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表面プラズモン共鳴 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

表面プラズモン共鳴(SPR)
― 金の薄膜の上で、分子の「重さ」を屈折率として読む

SPRは、金などの金属薄膜の表面で起きる光の共鳴を使って、表面に結合した分子を標識なしで、リアルタイムに測る方法です。 測っているのは分子そのものではなく、表面のすぐ近くの屈折率の変化です。 だから素材の側から見ると、主役は数十nmの金膜と、その上に固定した分子の層の2つ。 「何が結合したか」を決めるのは表面の化学で、「どれだけ小さい量まで読めるか」を決めるのは、結合した分子の質量と表面の汚れ(非特異吸着)です。 この記事では、原理(Kretschmann配置)、センサーチップの材料、分子間相互作用の解析での使われ方、局在SPR(LSPR)、検出限界の読み方を、メーカー資料・査読論文にもとづいて整理します。

構成:Biacore(GE Healthcare)の取扱資料と特許、査読論文(Sensors、Analytical Chemistry、Nano Letters、JACS ほか)を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

ヒーロー画像:ベンチトップ型SPR装置にセンサーチップを差し込む手元
概念図(AI生成イメージ)。実験台の上で、金色の薄膜をもつガラスのセンサーチップをプラスチックのカートリッジごと卓上の測定装置に差し込む場面を表現したものです。実在の装置・製品の形や表示ではなく、寸法・色・配置は模式です。
この記事の構成
  1. SPRとは何か(3行でつかむ)
  2. 原理 ― Kretschmann配置で何が起きているのか
  3. 信号の単位と大きさ ― RUと、本稿の計算
  4. センサーチップの材料 ― 金薄膜・密着層・表面修飾
  5. 素材技術者の視点①:金は「感度」、表面層は「選択性と寿命」
  6. 分子間相互作用の解析での使われ方
  7. 局在SPR(LSPR)― ナノ構造で測る
  8. 検出限界の読み方 ― 濃度ではなく、表面の質量から考える
  9. 素材技術者の視点②:汚れの質量が、小さな分子の信号と同じ桁になる
  10. 実用上の位置づけと、確認できなかったこと
  11. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料・論文に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=研究段階・見通しであり、実用上の実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。 本記事は材料・原理・評価の解説であり、診断・治療・測定値の読み方についての医療上の助言や、特定の製品の推奨ではありません。 光を受けるフォトダイオードなどの検出器の話は、本シリーズ「光検出器」編(光通信・フォトニクス)で詳しく扱います。

1. SPRとは何か(3行でつかむ)

  • 何を測るか:ある総説は、SPRを「金・銀・アルミニウムなどの金属薄膜の近くの屈折率の変化を測る」方法と説明しています。表面に抗体や受容体などを固定し、試料を流して、結合による屈折率の増加をリアルタイムに追います事実
  • 何でできているか:Biacore(GE Healthcare)の取扱資料では、代表的なセンサーチップ(Series S CM5)は「薄い金の層をもつガラス板に、カルボキシメチル化デキストランのマトリクスを共有結合させたもの」で、金がSPR信号の発生に必要と説明されています事実
  • どこが難しいか:信号は結合した質量に比例します。分子が小さいほど信号は小さく、表面に付く余計なもの(非特異吸着)の影響を受けやすくなります事実(資料の記載)。具体的な大きさは第3章と第8章で計算します
この記事でいちばん大事な一行

SPRの検出限界は、「濃度」ではなく「表面に積もった質量」から出発します。 同じ信号の大きさでも、抗体のような大きな分子と、分子量数百の小さな分子では、対応する溶液の濃度が桁で変わります(本稿の計算、第8章)。 カタログや論文に「検出限界 ○○」とあっても、何を、どんな条件で、どの定義で測った値かを見ないと比べられません(本記事による解説)。

2. 原理 ― Kretschmann配置で何が起きているのか

総説が述べる市販のSPR装置の構成では、屈折率の高いガラスのプリズムの底面に金の薄膜をつけ、その反対側に試料の溶液を流します。 この配置はKretschmann配置と呼ばれ、全反射を使う方法(ATR)の一種です。 総説には、「光がある角度で金属表面に当たると、光のエネルギーの一部が金属表面の電子と結合してプラズモンとして表面に沿って伝わる。共鳴が起きる角度(SPR角)は、金属表面の近くの物質の屈折率で決まる」と説明されています事実。 Kretschmann配置の名は、1968年にKretschmannとRaetherが報告した、光で表面プラズモンを励起する方法に由来します事実。 SPRをバイオセンシングに使う論文は、1983年にLiedbergらが「気体の検出とバイオセンシングのための表面プラズモン共鳴」の題名で報告しています事実。

SPRの測定配置(Kretschmann配置)と、結合による信号のずれ 入射光 反射光 高屈折率ガラスのプリズム 金薄膜 試料溶液(流路を流れる) 緑=固定した受容体 橙=結合する分子 薄青=光の染み出し(エバネッセント場)が届く範囲 反射光の強さと入射角(模式) 反射光の強さ 結合前 結合後 ずれ = 信号(RU) 入射角 → 共鳴角(反射が最も弱くなる角度)は、表面の屈折率が 増えるほど、大きい角度側へ動く ※ 概念図です。角度・膜厚・屈折率の具体的な値は示していません。分子の大きさと金膜の厚さは同じ縮尺ではありません。 ※ 受容体と結合分子の数や配置は説明用で、実際の密度を示すものではありません。
図1 概念図(ベクター作図)。プリズム・金薄膜・試料溶液の配置と、結合によって共鳴角(反射が最も弱くなる角度)がずれる様子を示します。配置の呼称と「共鳴角が屈折率に依存する」ことは総説[参考資料1]によります。図は説明用で、実際の装置の寸法・角度・信号の形を示すものではありません。

