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ULソリューションズ 機関解説

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INSTITUTION PROFILE / 接着・封止材

ULソリューションズ
― 材料の難燃性などを試験・認証し、製品の市場投入の「関門」になる米国の認証機関

UL Solutionsは米国イリノイ州に本社を置く、製品の試験・検査・認証を行う民間企業で、2024年4月にニューヨーク証券取引所に上場しました。 接着剤や封止材そのものを作る会社ではありません。 接着・封止材との接点は、材料の燃えやすさ(UL 94)や、電気機器に使う高分子材料の評価(UL 746)を試験し、合格した材料に認証(Yellow Card)を出すことです。 電気機器メーカーが工場で使う材料にUL 94の等級を求めるため、材料メーカーにとっては、取引に入るうえで事実上の関門になる場面があります。 本稿では、その影響力の種類と届く範囲を、公式資料で確認できた範囲に絞って整理します。

構成:UL Solutionsの年次報告書(米国証券取引委員会に提出した2025年度のForm 10-K)、UL Solutionsの公式サイト(UL 746シリーズ、Yellow Cardの解説)、ULが公開したUL 94の解説資料を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

材料サンプルを試験し結果を記録する場面。実際のUL試験所・認証品を示すものではありません。
概念図(ImageGen生成)。材料サンプルを試験し結果を記録する場面。実際のUL試験所・認証品を示すものではありません。
この記事でわかること
  1. 30秒でわかるUL Solutions
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. 接着・封止材で何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. 関わっている組織と認証の流れ
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるULソリューションズ

正式名称UL Solutions Inc.ティッカー ULS(ニューヨーク証券取引所)。起源は1894年のUnderwriters Electrical Bureau
国米国(本社:イリノイ州ノースブルック)顧客は110か国超、試験所は27か国の87拠点(2025年12月末)
機関の種類営利の民間企業(試験・検査・認証)議決権の94.1%を非営利のUL Standards & Engagementが保有
設立・上場1894年の起源/2024年4月16日に上場前身は非営利のUnderwriters Electrical Bureau
人数規模常勤14,587名ほかにパートタイム264名(2025年12月31日現在)
売上規模30.53億ドル2025年12月期の連結売上。顧客は8万社超
接着・封止材への関与の形材料の難燃性などの試験・認証UL 94・UL 746に基づく試験とYellow Card。接着剤専用の制度は確認できなかった
影響が及ぶ範囲電気・電子製品の供給網法令ではなく、顧客の調達要求と認証制度を通じて作用
まず押さえるべき1点

UL SolutionsはISOのような規格団体ではなく、規格に基づいて試験し、合格を証明して対価を得る事業者です。 UL 94のような規格を策定するのは、同社を支配する非営利のUL Standards & Engagementという別の組織で、同社の年次報告書も両者を区別して書いています 事実。 ULの解説資料によると、UL 94の等級が付いた材料の顧客は主に電気機器・電子製品の最終メーカーで、それらの会社は工場の生産でUL 94の等級付きの材料を使うことが求められていると書かれています。 この仕組みのため、材料メーカーにとっては事実上、取っておく必要のある証明になります 事実。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

接着・封止材の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では製品を作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。 UL Solutionsは営利企業ですが、規格に基づく認証を通じて市場に影響する点で、主に「標準」の型に当てはまります。

接着・封止材を動かす「機関」の4つの型 機関は自分では接着剤や封止材を作らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究開発に予算を配る 戦略・補助金・法律 試験方法・規格・認証 学会・展示会・業界団体 NEDO/DOE 経済産業省/欧州委員会 ISO/UL Solutions SEMI/ECTC 何を研究させるか 何を国内で作らせるか どう測り、どう比べるか 誰が誰に会うか 届く範囲=自国の予算 届く範囲=自国の領域 届く範囲=加盟国・市場 届く範囲=参加者 UL Solutionsは営利企業だが、規格に基づく試験・認証で市場に影響する「標準」の型 規格の策定は別の非営利組織が担い、UL Solutionsは試験と認証の事業者という点がISOと違う
図1 接着・封止材に関わる機関の4つの型と、UL Solutionsの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う機関から例示しています 本稿の計算。

