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シーカ 企業解説

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COMPANY PROFILE / 接着・封止材

シーカ
― 建設化学の総合メーカーが、接着剤・シーラントを成長の柱に据え、トルコのAkkimを買収した

Sika AGはスイスの建設化学・工業材料の大手で、コンクリート混和剤、防水、屋根、床材といった事業のなかに接着剤とシーラントを持っています。 建設現場の目地シーリングや弾性接着から、自動車の窓ガラス接着・車体の構造接着までを手がけ、 1980年代にSikaflexで自動車分野に入ったと会社は書いています。 2026年2月には、トルコの接着剤・シーラント大手Akkimの買収を発表し、9月3日に完了しました。 本稿は、会社が公表する年次報告書・半期報告書・ニュースリリース・技術データシートを一次情報として、 接着・封止材の会社としてSikaが何を作り、何にどれだけ投じ、どこと組んでいるかを整理します。 なお、接着・封止材だけの売上は公表されていません。

構成:Sika AGのAnnual Report 2025、Half-Year Report 2026、公式サイトの用途・研究開発ページ、2026年のニュースリリース、製品データシート(Sikaflex-221)を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるSikaと、接着・封止材での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模
  5. 接着・封止材にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか
  9. 接着・封止材分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるシーカと、接着・封止材での立ち位置

正式名称Sika AG日本法人はシーカ・ジャパン株式会社
本社スイス・バール
(ツーク州)
年次報告書の所在地表記はBaar
上場SIX Swiss Exchange
(チューリヒ)
登録株式160,479,293株
この分野での区分総合接着剤・化学(主)建設化学が中心。接着剤・シーラントは柱の一つ
売上(2025年12月期)CHF 11,201.3百万前年比 -4.8%(スイスフラン)、現地通貨で +0.6%
従業員33,707人2025年末。102か国に現地法人
中心の材料・用途弾性接着剤・シーラント
構造接着・自動車
PU・SMP・エポキシ・シリコーンなど
直近の動きAkkimの買収完了
2026年9月3日
2025年の売上は約CHF 220百万の接着剤・シーラント会社
まず押さえるべき1点

接着・封止材の会社は、大きく総合接着剤・化学メーカー/半導体・電子材料メーカー/UV硬化・特殊用途メーカーに分かれます。 Sikaの主たる姿は総合接着剤・化学メーカーです 本稿の計算。 ただし、HenkelやH.B. Fullerのように接着剤が事業の中心にあるのではなく、 建設化学(コンクリート混和剤、防水、屋根、仕上げ材、床材、補修)のなかに接着剤・シーラントがある会社です 事実。 会社は8つの「対象市場」を挙げ、接着剤・シーラントは「Sealing & Bonding」(建設向け)と「Industry」(自動車・工業向け)にまたがりますが、 これらだけの売上は公表されていません 未確定/将来。 このため本稿は、会社全体の数字と、接着・封止材に関わる事実(買収、研究開発、製品ブランド、公称値)を分けて書きます。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:親会社は Sika AG(スイスの株式会社)で、日本ではシーカ・ジャパン株式会社が事業を行っています。 ロゴ画像は、同社の公式サイトのヘッダーで使われているものを取得して設置しています。 会社は1910年にKaspar Winklerが防水混和剤「Sika-1」を発明して創業した、と沿革ページに書いています。 製品名の Sikaflex、SikaBond、SikaPower、Sikasil などは商標で、ブランド名として本稿に出てきます。

