COMPANY PROFILE / バイオセンサー
ビオメリュー― 感染症の体外診断で世界有数の専業。主力はPCRと免疫測定で、「患者の近くの検査」へ広げている
バイオセンサーの話題でbioMérieuxの名前が出るのは、感染症の診断を専門とする体外診断の専業メーカーが、検査を病院の検査室から患者の近くへ動かそうとしているからです。 2025年の年次報告書(Universal Registration Document)によると、売上は40億7,000万ユーロ(実質+6.2%)、研究開発費は売上の12.5%。 患者の近くで使う製品の柱は、約15分で結果が出る多項目PCRのBIOFIRE SPOTFIRE(2025年の売上1億6,800万ユーロ、連結の約4%)と、2025年1月に買収したSpinChip(全血から10分未満で結果を出す免疫測定。2026年7月に欧州のIVDRでCEマークを取得)です。 いずれも電気化学センサーではなく、PCRと蛍光免疫測定の系統です。センサーに最も近い製品は、検査室向けの薬剤感受性試験VITEK REVEAL(細菌が出す揮発性の成分を、色が変わるセンサー配列で検出)です。 本稿は、何が公式資料で確認でき、何が非公表かを整理します。
- 30秒でわかるbioMérieuxと、バイオセンサーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- バイオセンサーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
- バイオセンサー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるビオメリューと、バイオセンサーでの立ち位置
(感染症の分子診断・微生物・免疫)電気化学センサー型の製品は主力ではない
bioMérieuxは「バイオセンサーの会社」ではなく、「感染症の体外診断で、検査機器・試薬を世界中の病院に置いている専業メーカー」と見るのが正確です 本稿の計算。 患者の近くで使う製品(SPOTFIREとSpinChip)は、連結売上のごく一部で、2025年に売上があったのはSPOTFIREだけです 事実。 本稿で確認した資料には、血糖測定器や電気化学式の血液ガス分析機のような電気化学センサーの製品は載っていません 未確定/将来。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は bioMérieux SA(フランスの株式会社)で、日本語では「ビオメリュー」と書きます。ロゴの綴りは大文字(BIOMÉRIEUX)です。 親会社の位置づけにあるInstitut Mérieuxは別の法人(持株会社)で、bioMérieuxの株式の58.9%を保有します。 BIOFIRE、SPOTFIRE、VIDAS、VITEK、SPINCHIPは製品・ブランド名で、会社名ではありません。BioFire Diagnostics, LLCやSpinChip Diagnostics ASAは、bioMérieuxの子会社です。 ロゴ画像は同社の公式サイト(biomerieux.com)で公開されているものを取得しました。
公式サイト:https://www.biomerieux.com/3. バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模
売上の構成は、臨床向けが約84%、産業向け(食品・製薬の品質管理)が約16%です。臨床向けの中心は分子診断(PCR)で、売上の43%を占めます 事実。
| 指標(百万ユーロ) | 2024年 | 2025年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 3,979.9 | 4,069.8 | +2.3%(実質+6.2%) |
| 調整前の営業利益(CEBIT) | 673 | 728 | 売上比17.9% |
| 営業利益 | 589 | 521 | -4%(VITEK REVEALの減損を含む) |
| 研究開発費 | ― | 507 | 売上比12.5% |
| フリー・キャッシュフロー | 330 | 462 | ― |
| 設備投資 | 346 | 335 | 売上比8% |
| 製品群(2025年、百万ユーロ) | 売上 | 実質成長率 | 連結に占める割合 |
|---|---|---|---|
| BIOFIRE 呼吸器パネル | 813 | +1% | 20% |
| BIOFIRE 呼吸器以外のパネル | 598 | +10% | 15% |
| BIOFIRE 装置・サービス | 101 | +16% | 2% |
| SPOTFIRE | 168 | +84% | 4% |