3. 接着・封止材で何をしているか

UL Solutionsは、1941年からプラスチックの試験を行っていると自社サイトに書いています 事実。 接着・封止材に関わる仕組みは、大きく3つあります。

仕組み中身(UL Solutionsの公式資料の表記)接着・封止材との接点
UL 94(難燃性)UL 94は「Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances」。小さな炎や放射熱に対する高分子材料の燃えやすさを、研究室の制御された条件で調べる小規模試験。IEC 60695-11-10、ISO 9772/9773などと整合している電気機器の部品に使う樹脂材料の等級(HB、V-0、V-1、V-2など)。封止材や接着剤を含むかは、確認した資料に書かれていない
UL 746シリーズ(高分子材料の評価)UL 746A(短期の特性)、746B(長期の特性・熱老化)、746C(電気機器での使用)、746D(成形部品)、746E(工業用積層板・プリント配線板用材料など)、746F(フレキシブル回路用の誘電体フィルム)、746G(非フッ素・非PFAS材料の評価)などプリント配線板の材料(746E)、ポリイミドなどのフレキシブル回路用フィルム(746F)、PFASを含まない材料の評価(746G)は、電子実装の材料と重なる
Yellow Card(プラスチック認証)高分子材料がUL Recognized Component Markを得ると、UL Solutionsが自動的にYellow Cardを発行する。材料の安全・性能に関わる特性を載せた情報カードで、UL Product iQとUL Prospectorのデータベースに掲載される材料メーカーは認証を宣伝に使え、材料を使う側は再試験を省いて、製品側の認証までの道のりを短くできる場合がある(UL Solutionsの説明)
素材技術者の視点:UL 94は「材料の燃えやすさの目安」であって、製品全体の安全証明ではない

UL 94は、小さな炎に対する、決められた大きさの試験片の燃え方を見る試験です。 ULが公開した解説資料は、UL 94の結果は厚さ13.0mmを超える材料や表面積が1平方メートルを超える材料には、ほとんど当てはまらないと書いています。 また、建築基準法に相当するモデルコード(米国の建築・消防の標準規則)は、小規模なUL 94の等級を認めておらず、UL 94の等級で他の火災試験を代用する技術的な根拠はないとしています (この資料は2007年のニュースレターの再掲で、当時から変更があり得ると注記されています) 事実。 封止材(エポキシ樹脂など)やポッティング材の難燃性を評価するとき、UL 94の等級は材料同士を比べる目安にはなりますが、最終製品の安全は別の規格と試験で確かめます。 接着・封止材の難燃性については、技術解説の半導体封止材や車載用シリコーンと封止材も参照してください。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点UL Solutionsが持っているもの持っていないもの
権限規格に基づいて試験し、認証し、マークの使用を認める権限。認証後も、検査・監視を続けないとマークを使えない(常時の検査が条件)法律を決める権限。認証を一般的に義務づける権限。UL 94などの規格の策定は、非営利の別組織が担う
地域顧客は110か国以上、8万社超。27か国に87の試験・認証拠点(2025年12月末)。UL Recognized Componentマークは、ISOやIECの要求への適合も併記できる各国の法令上の認証機関としての指定は国ごとに違い、本稿では国別の扱いを確認していない
接着・封止の守備範囲高分子材料の難燃性・電気特性・老化などの試験と認証(UL 94、UL 746)。プリント配線板用材料や、PFASを含まない材料の評価も扱う接着強さや半導体封止材の信頼性(温度サイクルなど)の規格。確認した資料に接着剤専用の認証制度は見当たらなかった
規模常勤14,587名、2025年の売上30.53億ドル。うち工業部門(プラスチックや電線を含む)が13.41億ドルで売上の44%接着・封止材だけの売上や試験件数は公表されていない
注意:「UL認証が必要」は法律の話ではなく、調達の話

