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ヘンケル 企業解説

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COMPANY PROFILE / 接着・封止材

ヘンケル
― 世界市場のリーダーを自任する総合接着剤メーカーが、電子材料・半導体パッケージへ広げている

接着・封止材の話題でHenkelの名前が出るのは、接着剤・シーラント・コーティングを800以上の業種に売る、事業規模の大きな総合メーカーだからです。 2025年の年次報告書によると、接着剤部門(Adhesive Technologies)の売上は106億6,700万ユーロ、調整後営業利益率は16.7%。 その中の「モビリティ&エレクトロニクス」が成長を牽引し、電子材料(Electronics)は2桁成長でした。 公式サイトには、半導体向けのダイアタッチ材・アンダーフィル・封止材、放熱材料のBergquistブランドも並びます。 本稿は、この会社が接着・封止材に何を投じ、何を買い、どこまで公表しているかを、一次資料の範囲で整理します。

構成:Henkel Annual Report 2025(2026年3月公表)、Half-Year Financial Report 2026、2014年の買収発表、公式サイトの製品ページを一次情報として使用/最終更新 2026年10月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるHenkelと、接着・封止材での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模
  5. 接着・封止材にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか
  9. 接着・封止材分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるヘンケルと、接着・封止材での立ち位置

正式名称Henkel AG & Co. KGaA日本語表記はヘンケル。1876年創業
本社ドイツ・デュッセルドルフ登記上の所在地。Henkelstrasse 67
上場フランクフルト証券取引所優先株はDAX採用。米国ではADRで取引
この分野での区分総合接着剤・化学メーカー
(従:電子材料)
半導体・電子材料の専業ではない
接着剤部門の売上(2025年)106億6,700万ユーログループ売上の52%
調整後営業利益率16.7%接着剤部門。2025年の年次報告書
製品・顧客の規模約2万製品/約10万社800以上の業種に供給と会社が記載
中心となる材料・用途工業用接着剤・シーラント
ホットメルト・表面処理
電子材料では半導体封止・ダイアタッチ・放熱材
まず押さえるべき1点

接着・封止材で扱うHenkelは「半導体材料の会社」ではなく、「接着剤そのものを世界で最も幅広く売る会社が、電子材料にも手を伸ばしている」と見るのが正確です 本稿の計算。 年次報告書が示す接着剤部門の3つの事業領域は、モビリティ&エレクトロニクス(売上38億5,300万ユーロ)、 パッケージング&コンシューマーグッズ(30億9,700万ユーロ)、職人・建設・プロ向け(37億1,600万ユーロ)で、ほぼ3等分です 事実。 半導体パッケージ向けの材料が接着剤部門の売上にどれだけ入っているかは、公表されていません 未確定/将来。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Henkel AG & Co. KGaA(合資会社の形態。無限責任社員は Henkel Management AG)で、日本語では「ヘンケル」と書きます。 接着剤の事業は社内で Adhesive Technologies(接着剤部門)と呼ばれ、もう1つの事業部門 Consumer Brands(洗剤・ヘアケアなど)とは別です。 Loctite(ロックタイト)などの製品ブランドも同社のものですが、ブランド名は法人名ではありません。 ロゴ画像は同社の公式サイト(henkel.com)で公開されているものを取得しました。

公式サイト:https://www.henkel.com/

3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか

接着・封止材に関わる企業の3つの類型 同じ「接着剤の会社」でも、強みと売り先がまったく違う 総合接着剤・化学 半導体・電子材料 UV硬化・特殊用途 幅広い用途の接着剤を世界で売る 半導体メーカーと共同で材料を作る 光で固める・用途に作り込む Henkel/H.B. Fuller Sika/Dow ほか レゾナック/住友ベークライト Indium ほか Dymax/DELO Master Bond ほか 用途の広さと世界の販売網 顧客の工程に合わせた材料開発 硬化条件と用途への作り込み 景気と原料価格に左右される 半導体の需要変動に左右される 規模が小さく顧客が偏りやすい Henkelは主に左端の総合接着剤メーカーで、従として中央の電子材料にも広げている モビリティ&エレクトロニクスが接着剤部門売上の36%。半導体向けの額は非公表
図1 接着・封止材に関わる企業の3類型と、Henkelの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。事業領域の割合は2025年の年次報告書に基づきます。

