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アムス・オスラム 企業解説

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COMPANY PROFILE / 接着・封止材

アムス・オスラム
― 接着剤・封止材を「売る側」ではなく「使う側」から見た、光半導体メーカー

ams OSRAMは、LED・レーザー・光センサーなどの光半導体を作る、オーストリアとドイツに本社を置くデバイスメーカーです。 接着剤や封止材のメーカーではありません。LEDやセンサーを作る工程で、それらの材料を使う「顧客」の側にいます。 本稿は、同社が公開している年次報告書、技術資料(アプリケーションノート)、データシートから、 LEDのパッケージで封止材・接着剤・シリコーンをどう使い、どう選んでいるかを整理します。 一方で、どの材料メーカーから何をどれだけ買っているか、自社でどう配合しているかは、確認した範囲では公表されていません。 その点は第1章と第5章で明示し、推測で埋めません。

構成:ams OSRAMの2025年度年次報告書(2026年3月20日公表)、技術資料AN122(2018年)・AN024(2022年)、LED製品データシート(2023年版)、公式リリースを一次情報として使用/最終更新 2026年10月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるams OSRAMと、接着・封止材での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模
  5. 接着・封止材にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか
  9. 接着・封止材分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるアムス・オスラムと、接着・封止材での立ち位置

正式名称ams-OSRAM AGグループ名は ams OSRAM
本社オーストリア・プレムシュテッテン(グラーツ近郊)共同本社:ドイツ・ミュンヘン
上場スイス証券取引所(SIX)
銘柄コード AMS
2025年度の年次報告書を2026年3月20日に公表
この分野での区分材料を「使う側」
(光半導体メーカー)
3類型のどれにも入らない。最も近いのは半導体・電子材料
売上(2025年)€3,323百万前年は €3,428百万。半導体部門が7割超
従業員(2025年末)19,120人グループ全体。2026年の事業売却後は約18,500人と会社が発表
使っている材料シリコーン・エポキシ
・ハイブリッド・ガラス
封止・レンズ。接着にはダイアタッチ接着剤など(技術資料AN122)
確認できなかった点材料の調達先・数量
自社配合の有無
年次報告書・技術資料に記載なし
まず押さえるべき1点

接着・封止材に関わる企業は、大きく総合接着剤・化学メーカー/半導体・電子材料メーカー/UV硬化・特殊用途メーカーの3類型に分かれます。 ams OSRAMはこのどれにも入りません。接着剤や封止材を「作って売る」会社ではなく、LEDやセンサーの製品に「使う」会社だからです。 図1では、最も近い半導体・電子材料の枠を強調し、その旨を注記します。 同社の年次報告書は、製造の主な工程に「ダイ(チップ)の組立、封止とコーティング、校正と最終検査」を挙げ、 調達する材料の分類に「エポキシ樹脂とシリコーンなどの接続材料」を挙げています 事実。 技術資料AN122(2018年)は、LEDの封止材がエポキシ、エポキシ・シリコーンのハイブリッド、シリコーン、ガラスの中から選ばれ、 選定の目安が「熱安定性、透過性能、ガスと湿気の透過性、屈折率の整合」だと説明しています 事実。

一方、どの会社のどの製品を使っているか、使用量、自社での配合や評価の体制は、今回確認した資料に記載がありません 未確定/将来。 このため本稿は、「材料を使う側がどんな基準で選び、何を困りごととしているか」を中心に書き、確認できる範囲が限られることを明示します。

作成の判定:本稿は作成すると判断しました。年次報告書(2025年度)、技術資料AN122、技術資料AN024、LED製品データシートの4件が、 封止・接着の材料に関する具体的な事実(工程、材料の分類、材料ごとの利害、試験条件、取り扱い上の注意)を含む会社自身の一次資料として確認できたためです。 ただし、材料の調達や配合に関する情報は乏しく、確認できる範囲は「使い方と選び方」までに限られます。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名はams-OSRAM AG、グループ名はams OSRAMです。 資料の表紙を見ると、2018年のAN122は「OSRAM Opto Semiconductors」名義、2022年のAN024と2023年のデータシートは「ams-OSRAM AG」名義で発行されています 事実。 つまり、本稿が引用する古い技術資料は、現在のams OSRAMの前身にあたる部門が書いたものです(社名統合の経緯の詳細は本稿では確認していません)。

ロゴ画像は、公式サイトのトップページに掲載されているロゴ(SVG)を取得し、 img/ams_osram_logo.svg として設置しています。AIによる生成ではありません。

