COMPANY PROFILE / 機能性材料
TDK
― 1935年に「フェライト」を産業化するために生まれた会社が、磁石・圧電セラミックスも手がける
TDKは、電子部品とセンサー、二次電池を事業の柱とする日本の企業です。 社名の由来は、東京電気化学工業。1935年に、東京工業大学(現・東京科学大学)で発明された磁性材料フェライトを産業化するために設立されました。 本稿は、会社全体ではなく、フェライト、ネオジム磁石、圧電セラミックスなど、機能性材料に関わる部分に絞って扱います。 2026年3月期の全社売上は2兆5,048億円で、この分野に近い「パッシブ部品」は5,932億円(23.7%)、磁石を含む「磁気応用製品」は2,629億円(10.5%)でした。 ただし、磁石単独、圧電単独の売上は、どの開示にも載っていません。本稿は推計せず、確認できたことと、できなかったことを分けて書きます。
- 30秒でわかるTDKと、機能性材料での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(全社は簡潔に)
- 機能性材料にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は機能性材料で何を目指しているか
- 機能性材料分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるTDKと、機能性材料での立ち位置
(従:素材・原料)フェライト・磁石・圧電の材料も自社で持つ
ネオジム磁石、圧電セラミックス公式ページと有価証券報告書に記載
7,410億円(38.3%増)パッシブ部品は28.0%増、磁気応用製品は49.6%増
TDKは機能性セラミックス・磁性材料の「老舗」ですが、いまの売上の大半はこの分野の外にあります 事実。 2026年3月期の全社売上のうち、最大の事業は二次電池などの「エネルギー応用製品」(1兆3,703億円、54.7%)です。 フェライトの応用であるインダクタ(コイル)は216,210百万円、磁石はHDDヘッドなどと同じ「磁気応用製品」区分に含まれ、磁石の売上額は開示されていません。 圧電材料の製品も、「その他パッシブ部品」(高周波部品・回路保護部品を含む)の一部で、独立した数字がありません。 有価証券報告書は、磁石事業が2025年3月期に減損を計上し、2026年3月期は「赤字が縮小した」と書いています。 つまりTDKの機能性材料は、社名の由来であり技術の土台でありながら、事業としては「見えにくい部分」が多い、というのが本稿の出発点です。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は「TDK株式会社」で、英文では TDK Corporation。 欧州の子会社 TDK Electronics AG(有価証券報告書のパッシブ部品の主要会社)が、フェライト・圧電部品などの製品情報を公開しています。 本稿は、他分野で扱うTDKの記事(ペロブスカイトなど)とは別に、機能性材料の視点で書いています。 ロゴは同社の公式サイトのベクター画像を取得して設置しています。
公式サイト:https://www.tdk.com/en/ir/ir_library/index.html3. 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
本稿では、TDKを部品・デバイスメーカー(主たる類型)に分類し、フェライト・磁石・圧電セラミックスの材料を自社の核とする点で素材・原料メーカー(従たる類型)にもまたがるとみます 本稿の計算。 有価証券報告書は、TDKの設立の目的が「フェライトの産業化」だったと書き、同社が掲げる5つのコア技術の最初に「材料技術(Materials Technology)」を挙げています。 また、パッシブ部品の次世代品について、薄膜技術・材料技術・Roll-to-Roll技術を組み合わせる方針を示しています。 本シリーズの技術解説「永久磁石とレアアース」「レアアースフリー磁石」「圧電材料と無鉛化」「強誘電体と誘電材料」で扱う物性や市場の動きは、そちらに任せ、本稿はTDKの事業と製品に絞ります。
4. 会社の規模(全社は簡潔に)
全社の事業(二次電池、HDDヘッド、センサーなど)は本稿の主題ではないので、規模と、機能性材料に近い事業区分の数字を示します 事実。
| 指標(3月期、百万円) | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 売上(全社) | 2,204,806 | 2,504,820 | 前期比13.6%増 |
| 営業利益(全社) | 224,192 | 272,415 | 前期比21.5%増 |
| パッシブ部品 | 559,639 | 593,201 | 全社売上の23.7%。区分の利益は41,831百万円 |
| うちキャパシタ(セラミック、アルミ電解、フィルム) | 234,260 | 257,472 | 前期比9.9%増 |
| うちインダクティブデバイス(コイル、フェライトコア、トランス) | 204,282 | 216,210 | 前期比5.8%増 |
