🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

住友ベークライト 企業解説

← 接着・封止材の解説一覧へ戻る

COMPANY PROFILE / 接着・封止材

住友ベークライト
― フェノール樹脂から出発した熱硬化性樹脂の会社が、半導体封止材(EME)を稼ぎ頭に育てている

半導体パッケージの封止材(エポキシ樹脂成形材料、通称EME)の話題で、住友ベークライトの名前がよく出ます。 2026年3月期の有価証券報告書によると、半導体関連材料セグメントの売上収益は1,064億円(前期比+16.5%)、事業利益は207億円でした。 同社は封止材を「世界トップシェア」と自社で位置づけていますが、これは会社の自己評価で、本稿では第三者の数字で確かめていません。 2026年1月には、京セラのケミカル事業のうち半導体封止材などを承継する会社の取得(取得価額300億円)に合意し、2026年10月に完了する予定です。 本稿は、この会社が接着・封止材に何を投じ、誰と組み、どこまで公表しているかを、一次資料の範囲で整理します。

構成:2026年3月期の有価証券報告書(2026年6月22日提出)、2027年3月期第1四半期の決算短信と説明資料(2026年8月)、2026年9月8日のIR事業説明会資料、公式の製品ページとニュースリリースを一次情報として使用/最終更新 2026年10月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかる住友ベークライトと、接着・封止材での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模
  5. 接着・封止材にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか
  9. 接着・封止材分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかる住友ベークライトと、接着・封止材での立ち位置

正式名称住友ベークライト株式会社英文名 Sumitomo Bakelite Company Limited
本店東京都品川区東品川二丁目5番8号
上場東証プライム 42031932年に日本ベークライトとして設立
この分野での区分半導体・電子材料メーカー
(従:機能性樹脂)
フェノール樹脂などの高機能プラスチックも主力
半導体関連材料の売上(2026年3月期)1,064億円連結売上の約33%(本稿の計算)
同事業利益207億円売上比19.5%(本稿の計算)
主な製品封止材(スミコンEME)
ボンディングペースト
感光性材料、パッケージ基板材料も
近況京セラの封止材事業を
2026年10月に取得予定
取得価額300億円。会社の予定
まず押さえるべき1点

住友ベークライトは、半導体材料の専業ではなく、フェノール樹脂を起点とする熱硬化性樹脂の総合メーカーで、半導体関連材料はその3本柱の1つです。 ただし、利益への寄与は大きい。2026年3月期は、半導体関連材料の事業利益が207億円で、3つの報告セグメントの事業利益の合計(約398億円)の約52%を占めました 本稿の計算。 売上では連結の約33%ですが、利益率が高い事業だということです 事実。 接着・封止材の観点では、固形のエポキシ封止材(EME)が主力で、液状封止材は2026年4月に顧客評価を始めた段階です。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は住友ベークライト株式会社(Sumitomo Bakelite Company Limited)です。有価証券報告書の沿革によると、1932年に三共からフェノール系合成樹脂事業を継承して日本ベークライトを設立し、1955年に住友化工材工業と合併して現社名になりました。 封止材の製品ブランドはスミコン(SUMIKON)です。会社のウェブサイトのドメインには略称の「sumibe」が使われています。 ロゴ画像は公式サイトのヘッダーに掲載されているものを取得しました。

公式サイト:https://www.sumibe.co.jp/

3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか

接着・封止材に関わる企業の3つの類型 同じ「接着剤の会社」でも、強みと売り先がまったく違う 総合接着剤・化学 半導体・電子材料 UV硬化・特殊用途 幅広い用途の接着剤を世界で売る 半導体メーカーと共同で材料を作る 光で固める・用途に作り込む Henkel/H.B. Fuller Sika/Dow ほか レゾナック/住友ベークライト Indium ほか Dymax/DELO Master Bond ほか 用途の広さと世界の販売網 顧客の工程に合わせた材料開発 硬化条件と用途への作り込み 景気と原料価格に左右される 半導体の需要変動に左右される 規模が小さく顧客が偏りやすい 住友ベークライトは中央の半導体・電子材料メーカー。封止材(スミコンEME)が主力の1つ 半導体関連材料は連結売上の約33%(2026年3月期)。京セラの封止材事業を2026年10月に取得予定
図1 接着・封止材に関わる企業の3類型と、住友ベークライトの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。区分は本稿によるもので、売上の割合は有価証券報告書から本稿が計算しました。

