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BAEシステムズ 企業解説

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COMPANY PROFILE / 宇宙産業

BAEシステムズ
― 英国の防衛大手のうち、宇宙の「耐放射線の電子部品」と「宇宙機」を持つ部門。宇宙の売上は非公表

BAE Systemsは英国の大きな防衛・航空宇宙企業で、会社全体の事業は本稿の対象ではありません。 本稿が扱うのは、この会社の中で宇宙に関わる2つの部分だけです。 1つは、人工衛星や探査機の中で使う耐放射線の電子部品(コンピュータ、メモリ、専用チップ。米国バージニア州マナサスの拠点)。 もう1つは、2024年に買収したBall Aerospace(現 Space & Mission Systems)が担う宇宙機・望遠鏡・地上システムです。 宇宙事業の売上は、電子システム部門の一部として扱われ、単独では開示されていません。 防衛全般は書かず、公表資料で確認できた宇宙の事実を整理します。

構成:年次報告書・決算発表(2026年2月、2026年7月30日)、BAE Systemsの公式サイトとニュースリリース、NASAの公表を一次情報として使用/宇宙の事情は変化が速いため確認日を記載/最終更新 2026年10月17日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるBAE Systemsと、宇宙産業での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 宇宙産業の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(全社は簡潔に、宇宙は非公表)
  5. 宇宙産業にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は宇宙産業で何を目指しているか
  9. 宇宙産業分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるBAEシステムズと、宇宙産業での立ち位置

正式名称BAE Systems plc英国の会社(イングランド・ウェールズ登記 No. 01470151)
登記上の所在地英国・ロンドン6 Carlton Gardens, London SW1Y 5AD
上場ロンドン証券取引所公式サイトに同取引所の気配値の表示がある
この分野での区分部品・システム(主)
衛星・製造(従)
耐放射線の電子部品と、宇宙機の両方を持つ
全社の売上£30,662百万2025年12月期。会社の指標「sales」。全社であって宇宙ではない
宇宙の売上非公表Electronic Systems部門(£7,528百万)の一部
宇宙向けの主な製品RAD750など耐放射線コンピュータ、宇宙機、望遠鏡耐放射線の電子部品と宇宙機・センサー
直近の動き2026年9月16日・10月15日RH45技術の認定に$16百万、宇宙軍の通信端末の契約
まず押さえるべき1点:防衛大手の中の「宇宙の2つの顔」

BAE Systemsは、艦船・航空機・陸上車両・サイバーなど幅広い防衛事業を持つ大企業で、宇宙はその一部です。会社は宇宙に関わる事業を、Electronic Systems(電子システム)部門の中に置いています 事実。この部門は、米英の電子システム事業と、米国のSpace & Mission Systems事業から成ると年次報告書にあります。

宇宙では、(1) 耐放射線の電子部品(RAD750などのコンピュータ。Apollo 11の時代から続く、と会社は説明)と、(2) 宇宙機・望遠鏡の本体(旧Ball Aerospace。2024年に約55億米ドルで買収)の2つが柱です。宇宙事業単独の売上・人員は非公表のため、規模は推計しません 未確定/将来。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は BAE Systems plc(英国の公開会社)。米国の子会社は BAE Systems, Inc.(Electronic Systems〔Inc.〕などの表記が公式サイトにある)です。 宇宙機・望遠鏡の事業の旧名は Ball Aerospace(Ball Corporationの子会社)で、2024年にBAE Systems, Inc.が買収し、Space & Mission Systemsという新しい事業部門になりました(公式サイトの沿革)。 社名の「BAE」は、旧来の企業名の略称ですが、本稿では会社の公式資料にある表記だけを使います。