4. 会社の規模

グループ全体は2つの事業部門からなり、接着剤部門が売上のおよそ半分を占めます 事実。本稿の主題は接着剤部門なので、会社全体は簡潔に示します。

指標(百万ユーロ)2024年2025年前年比
グループ売上21,58620,495-5.1%(実質ベース+0.9%)
接着剤部門の売上10,97010,667-2.8%(実質ベース+1.5%)
接着剤部門の調整後営業利益1,8171,779-2.1%
接着剤部門の調整後営業利益率16.6%16.7%+0.1ポイント
接着剤部門の事業領域(2025年)売上(百万ユーロ)実質成長率会社の説明
モビリティ&エレクトロニクス3,853+3.3%自動車・電子・産業向け。電子材料は2桁成長(特に中国)
パッケージング&コンシューマーグッズ3,097-0.6%包装・日用品メーカー向け
職人・建設・プロ向け3,716+1.3%建設・保守・一般消費者向け

従業員はグループで約47,200人(2025年末)。このうち接着剤部門は約50%です(年次報告書のグラフの値で、人数としての記載はありません。 掛け算すると約23,600人ですが、これは本稿の概算です 本稿の計算)。 2026年上半期(1〜6月)は、接着剤部門の売上が55億3,400万ユーロ(実質成長率+4.5%、調整後営業利益率17.7%)、モビリティ&エレクトロニクスは実質+7.8%でした 事実。

ここで注意

モビリティ&エレクトロニクスの中には、自動車(接着剤部門売上の約2割。うち電気自動車向けが約2割)、電子材料、産業(Industrial)が含まれます。 電子材料や半導体向けの売上額は、年次報告書でも半期報告書でも「成長率」しか開示されていません。 本稿はその額を推計しません 未確定/将来。

5. 接着・封止材にかけているリソース

Henkelの場合、接着剤は主力事業そのものなので、金額の多くは「接着剤部門」単位で読み取れます。電子材料に限った数字はありません。

リソース一次情報で確認できた内容区分
人グループの研究開発人員は年平均約2,800人(全従業員の約6%。化学者が中心で、材料科学者・技術者を含む)。接着剤部門の顧客対応にあたる技術専門家は6,500人超。接着剤部門だけの研究開発人員は非公表事実/一部非公表
金(研究開発)グループの研究開発費は6億3,000万ユーロ(売上比3.1%)。接着剤部門の割合はグラフで57%。掛け算すると約3億6,000万ユーロ(本稿の概算)事実/本稿の計算
金(設備投資)接着剤部門の有形固定資産投資は3億5,100万ユーロ(前年3億800万ユーロ)。主な案件:中国での移転を伴う接着剤工場の建設、ブラジルの技術センター、中国のイノベーションセンター。グループ全体の2026年の投資支出は6.5億〜7.5億ユーロを見込む事実/見通し
買収・出資2023年 Critica Infrastructure、2024年 Seal for Life Industries(いずれも保守・補修向け)、2026年4月 ATP Adhesive Systems(水系の特殊テープ。取得価格9億300万ユーロ)。電子材料では2014年にThe Bergquist Company(放熱材料)を買収。スタートアップへの出資・ベンチャーキャピタルへの出資も実施と記載(社名・金額は非掲載)事実
大学・研究機関・公的資金年次報告書は「研究機関、大学、スタートアップ」との協業を一般論として述べるのみ。具体的な大学名、共同研究プロジェクト名、公的助成の金額は確認できず確認できず
研究拠点デュッセルドルフ、ムンバイ、ニュージャージー(ブリッジウォーター)、上海(2025年9月開所。投資額6,000万ユーロ、研究者・開発者500人超が顧客と協働)。ブラジルのジュンジアイは2026年初めに開所予定(年次報告書の時点。開所したかは本稿で確認していない)。電池向けの応用センターをミシガン州マディソンハイツに開設事実
素材技術者の視点:「研究開発費はグループ合算」が示すこと