公式サイト:https://ams-osram.com/

3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか

接着・封止材に関わる企業の3つの類型 同じ「接着剤の会社」でも、強みと売り先がまったく違う 総合接着剤・化学 半導体・電子材料 UV硬化・特殊用途 幅広い用途の接着剤を世界で売る 半導体メーカーと共同で材料を作る 光で固める・用途に作り込む Henkel/H.B. Fuller Sika/Dow ほか レゾナック/住友ベークライト Indium ほか Dymax/DELO Master Bond ほか 用途の広さと世界の販売網 顧客の工程に合わせた材料開発 硬化条件と用途への作り込み 景気と原料価格に左右される 半導体の需要変動に左右される 規模が小さく顧客が偏りやすい ams OSRAMは材料メーカーではなく、封止・接着の材料を使うデバイスメーカー どの類型にも入らないため、最も近い「半導体・電子材料」を強調して示している
図1 接着・封止材に関わる企業の3類型と、ams OSRAMの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。ams OSRAMは光半導体(LED・センサー)を作って売る側で、接着剤・封止材を使う「材料の顧客」にあたる。3類型のどれにも入らないため、最も近い「半導体・電子材料」の枠を強調した。

LEDのパッケージには、接着・封止の材料が少なくとも4か所で使われます。AN122の図(LEDの断面構造)を、本稿の言葉で整理します。

部位役割材料(AN122の記述)
ダイアタッチ(チップの固定)チップをリードフレームに固定する接着剤で貼る方法と、はんだで付ける方法がある。導電性を上げるため、接着剤に銀や金の粒子を加える場合がある
ハウジング(外形)形を作り、反射板となって光を取り出し、外力から守る熱可塑性樹脂、シリコーン、エポキシのいずれか。セラミック基板を使うパッケージ(OSLONファミリーなど)もある
封止材・レンズチップとリードフレームを守り、応力を和らげ、光の取り出し損失を減らし、配光を決める。蛍光体を混ぜて色を変換することもあるエポキシ、エポキシ・シリコーンのハイブリッド、シリコーン、ガラス
蛍光体(色変換)青色チップの光を、黄色などに変えて白色を作る封止材の中に分散させる方法と、チップの表面に薄い変換層として付ける方法(チップレベル・コーティング)がある

4. 会社の規模

会社全体の規模を簡潔に示します。接着・封止材だけの数字は公表されていません 事実。

指標(百万ユーロ)2024年2025年
売上(グループ)3,4283,323
Opto Semiconductors(OS:LED・レーザーなどの発光部品)1,4481,375
CMOS Sensors and ASICs(CSA:光センサー・アナログIC)9811,010
Lamps & Systems(L&S:ランプ・照明)1,000938
研究開発費419388
無形資産・有形固定資産への投資(補助金控除後)502117
項目内容
従業員2025年末で19,120人(2024年末 19,665人)。会社は2026年5〜7月のリリースで「約18,500人」と記載
製造拠点生産拠点16、試験拠点2(2025年末)。プレムシュテッテン(オーストリア)、レーゲンスブルク、ヘルブレヒティンゲン(ドイツ)、シンガポール、無錫(中国)、ペナン、クリム(マレーシア)など
研究開発拠点大規模な開発拠点が世界に25。LEDの開発はドイツとマレーシア、パッケージと変換(蛍光体)の開発はオーストリア、ドイツ、マレーシア、中国、シンガポールに分散
特許約12,100件(特許と出願。約4,600の特許ファミリー)
2026年4〜6月期売上 €805百万、調整後EBITDA率 16.9%(会社発表)

2025年の売上は前年比で約3%減でした(会社の記載)。年次報告書は、OSの減少を「自動車向けLED顧客の在庫調整」「産業向けの需要の谷」「米ドル安」と説明しています。 研究開発費は売上の12%で、前年と同じ比率です。 なお、同社の売上のうちどれだけが封止・接着の材料費に当たるかは非公表です 未確定/将来。

ここで注意

OS部門の売上(€1,375百万)は、LED・レーザーなど発光部品全体の数字で、パッケージ(封止・接着)に関する数字ではありません。 グループの研究開発費 €388百万も、センサー、ICの設計、ソフトウェアなどを含む全体です。 封止・接着の材料の購入額、研究開発費、専任人員数はいずれも非公表で、本稿では推計しません。 サステナビリティ報告には、グループが使った直接材料の総重量(2025年に23,990トン)が出ていますが、 内訳(エポキシ、シリコーンなどの量)は示されていません。