UL Solutionsの年次報告書は、認証の売上のうち、新規の認証試験が約28%、マークを使い続けるための継続的な検査などが約33%と書いています 事実。 つまり認証は一度きりではなく、マークを使い続けるために検査と監視が続く仕組みです。 なお、法令が認証を要求するかどうかは国や用途で異なり、本稿では国別に確認していません。 国際規格が任意採用である点は、本シリーズのISOの機関解説を参照してください。

5. 関わっている組織と認証の流れ

UL Solutionsの組織関係と、材料認証の流れ 規格を策定する非営利組織と、認証事業を行う上場企業は別の組織。認証は材料メーカーから最終製品メーカーへ伝わる UL Research Institutes(非営利) 人の安全への脅威を研究。下の非営利組織の唯一の会員 UL Standards & Engagement(非営利) 安全規格の策定など。UL Solutionsの株式61.6%・議決権94.1% UL Solutions Inc.(NYSE:ULS) 試験・検査・認証。常勤14,587名・2025年売上30.53億ドル 接着・封止材に関わる主な試験・認証 UL 94 小さな炎での燃えやすさ(HB・V-0など) UL 746 高分子材料の評価(A〜G等) Yellow Card 認証済み高分子材料の特性カード (接着剤専用の認証制度は確認できなかった) 材料メーカー UL 94等の試験を受け、Recognized Component Markを取得 Yellow Card(Product iQ・Prospectorに掲載) 材料の安全・性能の特性を載せた情報カード 電気機器・電子製品のメーカー 工場でUL 94等級付きの材料を使うことが求められる UL 94の限界(ULの解説資料) 小規模試験で、厚さ13.0mm超・面積1平方メートル超には ほとんど当てはまらない 建築のモデルコードは、UL 94等級を他の火災試験の 代わりとして認めていない(2007年の資料)
図2 UL Solutionsの組織関係と、UL 94・Yellow Cardを通じた認証の流れ。出典:UL Solutionsの年次報告書(Form 10-K)、UL Solutionsの公式サイト、ULの解説資料(2007年)。矢印の整理は本稿によります 本稿の計算。

UL Solutionsの年次報告書によると、UL Research Institutesは非営利で、人の安全に対する脅威の研究を担い、UL Standards & Engagementの唯一の会員です。 UL Standards & Engagementも非営利で、研究の成果を安全規格の策定などに結びつけます。 UL Solutionsは、UL Standards & Engagementが株式の61.6%、議決権の94.1%を持つ(2025年12月31日現在)上場会社です 事実。

本シリーズの企業解説に出てくる接着剤・封止材メーカーが、個別にどのUL認証を取得しているかは、今回確認した公式資料からは分からなかったため、本稿では書きません。 UL ProspectorやUL Product iQで個別の材料の認証情報を検索できますが、本稿では個別の材料の確認は行っていません。

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
UL 746Gは、フッ素を含まない材料(フッ素50ppm以下)とPFASを含まない材料(特定PFAS各25ppb未満・合計250ppb以下)を評価する枠組み。PFAS規制に対応する材料の需要を背景にしているUL Solutionsの「Understanding the UL 746 Series」ページ事実
接着剤や封止材のPFAS不使用の証明に、この枠組みが使われる場面が増える可能性がある上記ページの「ongoing market demand for non-PFAS materials」という記述。接着剤・封止材への適用は確認できていない推測
UL Solutionsは2026年の第1四半期から、事業の区分(セグメント)を再編した。新しい区分の中身は確認できなかった2025年度Form 10-K(Note 22 Subsequent Events に詳細があるとの記載)未確定/将来