公式サイト:https://www.sika.com/en/

3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか

接着・封止材に関わる企業の3つの類型 同じ「接着剤の会社」でも、強みと売り先がまったく違う 総合接着剤・化学 半導体・電子材料 UV硬化・特殊用途 幅広い用途の接着剤を世界で売る 半導体メーカーと共同で材料を作る 光で固める・用途に作り込む Henkel/H.B. Fuller Sika/Dow ほか レゾナック/住友ベークライト Indium ほか Dymax/DELO Master Bond ほか 用途の広さと世界の販売網 顧客の工程に合わせた材料開発 硬化条件と用途への作り込み 景気と原料価格に左右される 半導体の需要変動に左右される 規模が小さく顧客が偏りやすい Sikaは左の「総合接着剤・化学」。建設化学の総合メーカーで、接着・シーラントはその柱の一つ 接着・封止材だけの売上は非公表。建設向けが売上の約85%、自動車・工業向けが約15%を占める
図1 接着・封止材に関わる企業の3類型と、Sikaの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。「建設向け約85%、工業製造向け約15%」は、2025年12月期の「建設向け製品」9,555.0百万CHFと「工業製造向け製品」1,646.3百万CHFを売上11,201.3百万CHFで割った本稿の計算で、接着・封止材の比率ではありません(出典1)。

Sikaは自社を、建築・自動車産業における接着・シール・制振・補強・保護の技術の会社と説明しています 事実。 対象市場の数は、本社の説明が「8つ」、工業向けサイトの説明が「7つのうちの1つ」と書いており、資料によって食い違います。 年次報告書は8つの名前(Concrete、Waterproofing、Roofing、Building Finishing、Flooring、Sealing & Bonding、Engineered Refurbishment、Industry)を挙げ、 Industryの中に自動車(Automotive)を含めています。

4. 会社の規模

大企業のため、会社全体の売上・従業員を簡潔に示し、接着・封止材に近い事業の数値を別に示します 事実。会計年度は暦年(1〜12月)です。

指標(百万スイスフラン)2024年2025年2026年1〜6月
売上11,763.111,201.35,589.8
前年比(現地通貨)本稿では未確認+0.6%+4.0%
EBITDA2,269.52,064.71,063.0
EBITDA率約19.3%(本稿の計算)18.4%19.0%
純利益1,247.61,045.3552.1
研究開発費(売上比)278.1(2.4%)280.8(2.5%)半期は記載なし
設備投資(有形・無形)359375(3.4%)192.4(3.4%)
従業員(人、期末)34,47633,70733,856
2025年の売上の内訳(百万スイスフラン)金額前年比(現地通貨)
建設向け製品9,555.0+0.5%
工業製造向け製品(自動車・商用車・再エネ・家電・窓・ファサードなど)1,646.3+1.4%
EMEA5,028.9+2.2%
南北アメリカ3,878.8+2.2%
アジア太平洋2,293.6-5.3%
ここで注意

上の数字は会社全体のものです。接着剤・シーラント(建設向けのSealing & Bonding、自動車・工業向け)だけの売上・利益は公表されていません 未確定/将来。 また、会社の年次報告書には市場規模に関する数字(「建設化学と工業材料の市場は1,100億スイスフラン超」など)がありますが、 これは調査会社のデータを引いたものなので、本稿では採用しません。 2025年は、為替の影響(スイスフラン高で -5.4%)と、中国の建設事業の2桁減などで、スイスフランでの売上が減りました。 売上の増減を読むときは、スイスフラン建てと現地通貨建てを区別してください。

