一度も引き出さず、2024年8月に終了。Cabotとは特許の相互ライセンス契約。ExxonMobil、TechnipFMCとは技術・商業面の関係(第9章) | 事実 |
主要な製品・設備の状況は次のとおりです。
| 製品/設備 | 工場・設備 | 規模 | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| エアロゲルのブランケット(全品種) | 米国ロードアイランド州 East Providence(自社保有。約148,000平方フィートの製造施設。2008年から操業) | 出荷量 2025年に20.6百万平方フィート(能力の数値は非公表) | 稼働中。2026年1月に火災、4月8日に爆発、5月14日に段階的な再開 | 2026年1〜5月 | 出典1・2・3 |
| エネルギー産業向けの一部品種 | 中国の外部製造委託先(社名は非公表) | 非公表(購入義務の最低数量なし) | 稼働中(East Providence の停止中も供給を補った) | 2026年 | 出典1・2 |
| PyroThinの加工(切断・積層) | メキシコの OPE Manufacturer Mexico(10-Kの賃借物件の表では、メキシコの Monterrey に約266,000平方フィート) | 非公表 | 稼働中 | 2025年末 | 出典1 |
| 第2工場(Statesboro) | ジョージア州 | ― | 建設は2025年2月に中止。資産は売却予定 | 2025年2月〜 | 出典1・4 |
10-Kが挙げる製造工程は、(1) シリカの前駆体をエタノールに溶かし、触媒を加えて「ゾル」にする → (2) 繊維のバッティング(綿状の補強材)と合わせて流し込み、ゲルにする → (3) 流体に浸して「熟成」させる → (4) 超臨界状態で溶媒(エタノール)を抜いて乾燥ブランケットにする → (5) 加熱して残ったエタノール・塩・水を除く → (6) 加工 → (7) 熱伝導率や撥水性の品質検査です 事実。 一般にゲルを普通に乾かすと、細孔が毛管力でつぶれて収縮します。超臨界で溶媒を抜くのは、この収縮を避けて多孔構造を保つためで、コストを押し上げる工程の一つと考えられます(一般的な説明であり、同社の資料の記述ではありません)。 原料コストは、製品売上に対して2023年に36%、2024年に38%、2025年に42%でした(10-K)。 また10-Kは、シリカの前駆体(シラン)の需給のゆがみで、価格が大きく上がったことがあると書いています。
2026年4月の爆発は、「特定の高温オーブン」から始まったと、予備的な報告で述べられています(会社の発表)。 どの工程のオーブンだったか、原因が何だったかは、調査中として公表されていません 未確定/将来。 エタノールなど可燃性の溶媒を使う工程があることは10-Kで確認できますが、事故との関係を本稿は推定しません。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2008年 | East Providence の工場の操業を開始。PyrogelとCryogelを発売 | エネルギー産業向けの事業の出発点 |
| 2020〜2021年 | GMと、EV電池用の多層遮熱部品の供給契約を締結 | EV向けの量産事業の始まり |
| 2022年11月 | GMと、最大100百万ドルの融資契約。のちに引き出し期限などを修正し、2024年に終了(引き出しはなし) | 顧客が設備投資の資金面を支える形だった |
| 2023年 | Toyota、Scania、ACC、Audi、Volvo Truck、欧州の大手電池メーカーと、遮熱材の量産契約。Marlborough の設計・試作拠点を開設 | 顧客がGM以外にも広がった |
| 2024年 | 売上452.7百万ドル(2023年は238.7百万ドル)。8月に新しい融資枠(MidCap Loan Facility、定期ローン125百万ドル)を設定し、転換社債150百万ドルを買い戻し | EV向けの最盛期 |
| 2025年2月 | 再編計画を発表。Statesboro の建設を中止し、DOE融資の申請を取り下げ、人員を削減 | 需要の見込みに合わせて投資を絞った |
| 2025年 | 売上が40%減の271.1百万ドル。GMは最大顧客のままだが、その需要が減少 | 北米のEV生産の減少が直撃 |
| 2026年1月 | East Providence で、排ガス処理設備を損傷する火災 | 操業上の支障の始まり |
| 2026年4月8日 | East Providence で爆発。生産スペースの一部が損傷し、操業を一時停止。従業員11人が病院で診察を受け、その後退院 | 主力工場の停止 |
| 2026年5月14日 | 段階的な再開を開始 | 全面復旧の時期は未公表 |
| 2026年8月6日 | 第2四半期の決算を発表。Jaguar Land Rover の次世代の2つの車両アーキテクチャーでPyroThinを受注(量産開始は2027年を予定) | 北米以外(欧州)の顧客が増えている |
