COMPANY PROFILE / バイオセンサー
シーメンス・ヘルシニアーズ― 画像診断・がん治療と並ぶ柱の1つとして体外診断を持つ医療機器大手。電気化学センサーを使うPOC機器も扱うが、その部門は切り出しの準備に入っている
バイオセンサーの話題でSiemens Healthineersの名前が出るのは、血液ガスや電解質を電気化学センサーで測る「病床そばの検査機器」と、検査室の免疫測定装置を、同じ会社が世界で売っているからです。 本稿が扱うのは、同社のDiagnostics(体外診断)部門だけです。2025会計年度(2025年9月期)の年次報告書によると、Diagnosticsの売上は43億4,700万ユーロ(連結売上の約19%)、調整後営業利益率は7.7%でした。 一方で、2026年は売上が前年を下回り(会社は中国市場の構造変化などを要因に挙げています)、会社は2026年5月にこの部門の切り出し(carve-out)の準備を始めたと説明しています。 本稿は、センサー製品が何で、何が公式資料で確認でき、何が非公表かを整理します。
- 30秒でわかるSiemens Healthineersと、バイオセンサーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- バイオセンサーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
- バイオセンサー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるシーメンス・ヘルシニアーズと、バイオセンサーでの立ち位置
(検査機器と試薬)会社全体の主力は画像診断。本稿はDiagnostics部門に限る
利益率 4.1%実質ベース。中国市場の構造変化と旧プラットフォームの縮小を会社が要因に挙げる
HbA1c・尿検査POCは電気化学センサーカードなど
Siemens Healthineersは「バイオセンサーの会社」ではなく、「画像診断・精密治療・体外診断の3事業を持つ医療機器大手のうち、体外診断の部門がセンサー製品を持つ」と見るのが正確です 本稿の計算。 Diagnostics部門の中で、バイオセンサーの話題に近いのは、血液ガスと電解質を測る使い捨てのセンサーカード(epoc)やセンサー入りの測定カートリッジ(RAPIDPoint)、そして指先採血で心筋トロポニンIを測るAtellica VTLiです 事実。 ただし、これらの製品だけの売上は公表されていません。Diagnostics部門の売上は、検査室向けの大型分析装置と試薬が大部分を占めると考えられますが、その割合も開示されていません 未確定/将来。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Siemens Healthineers AG、日本語では「シーメンス・ヘルシニアーズ」と書きます。 同社は親会社のSiemens AG(ドイツの総合電機・産業大手)とは別の上場会社です。 Atellica、epoc、RAPIDPoint、DCA、CLINITEKは製品・ブランド名で、会社名ではありません。 ロゴ画像は同社の公式サイト(siemens-healthineers.com)で公開されているものを取得しました。
公式サイト:https://www.siemens-healthineers.com/3. バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模
グループ全体は、2025会計年度まで4つの事業(Imaging、Diagnostics、Varian、Advanced Therapies)に分かれていました。2026会計年度からは、VarianとAdvanced Therapiesと超音波を合わせてPrecision Therapyとし、Imaging、Precision Therapy、Diagnosticsの3事業になっています 事実。 本稿の主題はDiagnosticsなので、会社全体は簡潔に示します。
| 指標(百万ユーロ) | 2024会計年度 | 2025会計年度 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 連結売上(IFRS) | 22,363 | 23,375 | 実質ベース+5.9% |
| 連結の調整後営業利益 | 3,510 | 3,855 | +10%(利益率16.5%) |
| Diagnosticsの調整後売上 | 4,417 | 4,347 | -1.6%(実質ベース+0.4%) |
| Diagnosticsの調整後営業利益 | 235 | 333 | 利益率 5.3% → 7.7% |
従業員はグループで73,840人(2025年9月30日)、研究開発人員は1万3,000人超、グループの研究開発費は19億5,800万ユーロ(売上比8%)です 事実。Diagnostics部門だけの従業員数・研究開発費は、年次報告書に記載がありません。
| Diagnosticsの四半期(百万ユーロ) | 調整後売上 | 実質成長率 | 調整後営業利益率 |
|---|---|---|---|
| 2025会計年度 通期 | 4,347 | +0.4% | 7.7% |
| 2026会計年度 第2四半期(1〜3月) | 985(前年同期1,122) | -6.5% | 0.9%(前年同期6.3%) |