なぜプリズムを使うのかを、光学の一般的な説明として補足します(これは出典付きの事実ではなく、本記事による解説です)。 空気中や溶液中の光は、そのままでは金属表面のプラズモンと結合できません。 高屈折率のプリズムの中で全反射させると、反射面の外側にエバネッセント場(光が短い距離だけ染み出す場)ができ、これが金膜を通ってプラズモンと結合できる条件をつくります。 この染み出しが届くのは表面のごく近くだけで、総説は「金属表面と試料の境界から約300 nm程度」と記し、同じ総説の別の箇所では「金属表面の近く(約200 nm)」とも書いています事実。 同じ総説の中でも数値の書き方が違うことから、この距離は波長・材料・条件に依存する目安として読むのが適切です(本記事による解説)。

反射光を受けて角度や波長のずれを読む部分は、フォトダイオードやイメージセンサが担います。 その材料と動作は、本シリーズ「光検出器」編で扱います。ここでは、「角度(または波長)のずれ」が結合量の信号になる、という点だけ押さえてください。

図2:光学ベンチ上のKretschmann配置(光源・プリズム・金膜の流路・受光部)
図2 概念図(AI生成イメージ)。光源、プリズム、金薄膜の上を試料が流れる小さな流路、反射光を受ける部分を、実験室の光学ベンチの上に並べた様子を表現したものです。実在の装置の形ではなく、配置は図1の模式に対応した例示です。

3. 信号の単位と大きさ ― RUと、本稿の計算

Biacore系の装置では、SPRの応答をRU(resonance unit)で表します。 Biacore ABの特許明細書には、「1 RUは、最小反射強度の角度の0.0001°の変化に相当し、ほとんどのタンパク質などの生体分子では、センサー表面の約1 pg/mm²の濃度変化に対応する」と記されています事実。 取扱資料も、応答は表面上の分子の質量に比例すると説明しています事実。 つまり、SPRは「何個の分子が付いたか」ではなく「何ピコグラムの質量が付いたか」を読む装置です。

本稿の計算:1 RU は何個の分子か、小さな分子はどれだけ小さい信号か

上の「1 RU ≒ 1 pg/mm²」と、取扱資料にある最大応答の式(Rmax = 分析対象の分子量 ÷ 固定した分子の分子量 × 固定量 × 結合比)を使って計算します本稿の計算。

  • 1 RU あたりの分子数:抗体IgG(分子量を150,000と仮定)の場合、1 pg = 10⁻¹² g。10⁻¹² ÷ 150,000 = 6.7×10⁻¹⁸ mol。これにアボガドロ定数 6.02×10²³ をかけて、約4.0×10⁶ 個/mm²。分子量10,000のタンパク質なら約6.0×10⁷ 個/mm²
  • Rmax の例:分子量50,000のタンパク質を5,000 RUぶん固定した表面(結合比1:1と仮定)に、分子量300の小さな化合物が結合すると Rmax = 300 ÷ 50,000 × 5,000 = 30 RU。同じ表面に分子量150,000の抗体が結合すると 150,000 ÷ 50,000 × 5,000 = 15,000 RU。比は 150,000 ÷ 300 = 500倍

前提と限界:分子量・固定量・結合比は本稿が置いた仮定です。実際の最大応答は、固定した分子の活性や立体障害で、計算値より小さくなります(取扱資料にも、理論値は実測値より高くなりやすいと書かれています事実)。 1 RU ≒ 1 pg/mm² は「ほとんどの生体分子」についての目安で、センサーチップの種類や分子で変わりえます。

信号の大きさを見積もる(本稿の計算) 1 RU ≒ 1 pg/mm²(Biacore ABの特許明細書の記載)と、取扱資料のRmaxの式にもとづく 1 pg/mm² = 1 RU(目安) ほとんどの生体分子で Biacore ABの記載 約4.0×10⁶個 1 RUのIgG分子数/mm² 分子量150,000と仮定 本稿の計算 500倍 抗体と小分子のRmaxの比 15,000 RU 対 30 RU 本稿の計算 固定する分子が大きく、結合する分子が小さいほど、最大の信号は小さくなる ※ Rmax = 分析対象の分子量 ÷ 固定した分子の分子量 × 固定量 × 結合比。固定量は5,000 RU、結合比は1:1、固定した分子は分子量50,000と仮定。 ※ 分子量・固定量・結合比はいずれも本稿が置いた仮定です。実測の最大応答は、分子の活性や立体障害で計算値より小さくなりえます。
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。1 RU ≒ 1 pg/mm²[参考資料3]とRmaxの式[参考資料2]は一次資料の記載です。分子数と500倍という比は本記事が仮定のもとで算出した値で、実測値ではありません。

もうひとつ、SPRに特有の挙動があります。 試料の溶液が、流しているバッファーと屈折率が違うだけでも、注入している間は信号が上がります(バルク屈折率効果)。 取扱資料は、これは結合そのものには影響しないが、試料をランニングバッファーで希釈して小さくすることを勧め、注入の前後の「バッファーだけが流れているとき」に測定点を置いて差を取る、と説明しています事実。 装置には参照用の流路があり、そこでの信号を引き算してバルクの寄与を除きます。 ただし資料は、非特異吸着は参照面と測定面で同じとは限らず、引き算では正確に補正できないとも注意しています事実。

4. センサーチップの材料 ― 金薄膜・密着層・表面修飾

SPRのセンサーチップは、ガラスの基板の上に、金の薄膜、その上に分子を固定するための表面層を重ねたものです。 Biacoreの代表的なチップ(CM5)は、金の層の上に、カルボキシメチル化デキストランのマトリクスが共有結合しています。 取扱資料は、このデキストランが「十分に検証された化学で生体分子を共有結合で固定でき、多くのタンパク質の相互作用に適した親水的な環境を与える」と説明しています事実。