5. 接着・封止材にかけているリソース

人・金・外部との関係・公的な連携の4点について、一次情報で確認できたこと/できなかったことを分けて示します。「記載なし」も成果として書きます。

リソースの種類確認できた内容確認できなかった内容区分
人・拠点グループの研究開発の平均人員は2025年に2,544人(2024年 2,783人)。大規模な開発拠点は世界に25。パッケージと変換(蛍光体)の開発はオーストリア、ドイツ、マレーシア、中国、シンガポールに分散。製造工程の一つとして「封止とコーティング」を自社で持つ封止・接着の材料に関わる研究開発の専任人員数事実/非公表
金研究開発費 €388百万(売上の12%)。無形資産・有形固定資産への投資は €117百万(補助金控除後)。直接材料の総重量は2025年に23,990トン(エポキシ樹脂・シリコーンなどを含む。内訳なし)封止・接着の材料の購入額、そのための研究開発費事実/非公表
外部への出資・買収・合弁・売却事業の売却が中心。2024年後半に受動光学部品事業を分離、2025年7月にエンターテインメント・産業用ランプ事業の売却を発表、2026年2月に非光学アナログ・ミックスドシグナルセンサー事業をInfineonへ売却することで合意(€570百万、2026年7月1日に完了)、2026年5月にCMOSイメージセンサー事業をindie Semiconductorへ売却することで合意(会社の発表では€40百万)封止材・接着剤メーカーへの出資、買収、合弁、長期供給契約(記載なし)事実/確認できず
大学・研究機関・公的資金との連携Fraunhofer IZM(ドイツの研究機関)の開発チームと、多画素LED「EVIYOS」の開発で2024年のドイツ未来賞(デジタルライト部門)を共同受賞。2025年に、欧州委員会のEuropean Chips Act(EUチップス法)の資金€83百万を受領(年次報告書は、プレムシュテッテンのCMOSセンサー用の新工場にオーストリア共和国が同法の枠組みで資金を出したと記載)封止・接着の材料に関する大学・研究機関との共同研究、補助金(記載なし)。この資金はCMOSセンサー工場向けで、封止材の開発向けではない事実/確認できず
素材技術者の視点:材料を「使う側」の強みは、評価の蓄積にある

AN122は、LEDがJEDEC規格のJESD22-A108(定常寿命試験)と同101(温湿度試験)に基づく堅牢性試験を受けていること、 独自に硫化水素15 ppm・40℃・相対湿度90%で1,000時間超の腐食試験を行っていること(この条件には国際規格が無いと明記)、 EN 60068-2-60の方法4(25℃・相対湿度75%・SO2 200 ppb・NO2 200 ppb・H2S 10 ppb・Cl2 10 ppb で21日間)も使っていることを書いています 事実。 材料メーカーは「単品の物性」を保証しますが、パッケージの中で、チップの熱・光・湿気・外部の化学物質が同時にかかったときにどうなるかは、使う側でなければ分かりません。 ams OSRAMの技術資料は、その知見を顧客に伝える形で公開されており、 封止材・接着剤・コーティング材を選ぶ側(照明器具メーカー)への注意が多く書かれています。 これは、本シリーズで扱う材料メーカーの技術解説と、同じ現象を逆の側から見た資料として読めます。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2018年8月6日技術資料AN122「LEDの化学的な適合性」を発行(OSRAM Opto Semiconductors名義)。封止材の変色、リードフレームの硫化腐食、蛍光体の劣化などの仕組みと、試験方法、材料の適合性リストを公開封止・接着の材料の選び方を、顧客向けに体系化した資料
2022年11月15日技術資料AN024「シリコーン樹脂LEDの取り扱い」を発行。明るいLEDで寿命10万時間(室温)を目指し、シリコーンの封止材を採用したと説明封止材にシリコーンを使う理由と、取り扱い上の注意を公開
2023年9月29日LED「OSLON Black LCW H9GP」のデータシート(版1.7)。「エポキシのパッケージにシリコーンのレンズ」、腐食堅牢性クラス3B、AEC-Q102認定などエポキシとシリコーンを組み合わせた実製品の例
2024年EVIYOS(多画素LED)がドイツ未来賞を受賞(Fraunhofer IZMと共同)。2024年後半に受動光学部品事業を分離高機能品への集中と、非中核の整理
2025年EVIYOS HD25(25,600画素)の生産を拡大。ALIYOS(フィルム上のLED)の薄型・透明・曲げられる版を改良。年間を通じて、4月に示した債務削減の計画(€500百万を大きく超える売却収入を目指す)を進めるパッケージの形が多様になっている
2026年2月「デジタル・フォトニクス」のリーダーを目指す戦略と、構造改革「Simplify」を発表(後述)事業の絞り込み
2026年7月1日Infineonへの非光学センサー事業の売却を完了。デジタル・フォトニクスの事業単位を新設売却による範囲の変化