| 2026会計年度 第3四半期(4〜6月) | 992(前年同期1,059) | -5.5% | 4.1%(前年同期9.2%) |
2025会計年度のDiagnosticsは、中国で「低い2桁%」の減収(会社の表現)となり、年次報告書はその理由を「集中購買(volume-based public procurement)」としています。 2026年第3四半期は、アジア太平洋・日本が「非常に強い」成長だった一方、中国は大幅減、米州と欧州・中東・アフリカは1桁台半ばの減収でした。 センサー製品(epoc、RAPIDPoint、VTLi)だけの売上や成長率は、いずれの資料にも記載がありません。本稿は推計しません 未確定/将来。
5. バイオセンサーにかけているリソース
Siemens Healthineersは、Diagnostics部門の研究開発人員や研究開発費を個別には開示していません。センサー製品だけに限った数字もありません。確認できたものを表にします。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | グループの従業員は73,840人(2025年9月30日)、研究開発人員は1万3,000人超(主にドイツ、米国、中国、インド)。Diagnostics部門の人員、研究開発人員は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(研究開発) | グループの研究開発費は19億5,800万ユーロ(売上比8%)。Diagnosticsだけの額は非公表。年次報告書は、Diagnosticsの重点を「脳・代謝の健康」「患者中心の医療」「AI、ロボティクス」と説明 | 事実/一部非公表 |
| 金(投資) | Diagnosticsの「無形資産と有形固定資産への追加」は5億1,300万ユーロ(前年4億4,600万ユーロ。企業結合による追加を含む)。内訳の説明は「Atellica製品群の開発(現行の血液ガス・尿検査の製品群の刷新を含む)」と「米国、アイルランド、ドイツの生産設備」 | 事実 |
| 買収・出資 | 2017年にEpocal Inc.(epocの会社)をAbbottから買収(完了2017年10月31日、金額は非公表)。2017年にFast Track Diagnostics(分子診断。完了2017年12月19日)。2019年にMinicare BVを買収(完了2019年7月2日。Atellica VTLiの元になった会社と会社が説明。金額は本稿で確認できず)。年次報告書の出資先一覧にBabson Diagnostics, Inc.(米国)が持分20%と記載(目的・金額は記載なし) | 事実 |
| 大学・研究機関・公的資金 | 年次報告書は、イノベーション基盤「SHIFT」でスタートアップ、大学、臨床機関と協業すると一般論で述べるのみ。Diagnosticsのセンサー分野に限った大学名、公的助成の名称・金額は確認できず | 確認できず |
| 事業の再編 | 2025会計年度の減損のうち大半は、Diagnosticsの1つの製品ラインの終了(変革プログラムに伴う)に関するもの(減損損失は全社で6,400万ユーロ)。製品ラインの名称は記載なし。「Atellicaへの移行」が検査室向け事業の約7割まで進んだと、CEOが決算説明会で述べた | 事実 |
規制上の位置づけ(確認できた範囲)
以下は、米国FDAの510(k)データベースと承認文書で確認したものです。いずれも510(k)による適合(clearance)で、PMA承認でもDe Novo認可でもありません。FDAの510(k)データベースは2026年9月21日更新の時点で確認しました 事実。
| 製品 | 用途(FDA文書の記載の要旨) | 区分・日付 | 申請番号 |
|---|---|---|---|
| epoc Blood Analysis System(NXS Host) | 訓練を受けた医療従事者向けの体外診断用機器。動脈・静脈・毛細管の全血を、検査室またはポイントオブケアで定量。測定項目はpH、pCO2、pO2、Na、K、イオン化Ca、Cl、全CO2、グルコース、乳酸、尿素窒素、クレアチニン、ヘマトクリット | 510(k) 適合(Special)、Class II。2020年6月5日。申請者は子会社のEpocal, Inc. | K200107 |
| RAPIDPoint 500e Blood Gas System | 体外診断用。全血のpCO2、pO2、pH、電解質、グルコース、乳酸、全ヘモグロビンとその分画、新生児ビリルビンを測定。胸水のpHにも使用。ポイントオブケアまたは検査室で使用 | 510(k) 適合(Special)、Class II。2020年3月27日 | K192240 |
| Atellica Solution/Atellica A-LYTE Integrated Multisensor | 光度・比濁・化学発光・イオン選択性電極の技術で体液を測る多部品の検査システム。A-LYTEマルチセンサーは血清・血漿・尿のNa、K、Clを定量(Atellica CH上) | 510(k) 適合、Class II。2017年3月9日(データベースの決定日) | K161954 |
| Atellica IM High-Sensitivity Troponin I(TnIH) | 化学発光のサンドイッチ法。心筋梗塞の診断補助に加え、2024年の申請で予後(全死亡・主要心血管イベント)の補助の用途を追加。検査室用のAtellica IM Analyzerで使用 | 510(k) 適合、Class II。2024年7月25日 | K241165 |