接着剤の開発は、配合(樹脂・硬化剤・フィラー・添加剤)を、顧客の工程(塗布・硬化・使用環境)に合わせて作り込む仕事です。 年次報告書は、基盤技術を中央で開発し、それを各地域の拠点で顧客別に応用する分業を説明しています 事実。 同じ会社が、構造用接着剤から半導体用の液状材料までを扱えるのは、樹脂の化学とフィラー分散、硬化反応の制御という共通の基盤があるからだと考えられます 未確定/将来。 ただし、半導体用の材料は不純物(イオン性不純物など)の管理水準が桁違いに厳しく、基盤を共有していても品質管理と評価の体制は別物になります(本シリーズの技術解説「アンダーフィル」「ダイアタッチ」を参照)。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1876年創業会社の記載による
2014年9月18日The Bergquist Companyの買収契約を発表。電子機器向けの熱管理材料の供給会社で、2013年の売上は約1億3,000万ユーロ、従業員約1,000人、生産拠点は米国5・中国1放熱材料(GAP PADなど)を持つ入口。取引の金額は非公表
2023年Critica Infrastructureを買収保守・補修・オーバーホール(MRO)への拡大
2024年Seal for Life Industriesを買収同上。インフラ・再生可能エネルギー向けを強化
2025年中国・煙台(Yantai)の新しい接着剤工場で、電子・自動車・医療・装置製造・航空宇宙向け接着剤の生産が段階的に始まる。上海のInspiration Centerが9月に開所。ミシガン州に電池向け応用センターアジアでの生産と顧客共創の拠点を増強
2025年12月〜2026年1月ATP Adhesive Systemsの買収契約(年次報告書は2025年12月に署名、半期報告書は2026年1月16日の発表と記載)液状以外の技術(テープ)へ広げる
2026年4月1日ATP Adhesive Systemsの買収を完了(取得価格9億300万ユーロ、債務決済を含む)約700人、2025年の売上は約2億7,000万ユーロの見込みと発表。製品の90%超が水系
2026年2月4日オランダのStahl(柔軟素材向けの特殊コーティング)を21億ユーロで買収する契約。半期報告書に完了の記載なし接着剤部門との関係は一次資料で確認できず

7. 今後の計画

2026年の接着剤部門の見通し実質成長+2〜4%半期報告書で引き上げ(従来+1〜3%)
2026年の調整後営業利益率16.5〜18.0%接着剤部門。会社の見通し
中期の目標(接着剤部門)成長+3〜5%
利益率は10%台後半
会社の目標であり実績ではない
グループの設備投資6.5億〜7.5億ユーロ2026年の見込み。電子材料の内訳は非公表

ほかに、次の計画が一次資料に書かれています 未確定/将来。

  • 電池向けの応用・試験拠点の世界網(デュッセルドルフ、マディソンハイツ、2026年から上海)
  • ブラジル・ジュンジアイの技術・イノベーションセンターの開所(2026年初め予定。年次報告書の時点で、開所の確認はできていない)
  • 接着剤部門とConsumer Brandsを、ドイツと主要国で別々の法人に分ける計画(敏捷性を高める目的と説明。上場を分離する(スピンオフ)とは書かれていません)
  • 接着剤部門の製品に含まれる高懸念物質(SVHC)について、2030年までの販売量の上限を定め、代替品の開発を進める。気候目標は2045年のネットゼロ(SBTi検証、2030年が中間目標)
確認できなかったこと

半導体・電子材料に限った売上額/同研究開発費/同設備投資額/封止材(アンダーフィルなど)の生産能力/個別の新製品の発売時期/ 大学・公的機関との共同研究の具体名。いずれも年次報告書・半期報告書に記載がありません。