| 微生物検査 | 1,339 | +4% | 33% |
| 免疫測定(VIDASなど) | 308 | -6% | 8% |
| 産業向け | 639 | +9% | 16% |
| その他 | 104 | ― | 3% |
地域別の売上は、北米が18.5億ユーロ(45%)、欧州・中東・アフリカが13.1億ユーロ(32%)、アジア太平洋が6.3億ユーロ(16%)、中南米が2.7億ユーロ(7%)です。アジア太平洋のうち中国は-14%でした(年次報告書の表現は「活動」)。 2026年上期(1〜6月)の売上は19億6,500万ユーロ(実質+0.2%)。BIOFIRE呼吸器パネルが-17%と流行の弱さで落ち込む一方、SPOTFIREは9,000万ユーロでした 事実。
製品別の売上のうち、「患者の近く」で使う製品として売上が開示されているのはSPOTFIREだけです。SpinChipは2025年に売上がなく、営業損失は1,900万ユーロでした。 VIDASなどの免疫測定(売上の8%)は検査室向けです。VITEK REVEALの売上は単独では開示されていません。本稿はその額を推計しません 未確定/将来。
5. バイオセンサーにかけているリソース
bioMérieuxは、患者の近くで使う製品や、センサー製品に限った研究開発費・人員を個別には開示していません。会社全体の数字と、買収・投資の個別の記載を整理します。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 従業員は約15,000人(2025年、フルタイム換算)。拠点は21(生産19、研究開発18)。研究開発人員の数は本稿で確認できず。患者の近くで使う製品に限った人員は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(研究開発) | 研究開発費は5億700万ユーロ(売上比12.5%)。配分は、分子診断34%、微生物31%、産業12%、免疫測定12%など(年次報告書のグラフ)。2026年上期は2億5,700万ユーロ(売上比13.1%)で、「分子診断、SPINCHIP技術、微生物への投資を増やした」と説明 | 事実 |
| 金(設備投資) | 2025年は3億3,500万ユーロ(売上比8%)、2026年は約9%の見込み。主な案件は、BIOFIRE試薬の生産自動化(米ソルトレイクシティ)、SpinChip製品の試薬・装置の生産準備(ノルウェー・オスロ)、生物原料の新工場棟(仏マルシー=レトワール)。2026年5月に、BIOFIREのPCR検査用の新工場(仏ラ・バルム=レ=グロット)へ2億5,000万ユーロ超の投資を発表(雇用は約400人) | 事実/一部未確定/将来 |
| 買収・出資 | SpinChip Diagnostics ASA(ノルウェー、全血の免疫測定):2024年3月に20%出資、2025年1月20日に残り80%を取得し完全子会社化。企業価値1億3,800万ユーロ、現金支出は約1億1,200万ユーロ。Neoprospecta(ブラジル、2025年1月、約800万ユーロ)、Day Zero Diagnosticsの資産(米国、2025年6月、約1,900万ユーロ)、Accellix(米国、2026年1月、残り90%を約2,800万ユーロ。細胞・遺伝子治療の品質管理用)。Specific Diagnostics(米サンノゼ。VITEK REVEALの元の会社)、BioFire、Lumedの買収が沿革に載る(年は本稿で確認していない) | 事実 |
| 大学・研究機関・公的資金 | 年次報告書は、MILA(ケベックのAI研究機関)、米ワシントン大学・ピッツバーグ大学の病院、Institut Pasteur、Prometheus IHU(パリ・サクレー大学、CEA、Inserm、AP-HPなど)との協業、英Oxford Nanopore Technologiesとの共同発表(2025年11月)を挙げる。欧州・フランスの共同プロジェクト(DIAMONDS、UNDINE、BRAINI-2、ARPEGE、THERAPHAGE、AIRISE)にも参加。いずれも患者の近くで使うセンサー製品に限ったものではなく、公的助成の金額は確認できず。SpinChipの臨床評価(APACE)はバーゼル大学病院とノルウェーのアーケシュース大学病院との共同(会社の発表) | 事実/一部確認できず |
| 事業の再編 | VITEK REVEALの米国での立ち上がりが遅いことから、2025年に技術資産の減損1億4,070万ユーロを計上。2025年12月に米サンノゼ拠点の閉鎖(2026年末)とVITEK REVEALの研究開発・生産のセントルイスへの移転を発表(有形資産の減損2,750万ユーロ、再編費用1,280万ユーロ) | 事実 |