| DCA Vantage(HbA1c分析装置) | データベース上の登録名は「DCA VANTAGE, MODEL 5075」、製品コードLCP。用途の文書は本稿で取得できず(確認できなかった) | 510(k) 適合(Special)。2007年10月9日 | K071466 |
| Atellica VTLi Patient-side Immunoassay Analyzer | 会社は2021年4月にCEマークを取得したと発表。同じ発表に「米国では販売していない」と明記。FDAの510(k)データベースで「VTLi」「Minicare」「Magnotech」を検索しても該当は確認できなかった | EU:CEマーク(会社の発表、2021年4月12日)/米国:確認できなかった | ― |
欧州のIVDR(体外診断医療機器規則)の下での各製品の位置づけと、日本での承認・認証・届出の状況は、本稿では確認できませんでした 未確定/将来。 日本には現地法人のSiemens Healthcare Diagnostics K.K.(東京)が年次報告書の子会社一覧に載っています。 規制の区分や、承認の有無が製品の使い方にどう関わるかは、本シリーズの技術解説「医療機器の承認区分と家庭用」を参照してください。
この会社のセンサー製品は、電極・膜・流路・校正液を、使い捨てのカードまたはカートリッジに一体で組み込む形です。 epocのFDA文書は、センサーの配列を「クレジットカード大の流路ハウジング」に載せ、封入した校正液のリザーバーを持つ構造と述べています 事実。 材料の視点では、電極の金属、イオン選択膜、酵素層、封止材、校正液の袋のどれもが品質に直結し、しかも使い捨てで大量に作る必要があります。 しかし、年次報告書にはこれらの材料や設備の投資額が出てきません。センサーの材料を内製しているのか調達しているのかも、確認できませんでした 未確定/将来。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2017年3月9日 | Atellica Solution(A-LYTEのイオン選択性電極を含む)が510(k)適合 | 検査室向け新プラットフォームの米国での入口 |
| 2017年10月31日 | AbbottからEpocal Inc.の買収を完了(公表は11月2日)。会社は「血液ガスの製品群を完成させるため」と説明 | 手持ち型のセンサーカード式血液分析(epoc)を獲得 |
| 2017年12月19日 | 分子診断のFast Track Diagnosticsの買収を完了(公表は2018年1月11日) | 分子診断の拡大。センサー製品とは別の流れ |
| 2019年7月2日 | Minicare BVの買収を完了 | 指先採血のPOC免疫測定機(後のAtellica VTLi)の元になったと会社が説明 |
| 2020年3月27日 | RAPIDPoint 500eが510(k)適合 | カートリッジ式の血液ガス分析機の更新 |
| 2020年6月5日 | epoc Blood Analysis System(NXS Host)が510(k)適合 | ホスト端末をAndroidの専用タブレットにした版(FDA文書の記載) |
| 2021年4月12日 | Atellica VTLiのCEマーク取得を発表。指先採血で、高感度心筋トロポニンIの結果を8分で出すと会社が説明 | 会社の主張。米国では販売していないと同じ発表に明記 |
| 2024年7月25日 | Atellica IM高感度トロポニンIが、予後の用途を加えて510(k)適合 | 検査室向け(POCではない) |
| 2025年11月12日 | 親会社Siemens AGが、Siemens Healthineersの連結を外し、株式の30%を自社の株主へ直接分配(スピンオフ)する意向を公表 | Diagnosticsの話とは別。上場会社の株主構成に関わる |
| 2026年5月7日 | 第2四半期の決算で、Diagnosticsの売上が実質-6.5%、利益率0.9%。CEOが決算説明会でDiagnosticsの切り出し(carve-out)を準備していると述べた | 形(売却、分離上場など)は説明されていない |
| 2026年7月31日 | 第3四半期の決算。通期の売上見通しを下方修正。CEOが決算説明会で、Atellica Forte(検査室向けの新シリーズ)の発売と、指先採血に対応する測定項目を述べた | 会社の説明。センサーPOC製品の新しい発表は確認できず |
7. 今後の計画
ほかに、次の計画が一次資料に書かれています 未確定/将来。
- Diagnosticsの切り出しの準備。CEOは「さまざまな発展の道を選べるようにするため」と述べました。売却するのか、分離して上場するのか、持ち続けるのかは説明されていません。切り出しの費用は、実施する場合に調整項目として扱うと、CFOが説明しました
- Diagnosticsは「自前の戦略と体制を持つ」と、2025年11月の資本市場説明会で発表されたとCEOが述べました(その説明会の資料は本稿で確認していない)
- Atellica Forteの展開。会社は、指先採血に対応する24項目のCEマーク取得済みの測定項目があると説明しました(CEマークの区分と対象国は本稿で確認していない)