8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか

会社が「目指す」と直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈です。

読み取れること根拠となる一次情報区分
接着剤部門で電子材料を成長の柱と見ている2025年の実質成長を牽引したのはモビリティ&エレクトロニクスで、電子材料は2桁成長(特に中国)。2026年上半期も同領域が+7.8%。煙台工場の生産品目に電子向けが先頭に挙がる推測
電子材料の中でもAIサーバー・車載の半導体を意識している半導体の公式ページに「AIとHPC(高性能計算)」「大型ダイの耐久性」「車載グレードの半導体材料」の資料が並ぶ。個別の売上は非開示推測
液状の接着剤からテープなどへ製品形態を広げるATPの買収理由を「液状技術を超えて広げ、補完的な接合ソリューションで加える」と説明事実
保守・補修(MRO)とインフラ向けを厚くするCritica(2023年)・Seal for Life(2024年)の統合を完了と記載事実
事業を2つの法人に分け、意思決定を速める別法人化の目的を「プロセスと組織をより機敏にする」と説明。スピンオフの記載はない事実(目的)/推測(その先の姿)
環境負荷の低い配合へ移るSVHCの代替と2030年の販売量上限、水系・CO₂削減原料の拡大、2045年ネットゼロ事実(会社の目標)
推測の根拠を1つだけ詳しく

「電子材料を成長の柱と見ている」という読みの根拠は、成長率の序列です。 2025年は、接着剤部門の実質成長+1.5%のうち、モビリティ&エレクトロニクスが+3.3%、パッケージングが-0.6%、建設・職人向けが+1.3%でした 事実。 さらにモビリティ&エレクトロニクスの内側では、電子材料が2桁、産業が「非常に強い」成長、自動車はマイナスと書かれています。 つまり全体の成長の多くを、電子材料と産業が支えたと読めます。 一方、その売上額は開示されていないので、「柱」と呼べる規模かは確かめられません 未確定/将来。

9. 接着・封止材分野の提携マッピング

Henkelを中心とした接着・封止材分野の買収の関係 年次報告書・半期報告書・2014年の公式発表に記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない Henkel 接着剤部門 The Bergquist Company 放熱材料を買収(2014年) ATP Adhesive Systems 水系の特殊テープを買収(2026年4月) Critica/Seal for Life 保守・補修向けを買収(2023・24年) Stahl(オランダ) 21億ユーロで契約。完了の記載なし 共同開発・供給の相手は社名の開示なし 買収(完了) 買収契約のみ(完了の記載なし)
図2 Henkelを中心とした接着・封止材分野の買収の関係。出典:Annual Report 2025、Half-Year Financial Report 2026、2014年9月18日の買収発表。点線は出資・買収を表します。図に含めたのは公式資料に記載がある関係だけで、共同開発や供給の提携は社名が開示されていないため含められません。Stahlは柔軟素材向けのコーティング会社で、接着剤部門に属するかは確認できませんでした。

Henkelの年次報告書は、顧客や供給業者との協業を一般論として述べるだけで、共同開発先の社名を挙げていません。 このため、一次資料で確認できる関係は買収だけになります 事実。 ATPの売り手はArsenal Capital Partners、Stahlの売り手はフランスのWendelと、年次報告書・買収発表に書かれていますが、いずれも財務投資家であり、技術提携の相手ではありません。

10. 提供している技術・製品・サービス

Henkelは接着剤・シーラント・コーティングの3本柱を持ち、産業向けに5つの技術ブランド(Loctite、Technomelt、Bonderite、Teroson、Aquence)を展開しています 事実。電子材料に関係する公式資料の項目を整理します。性能の数値は載せません(製品ごとの技術データシートの値は、グレード・試験条件・改訂日を揃えて見る必要があるため)。