公式サイト:https://www.baesystems.com/en

ロゴは公式サイトのヘッダーで使われている画像。取得日 2026年10月17日。

3. 宇宙産業の世界で、この会社はどこにいるか

宇宙産業に関わる企業の4つの類型 同じ「宇宙の会社」でも、宇宙で担う役割で、強みと課題が違う 打ち上げ 探査・有人・月面 衛星・軌道上サービス 部品・システム ロケットで宇宙へ運ぶ 月や宇宙ステーションへ 軌道で働く・作る 宇宙機を支える SpaceX/Blue Origin Rocket Lab/Firefly Axiom Space/Intuitive Machines ispace/Astrobotic Astroscale/Varda Synspective/Starcloud Northrop Grumman/BAE Systems Microchip/Redwire 打ち上げ能力と再使用 月・ISSへの到達力 新しい用途と市場 実績と信頼性 失敗と日程の遅れ 資金と日程の不確実 実証が途上・収益化 認定と納期に時間 BAE Systemsは「部品・システム」を主、「衛星・製造」を従とする。耐放射線の電子部品と宇宙機の両方を持つ 防衛全般は扱わない。宇宙の売上は非公表(電子システム部門の一部)。宇宙機の事業は2024年の買収で加わった
図1 宇宙産業に関わる企業の4類型と、BAE Systemsの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。BAE Systemsは、宇宙では耐放射線の電子部品(主)と、宇宙機・望遠鏡(従)を提供する会社として、2つの枠を強調しています。ロケットは作りません
「耐放射線の電子部品」とは何か(やさしい説明)

宇宙の放射線は、電子部品の材料を少しずつ傷め、性能を落とし、ときには壊します。公式サイトは、宇宙の電子部品が−55〜125℃の温度の中で、15年を超えるミッションの間動き続ける必要があると説明しています 事実。そのため、チップの作り方(材料・設計・パッケージ)から、放射線に強くなるよう工夫した部品を「耐放射線(rad-hard)」と呼びます。

詳しくは、本シリーズの技術解説「放射線と電子部品」「宇宙用半導体とCOTS」「軌道上コンピューティング」にあります。

4. 会社の規模(全社は簡潔に、宇宙は非公表)

全社と、宇宙が含まれる部門(Electronic Systems)の規模を示します。宇宙事業単独の売上・人員は開示されていません 事実。「sales」は、会社が使う指標(持分法適用会社の売上の持分を含む)で、IFRSの収益とは異なります。

指標2024年12月期2025年12月期
全社の売上(sales。£百万)28,33530,662
Electronic Systems部門の売上(£百万)7,1897,528
同部門の受注額(£十億)7.38.7
同部門の受注残(£十億)12.713.6
その他の補足内容区分
全社の従業員111,400名(2025年12月31日、持分法適用会社の分を含む)事実
Electronic Systems部門の従業員22,400名(2025年12月31日)。2026年6月30日は23,300名事実
2026年上期(1〜6月)のElectronic Systems部門売上£3,866百万(前年同期£3,599百万、恒常為替で11%増)。受注額£4.8十億、受注残£14.4十億(2026年6月末)事実
Electronic Systems部門に含まれる事業電子戦、航法、電気光学センサー、商用・軍用のアビオニクス、通信などに加え、宇宙エレクトロニクス、宇宙機、地上・戦術システム事実
宇宙事業単独の売上・人員・研究開発費非公表非公表
ここで注意

上の数字は会社全体と、宇宙以外も含む部門のものです。宇宙事業の規模を示す数字ではありません。決算発表は「宇宙」の項目を設けず、宇宙関連の事柄を部門の文章の中で述べるだけです 未確定/将来。

2026年上期の半期報告書は、Electronic Systems部門のなかの一部の事業が前年同期比29%(恒常為替)成長し、「軍事・国家の宇宙プログラムでの活動の増加」が背景と書いています。この事業名にあたる語は、取得できた文書のテキストでは確認できませんでしたが、年次報告書の分類から Space & Mission Systems を指すとみられます 未確定/将来(推測)。

5. 宇宙産業にかけているリソース

4点(人・金・外部への出資や買収・公的機関との契約)と、主要な製品・ミッションの状況を、一次情報で確認できた範囲で示します。「記載なし」も成果として書きます。

リソースの種類内容区分
人宇宙事業単独の人員は非公表。Electronic Systems部門は22,400名(2025年末)から23,300名(2026年6月末)。耐放射線の電子部品は、米国バージニア州マナサスの拠点(Space Systems)が担当非公表/事実
金宇宙単独の研究開発費・設備投資は非公表。全社の設備投資は£957百万(2025年)。2026年9月に、RH45技術の認定のため米政府から$16百万の資金(Defense Production Act Title III)非公表/事実
外部への出資・買収・合弁・事業売却Ball Aerospaceを2024年に買収($5.5十億=£4.4十億。取得した純資産は£2,845百万、のれん£1,507百万)。2025年は重要な買収なし。2026年上期の費用に、買収後の統合費用の記載事実
公的機関との契約・連携米宇宙軍、NASA、NOAA、米国防総省の資金。金額の種類は下表で区別事実
民間企業との連携GlobalFoundries(RH45・Endura向けの45nm SOIの製造)、Northrop Grumman(OPIR向けの搭載機器2つを共同開発と公式サイトにある)、Vantor(撮像衛星の製造契約に署名、2026年上期)事実