7. 今後の計画

2030年の目標(半導体)売上の年平均成長率
中位〜高位の1桁%
調整後EBITDA率25%以上。会社の目標(未確定)
2030年の目標(グループ)フリーキャッシュフロー
€200百万超
負債比率(レバレッジ)2未満。会社の目標
2026年7〜9月期の見通し売上 €770〜870百万調整後EBITDA率 16.0%±1.5%(会社のガイダンス)
「Simplify」の効果年間約€200百万の
コスト削減(2028年末まで)
3年で2,000人超の人員削減を計画。会社の計画

会社は、欧州の拠点を「革新的で差別化された製品」に集中させ、標準化されたコストの高い製品は主にアジアで作る方針を示しています (2026年2月10日発表の「Simplify」、年次報告書の記載)。生産と研究開発の一部を移す計画も含まれます 未確定/将来。 成長の対象として、自動車、AR(拡張現実)スマートグラス、バイオセンシング、ロボット、AIデータセンターの光インターコネクトを挙げています 事実。

確認できなかったこと

次はいずれも、今回確認した一次資料に記載がありません 未確定/将来。

パッケージ用の封止・接着の材料に関する開発計画、採用予定の材料、仕入れ先の変更/材料の購入額の見通し/ 「Simplify」に伴う生産移転で、封止・接着の工程や材料の仕様がどう変わるか。 市場調査会社の推計は、出所が会社自身ではないため本稿では採用しません。

8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
封止材の選択は、寿命・耐熱・耐光を重視する用途(特に自動車)でシリコーンに傾くAN024が「シリコーン樹脂のハウジングはエポキシより高い接合部温度を許し、耐湿と温度サイクルの信頼性が高く、自動車向けに適する」と記載。年次報告書は、自動車が最大の最終市場で、OSは車載LEDで世界首位と記載推測
ただしシリコーン一辺倒ではなく、用途に応じて使い分けているデータシートで「エポキシのパッケージにシリコーンのレンズ」の製品を提供。AN122は、エポキシ、ハイブリッド、シリコーン、ガラスのいずれも提供していると記載事実
材料の不具合の多くを、顧客の取り付けと周辺材料の問題として扱っているAN122が、顧客の使うコンフォーマルコート、シーラント、接着剤、洗浄剤、ガスケットなどの適合性を詳しく列挙し、「十分な顧客側の試験が常に必要」と記載事実
標準品の生産をアジアへ移すことで、材料の調達と評価の体制も変わる可能性がある「Simplify」が、標準化された製品を主にアジアで作る方針を示す。材料への影響の記載はない推測(根拠が弱い)
推測の根拠を1つだけ詳しく

1つ目の推測は、AN024の説明が根拠です。AN024は、LEDの寿命が半導体チップそのものではなく、主にハウジング(パッケージ)で決まると述べ、 明るいLEDで寿命10万時間(明るさが半分になるまでの時間、室温)を実現するために、シリコーンの封止材を採用したと説明しています 事実。 さらにAN122は、青色の光と熱がかかるエポキシ封止材が黄変し、85℃・相対湿度85%・30 mAの1,000時間試験で、シリコーンのほうが光出力を保つ例を示しています。 これらから、高出力・高温・青色光の用途ほどシリコーンが選ばれると読めます。 ただし、どの製品がどの材料かの一覧は公表されておらず、これは本稿の解釈です 未確定/将来。

9. 接着・封止材分野の提携マッピング

ams OSRAMを中心とした接着・封止材分野の関係 年次報告書と公式リリースに記載のある関係のみ。材料メーカーとの関係は記載がなく確認できず ams OSRAM 光半導体 Fraunhofer IZM EVIYOSの開発で共同受賞(2024年) Infineon センサー事業を売却(2026年7月) 材料メーカー(調達先) 社名・契約の記載なし(確認できず) indie Semiconductor CMOS画像センサー事業を売却 公的資金:EUチップス法の枠組みで、プレムシュテッテンのCMOSセンサー用新工場に資金(封止材向けではない) 共同開発(受賞) 事業売却 調達(社名の開示なし)
図2 ams OSRAMを中心とした接着・封止材分野の関係。出典:2025年度の年次報告書(Fraunhofer IZM、事業売却、公的資金)、2026年のams OSRAMのリリース(Infineon、indie Semiconductor)。図に含めたのは一次資料に記載がある関係だけです。封止材・接着剤の材料メーカーとの提携・供給契約は、記載がなく確認できませんでした。売却は、封止・接着の材料とは直接の関係がありません。