| うちその他パッシブ部品(高周波部品、圧電材料製品、回路保護部品) | 121,097 | 119,518 | 前期比1.3%減。圧電の内訳は非開示 |
| 磁気応用製品(HDDヘッド、HDDサスペンション、磁石) | 223,637 | 262,903 | 前期比17.6%増。磁石の売上は非開示 |
| 研究開発費(全社) | 253,586 | 289,668 | 売上の11.6% |
| 設備投資(全社) | ― | 298,591 | パッシブ部品 40,239/磁気応用製品 33,342/エネルギー応用製品 193,090 |
| 連結従業員(人) | 105,067 | 106,545 | パッシブ部品 32,535/磁気応用製品 10,642 |
| 最新の四半期(4〜6月、百万円) | 2025年 | 2026年 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上(全社) | 535,753 | 741,005 | 38.3%増 |
| パッシブ部品 | 138,140 | 176,803 | 28.0%増 |
| 磁気応用製品 | 54,554 | 81,608 | 49.6%増(磁石は自動車向けが増加) |
上の数字は全社または事業区分のものです。 フェライト単独、磁石単独、圧電単独の売上・利益・人員は、有価証券報告書にも決算短信にも出てきません 未確定/将来。 「磁気応用製品」の増収は、主にデータセンター向けのHDDヘッド・サスペンションによるもので、磁石の増収とは分けて読む必要があります (2026年3月期は、HDDヘッドの販売数量が約14%、サスペンションが約35%増えたと書かれています)。 磁石については、「自動車向けの販売が増え、品質改善などのコスト削減で赤字が縮小した」という記述にとどまります。
5. 機能性材料にかけているリソース
4点それぞれについて、公式資料で確認できたか/できなかったかを示します。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 全社の連結従業員は106,545人(2026年3月末)で、パッシブ部品32,535人、磁気応用製品10,642人。全社の研究開発は日本・北米・欧州・アジアの4極。フェライト・磁石・圧電に限った人数は非公表 | 事実/確認できず |
| 金 | 研究開発費は全社で2,897億円(売上の11.6%)。2027年3月期は3,100億円を計画。設備投資は2026年3月期に2,986億円で、パッシブ部品に402億円、磁気応用製品に333億円(主にHDD向け)。2027年3月期は3,700億円を計画(会社の予想)で、そのうちパッシブ部品500億円、磁気応用製品500億円(HDDヘッド・サスペンション向け)。磁石や圧電向けの設備投資は、数字として書かれていない | 事実/確認できず |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | 2008年にドイツの EPCOS がTDKグループに加わった(沿革の記載)。2019年にコーポレートベンチャーキャピタルTDK Venturesを設立。磁石・圧電に限った買収・出資は確認できなかった。2026年3月期は、アルミ電解・フィルムコンデンサの事業ポートフォリオ管理に伴うリストラ費用として約28億円を計上(パッシブ部品、上半期中心) | 事実/確認できず |
| 大学・研究機関・公的資金との連携 | 有価証券報告書は、東京科学大学(Institute of Science Tokyo)と秋田大学との共同研究・組織的な連携を挙げる。個別の公的助成(NEDOなど)は、本稿が調べた資料で確認できなかった | 事実/確認できず |
主要な設備と状況は次のとおりです。
| 製品/設備 | 工場・設備 | 規模 | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| パッシブ部品(フェライト、コンデンサなど) | 本荘工場(秋田県由利本荘市)ほか。TDK電子部品の秋田の製造会社、ハンガリー、中国(厦門・珠海)、インドなど | 能力の数値は非公表。2026年3月期の設備投資は402億円 | 稼働中 | 2026年3月末 | 出典1 |
| 磁石 | 国内の成田工場(千葉県)と静岡県の工場が「磁気応用製品」の製造として記載(磁石に限った記載はない) | 非公表 | 稼働中。2027年3月期の設備計画に、磁石の項目はない | 2026年3月末 | 出典1 |
| 圧電アクチュエータ(HASシリーズ、PowerHap) | 製造場所は公式製品ページに記載なし | 非公表 | 販売中(一部は「試作段階」の表示) | 2026年10月10日に確認 | 出典5・6 |