規制上の位置づけ(確認できた範囲)
以下は、米国FDAの510(k)データベースと承認文書で確認したものです。いずれも510(k)による適合(clearance)で、PMA承認でもDe Novo認可でもありません(SPOTFIREの一部は、510(k)とCLIA免除〔検査の複雑さの区分〕の同時申請)。FDAの510(k)データベースは2026年9月21日更新の時点で確認しました 事実。
| 製品 | 用途(FDA文書の記載の要旨) | 区分・日付 | 申請番号 |
|---|---|---|---|
| BIOFIRE SPOTFIRE Respiratory (R) Panel | 多項目PCR。鼻咽頭スワブの検体で、呼吸器感染症の症状がある人のウイルス・細菌の核酸を同時に定性検出(COVID-19を含む)。CLIA免除の環境での使用を想定して設計 | 510(k) 適合(Dual Track)、Class II。2023年2月3日 | K213954 |
| SPOTFIRE Respiratory/Sore Throat (R/ST) Panel | 呼吸器(鼻咽頭スワブ)と咽頭炎(咽頭スワブ)の2つのメニュー | 510(k)とCLIA免除の同時申請、Class II。2024年3月26日 | K232954 |
| SPOTFIRE R/ST Panel Mini(初回) | R/ST Panelの小型版(データベースの区分はSpecial)。用途の文書は本稿で未確認 | 510(k) 適合(Special)。2024年5月30日 | K241194 |
| SPOTFIRE R/ST Panel Mini(前鼻腔スワブを追加) | 前鼻腔スワブ(ANS)の検体を追加。会社は、510(k)適合とCLIA免除を同時に得たと説明 | 510(k) 適合(Dual Track)、Class II。2025年8月14日 | K243544 |
| VITEK REVEAL GN AST Assay/AST System | 陽性の血液培養から直接、薬剤感受性(AST)を調べる検査室用の自動システム。揮発性有機化合物を検出するセンサー配列を使う。臨床検査の専門職が実施。グラム陰性桿菌が対象。菌種の同定は別に必要 | 510(k) 適合、Class II。2024年6月20日(申請者Specific Diagnostics, LLC)、2026年7月8日(bioMérieux, Inc.) | K230675/K260160 |
| SPINCHIP Analyzer/hs-cTnI | 会社は2026年7月にIVDRに基づくCEマークを完了したと発表。FDAの510(k)データベースで「SpinChip」を検索しても該当は確認できなかった | EU:CEマーク(会社の発表)/米国:確認できなかった | ― |
| SPOTFIRE Vaginitis (VG) Panel | 会社は2026年6月26日に、510(k)とCLIA免除の同時申請を提出したと発表。審査中で、適合はまだない | 未確定/将来 | ― |
日本での承認・認証・届出の状況は、本稿では確認できませんでした 未確定/将来 (なお、2026年第2四半期の発表は、日本の償還政策の変更がSPOTFIREの売上に影響したと述べています)。 規制の区分については、本シリーズの技術解説「医療機器の承認区分と家庭用」を参照してください。
bioMérieuxのリソースの特徴は、装置を設置し、使い捨ての試薬・カートリッジを売り続けるビジネスの構造が、設備投資の内訳にも出ていることです。 設備投資の主な案件は、試薬の生産自動化(BIOFIRE)と生産準備(SpinChip)、そして抗体などの生物原料を作る新しい建物です(年次報告書) 事実。 免疫測定の性能は、抗体と、それを固定する表面、反応で出る信号の安定性に左右されるため、原料の品質管理を自社に近い位置に置く意味があると考えられます 未確定/将来。 一方、センサーの材料(VITEK REVEALの色が変わる化合物の種類、SpinChipの流路や検出部の材料)は、取得した資料に記載がありません。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2023年2月3日 | BIOFIRE SPOTFIRE Respiratory PanelがFDAの510(k)適合(Dual Track)。年次報告書は、2023年にSPOTFIREを発売したと述べる | 約15分の多項目PCRを、検査室の外でも使える形で市場に出した |
| 2024年3月 | SpinChip Diagnosticsに約20%を出資 | 全血の免疫測定のPOC化へ足がかりを置いた |
