COMPANY PROFILE / 接着・封止材
インジウムコーポレーション
― 「金属」で半導体をつなぎ、冷やし、封じる。接着剤の会社ではなく、接合・熱・封止の材料会社
Indium Corporationは、1934年に米国ニューヨーク州で創業した非上場の材料メーカーです。 同社自身が「材料の精錬・製錬から製造・供給までを手がける」と称し、 はんだ、焼結材、金属系の熱界面材料(TIM)、インジウム製のシール材などを、エレクトロニクス・半導体・熱管理の市場に供給しています。 本稿のテーマ「接着・封止材」に近い分野ですが、同社の中心は樹脂の接着剤・封止材ではなく、金属による接合・放熱・気密封止です。 財務は公表されていません。本稿では、何を確認でき、何を確認できなかったかを整理します。
- 30秒でわかるIndium Corporationと、接着・封止材での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- 接着・封止材にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は接着・封止材で何を目指しているか
- 接着・封止材分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集
- 出典
- 主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるインジウムコーポレーションと、接着・封止材での立ち位置
クリントン2020年に Woods Park Drive へ移転
メーカー(金属系)高分子の接着剤・封止材の専業ではない
金属系TIM・シール半導体の接合、放熱、気密封止に使う
Indium Corporationは、接着剤の会社ではなく「金属で接合し、金属で熱を逃がし、金属で気密に封じる」材料の会社です 事実。 半導体チップを基板につなぐはんだ・焼結材、チップと放熱部の隙間を埋める金属系の熱界面材料(TIM)、極低温や真空で漏れを防ぐインジウム製のシール。 どれも、本シリーズが扱う樹脂系の接着剤・封止材(エポキシなど)とは素材の種類が違うが、同じ「つなぐ・守る・熱を逃がす」課題を解く、競合でもあり補完でもある材料です。 同社の製品ページに、エポキシ系やシリコーン系の封止材(エンキャプシュラント)に当たる製品は見つかりませんでした 未確定/将来。 本稿は、同社を「接着・封止材の周辺にある、金属系の接合・熱・封止の材料会社」として読みます。
2. ロゴと社名の表記について

Indium Corporationのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、公式サイトから取得したロゴ画像を
img/indium_corporation_logo.png として設置しています(公式サイトのWebP形式の画像を、同じ図柄のままPNGに変換したものです)。
表記の注意:社名はIndium Corporation(創業時は The Indium Corporation of America)です。 「インジウム」は同社が扱う金属の名前でもあるので、本稿では会社を「Indium」、金属を「インジウム」と書き分けます。 ドイツ・ランツフートの子会社は Indium Advanced Materials GmbH です。 同社は Heat-Spring、Durafuse、InFORMS など多数の登録商標の製品名を持ちます。製品名は「同社の製品群」として扱い、本稿では特定製品の優劣を論じません。
公式サイト:https://www.indium.com/3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか
Indiumの主たる類型は半導体・電子材料メーカーです。ただし、樹脂ではなく金属が中心という点で、このシリーズの他の企業(Henkel、H.B. Fuller、DELO、Master Bondなど)とは性格が違います。 どの材料・用途が中心かを、同社の資料で確認できた範囲で整理します。
| 材料・用途 | Indiumでの位置づけ | 確認できた一次情報 | 区分 |
|---|---|---|---|
| はんだ・接合材(はんだ) | 中心。はんだペースト、プリフォーム、ワイヤー、フラックス。基板実装から半導体のダイアタッチ・フリップチップ・ボールアタッチまで | 公式サイトの用途・製品ページ | 事実 |
| 焼結材(ダイアタッチ・パッケージアタッチ) | 中心の一つ。銀・銅の加圧焼結、無加圧焼結。SiC・GaNなどのパワー半導体向け | ダイアタッチ・用途ページ、プレスリリース | 事実 |
| 熱界面材料(TIM) | 中心の一つ。金属系:圧縮型(Heat-Spring)、はんだTIM、液体金属、相変化金属TIM | TIMの用途ページ、製品ページ、技術データシート | 事実 |
| 封止(気密・極低温) | 一部。インジウム製のワイヤーやプリフォームによるシール。樹脂ではなく金属で気密に封じる | 公式サイトのシールのページ | 事実 |
| 接着(仮固定) | 一部。タッキング剤(粘着性の仮固定剤)。加熱後に残渣を残さず、はんだ付けや焼結の前の位置決めに使う | 公式サイトの製品ページ | 事実 |