フェライト、ネオジム磁石、圧電セラミックスは、いずれも粉をつくり、成形し、焼き固める(焼結)という共通の工程の上に立つ材料です。 有価証券報告書は、TDKのコア技術として「材料技術」「プロセス技術」「評価・シミュレーション技術」「製品設計技術」「生産技術」の5つを挙げています 事実。 フェライトでは、組成と焼結の条件で「透磁率」や「損失」が決まります。TDK Electronicsのカタログは、MnZnフェライトを用途別に分け、パワー用(周波数別)、EMI用、信号用などの材料の名前と初期透磁率を並べています(例:N87は2,200、T38は10,000)。 ネオジム磁石(NEOREC)では、焼結体の結晶粒と、粒界の組成が保磁力を左右し、TDKは粒界にジスプロシウム(Dy)を拡散させる独自の方法(HAL)を使うと書いています。 圧電アクチュエータでは、積層した圧電セラミックスの間に入れる内部電極の材質が信頼性を決めます(第10章)。 つまり、同じ「焼結セラミックス」でも、何を制御するか(粒界、組成、内部電極)が製品ごとに違う点が、材料会社としてのTDKの特徴です。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1935年 | 東京電気化学工業(TDK)を設立し、フェライトコアの商業生産を始める。1937年に量産を開始 | 社名の由来と技術の出発点 |
| 1951年 | セラミックコンデンサの量産を開始 | 誘電体セラミックスへの展開 |
| 1980年 | 積層インダクタを発売 | フェライトの積層化 |
| 2008年 | ドイツのEPCOSがTDKグループに加わる | 欧州の電子部品会社が加わった(同社の沿革の記載。事業の中身は有価証券報告書では説明されていない) |
| 2009年 | 「TDKのフェライト材料の開発と応用」が、IEEEマイルストーンに認定された(同社の説明) | フェライトの技術的な評価 |
| 2019年 | コーポレートベンチャーキャピタルTDK Venturesを設立 | 新技術の探索 |
| 2025年3月期 | 磁石事業で3,256百万円の減損を計上(売上の減少による収益性の低下) | 磁石事業の採算の悪化 |
| 2026年3月期 | 磁石の売上は自動車向けを中心に増え、品質改善などで赤字が縮小。パッシブ部品では、アルミ電解・フィルムコンデンサの事業整理でリストラ費用約28億円 | 磁石は赤字のまま。事業ポートフォリオの見直しが続く |
| 2026年4〜6月 | 全社売上は38.3%増、パッシブ部品28.0%増、磁気応用製品49.6%増 | AIデータセンター向けのHDD関連と、自動車向けの磁石が牽引 |
7. 今後の計画
会社の予想は、会社の目標であり、達成された事実ではありません 未確定/将来。 決算短信は、2027年3月期について、スマートフォンなどのICT製品の生産は減る一方で、データセンター向けのHDDとAI関連の市場は引き続き堅調と見ています。 有価証券報告書は、高性能の希土類磁石では、地政学的なリスクを考慮して、希土類元素の使用量を減らす開発を進めていると書いています。 パッシブ部品では、次世代のMLCC・インダクタ・EMC部品の小型化・高性能化に加え、薄膜・材料・Roll-to-Rollの技術を組み合わせた付加価値の高い製品を進めるとしています。
磁石・圧電の売上目標/生産能力の数値/希土類使用量の削減の具体的な目標値と時期/無鉛の圧電材料の製品化計画は、公式資料に記載がありません 未確定/将来。
8. この会社は機能性材料で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 機能性材料の技術を、「材料そのもの」ではなく、部品・センサーの形で売る | 磁石・圧電の売上区分は独立しておらず、製品はインダクタ、アクチュエータ、センサーなどの部品・デバイスとして記載される | 推測 |
| 磁石事業は黒字化の途上にある | 2025年3月期に3,256百万円の減損、2026年3月期は「赤字が縮小」。2027年3月期の設備計画に磁石の項目はない | 事実 |
| 重希土類(Dy)の使用を減らす方向の技術を持つ | 公式ページにDyフリーのNEOREC材料とHAL法の説明。有価証券報告書に「希土類の使用量削減の開発」 | 事実 |
| 投資の重心は電池とHDDにあり、磁石・圧電は別枠 | 2027年3月期の設備計画3,700億円のうち、エネルギー応用製品が2,300億円。磁気応用製品の500億円はHDD向け | 推測 |
最後の行は、金額の並びから見える傾向です。 2027年3月期の設備投資の計画(3,700億円)は、エネルギー応用製品2,300億円、パッシブ部品500億円、磁気応用製品500億円、センサー200億円、その他30億円、本社・研究部門170億円という内訳です 事実。 磁気応用製品の500億円は、説明に「HDDヘッドとサスペンションの次世代品」とあり、磁石の項目はありません。 パッシブ部品の500億円も、インダクティブデバイス、アルミ電解コンデンサ、セラミックコンデンサの能力増強と合理化とされ、フェライトコアや圧電への言及はありません。 ここから、「磁石・圧電は、電池・HDDほど大きな投資対象としては扱われていない」と読むのが自然だと本稿は考えます 未確定/将来。 ただし、これはその事業の価値が低いという意味ではありません。金額が小さい、または他の区分に含まれているだけかもしれません。
9. 機能性材料分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
フェライト