4. 会社の規模

グループは3つの報告セグメントを持ちます。接着・封止材は半導体関連材料に当たるので、会社全体は簡潔に示します 事実。

指標(百万円・IFRS)2025年3月期2026年3月期前期比
連結売上収益304,773319,867+5.0%
連結事業利益30,83734,490+11.8%
半導体関連材料の売上収益91,336106,396+16.5%
半導体関連材料の事業利益17,98820,714+15.2%
連結従業員数(年度末)7,9817,524―

「事業利益」は、売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を引いたもので、同社が使う指標です。 半導体関連材料の従業員は1,158人(2026年3月末。ほかに臨時従業員135人)で、連結の約15%です(本稿の計算)。 2026年4〜6月の第1四半期は、半導体関連材料の売上収益が342億円(前年同期比+40.0%)、事業利益が80億円(同+66.3%)でした。 AIデータセンター関連の需要が牽引し、特にパワーデバイス用途で伸びたと会社は説明しています 事実。

ここで注意

半導体関連材料の中でも、封止材(EME)だけの売上は公表されていません。有価証券報告書は、封止材・感光性材料・ボンディングペースト・パッケージ基板材料の増減を文章で述べるだけで、品目別の金額はありません。 本稿は品目別の売上を推計しません 未確定/将来。

5. 接着・封止材にかけているリソース

金額と人数は「半導体関連材料」の単位までは分かります。封止材・接着材だけの数字はありません。

リソース一次情報で確認できた内容区分
人半導体関連材料の従業員は1,158人(2026年3月末)。研究開発費(グループ全体133億円のうち半導体関連材料は43.59億円、約33%。本稿の計算)。研究開発の人員数は非公表。海外の研究・開発拠点(オープンラボ付き)が中国、台湾、シンガポール、米国、ベルギーにある事実/一部非公表
金(設備投資)2026年3月期の設備投資はグループ192.76億円、うち半導体関連材料が51.64億円(蘇州・シンガポールの封止材の製造設備増強など)。中国・蘇州では、2028年12月ごろに稼働する新ラインで中国の生産能力を約30%増やすと発表(金額は非公表)。中期経営計画(2024〜2026年度)の投資枠は、設備投資500億円、戦略的投資500億円、成長投資200億円事実/計画
買収・出資京セラのケミカル事業の一部(半導体封止用EME、ボンディングペースト、工業用樹脂)を承継する新設会社の株式を取得(取得価額300億円、2026年10月予定)。この事業の2025年3月期の売上高は232億23百万円。2001年に米国の電子材料研究部門(現Promerus)を買収事実/予定
大学・研究機関・公的資金東北大学と2025年1月に「次世代半導体向け素材・プロセス共創研究所」を設立。ジョージア工科大学とガラスパッケージ向け低誘電材料を共同研究。公的資金(補助金など)の具体的な金額は確認できず事実/金額は確認できず
開発・評価の場日本とアジア、欧米に、お客様が実際に成形や構造・プロセスを検討できるオープンラボを設けていると説明。装置メーカー・原料メーカー・大学・コンソーシアムとの協業も掲げる事実(会社の説明)
素材技術者の視点:封止材は「配合の会社」が強い