| 接合(反応性ナノ箔) | 一部。NanoFoil。制御された発熱で接合に使う材料。部品実装向けの世界販売はInnoJoinが独占 | プレスリリース(2024年11月) | 事実 |
| 半導体封止材(EMC)・アンダーフィル・UV硬化接着剤 | 同社の製品ページでは確認できず。フラックス残渣とアンダーフィルの相性には言及 | ― | 未確定/将来 |
4. 会社の規模
Indiumは非上場で、売上・利益などの財務は公表されていません。公式資料から確認できる規模を、表1つで示します 事実。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売上・利益 | 非公表。本稿では推計しない |
| 創業・本社 | 1934年にニューヨーク州ユーティカで創業。2020年に、本社をクリントンのRobinson RoadからWoods Park Driveへ移転 |
| 従業員 | 1,400人超(2024年。公式サイトは「創業90年で、世界の従業員が1,400人を超えた」と記載) |
| 拠点 | 施設一覧に16か所(製造、本社、事務所、倉庫を含む)。中国、ドイツ、インド、マレーシア、シンガポール、韓国、英国、米国の8か国。2026年8月にメキシコ・グアダラハラの新工場が開所 |
| 製品の範囲 | はんだとフラックス、ろう材、熱界面材料、スパッタリングターゲット、インジウム・ガリウム・ゲルマニウム・スズの金属と無機化合物、NanoFoil(同社のプレスリリースの会社紹介) |
| 品質認証 | 同社のはんだペーストとプリフォームの製造拠点はすべてIATF 16949:2016の認証を取得。同社はISO 9001:2015の登録企業(2025年の技術データシート)。ISO 14001の環境マネジメントシステムも導入(サステナビリティのページ) |
| 経営陣 | Executive Chair:Greg Evans、President & CEO:Ross Berntson、CFO:Mike McKenna |
財務が非公表のため、接着・封止材に近い分野(TIM、焼結材、はんだ)が売上のどれだけを占めるかは確認できません 未確定/将来。 同社の公式サイトで目立つ数字は「同社の半導体向け材料で製造された、前工程のSiPモジュールが累計50億個を超える」「2024年時点で、2,000万台を超える電気自動車に同社の Rel-ion 製品群が使われている」といった会社自身の説明です。 いずれも同社の数え方で、第三者による検証はありません。本稿では、事実としてではなく会社の主張として扱います。
5. 接着・封止材にかけているリソース
財務が非公表のため、金額は確認できません。何をどこまで確認できたかを、人・金・外部・大学の4点で整理します。
| 項目 | 確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(研究開発拠点・人員) | 従業員1,400人超(2024年)。研究開発は米国ニューヨーク州ローマ(Rome)の研究開発施設が拠点の一つ(ガリウム抽出プロセスはここで開発)。2026年9月にHongwen Zhang博士を研究開発(R&D)ディレクターに昇進(技術開発、製品ロードマップ、材料ポートフォリオの推進を担う)。マレーシア・ペナンに技術拠点(Tech Hub、2014年)。研究開発人員の総数は非公表 | 事実/非公表 |
| 金(研究開発費・設備投資) | 研究開発費・設備投資の金額は非公表。メキシコ・グアダラハラの新工場は延べ1,230平方メートルで、はんだペースト、コアードワイヤー、ウェーブ用フラックスを製造。「メキシコへの長期的な製造投資の第一段階」と説明し、フル稼働時にははんだペーストを月18〜20トン生産する見込み(会社の見込み) | 事実/非公表 |
| 外部への出資・買収・合弁 | 買収:2021年3月にドイツ・ランツフートの Solder Chemistry(子会社 Indium Advanced Materials GmbH が取得)。提携:Rio Tinto(ガリウム抽出)、Yunnan Tin Group(2017年の戦略提携)、InnoJoin(NanoFoilの独占販売パートナー、2024年)。スタートアップへの出資は確認できず | 事実/確認できず(出資) |
| 大学・研究機関・公的資金 | 2026年4月に、インドの国家プログラムIDSPS(政府・州政府・大学・産業界の4者の枠組み)に産業界のパートナーとして参加。学校・大学とのインターンシップや学生向けの活動を実施(公式サイトの社会貢献のページ)。公的資金(NEDO、EUのプロジェクト、米国CHIPS法の助成など)の受領は確認できなかった | 事実/確認できず(公的資金) |
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1934年 | The Indium Corporation of Americaとして、ニューヨーク州ユーティカで創業 | 金属インジウムの利用開発から出発 |
| 1938年 | インジウム処理の航空機エンジン用ベアリングを、初めてめっきで製造 | 最初の用途は電子ではなく航空機部品 |