10. 提供している技術・製品・サービス

ams OSRAMが売るのは材料ではなく、材料を使って作った光半導体です。そこで本章では、同社の技術資料と製品データシートから、 封止・接着の材料の使い方と、その選び方の基準を整理します。値はメーカー(ams OSRAM)の公称または試験の例で、 グレードや条件が違えば比較できません。

エポキシとシリコーンの使い分け(AN122の整理)

項目エポキシシリコーン
強み硬く、機械的な保護がよい/LEDとの熱膨張の整合がよい/ハウジング・リードフレームとの接着がよい/ガス・湿気を通しにくい/価格が低い/屈折率は約1.5高出力に耐える/熱安定性が高い(高い接合部温度を許す)
弱み熱安定性に限界がある/光(特に青色光)に弱い。熱酸化で黄変する柔らかく剛性が低い/熱膨張が大きい/表面がべたつき、ほこりを引き寄せる/ガス・湿気を通しやすい/価格が高い/屈折率は1.4〜1.5
劣化の仕組み酸無水物硬化剤で硬化した三次元網目。熱・光で骨格の結合が切れ、芳香族基が変色の原因になる骨格は Si–O。メチル基の酸化で架橋が増え、硬くなり、割れる。フェニル基が切れて発色団を作ると変色する

ハイブリッド(エポキシとシリコーンの中間の性質)も使われます。AN122は、封止材の選定の目安を「熱安定性、透過性能、ガス・湿気の透過性、屈折率の整合」と説明しています 事実。

製品の例とデータシートの記載

資料・製品記載(メーカー公称)条件・規格時点
OSLON Black LCW H9GP(白色LED)パッケージ「エポキシのSMDパッケージ、シリコーンのレンズ」/腐食堅牢性クラス3B/AEC-Q102認定/防湿レベル MSL 2/超音波洗浄は不可腐食試験:40℃・相対湿度90%・H2S 15 ppm・14日(「IEC 60068-2-43より厳しい」と記載)/MSL:JEDEC J-STD-020E版1.7、2023年9月29日
同データシートの型番の読み方封止の方式として「注型(キャスティング)のシリコーン封止」「圧縮成形の平らなシリコーン(体積変換/層変換)」の区分がある変換=蛍光体による色変換同上
AN024(シリコーン樹脂LED)シリコーンの封止材を採用し、明るいLEDで寿命10万時間(室温)を目指す/揮発分が極めて少ない材料/自動車用に適する/洗浄はイソプロピルアルコールで5〜10秒(最長15秒)/超音波洗浄は非推奨寿命=明るさが初期の半分になるまで2022年11月15日

AN024は、シリコーンの封止材が「従来の封止材より一般に柔らかく、表面がほこりを引き寄せやすい」ため、 実装後に必要に応じて洗浄すること、鋭利な物で封止面を突かないこと、ピックアンドプレースのノズルは反射部より大きいものを選ぶこと、などを求めています 事実。 また、表面の微小な異物は、外観上は目立っても、寿命や明るさに影響しないので無視してよい、と書いています。

素材技術者の視点:封止材の「内側」より「外側」の材料が効く

AN122で最も実務的なのは、LEDの周囲にある別の材料との相互作用の整理です 事実。

(1) 銀の硫化。銀めっきのリードフレームは反射率が高い反面、硫化水素などと反応して硫化銀(黒色)を作り、光出力が30〜40%下がる場合があると書かれています。 硫黄を含む加硫ゴム(Oリング、ガスケット)や硫黄化合物を含むシーラントを、LEDの近くに置かないよう求めています。 シリコーンはガス・湿気を通しやすいので、外から入ったガスが封止材を抜けて銀に届く経路が問題になります。エポキシは通しにくく、銀の保護に向きます。

(2) 揮発性有機化合物(VOC)による変色。密閉に近い空間(コーティングの下、密閉した器具の中)に、接着剤、はんだペースト、シーラント、ポリウレタンのポッティング材などから出たVOCが閉じ込められると、 チップ表面で熱と光により分解して薄い暗色の膜を作り、光出力が下がり色がずれます。 この変色は、原因を除いて運転を続ければ(100時間未満)かなり戻る例が示されています。 対策として、コーティングやシーラントを気密にしすぎず、ガスが逃げる余地を残すことを勧めています。