- FDAの審査中とされる検査(神経フィラメント軽鎖)。バイオセンサー製品ではなく、検査室向け免疫測定
epoc、RAPIDPoint、VTLiだけの売上・生産数・研究開発費/VTLiのFDAへの申請状況/センサーの材料や調達先/Diagnosticsの従業員数と研究開発費/ 大学・公的機関との共同研究の具体名/IVDRと日本での各製品の位置づけ/切り出しの具体的な形と時期。いずれも、取得できた公式資料に記載がありませんでした。
8. この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
会社が「目指す」と直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 検査を患者の近くへ広げる方針を持つ | 公式ページの「right test in the right place at the right time」という説明、ポイントオブケアでの血液ガス・心臓・糖尿病・尿の製品群、年次報告書の「患者中心の医療」という重点分野 | 事実(会社の説明) |
| 血液ガスの製品群を刷新している | 年次報告書が、Diagnosticsの無形資産への追加の内訳に「現行の血液ガス・尿検査の製品群の刷新」を挙げる。epocとRAPIDPointは、FDAデータベースで確認できた最新の適合が2020年 | 事実/推測(次の世代がどの製品かは不明) |
| POCの免疫測定(VTLi)を、米国ではまだ市場に出していない可能性がある | 2021年の発表に「米国では販売していない」。FDAデータベースで該当を確認できず。現在の公式ページには製品が載っている | 推測(未確認であって、申請していないとは言えない) |
| Diagnosticsを会社の中核から切り離す方向にある | CEOが「Diagnosticsの切り出しを準備」と述べ、他の2事業を「synergetic core(相乗効果のある中核)」と呼ぶ | 事実(会社の説明)/推測(その先の姿) |
| 検査室向けの新プラットフォームを主軸にしている | Atellica Forteの発売、Atellicaへの移行が検査室向けの約7割というCEOの説明 | 事実(会社の説明) |
「Diagnosticsを中核から切り離す方向にある」という読みの根拠は、会社自身の言葉の使い分けです。 2026年5月の決算説明会でCEOは、ImagingとPrecision Therapyを「synergetic core」と呼び、Diagnosticsについては「さまざまな発展の道を選べるように切り出しを準備する」と述べました 事実。 同じ時期にDiagnosticsは、中国の構造変化で売上が減り、利益率は0.9%まで下がりました。 ただし、切り出しが売却になるのか、別会社として残すのかは、会社が説明していません。 また、決算説明会の発言は経営陣の意向であり、取締役会や株主総会の決定ではありません 未確定/将来。
9. バイオセンサー分野の提携マッピング
Siemens Healthineersの年次報告書と公式発表は、センサー製品の共同開発先や部材の供給元の社名を挙げていません。 このため、一次資料で確認できる関係は買収と出資、親会社との関係だけになります 事実。 Epocalの売り手がAbbottだったことは、2017年の公式発表に書かれています。AbbottはDiagnosticsの競合でもありますが、ここでは売買の相手として記しただけで、技術提携の相手ではありません。
10. 提供している技術・製品・サービス
公式サイトのポイントオブケア(POC)の製品は、尿検査、血液ガス、糖尿病、情報管理(POC Informatics)の4つに分かれ、救急部門の案内には心臓の検査(Atellica VTLi)も載っています 事実。以下の数値はいずれもメーカー公称(公式ページ)で、検査条件や版が異なるため、製品どうしや他社品との優劣はつけません。
| 区分 | 公式資料に載っている内容 | ひとこと |
|---|---|---|
| 血液ガス:epoc Blood Analysis System | 手持ちの無線式。1枚の常温保存のテストカードで血液ガス、基本代謝項目、ヘマトクリット、乳酸を測る。試料は92μL以上、結果は1分未満。保存15〜30℃、保存期間は最大5か月。校正は測定のたびに自動(FDA文書:カード内の校正液) | メーカー公称。電気化学のマルチセンサー配列(FDA文書の記載)。本シリーズの技術解説「電気化学センサー」を参照 |
| 血液ガス:RAPIDPoint 500e | 卓上のカートリッジ式。測定カートリッジに平面センサー、サンプルプローブ、CO-oximetry室を含み、カートリッジごとに交換。試料100μL、結果は約60秒。測定カートリッジの使用期間は装置内28日または最大測定数。初期化は約24分 | メーカー公称。測定原理は電位差法・電流法・導電率法(FDA文書)と光学(CO-oximetry) |
| 心臓:Atellica VTLi | 指先採血で高感度心筋トロポニンIを測る、手持ちの患者そば用の免疫測定機。結果は8分(会社発表)。「Magnotech Technology」を使うと救急部門のページに記載。CEマーク取得(2021年)、米国では販売していないと当時の発表に明記 | 会社の主張。技術の中身(Magnotechの測定原理)は、本稿で一次資料を確認できていない |