公的資金・契約の区別(契約額の種類を分けて読む)

案件金額金額の種類状態
米宇宙軍 Resilient Missile Warning & Tracking(RMWT)MEO Epoch 2(衛星の星座と地上システム)$1.2十億(£0.9十億)元請契約の契約額(2025年5月)2026年上期に$373百万(£277百万)の追加の資金付与。契約から9か月未満で予備設計審査を完了
米海洋大気庁(NOAA)Space Weather Next L1 Series の宇宙機バス$230百万(£171〜174百万)契約額開発中。「upcoming mission」と記載
米宇宙軍 FORGE C2(ミサイル警戒衛星の地上システム)$151百万(£114百万)契約額地上システムの開発
RH45技術の実証・認定(国防生産法 Title III の資金)$16百万資金の付与(2026年9月16日の発表)実証と認定はこれから
米宇宙軍 宇宙システム軍団(SSC)の超小型RF端末金額の記載なし契約(2026年10月15日の発表)設計と実証。金額は確認できず

主要な製品・ミッションの状況(会社公称。確認日 2026年10月17日)

製品・ミッション種別主要な諸元(会社公称)実績・状況段階/日付出典
RAD750 単板コンピュータ耐放射線コンピュータ100を超える衛星に搭載と会社が説明。GPS IIIの航法ペイロード、NASAの火星探査機の世代にも関与と説明NASAのSPHEREx(2025年3月11日打上げ)にも搭載と決算発表が記載運用中出典1・6・11
RAD5545 SpaceVPX 多コアSBC耐放射線コンピュータ複数の旧世代カードを1枚で置き換えられると会社が説明諸元の数値は確認できなかった製品出典6
Endura SoC(RAD510ベース)とSBC耐放射線プロセッサRH45(45nm)技術。商用のGlobalFoundriesのSOI基板で製造。高信頼のClass Aと、保証の軽いClass C/Dの両方に対応と説明2026年6月25日に、自然と戦略的な放射線環境での動作を実証したと発表。ソフトウェア開発用ユニットの受注を開始試験・実証段階出典6・8
RH45 ASIC Storefront耐放射線のカスタムチップの基盤顧客が部品ライブラリを使って自社のICを設計。GlobalFoundriesのニューヨーク州マルタの工場で製造$16百万の資金で実証・認定(2026年9月16日)認定はこれから出典7
耐放射線の標準部品メモリ・FPGAなどSRAM、カルコゲナイド系の不揮発メモリC-RAM(QML認定)、アンチヒューズ型PROM、FPGAマナサスの拠点がQML Class V・Qの認定。国防総省の信頼できる供給元(Category 1A)供給中出典6
宇宙機(Elevation/Ascent)宇宙機の製品群Elevationは共通の部品と定義された構成。Trek版のバスをEpoch 2に採用。Ascentが2026年上期にElevationを補強Epoch 2は予備設計審査を完了。NOAAのバス、NASAのSPHEREx(宇宙機バス・望遠鏡)開発・運用出典1・2・3・11
NASAの宇宙望遠鏡科学衛星JWSTの光学技術と軽量の鏡システム(2021年)は旧Ball Aerospaceが製作と沿革に記載。Roman宇宙望遠鏡は2026年8月30日の打上げ日をNASAが表示Romanは試運転の案内あり。BAE側の役割の詳細は、取得できた文書で確認できなかった運用/試運転出典5・12
素材技術者の視点:放射線に強い電子部品は「何で作るか」で決まる

公式サイトは、宇宙の放射線で電子部品と材料の経年劣化が早まると説明し、そのうえで、カルコゲナイド系の不揮発メモリ(C-RAM)や、酸化膜・窒化膜・酸化膜の積層を使ったアンチヒューズ型PROM、耐放射線のSRAMなどを標準部品として挙げています 事実(会社の説明)。材料の組み合わせそのものが、放射線への強さを決める道具になっています。

