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国際標準化機構(ISO) 機関解説

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INSTITUTION PROFILE / 接着・封止材

国際標準化機構(ISO)
― 接着剤の「測り方」をそろえる国際規格の発行元

ISOはスイスのジュネーブ郊外に中央事務局を置く、各国の標準化機関のネットワークです。 接着剤や封止材そのものを作る機関ではなく、接着強さの試験方法や、接着の破壊状態の呼び方など、「どう測り、どう呼ぶか」を国際規格として発行するのが役割です。 ただしISOの規格は任意に使うもので、法的拘束力はありません。 本稿では、ISOが接着・封止材にどこまで影響を持つのかを、権限の種類と届く範囲に絞って整理します。

構成:ISOの公式サイト(組織概要・会員・規格カタログ・専門委員会ページ)、日本産業標準調査会(JISC)関連のJIS情報、DINのカタログページを一次情報として使用/最終更新 2026年10月

接着強度の試験方法を共通の手順として文書化する場面。実際のISOの会議・規格文書ではありません。
概念図(ImageGen生成)。接着強度の試験方法を共通の手順として文書化する場面。実際のISOの会議・規格文書ではありません。
この記事でわかること
  1. 30秒でわかるISO
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. 接着・封止材で何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. 関わっている組織と規格の流れ
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかる国際標準化機構(ISO)

正式名称国際標準化機構英文 International Organization for Standardization。「ISO」は略称ではなく、ギリシャ語の isos(等しい)に由来する通称
国・地域国際(スイス)中央事務局はジュネーブ(ヴェルニエ)。各国に1機関ずつの会員で構成
機関の種類非政府の国際機関各国の標準化機関のネットワーク。規格の発行は任意採用
設立1946年から活動ISOの公式ページによる
人数規模会員177機関各国1機関。職員数は公式ページで確認できなかった
規模規格26,515件専門委員会・小委員会844(公式ページの表示。接着・封止材だけの数ではない)
接着・封止材への関与の形試験方法・分類の規格主にISO/TC 61/SC 11が担当。幹事国は日本(JISC)
影響が及ぶ範囲国際的な参照先採用は各国の任意。法令は国内法が優先
まず押さえるべき1点

ISOが決めるのは「接着強さをどう測るか」「壊れ方をどう呼ぶか」といった共通の物差しであり、「この接着剤を使ってよい・使えない」という許認可ではありません。 ISO自身が、規格は「voluntary(任意)」で、契約上・法令上・制定法上の要求事項を含まず、国内法に取って代わらないと明記しています 事実。 それでも接着・封止材の技術者にとって重要なのは、日本のJIS、欧州のEN、各社の試験仕様がISO規格を参照することで、 メーカーとユーザーが同じ条件で強度を比べられるからです。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

接着・封止材の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では製品を作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

接着・封止材を動かす「機関」の4つの型 機関は自分では接着剤や封止材を作らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究開発に予算を配る 戦略・補助金・法律 試験方法・規格・認証 学会・展示会・業界団体 NEDO/DOE 経済産業省/欧州委員会 ISO/UL Solutions SEMI/ECTC 何を研究させるか 何を国内で作らせるか どう測り、どう比べるか 誰が誰に会うか 届く範囲=自国の予算 届く範囲=自国の領域 届く範囲=加盟国・市場 届く範囲=参加者 ISOは「標準を決める」型。試験方法や用語の共通の物差しをつくるが、採用は任意で法的拘束力はない 同じ接着・封止材でも、どの型の機関かによって影響の届き方がまったく違う
図1 接着・封止材に関わる機関の4つの型と、ISOの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う機関から例示しています 本稿の計算。

3. 接着・封止材で何をしているか

ISOのカタログでは、接着剤(粘着テープを含む)は国際規格分類(ICS)の83.180にまとまっています。 接着剤の規格づくりを担う中心は、プラスチックを扱うISO/TC 61(専門委員会)の小委員会 SC 11「製品」です 事実。