| 糖尿病:DCA Vantage/Atellica DCA | HbA1cと尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)を測る分析装置。Atellica DCAは「米国では販売していない」と明記。HbA1cは「数分」、ACRは7分(Atellica DCAのページ) | 血糖の連続測定や自己測定の機器ではない。医療従事者向けの検査機器 |
| 尿検査・その他のPOC | CLINITEKシリーズ(尿検査)、CLINITEST hCG(妊娠検査)、RAPIDLab 1200・348EX(血液ガス)、POCcelerator(POC機器の情報管理。公式ページは「230以上の機器インターフェース、70社以上」と説明) | 情報管理が、検査室から見たPOC機器の運用を支える |
| 検査室向け | Atellica Solution(臨床化学、免疫測定、イオン選択性電極)、Atellica CI Analyzer、2026年にAtellica Forteを発売(会社の説明)。年次報告書は、免疫化学、血液学、止血、尿検査、糖尿病ケア、血液ガスなどの検査分野を挙げる | 部門の売上の大半は検査室向けと考えられるが、割合は非公表 |
FDA文書によると、epocのテストカードはセンサーの配列、封入した校正液、試料の流路を、1つの小さな使い捨てハウジングにまとめたものです 事実。 この形では、常温(15〜30℃)で最大5か月の保存という公称値が、材料への要求を決めます。校正液が袋から漏れたり蒸発したりしないこと、イオン選択膜や酵素層が保存中に劣化しないこと、電極と膜の接着が保たれることが必要です 未確定/将来。 RAPIDPointは別の設計で、センサー、サンプルプローブ、CO-oximetry室を1つのカートリッジにまとめ、使用期間をカートリッジごとに定める形です(公式ページ)。 どちらも、センサーを装置に固定せず消耗品側に持たせることで、センサーの劣化を装置の保守から切り離しています。
ただし、電極の金属、膜の材料、酵素、封止材の具体的な種類は、本稿で取得した資料に記載がありません。上の記述は、形から読み取れる一般的な要求であり、個別製品がそれをどう満たすかは確認していません。 材料の考え方は、本シリーズの技術解説「酵素と電極界面の材料」「電気化学センサー」「POCT」を参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 中国市場の構造変化 | 集中購買による価格圧力で、2025会計年度のDiagnosticsは中国で「低い2桁%」の減収。2026年は第2・第3四半期とも中国が大幅減。会社は「構造的な市場の再調整」と説明 | 事実 |
| 部門の収益の悪化 | Diagnosticsの利益率は2025会計年度の7.7%から、2026年第2四半期0.9%、第3四半期4.1%へ。売上減、製品構成の悪化、為替が要因と会社が説明 | 事実 |
| 旧プラットフォームの縮小 | CFOが、旧プラットフォームの減少による売上の希薄化が続くと説明。年次報告書は、Diagnosticsの1つの製品ラインの終了に伴う減損を記載 | 事実 |
| 部門の切り出しと親会社のスピンオフ | Diagnosticsの切り出しの形は未定。親会社のSiemens AGによる株式分配も、両社の株主総会と当局の最終承認が条件。部門の方針、従業員、顧客との契約への影響は、現時点で確認できない | 未確定/将来 |
| 関税 | 年次報告書・決算資料は、米国の関税が全セグメントの利益率に影響したと説明。2026年2月に米国最高裁がIEEPAに基づく関税を無効とし、還付が第3四半期の利益に含まれた | 事実 |
| センサーPOC製品の更新時期 | epocとRAPIDPoint 500eについて、FDAデータベースで確認できた最新の適合は2020年。会社は血液ガス製品群の刷新に投資していると説明するが、新製品名は確認できない | 推測 |
| VTLiの米国での位置づけ | 2021年の発表は米国で未販売。FDAデータベースで該当を確認できず。現在の状況は本稿では確認できていない | 事実/未確認 |
| センサー製品の外部検証の難しさ | センサー製品の売上、利益、研究開発費がいずれも非開示のため、事業の規模を外部から確かめにくい | 未確定/将来 |
12. 用語集
- POCT(ポイントオブケア検査)
- 患者の近くで行う検査。結果が早く出る一方、精度管理や記録の仕組みが別に必要になる。
- 体外診断(IVD)
- 血液や尿など、体の外に取り出した試料で行う検査。
- 510(k)適合(clearance)
- 米国FDAが、すでに市場にある機器と実質的に同等と認める手続き。PMA承認やDe Novo認可とは別。
- 血液ガス
- 血液中の酸素・二酸化炭素の分圧とpHを測る検査。電解質や乳酸を同時に測る機器も多い。
- イオン選択性電極(ISE)
- 特定のイオン(Na、K、Clなど)に応答する膜を持つ電極。電位から濃度を求める。
- CO-oximetry
- 光の吸収で、ヘモグロビンの種類(酸素と結合したもの、一酸化炭素と結合したものなど)を測る方法。
- 化学発光免疫測定
- 抗体を使って目的の物質を捉え、その量を光の強さで測る方法。検査室の免疫測定装置で広く使われる。
- 高感度トロポニンI(hs-cTnI)
- 心筋の細胞に由来するタンパク質の血中濃度を、ごく低い濃度から測る検査。結果の読み方は医療従事者が判断する。