7. 今後の計画
会社の見通しは、いずれも会社の目標であり、達成された事実ではありません 未確定/将来。 10-Kと10-Qは、EV向け遮熱材の売上は2026年に前年より減り、エネルギー産業向けは増える見込みだと述べています。 East Providence の復旧は「段階的に立ち上げている」段階で、会社は、再開が見込みどおり進むことを前提に、在庫・外部製造・限定生産で顧客への供給を維持しているとしています。
次はいずれも公式資料で確認できませんでした 未確定/将来。
East Providence の全面復旧の時期/事故の原因と事故による損失の総額(会社は「合理的に見積もれない」と記載)/工場の生産能力の数値/Statesboro 資産の売却の成否/炭素エアロゲル負極材やLFP正極材の商業化の時期と売上。
8. この会社は機能性材料で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| EV向けの量産事業は1社(GM)に大きく依存する構造になった | GMは2025年の売上の59%(2024年は64%)。上位10顧客で売上の約84%。契約はGMに最低購入数量の義務がなく、いつでも解約できる | 事実 |
| 顧客を欧州の自動車メーカーへ分散しようとしている | 2026年8月の発表で、欧州のEV向け売上の見通しを引き上げ、Jaguar Land Rover の受注を発表。10-Kにも、Audi、Scania、Volvo Truck、ACCとの量産契約が書かれている | 推測 |
| 大型の新工場より、既存工場の復旧と外部製造の活用に重心を移している | Statesboro の建設中止、2026年の設備投資は10百万ドル未満(復旧費除く)、中国の外部製造委託先の能力拡大を進めていると10-Q・10-Kに記載 | 推測 |
| エアロゲルを、断熱材から電池材料へ広げる構想がある | 10-Kは「パートナーとの協力で炭素エアロゲル負極材の商業化を進める」と書き、公式サイトにはLFP正極のエアロゲル開発(10Cの充電速度という会社の主張)が載っている。売上への貢献は確認できない | 推測 |
「電池材料への展開」を、会社の公式な計画とは読めません。 10-Kで、炭素エアロゲル負極材は「開発している」「パートナーとの協力が商業化を早めると期待する」という将来の表現にとどまり、売上も出荷量も書かれていません 事実。 公式サイトのLFP正極のページは「10倍のCレート」「単桁の分で満充電が可能」と述べますが、 どの条件・どの試料形態(電極・セル・実験室)での値かが、そのページに書かれていません。 したがって、これらは研究開発の段階の会社の主張であり、量産品の性能ではないと本稿は扱います 未確定/将来。 それでも、10-Kが「エアロゲルの技術基盤を、断熱以外の用途にも使う」と戦略に明記している点から、 EVの遮熱材が伸び悩んだあとに、別の成長の柱を探していると読むのが自然だと本稿は考えます。
9. 機能性材料分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
| 製品(会社の説明) | 用途 | 構成・特徴(メーカー公称) |
|---|---|---|
| Pyrogel XTE | 製油所・石油化学の高温配管の断熱(最も売れている製品) | ガラス繊維で補強。使用の上限温度650℃、100〜400℃で最適化。撥水で蒸気を通すため、保温材の下の腐食(CUI)の危険を減らす |
| Pyrogel HPS | 発電設備など、400℃を超える温度 | 上限温度650℃。高い耐久性 |
| Pyrogel XTF | 火災への備えが必要な箇所 | ガラス繊維とシリカ繊維で補強 |
| Cryogel Z | 低温・極低温(LNGなど) | ガラス・ポリエステル繊維で補強。一体の防湿層つき |
| Spaceloft Subsea | 海洋油田の二重管(パイプ・イン・パイプ) | ガラス・ポリエステル繊維で補強。あらかじめ加工・梱包して出荷 |
| PyroThin | EV・蓄電システムの電池セル・モジュール・パックの間 | 超薄型で軽く、曲がる遮熱材。他の機能層と組み合わせ、熱暴走の伝わりを抑える設計。圧縮パッドの役目も兼ねる、と同社は説明 |
10-Kによると、同社の製品は、エネルギー産業向けでは世界の製油所の30%超(同社の見解)に設置され、EV向けでは5つの大手自動車メーカーの次世代電池システムで使える(認定済み)とされています 事実。 製品の認定は、顧客ごとの社内規格と、ASTM Internationalなどの合意規格を満たすことが前提で、顧客は試験結果を通常公表しない、とも書かれています(ASTMの規格の中身は本稿では扱いません)。
10-Kは、エアロゲルが熱を伝える3つの経路を同時に抑えると説明しています 事実。 (1) 伝導:固体の割合が極めて小さく、骨格を伝わる熱が少ない。 (2) 対流:ナノサイズの細孔の中では気体の動きが制限され、対流が起きない。 (3) 放射:赤外線を吸収する添加剤を加えて、高温での放射による伝熱を減らす。 つまり、「軽い」だけでなく、高温になるほど効いてくる放射の抑え込みに、素材側の設計(添加剤)が入っている点が、同社の製品の設計の核です。