一方、新しい世代の耐放射線チップ(RH45・Endura)は、商用の45nmのSOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板を米国のGlobalFoundriesの工場で作る方式です。なぜSOIが放射線に有利かは会社の発表に説明がないため、本稿は書きません。「商用の基板で作ることで、小さく、低消費電力で、費用を抑えた部品にできる」と会社は説明しています(会社の主張)。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1956年〜2021年旧Ball Aerospace(1956年設立)が、NASAの最初の宇宙機OSO-1(1962年)、ボイジャー1号のカメラ(1977年)、ディープ・インパクト(2005年)、ケプラー(2009年)、ニュー・ホライズンズのカメラ(2015年)、NOAA-20(2017年)、JWSTの光学技術と軽量の鏡(2021年)などを製作(会社の沿革)現在のSpace & Mission Systemsの歴史
Apollo 11の時代から耐放射線の電子部品を、Apollo 11から火星探査機の4世代(InSight、Perseveranceを含む)まで供給と会社が説明電子部品側の歴史(会社の説明)
2024年Ball Aerospaceを買収($5.5十億=£4.4十億)し、Space & Mission Systemsを新しい事業部門にした宇宙機・センサーを自社に取り込んだ
2025年3月11日NASAのSPHEREx打上げ。BAE製の宇宙機バス、望遠鏡、RAD750を搭載と決算発表が記載。最初の画像(first light)も公表科学衛星への納入の例
2025年5月米宇宙軍のRMWT MEO Epoch 2の元請契約を獲得($1.2十億)。Elevationの新製品のTrek版バスを採用政府の宇宙調達の大型契約
2026年6月25日Endura SoCが、自然と戦略的な放射線環境で動作することを実証したと発表耐放射線プロセッサの新世代
2026年7月30日半期報告書。Epoch 2の予備設計審査を契約から9か月未満で完了、Vantorの撮像衛星を製造する契約に署名宇宙機の事業の進捗
2026年8月30日NASAのRoman宇宙望遠鏡の打上げ日(NASAの表示)。半期報告書は、この打上げを支援する準備と記載打上げ後は試運転の段階
2026年9月16日RH45技術の実証・認定に$16百万の米政府資金国内の半導体の供給網を強調
2026年10月15日米宇宙軍SSCから、宇宙のデータ層向け超小型RF端末の設計・実証の契約最新の契約
BAE Systemsの宇宙事業の2つの柱(公式資料の記載にもとづく整理) どちらもElectronic Systems部門の中。宇宙単独の売上・人員は非公表 耐放射線の電子部品 Space Systems(米国バージニア州マナサス) RAD750/RAD5545(コンピュータ) Endura/RH45(新世代チップ) C-RAM・SRAM・PROM・FPGA(部品) QML Class V・Q の認定 電子部品の歴史は Apollo 11 から(会社の説明) 宇宙機・望遠鏡・地上システム Space & Mission Systems(旧Ball Aerospace) Elevation/Ascent(宇宙機の製品群) JWSTの光学技術・SPHERExの宇宙機 RMWT MEO Epoch 2(星座と地上) NOAAの宇宙機バス 2024年に買収($5.5十億)
図解 BAE Systemsの宇宙事業の2つの柱。出典:公式サイトの製品ページ・沿革、決算発表。区分は本稿による整理です 本稿の計算。電子部品側は米国バージニア州マナサスの拠点が、国防総省の「Category 1A Trusted Source」とQML Class V・Qの認定を受けていると会社が説明しています。

7. 今後の計画

Endura製品群RH45をSBCへ統合ソフトウェア開発ユニットを受注中(2026年6月)。製品の供給時期は未発表
RH45の認定これから$16百万の資金で実証・認定(2026年9月)。完了時期は未発表
RMWT MEO Epoch 2予備設計審査を完了衛星の星座と地上システムの開発が続く。打上げ時期は取得できた文書に記載なし
通信端末・撮像衛星設計・実証/製造契約宇宙軍の超小型RF端末(2026年10月)、Vantorの撮像衛星(2026年上期)。時期は未発表

上の4項目はいずれも会社の計画・開発中の事項で、達成された事実ではありません 未確定/将来。会社は決算発表で、将来の事項が実際と異なる可能性があると注意しています。

確認できなかったこと

次は、本稿が確認した範囲の一次資料に記載がありません 未確定/将来。

宇宙事業単独の売上・人員・研究開発費/Epoch 2の衛星の打上げ時期と支払済み額/RH45・Enduraの認定の完了時期/RAD5545の諸元/Roman宇宙望遠鏡でのBAE側の役割/Vantorとの契約の金額。軍事利用の技術の詳細は本稿の対象外です。