- 調整後売上・実質成長率(comparable)
- 会計上の特殊要因を除いた売上と、為替・買収売却の影響を除いた成長率。会社が業績の比較に使う。
- 集中購買(volume-based procurement)
- 中国で、公的な機関がまとめて購入することで価格を下げる仕組み。年次報告書は、中国の診断市場の価格圧力を強めたと説明。
- カーブアウト(切り出し)
- 会社の一部事業を、独立して運営できる形に切り離すこと。売却、分離上場など、その後の形はさまざま。

13. 出典
- Siemens Healthineers Annual Report 2025(2025年11月公表)。事業の説明、セグメント別の売上・利益・投資、研究開発費と人員、従業員数、買収・出資先の一覧、Siemens AGの保有割合とスピンオフの意向、減損、Diagnosticsの市場説明。 https://corporate.webassets.siemens-healthineers.com/a364b935102e7df5/d7fdacda458e/siemens-healthineers-ir-annual-report-2025.pdf
- Siemens Healthineers Half-Year Financial Report 2026(2026年第2四半期、3月31日まで)。新しいセグメント構成、IEEPA関税の最高裁判断、Siemens AGのスピンオフの時期の明確化(2026年4月17日)。 https://corporate.webassets.siemens-healthineers.com/63754e6195b8d00c/6a6087ac45c9/siemens-healthineers-Q2_FY2026_Half-Year-Financial-Report.pdf
- Siemens Healthineers Q2 Fiscal Year 2026 Earnings Release(2026年5月7日)。Diagnosticsの第2四半期の売上と利益率、地域別の説明。 https://corporate.webassets.siemens-healthineers.com/f973516aefed9689/c59e0c690a69/siemens-healthineers-Q2_FY2026_Earnings-Release-and-Financial-Results..pdf
- Siemens Healthineers Q3 Fiscal Year 2026 Earnings Release(2026年7月31日)。Diagnosticsの第3四半期の売上と利益率、通期見通しの更新。 https://corporate.webassets.siemens-healthineers.com/2637d4a46dbcd161/a3335cc16ed1/siemens-healthineers-Q3_FY2026_Earnings-Release-and-Financial-Results.pdf
- Siemens Healthineers Q2 FY2026 決算説明会の書き起こし(2026年5月7日。公式IRサイトに掲載、LSEG作成)。Diagnosticsの切り出しの準備、Atellicaへの移行の進み具合に関するCEOの発言。 https://corporate.webassets.siemens-healthineers.com/73c0b165655db327/a9aaa85621f2/siemens-healthineers-Q2_FY2026_Analyst-call-transcript.pdf
- Siemens Healthineers Q3 FY2026 決算説明会の書き起こし(2026年7月31日。公式IRサイトに掲載、LSEG作成)。Atellica Forteの発売、Diagnosticsの第4四半期の見込み、切り出しの費用の扱いに関する発言。 https://corporate.webassets.siemens-healthineers.com/91e2e22c76fbf662/beca9eeb382f/siemens-healthineers-Q3_FY2026_Analyst-call-transcript.pdf
- Siemens Healthineers プレスリリース「Expediting the Diagnosis of Heart Attack with Atellica VTLi Patient-Side Analyzer…」(2021年4月12日)。CEマーク、8分、Minicare BVの買収完了日(2019年7月2日)、米国では販売していないとの注記。 https://www.siemens-healthineers.com/press/releases/atellica-vtli
- Siemens Healthineers プレスリリース「Siemens Healthineers Announces Closing of Epocal Acquisition」(2017年11月2日)。 https://www.siemens-healthineers.com/press/releases/pr-2017110065hcen.html