区分公式資料に載っている内容ひとこと
産業向けの5ブランドTechnomelt:ホットメルト接着剤/Bonderite:表面処理と工程ソリューション/Teroson:自動車車体・補修・産業組立向けの接着・シール・コーティング・補強/Aquence:水系接着剤/Loctite:接着剤・シーラント全般ブランドは製品群の名前で、優劣を示すものではない
半導体:ワイヤボンド向けダイアタッチフィルム、ダイアタッチペースト、印刷できるB-stage(半硬化)ダイアタッチ接着剤本シリーズの技術解説「ダイアタッチ」を参照
半導体:先端パッケージ向けアンダーフィル、封止材(encapsulants)、リッド・スティフナー接着剤、EMIシールド、液状圧縮成形(liquid compression molding)技術解説「アンダーフィル」「モールディング」を参照
基板・部品レベル基板レベルの封止材、コンフォーマルコーティング、低圧成形、ポッティング材、導電性接着剤、アセンブリ用フィルム車載・産業用の電子機器の保護
熱管理材料BERGQUISTブランドのGAP PAD(熱伝導パッド)、SIL PAD、ギャップフィラー、サーマルゲル、グリース、相変化材料、熱伝導性接着剤・フィルム技術解説「熱界面材料TIM」「サーマルパッド」を参照
装置・サービスディスペンス(塗布)装置、UV・LED光硬化装置、ロボットシステム、Loctite Pulseなどの設備保全のIoTサービス材料だけでなく、塗布する工程まで一式で提供
素材技術者の視点:同じ「接着剤」でも、半導体では何が違うか

半導体パッケージ向けの材料は、一般の工業用接着剤と求める性質が別物です。 アンダーフィルは、チップとの隙間に毛細管現象で入り込む流動性と、硬化後の熱膨張係数(シリコンに近づけるためのフィラー量)、 低い応力、イオン性不純物の少なさを同時に満たす必要があります。 ダイアタッチは、熱を逃がす導電・熱伝導(銀や銅フィラーの量と粒径)と、チップを反らせない低応力のバランスです。 熱伝導パッド(GAP PAD)は、熱伝導性フィラーを高充填すると硬くなって部品に負荷がかかるため、軟らかさと熱伝導率の両立が設計の中心です 未確定/将来。

Henkelの公式ページが「大型ダイの耐久性」「銅焼結(シンタリング)」といったテーマで資料を出していることは、 これらの課題が顧客の次世代パッケージ(大型化・高出力化)で厳しくなっていることを会社も認識している表れと読めます。 ただし、個別製品が何を満たしているかは、本稿では確認していません。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
自動車への依存接着剤部門の売上の約20%が自動車向け。2025年は欧州・北米の需要が弱く、自動車事業は全体として減収事実
原材料価格2026年は直接材料の価格が前年平均比で1桁台後半%上昇すると会社が見込む。接着剤の原料は石油化学由来が多く、価格変動を受けやすい事実(見込み)/推測(原料の性格)
通商・地政学関税と貿易障壁、中東情勢を会社が挙げる。「In the Region for the Region」(地域で作って地域で売る)で影響を抑える方針事実
為替2025年の接着剤部門は、為替で売上が-4.1%押し下げられ、名目で-2.8%減、実質で+1.5%増事実
大型買収の統合ATP(9億300万ユーロ)の統合、Stahl(21億ユーロ)の完了と統合が続く推測
電子材料の外部検証の難しさ電子材料・半導体の売上額、利益、研究開発費がいずれも非開示のため、成長の規模を外部から確かめにくい未確定/将来
化学物質規制SVHCを含む製品は2030年までの販売量に上限を設け、代替を進める。新製品にSVHCを含める場合は経営の承認が必要。PFASなど個別の物質規制への言及は年次報告書で確認できず事実/未確認
半導体市況の影響電子材料の需要は、顧客の半導体・電子機器の生産量に連動して変動しやすい推測

12. 用語集

調整後営業利益(調整後EBIT)
一時的な費用・収益とリストラ費用を除いた営業利益。Henkelが業績の比較に使う指標。
実質成長率(organic)
為替の影響と買収・売却の影響を除いた売上の成長率。
アンダーフィル
フリップチップとパッケージ基板の隙間を満たす封止用の液状樹脂。接続部の応力を分散する。
ダイアタッチ
半導体チップを基板やリードフレームに固定する接着。ペースト・フィルム・焼結材などがある。
B-stage(Bステージ)
熱硬化性樹脂が、完全に硬化する手前の半硬化状態。印刷後に一度乾かしてから接合に使える。
TIM(熱界面材料)
発熱部品と放熱部品の隙間を埋めて熱を伝える材料。パッド、グリース、ゲルなど。
SVHC
高懸念物質。EUのREACH規則で候補リストに載る、人や環境への影響が懸念される物質。
MRO
保守・補修・オーバーホール。設備やインフラの維持に使う材料・サービスの分野。
概念図:電子基板に接着剤を塗布する工程と、チップ下の封止、放熱パッドの取り付け
図3 接着・封止材の中心的な工程の概念図(AI生成による概念図。実際の工場や製品を写したものではありません)。電子基板への接着剤の塗布、チップ下の隙間への封止材の流入、放熱パッドの取り付けを1枚に描いています。