表面プラズモン共鳴の仕組みを表した概念画像
図4 概念画像(AI生成)。SPR用チップでは、ガラス上の薄い金属膜と表面修飾層に認識分子を固定し、上を流れる試料との結合を光学的に読み取ります。層構成は方式により異なり、図の厚みは縮尺どおりではありません。 AI生成の概念画像で、実製品の構造・寸法や顕微鏡像を示しません。
出典・数値・構成を示す元の模式図(SVG)を確認する
SPRセンサーチップの層構成(概念図・縮尺なし) ※ 層の厚さは縮尺どおりではありません。材料名は代表例で、特定の製品の構成を示すものではありません。 試料溶液 表面修飾層 金薄膜 ガラス基板 ここの屈折率の変化を読む 選択性・汚れにくさ・寿命 共鳴を起こす層 密着層(Cr・Tiなど) 光を通す基板 橙=結合する分子、緑=固定した受容体 例:デキストラン、自己組織化単分子膜、ポリマーブラシ 金属の密着層は共鳴を鈍らせうる(文献) 銀は金より高感度だが不安定(文献) ※ 密着層が共鳴を鈍らせうること、銀の不安定さと金-銀-金の3層での改善は、参考資料8・9の記載によります。 ※ 各層の役割の整理(右側の短い説明)は本記事による解説です。
図4 概念図(ベクター作図)。ガラス・密着層・金・表面修飾層の積層と、各層の役割を整理しました。デキストランの存在はBiacoreの取扱資料[参考資料2]、密着層と銀については論文[参考資料8・9]によります。層の厚さや構成は縮尺・実測値ではなく、実在の製品の構造を示すものでもありません。

(1) 金薄膜と密着層

研究で使われる金膜の例として、ビオチン―アビジンの結合測定で伝搬型SPRと局在SPRを比べた実験は、50 nmの金膜を使っています事実(第7章)。 金は化学的に安定で、チオールで表面修飾しやすいことが、バイオ用途で選ばれる理由として挙げられます(本記事による解説。個別の一次資料で確認した記述ではありません)。 ガラスの上に金を直接つけると剥がれやすいため、間にクロムやチタンなどの薄い密着層を挟むのが一般的な作り方です(同じく解説)。 ただし、金属の密着層は光学的には損失になります。ある論文は、「プラズモン活性なナノ構造と固体の支持体の間の金属の密着層は、プラズモン応答を鈍らせることが知られている」と記し、密着層なしで金を付ける方法を報告しています事実。

(2) 金か、銀か

銀は金より高感度になる可能性がありますが、水系では不安定です。 金-銀-金の3層のチップ(銀と、クロムの密着層の間に、さらに金の緩衝層を入れたもの)を報告した論文は、「単層の金のSPRセンサーより高感度になる銀のSPRセンサーは以前から研究されてきたが、顕著な不安定さのために実用になっていない」と述べ、新しいチップはリン酸緩衝生理食塩水中での長時間の撹拌後も形が保たれ、660 nmのSPR顕微鏡で、単層の金のチップより感度とS/Nが50%以上向上したと報告しています事実。 ただしこれはタンパク質アレイの条件での、ひとつの研究の結果です。

(3) 表面修飾層 ― 固定のしくみと、汚れを避ける設計

Biacoreの資料は、デキストラン表面への固定の手順を具体的に書いています。 EDCとNHSで表面のカルボキシ基を活性化し、そこにリガンド(固定する分子)のアミノ基が反応して共有結合し、最後にエタノールアミンで未反応の活性基を失活させます事実。 固定のときに効くのが、デキストランの負電荷による静電的な引き寄せ(プレコンセントレーション)です。 資料は、デキストランが「pHが約3.5より高いと正味で負に帯電する」ので、緩衝液のpHは3.5より高く、リガンドの等電点より低くする必要があること、イオン強度は低く(一価の陽イオン10 mM程度)しないと引き寄せが起きないこと、アミノ基を含む緩衝成分(Trisなど)やアジ化ナトリウムは反応を邪魔するので避けること、そして多くのタンパク質では10 mM酢酸ナトリウム(pH 4.5)がよく働くこと、を挙げています事実。引き寄せによる濃縮は「数千倍」に及びうるとされています事実。

血漿や血清のような複雑な試料では、表面へのタンパク質の非特異吸着が測定の最大の妨げになります。 そこで、表面修飾層を汚れにくい材料で作る研究が進んでいます。 ポリ(カルボキシベタインアクリルアミド)(polyCBAA)という双性イオン性ポリマーの表面について、ある論文は、未希釈の血漿での非特異的なタンパク質吸着の合計が3 ng/cm²未満と報告し、従来のオリゴ(エチレングリコール)系の表面と比べています事実。 この領域の総説(2015年)は、自己組織化単分子膜やPEG誘導体から超低汚染のポリマーブラシまで、汚れにくい被覆の作り方と、血漿・血清の分析への適用を整理しています事実。

5. 素材技術者の視点①:金は「感度」、表面層は「選択性と寿命」

素材技術者の読みどころ:光学は金で決まり、仕事のほとんどは表面層で決まる

SPRのチップを素材として眺めると、金膜と基板は「光学の部品」で、ここは比較的よく分かった仕様です。 一方、実際の測定の成否を左右するのは、その上の数nm〜数百nmの表面層(固定化の化学、汚れにくさ、再生に耐える強さ)です(本記事による解説)。