| 1952年 | 精密なはんだプリフォームの製造プロセスを商業化。合金接合型トランジスタの量産を可能にした | 半導体の接合材料への入口 |
| 1959年 | プリント基板のはんだ付けに関する米国特許を取得(「Printing Circuits and Method of Soldering the Same」) | 基板実装向けはんだへ |
| 1977年 | はんだペーストの開発に着手 | 表面実装(SMT)の主力材料の一つ |
| 1991年 | インジウムと編組によるガスケット(InFORMS)の製法で米国特許 | 金属シール・補強プリフォームの技術 |
| 1990〜2008年 | 欧州法人(1990年)、アジア太平洋拠点(シンガポール、1995年)、シカゴ工場(2006年)、韓国・清州の工場(2008年) | 世界展開 |
| 2009年 | Heat-Spring熱界面材料の技術で特許 | 金属系TIMの原点 |
| 2010年・2014年 | ハロゲンフリーのはんだペースト(2010年)、超低残渣ノークリーンの半導体グレードのフラックス(2014年) | 半導体パッケージ向けの拡大 |
| 2017年 | Yunnan Tin Groupと技術・材料の戦略提携。インジウム系製品を中国の電子・フラットパネル市場に供給。同年11月にGreg Evansを CEO、Ross Berntson を President & COO に昇進 | 中国市場での原料・販売の提携 |
| 2019〜2020年 | 本社を Woods Park Drive へ移転し、ペナン、チェンナイ、蘇州、シンガポールなどを拡張 | 設備と人員の拡張 |
| 2021年 | 高信頼性はんだペースト Durafuse LT を発売。3月に独 Solder Chemistry を買収 | 車載・パワー向けの高信頼性材料 |
| 2024年 | 創業90年。従業員が1,400人を超える。11月にInnoJoinをNanoFoilの独占販売パートナーに指名 | 反応性ナノ箔の販売体制 |
| 2025年2〜7月 | Heat-Spring HSx(大きな反りのあるダイ向けの新パターン)を発表(2月)。Rio Tinto と、同社ケベック州のアルミナ精錬所の原料からガリウムの抽出に成功(5月)。水溶性のフリップチップ用フラックス WS-910 を発売(7月) | 金属系TIM、原料、半導体フラックスの3方向 |
| 2026年4〜8月 | インドの IDSPS に産業パートナーとして参加(4月)。メキシコ・グアダラハラに新製造施設を開所(8月11日) | 人材・研究と、米州の生産拠点 |
7. 今後の計画
はんだペースト月18〜20t同社の見込み。ほかの機能も「工場の成長に合わせて追加する計画」
3.5トン規模ケベック州で。その後、年40トンの商業規模を目指す(同社の計画)
整備を研究中DKE作業部会とIECの検討。同社の技術者が発表予定(2026年5月)
Rio Tintoとのガリウム抽出は、2025年5月に、ケベック州Saguenayにある同社のアルミナ精錬所の原料から、ガリウムの抽出に成功した段階です。 同社は、抽出プロセスを米国のローマの研究開発施設で引き続き開発し、実証プラント(3.5トン規模)、その後は年40トンの商業規模を目指すと説明しています 未確定/将来。 商業化の時期は示されていません。
メキシコの新工場は、まずIndium8.9HFとIndium10.8HFのはんだペーストを製造し、同社は「AI、自動車、EV、ロボティクス、医療機器、エネルギー貯蔵、先端半導体パッケージ」の成長市場を支えると述べています 事実。
次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。
設備投資額/売上目標/ガリウム抽出の商業化の時期/樹脂系の接着剤・封止材への参入計画/新たな買収の計画。 同社の発表は、製品の紹介、展示会での講演、昇進、受賞、新拠点の開所が中心で、数値目標はありません。
8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| AI・高性能コンピューティングのパッケージ向けを、最重要の成長分野と見ている | 2025〜2026年のプレスリリースに「AI」「高性能コンピューティング」「データセンター」が頻出する。2026年5月の発表では、AIデータセンターのASIC冷却に、はんだ系TIMを提案 | 推測 |
| 金属系TIMを、樹脂系TIMへの対抗軸として売り込んでいる | 同社は、はんだ系TIMは「従来の熱グリースや高分子の相変化材と違い、時間による性能低下がない」と説明している(会社の主張) | 事実(会社の主張) |
| 原料の上流(ガリウム)まで自社で確保する方向を探っている | 自社を「精錬・製錬・製造・供給」の会社と称し、Rio Tintoとガリウム抽出の実証に成功 | 推測 |
| パワー半導体(SiC・GaN)とEV向けを伸ばそうとしている | 焼結材(銀・銅)、Rel-ion 製品群(2024年時点で2,000万台超のEVに搭載と主張)、PCIM Asiaなどでの発表 | 推測 |
| 樹脂系の封止材・アンダーフィルへは進出しない(少なくとも前面には出さない) | 製品ページに該当製品が見つからない。一方でフラックスはアンダーフィルとの相性を設計の軸に挙げる | 推測 |