補強:10-Kは、シリカエアロゲルは「通常はもろい」と書いています。 そのためブランケットでは、繊維のバッティングにゲルを含ませる構造にし、使う温度や用途で繊維を変えています(高温用はガラス繊維、火災対策用はガラスとシリカの繊維、低温用はガラスとポリエステルの繊維)。 繊維の種類は、強度だけでなく、使用の上限温度や燃えにくさも決めます。
EV電池では「薄さ」と「遮熱」と「圧縮」のトレードオフ: 同社はPyroThinを、他の機能層と組み合わせた「超薄型・軽量・曲がる」遮熱材として説明し、「エネルギー密度を犠牲にせず」安全の目標を達成できると述べています(会社の主張)。 遮熱の効きは、材料の熱伝導率だけでなく、厚みと、電池セルが膨らんだときの圧縮のされ方で決まります。 この3者の釣り合いが、顧客ごとの設計(10-Kのいう「熱伝導率・厚み・圧縮応答の最適化」)の中身ですが、具体的な熱伝導率や耐熱試験の数値は、公開ページの静的な本文からは確認できませんでした 未確定/将来。
PyroThinの公式ページは、中国の強制国家標準 GB 38031 と、国連のECE/TRANS/180/Add.20 に「適合し、それを上回るのを助ける」と説明しています(会社の主張)。 中国の国家標準の公開システムでは、GB 38031-2025「電気自動車用動力蓄電池の安全要求」が強制標準として登録され、 公布日は2025年3月28日、実施日は2026年7月1日、前版(GB 38031-2020)は廃止と表示されています 事実。 国連の文書は、本稿が公式サイトに接続できなかったため確認できませんでした。 新規格がどの車種にいつから適用されるか(新規の型式承認か、既存車種か)も、本稿では確認していません。 また、Aspenの製品が個別の試験に合格したかどうかは、同社の主張として扱い、本稿は評価しません。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 顧客の集中 | GMが売上の59%、上位10顧客で約84%。GMには最低購入数量の義務がなく、いつでも契約を終了できる。2025年にはGMが需要を減らし、大きな悪影響があった | 事実 |
| EVの需要と制度の変化 | 北米のEV生産の減少、規制や優遇制度の変更で、顧客が生産計画と投資時期を見直している。会社はEV向け売上が2026年に減ると見込む | 事実 |
| 製造拠点の集中と事故 | 主力の製造は East Providence の1拠点。2026年に火災と爆発が続き、再開は段階的。損失総額は見積もれないと会社が記載。保険(財物・事業中断)の請求を進めている | 事実 |
| 資金と借入の条件 | MidCap の借入には最低流動性などの財務条件があり、会社は2025年の売上減を受けて、今後の遵守を保証できないと書く。2025年12月の改定で、最低EBITDAの条件は外れた。現金は2026年6月末に151.7百万ドル | 事実 |
| 特許の弱さ | 10-Kは、エアロゲルが約80年前からの技術で、製造の一般的な技術は特許で守られていないと書く。韓国では、同社の特許について無効の審決が2024年10〜12月に相次ぎ、同社は2025年に控訴して係属中 | 事実 |
| 競合 | 10-Kは、Armacell、Alkegen、IBIDEN、中国の複数社などのエアロゲル企業と、従来型の断熱材を競合に挙げ、競争が強まる見込みと書く | 事実 |
| 原料と調達 | シリカの前駆体の価格の急騰があった。中国の外部製造委託先の事業は、米中関係や中国の法規制の影響を受ける | 事実 |
| Statesboro 資産の売却 | 基本合意書が期限切れとなり、買い手を募集中。2025年末の帳簿価額は32.7百万ドル(売却費用を引いた公正価値に評価替え済みで、18.2百万ドルの損失を計上)。売却額がこれを下回る可能性は残る | 事実 |
| 係争 | 元ポーランドの販売代理店との訴訟が、仲裁を前提に停止中(請求額は16百万ドル超、当初の通知は20百万ドル)。会社は争う方針 | 事実 |
12. 用語集
- エアロゲル
- ゲルから液体を抜いて、骨格を残した超軽量の多孔質固体。シリカ製のものは体積の大半が空気で、熱を伝えにくい。
- ブランケット
- 繊維の綿状のシートにエアロゲルを含ませ、布のように曲がるようにした形。
- 超臨界乾燥
- 溶媒を、液体と気体の区別がない状態にして抜く方法。細孔が毛管力でつぶれるのを防ぐ。
- 熱暴走
- リチウムイオン電池のセルが異常に発熱し、連鎖的に温度が上がる現象。隣のセルへ広がる「伝播」の抑制が課題。
- CUI(保温材下腐食)
- 配管の保温材の下に水がたまり、金属が腐食する問題。
- Thermal Barrier / Energy Industrial
- Aspenの2つの報告セグメント。EV電池向けの遮熱材と、石油・ガス・発電設備向けの断熱材。
- 10-K/10-Q/8-K
- 米国上場企業がSECに出す年次報告書・四半期報告書・臨時報告書。