| 2024年6月20日 | VITEK REVEAL(申請者はSpecific Diagnostics)が510(k)適合 | センサー配列で細菌の増殖を検出する検査室用ASTの米国での入口 |
| 2025年1月13日〜20日 | SpinChipの買収を発表(13日)、完了(20日)。企業価値1億3,800万ユーロ | 患者の近くの免疫測定を、自社の主要な柱に加えた |
| 2025年1月29日 | Neoprospecta(ブラジル、ゲノムデータ)を買収 | シーケンスとデータの強化。センサー製品とは別の流れ |
| 2025年6月 | Day Zero Diagnosticsの資産を買収 | 血液から直接のシーケンスと機械学習による同定・薬剤感受性(開発中) |
| 2025年8月14日 | SPOTFIRE R/ST Panel Miniに前鼻腔スワブを追加(510(k)適合とCLIA免除) | 検体採取の選択肢を増やした |
| 2025年12月 | VITEK REVEALの米国での立ち上がりが遅いとして減損1億4,070万ユーロ。サンノゼ拠点の閉鎖を発表 | センサー式ASTの事業の見直し |
| 2026年1月20日 | Accellixの残り90%を取得 | 製薬の品質管理向け。バイオセンサー製品ではない |
| 2026年5月29日 | BIOFIREのPCR検査用の新工場(フランス)に2億5,000万ユーロ超を投資すると発表 | 検査室向け分子診断の供給を強化 |
| 2026年6月26日 | SPOTFIRE Vaginitis Panelの510(k)・CLIA免除の同時申請を提出 | POCのメニューを女性の健康へ広げる意図と会社が説明 |
| 2026年7月 | SPINCHIP AnalyzerとSPINCHIP hs-cTnIがIVDRに基づくCEマークを完了 | 患者の近くで高感度トロポニンIを測る免疫測定が、欧州で使える段階に入った |
| 2026年7月28日 | 2026年上期の決算。通期の見通しは据え置き、2027〜2028年の中期見通しを引き下げ | 地政学・マクロ環境の変化が理由と会社が説明 |
7. 今後の計画
ほかに、次の計画が一次資料に書かれています 未確定/将来。
- SpinChip hs-cTnIの欧州での発売(2026年後半の予定)。年次報告書では、技術資産の償却は、発売と同時期の2026年末か2027年初めに始まる見込み
- SpinChipの次の測定項目(NT-proBNP、D-ダイマー)。2025年1月の発表で「最初に注力する項目」として挙げられたもの。発売時期は確認できず
- SPOTFIRE Vaginitis PanelのFDAの審査結果(時期は未定)
- SPOTFIREの2026年の売上は、年次報告書では実質+40〜60%の見込み(呼吸器の流行次第)。2026年上期の実績は実質+22%
- 設備投資は2026年に売上の約9%の見込み
SpinChipの米国での申請状況と時期/SpinChipの測定原理(流路・検出部の構成)/VITEK REVEALの売上/研究開発人員の数と、患者の近くで使う製品に限った研究開発費/ 日本での各製品の位置づけ/SPOTFIRE 2028年目標の最新の扱い。いずれも、取得できた公式資料に記載がありませんでした。
8. この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
会社が「目指す」と直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 診断を患者の近くへ動かす | SpinChipの買収を「診断を患者に近づける戦略を強化する」と説明。CEOは「すでにSPOTFIREでPOC市場に参入しており、SpinChipで補完する」と述べた(2025年1月の発表) | 事実(会社の説明) |
| 分子診断と免疫測定の2本柱でPOCを展開する | SPOTFIRE(PCR)とSpinChip(免疫測定)を、年次報告書が2つの将来分野として並べる。CEOはSpinChipを「2028年より先の成長への道を開く」と述べた | 事実(会社の説明) |
| センサー式の検査(VITEK REVEAL)は見直し段階にある | 米国での立ち上がりの遅れによる減損とサンノゼ拠点の閉鎖 | 事実/推測(今後の位置づけ) |
| SpinChipは当面欧州から始める | 発売は欧州で2026年後半の予定。米国の申請は確認できない | 推測(米国は後になる可能性) |
| ゲノム・データ・AIの診断へ広げる | Neoprospecta、Day Zero Diagnostics、Lumed、MILAとの協業 | 事実(会社の説明) |