「樹脂系の封止材へは進出しない」と読む根拠は、製品ページに該当する製品が見当たらない一方、周辺の材料では「樹脂との相性」を明示していることです。 同社の製品検索では、「encapsulant(封止材)」に該当する製品が見つかりませんでした。 一方、フリップチップ用フラックスについて同社は「フラックス残渣とアンダーフィル材との相性」を課題に挙げ、 2025年7月に発売したWS-910は「モールドアンダーフィルとキャピラリーアンダーフィルとの優れた相性」を特長に掲げています 事実。 つまり同社は、樹脂系の封止材を作る側ではなく、その隣の工程の材料として、相性を保証する側に立っていると読めます。 もちろん、今回確認した範囲の読みであり、非公開の開発がある可能性は否定できません 未確定/将来。
9. 接着・封止材分野の提携マッピング
Indiumの関係は、原料の確保(Rio Tinto、Yunnan Tin Group)、販売チャネルの外部委託(InnoJoin)、買収による製造拠点の拡大(Solder Chemistry)、人材・研究の枠組み(IDSPS)という形で広がっています。 一方、半導体メーカーや電子機器メーカーとの共同開発の事例は、同社のプレスリリースでは社名が出ておらず、今回の一次資料では確認できませんでした 未確定/将来。 同社の発表で社名が出る顧客は、品質賞を受けたON Semiconductorなど、ごく一部です。
10. 提供している技術・製品・サービス
以下は、同社の用途ページ、製品ページ、技術データシート、プレスリリースの記述です。数値はメーカー公称で、試験条件が書かれている場合は併記します 事実。
| 製品群 | 同社ページの記述(メーカー公称) |
|---|---|
| はんだペースト・フラックス | 基板実装用、半導体用、金合金。半導体用では、ダイアタッチ、SiP、フリップチップ、ボールアタッチ向け。超低残渣のノークリーンフラックスを10年以上前に初めて製品化したと説明。フリップチップ用フラックスは、2.5D・先端パッケージで広く使われると説明 |
| プリフォーム | InFORMS(補強したはんだプリフォーム)、金系の精密ダイアタッチ(PDA)プリフォーム(80Au/20Snなど。2024年7月に発表)。レーザーやRF用のダイアタッチ向け |
| 焼結材 | 銀・銅の焼結ペースト。加圧用(InFORCEシリーズ)、無加圧用(InBAKEシリーズ)、小さなダイ向けの高速用(QuickSINTERシリーズ)。同社は「エポキシや高分子を含まない純粋な焼結材」と説明。SiC・GaNのパワー半導体で、200℃を超える動作を可能にする、とプレスリリースで説明 |
| 金属系TIM(圧縮型:Heat-Spring) | パターンを付けた、柔らかい金属合金の箔。標準は純インジウム(99.99%)。インジウム金属のバルクの熱伝導率は86 W/mK(技術データシート)。信頼性データの条件の例(HSD):初期の金属厚み0.004インチ、圧力31 psi。HSx(2025年)は、反り200 µm超の大面積ダイ向けで、クランプ力30 psi未満、20 psiで実効熱伝導率16 W/m-K(純インジウム)。リフロー・高温硬化は不要 |
| 液体金属・液体金属ペースト | ガリウム系。融点は7.6〜17℃。RoHS適合。導電性があるため、漏れを防ぐ封じ込めが必要で、同社は特許の多重バリア方式を用いると説明 |
| はんだTIM・相変化金属TIM | 半導体ダイとパッケージのリッドの間(TIM1)に使う。リフロー型と非リフロー型。LGA、PGA、BGAパッケージ向け |
| シール(気密・極低温) | インジウム製のワイヤー・プリフォーム。柔らかく展性が高いため、平らでない面にも気密なシールを作れ、極低温でももろくならない、と説明 |
| タッキング剤 | ノークリーン・残渣なしの仮固定剤。半導体チップ、はんだプリフォーム、パッケージの位置決めを、治具なしで行う。フラックスなしのギ酸はんだ付けにも使える |
| NanoFoil | 制御された発熱で接合・加熱に使うナノ材料。半導体、航空宇宙、自動車、バイオ医療、防衛分野で使われると説明 |
| 金属・化合物・リサイクル | インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズの金属と化合物、ITO(インジウムスズ酸化物)。金属・化合物の回収・再生(Reclaim & Recycle) |
最も分かりやすいのは熱界面材料(TIM)です(本シリーズの技術解説『熱界面材料TIM』も参照)。 同社の技術データシートが書く「インジウム金属のバルクの熱伝導率86 W/mK」は材料の値であり、 組み立てた状態の熱抵抗は、接触界面の状態、圧力、厚みで変わります。 実際に、同社のHSxの実効熱伝導率は「20 psiで16 W/m-K」と、バルク値より大幅に低い値で示されています。 この差は、パターン付きの箔が柔らかく潰れて表面になじむまでの接触抵抗が効くためで、「熱伝導率が高い金属」でも、押さえ方(圧力)と表面のなじみで性能が決まることを示しています(一般的な説明)。 同社の技術データシートは、初期の使用中に熱抵抗が大きく下がり、これは「熱と圧力で金属のパターンがクリープし、表面の微細な凹凸になじむ塑性変形」によると説明しています。 グリースや高分子系のTIMと違い、金属はポンプアウト(押し出されて抜ける)やベイクアウト(乾いて痩せる)が起きないと書いていますが、これは同社の主張で、評価条件は示されていません。