13. 出典

  1. Henkel Annual Report 2025(2026年3月公表)。接着剤部門の売上・利益、事業領域別の売上、研究開発費と人員、設備投資、買収、研究拠点、ブランド、SVHC方針、気候目標、別法人化の方針、従業員数、上場情報。 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
  2. Henkel Half-Year Financial Report 2026。2026年上半期の売上・利益、ATP Adhesive Systemsの買収完了と取得価格、Stahlの契約、2026年の見通しと中期目標。 https://www.henkel.com/resource/blob/2216938/fc11c44023e1fed5781ccfe4ed6ee360/data/2026-henkel-half-year-financial-report.pdf
  3. Henkel Investor Relations News「Henkel to acquire The Bergquist Company」(2014年9月18日)。 https://dm.henkel-dam.com/is/content/henkel/press-release-acquisition-of-the-bergquist-company
  4. Henkel Adhesive Technologies Semiconductor(半導体向け産業ページ)。半導体パッケージ向け製品群と資料の題名。市場規模の数値(ページ内の調査会社由来の数字)は採用しない。 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/industries/semiconductor.html
  5. Henkel Adhesive Technologies Thermal GAP PAD materials(BERGQUISTブランドの熱伝導パッド)。 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/applications/thermal-management-materials/thermal-gap-pad-materials.html
  6. Henkel Adhesive Technologies Technomelt(ホットメルト接着剤のブランドページ)。 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/our-brands/technomelt.html
  7. Henkel Adhesive Technologies Bonderite(表面技術と工程ソリューションのブランドページ)。 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/our-brands/bonderite.html
  8. Henkel Adhesive Technologies Teroson(自動車・産業組立向けのブランドページ)。 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/our-brands/teroson.html
  9. Henkel Adhesive Technologies Aquence(水系接着剤のブランドページ)。 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/our-brands/aquence.html
  10. Henkel 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.henkel.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本社所在地、上場市場、創業年、DAX採用事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
接着剤部門の売上106.67億ユーロ、調整後営業利益率16.7%、グループ売上に占める割合52%事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
事業領域別の売上(モビリティ&エレクトロニクス38.53億、パッケージング30.97億、職人・建設37.16億ユーロ)と実質成長率事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
電子材料が2桁成長(特に中国)、自動車は減収事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
約2万製品・約10万社・800以上の業種、技術専門家6,500人超、5つの産業向けブランド事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
自動車向けが接着剤部門売上の約20%、うち電気自動車向けが約20%事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
グループの研究開発費6.3億ユーロ、研究開発人員約2,800人、特許約10,200件事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
接着剤部門の研究開発費の割合57%・従業員の割合50%(グラフの値)事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
接着剤部門の研究開発費約3.6億ユーロ・従業員約23,600人という概算本稿の計算本稿による掛け算(グラフの割合×グループ合計)。会社は金額・人数を開示していない
接着剤部門の有形固定資産投資3.51億ユーロ、主な投資案件事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
煙台の新工場で電子・自動車・医療・装置・航空宇宙向け接着剤の生産が段階的に開始事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
上海Inspiration Center(2025年9月開所、投資額6,000万ユーロ、研究者・開発者500人超)、ブラジルのセンター(2026年初め予定)、電池向け応用センター事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
Critica Infrastructure(2023年)・Seal for Life Industries(2024年)の買収と統合事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
ATP Adhesive Systemsの買収契約(2025年12月署名、2026年1月16日発表)、約700人、売上約2.7億ユーロ、水系90%超事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf 出典2 https://www.henkel.com/resource/blob/2216938/fc11c44023e1fed5781ccfe4ed6ee360/data/2026-henkel-half-year-financial-report.pdf