(3) シリコーンそのものの注意。AN122の化学物質の一覧は、シリコーン(シーラント、接着剤、封止材、ポッティング材、コーティング樹脂)について 「シリコーンの出どころ、グレード、硬化条件によっては、パッケージの故障を起こしうる。硬化の副生成物がパッケージを汚染することがある。イオンと不純物が少ない電子材料グレードが強く勧められる」と書いています。 また、溶剤についても、アセトンは封止材を膨潤させうる、四塩化炭素は軟らかくして曇らせうる、トルエンとキシレンはシリコーンと相互作用しうる、と記載しています。 本シリーズの技術解説「シリコーン」「車載用シリコーンと封止材」「ダイアタッチ」「半導体封止材」と合わせて読むと、材料メーカー側の言う「低揮発分」「低イオン」が、使う側でなぜ必要かが分かります。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
財務の負担2025年末の有利子負債は €2,561百万。2029年満期の債券の利率はユーロ建て10.50%、米ドル建て12.25%。会社は債務削減を最優先課題としている事実
事業範囲の変化非光学センサー(Infineon)、CMOS画像センサー(indie Semiconductor)、ランプ事業の売却・分離が続く。売却で、パッケージ材料の購買量や仕様の構成が変わる可能性がある(影響の大きさは非公表)推測
貴金属・重要原材料の価格2025年は金などの貴金属の価格上昇が原価を押し上げた。報告書は、調達する材料に貴金属(金、白金、パラジウム)が含まれると記載。AN122はリードフレームのめっきにNiPdAu、NiAu、銀などを挙げる。どの工程でどれだけ使うかの内訳は非公表事実
供給元の集中重要材料では、主な調達先に加えて少なくとも1社の代替先を確認する方針だが、常に可能とは限らない。台湾の供給元への依存が残るとリスクとして記載事実
車載・産業需要の変動2025年は、自動車向けLED顧客の在庫調整と産業向けの需要の谷で、OSの売上が減少事実
顧客側の材料の不適合顧客が使うコンフォーマルコート、シーラント、接着剤、洗浄剤の不適合で、封止材の変色やリードフレームの腐食が起こりうる。AN122は「顧客側の十分な試験が常に必要」と明記事実
拠点の再編「Simplify」で、3年で2,000人超の削減と、生産・研究開発の一部の移転を計画。実行の過程で、パッケージ工程や材料の再評価が必要になる可能性がある(記載はない)推測
確認できなかった領域材料の調達額・調達先・自社配合・長期契約、封止材の不具合による返品や費用。本稿はこれらを推計しない未確定/将来

12. 用語集

LED
発光ダイオード。半導体チップに電流を流して光を出す部品。
封止材(エンキャプスラント)
チップとリードフレームを覆って守り、レンズや蛍光体の保持も担う材料。LEDではエポキシ、シリコーン、ガラスなどが使われる。
ダイアタッチ
チップ(ダイ)をリードフレームや基板に固定する工程と材料。接着剤またははんだを使う。
リードフレーム
チップを載せ、電気の接続と放熱を担う金属の板。銀などでめっきすることがある。
蛍光体
青色の光を別の色に変える粉。封止材に混ぜるか、チップの表面に薄く付けて、白色などを作る。
チップレベル・コーティング(CLC)
蛍光体の層をチップの表面に直接付ける方式。
硫化銀
銀が硫化水素などの硫黄を含むガスと反応して作る黒い化合物。反射率が下がる。
VOC
揮発性有機化合物。接着剤やシーラントから出て、封止材の下に溜まると変色の原因になる。
JEDEC
半導体の規格を定める団体。JESD22シリーズは信頼性の試験方法、J-STD-020は防湿レベルの規格。
MSL(防湿レベル)
部品がどれだけの期間、湿った空気にさらされても、はんだ付けの熱で壊れないかを示す等級。
AEC-Q102
車載用の個別の光半導体に対する信頼性の認定規格。
SIX
スイス証券取引所。
概念図:LEDチップにシリコーン封止材を塗布する工程と、パッケージの断面構造(チップ、接着層、金線、封止材、蛍光体)
図3 LEDのパッケージで、チップをシリコーンで封止する工程と、その断面構造を描いた概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。ams OSRAMが「使う側」として扱う材料の位置を示しています。