「SpinChipは当面欧州から始める」という読みの根拠は、2026年7月の発表の書き方です。 2026年7月28日の発表は、IVDRに基づくCEマークの完了と、「欧州での発売は2026年後半」としか書いていません 事実。 FDAデータベースでSpinChipの名前を検索しても該当は確認できず、会社も米国の申請について述べていません。 ただし、FDAの申請が存在しないとは言えません(データベースの更新の遅れや、別名での申請がありえます)。会社の計画は変わる可能性もあります 未確定/将来。
9. バイオセンサー分野の提携マッピング
確認できる関係の大半は買収と共同研究です。製造の面で社名が確認できたのはBeckman Coulterだけで、VITEK REVEALの抗生物質パネル(96穴のプレート)を受託製造しているとFDA文書に記載があります 事実。 SPOTFIREやSpinChipの部材の供給元の社名は、取得した資料に出てきません。Institut Mérieuxは親会社に当たる株主で、技術提携の相手ではありません。
10. 提供している技術・製品・サービス
公式の年次報告書は、製品を分子診断、微生物検査、免疫測定、産業向けに分けて説明しています。患者の近くで使うもの、センサーに近いものを中心に整理します。数値はメーカー公称で、検査条件や版が異なるため、製品どうしや他社品との優劣はつけません 事実。
| 区分 | 公式資料に載っている内容 | ひとこと |
|---|---|---|
| 患者の近く:BIOFIRE SPOTFIRE | 全自動の多項目PCR。呼吸器と咽頭炎のパネル。約15分で結果が出る。装置は1〜4台を積み重ねられ、1日(8時間)に最大104検体(年次報告書)。設置台数は7,200台超(2026年6月30日)。2025年の売上は1億6,800万ユーロ | メーカー公称。PCR(核酸の増幅)で、電気化学センサーではない |
| 患者の近く:SPINCHIP | 全血から10分未満で結果を出す、小型の卓上免疫測定機。最初の測定項目は高感度心筋トロポニンI(hs-cTnI)。指先採血を含む複数の検体種で一致が高いと、会社が臨床研究の結果として説明。IVDRのCEマークは2026年7月。欧州の発売は2026年後半の予定 | 会社の主張と計画。測定原理は本稿で確認できず |
| センサーに近い:VITEK REVEAL | 陽性の血液培養から直接、薬剤感受性(AST)を調べる検査室用の自動システム。細菌の増殖で出る揮発性有機化合物を、色が変わるセンサー配列で検出。平均5.5〜6時間(グラム陰性菌の陽性血液培養から)。年次報告書は「ナノポアのバイオセンサー」と説明し、FDA文書は「化学的な小分子センサー(SMS)が色を変える」と説明 | メーカー公称。同じ装置の説明が資料で違う言葉になっている。検査室向け |
| 検査室:BIOFIRE FILMARRAY | 全自動の多項目PCR。7種のパネルで170以上の標的。約1時間。2026年6月に消化管パネルの新版をFDAに申請 | 検査室向けの分子診断。売上の約37% |
| 検査室:VIDAS | 酵素結合蛍光免疫測定。抗体と抗原の複合体ができたときの蛍光信号を読む。臨床向けに80種超の測定項目。1時間に最大72テスト | 免疫測定の主力。2025年は中国の集中購買で減収 |
| 微生物検査・産業向け | BACT/ALERT(血液培養)、VITEK(同定・薬剤感受性)、産業向けのGENE-UPなど。ソフトウェアのLumedなど | 売上の33%と16%。バイオセンサーというより微生物検査の装置 |
bioMérieuxの製品で、素材が最も具体的に確認できるのは、VITEK REVEALのセンサーパネルです。 FDA文書によると、これは枠、透明なプラスチックのフィルム、96組のセンサー配列(12×8)を載せた膜の組み立て品で、各配列は7つの化学応答性センサーからなります。 細菌が出す揮発性の化合物に反応して色が変わり、装置が色の変化を読みます。センサーパネルは、接種した96穴のプレートの上に密封され、パネルには密封の品質を確かめるセンサーも入っています 事実。 材料の視点では、揮発性の化合物を透過させる膜の性質、センサーの色素・反応物の選択性、密封部のシール性が測定の再現性に直結すると考えられます 未確定/将来。 ただし、色が変わる化合物の種類や膜の材料は、FDA文書でも年次報告書でも公開されていません。
VIDASは、抗体を使った酵素結合蛍光免疫測定で、年次報告書が「1つのSPR(固相の受容体)とカートリッジの組で複数の免疫反応を得る多項目化」を挙げています。 SpinChipの流路や検出部の構成は確認できませんでした。免疫測定の材料の考え方は、本シリーズの技術解説「体液中のバイオマーカー」「ラベルフリー検出と検出限界」を参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 呼吸器の流行への依存 | BIOFIREの呼吸器パネルは2026年上期に-17%(流行が弱かったため)。SPOTFIREも呼吸器の検査が中心で、会社は2026年の成長を流行次第と説明 | 事実 |