  • 固定のpHとイオン強度に、材料の化学が出る:デキストランの負電荷を使った引き寄せは、リガンドの等電点とpHの関係で決まります。「pHが低いほど引き寄せは強いが、固定量は逆に下がる」という例が資料に載っています(pH 4.0では引き寄せの応答は大きいのに、最終の固定量は他のpHより少なかった事実)。引き寄せの強さと反応の効率は別のものです
  • 再生は表面の耐久試験:測定のたびに、結合した分子をグリシン-塩酸(酸)や水酸化ナトリウム(塩基)などで洗い流して表面を再利用します事実。資料は、再生条件を決めるには少なくとも5サイクルの「結合→再生」を繰り返して、固定したリガンドの活性が保たれるかを見るよう勧めています事実。つまり表面層には、酸・塩基・高塩濃度への繰り返しの暴露に耐えることが要ります(解説)
  • 汚れのしきい値:汚れにくい被覆の目標は、未希釈の血漿で数 ng/cm² 以下という水準です(第9章で小さな分子の信号と比べます)
  • 厚い三次元の層と、薄い二次元の層:デキストランのような厚い層は固定量を稼げますが、拡散や立体障害を生みます。ある解説は、物質輸送の制限や表面の不均一さが、動力学の解析で理想からずれる2大要因だと整理しています事実(第6章)。薄い単分子膜は逆の性質をもつ、というのが一般的な整理です(解説)

6. 分子間相互作用の解析での使われ方

SPRが最もよく使われる場面は、2つの分子がどれだけ強く、どれだけ速く結合し、離れるかを測ることです。 総説は、抗体と抗原、受容体と薬、酵素と基質・阻害剤、DNAのハイブリダイゼーションなど、多くの組み合わせでの親和性・特異性・動力学の評価に使われてきたと述べています事実。

センサーグラム(信号の時間変化)と、測定の1サイクル 応答(RU) 時間 → ベースライン 結合(注入中) 解離 再生 実線=測定面 破線=参照面(バルクの寄与だけ) 1サイクルで起きること 1. 固定:受容体(リガンド)を表面に結合 2. 注入:試料(アナライト)を流す 3. 解離:バッファーだけを流す 4. 再生:酸や塩基で洗い流す 注入の前後で段差が出るのは 試料の屈折率がバッファーと 違うため(バルク効果) 非特異吸着は参照面の引き算で は正確に補正できない (取扱資料の注意) ※ 曲線の形と大きさは説明用の模式で、特定の相互作用の測定結果ではありません。1サイクルの区分は取扱資料[参考資料2]によります。
図5 概念図(ベクター作図)。固定・注入・解離・再生という1サイクルと、参照面との差を取る考え方を示します[参考資料2]。曲線は模式であり、実測のセンサーグラムではありません。

取扱資料の説明を整理します事実。 固定した側をリガンド、流す側をアナライトと呼びます。 応答(RU)の時間変化がセンサーグラムで、注入中の立ち上がりから結合速度、注入後の下がり方から解離速度が読み取れます(総説は、結合速度定数と解離速度定数が求まると説明しています事実)。 資料は、動力学の解析には最大応答(Rmax)を低く、濃度の測定には高い固定量が有利だとも述べています事実。

結果を読むときの注意(物質輸送と表面の不均一さ)

Schuck と Zhao の解説は、SPRバイオセンサーの結合動力学が、理想的な擬一次反応から外れる最も一般的な原因として、物質輸送の制限と表面の結合部位の不均一さを挙げています。どちらも「バイオセンサーの表面を使って相互作用を調べること自体に内在する問題」であり、解析モデルの前提を意識して試験すること、実験の設計と対照でそれを確かめることが必要だと述べています事実。 つまり、得られる速度定数は表面に固定した状態での見かけの値で、溶液中の値と同じとは限りません(本記事による解説)。

7. 局在SPR(LSPR)― ナノ構造で測る

金や銀のナノ粒子・ナノ構造にも、光で電子が集団振動する共鳴(局在表面プラズモン共鳴、LSPR)があります。 プリズムを必要としない配置が使われ、共鳴の位置は粒子の周囲の屈折率で動きます(配置については本記事による解説)。 銀の三角形ナノ粒子(幅約100 nm、高さ約50 nm)を使った古典的な報告では、共鳴の波長の最大値が、粒径・形・そして約10〜30 nmの範囲の外側の誘電環境に敏感であることを利用しています。 ビオチンを付けた粒子に100 nMのストレプトアビジンを当てると、共鳴の波長が27.0 nm長波長側へずれ、検出限界は「ピコモル濃度の低い領域からフェムトモル濃度の高い領域」と報告されています事実。 これは、ビオチン―ストレプトアビジンという結合の強いモデル系での値であり、血液などの実試料での性能ではありません。

伝搬型SPR(金薄膜)と局在SPR(ナノ構造)の比較 伝搬型SPR(金薄膜) 局在SPR(金属ナノ粒子・ナノ構造) 光の染み出し:数百nm程度 電場が届く範囲:約10〜30 nm 測り方:反射光の角度(または波長)の走査 配置:プリズムと流路が必要 信号:共鳴角のずれ(RU) 測り方:透過または反射のスペクトル 配置:簡単な光学系でよいとされる 信号:共鳴波長のずれ(nm) 同じ共鳴波長(約700 nm)の直接比較:バルクの性能指数はSPRが上、結合の測定はほぼ同等
図6 概念図(ベクター作図)。染み出しの距離は総説[参考資料1]、LSPRの電場の範囲はHaesとVan Duyneの報告[参考資料6]、最後の比較はSvedendahlらの実験[参考資料7]によります。円や層の大きさは縮尺どおりではありません。「簡単な光学系でよい」はLSPRの利点として著者が述べている内容で、本稿が検証した値ではありません。

