主要成果
EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)のKevin Sivula氏率いるLIMNO labの研究チームは、水中で動作する鉛フリーの層状ダブルペロブスカイトを開発しました。研究チームは、このクラスの材料が水中で動作したのは今回が初めてであるとしています。この新材料は、水ベースの電解質を用いた光アノードとして機能し、1サン(one-sun)の光照射下において、可逆水素電極に対して+1.0 Vで0.25 mA/cm²の電流密度を記録しました。
技術・詳細
開発された材料((NDI-dH)₂AgBiI<0xE2><0x82><0x88>)の最大の特徴は、ナフタレンジイミドという嵩高く疎水性の高い有機スペーサーを構造に組み込んだ点にあります。このスペーサーの導入により、単純な脂肪族鎖やベンゼンベースのスペーサーを用いた材料と比較して、面内キャリア移動度が3倍向上し、トラップ密度は1桁分低減されました。
安定性に関する加速試験(温度30°C、相対湿度80%で24時間)では、他の2種類のスペーサーを用いたフィルムは脱色し層状構造を失ったのに対し、本材料は構造を維持しました。また、光アノードとしての動作試験において、素のフィルムは徐々に劣化しましたが、正孔輸送ポリマーのオーバーレイ層を適用することで、光電流は一部低下したものの、1時間以上の連続動作を維持することに成功しました。
特筆すべきは、有機スペーサーが単なる構造的な足場(スキャフォールド)としてだけでなく、光を吸収して光電流に寄与する能動的な光吸収体としても機能している点です。
背景・業界の文脈
層状ハイブリッドダブルペロブスカイトは、太陽電池や光電子デバイスへの応用が期待されている有望な材料です。しかし、これらの材料は一般的に水に対する感受性が非常に高く、半導体が液体に直接接触するアプリケーションへの導入が大きな障壁となっていました。具体的には、バイオセンサーや太陽光を利用した燃料生産(太陽燃料)などの分野での活用が制限されていました。
今後の展望
今回の成果は、スペーサーのエンジニアリング(設計)が、安定した鉛フリーペロブスカイト光電極を実現するための有効なアプローチであることを示しています。鉛を含まない環境負荷の低い材料で水中の動作を実現したことで、今後の光電気化学デバイスの設計に新たな方向性が提示されました。
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