- GB 38031
- 中国の電気自動車用動力蓄電池の安全に関する強制国家標準。

13. 出典
- Aspen Aerogels, Inc. Form 10-K for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出、2026年3月13日)。事業・製品・製造工程・顧客・売上・費用・減損・リスク・係争・従業員数・特許・財務の数値。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000119312526106453/aspn-20251231.htm
- Aspen Aerogels, Inc. Form 10-Q for the quarterly period ended June 30, 2026(米国SEC提出、2026年8月7日)。2026年上半期の売上、East Providence の事故と再開、保険、見通し。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000119312526340275/aspn-20260630.htm
- Aspen Aerogels, Inc. Form 8-K(2026年4月21日)。East Providence の爆発事故の状況。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000117184326002620/f8k_042126.htm
- Aspen Aerogels, Inc. Press release, Second Quarter 2026 Financial Results(Form 8-K の添付資料99.1、2026年8月6日)。第3四半期の見通し、Jaguar Land Rover の受注、Statesboro の売却の状況。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000117184326005289/exh_991.htm
- Aspen Aerogels, Inc. PyroThin(公式製品ページ。GB 38031などへの言及、量産納入の説明)。2026年10月10日に取得。 https://www.aerogel.com/product/pyrothin/
- Aspen Aerogels, Inc. Pyrogel XTE(公式製品ページ)。2026年10月10日に取得。 https://www.aerogel.com/product/pyrogel-xte/
- Aspen Aerogels, Inc. Extreme Fast Charging LFP Cathode(公式ページ。LFPエアロゲル正極の開発の説明)。2026年10月10日に取得。 https://www.aerogel.com/industries/battery-materials/
- 国家市場監督管理総局・国家標準化管理委員会(中国) 国家標準全文公開システムの検索結果(GB 38031-2025、GB 38031-2020)。2026年10月10日に取得。 https://openstd.samr.gov.cn/bzgk/gb/std_list?p.p1=0&p.p90=circulation_date&p.p91=desc&p.p2=38031
- Aspen Aerogels, Inc. 公式サイト(ロゴの取得、会社概要の確認)。 https://www.aerogel.com/
14. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 正式名称、本社所在地、NYSE上場、デラウェア州法人、子会社 | 事実 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000119312526106453/aspn-20251231.htm |
| 2023〜2025年の売上・セグメント別売上・純損益・研究開発費・出荷量、GM59%(2024年は64%)、上位10顧客約84% | 事実 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000119312526106453/aspn-20251231.htm |
| 従業員854人、特許400件・出願中438件、現金156.9百万ドル、投資キャッシュ37.4・86.3百万ドル | 事実 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000119312526106453/aspn-20251231.htm |
| 体積の97%が空気、3つの伝熱経路への対応、製造工程、原料コストの比率、製品の仕様(650℃など) | 事実 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000119312526106453/aspn-20251231.htm |