もう一つははんだ接合と、周辺の樹脂との関係です。ダイアタッチでは、はんだ接合部のボイド(空洞)が放熱と信頼性を左右します。同社はダイアタッチのページでボイドの低減を訴求し、「Avoid the Void®」を注力製品として掲げています。 また、フリップチップでは、フラックスの残渣がアンダーフィル樹脂の流れや密着に影響しうる(一般的な説明)ため、同社は残渣との相性を課題に挙げ、製品の特長にしています(本シリーズの技術解説『アンダーフィル』『ダイアタッチ』も参照)。
最後に焼結です。同社は、焼結がSiC・GaNなどで200℃を超える動作を可能にする一方、はんだと違って量産向けの業界標準がまだ整っていないと述べています(2026年5月の発表)。 材料の性能だけでなく、プロセス(加圧・無加圧)と評価方法の標準化が、量産への壁になっているということです。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 財務が見えない | 売上・利益・研究開発費・設備投資がすべて非公表。接着・封止材に近い製品の比率も確認できない | 未確定/将来 |
| 原料の供給・価格 | 同社のブログは、インジウムの世界の生産量を「年に約1,000トン」と説明している(会社の説明)。少量で、特定の用途に限られる原料に依存する。ガリウムの調達は、Rio Tintoとの実証がまだ小規模 | 事実(会社の説明) |
| 半導体・AI需要への集中 | 発表のほとんどが、AI・高性能コンピューティング・パワー半導体・EVの話題。これらの需要の変動の影響を受けやすい | 推測 |
| 新工場の立ち上げ | メキシコ工場は「長期的な投資の第一段階」で、フル稼働(月18〜20トン)は将来の見込み | 未確定/将来 |
| ガリウム抽出の商業化 | 実証プラント(3.5トン規模)と年40トンの商業規模は、時期が示されていない | 未確定/将来 |
| 液体金属の導電性 | ガリウム系の液体金属は導電性があり、漏れると電子機器でショートの原因になるため、封じ込めが必要と同社自身が説明 | 事実 |
| 焼結の標準の未整備 | 焼結は量産向けの業界標準がまだ整っていないと同社が説明。標準化が遅れると、採用の拡大が遅れる可能性 | 事実 |
| 会社の主張の検証 | 「SiPモジュール50億個超」「EV 2,000万台超」「実効熱伝導率」などは会社の説明で、第三者の検証や試験条件の全文は確認できていない | 事実(会社の主張) |
12. 用語集
- はんだペースト
- はんだの微粉末とフラックスを混ぜたペースト。基板に印刷して加熱し、部品をつなぐ。
- フラックス
- 金属表面の酸化膜を除き、はんだの濡れを助ける薬剤。残渣が樹脂との相性に影響する。
- プリフォーム
- あらかじめ決まった形・厚みに成形したはんだ。ダイアタッチなどで、量を正確に制御して使う。
- ダイアタッチ
- 半導体のチップ(ダイ)をリードフレームや基板に固定する工程。熱と電気の通り道にもなる。
- 焼結(シンター)
- 金属粉を溶かさずに加熱・加圧して固め、接合する方法。はんだより高温で使える。
- TIM(熱界面材料)
- 発熱する部品と放熱部の間を埋めて、熱を伝える材料。TIM1はダイとリッドの間、TIM2はリッドとヒートシンクの間。
- 液体金属
- 室温付近で液体の金属または合金。ガリウムを主成分とし、熱をよく伝えるが導電性がある。
- タッキング剤
- はんだ付けや焼結の前に、部品を仮に固定する粘着性の材料。加熱で残渣なく消える。
- SiP
- System in Package。複数のチップや部品を1つのパッケージにまとめたモジュール。
- ボイド
- はんだ接合部にできる空洞。熱の通り道を妨げ、信頼性を下げる。
- SiC・GaN
- 炭化ケイ素と窒化ガリウム。高電圧・高温に強いパワー半導体の材料。
- メーカー公称
- メーカー自身が示す性能値。試験条件と一緒でないと、他社品と比べられない。

13. 出典
- Indium Corporation About Us / Corporate(公式サイト)。会社の概要、創業、沿革、2024年の従業員数。 https://www.indium.com/corporate/
- Indium Corporation Technical Milestones(公式サイト)。2015〜2022年の提携、受賞、買収、本社移転。 https://www.indium.com/corporate/media-center/milestones/
- Indium Corporation Facilities(公式サイト)。施設一覧。 https://www.indium.com/corporate/facilities/
- Indium Corporation Executive Team(公式サイト)。 https://www.indium.com/corporate/team/executive-team/