TDK Electronicsの製品カタログは、MnZn系フェライト材料を用途別に整理しています 事実。
| 材料(メーカー公称) | 初期透磁率 µi | 用途・特徴(カタログの記載) |
|---|---|---|
| N87 | 2,200 | パワー用の標準材料(トランス、出力チョーク) |
| N95 | 3,000 | パワー用。温度による変化が小さい |
| PC200 | 800 | パワー用。4 MHzまでの周波数 |
| N91 | 1,100 | 出力チョーク用。最も高い飽和 |
| T38 | 10,000 | EMI用・信号用。高いインダクタンス |
| E16 | 6,000 | EMI用。5 MHz未満、高い飽和と高いキュリー温度 |
上の表はカタログの一部です。測定の周波数・温度・磁束密度などの条件は、各材料のデータシートにあり、本稿の表には載せていません。条件が違う値を並べて、材料や他社品の優劣を判断することはできません。
ネオジム磁石(NEOREC)
TDKの技術資料(2017年3月更新)によると、NEOREC系列はネオジム、鉄、ホウ素を主成分とする焼結磁石で、同社は「粉末冶金技術」を土台に、最大エネルギー積406 kJ/m3(51 MGOe)を達成したと説明しています 事実。 同じ資料は、重希土類のDyが「偏在や市況の変動のリスクが高い」ため、Dyを使わない材料の量産・供給体制を整えたこと、粒界にDyを選択的に拡散させて保磁力を高めるHAL(High Anisotropy field Layer)法を開発したことを書いています。 全品種がRoHS指令に適合する、との記載もあります。 この技術資料は2017年3月更新のもので、現在の値や品揃えと同じかどうかは本稿では確認できませんでした。
圧電セラミックス
| 製品(メーカー公称) | 仕様の例 | 特徴(公式ページの記載) |
|---|---|---|
| 高アクティブ積層ピエゾ(HAS) | COM30S5:5.2×5.2×30 mm、ストローク55 µm(±10%、160 V)、ブロッキングフォース1,400 N。使用電圧は−10〜+180 V | 内部電極に銅を使う。従来のAg-Pd合金電極と比べ、湿度下での電極間の移動(マイグレーション)による短絡を避け、パラジウムより価格が安定する、と説明。外部電極の接合に無鉛の高融点金属接合(200℃で2,000時間の試験に合格、同社の比較では従来のはんだは180℃で1,500時間で不良) |
| PowerHap(触覚アクチュエータ) | 1313:12.7×12.7×1.8 mm、静電容量0.9 µF、0〜120 V、変位65 µm、加速度7 g(負荷100 g、200 Hz、単パルス、ピーク) | 多層の圧電セラミックスを核に、ステンレスのたわみ板で変位を拡大。銅の内部電極で湿度に強い。圧力を加えると電荷を出す(センサーにもなる) |
HASは、半導体製造やマイクロ流体の制御、科学機器、宇宙システムなどの運動制御を想定し、同社は「20年を超える現場の実績」と説明しています(会社の主張)。 両ページとも、圧電セラミックスの組成(PZTかどうか)は書いていません 未確定/将来。 鉛を含むかどうかは、公式ページからは確認できませんでした。
積層圧電アクチュエータやMLCCでは、セラミックと内部電極を同時に焼くため、電極の金属は焼成の温度・雰囲気に耐えなければなりません。 従来はAg-Pd合金が使われましたが、TDKのページは、銀は湿度と電場の下で動きやすく(マイグレーション)、層間の短絡や故障を起こすと説明しています 事実。 銅は移動しにくく、パラジウムより価格が安定する一方、銅は酸化しやすいため、還元性の雰囲気で焼く必要があり、セラミックの側にも還元に強い設計が求められます(これは一般的な説明で、TDKの資料の記述ではありません)。 同社は銅電極を「特許取得済み」と書いていますが、具体的な焼成条件や組成は公開されていません 未確定/将来。 同じ観点は、MLCCのNi内部電極でも見られ、機能性セラミックスの量産では、電極金属とセラミックの組み合わせの設計が共通の課題です。
EUのRoHS指令(Directive 2011/65/EU)の附属書IIIは、圧電セラミックス(PZT)などに含まれる鉛を、期限つきで適用除外にしています。 2025年9月8日に採択された欧州委員会委任指令 (EU) 2025/2363(2025年11月21日にEU官報で公表)では、7(c)-Iが2027年6月30日に、新設の7(c)-VI(PZT圧電セラミックスとPTCセラミックスの鉛)が2027年12月31日に失効します 事実。 TDKの公式ページでは、圧電製品がPZTを使うか、どの除外項目に依拠するかは確認できませんでした。 したがって、この規制がTDKの圧電事業に与える影響は、本稿では評価しません。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 磁石事業の採算 | 2025年3月期に3,256百万円の減損。2026年3月期は赤字が縮小したが、赤字は続く。設備計画に磁石の項目がない | 事実 |