| Statesboro の建設中止(2025年2月)、減損286.6百万ドル、損失18.2百万ドル、DOE融資申請の取り下げ、GM融資枠(未引き出し) | 事実 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000119312526106453/aspn-20251231.htm |
| 韓国での特許無効の判断と控訴、Cabotとの相互ライセンス、元ポーランド代理店の係争 | 事実 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000119312526106453/aspn-20251231.htm |
| 2026年上半期の売上、純損失、現金、事故後の再開と保険、2026年の見通し(EV向け減・エネルギー産業向け増) | 事実 | 出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000119312526340275/aspn-20260630.htm |
| 2026年4月8日の爆発、従業員11人、予備報告の高温オーブン、原因は調査中 | 事実 | 出典3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000117184326002620/f8k_042126.htm |
| 第3四半期の見通し、2026年の設備投資、欧州EV向けの見通し、Jaguar Land Rover の受注、Statesboro の売却状況 | 未確定/将来 | 出典4の会社の見通し https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000117184326005289/exh_991.htm |
| PyroThinがGB 38031などへの適合を助けるという主張、量産納入の説明 | 事実 | 会社の主張として出典5 https://www.aerogel.com/product/pyrothin/ |
| Pyrogel XTEの用途と特徴 | 事実 | 出典6 https://www.aerogel.com/product/pyrogel-xte/ |
| LFPエアロゲル正極(10Cの充電速度)の会社の主張 | 未確定/将来 | 出典7の会社の主張 https://www.aerogel.com/industries/battery-materials/ |
| GB 38031-2025が強制標準、公布2025年3月28日、実施2026年7月1日、GB 38031-2020は廃止 | 事実 | 出典8 https://openstd.samr.gov.cn/bzgk/gb/std_list?p.p1=0&p.p90=circulation_date&p.p91=desc&p.p2=38031 |
| 国連のECE/TRANS/180/Add.20、GB 38031の適用範囲と時期 | 未確定/将来 | 公式文書を確認できなかった。本稿では推定しない https://www.aerogel.com/product/pyrothin/ |
| 超臨界乾燥が細孔の収縮を避けるための工程であるという一般的な説明 | 解説 | 本稿の一般的な解説(同社の資料の記述ではない) |
| EV向けが売上の約62%(168.9÷271.1)、研究開発費が売上の約4.9% | 本稿の計算 | 出典1の値からの本稿の計算 |
| Aspenを素材・原料メーカー(主)・部品(従)に分類する区分 | 本稿の計算 | 本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示 |
| 研究開発の人数、製造能力の数値、中国委託先の社名、事故の原因・損失総額、全面復旧の時期 | 未確定/将来 | いずれも非公表または調査中。本稿では推計もしない https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145986/000119312526106453/aspn-20251231.htm |
| 顧客を欧州へ分散しようとしているという読み | 推測 | 見通しの引き上げ・受注発表・量産契約の一覧からの本稿の解釈 |
| 既存工場の復旧と外部製造の活用に重心を移しているという読み | 推測 | 建設中止・設備投資の見通し・外部製造の拡大の記述からの本稿の解釈 |
| 断熱材から電池材料へ広げる構想があるという読み | 推測 | 10-Kの戦略の記述と公式サイトの開発の主張からの本稿の解釈 |
最終更新:2026年10月10日/Troy Technical
本稿の数値は、Aspen Aerogelsが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類と、同社の公式資料に基づきます。製品の性能値は同社の説明(メーカー公称)であり、本稿が検証したものではありません。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。