固形のエポキシ封止材は、エポキシ樹脂、硬化剤、高充填のシリカなどのフィラー、離型剤・難燃剤・カップリング剤などの添加剤を混ぜて粉砕・打錠したもので、配合と処方の技術で性能が決まります。 同社は、液状封止材の開発で「固形封止材で長らく培ってきた配合技術や処方技術」を応用したと説明しています 事実。 製品ページは、環境対応としてブロム系・アンチモン系の難燃剤を使わずにUL-94 V-0を達成していると記載しています(メーカー公称)。 同じ「封止材」でも、パッケージの種類ごとに、流動性・反り・熱伝導・耐熱・誘電特性の優先順位が違うため、製品がシリーズに分かれます(本シリーズの技術解説「半導体封止材」「モールディング」を参照)。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1932年三共からフェノール系合成樹脂事業を継承し、日本ベークライトを設立熱硬化性樹脂の会社としての出発点
1995〜1997年蘇州住友電木有限公司を設立(1995年)。中国で半導体封止材の生産を開始(1997年)中国で約30年の封止材の生産
2001年米国グッドリッチの電子材料研究部門(現Promerus, LLC)を買収半導体用の先端材料研究の拠点
2022〜2025年蘇州でラインを増設(2022年3月)。2024年に新工場が竣工し、2025年に稼働中国の需要増への対応
2025年1月東北大学と「次世代半導体向け素材・プロセス共創研究所」を設立大学との共同研究の枠組み
2026年1月22日京セラのケミカル事業の一部を承継する新設会社の株式取得を決議し、契約を締結封止材とボンディングペーストの規模と、京セラの高熱伝導技術を取り込む
2026年4〜5月AI向けなど大型パッケージ用の液状封止材「EME-Lシリーズ」の供試(顧客評価)を開始(4月に開始、5月18日に発表)。ECTC 2026で3件の共同研究を発表固形に加えて液状へ広げる
2026年6月SiCパワーモジュール向けの固形封止材「EME-G785シリーズ」の量産を開始(6月1日発表)。蘇州の封止材の生産能力を約30%増強すると発表(6月25日)。EMEの販売価格を約10〜20%引き上げると顧客に申し入れ(5月14日発表、6月1日出荷分から)パワー半導体とAIの両方への対応。原材料費の上昇への対応
2026年8月東北大学との共同研究で、樹脂絶縁基板と封止樹脂を使った3D SiCパワーモジュールを開発(8月18日発表)材料メーカーがモジュール設計の構想段階から参画

7. 今後の計画

2027年3月期の見通し(半導体関連材料)売上1,175億円
事業利益235億円
2026年5月発表の予想。8月に変更なし
京セラ事業の取得2026年10月
(末の完了予定)
競争法の審査は6月17日に通過と説明
蘇州の新ライン稼働は2028年12月ごろ中国の生産能力を約30%増やす計画
液状封止材の採用2027年の認定採用が目標EME-Lシリーズ。会社の目標

ほかに、次の計画が一次資料に書かれています 未確定/将来。

  • 中期経営計画(2024〜2026年度)の最終年度(2026年度)は、連結の事業利益400億円、事業利益率11.5%を目標とする(2027年3月期のグループ予想は事業利益380億円)。長期の「2030年ありたい姿」は事業利益550億円、事業利益率13.0%、ROE10.0%
  • 半導体関連材料では、AI、パワー、モビリティの3領域に注力し、AIサーバー向けの封止材(MUF・顆粒)、高熱伝導の材料などを広げる。台湾・シンガポールの2拠点で東南アジアの需要に対応する構想
  • 京セラ事業との統合(PMI)で、京セラの高熱伝導技術と同社の技術を組み合わせ、AIデータセンター向けで存在感を高める
  • MUF・顆粒の封止材や車載材の増加に対し、世界の生産能力を活用しつつ追加投資を検討中(金額・時期は非開示)
確認できなかったこと

封止材(EME)単独の売上と国別の売上/封止材の世界シェアの第三者による裏付け/蘇州の増強の投資額/京セラ事業取得後の統合の成果/液状封止材の採用の可否と時期(2027年は会社の目標)/研究開発の人員数。 いずれも有価証券報告書、決算短信、決算説明資料に記載がないか、会社の目標にとどまります。

8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか

会社が書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈です。

読み取れること根拠となる一次情報区分
「ニッチ&トップシェア」を目指し、事業の入れ替えも視野に入れる有価証券報告書の経営方針に「“ニッチ&トップシェア”を目指す」と記載。2026年9月の事業説明会は、事業を主力・収益・育成・見極めに分け、成長事業へ資源を配分し、M&Aへ戦略投資する方針を提示事実
半導体関連材料ではAI・パワー・モビリティの3領域に注力する有価証券報告書の研究開発の記述に「AI・パワー・モビリティの3強化領域に注力」と明記。2025年度に開発・上市した5製品も、AI向けのPDMSフリー封止材、パワー向けの高熱伝導封止材などが並ぶ事実
固形封止材の強みを土台に、液状封止材やMUF(モールドアンダーフィル)へ広げるEME-Lシリーズの発表文に「固形封止材で長らく培ってきた配合技術や処方技術を応用」とあり、アンダーモールドとオーバーモールドの一体化を謳う。説明資料にも「MUF・顆粒」「AI半導体液状封止材の顧客評価開始」事実(開発)/推測(意図)
M&Aで能力と技術を一括して取り込む方針京セラのケミカル事業を承継する新設会社の取得を決定し、「京セラが有する独自の高熱伝導技術」との融合でAIデータセンター向けのプレゼンスを高めると記載。中期計画で戦略的投資枠500億円を設定事実
顧客だけでなく大学・パッケージ企業との共同研究で次世代の仕様づくりに入り込む東北大学の共創研究所、ジョージア工科大学、SPIL/MediaTekとの共同研究をECTC 2026で発表事実(活動)/推測(狙い)
推測の根拠を1つだけ詳しく