5. 接着・封止材にかけているリソース

4点(人・金・外部への出資・買収・大学や公的機関との連携)を、会社全体の数字と接着・封止材の具体例に分けて表にします。

リソースの種類内容区分
人(研究開発)研究開発の人員1,841人、世界に16のグローバル・テクノロジーセンター、現地研究所は100超(2025年の報告書と研究開発のページ)。接着・封止材に限った人員は非公表事実(接着分は非公表)
金(研究開発)研究開発費はCHF 280.8百万で売上の2.5%(2025年、会社全体)。接着・封止材だけの金額は非公表事実
金(設備投資)2025年の投資額はCHF 375百万(売上の3.4%)。内訳は能力増強41%、既存設備の保守・更新28%、合理化・効率化・デジタル化24%、環境・安全・品質7%。2026年上期は7つの新工場への投資。接着・封止材向けの例:蘇州の既存工場を拡張し、高粘度ポリウレタンの接着・シール製品(自動車・建設・工業向け)に特化(2025年6月)事実(接着分の金額は非公表)
外部への出資・買収・合弁・事業売却Akkim(トルコの接着剤・シーラント。2026年2月13日に買収で合意、9月3日に完了。2025年の売上は約CHF 220百万。買収額は公表資料に記載なし)。ほかに2023年5月にMBCC(建設化学)、2025年にElmich、Cromar、HPS North America、GAF、Marlon、Gulf Seal、2026年2月にFinja(モルタル。買収額は約CHF 130百万)。上に挙げた買収のうち、接着剤・シーラントを主とするのはAkkimだけ事実
大学・研究機関・公的資金接着技術の共同委員会GAK(ドイツ)に25年以上関わり、2019年からパーダーボルン大学LWFの研究プロジェクト(車載電池ケース、オフロード機械、基礎研究)に参加し、Sikaの接着剤・シーラントが試験された。ほかにETH Zurichの「Living Lab HIL」への資金提供(2026〜2028年)、スイスの研究助成機関Innosuisseとの協力(建設分野)。年次報告書に政府の支援(CHF 6.8百万、会社全体)の記載事実
素材技術者の視点:大手の「研究開発費2.5%」をどう読むか

Sikaの研究開発費の比率(2.5%)は、専業メーカーの数字(本シリーズのDELOは約15%)とは桁が違って見えます。 ただし、Sikaの売上の大半はコンクリート混和剤・防水・モルタルなどの建設材料で、 これらは少量の特殊配合で現場の性能を出す材料なので、比率だけで開発の厚みを比べることはできません 未確定/将来。 数字から言えるのは、1,841人の研究開発人員、1,572の特許ファミリー、5,430の各国特許という研究開発の規模と、 接着剤が「数十年にわたる中核事業」で、弾性・構造接着剤とシーラントの技術リーダーだと会社が説明していることです 事実。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1910年Kaspar WinklerがスイスでSika-1(セメントの防水混和剤)を発明し、創業。ゴッタルド鉄道トンネルの防水に使われた建設化学が原点
1980年代接着剤Sikaflexで自動車産業に参入。沿革ページの写真説明に「1980年代後半のBMW 7シリーズのフロントガラス」建設化学から離れた最初の大きな分野
2000年接着・シール・制振・補強・保護の5つを中核技術として整理「基礎から屋根まで」の方針
2023年5月MBCCの買収を完了(同社の歴史で最大)建設化学の拡大。統合は2025年も継続
2025年効率化・投資プログラム「Fast Forward」を開始。6社を買収(接着剤が中心ではない)。蘇州の高粘度PU工場を拡張組織の効率化と、接着・シール製品の生産能力の増強
2026年2月Finja(スウェーデンのモルタル)を買収。2月13日にAkkimの買収で合意接着・シーラントの品揃えと生産能力の拡大へ
2026年9月3日Akkimの買収を完了接着剤・シーラント事業の地理的な拡大

7. 今後の計画

Strategy 2028年3〜6%成長
(市場を上回る)
現地通貨。EBITDA率20〜23%を目標
Fast Forward年間CHF 150〜200百万
の効果
2028年に全面効果。2026年は約CHF 80百万
2026年の見通し売上成長3〜6%
EBITDA率19.0〜19.5%
2026年上期の報告書で引き上げ
Akkimの活用接着剤・シーラントの
製造・輸出拠点
トルコとルーマニアに2工場。トルコに追加の大規模拠点を計画

これらはすべて会社の目標・見通しであり、達成された事実ではありません 未確定/将来。 Strategy 2028は、市場浸透・技術革新とサステナビリティ・買収・人材の4本柱で、買収は「補完的な技術と市場へのアクセス、販路の拡大」の手段と位置づけられています。 Akkimの発表は、Strategy 2028が接着剤・シーラント事業の拡大と、その分野での販路の強化に重点を置くと書いています。