分野規格(ISO公式の表記)中身
接着強さの試験
(引張せん断)
ISO 4587:2003
Adhesives — Determination of tensile lap-shear strength of rigid-to-rigid bonded assemblies
標準試験片で引張せん断強さを測る方法。ISOは「設計情報を与えるものではない」と明記。2003年3月発行で、2026年7月15日に定期見直しの段階(90.20)に入った
接着強さの試験
(はく離)
ISO 11339:2022
Adhesives — T-peel test for flexible-to-flexible bonded assemblies
柔軟な被着材2枚をT字に引きはがすはく離試験(2022年2月発行)
壊れ方の呼び方ISO 10365:2022
Adhesives — Designation of main failure patterns
接着部の主な破壊状態の名称と図解。被着材や接着剤の種類を問わず、接着部の機械試験全般に適用(2022年1月発行)
老化条件ISO 9142:2003
Adhesives — Guide to the selection of standard laboratory ageing conditions for testing bonded joints
気候・化学的な環境にさらす実験室の老化条件の選び方。ISOは「試験結果は接着部の寿命の予測には必ずしも使えない」と明記(2003年12月発行)
粘着テープISO 29862:2024
Self adhesive tapes — Determination of peel adhesion properties
180度はく離の4つの方法(2024年12月発行)
電子実装の接着剤ISO 16525-1〜9:2014
Adhesives — Test methods for isotropic electrically conductive adhesives
等方導電性接着剤の試験方法(9部構成)。電気特性、熱伝導、せん断強さ、電気化学マイグレーション等。
ISO 21760-1/-2:2019 は有機電子デバイス用接着剤の水蒸気透過率の測定方法
シーラント(建築)ISO 11600:2002
Building construction — Jointing products — Classification and requirements for sealants
建築用シーラントの種類・等級と要求事項。担当はISO/TC 59/SC 8で、接着剤のTC 61/SC 11とは別
素材技術者の視点:ISO規格は「試験の物差し」

ISOの接着関連規格の多くは、接着剤の性能の合格基準ではなく、試験のやり方です。 たとえば引張せん断強さ(ISO 4587)は、同じ条件で測ればメーカー間で値を比べられる、というための規格で、 何MPa以上なら合格という値はISO規格では決めていません(同規格は設計情報を与えないと明記) 事実。 技術解説の接着強度試験で扱う試験片形状や破壊状態の見方(凝集破壊・界面破壊)は、この土俵の上にあります。 一方、半導体封止材(エポキシモールディングコンパウンドなど)の性能規格は、ISOのICS 83.180の一覧に見当たりませんでした 未確定/将来。この分野は別の団体(半導体業界団体など)の規格が中心と考えられますが、本稿では確認できていません。

ISO/TC 61の範囲には「接着剤、シール、接合、溶接」が明記されています。 ただし、塗料・ワニスを担当するISO/TC 35(幹事国:オランダ)の範囲は塗料・ワニスと関連製品(原料を含む)で、範囲の文言に接着剤は出てきません。 プラスチック管の接合技術はISO/TC 138(幹事国:日本)の担当で、SC 11の範囲から外されています 事実。接着・封止材といっても、規格ごとに担当の委員会が分かれている点に注意が必要です。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点ISOが持っているもの持っていないもの
権限専門委員会での合意に基づき、国際規格を発行する。試験方法、用語、分類などの共通の基準をつくる規格の採用を強制する権限。「voluntary」で、契約上・法令上の要求事項を含まない
地域会員は177機関(各国1機関)。日本(JISC)、ドイツ(DIN)、米国(ANSI)、中国(SAC)などが会員で、各国の標準化機関が規格を採用・販売できる国内法への優先。ISO自身が、国内法が優先すると明記している
接着・封止の守備範囲接着剤の試験方法・分類・用語(TC 61/SC 11)。電子実装用の導電性接着剤や、有機電子用接着剤の試験方法も含む半導体封止材の性能規格(ICS 83.180に見当たらない)。製品の認証・安全性の判定
規模・財源各国の会員が会費を払い、規格の販売収入もある。中央事務局の運営は、規格づくり全体の費用の約5分の1にすぎない職員数など中央事務局の人数は、公式ページで確認できなかった
注意:「ISO規格に適合」と「法律に適合」は別

製品がISO規格の試験をクリアしても、それは法令への適合や市場に出す資格を意味しません。 ISOの規格は任意で、国内法に取って代わりません 事実。 市場投入に事実上必要になる認証(安全規格や難燃性など)は、別の機関の話になります(本シリーズのUL Solutionsの機関解説を参照)。