ATPの買収完了(2026年4月1日)と取得価格9.03億ユーロ事実出典2 https://www.henkel.com/resource/blob/2216938/fc11c44023e1fed5781ccfe4ed6ee360/data/2026-henkel-half-year-financial-report.pdf
Stahlを21億ユーロで買収する契約(2026年2月4日)、半期報告書に完了の記載なし事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf 出典2 https://www.henkel.com/resource/blob/2216938/fc11c44023e1fed5781ccfe4ed6ee360/data/2026-henkel-half-year-financial-report.pdf
The Bergquist Companyの買収契約(2014年9月18日)、2013年売上約1.3億ユーロ、従業員約1,000人、生産拠点6事実出典3 https://dm.henkel-dam.com/is/content/henkel/press-release-acquisition-of-the-bergquist-company
2026年上半期の接着剤部門の売上55.34億ユーロ、実質+4.5%、利益率17.7%、モビリティ&エレクトロニクス実質+7.8%事実出典2 https://www.henkel.com/resource/blob/2216938/fc11c44023e1fed5781ccfe4ed6ee360/data/2026-henkel-half-year-financial-report.pdf
2026年の見通し(接着剤部門の実質成長2〜4%、利益率16.5〜18.0%)、中期目標、グループの投資支出6.5億〜7.5億ユーロ、直接材料価格の上昇見込み未確定/将来出典2 https://www.henkel.com/resource/blob/2216938/fc11c44023e1fed5781ccfe4ed6ee360/data/2026-henkel-half-year-financial-report.pdf
接着剤部門とConsumer Brandsの別法人化の方針とその目的(スピンオフの記載なし)事実出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
SVHC方針(2030年までの販売量上限、新製品の承認ルール)、2045年ネットゼロ(SBTi)未確定/将来出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
半導体向け製品群(ダイアタッチ、アンダーフィル、封止材、リッド・スティフナー接着剤、EMIシールド、液状圧縮成形)事実出典4 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/industries/semiconductor.html
BERGQUISTブランドのGAP PAD・熱管理材料の品目事実出典4 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/industries/semiconductor.html 出典5 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/applications/thermal-management-materials/thermal-gap-pad-materials.html
Technomelt(ホットメルト)、Bonderite(表面処理)、Teroson(自動車・産業組立)、Aquence(水系)のブランドの内容事実出典6 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/our-brands/technomelt.html 出典7 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/our-brands/bonderite.html 出典8 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/our-brands/teroson.html 出典9 https://www.henkel-adhesives.com/us/en/our-brands/aquence.html
大学・研究機関・公的資金の具体的な連携先、共同開発先の社名未確定/将来出典1に記載なし。確認できず。存在しないとも断定しない 出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
電子材料・半導体の売上額、研究開発費、設備投資額、封止材の生産能力未確定/将来出典1・2に記載なし。本稿では推計しない 出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf 出典2 https://www.henkel.com/resource/blob/2216938/fc11c44023e1fed5781ccfe4ed6ee360/data/2026-henkel-half-year-financial-report.pdf
PFASなど個別の物質規制への言及未確定/将来出典1に該当の記載を確認できず 出典1 https://www.henkel.com/resource/blob/2131544/eae43b38b5da9c89268a532af1dfbe4f/data/2025-annual-report.pdf
「半導体材料の会社ではなく、総合接着剤メーカーが電子材料にも広げている」という整理本稿の計算本稿の整理。売上の構成(出典1)からの解釈
3類型の区分(総合接着剤・化学/半導体・電子材料/UV硬化・特殊用途)と企業名の例示本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
電子材料を成長の柱と見ているという読み推測成長率の序列(出典1・2)からの本稿の解釈
AIサーバー・車載の半導体を意識しているという読み推測半導体ページの資料題名(出典4)からの本稿の解釈。売上は非開示
別法人化の先の姿(意思決定の高速化以外)についての読み推測別法人化の目的(出典1)からの本稿の解釈
原料の性格(石油化学由来)、大型買収の統合、半導体市況というリスク推測見込み・買収額(出典1・2)からの本稿の解釈

最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値は、Henkelの年次報告書・半期報告書・公式発表に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。