確認できなかったこと

次はいずれも公開資料に記載がありません 未確定/将来。

接着剤・シーラントだけの売上と利益/Akkimの買収額と、買収後の売上への寄与/接着・封止材の売上の中期目標/ 自動車向けの接着剤の売上比率/主要顧客の名前と売上比率(自動車メーカーの名は、沿革の写真説明に出るBMWを除いて挙がっていません)。

8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
接着剤・シーラントを、流通チャネル(ディストリビューター、小売、EC)を通じて売る商品へ広げようとしているAkkimの発表が「流通チャネル向けの接着剤・シーラントの生産・輸出拠点」「流通・小売・eコマース事業の拡大」と書く。2026年上期の報告書も、EMEAでDIY・オンラインが好調と記載事実(方向性の読みは推測)
東欧・中央アジア・中東・北アフリカを、接着剤の次の成長地域とみているAkkimの販路が東欧、中央アジア、中東、北アフリカに集中していると会社が説明事実
買収で接着剤の品揃えと生産能力を、自社開発より速く増やすAkkimが「独自配合を持つ研究開発チーム」と「2つの大規模工場」を持つと説明。Strategy 2028で買収を柱の一つとする推測
建設では、補修(リファービッシュメント)の需要が接着・シールの安定した需要になる年次報告書は、建設関連の売上の約55%が補修(成熟市場では約70%)と書く。建設用接着剤のページは、弾性接着剤が機械的な固定より応力を分散し、速く安全に施工できると説明事実(需要の安定性は推測)
自動車では、軽量化と低エネルギーの工程に合う接着剤を軸にする年次報告書が、低温硬化(ローベーク)の接着剤、水系の活性化剤、構造インサートを挙げる。剥離(デボンディング)できる接着剤で分離・リサイクルを助ける、とも書く事実(戦略上の位置づけは推測)
推測の根拠を1つだけ詳しく

Akkimの2025年の売上は約CHF 220百万で、Sika全体(CHF 11,201.3百万)の約2%です 本稿の計算。 金額としては小さい買収ですが、会社の説明は金額ではなく「販路」と「生産・輸出拠点」を強調しています 事実。 Sikaの接着剤はこれまで、現場の職人や工業メーカーに技術提案をして売る色が強いと考えられますが、 Akkimは流通網を通じて幅広い建設用の接着剤・シーラントを売る会社です。 ここから、Sikaは専門職向けのプロジェクト型の販売から、流通・小売・ECの商品型へ、接着剤の売り方を広げようとしていると本稿は読みます 未確定/将来。 ただし、Sikaの現在の販売チャネル別の売上は公表されていないため、どこまで比重を移すのかは分かりません。

9. 接着・封止材分野の提携マッピング

Sikaを中心とした提携・買収・取引の関係 Sikaの年次報告書・公式サイト・リリースに記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない Sika 建設化学 パーダーボルン大学LWF 接着の研究プロジェクト(2019年〜) Akkim 接着剤・シーラント(2026年9月買収) BMW Sikaflex(1980年代後半の窓ガラス) ETH Zurich Living Lab HILに資金提供(建築) MBCC(2023年5月に買収、建設化学。統合は継続中) 共同研究・資金提供 納入先(沿革ページ) 買収(点線)
図2 Sikaを中心とした提携・買収・取引の関係。出典:Sikaの公式サイト(研究開発・沿革のページ)、年次報告書、2026年のニュースリリース。図に含めたのは、会社の資料に記載がある関係だけです。BMWは、会社の沿革ページの写真説明に「1980年代後半のBMW 7シリーズのフロントガラスにSikaflexを使用」とある関係で、現在の取引ではありません。ETH Zurichは建築分野のプロジェクトで、接着剤とは直接の関係はありません。自動車メーカーや流通業者との現在の取引関係は、社名が公表されていないため図にありません。