8. この会社は宇宙産業で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
宇宙を成長分野と位置づけ、「軍事の宇宙事業」の需要が急速に伸びていると見ている半期報告書:「宇宙能力への需要は急速に増え、我々はこの分野のリーダーの1社」「軍事の宇宙事業で勢いを増している」事実(会社の説明)
宇宙の成長の中心は、米国政府の調達Epoch 2($1.2十億)、FORGE C2($151百万)、SSCの端末、NOAA($230百万)、RH45の$16百万はいずれも米国政府の発注・資金推測
耐放射線チップを国内(米国)で作れることを売りにしているRH45の発表(国内の供給網の強化、GlobalFoundriesの米国工場)、マナサスの拠点の「信頼できる供給元」の認定事実(会社の説明)
安価な商用の半導体基板で、高信頼品から低保証の用途まで価格帯を広げるEnduraは、商用の45nm SOIを使い、Class A(高信頼)とClass C/D(保証が軽い)の両方に価格を分けて提供すると説明推測
宇宙事業の規模は、今後も外から確かめにくい宇宙は電子システム部門の一部で、単独の売上・人員の開示がない推測
推測の根拠を1つだけ詳しく:「高信頼」と「低コスト」を同じ技術で分ける

2026年6月のEnduraの発表は、Endura SoCが商用ファウンドリの技術(GlobalFoundriesの45nm SOI)で作られ、「より小さく、低消費電力で、費用対効果の高い」解決策になると述べています 事実。さらに、会社はClass A(高信頼)のミッション向けの製品を引き続き提供しつつ、Class C/D(保証水準が低い)のミッション向けに、それに見合う価格の製品も提供すると書いています。

同じ半導体技術から、保証の高いものと軽いものを作り分けて、低軌道の大量生産の衛星など費用に敏感な顧客にも対応しようとしている、と読むのが自然だと本稿は考えます 未確定/将来。具体的な価格や、ニュースペースの顧客名は書かれていません。

9. 宇宙産業分野の提携マッピング

BAE Systemsを中心とした宇宙向けの提携関係 公式資料に記載のある関係のみ(確認日 2026年10月17日)。軍事の詳細は含めない 契約・共同開発 製造の供給元 買収(点線) BAE Systems 宇宙の部品・宇宙機 米宇宙軍(SSC) Epoch 2・FORGE C2・RF端末 NASA SPHEREx・JWSTの光学技術 NOAA 宇宙天気衛星の宇宙機バス Northrop Grumman OPIR向け搭載機器2つを共同 Vantor 撮像衛星の製造契約(2026年) GlobalFoundries 45nm SOIのチップ製造 Ball Aerospace(2024年に買収) 現在のSpace & Mission Systems
図2 BAE Systemsを中心とした宇宙向けの提携関係。出典:公式サイトの製品ページ・ニュースリリース、決算発表、NASAの公表。図に含めたのは公式資料に記載がある関係だけです。契約金額は第5章の表で区別して示しています。軍事利用の技術の詳細は本稿では扱いません。

10. 提供している技術・製品・サービス

宇宙向けの製品は、電子部品(Space Systems)と宇宙機・センサー・地上システム(Space & Mission Systems)の2つに分けると分かりやすくなります(公式サイトの整理)。

分類製品・サービスの例会社の説明区分
電子部品:コンピュータRAD750、RAD5545、Endura(RAD510 SoC)単板コンピュータ(SBC)。RAD750は100を超える衛星に搭載と説明事実
電子部品:専用チップRH45・RH12のASIC Storefront耐放射線のカスタムICを、部品ライブラリを使って設計できる基盤事実
電子部品:標準部品SRAM、C-RAM、PROM、FPGA、ASSP宇宙とミサイル防衛向けの高信頼部品。QML認定事実
宇宙機Elevation、Ascent、旧Ball製の科学衛星・気象衛星共通部品の宇宙機。NASA・NOAA・宇宙軍向け事実
センサー・光学望遠鏡、赤外線・ハイパースペクトルの搭載機器JWSTの光学技術と軽量の鏡、SPHERExの望遠鏡事実
地上システムFORGE C2、Resilient Ground Systemsミッションの運用と管理のためのソフトウェアと地上設備事実
素材技術者の視点:宇宙機は「軽さ」と「温度・放射線への強さ」の両方が要る

