広帯域ペロブスカイトにおける臭素リッチ相核形成の熱力学的抑制による高安定タンデム太陽電池の実現

Energy & Environmental Science (RSC Publishing) イギリス
概要
広帯域ペロブスカイト太陽電池は、タンデム構造で高効率を実現する鍵ですが、光誘起ハロゲン化物相分離による動作不安定性が大きな課題でした。この研究では、膜形成中の臭素リッチ相の優先的な核形成がこの不安定性の原因であることを特定しました。新たな熱力学的抑制アプローチにより、1.68 eVのシングルジャンクションデバイスで23.50%の効率を達成し、2240時間以上にわたり98%の効率を維持。ペロブスカイト-シリコンタンデムセルでは、認証済み32.52%の効率と、9700時間を超えるT90寿命が推定される優れた安定性を実現しました。
詳細

広帯域ペロブスカイトの安定性課題

ペロブスカイト太陽電池は、その優れた光電変換効率により、次世代太陽電池として大きな期待を集めています。特に、広帯域(ワイドバンドギャップ)ペロブスカイトは、シリコン太陽電池などと組み合わせたタンデム構造において、より高い全体効率を実現するために不可欠な要素です。しかし、これらの材料は、光照射下でハロゲン化物組成が不均一になる「相分離」現象を起こしやすく、これがデバイスの動作不安定性の主な原因となっていました。特に、臭素リッチ相の形成がデバイス性能の劣化に直結することが知られています。

熱力学的抑制による安定化戦略

この研究では、広帯域ペロブスカイトの膜形成過程において、臭素リッチ相の優先的な核形成が、本質的な組成不均一性を引き起こす根本的なメカニズムであることを明らかにしました。これに対処するため、研究チームは「熱力学的抑制」という新たなアプローチを開発しました。これは、ペロブスカイト層の結晶成長を精密に制御し、望ましくない臭素リッチ相の核形成を意図的に抑制するものです。

  • 1.68 eVシングルジャンクションデバイス: この熱力学的抑制戦略を適用した1.68 eVの広帯域シングルジャンクションペロブスカイト太陽電池は、23.50%という高い電力変換効率を達成しました。さらに、長期動作安定性テストでは、2240時間以上にわたり初期効率の98%を維持するという卓越した結果を示しました。これは、単体デバイスの信頼性を大きく向上させるものです。
  • ペロブスカイト-シリコンタンデムセル: この安定化した広帯域ペロブスカイトをトップセルとしてシリコンボトムセルと組み合わせたタンデム構造では、33.08%という驚異的な効率(第三者機関により32.52%と認証)を記録しました。これは、現在の太陽電池の効率記録に迫るレベルです。さらに、屋外動作540時間後も性能を維持し、T90寿命(効率が初期値の90%に低下するまでの時間)は9700時間を超えると推定されており、極めて高い動作安定性を示しています。

技術的意義と展望

この研究は、広帯域ペロブスカイトにおける光誘起相分離の問題を熱力学的な観点から解決する画期的な方法を提示しました。これにより、タンデム太陽電池の商用化に向けた最大の障壁の一つが取り除かれることになります。特に、高い効率と優れた長期安定性を両立させたことは、実用的な次世代太陽電池の開発において決定的な進歩です。今後、この技術の大面積化や製造コストの削減が課題となりますが、ペロブスカイト太陽電池がエネルギー市場で競争力のある選択肢となる可能性を大きく高める成果と言えます。

元記事: https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2026/ee/d5ee06815k

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