10. 提供している技術・製品・サービス

Sikaの工業向けの接着・シール製品は、化学の系統ごとのブランドに分かれています 事実。 会社は、接着・シール・制振・補強・保護を5つの中核技術と位置づけ、 接着で「溶接・ネジ・ボルト・釘を置き換え、シールや制振、表面の凹凸の吸収などの機能を同時に足せる」と説明しています。

ブランド会社の説明(要旨)
Sikaflex1液のポリウレタンとシラン末端ポリマー(SMP)の接着剤・シーラント。ガラス接着、シール、接着、ベッディング、コーキングなど。用途に合わせて力学特性を変えられる
SikaTack1液のポリウレタン接着剤。自動車の窓ガラス交換、ダイレクトグレージング、ファサードのパネル接着
Sikasil1液・2液のシリコーン接着剤。ガラス、塗装金属、プラスチック、木材への接着。高い耐UV性と温度安定性を要する自動化工程向け
SikaPowerエポキシ接着剤。金属・複合材の接着で、高い静荷重と衝撃・疲労への耐性を要する場面
SikaForce/SikaFast2液ポリウレタン接着剤(パネル・複合材・車両)/速硬化のアクリル系構造接着剤
SikaMelt/SikaLastomer/SikaSealホットメルト(工業ラミネート)/ブチルテープとシーラント/車両組立のマスチックと防振接着
SikaBiresin RE電子部品のポッティング・封止用のポリウレタン・エポキシ樹脂。鉛フリーはんだ工程の温度に耐える。会社は「年1,000万個超のエアバッグセンサーの封止」「年1億個超の車載コネクタの保護」と説明(会社の説明であり、本稿では検証していない)

建設向けでは、弾性接着(ビードや点状に塗って厚い層を作り、応力を分散する)と、剛性接着(面に塗って強固に固定する)、目地シーリング(動きを許しつつ水・空気・熱・蒸気を通さない)を提供しています。 目地シーラントでは、VOC、フタル酸エステル、錫触媒、イソシアネートが、地域の規制やグリーンビルディングの要件によって問題になりうる、と会社は書いています。

代表例として、1液ポリウレタンの汎用の接着シーラントSikaflex-221の技術データシート(2026年3月版)から、メーカー公称値を示します。

項目メーカー公称(Sikaflex-221)試験法・条件
化学系・硬化1液ポリウレタン、湿気硬化―
表面硬化までの時間(皮張り)60分CQP019-1、23℃/50%RH
ショアA硬度40CQP023-1/ISO 48-4
引張強さ1.8MPaCQP036-1/ISO 527
破断伸び500%CQP036-1/ISO 527
引裂伝播抵抗7N/mmCQP045-1/ISO 34
使用温度-50〜90℃(連続)、120℃(24時間)、140℃(1時間)CQP513-1
貯蔵期間12か月CQP016-1、25℃未満で保管
素材技術者の視点:「伸びる接着剤」は、硬さではなく動きを許す設計