5. 関わっている組織と規格の流れ

ISOの接着剤規格はどう広がるか 専門委員会が規格をつくり、各国の標準化機関が自国の規格として採用する ISO(国際標準化機構) 会員177の国家標準化機関・中央事務局はジュネーブ ISO/TC 61 プラスチック 幹事国:中国(SAC)・1947年設置 ISO/TC 61/SC 11 製品(接着・シール・接合) 幹事国:日本(JISC)・WG 5 が高分子接着剤 接着・封止材に関わる主なISO規格 ISO 4587 引張せん断/ISO 11339 T形はく離 ISO 10365 破壊状態/ISO 9142 老化条件 ISO 16525 導電性接着剤/ISO 21760 水蒸気透過 (シーラントISO 11600は別委員会 TC 59/SC 8) 各国の標準化機関(各国1機関) JISC(日本)・DIN(ドイツ)・ANSI(米国)など JIS K 6850(日本) ISO 4587:1995 に対応・対応の程度はMOD(修正) EN ISO 11339:2022(欧州・DINが掲載) ISO 11339:2022 を欧州規格として採用 ISO規格の位置づけ 任意採用(voluntary)で、法的拘束力はない 国内法が優先する 採用するかは各国・各社・契約が決める
図2 ISOの接着剤規格をつくる委員会と、日本・欧州での採用例。出典:ISOの委員会・規格ページ、JSAのJIS K 6850登録情報、DINのEN ISO 11339ページ。矢印は規格が国の規格へ広がる流れを本稿が整理したものです 本稿の計算。

ISOの接着剤規格は、各国の標準化機関を通じて国の規格になります。 日本ではJIS K 6850(引張せん断接着強さ)が、ISO 4587:1995に対応する規格として登録されています(対応の程度は「MOD(修正)」)。 ISO 4587は現在2003年版が最新ですが、JISの対応国際規格欄は旧版の1995年版のままで、版が一致していない例もあります 事実。 欧州では、ISO 11339:2022が欧州規格として採用され、ドイツではDINのカタログにEN ISO 11339:2022が載っています 事実。 米国の規格(ASTMなど)はISOとは別の規格団体の規格で、本稿では対応関係を確認していません 未確定/将来。

なお、この分野の企業(本シリーズの企業解説に出てくる接着剤メーカー)が各規格の策定にどう関わっているかは、今回確認した公式ページからは分からなかったため、本稿では書きません。

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
ISO 4587(引張せん断)は2026年7月15日に定期見直しに入った。結果(確認・改訂・廃止)は確認できなかったISOの規格ページ(段階90.20、見直し開始日2026-07-15)未確定/将来
構造用接着剤の可使時間(ポットライフ)の規格は改訂が進行中。2024年版は「改訂予定(90.92)」で、改訂案(DIS)が登録されているISOのICS 83.180の一覧(ISO 10364:2024、ISO/DIS 10364)未確定/将来
JIS K 6850のようにJISが古い版に対応している規格は、ISOの改訂に合わせてJIS側の見直しが今後ある可能性JIS K 6850の登録情報(対応はISO 4587:1995)とISO 4587:2003の発行事実推測

7. 用語集

TC/SC
専門委員会(Technical Committee)/小委員会(Subcommittee)。ISOの規格を実際に作る単位で、会員のうち1機関が幹事国として運営する。
ICS
国際規格分類。接着剤(粘着テープを含む)は83.180に分類されている。
DIS
国際規格案(Draft International Standard)。投票を経て最終案、発行へと進む段階の案。
MOD(修正)
国の規格が国際規格を一部修正して採用していることを示す、JISの対応表示。
JISC
日本産業標準調査会。日本のISO会員で、ISO/TC 61/SC 11の幹事国を務める。