13. 出典

  1. ams OSRAM Annual Report 2025(英語版、2026年3月20日公表)。製造の主な工程(ダイ組立、封止とコーティングなど)、生産拠点16・開発拠点25。 https://ams-osram.com/documents/d/ams-osram/eng-geschafts-und-nachhaltigkeitsbericht-ams-osram-2025
  2. ams OSRAM Management Report and Group Financial Statements 2025。売上・部門別売上、研究開発費と人員、パッケージと変換の開発拠点、特許、従業員数、投資、事業売却、Simplify、EVIYOS、リスク。 https://ams-osram.com/documents/d/ams-osram/ams-osram-en-management-report-and-group-financial-statement-2025
  3. ams OSRAM Sustainability Report 2025(ESRS)。調達する材料の分類(エポキシ樹脂・シリコーン)と直接材料の総重量。 https://ams-osram.com/documents/d/ams-osram/ams-osram-en-sustainability-report-2025
  4. ams OSRAM(旧OSRAM Opto Semiconductors) Application Note AN122「Chemical compatibility of LEDs」(2018年8月6日)。LEDの構造、封止材の比較、劣化の仕組み、試験方法、材料の適合性リスト。 https://look.ams-osram.com/m/399b39183ef36c94/original/Chemical-compatibility-of-LEDs.pdf
  5. ams-OSRAM AG Application Note AN024「Handling of silicone resin LEDs」(2022年11月15日)。シリコーン封止材の採用理由、取り扱いと洗浄の注意。 https://look.ams-osram.com/m/3e5513b220e8b206/original/Handling-of-silicon-resin-LEDs.pdf
  6. ams-OSRAM AG データシート「OSLON Black LCW H9GP」(版1.7、2023年9月29日)。パッケージ、腐食堅牢性、MSL、AEC-Q102、型番の読み方。 https://look.ams-osram.com/m/2bd6623678fd3f64/original/LCW-H9GP.pdf
  7. ams OSRAM プレスリリース「Q2 2026 results」。2026年4〜6月期の業績、見通し、事業単位の新設。 https://ams-osram.com/news/press-releases/q2-2026-results
  8. ams OSRAM プレスリリース「Digital Photonics leader」(2026年2月)。戦略、2030年の財務目標、Infineonへの売却の発表。 https://ams-osram.com/news/press-releases/digital-photonics-leader
  9. ams OSRAM プレスリリース「Infineon closing」(2026年7月1日)。非光学センサー事業の売却の完了。 https://ams-osram.com/news/press-releases/infineon-closing
  10. ams OSRAM プレスリリース「CIS divestiture」(2026年5月11日)。CMOS画像センサー事業のindie Semiconductorへの売却。 https://ams-osram.com/news/press-releases/cis-divestiture
  11. ams OSRAM プレスリリース「Annual Report 2025」(2026年3月20日)。年次報告書の公表と売上。 https://ams-osram.com/news/press-releases/annual-report-2025
  12. ams OSRAM 公式サイト(会社概要とロゴの確認用)。 https://ams-osram.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本社所在地、売上(グループと3部門)、研究開発費、従業員数、特許数、生産拠点、開発拠点事実出典2 https://ams-osram.com/documents/d/ams-osram/ams-osram-en-management-report-and-group-financial-statement-2025
製造の主な工程(ダイ組立、封止とコーティングなど)と、生産拠点16・開発拠点25事実出典1 https://ams-osram.com/documents/d/ams-osram/eng-geschafts-und-nachhaltigkeitsbericht-ams-osram-2025
調達する材料の分類(エポキシ樹脂・シリコーンなどの接続材料)と、直接材料の総重量23,990トン事実出典3 https://ams-osram.com/documents/d/ams-osram/ams-osram-en-sustainability-report-2025
パッケージと変換(蛍光体)の開発が、オーストリア・ドイツ・マレーシア・中国・シンガポールに分散していること事実出典2 https://ams-osram.com/documents/d/ams-osram/ams-osram-en-management-report-and-group-financial-statement-2025
LEDの構造(ダイアタッチ、ハウジング、封止材、蛍光体)と各部位の材料事実出典4 https://look.ams-osram.com/m/399b39183ef36c94/original/Chemical-compatibility-of-LEDs.pdf