宇宙機は、打ち上げ費用を下げるために軽く、一方で宇宙の温度差と放射線に耐える必要があります。公式サイトは、BAE Systemsの電子部品が−55〜125℃・15年を超えるミッションを想定していると説明しています 事実。JWSTの軽量の鏡システムは旧Ball Aerospaceが作ったと沿革にあります(鏡の素材そのものは、取得できた資料に記載がありません)。

宇宙機の材料や構造の基礎は、本シリーズの技術解説「軽量構造材料」「宇宙機の熱制御」「放射線と電子部品」にあります。

宇宙機を支える電子部品と検査の仕事を示します。外観だけで放射線耐性や品質保証を判定する図ではありません。
図3 概念画像(ImageGen生成)。宇宙機を支える電子部品と検査の仕事を示します。外観だけで放射線耐性や品質保証を判定する図ではありません。実際の製品・施設・測定結果・設計寸法ではありません。実物と拡大模型を区別してください。線・矢印・色は説明用です。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
宇宙事業の規模が外から見えない宇宙単独の売上・人員・研究開発費は開示されておらず、収益性を外部から確かめる手段がない事実
米国政府への依存宇宙の主要な契約・資金は米国政府の発注。契約額と、実際に資金が付く額(追加の資金付与)は別で、Epoch 2では2026年上期に$373百万が付与された事実
認定・実証の完了待ちEnduraとRH45は実証・認定の途上で、$16百万の資金は実証と認定のためのもの。完了時期は未発表事実
半導体の製造を外部に頼るRH45・Enduraは、GlobalFoundriesのニューヨーク州の工場で製造事実
買収の統合Ball Aerospaceの買収後の統合費用が、2025年上期の費用に含まれていた事実
打上げ・顧客日程への依存Romanのような科学衛星の打上げ日は顧客(NASA)が決め、変更がありうる事実
費用の増大・納期高信頼品は認定に時間がかかる。廉価帯への展開で、品質の線引きを利用者が理解する必要がある推測

12. 用語集

耐放射線(rad-hard)
宇宙の放射線で誤作動や劣化を起こしにくいように、材料・設計・製造を工夫した電子部品。
RAD750
BAE Systemsの耐放射線コンピュータ。会社は100を超える衛星に搭載と説明。
SBC(単板コンピュータ)
1枚の基板にコンピュータの機能をまとめたもの。
SoC/ASIC
SoCは1つのチップに多くの機能を入れたもの。ASICは特定の用途のために設計した専用チップ。
QML Class V・Q
米国防兵站局(DLA)が管理する、高信頼な部品の認定制度。Vが最高水準。
Category 1A Trusted Source
米国防総省が認める「信頼できる半導体の供給元」の区分。設計・組立・試験などを対象にする。
SOI
シリコン・オン・インシュレータ。絶縁層の上にシリコンを載せた基板。
Epoch 2
米宇宙軍の衛星計画の「第2期」。詳細は防衛の分野のため、本稿では契約額と進捗のみ扱う。
Defense Production Act Title III
米国の法律にもとづき、重要な技術・産業基盤を強めるために政府が資金を出す枠組み。
sales(会社の指標)
持分法適用会社の売上の持分を含む、会社の売上の指標。IFRSの収益とは異なる。