8. 出典

  1. ISO About us(規格数26,515・会員177・専門委員会844・1946年から活動・中央事務局の所在地)。 https://www.iso.org/about-us.html
  2. ISO Members(177の国家標準化機関、会員の種類、各国で規格を採用・販売)、および各会員のページ(JISC・DIN・ANSIは member body)。 https://www.iso.org/members.html
  3. ISO Structure(ジュネーブの中央事務局、会費と規格販売収入、中央事務局の費用は全体の約5分の1)。 https://www.iso.org/structure.html
  4. ISO Foreword - Supplementary information(ISO規格は voluntary で、国内法に取って代わらない)。 https://www.iso.org/foreword-supplementary-information.html
  5. ISO ISO/TC 61 Plastics(幹事国SAC〔中国〕、1947年設置、範囲に接着剤・シール・接合・溶接を含む、小委員会の一覧)。 https://www.iso.org/committee/49256.html
  6. ISO ISO/TC 61/SC 11 Products(幹事国JISC〔日本〕、1981年設置、範囲、WG 5 Polymeric adhesives、発行済み規格148件)。 https://www.iso.org/committee/49424.html
  7. ISO ICS 83.180 Adhesives(規格一覧:ISO 16525、ISO 21760、ISO 10364、ISO/DIS 10364など)。 https://www.iso.org/ics/83.180.html
  8. ISO ISO 4587:2003 規格ページ(題名・要旨・段階90.20)。 https://www.iso.org/standard/34852.html
  9. ISO ISO 11339:2022 規格ページ。 https://www.iso.org/standard/82657.html
  10. ISO ISO 10365:2022 規格ページ。 https://www.iso.org/standard/80800.html
  11. ISO ISO 9142:2003 規格ページ。 https://www.iso.org/standard/36282.html
  12. ISO ISO 29862:2024 規格ページ。 https://www.iso.org/standard/88050.html
  13. ISO ISO 11600:2002 規格ページ(建築用シーラント。担当 ISO/TC 59/SC 8)。 https://www.iso.org/standard/26328.html
  14. ISO ISO/TC 35 Paints and varnishes(幹事国NEN〔オランダ〕、範囲)。 https://www.iso.org/committee/47962.html
  15. ISO ISO/TC 138 Plastics pipes, fittings and valves for the transport of fluids(幹事国JISC〔日本〕)。 https://www.iso.org/committee/52500.html
  16. 日本規格協会(JSA) JIS K 6850:1999 登録情報(対応国際規格 ISO 4587:1995、対応の程度 MOD、確認 2023年10月20日)。 https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+K+6850:1999
  17. DIN Media EN ISO 11339:2022(欧州規格としてのISO規格の採用)。 https://www.dinmedia.de/en/standard/en-iso-11339/352305174

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
規格26,515件・会員177・専門委員会等844・1946年から活動・中央事務局がジュネーブ事実出典1 https://www.iso.org/about-us.html
会員は各国1機関、会員が規格を採用・販売、JISC・DIN・ANSIは member body事実出典2 https://www.iso.org/members.html
会費と規格販売収入、中央事務局の費用は全体の約5分の1事実出典3 https://www.iso.org/structure.html
規格は任意(voluntary)で、国内法に取って代わらない事実出典4 https://www.iso.org/foreword-supplementary-information.html
TC 61の幹事国(中国)・範囲に接着剤を含む・管の接合はTC 138の担当事実出典5 https://www.iso.org/committee/49256.html
SC 11の幹事国(日本)・範囲・WG 5・発行済み規格148件事実出典6 https://www.iso.org/committee/49424.html
ISO 16525、ISO 21760、ISO 10364の改訂案など、ICS 83.180の規格の題名・段階事実出典7 https://www.iso.org/ics/83.180.html
ISO 4587:2003の題名・要旨・見直し段階事実出典8 https://www.iso.org/standard/34852.html
ISO 11339:2022の題名・要旨・発行日事実出典9 https://www.iso.org/standard/82657.html
ISO 10365:2022の題名・要旨・発行日事実出典10 https://www.iso.org/standard/80800.html
ISO 9142:2003の題名・要旨・発行日事実出典11 https://www.iso.org/standard/36282.html
ISO 29862:2024の題名・要旨・発行日事実出典12 https://www.iso.org/standard/88050.html
ISO 11600:2002の題名・担当委員会(TC 59/SC 8)事実出典13 https://www.iso.org/standard/26328.html
TC 35の幹事国(オランダ)と範囲(塗料・ワニス)事実出典14 https://www.iso.org/committee/47962.html
TC 138の幹事国(日本)と範囲(プラスチック管)事実出典15 https://www.iso.org/committee/52500.html
JIS K 6850がISO 4587:1995に対応(MOD)事実出典16 https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+K+6850:1999
EN ISO 11339:2022(欧州での採用)事実出典17 https://www.dinmedia.de/en/standard/en-iso-11339/352305174
機関の4つの型の区分、図2の整理本稿の計算本稿による整理
半導体封止材の性能規格がICS 83.180の一覧に見当たらない未確定/将来出典7の題名一覧を本稿が確認した結果。他のICS分類は調べていない
ISO 4587の見直し結果、ASTMとの対応関係、中央事務局の職員数未確定/将来確認できなかった。本稿では推計しない
第6章のJIS見直しの可能性推測出典8・16の版の違いからの本稿の解釈

最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値と規格情報はISOの公式サイト、JSAのJIS情報、DINのカタログページに基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。