- Siemens Healthineers プレスリリース「Siemens Healthineers announces closing of Fast Track Diagnostics acquisition」(2018年1月11日)。 https://www.siemens-healthineers.com/press/releases/pr-2018010127hc.html
- Siemens Healthineers Point of Care Testing in Emergency Departments(救急部門向けのPOC製品の案内ページ)。Atellica VTLi、epoc、RAPIDPoint 500e、CLINITESTの掲載。 https://www.siemens-healthineers.com/point-of-care-testing/poct-by-clinical-setting/hospitals-and-emergency-departments
- Siemens Healthineers epoc Blood Analysis System(製品ページ)。試料量、結果までの時間、保存条件、保存期間、測定範囲。メーカー公称。 https://www.siemens-healthineers.com/blood-gas/blood-gas-systems/epoc-blood-analysis-system
- Siemens Healthineers RAPIDPoint 500e Blood Gas System(製品ページ)。カートリッジ構成、試料量、結果までの時間、使用期間。メーカー公称。 https://www.siemens-healthineers.com/blood-gas/blood-gas-systems/rapidpoint-500e-systems
- Siemens Healthineers Diabetes(POCの糖尿病検査の製品ページ)。DCA Vantage、Atellica DCA。 https://www.siemens-healthineers.com/diabetes
- Siemens Healthineers Point-of-Care Testing(POCの製品一覧ページ)。尿検査、血液ガス、糖尿病、情報管理の4分類。 https://www.siemens-healthineers.com/point-of-care-testing
- 米国FDA 510(k) K200107「epoc Blood Analysis System」の適合通知と510(k)概要(2020年6月5日)。用途、測定項目、センサー配列の構成。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf20/K200107.pdf
- 米国FDA 510(k) K192240「RAPIDPoint 500e Blood Gas System」の適合通知と510(k)概要(2020年3月27日)。用途、測定原理。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf19/K192240.pdf
- 米国FDA 510(k) K161954「Atellica Solution、Atellica A-LYTE Integrated Multisensor」の適合通知と概要。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf16/K161954.pdf
- 米国FDA 510(k) K241165「Atellica IM High-Sensitivity Troponin I(TnIH)」の適合通知と概要(2024年7月25日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf24/K241165.pdf
- 米国FDA(openFDA) 510(k)データベースのAPI(K071466「DCA Vantage」の登録情報。データベースの最終更新は2026年9月21日)。本稿の「該当を確認できなかった」の検索もこのAPIで実施した。 https://api.fda.gov/device/510k.json?search=k_number:K071466
- Siemens Healthineers 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.siemens-healthineers.com/
- Siemens Healthineers プレスリリース(2026年第2四半期の決算。2026年5月7日)。会社概要(上場市場と銘柄略称、FY2025の従業員数と売上)、CEOのコメント。 https://www.siemens-healthineers.com/press/releases/2026q2
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月4日/Troy Technical
本稿の数値は、Siemens Healthineersの年次報告書・四半期資料・公式発表と、FDAの公開文書に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません(年次報告書にある会社自身の「対象市場の規模」の推計も採用していません)。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。決算説明会の書き起こしは、経営陣の発言の記録であり、取締役会や株主総会の決定ではありません。