| 中国の集中購買と市場の軟化 | 免疫測定は2025年に-6%、アジア太平洋のうち中国は-14%。2026年上期の免疫測定も集中購買の影響が続くと会社が説明 | 事実 |
| 中期見通しの引き下げ | 2027〜2028年の売上見通しを「年平均+7%」から「年+3〜6%」へ。理由は地政学・マクロ環境の変化と会社が説明 | 事実 |
| SpinChipの立ち上げ | 2025年に売上はなく、営業損失は1,900万ユーロ。技術資産は1億690万ユーロで、償却は発売時期(2026年末〜2027年初め)に始まる見込み。欧州以外の展開は確認できない | 事実/未確認 |
| センサー式ASTの減損 | VITEK REVEALの米国での立ち上がりが遅く、2025年に技術資産の減損1億4,070万ユーロ。サンノゼ拠点を閉鎖 | 事実 |
| 米国への依存と関税 | 北米が売上の45%。2026年の見通しは、米国の関税15%を前提とすると年次報告書が述べる | 事実 |
| 規制の審査 | SPOTFIRE Vaginitis Panelは審査中。SpinChipの米国での位置づけは確認できない | 未確定/将来 |
| POC製品の外部検証の難しさ | 患者の近くで使う製品のうち、売上が開示されているのはSPOTFIREだけ。SpinChipとVITEK REVEALは単独の売上がない/非開示 | 未確定/将来 |
12. 用語集
- 多項目PCR(マルチプレックスPCR)
- 1回の検査で、複数の病原体の核酸を同時に増幅して調べる方法。
- CLIA免除
- 米国で、検査の複雑さが低く、誤りの危険が小さいと認められた検査。専門の検査室でなくても実施できる区分。
- 510(k) 適合(clearance)
- 米国FDAが、すでに市場にある機器と実質的に同等と認める手続き。PMA承認やDe Novo認可とは別。Dual Trackは510(k)とCLIA免除の同時申請。
- IVDR(体外診断医療機器規則)
- EUの規則(Regulation (EU) 2017/746)。体外診断用の機器のCEマークの根拠。
- 酵素結合蛍光免疫測定(ELFA)
- 抗体で目的の物質を捉え、酵素の反応で出る蛍光の強さから量を測る方法。VIDASで使われる。
- 薬剤感受性試験(AST)
- 細菌がどの抗菌薬で増えにくいかを調べる検査。
- 揮発性有機化合物(VOC)
- 細菌が増えるときに出る気体の成分。VITEK REVEALはこれを色の変化で検出する。
- 高感度トロポニンI(hs-cTnI)
- 心筋の細胞に由来するタンパク質の血中濃度を、ごく低い濃度から測る検査。結果の読み方は医療従事者が判断する。
- CEBIT
- bioMérieuxが使う利益指標。一時的な項目を除いた営業利益(Contributive operating income before non-recurring items)。
- 実質成長(organic)
- 為替と買収・売却の影響を除いた成長率。
- 集中購買(volume-based procurement)
- 中国で、公的な機関がまとめて購入して価格を下げる仕組み。

13. 出典
- bioMérieux 2025 Universal Registration Document(2026年3月16日にAMFへ提出。株主総会資料として公開された英語版)。売上、利益、研究開発費、設備投資、買収・投資、製品の説明、株主、減損、2026年の見通し。 https://www.biomerieux.com/content/dam/biomerieux-com/investor/06---shareholder-area/en/2026/documents-made-available-for-the-shareholders-and-questions-answers/AG-2026---URD-2025.pdf
- bioMérieux First-Half 2026 Results(2026年7月28日のプレスリリース)。上期の売上と製品別の売上、SPOTFIREの設置台数、SpinChipのCEマーク、FDAへの申請、新工場の投資、見通しの更新。 https://www.biomerieux.com/content/dam/biomerieux-com/investor/regulated-informations/2026/press-releases/PR-bioMerieux-Financial-Results-H1-2026.pdf.coredownload.pdf