エポキシとシリコーンの長所・短所、劣化の仕組み(熱酸化、フェニル基の発色団、VOC)事実出典4 https://look.ams-osram.com/m/399b39183ef36c94/original/Chemical-compatibility-of-LEDs.pdf
銀めっきのリードフレームの硫化(光出力が30〜40%低下)、腐食試験の条件、JEDEC試験の言及事実出典4 https://look.ams-osram.com/m/399b39183ef36c94/original/Chemical-compatibility-of-LEDs.pdf
シリコーン(シーラント・接着剤・封止材・ポッティング材)に関する注意と、溶剤との相互作用事実出典4 https://look.ams-osram.com/m/399b39183ef36c94/original/Chemical-compatibility-of-LEDs.pdf
AN024:シリコーン封止材の採用理由、寿命10万時間の目標、取り扱いと洗浄の注意事実出典5 https://look.ams-osram.com/m/3e5513b220e8b206/original/Handling-of-silicon-resin-LEDs.pdf
OSLON Black LCW H9GP:エポキシのパッケージにシリコーンのレンズ、腐食堅牢性クラス3B、AEC-Q102、MSL 2事実出典6 https://look.ams-osram.com/m/2bd6623678fd3f64/original/LCW-H9GP.pdf
2026年4〜6月期の売上・調整後EBITDA率・7〜9月期の見通し、事業単位の新設事実出典7 https://ams-osram.com/news/press-releases/q2-2026-results
デジタル・フォトニクス戦略、2030年の財務目標、成長の対象市場、Infineonへの売却の概要事実出典8 https://ams-osram.com/news/press-releases/digital-photonics-leader
Infineonへの売却完了(2026年7月1日)、約18,500人事実出典9 https://ams-osram.com/news/press-releases/infineon-closing
indie SemiconductorへのCMOS画像センサー事業の売却(€40百万)事実出典10 https://ams-osram.com/news/press-releases/cis-divestiture
年次報告書の公表日(2026年3月20日)と、2025年の売上約€33億事実出典11 https://ams-osram.com/news/press-releases/annual-report-2025
Simplify(2026年2月10日発表)、受動光学部品・ENI・Infineonの売却、EVIYOSのFraunhofer IZMとの共同受賞、EUチップス法の資金€83百万、有利子負債・債券利率事実出典2 https://ams-osram.com/documents/d/ams-osram/ams-osram-en-management-report-and-group-financial-statement-2025
供給元の方針(代替先の確認)、台湾の供給元への依存、貴金属の価格上昇事実出典2 https://ams-osram.com/documents/d/ams-osram/ams-osram-en-management-report-and-group-financial-statement-2025
ロゴ画像の取得元(公式サイトのトップページのSVG)事実出典12 https://ams-osram.com/
売上のうち3部門の構成比、2025年の増減本稿の計算本稿の計算(出典2の数値の整理)
ams OSRAMが3類型のどれにも入らない(材料を使う側)という整理本稿の計算本稿による整理。最も近い類型を強調した
封止・接着の材料の購入額、研究開発費、専任人員数、調達先、数量、自社配合未確定/将来いずれも非公表または記載なし。本稿では推計もしない
封止・接着の材料に関する開発計画、採用予定の材料、仕入れ先の変更、Simplifyに伴う材料の仕様変更未確定/将来今回確認した一次資料に記載なし。本稿では推定しない
封止・接着の材料メーカーとの提携、材料に関する大学・研究機関との共同研究、補助金未確定/将来年次報告書・技術資料に記載なし。本稿では存在しないとも断定しない
2030年の財務目標、2026年の見通し、Simplifyの削減効果未確定/将来会社の目標・計画であり見通し。達成の事実ではない(出典2・7・8)
車載など高出力・高温・青色光の用途でシリコーンが選ばれるという読み推測AN024・AN122の記述と、自動車が最大の市場という記載からの本稿の解釈
標準品の生産のアジア移転で、材料の調達・評価の体制も変わりうるという読み推測Simplifyの方針からの本稿の解釈(根拠が弱い)
事業売却でパッケージ材料の購買の構成が変わりうるというリスク推測売却の事実からの本稿の解釈
拠点再編で、パッケージ工程や材料の再評価が必要になりうるというリスク推測Simplifyの計画からの本稿の解釈
封止材の「外側」の材料が効くという整理(銀の硫化、VOC、シリコーンの注意)事実出典4の記述に基づく本稿の整理(解説)

最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値は、ams OSRAMの年次報告書・技術資料・データシート・公式リリースに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。技術資料の値は「メーカー(ams OSRAM)の公称または試験の例」で、条件が違えば比較できません。ams OSRAMは封止・接着の材料を使う側の会社で、材料の調達や配合に関する情報は確認できませんでした。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。