7. 用語集

TIC
Testing, Inspection and Certification。試験・検査・認証の事業。
UL 94
プラスチック材料の燃えやすさを小さな炎で調べる試験規格。HB、V-0、V-1、V-2などの等級で表す。
UL 746
電気機器に使う高分子材料の評価をまとめた規格群。A〜Hなど複数の部に分かれる。
Yellow Card
UL Recognized Component Markを得た高分子材料について、UL Solutionsが発行する特性情報カード。
PFAS
有機フッ素化合物の総称。UL 746Gが、含まない材料の評価方法を定めている。

8. 出典

  1. UL Solutions Inc. Form 10-K(2025年12月期。米国証券取引委員会に2026年2月19日提出)。従業員数、売上、顧客数、拠点数、上場日、UL Standards & Engagementの持株比率と議決権、サービス区分の構成比、セグメント再編。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1901440/000190144026000005/uls-20251231.htm
  2. UL Solutions Understanding the UL 746 Series of Standards(UL 94、UL 746A〜746Gの内容、PFAS評価の基準)。 https://www.ul.com/services/understanding-ul-746-series-standards
  3. UL Solutions UL Solutions Yellow Card Plastics Recognition Program(1941年からのプラスチック試験、Recognized Component Mark、Product iQ/Prospector掲載、再試験の省略)。 https://www.ul.com/services/ul-solutions-yellow-card-plastics-recognition-program
  4. UL Solutions How to Read the UL Solutions Yellow Card(Recognized Component Markで自動発行、White Cardとの関係)。 https://www.ul.com/resources/how-read-ul-yellow-card
  5. UL(The Code Authority、2007年第3号の再掲) Understanding UL 94 Certifications and Limitations(UL 94は小規模試験、建築のモデルコードでは認められない、顧客は電気機器メーカー)。 https://code-authorities.ul.com/wp-content/uploads/2014/04/ul_UL94CertificationsAndLimitations.pdf
  6. UL Solutions About(130年以上の歴史、110か国超の顧客)。 https://www.ul.com/about

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
本社所在地、1894年の起源、2024年4月16日の上場、常勤14,587名・パート264名、売上30.53億ドル、工業部門13.41億ドル(44%)事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1901440/000190144026000005/uls-20251231.htm
顧客8万社超・110か国超、27か国87拠点、認証試験約28%・継続認証約33%の構成比、マーク使用に継続検査が必要事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1901440/000190144026000005/uls-20251231.htm
UL Standards & Engagementが株式61.6%・議決権94.1%を保有し、安全規格の策定を担う。UL Research Institutesが唯一の会員事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1901440/000190144026000005/uls-20251231.htm
UL 94の題名・IEC/ISOとの整合、UL 746A〜746Gの内容、非フッ素・非PFASの基準値事実出典2 https://www.ul.com/services/understanding-ul-746-series-standards
1941年からプラスチックを試験、Recognized Component Mark、再試験の省略事実出典3 https://www.ul.com/services/ul-solutions-yellow-card-plastics-recognition-program
Yellow CardはRecognized Component Markで自動発行、Product iQ/Prospectorに掲載事実出典4 https://www.ul.com/resources/how-read-ul-yellow-card
UL 94は小規模試験、13.0mm・1平方メートルの適用限界、建築モデルコードでは認められない、顧客は電気機器メーカー事実出典5 https://code-authorities.ul.com/wp-content/uploads/2014/04/ul_UL94CertificationsAndLimitations.pdf
機関の4つの型の区分、図2の整理本稿の計算本稿による整理
UL 94・UL 746が封止材や接着剤を対象に含むか、個別メーカーの認証取得状況、接着剤専用の認証制度の有無未確定/将来確認した公式資料に記載なし。本稿では推計しない
2026年からのセグメント再編の中身未確定/将来出典1にNote 22への参照のみ。本稿では内容を確認していない
第6章のPFAS不使用証明の需要拡大推測出典2の記述からの本稿の解釈

最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値はUL Solutionsの年次報告書(Form 10-K)と公式サイト、ULの公開資料に基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。