伝搬型SPR(50 nmの金膜)とLSPR(金のナノディスク)を、同じ条件、同じ共鳴波長(約700 nm)で直接比べた実験があります。 バルク屈折率の感度を示す性能指数(figure of merit)はSPRのほうが優れていたものの、ビオチン―アビジンの結合を測る実験では、2つの方式の性能はとてもよく似ていたと報告されています。 著者は、単純な透過または反射の測定によるLSPRセンシングは、従来のSPRセンサーとも十分に競争できる、と結論しています事実。 ここから言えるのは、「バルクの屈折率感度の大小が、そのまま表面の結合検出の優劣にはならない」という点です(本記事による解説)。

8. 検出限界の読み方 ― 濃度ではなく、表面の質量から考える

まず「検出限界」の定義を確認します。臨床検査の分野の解説は、次の3つを区別しています事実。

  • ブランクの限界(LoB):分析対象を含まない試料を繰り返し測ったときに、見かけ上の濃度として出うる上限。LoB = ブランクの平均 + 1.645 ×(ブランクの標準偏差)
  • 検出限界(LoD):LoBと確実に区別できる最も低い濃度。LoD = LoB + 1.645 ×(低濃度試料の標準偏差)
  • 定量限界(LoQ):検出できるだけでなく、あらかじめ決めた偏りと不精密さの目標を満たす最も低い濃度。LoDと同じこともあれば、ずっと高いこともある

SPRの総説は、SPRバイオセンサーの検出限界は「分子量、光学的性質、結合の強さ、受容体の表面被覆率」など多くの要因に依存すると述べ、典型的には10 pg/mL程度と記しています事実。 ただしこの10 pg/mLがどの分子・どの試料・どの定義での値かは、その記述からは分かりません(本記事の確認範囲)。

本稿の計算:同じ「10 pg/mL」でも、分子によってモル濃度は桁で変わる

上の10 pg/mLを、計算の例としてモル濃度に直します(総説の値がこれらの分子に当てはまるという意味ではありません)本稿の計算。

  • 抗体IgG(分子量150,000と仮定):10 pg/mL = 10⁻⁸ g/L。10⁻⁸ ÷ 150,000 = 6.7×10⁻¹⁴ mol/L = 約67 fM(フェムトモル)
  • 小さな化合物(分子量300と仮定):10⁻⁸ ÷ 300 = 3.3×10⁻¹¹ mol/L = 約33 pM(ピコモル)
  • 比は 150,000 ÷ 300 = 500倍。質量で見て同じ検出限界でも、小さな分子ではモル濃度で500倍高い濃度が必要になる

前提と限界:分子量は本稿が置いた仮定です。逆に言えば、「SPRの検出限界はfMまで」という記述は、分子の大きさと試料の条件を抜いては意味をもちません(本記事による解説)。

モル濃度の軸に置いた、換算値と報告された値 横軸は対数(1 fM = 10⁻¹⁵ M から 100 pM = 10⁻¹⁰ M)。条件の異なる値を並べており、優劣を示すものではありません。 1 fM 10 fM 100 fM 1 pM 10 pM 100 pM LSPRの報告(モデル系): 低pM〜高fMの領域 10 fM Tau、未希釈血漿 約67 fM 10 pg/mLをIgGとした換算 約33 pM 10 pg/mLを分子量300とした換算 質量が同じなら、小さな分子ほどモル濃度は高く必要になる(約500倍) ※ Tauは、DNAアプタマーと抗体のサンドイッチ測定を未希釈血漿で行った論文の報告値(参考資料12)。 ※ 約67 fM・約33 pMは本稿の換算、LSPRは銀ナノ三角形のビオチン―ストレプトアビジン系の報告(参考資料6)で、帯の位置は本稿による目安。
図7 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。10 fMは論文[参考資料12]、LSPRの領域は論文[参考資料6]の報告です。67 fMと33 pMは本記事の換算で、実測値ではありません。帯の位置も目安です。測定の方式・試料・定義が異なる値を同じ軸に置いており、優劣を示すものではありません。

報告された値を読むチェックポイント

見る点なぜ見るのか根拠の区分
単位:RU・ng/cm²・濃度のどれかSPRの信号は表面の質量です。濃度に直すには分子量が要ります(上の計算)事実(RU定義)+ 本稿の計算
試料:緩衝液か、血漿か緩衝液の値を、そのまま血漿に当てはめられない。血漿では非特異吸着が信号に混ざる事実(参考資料10・12)
直接測定か、増幅・サンドイッチかTauの10 fMはアプタマーと抗体のサンドイッチ測定。ラベルなしの直接結合の値ではない事実(参考資料12)
LoB・LoDの定義と繰り返し数ブランクの標準偏差のとり方で値が変わる。「ノイズの3倍」などの簡易定義との違い事実(参考資料14)
参照面での補正と、対照の有無非特異吸着は参照面の引き算では正確に補正できない。同じチップ上の対照測定をどう使ったか事実(参考資料2・12)
モデル系か、実試料かビオチン―ストレプトアビジンのような強い結合の値は、一般の抗原―抗体の性能を示さない解説(参考資料6の記載にもとづく)

表の「根拠の区分」は、各行の内容がどの資料に基づくかを示しています。

Tau蛋白質の例は、読み方の見本になります。論文は、DNAアプタマーと抗体のサンドイッチ測定を、多チャンネルのSPR装置で、未希釈の血漿のなかで、10 fMの濃度まで検出したと報告しています。 血漿のなかで測るため、混合単分子膜による表面化学を設計し、参照チャンネルでの同じチップ上の対照測定で信号を規格化する方法を作ったとしています。 さらに、同じ試料でELISAと比べて「SPRのほうが1000倍の性能向上」と述べ、ELISAでは測れない添加濃度と内在濃度の両方を測れたとしています事実。 これは著者の報告であり、特定の臨床的な判断に使える性能を示すものではありません(アルツハイマー病の診断検査は、論文の背景として触れられている研究課題です)。