「液状封止材やMUFへ広げる意図」という読みの根拠は、顧客の要望の変化に会社が言及している点です。 EME-Lシリーズの発表文は、生成AIの普及で2.xD/3D構造やチップレット構造が進み、パッケージ自体が大型化しているため、液状封止材にも低反り性と加工性能の向上が求められ、「お客様からの強い要望を受けて」開発に着手したと書いています 事実。 同社の主力は固形封止材で、液状は2026年4月に供試を始めたばかりです。 主力を守りながら、液状側にも手を伸ばさなければ、大型パッケージの顧客を取り逃がしかねないという危機感があると読めます。 ただし、2027年の認定採用は会社の目標で、採用されるかは分かりません 未確定/将来。

9. 接着・封止材分野の提携マッピング

住友ベークライトを中心とした接着・封止材分野の提携関係 有価証券報告書・決算説明資料・公式のニュースリリースに記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない 住友ベークライト 半導体関連材料 東北大学 共創研究所(2025年1月) ジョージア工科大学 ガラス向け低誘電材料 SPIL/MediaTek 車載向け高熱伝導封止材 京セラのケミカル事業 300億円で取得予定(10月) Promerus(米国) 2001年に買収。研究拠点 封止材の供給先 半導体メーカーは社名の開示なし 共同研究・共創 出資・買収(点線。京セラは予定)
図2 住友ベークライトを中心とした接着・封止材分野の提携関係。出典:有価証券報告書(2026年3月期)、2026年9月8日のIR事業説明会資料、公式のニュースリリース。図に含めたのは公式資料に記載がある関係だけです。SPIL/MediaTekとは、ECTC 2026で発表した車載向け高熱伝導封止材の共同研究です。京セラのケミカル事業は2026年10月の取得予定で、完了前の関係です。封止材を実際に使う半導体メーカーの社名は、開示されていないため図に含められません。

共同研究の相手は、大学(東北大学、ジョージア工科大学)と、パッケージ・チップ企業(SPIL、MediaTek)が公式資料に名前で出ています 事実。 一方、封止材を実際に使う半導体メーカーとの取引は、顧客名を挙げた記載が確認できませんでした。決算説明資料には「米国航空宇宙大手と長期契約済」などの表現がありますが、社名はなく、会社の説明にとどまります 未確定/将来。

10. 提供している技術・製品・サービス

公式の製品ページ「情報通信材料営業本部」と有価証券報告書から、接着・封止材に関わる品目を整理します。性能の数値は載せません(メーカー公称の値は、グレード・試験条件を揃えて見る必要があるため) 事実。