Sikaflex-221の公称値は、ショアA 40・引張強さ1.8MPaと、構造用の硬い接着剤に比べて低い一方で、破断伸び500%という大きな伸びを持ちます 事実。 建築や車両で、異なる材料が温度や湿度で別々に伸び縮みするとき、接着層が柔らかく伸びて応力を逃がすことで、接合部が壊れにくくなります(一般的な説明)。 会社の建設用接着剤のページも、弾性接着剤は機械的な固定より荷重を広い面で均一に分散し、厚い接着層が応力の補正と伝達に役立つと説明しています。 湿気硬化のポリウレタンは、空気中の水分と反応して固まるため、データシートは低温では空気の水分が少なく硬化がやや遅くなることと、 実際の基材で接着と材料の適合性を試験することを求めています。 反応にイソシアネートを使うポリウレタンに対し、会社はシラン末端ポリマー(SMP)の技術も同じSikaflexブランドで提供しており、 どちらを選ぶかは、強さ、硬化速度、規制(イソシアネートの扱い)、表面処理の違いで決まります(一般的な説明)。 本稿は製品の優劣を扱いません。値はどの試験法・どの条件で得られたかとセットで読んでください。 本シリーズの技術解説「接着剤」「ポリウレタンとエラストマー」「シリコーン」「接着強度試験」「車載用シリコーンと封止材」も参照してください。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
建設市況・中国建設向けが売上の約85% 本稿の計算。2025年は中国の建設事業が2桁減で、アジア太平洋の売上が現地通貨で -5.3%。2026年上期も中国の住宅の弱さが続くと説明事実
為替スイスフラン建ての売上は、2025年に為替で -5.4%、2026年上期に -5.5%事実
原料・調達製品の原料の一部(ポリマー、樹脂など)は原油由来で、調達費が変動する。2025年の原料費はCHF 5,048百万事実
化学品規制2025年にPFASを含む製品は売上の0.4%、EUのSVHC候補リストの物質を0.1重量%超含む製品は売上の5.7%。MBCCの製品群の評価は継続中。PFASを含まない配合への切り替えが複数進行中と記載事実
買収の統合MBCCの統合が2025年も継続中で、Strategy 2028のEBITDA率・ROCEの目標は「MBCCのシナジーが出たあと」と条件が付く。Akkimの統合はこれから事実(統合の成否は未確定)
接着・封止材の透明性接着剤・シーラントだけの売上・利益が非公表で、買収の効果を外部から確かめにくい。Akkimの買収額も公表資料に記載なし事実
資料の記述の不一致グローバル・テクノロジーセンターの数が、研究開発ページでは16、沿革ページでは21。対象市場の数が8と7で食い違う事実