- Indium Corporation Semiconductor Packaging and Assembly(公式サイト、用途ページ)。 https://www.indium.com/applications/semiconductor-packaging-and-assembly/
- Indium Corporation Die-Attach(公式サイト、用途ページ)。 https://www.indium.com/applications/semiconductor-packaging-and-assembly/die-attach/
- Indium Corporation Flip-Chip(公式サイト、用途ページ)。フラックス残渣とアンダーフィルの相性、フラックスなしのタッキング剤。 https://www.indium.com/applications/semiconductor-packaging-and-assembly/flip-chip/
- Indium Corporation TIM1, TIM1.5, TIM2(公式サイト、用途ページ)。 https://www.indium.com/applications/thermal-management/tims/
- Indium Corporation Sealing: Cryogenic and Hermetic(公式サイト、用途ページ)。 https://www.indium.com/applications/sealing/
- Indium Corporation Heat-Spring(公式サイト、製品ページ)。 https://www.indium.com/products/thermal-interface-materials/compressible-tims/heatspring/
- Indium Corporation Heat-Spring Ultra-Low Thermal Resistance No-Reflow Thermal Interface Material as Pressurized TIM1.5/TIM2/TIM3(技術データシート Form No. 100326 R1、2025年)。バルク熱伝導率、推奨圧力、信頼性、品質認証。 https://www.indium.com/wp-content/uploads/2025/01/Heat-Spring%C2%AE%E2%80%93Ultra-Low-Thermal-Resistance-No-Reflow-as-TIM-1.523-PDS-100326-R1.pdf
- Indium Corporation Liquid Metal and Liquid Metal Paste(公式サイト、製品ページ)。 https://www.indium.com/products/thermal-interface-materials/liquid-metal/
- Indium Corporation Tacking Agents(公式サイト、製品ページ)。 https://www.indium.com/products/tacking-agents/
- Indium Corporation Rel-ion(公式サイト、e-モビリティ向け製品ページ)。 https://www.indium.com/products/relion/
- Indium Corporation Indium Corporation Opens New Manufacturing Facility in Guadalajara, Mexico, Expanding Global Production Network(プレスリリース、2026年8月11日)。 https://www.indium.com/press-releases/indium-corporation-opens-new-manufacturing-facility-in-guadalajara-mexico-expanding-global-production-network/
- Indium Corporation Indium Corporation and Rio Tinto Announce Groundbreaking Milestone in Gallium Extraction Partnership(プレスリリース、2025年5月7日)。 https://www.indium.com/press-releases/indium-corporation-and-rio-tinto-announce-groundbreaking-milestone-in-gallium-extraction-partnership/
- Indium Corporation Indium Corporation Joins India's IDSPS Industry Consortium Partnership(プレスリリース、2026年4月23日)。 https://www.indium.com/press-releases/indium-corporation-joins-indias-idsps-industry-consortium-partnership/