区分公式資料に載っている品目ひとこと
封止材(固形・EME)半導体封止用エポキシ樹脂成形材料「スミコンEME」。トランスファー成形とコンプレッション成形に対応。パッケージ別にシリーズ展開:標準のDIP・QFP向け、BGA・CSP向け(低反り・高流動・高熱伝導)、FCCSP・SiP向け(狭い隙間の充填)、AiP向け(低誘電)、WLP・PLP向け(低反り)、パワーモジュール向け(高Tg)、モーターのローター磁石固定向けなど技術解説「半導体封止材」「モールディング」を参照
封止材(SiCパワー向け)EME-G785シリーズ。同社の調べで、固形エポキシ封止材として業界初のガラス転移温度(Tg)230℃を実現し、低応力化技術で弾性率の上昇を抑えたと発表(2026年6月)メーカー公称。同社の旧シリーズのTgは195℃(同社の比較表)
封止材(液状)EME-Lシリーズ。低反り・高信頼性の液状封止材で、モールドアンダーフィルが可能な品目もある。2026年4月から供試、2027年の認定採用を目標技術解説「アンダーフィル」を参照
ダイボンディングダイボンディング用ペースト「SUMIRESIN EXCEL CRM」。チップの接着と熱拡散性の確保に使う。有価証券報告書では「半導体用ボンディングペースト」として、中国・東南アジア・パワーデバイス・車載向けの増加に言及技術解説「ダイアタッチ」「ペースト」を参照
感光性材料・基板材料ウェハーコート用の感光性材料「SUMIRESIN EXCEL CRC」(前工程)、パッケージ基板材料「SUMILITE LαZ」、ビルドアップ材料、ソルダーレジスト代替材料、ガラス基材向けの低弾性率ビルドアップ材料接着剤ではないが、同じ顧客の工程で使う
周辺材料・工程ダイシング用フィルム「SUMILITE FSL」、搬送用のカバーテープ。モーター磁石固定用や、ECU・センサーの一括封止用の封止材も半導体の工程全体を並べて提案
素材技術者の視点:高Tgと低応力の両立、そして反り

SiCパワーモジュール向けの封止材では、高温でも柔らかくならないこと(高Tg)が求められます。しかし、同社の発表文は、エポキシのTgを200℃以上に上げようとすると架橋密度が上がって弾性率(硬さ)が増し、ヒートサイクルで剥離やクラックが起きやすくなるというトレードオフがあると説明しています 事実。 同社は、樹脂の主鎖骨格を剛直にして架橋密度を最適化し、さらに低応力化技術で弾性率の上昇を抑えたとしています(メーカー公称。製品ごとの値は技術データシートで条件を確認する必要があります)。 AI向けの大型パッケージでは、別の課題として反りが前面に出ます。封止材が硬化するときの収縮と、チップ・基板の熱膨張の差が反りを生むため、低反りの封止材の設計(フィラー量、樹脂の骨格、応力緩和剤)が中心になります 未確定/将来。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
京セラ事業の統合取得は2026年10月の予定で、競争法の審査は通過と説明。統合後に、2025年3月期で売上232億円の事業を取り込み、シナジーを出せるかは未確認事実(予定)/推測(統合の難しさ)
原材料と価格転嫁有価証券報告書は、原材料の供給問題・価格変動を発生可能性「4(最も高い)」と評価。2026年にはEMEの販売価格を約10〜20%引き上げると顧客に申し入れた。顧客が受け入れるかは別問題事実
中国・地政学蘇州の封止材は中国の需要増の恩恵を受けるが、米中貿易摩擦や経済安全保障政策の強化が、輸出入や取引に影響しうると有価証券報告書が記載(影響度「4(最も大きい)」)。2028年末の増設は中国への投資をさらに増やす事実/推測
AI・パワー需要への集中2026年4〜6月の増収は、AIデータセンター関連とパワーデバイスが牽引と会社が説明。需要が変動した場合の影響が大きい事実(要因)/推測(影響)
液状封止材の採用の不確実性2027年の認定採用は会社の目標。顧客評価の結果次第で、時期も採用の有無も変わりうる事実(目標)
製品の品質有価証券報告書は、主要リスクの1つとして製品の品質を挙げる。半導体の封止材は、わずかな不良でも顧客の歩留まりに響く事実(記載)/推測(影響)
外部からの検証の難しさ封止材単独の売上、増設の投資額、世界シェアの第三者の裏付けがなく、「世界トップシェア」は会社の自己評価として読むしかない未確定/将来