12. 用語集

弾性接着
ビードや点状に塗って厚い接着層を作り、荷重を分散して応力を逃がす接着。
剛性接着(構造接着)
面に塗って強固に固定する接着。静荷重や衝撃に強い。
シーラント
目地や隙間をふさぎ、水・空気・熱を通さない材料。弾性接着剤はシーラントの性質も持つ。
1液ポリウレタン
空気中の水分と反応して固まる接着剤。混合が要らない。
SMP(シラン末端ポリマー)
イソシアネートを使わない湿気硬化型のポリマー。Sikaflexの一部の系で使われる。
ショアA硬度
ゴムの硬さの目安。数値が大きいほど硬い。
デボンディング(剥離)
接着した部材を、後から分離できるようにする設計。リサイクルや修理を助ける。
EBITDA
税引前・利払前・償却前の利益。事業の稼ぐ力を見る指標。
現地通貨ベースの成長
為替の影響を除いた売上の増減。
PFAS
有機フッ素化合物の総称。規制が各国で議論されている。
SVHC
EUのREACH規則で候補リストに載る、高い懸念のある物質。
MBCC
Sikaが2023年5月に買収した建設化学の会社グループ。
概念図:建物の外壁の目地にシーラントを充填する作業と、自動車の窓ガラスの接着ライン
図3 Sikaの接着・シール製品の主な使われ方(建物の目地の充填と、自動車の窓ガラス接着)の概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. Sika AG Annual Report 2025(2026年公表、PDF)。売上・EBITDA・純利益、地域別・事業別売上、研究開発費、従業員数、特許、設備投資、Strategy 2028、Fast Forward、買収、PFAS・SVHCの開示、剥離可能な接着剤など。 https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-ar-25-annual-report.pdf
  2. Sika AG Half-Year Report 2026(PDF)。2026年1〜6月の売上・EBITDA・純利益・従業員数・設備投資、買収と新工場、2026年の見通し。 https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-hyr-26-half-year-report.pdf
  3. Sika AG ニュースリリース「Sika to acquire Akkim: Marking a major step in accelerating global expansion in adhesives and sealants」(2026年2月13日)。 https://www.sika.com/en/media/media-releases/2026/sika-to-acquire-akkim.html
  4. Sika AG ニュースリリース「Sika closes acquisition of Akkim – Accelerating global expansion in adhesives and sealants」(2026年9月3日)。 https://www.sika.com/en/media/media-releases/2026/sika-closes-acquisition-of-akkim.html
  5. Sika AG Research & Development(研究開発の体制:16のグローバル・テクノロジーセンター、研究開発人員1,841人、特許、接着剤・シーラントの位置づけ、自動車への採用の説明)。 https://www.sika.com/en/sustainability/innovation/research-development.html
  6. Sika AG Universities(大学・研究機関との協力、ETH Zurichの「Living Lab HIL」への資金提供)。 https://www.sika.com/en/sustainability/innovation/research-development/partnerships/universities.html
  7. Sika AG Joining Technologies(接着技術の共同委員会GAK、パーダーボルン大学LWFとの研究プロジェクト)。 https://www.sika.com/en/sustainability/innovation/research-development/partnerships/joining-technologies.html
  8. Sika Industry Technologies and Brands(Sikaflex、SikaTack、Sikasil、SikaMelt、SikaFast、SikaForce、SikaSeal、SikaPowerなど工業向けブランドの説明)。 https://industry.sika.com/en/home/about-industry/technologies-brand.html
  9. Sika Industry Core Competencies(接着・シール・制振・補強・保護の5つの中核技術、Industryの市場)。 https://industry.sika.com/en/home/about-industry/core-competencies.html
  10. Sika Industry Electronic Potting and Casting(SikaBiresin REの電子部品向けポッティング・封止材)。 https://industry.sika.com/en/home/advanced-resins/electronic-pottingandcasting.html
  11. Sika Industry Sika Industryのトップページ(工業向け接着剤・シーラント・制振の技術リーダーとの自己説明、対象市場の一覧)。 https://industry.sika.com/en/home.html
  12. Sika AG Target Markets(建設と自動車・工業にまたがる対象市場の説明)。 https://www.sika.com/en/about-us/organization/target-markets.html
  13. Sika AG Construction Adhesives(弾性接着剤と剛性接着剤、機械的な固定との比較)。 https://www.sika.com/en/construction/construction-adhesives.html
  14. Sika AG Joint Sealing(目地シーリングの用途、VOC・フタル酸エステル・錫触媒・イソシアネートに関する説明)。 https://www.sika.com/en/construction/joint-sealing.html
  15. Sika AG History(1910年創業、1980年代のSikaflexによる自動車事業の開始、2023年5月のMBCC買収)。 https://www.sika.com/en/about-us/who-we-are/history.html
  16. Sika AG Key Data on Sika Shares and Shareholders(SIX Swiss Exchangeでの上場、株式数)。 https://www.sika.com/en/investors/shares/key-data-on-sika-shares.html
  17. Sika AG Product Data Sheet Sikaflex-221 Version 05.01(2026年3月、en_GB)。1液ポリウレタン接着・シーラントの公称値。 https://gbr.sika.com/dam/dms/gb01/4/sikaflex-221.pdf
  18. シーカ・ジャパン 日本法人のメディアリリースページ(日本法人の名称の確認)。 https://jpn.sika.com/ja/media/media-releases/2026.html