9. 素材技術者の視点②:汚れの質量が、小さな分子の信号と同じ桁になる

素材技術者の読みどころ:「3 ng/cm²」を RU に直すと

汚れにくい被覆の論文は、未希釈の血漿での非特異吸着の合計が3 ng/cm²未満だったと報告しています事実。 これを第3章の目安(1 RU ≒ 1 pg/mm²)で換算します本稿の計算。 1 pg/mm² = 100 pg/cm² = 0.1 ng/cm² なので、3 ng/cm² = 30 pg/mm² ≒ 30 RU。

この30 RUは、第3章の例で計算した小さな化合物(分子量300)の最大応答(30 RU)と、同じ大きさです。 もちろん、3 ng/cm²は「それ未満」という上限の報告で、使われた装置も違い、1 RU ≒ 1 pg/mm²の換算は目安です。 それでも言えるのは、血漿のような複雑な試料では、「汚れ」の上限が、小さな分子の最大の信号と同じ桁に入りうるということです(本記事による解説)。

だから小さな分子のSPR測定では、表面の汚れにくさ(材料)、参照面の設計(対照)、試料の前処理が、感度そのものより効いてきます。 本シリーズ「ラベルフリー検出と検出限界」編で扱う観点とも重なります。

10. 実用上の位置づけと、確認できなかったこと

(1) 研究・開発の道具としての位置

総説は、SPRを分子間相互作用の解析と、創薬のスクリーニング、免疫・遺伝子・タンパク質の研究など、研究の分野で広く使われる方法として紹介しています事実。 Biacoreの取扱資料も、試料の調製、固定、再生の条件探索など、研究室での実験手順を中心に書かれています事実。

(2) 診断の現場に持ち込む課題

同じ総説は結論で、SPRを現場での検査(POC)に使えるかという課題は完全には解けていないとし、理由として次を挙げています事実。

  • 固有の欠点として、非特異吸着が信号に干渉すること
  • POCの場面では、SPRで得られる結合速度定数・平衡定数の意義が小さいこと
  • 現在のSPR装置は大きく高価で、商業化の障害になっていること
  • 今後は、チップの化学と汚れにくい被覆、信号の増幅、小型化の研究が必要であること
確認できなかったこと

SPR方式の体外診断用医療機器(IVD)が、FDAやPMDAなどで審査を受けた具体例は、本稿の調査範囲では一次資料で確認できませんでした。 また、本稿が参照したBiacoreの取扱資料には、診断用途の使用目的(intended use)の記載を見つけられませんでした。 現行の商用SPR装置の仕様(ノイズ、屈折率分解能など)も、メーカーのサイトを開いて確認できなかったため、数値は記載していません。 局在SPRのスマートフォン連携などは研究段階の報告が中心で、実用の水準は未確定/将来です。

この記事のまとめ
  • SPRは「表面の質量」を屈折率として読みます。1 RUは約1 pg/mm²(Biacore ABの特許の記載)事実
  • 小さな分子ほど信号は小さい。例の計算では、抗体と分子量300の化合物でRmaxが500倍違う本稿の計算
  • チップは「光学の部品(金)」と「化学の部品(表面層)」でできている。密着層は共鳴を鈍らせうる。銀は高感度だが不安定事実
  • 相互作用の解析では、物質輸送と表面の不均一さに注意。得られる速度定数は表面に固定した状態での見かけの値事実
  • LSPRは簡単な光学系で測れるが、バルク感度の大小は表面結合の優劣にならない。直接比較では結合測定の性能は同程度事実
  • 検出限界は、単位・試料・方式・定義を確かめて読む。同じ10 pg/mLでも、分子によりモル濃度は約500倍違う本稿の計算

11. 用語集

表面プラズモン共鳴(SPR)
金属薄膜の表面で、光と電子の集団振動が結合する現象。近くの屈折率に敏感。
Kretschmann配置
プリズムの底面に金属薄膜をつけ、全反射した光で表面プラズモンを励起する配置。
エバネッセント場
全反射の面の外側に短い距離だけ染み出す光の場。
RU(resonance unit)
Biacore系の応答の単位。1 RU ≒ 1 pg/mm²(生体分子の目安)。
センサーグラム
応答の時間変化を示す曲線。結合・解離の速さが読める。
リガンド/アナライト
表面に固定する分子/試料として流す分子(Biacoreの用語)。
Rmax
表面が飽和したときの最大応答。分子量と固定量から見積もれる。
バルク屈折率効果
試料とバッファーの屈折率の違いで、結合と無関係に出る信号の段差。
再生
結合した分子を洗い流して、表面を繰り返し使うための処理。
局在SPR(LSPR)
金属ナノ粒子・ナノ構造で起きる共鳴。粒子周囲の屈折率で共鳴波長が動く。
非特異吸着
狙った分子以外が表面に付くこと。バイオファウリングとも呼ぶ。
プレコンセントレーション
デキストランの負電荷で、固定する分子を表面近くに引き寄せて濃縮すること。
LoB/LoD/LoQ
ブランクの限界/検出限界/定量限界。統計的に定義された区別。
物質輸送の制限
分子が表面に届く速さが、結合の速さより遅くなり、見かけの動力学が歪むこと。

12. 参考資料(一次情報)