12. 用語集

事業利益
住友ベークライトが使う指標。売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を引いたもの。
EME(エポキシモールディングコンパウンド)
半導体チップを包んで保護する、エポキシ樹脂ベースの成形材料。固形の粉や顆粒を加熱して成形する。
MUF(モールドアンダーフィル)
チップ下の隙間の充填と、チップ全体の封止を、1つの材料・工程で行う方式。
トランスファー成形/コンプレッション成形
金型に封止材を流し込む方式と、金型の上から押し付けて成形する方式。大面積のパッケージには後者が使われる。
ガラス転移温度(Tg)
樹脂が硬い状態から柔らかい状態へ変わる温度。封止材では、高温での形の保ちやすさの目安になる。
パワーデバイス(SiC)
電気自動車やデータセンターの電力変換に使う半導体。SiC(炭化ケイ素)は高温・高電圧に強い。
AiP
Antenna in Package。アンテナをパッケージに内蔵する構造で、封止材には低い誘電率が求められる。
PMI
買収後の統合作業(Post Merger Integration)。
概念図:封止材の成形工程と、大型パッケージ、パワーモジュールの封止
図3 半導体封止材の中心的な工程の概念図(AI生成による概念図。実際の工場や製品を写したものではありません)。封止材の粉末を成形装置の金型で押し付ける工程と、できあがった大型パッケージ、パワーモジュールの封止を、1枚の場面に描いています。