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、所在地(Baar)、上場市場、株式数、日本法人名事実出典1 https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-ar-25-annual-report.pdf 出典16 https://www.sika.com/en/investors/shares/key-data-on-sika-shares.html 出典18 https://jpn.sika.com/ja/media/media-releases/2026.html
2024・2025年の売上、EBITDA、純利益、研究開発費、投資額、従業員、地域別・事業別売上事実出典1 https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-ar-25-annual-report.pdf
2026年1〜6月の売上、EBITDA、純利益、従業員、設備投資、新工場、見通し事実出典2 https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-hyr-26-half-year-report.pdf
Akkimの買収の合意(2026年2月13日)と完了(2026年9月3日)、Akkimの売上・工場・販路事実出典3 https://www.sika.com/en/media/media-releases/2026/sika-to-acquire-akkim.html 出典4 https://www.sika.com/en/media/media-releases/2026/sika-closes-acquisition-of-akkim.html
Strategy 2028の目標、Fast Forwardの効果、補修比率(約55%)、PFAS・SVHCの比率、剥離できる接着剤事実出典1 https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-ar-25-annual-report.pdf
研究開発の人員1,841人、16のテクノロジーセンター、特許数、自動車への採用の説明事実出典5 https://www.sika.com/en/sustainability/innovation/research-development.html 出典1 https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-ar-25-annual-report.pdf
パーダーボルン大学LWF、GAK、ETH Zurichなど大学・研究機関との協力事実出典7 https://www.sika.com/en/sustainability/innovation/research-development/partnerships/joining-technologies.html 出典6 https://www.sika.com/en/sustainability/innovation/research-development/partnerships/universities.html
工業向け接着・シール製品のブランドと説明、中核技術、SikaBiresin RE事実出典8 https://industry.sika.com/en/home/about-industry/technologies-brand.html 出典9 https://industry.sika.com/en/home/about-industry/core-competencies.html 出典10 https://industry.sika.com/en/home/advanced-resins/electronic-pottingandcasting.html 出典11 https://industry.sika.com/en/home.html
対象市場の説明(8つ/7つ)、建設用接着剤・目地シーリングの説明事実出典12 https://www.sika.com/en/about-us/organization/target-markets.html 出典13 https://www.sika.com/en/construction/construction-adhesives.html 出典14 https://www.sika.com/en/construction/joint-sealing.html 出典11 https://industry.sika.com/en/home.html
1910年の創業、1980年代の自動車事業の開始、BMWの写真説明、2023年5月のMBCC買収、21のテクノロジーセンター事実出典15 https://www.sika.com/en/about-us/who-we-are/history.html
Sikaflex-221の公称値(硬度、引張強さ、伸び、使用温度など)事実出典17 https://gbr.sika.com/dam/dms/gb01/4/sikaflex-221.pdf
Sikaの3類型での位置づけ(総合接着剤・化学が主)本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズから例示
建設向け約85%・工業製造向け約15%(9,555.0÷11,201.3、1,646.3÷11,201.3)本稿の計算本稿による計算。接着・封止材の比率ではない https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-ar-25-annual-report.pdf
Akkimの売上は会社全体の約2%(220÷11,201.3)、2024年のEBITDA率約19.3%本稿の計算本稿による計算
接着剤・シーラントだけの売上・利益、Akkimの買収額、中期目標、販売チャネル別売上未確定/将来公開資料に記載なし。本稿では推計もしない https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-ar-25-annual-report.pdf
Strategy 2028の目標、Fast Forwardの効果、2026年の見通し未確定/将来会社の目標・見通しであり、達成の事実ではない https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-hyr-26-half-year-report.pdf
流通・小売・ECの商品型へ売り方を広げるという読み推測Akkimの発表と2026年上期の報告書からの本稿の解釈 https://www.sika.com/en/media/media-releases/2026/sika-to-acquire-akkim.html
買収で品揃えと生産能力を速く増やすという読み推測Akkimの発表とStrategy 2028の記述からの本稿の解釈 https://www.sika.com/en/media/media-releases/2026/sika-closes-acquisition-of-akkim.html
補修需要が接着・シールの安定した需要になるという読み推測補修比率の記載からの本稿の解釈 https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-ar-25-annual-report.pdf
自動車では軽量化と低エネルギーの工程に合う接着剤を軸にするという読み推測年次報告書の記述からの本稿の解釈 https://www.sika.com/dam/dms/corporate/media/glo-ar-25-annual-report.pdf

最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値は、Sika AGのAnnual Report 2025、Half-Year Report 2026、公式サイトのページ、2026年のニュースリリース、製品データシートに基づきます。会社の年次報告書にある市場規模の数字は調査会社のデータを引いたものなので使用せず、調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。製品の性能値は会社が公表した値(メーカー公称)です。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。