  1. Nguyen HH, Park J, Kang S, Kim M「Surface Plasmon Resonance: A Versatile Technique for Biosensor Applications」Sensors 2015;15:10481–10510 — doi.org/10.3390/s150510481
  2. GE Healthcare「Biacore T200 Getting Started」28-9840-98 Edition AB(大学が掲載しているメーカー資料のPDF) — helsinki.fi
  3. Biacore AB 米国特許 US 7,373,255 B2「Method and system for determination of molecular interaction parameters」(2008年5月13日登録) — patents.google.com
  4. Kretschmann E, Raether H「Radiative Decay of Non Radiative Surface Plasmons Excited by Light」Z. Naturforsch. A 1968;23:2135–2136 — doi.org/10.1515/zna-1968-1247
  5. Liedberg B, Nylander C, Lundström I「Surface plasmon resonance for gas detection and biosensing」Sensors and Actuators 1983;4:299–304 — doi.org/10.1016/0250-6874(83)85036-7
  6. Haes AJ, Van Duyne RP「A nanoscale optical biosensor: sensitivity and selectivity of an approach based on the localized surface plasmon resonance spectroscopy of triangular silver nanoparticles」J Am Chem Soc 2002;124:10596–10604 — doi.org/10.1021/ja020393x
  7. Svedendahl M, Chen S, Dmitriev A, Käll M「Refractometric sensing using propagating versus localized surface plasmons: a direct comparison」Nano Lett 2009;9:4428–4433 — doi.org/10.1021/nl902721z
  8. Bhattarai JK ほか「Adhesion layer-free attachment of gold on silicon wafer and its application in localized surface plasmon resonance-based biosensing」Sens Actuators A 2020;312:112155 — doi.org/10.1016/j.sna.2020.112155
  9. Wang Z ほか「Stable and sensitive silver surface plasmon resonance imaging sensor using trilayered metallic structures」Anal Chem 2014;86:1430–1436 — doi.org/10.1021/ac402126k
  10. Vaisocherová H ほか「Ultralow fouling and functionalizable surface chemistry based on a zwitterionic polymer enabling sensitive and specific protein detection in undiluted blood plasma」Anal Chem 2008;80:7894–7901 — doi.org/10.1021/ac8015888
  11. Vaisocherová H, Brynda E, Homola J「Functionalizable low-fouling coatings for label-free biosensing in complex biological media: advances and applications」Anal Bioanal Chem 2015;407:3927–3953 — doi.org/10.1007/s00216-015-8606-5
  12. Kim S, Wark AW, Lee HJ「Femtomolar Detection of Tau Proteins in Undiluted Plasma Using Surface Plasmon Resonance」Anal Chem 2016;88:7793–7799 — doi.org/10.1021/acs.analchem.6b01825
  13. Schuck P, Zhao H「The role of mass transport limitation and surface heterogeneity in the biophysical characterization of macromolecular binding processes by SPR biosensing」Methods Mol Biol 2010;627:15–54 — doi.org/10.1007/978-1-60761-670-2_2
  14. Armbruster DA, Pry T「Limit of blank, limit of detection and limit of quantitation」Clin Biochem Rev 2008;29(Suppl 1):S49–S52 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  15. Homola J「Surface plasmon resonance sensors for detection of chemical and biological species」Chem Rev 2008;108:462–493(さらに読む総説。本稿は数値を引用していない) — doi.org/10.1021/cr068107d
  16. Mayer KM, Hafner JH「Localized surface plasmon resonance sensors」Chem Rev 2011;111:3828–3857(さらに読む総説。本稿は数値を引用していない) — doi.org/10.1021/cr100313v

13. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
SPRは金・銀・アルミニウムなどの金属薄膜の近くの屈折率の変化を測る方法であること。市販のSPRバイオセンサーの構成が、高屈折率ガラスのプリズムを使うKretschmann配置(全反射の方法)であること。SPR角が金属表面の近くの物質の屈折率で決まること。電場の範囲が境界から約300 nm、別の箇所では約200 nmと記されていること。結合速度定数と解離速度定数が求まること。検出限界が分子量・光学的性質・結合の強さ・表面被覆率などに依存し、典型的には10 pg/mL程度とされていること。分子間相互作用の解析(抗体―抗原、受容体―薬、酵素―基質、DNAなど)に使われていること。結論でPOCへの課題(非特異吸着の干渉、POCでの速度定数の意義の小ささ、装置が大きく高価であること、今後の研究課題)を述べていることNguyen ほか(Sensors 2015)[参考資料 1]https://doi.org/10.3390/s150510481事実
Series S CM5チップが薄い金の層をもつガラス板にカルボキシメチル化デキストランのマトリクスを共有結合させたものであること。金がSPR応答の発生に必要であること。デキストランが親水的な環境を与えること。応答がRUで表され表面の分子の質量に比例すること。リガンド・アナライト・センサーグラムの用語。固定のEDC/NHS活性化とエタノールアミンによる失活。デキストランがpH約3.5より高いと負に帯電し、緩衝液のpHは3.5より高くリガンドの等電点より低くすること。イオン強度は低く(一価の陽イオン10 mM)、TrisやアジドはNHS反応を妨げること。10 mM酢酸ナトリウムpH 4.5が多くのタンパク質でよく働くこと。プレコンセントレーションが数千倍の濃縮になりうること。pH 4.0で引き寄せの応答は大きいが最終固定量は他のpHより低かった例。Rmaxの式、理論値は実測値より高くなりやすいこと、動力学では低いRmax・濃度測定では高い固定量が有利なこと。バルク屈折率効果、希釈の推奨、測定点の置き方、参照流路での引き算、非特異吸着は参照面の引き算では正確に補正できないこと。再生の考え方と、新しい再生条件の試験に少なくとも5サイクルを推奨していることGE Healthcare Biacore T200 Getting Started[参考資料 2]https://www.helsinki.fi/assets/drupal/2024-08/BiacoreT200%20Getting%20Started.pdf事実
1 RUが最小反射強度の角度の0.0001°の変化に相当し、ほとんどのタンパク質などの生体分子で約1 pg/mm²の濃度変化に対応すること。出願人がBiacore AB、登録日が2008年5月13日であること米国特許 US 7,373,255 B2[参考資料 3]https://patents.google.com/patent/US7373255B2/en事実
Kretschmann配置の名が、1968年のKretschmannとRaetherによる、光で表面プラズモンを励起する報告に由来することKretschmann と Raether(1968)[参考資料 4]https://doi.org/10.1515/zna-1968-1247事実
1983年にSPRを気体の検出とバイオセンシングに用いる論文が報告されたことLiedberg ほか(1983)[参考資料 5]https://doi.org/10.1016/0250-6874(83)85036-7事実
銀の三角形ナノ粒子(幅約100 nm、高さ約50 nm)のLSPRの波長が約10〜30 nmの外側の環境に敏感であること。100 nMストレプトアビジンで27.0 nmの赤方偏移が出たこと。検出限界が低pMから高fMの領域であること(ビオチン―ストレプトアビジン系)Haes と Van Duyne(2002)[参考資料 6]https://doi.org/10.1021/ja020393x事実
50 nm金膜の伝搬型SPRと金ナノディスクのLSPRを同じ条件・共鳴波長約700 nmで比較したこと。バルク屈折率の性能指数はSPRが上だが、ビオチン―アビジンの結合測定ではよく似た性能だったこと。単純な透過・反射測定のLSPRが従来のSPRと十分に競争できるという著者の結論Svedendahl ほか(2009)[参考資料 7]https://doi.org/10.1021/nl902721z事実
金属の密着層がプラズモン応答を鈍らせることが知られているという記述。有機の密着層は膜の安定性を損なうことがあるという記述Bhattarai ほか(2020)[参考資料 8]https://doi.org/10.1016/j.sna.2020.112155事実
銀のSPRセンサーが金より高感度になりうるが不安定さのため実用になっていないという記述。金-銀-金の3層チップがPBS中の長時間撹拌後も形が保たれ、660 nmのSPR顕微鏡で単層の金より感度とS/Nが50%以上向上したことWang ほか(2014)[参考資料 9]https://doi.org/10.1021/ac402126k事実
polyCBAA表面で未希釈血漿での非特異的なタンパク質吸着の合計が3 ng/cm²未満であったこと。オリゴ(エチレングリコール)系の表面と比較したことVaisocherová ほか(2008)[参考資料 10]https://doi.org/10.1021/ac8015888事実
汚れにくい被覆(自己組織化単分子膜、PEG誘導体、超低汚染ポリマーブラシ)の調製・評価・機能化と、血漿・血清の分析への適用が総説として整理されていることVaisocherová ほか(2015)[参考資料 11]https://doi.org/10.1007/s00216-015-8606-5事実
DNAアプタマー/抗体のサンドイッチ測定を多チャンネルSPRで未希釈血漿中のTau 381について10 fMまで検出したこと。混合単分子膜の表面化学と、参照チャンネルでの同一チップ上の対照測定による規格化。SPRとELISAを比べ1000倍の性能向上と述べていること。添加濃度と内在濃度の両方を測れたことKim ほか(2016)[参考資料 12]https://doi.org/10.1021/acs.analchem.6b01825事実
SPRバイオセンサーの結合動力学が理想的な擬一次反応から外れる2大原因が、物質輸送の制限と表面の結合部位の不均一さであること。それがバイオセンサー表面の利用に内在する問題であることSchuck と Zhao(2010)[参考資料 13]https://doi.org/10.1007/978-1-60761-670-2_2事実
LoB・LoD・LoQの定義と、LoB=ブランクの平均+1.645×SD、LoD=LoB+1.645×SD(低濃度試料)の式Armbruster と Pry(2008)[参考資料 14]https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18852857/事実
1 RUあたりのIgG分子数(約4.0×10⁶個/mm²)、Rmaxの例(30 RUと15,000 RU、500倍)、10 pg/mLのモル濃度への換算(約67 fMと約33 pM)、3 ng/cm²の30 RU相当への換算本稿の計算。1 RU=1 pg/mm²、IgGの分子量150,000、小さな化合物の分子量300、リガンドの分子量50,000と固定量5,000 RU、結合比1:1、アボガドロ定数6.02×10²³はいずれも本稿が置いた前提または目安である。10 pg/mLは総説の記述を計算の例として借りたもので、これらの分子の実測値ではない。3 ng/cm²の換算は使用装置が異なるため目安である本稿の計算
プリズムを使う理由(全反射のエバネッセント場がプラズモンとの結合条件をつくる)、金の選択理由、密着層を挟む一般的な作り方、薄い単分子膜と厚い三次元の層の性質の違い、LSPRの配置が簡単でよいこと、図4の各層の役割の整理光学・材料の一般的な説明にもとづく本記事の解説であり、個別の出典で確認した値ではない解説
SPR方式の体外診断用医療機器の審査・承認の具体例。Biacore取扱資料の診断用途(intended use)の記載。現行の商用SPR装置のノイズ・屈折率分解能。「SPR総説の10 pg/mL」の対象分子・試料・定義本稿の調査範囲では、一次資料で確認できなかったため記載していない(メーカーのサイトは表示に制約があり内容を確認できなかった)未確定/将来
図1・図3・図4・図5・図6・図7が説明用の作図であり実測データではないこと。ヒーロー画像と図2がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月/出典は一次情報(メーカーの取扱資料、特許明細書、査読論文の要旨・本文)に限定しています。 SPRの総説の一部の数値(約300 nmなど)は総説自身の記述で、原著の条件までは確認していません。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 SPR方式の診断用医療機器の審査の例、Biacoreの使用目的の記載、現行の商用装置の性能仕様、総説にある10 pg/mLの条件は、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 本記事は材料・原理・評価の解説であり、診断・治療・測定値の読み方に関する医療上の助言ではありません。 図1・図3・図4・図5・図6・図7はベクター作図、ヒーロー画像と図2はAI生成イメージであり、いずれも実際の装置・製品・測定結果を示すものではありません。