主要成果
米国食品医薬品局(FDA)は、極めて稀な神経疾患であるアレキサンダー病を直接治療する初の薬剤「Zanvastro」を承認した。アレキサンダー病は神経系に進行性の損傷を与え、致命的となる可能性がある疾患だが、これまでは症状を管理する対症療法しか選択肢がなかった。Zanvastroは、単なる症状の緩和ではなく、疾患の根本的な生物学的プロセスを標的とする「疾患修飾治療」として承認された唯一の薬剤である。
技術・詳細
本剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)と呼ばれる技術を採用している。ASOは、特定のタンパク質を製造するための細胞内の指示に干渉するように設計された短い遺伝物質であり、特定のタンパク質の産生量を減少させることができる。Zanvastroが標的とするのは、アストロサイト(脳や脊髄の機能を維持・サポートする特殊な細胞)に存在する「グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)」である。
アレキサンダー病では、GFAPの変異によりタンパク質が過剰に産生され、脳内に「ローゼンタール線維」と呼ばれる異常な蓄積物が形成される。ZanvastroはこのGFAPの産生を制限することで、タンパク質の蓄積によるさらなる損傷を防ぐ仕組みとなっている。投与方法は、中枢神経系に到達させるため、3ヶ月に1回、専門の医療従事者が脊髄管に注入する形式で行われる。
背景・業界の文脈
この成果は、ウィスコンシン大学マディソン校の獣医学部およびWaismanセンターにおける30年以上の研究に基づいている。特にAlbee Messing教授らの研究チームが、1990年代後半にマイケル・ブレナー教授と共に、GFAPの遺伝的変化がアレキサンダー病の原因であることを突き止めた。この発見は、マウスを用いてGFAPを過剰に産生させた際に、人間のアレキサンダー病に酷似した病変が再現されたという予期せぬ結果から得られたものである。
この遺伝的原因の特定により、診断方法も劇的に改善した。従来は侵襲的な脳生検による組織確認が必要だったが、現在は血液サンプルを用いた遺伝子検査で診断が可能となっている。薬剤開発においては、Ionis Pharmaceuticals社が共同で開発に携わり、WaismanセンターのTracy Hagemann准教授らが構築した高度な齧歯類モデルを用いて検証が進められた。
今後の展望
2021年夏に開始された臨床試験では、Zanvastroの投与を受けた患者において、一般的に運動機能の安定化が見られ、一部の患者では運動能力の改善が確認された。世界的に100万人に1人未満という極めて稀な疾患であり、乳幼児期から成人期まで発症時期や進行速度が異なるため、個々の症例に合わせた治療の適用が期待される。
元記事: https://www.sciencedaily.com/releases/2026/10/261007042111.htm
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