- bioMérieux プレスリリース「bioMérieux strengthens its point of care presence with the acquisition of the immunoassay start-up SpinChip」(2025年1月13日)。企業価値、現金支出、測定項目の計画、CEOの発言。 https://www.biomerieux.com/corp/en/journalists/press-releases/acquisition-SpinChip-immunoassay.html
- bioMérieux 会社のニュース「Extremely promising clinical trial results for the high-sensitivity Point-of-Care (POC) cardiac troponin I test of our partner SpinChip Diagnostics」。APACE研究(バーゼル大学病院、アーケシュース大学病院との共同)に関する会社の説明。 https://www.biomerieux.com/corp/en/who-we-are/company-news/Extremely-promising-clinical-trial-results-high-sensitivity-Point-of-Care-cardiac-troponin-test-partner-SpinChip-Diagnostics.html
- 米国FDA 510(k) K213954「BIOFIRE SPOTFIRE Respiratory (R) Panel」の適合通知と概要(2023年2月3日)。用途とCLIA免除の環境での設計。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf21/K213954.pdf
- 米国FDA 510(k) K232954「BIOFIRE SPOTFIRE Respiratory/Sore Throat (R/ST) Panel」の適合通知と概要(2024年3月26日。510(k)とCLIA免除の同時申請)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf23/K232954.pdf
- 米国FDA 510(k) K243544「BIOFIRE SPOTFIRE R/ST Panel Mini」の適合通知と概要(2025年8月14日。前鼻腔スワブの追加)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf24/K243544.pdf
- 米国FDA 510(k) K230675「VITEK REVEAL GN AST Assay and VITEK REVEAL AST System」の適合通知と概要(2024年6月20日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf23/K230675.pdf
- 米国FDA 510(k) K260160「VITEK REVEAL GN AST Assay and VITEK REVEAL AST System」の適合通知と概要(2026年7月8日)。センサーパネルの構成、Beckman Coulterによる抗生物質パネルの受託製造。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf26/K260160.pdf
- 米国FDA(openFDA) 510(k)データベースのAPI(K241194「SPOTFIRE R/ST Panel Mini」の登録情報。データベースの最終更新は2026年9月21日)。本稿の「該当を確認できなかった」の検索もこのAPIで実施した。 https://api.fda.gov/device/510k.json?search=k_number:K241194
- bioMérieux 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.biomerieux.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月4日/Troy Technical
本稿の数値は、bioMérieuxの年次報告書・決算発表・公式発表と、FDAの公開文書に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。会社の計画(SpinChipの発売、FDAへの申請、見通し)は会社の目標であり、達成の事実ではありません。