13. 出典

  1. BAE Systems FY2025 Preliminary Results Announcement(2026年2月公表、PDF)。全社と各セクターの売上・受注、Electronic Systemsの記載、Ball Aerospace買収。 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:430d3195-c990-4bd5-ac85-ec5588380dbf/FY-2025-Preliminary-Results-Announcements-FINAL.2026-02-18-09-10-25.pdf
  2. BAE Systems Half-yearly Report 2026(2026年7月30日公表、PDF)。2026年上期の業績、宇宙関連のできごと。 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:f84dc82f-4530-419c-b993-74ebb562bf97/HY-2026-Half-Yearly-Report-Final.pdf
  3. BAE Systems Annual Report 2025(概要ページ)。事業の概要、セクター別の売上・従業員、2025年5月の宇宙軍との1.2bn米ドルの契約。 https://annualreport.baesystems.com/2025
  4. BAE Systems 公式サイト「Space & Mission Systems」(米国)。宇宙事業の領域と製品の分類。確認日 2026年10月17日。 https://www.baesystems.com/en-us/who-we-are/space-and-mission-systems
  5. BAE Systems 公式サイト「History of Space & Mission Systems」。Ball Aerospaceの歴史と2024年の買収、過去のミッション。 https://www.baesystems.com/en-us/who-we-are/space-and-mission-systems/history-of-space-and-mission-systems
  6. BAE Systems 公式サイト「Radiation-hardened electronics」。耐放射線電子部品(RAD750、RAD5545、Endura、ASIC、メモリ)、QML認定、マナサスの拠点。 https://www.baesystems.com/en-us/product/radiation-hardened-electronics
  7. BAE Systems ニュースリリース「BAE Systems receives $16 million to qualify RH45 technology for radiation-hardened space missions」(2026年9月16日)。 https://www.baesystems.com/en-us/article/bae-systems-receives-16-million-to-qualify-rh45-technology-for-radiation-hardened-space-missions
  8. BAE Systems ニュースリリース「BAE Systems' Endura processor demonstrates strategic radiation-hardened capability for space missions」(2026年6月25日)。 https://www.baesystems.com/en-us/article/bae-systems-endura-processor-demonstrates-strategic-radiation-hardened-capability-for-space-missions
  9. BAE Systems ニュースリリース「BAE Systems awarded U.S. Space Force contract for space resilient satellite communications terminals」(2026年10月15日)。 https://www.baesystems.com/en-us/article/bae-systems-awarded-u-s-space-force-contract-for-space-resilient-satellite-communications-terminals
  10. BAE Systems 製品ページ「Missile Warning & Missile Tracking」。RMWT MEO Epoch 2、FORGE C2、OPIR関連の記載。 https://www.baesystems.com/en-us/product/missile-warning-and-missile-track
  11. NASA(JPL) ミッションページ「SPHEREx」。2025年3月11日の打上げ、宇宙機を供給した企業。 https://www.jpl.nasa.gov/missions/spherex/
  12. NASA ミッションページ「Nancy Grace Roman Space Telescope」。打上げ日の表示と試運転の案内。確認日 2026年10月17日。 https://science.nasa.gov/mission/roman-space-telescope/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称・登記上の所在地・登記番号、全社の売上(2024・2025年)、Electronic Systems部門の売上・受注・受注残・従業員事実出典1・3 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:430d3195-c990-4bd5-ac85-ec5588380dbf/FY-2025-Preliminary-Results-Announcements-FINAL.2026-02-18-09-10-25.pdf https://annualreport.baesystems.com/2025
全社の従業員111,400名、部門構成、Electronic Systemsが含む事業(宇宙エレクトロニクス、宇宙機など)事実出典3・1 https://annualreport.baesystems.com/2025 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:430d3195-c990-4bd5-ac85-ec5588380dbf/FY-2025-Preliminary-Results-Announcements-FINAL.2026-02-18-09-10-25.pdf
2026年上期のElectronic Systems部門(売上£3,866百万、受注£4.8十億、受注残£14.4十億、従業員23,300名)事実出典2 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:f84dc82f-4530-419c-b993-74ebb562bf97/HY-2026-Half-Yearly-Report-Final.pdf
Ball Aerospaceの買収(2024年、$5.5十億=£4.4十億、取得純資産£2,845百万、のれん£1,507百万)、2025年は重要な買収なし事実出典1 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:430d3195-c990-4bd5-ac85-ec5588380dbf/FY-2025-Preliminary-Results-Announcements-FINAL.2026-02-18-09-10-25.pdf