- Indium Corporation Indium Corporation to Introduce New Heat-Spring HSx Metal Thermal Interface Material for Semiconductor Test at TestConX(プレスリリース、2025年2月26日)。 https://www.indium.com/press-releases/indium-corporation-to-introduce-new-heat-spring-hsx-metal-thermal-interface-material-for-semiconductor-test-at-testconx/
- Indium Corporation Indium Corporation Announces InnoJoin as Exclusive Global Sales Partner for NanoFoil(プレスリリース、2024年11月4日)。 https://www.indium.com/press-releases/indium-corporation-announces-innojoin-as-exclusive-global-sales-partner-for-nanofoil/
- Indium Corporation Indium Corporation Experts to Address Data Center Thermal Management and Sintering Standards at SMTA Conference(プレスリリース、2026年5月12日)。 https://www.indium.com/press-releases/indium-corporation-experts-to-address-data-center-thermal-management-and-sintering-standards-at-smta-conference/
- Indium Corporation Indium Corporation Introduces New Flip-Chip Flux for Semiconductor Devices(プレスリリース、2025年7月31日)。 https://www.indium.com/press-releases/indium-corporation-introduces-new-flip-chip-flux-for-semiconductor-devices/
- Indium Corporation Sustainability(公式サイト)。ISO 14001、サステナビリティの取り組み。 https://www.indium.com/corporate/csr/sustainability/
- Indium Corporation 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.indium.com/
- Indium Corporation Indium Corporation Promotes Hongwen Zhang to Research and Development Director(プレスリリース、2026年9月3日)。 https://www.indium.com/press-releases/indium-corporation-promotes-hongwen-zhang-to-research-and-development-director/
- Indium Corporation Indium Corporation Introduces Au-Based Precision Die-Attach Preforms(プレスリリース、2024年7月17日)。 https://www.indium.com/press-releases/indium-corporation-introduces-au-based-precision-die-attach-preforms/
- Indium Corporation Sintering Materials(公式サイト、製品ページ)。樹脂を含まない焼結材。 https://www.indium.com/products/sintering-materials/
- Indium Corporation Why Indium Is One of the Most Important Metals in Electronics(同社ブログ、2026年8月27日)。インジウムの生産量の説明。 https://www.indium.com/blog/why-indium-is-one-of-the-most-important-metals-in-electronics/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の内容は、Indium Corporationの公式サイトと公式プレスリリースに基づきます。同社は非上場で財務を公表していないため、調査会社の市場推計や報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。製品の性能値は同社の技術データシート・製品ページのメーカー公称で、試験条件が書かれていないものは条件不明のまま示しています。