13. 出典

  1. 住友ベークライト 有価証券報告書(第135期、2026年3月期、2026年6月22日提出)。沿革、事業の内容、従業員数、業績、研究開発、設備投資、事業等のリスク、京セラの事業承継(追加情報)。 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/report/files/135.pdf
  2. 住友ベークライト 2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月3日)。2026年4〜6月の業績とセグメント別の状況。 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/result/files/2026/0803_01.pdf
  3. 住友ベークライト 2027年3月期第1四半期決算説明会資料(2026年8月3日)。2027年3月期の通期予想(セグメント別)。 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/presentation/files/2026/0803_02.pdf
  4. 住友ベークライト IR事業説明会プレゼンテーション資料(2026年9月8日)。半導体関連材料の見通しと取り組み、蘇州の増強、京セラ事業の進捗、中期計画の投資。 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/presentation/files/2026/0908.pdf
  5. 住友ベークライト 「京セラ株式会社のケミカル事業の一部を吸収分割により承継する新設会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2026年1月22日)。 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/pdf/0122_01.pdf
  6. 住友ベークライト 「蘇州住友電木有限公司における半導体封止材の生産能力増強について」(2026年6月25日)。 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0619_01/index.html
  7. 住友ベークライト 「先端パッケージ用液状封止材の供試開始のお知らせ」(2026年5月18日)。 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0514_01/index.html
  8. 住友ベークライト 「SiCパワーモジュール封止材料向け『G785シリーズ』量産開始」(2026年6月1日)。メーカー公称。 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0428_01/index.html
  9. 住友ベークライト 「半導体封止用エポキシ樹脂成形材料(スミコンEME)の価格改定について」(2026年5月14日)。 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0509_01/index.html
  10. 住友ベークライト 「半導体実装技術の国際学会『ECTC 2026』に参加」(2026年5月15日)。 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0511_01/index.html
  11. 住友ベークライト 「超小型・高出力密度を実現した次世代3Dパワーモジュールを開発」(2026年8月18日)。 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0804_01/index.html
  12. 住友ベークライト 製品情報「情報通信材料営業本部」(公式の製品ページ)。 https://www.sumibe.co.jp/product/it-materials/index.html
  13. 住友ベークライト 製品情報「半導体封止用エポキシ樹脂成形材料 スミコンEME」(公式の製品ページ)。 https://www.sumibe.co.jp/product/it-materials/epoxy/sumikon-eme/index.html
  14. 住友ベークライト 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.sumibe.co.jp/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本店所在地、上場市場・証券コード、沿革(1932年の設立、1955年の合併、1995年の蘇州の設立、2001年のPromerus買収)事実出典1 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/report/files/135.pdf
連結売上収益・事業利益、半導体関連材料の売上収益1,064億円・事業利益207億円(2026年3月期)と前期の値、従業員数事実出典1 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/report/files/135.pdf
半導体関連材料の割合(連結売上の約33%、セグメント利益合計の約52%、従業員の約15%、研究開発費の約33%)と事業利益率19.5%本稿の計算本稿による割り算(出典1の数値から)
半導体関連材料の主要製品(封止用EME、感光性材料、ボンディングペースト、基板材料LαZ)と2026年3月期の増減の説明事実出典1 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/report/files/135.pdf
研究開発費(グループ133億円、半導体関連材料43.59億円)、設備投資(グループ192.76億円、半導体関連材料51.64億円)、開発・上市した5製品事実出典1 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/report/files/135.pdf
2026年4〜6月の半導体関連材料の売上342億円(+40.0%)・事業利益80億円(+66.3%)と、AIデータセンター関連・パワーデバイスが牽引したとの説明事実出典2 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/result/files/2026/0803_01.pdf
2027年3月期の見通し(半導体関連材料の売上1,175億円・事業利益235億円、連結の売上3,370億円・事業利益380億円)未確定/将来出典3 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/presentation/files/2026/0803_02.pdf
京セラのケミカル事業の一部を承継する新設会社の取得(取得価額300億円、2025年3月期の売上232.23億円、2026年10月予定、取引関係の記載)事実出典5 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/pdf/0122_01.pdf
京セラ事業の進捗(競争法の審査通過、10月末のクロージング予定)、事業の入れ替えとM&Aの方針、中期計画の投資枠、2030年ありたい姿、AI・パワー・モビリティの取り組み未確定/将来出典4 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/presentation/files/2026/0908.pdf
中期経営計画(2024〜2026年度)の目標(事業利益400億円)と投資枠(設備投資500億円、戦略的投資500億円、成長投資200億円)未確定/将来出典1 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/report/files/135.pdf 出典4 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/presentation/files/2026/0908.pdf
蘇州住友電木の封止材の生産能力の約30%増強(2028年12月ごろ稼働)、中国での封止材生産の歴史(1997年開始、2022年の増設、新工場)事実出典6 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0619_01/index.html 出典4 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/presentation/files/2026/0908.pdf
液状封止材EME-Lシリーズの供試開始(2026年4月)、2027年の認定採用の目標、「世界トップシェア」との自己評価事実出典7 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0514_01/index.html
EME-G785シリーズの量産開始(Tg230℃は同社調べ、旧シリーズの比較、高Tgと低応力のトレードオフの説明)事実出典8 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0428_01/index.html
EMEの販売価格の約10〜20%引き上げの申し入れ(2026年6月1日出荷分から)と、中東情勢による原材料費の上昇事実出典9 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0509_01/index.html
ECTC 2026での3件の共同研究発表(東北大学、ジョージア工科大学、SPIL/MediaTek)事実出典10 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0511_01/index.html
東北大学との共創研究所(2025年1月設立)と3D SiCパワーモジュールの開発事実出典11 https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0804_01/index.html
スミコンEMEのシリーズ構成、成形方法、環境対応(ブロム・アンチモンフリーでUL-94 V-0)事実出典13 https://www.sumibe.co.jp/product/it-materials/epoxy/sumikon-eme/index.html
ダイボンディングペースト、感光性材料、パッケージ基板材料、ダイシングフィルム、カバーテープなどの品目、オープンラボ、協業の記載事実出典12 https://www.sumibe.co.jp/product/it-materials/index.html
事業等のリスク(原材料の供給問題・価格変動、地政学、製品の品質など)の記載事実出典1 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/report/files/135.pdf
研究開発の人員数、封止材単独の売上、蘇州の増設の投資額、世界シェアの第三者による裏付け、公的資金の具体的な金額未確定/将来出典1〜4に記載なし。確認できず。本稿では推計しない 出典1 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/report/files/135.pdf 出典2 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/result/files/2026/0803_01.pdf 出典3 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/presentation/files/2026/0803_02.pdf 出典4 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/presentation/files/2026/0908.pdf
封止材を使う半導体メーカーの具体名と取引額未確定/将来出典1〜4に記載なし(「米国航空宇宙大手」など社名のない表現のみ)。確認できず 出典4 https://www.sumibe.co.jp/ir/library/presentation/files/2026/0908.pdf
3類型の区分(総合接着剤・化学/半導体・電子材料/UV硬化・特殊用途)と企業名の例示、「半導体材料の専業ではなく、熱硬化性樹脂の総合メーカー」という整理本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
液状封止材やMUFへ広げる意図という読み推測EME-Lシリーズの発表文(出典7)と説明資料(出典4)からの本稿の解釈
大学・パッケージ企業との共同研究で次世代の仕様づくりに入り込むという読み推測共同研究の発表(出典10・11)からの本稿の解釈
京セラ事業の統合の難しさ、中国・AI需要への集中などのリスクの読み推測出典1〜5からの本稿の解釈

最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値は、住友ベークライトの有価証券報告書・決算短信・決算説明資料・公式のニュースリリースに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。