買収後の統合費用が前年上期の費用に含まれていたこと事実出典2 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:f84dc82f-4530-419c-b993-74ebb562bf97/HY-2026-Half-Yearly-Report-Final.pdf
RMWT MEO Epoch 2:元請契約$1.2十億(2025年5月)、2026年上期の追加の資金付与$373百万、予備設計審査の完了事実出典3・2 https://annualreport.baesystems.com/2025 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:f84dc82f-4530-419c-b993-74ebb562bf97/HY-2026-Half-Yearly-Report-Final.pdf
SPHEREx:宇宙機バス・望遠鏡・RAD750の搭載、打上げ(2025年3月11日)と宇宙機の供給元事実出典1・11 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:430d3195-c990-4bd5-ac85-ec5588380dbf/FY-2025-Preliminary-Results-Announcements-FINAL.2026-02-18-09-10-25.pdf https://www.jpl.nasa.gov/missions/spherex/
NOAA Space Weather Next L1の宇宙機バス$230百万、FORGE C2$151百万事実出典1・10 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:430d3195-c990-4bd5-ac85-ec5588380dbf/FY-2025-Preliminary-Results-Announcements-FINAL.2026-02-18-09-10-25.pdf https://www.baesystems.com/en-us/product/missile-warning-and-missile-track
Vantorの撮像衛星の製造契約、Ascent宇宙機の追加(2026年上期)事実出典2 https://investors.baesystems.com/dam/jcr:f84dc82f-4530-419c-b993-74ebb562bf97/HY-2026-Half-Yearly-Report-Final.pdf
Space & Mission Systemsの領域と製品の分類事実出典4 https://www.baesystems.com/en-us/who-we-are/space-and-mission-systems
旧Ball Aerospaceの歴史、2024年の買収、JWSTの光学技術と軽量の鏡、過去のミッション事実出典5 https://www.baesystems.com/en-us/who-we-are/space-and-mission-systems/history-of-space-and-mission-systems
耐放射線電子部品:RAD750(100を超える衛星)、RAD5545、Endura、C-RAM・SRAM・PROM・FPGA、QML Class V・Q、Category 1A、マナサスの拠点、−55〜125℃・15年超事実出典6 https://www.baesystems.com/en-us/product/radiation-hardened-electronics
RH45:$16百万(国防生産法Title III)、GlobalFoundriesのマルタ工場、Endura SBCへの統合(2026年9月16日)事実出典7 https://www.baesystems.com/en-us/article/bae-systems-receives-16-million-to-qualify-rh45-technology-for-radiation-hardened-space-missions
Endura SoC:自然・戦略的放射線環境での動作の実証、商用45nm SOI、Class AとClass C/Dへの対応、ソフトウェア開発ユニットの受注(2026年6月25日)事実出典8 https://www.baesystems.com/en-us/article/bae-systems-endura-processor-demonstrates-strategic-radiation-hardened-capability-for-space-missions
宇宙軍SSCの超小型RF端末の契約(2026年10月15日)。金額の記載なし事実出典9 https://www.baesystems.com/en-us/article/bae-systems-awarded-u-s-space-force-contract-for-space-resilient-satellite-communications-terminals
Northrop GrummanとのOPIR向け搭載機器2つの共同開発、Epoch 2・FORGE C2の記載事実出典10 https://www.baesystems.com/en-us/product/missile-warning-and-missile-track
Roman宇宙望遠鏡の打上げ日の表示(2026年8月30日)と試運転の案内事実出典12 https://science.nasa.gov/mission/roman-space-telescope/
2026年上期のElectronic Systems内の一部の事業が前年同期比29%成長したという記載の事業名が、Space & Mission Systemsを指すという読み推測事業名の語が取得できず、年次報告書の分類からの本稿の解釈
宇宙事業の規模(売上・人員・研究開発費)、Epoch 2の打上げ時期、RH45・Enduraの認定完了時期、RAD5545の諸元、Romanでの役割、Vantor契約の金額未確定/将来確認できなかった。本稿では推計・外部の数字を採用しない
Endura製品群のSBC統合・RH45の認定・Epoch 2の進行・通信端末と撮像衛星の計画未確定/将来出典7・8・2 https://www.baesystems.com/en-us/article/bae-systems-receives-16-million-to-qualify-rh45-technology-for-radiation-hardened-space-missions https://www.baesystems.com/en-us/article/bae-systems-endura-processor-demonstrates-strategic-radiation-hardened-capability-for-space-missions https://investors.baesystems.com/dam/jcr:f84dc82f-4530-419c-b993-74ebb562bf97/HY-2026-Half-Yearly-Report-Final.pdf
宇宙産業の企業4類型の区分とBAE Systemsの位置本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
BAE Systemsの宇宙事業の2つの柱(図解)本稿の計算本稿による整理。各項目の記載は出典4〜6に基づく
宇宙の成長の中心は米国政府の調達という読み、廉価帯にも価格帯を広げるという読み、宇宙事業の規模は外から確かめにくいという読み推測契約の発注元の構成、Enduraの発表、開示の範囲からの本稿の解釈

最終更新:2026年10月17日/Troy Technical
本稿の数値は、BAE Systemsの決算発表・年次報告書、公式サイトとニュースリリース、NASAの公表に基づきます。調査会社の市場推計、報道ベースの数値、株価・企業評価額は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。防衛全般と軍事利用の技術の詳細は扱っていません。計画・日程は変わることがあります。