| 希土類の調達と地政学 | 有価証券報告書は、主要な原料で調達先が限られ代替の難しい供給元に頼る場合があると書き、地政学的なリスクを考慮して希土類の使用量削減を開発している、と記す。具体的な規制名・影響額は書かれていない | 事実 |
| 開示の粗さ | 磁石・圧電・フェライトの売上、利益、設備、人員が独立して開示されておらず、成長や採算を外から評価できない | 事実 |
| スマートフォン向けの需要 | 会社の見通しは、2027年3月期にスマートフォンなどの生産が減る、と記す。高周波部品事業は営業損益の赤字が続き、2025年3月期に減損を計上(2026年3月期は減損なし) | 事実 |
| 鉛の適用除外の期限 | PZT圧電セラミックスの鉛の除外は2027年12月31日に失効(更新は未定)。TDKの圧電事業での影響は確認できない | 事実/確認できず |
| 為替 | 円高は売上を減らす。有価証券報告書は、海外での原料調達の拡大などで影響を和らげていると書く。2026年3月期は、為替の影響で売上が約25億円、営業利益が約106億円減った | 事実 |
12. 用語集
- フェライト
- 鉄の酸化物を主体とするセラミックス磁性材料。電気を通しにくく、高い周波数でも使える。コイルやトランスの芯に使われる。
- MnZnフェライト
- マンガンと亜鉛を含むフェライト。透磁率が高く、電源回路やノイズ対策に使われる。
- 初期透磁率(µi)
- 弱い磁界での、材料の磁気の通しやすさ。大きいほど磁束が通りやすい。
- ネオジム磁石(NdFeB)
- ネオジム・鉄・ホウ素の強力な焼結磁石。モーターなどに使われる。
- 保磁力・最大エネルギー積
- 磁石が消磁されにくい強さと、磁石が外に出せるエネルギーの目安。
- HAL法
- TDKの説明では、重希土類(Dy)を磁石の表面から内部の粒界に拡散させて、保磁力を高める方法。
- 圧電
- 力を加えると電圧が生じ、電圧を加えると変形する性質。
- マイグレーション
- 電場と湿気の下で、電極の金属が移動して短絡を起こす現象。

13. 出典
- TDK株式会社 Annual Securities Report, The 130th Term(2025年4月1日〜2026年3月31日。英訳版。2026年6月17日に関東財務局へ提出)。事業、沿革、売上・セグメント、研究開発、設備投資、設備計画、従業員、リスク、減損。2026年10月10日に取得。 https://www.tdk.com/system/files/ir_library_report_pdf_T130_en.pdf
- TDK株式会社 Consolidated Financial Results for FY March 2026 (IFRS)(決算短信、2026年4月28日)。製品別売上、2027年3月期の予想。 https://www.tdk.com/system/files/2026042800_0mqf56xw_en.pdf
- TDK株式会社 Consolidated Financial Results for the Three Months Ended June 30, 2026 (IFRS)(決算短信、2026年7月31日)。2026年4〜6月の売上。 https://www.tdk.com/system/files/2026073100_lda9mypa_en.pdf
- TDK Electronics AG Ferrite Materials(製品カタログ。MnZnフェライト材料と初期透磁率)。2026年10月10日に取得。 https://www.tdk-electronics.tdk.com/en/529404/products/product-catalog/ferrites-and-accessories/ferrite-materials
- TDK Electronics AG Multilayer Piezo Actuator Stacks(高アクティブ積層ピエゾ)。2026年10月10日に取得。 https://www.tdk-electronics.tdk.com/en/542398/products/product-catalog/switching-heating-piezo-components-buzzers-microphones/multilayer-piezo-actuator-stacks
- TDK Electronics AG PowerHap Piezoelectric Actuators。2026年10月10日に取得。 https://www.tdk-electronics.tdk.com/en/2124786/products/product-catalog/switching-heating-piezo-components-buzzers-microphones/powerhap
- TDK株式会社 Neodymium Magnets(公式製品ページ。NEOREC系列、Dyフリー)。2026年10月10日に取得。 https://product.tdk.com/en/products/magnet/magnet/neodymium/index.html
- TDK株式会社 Neodymium Magnets NEOREC Series Product Guide(2017年3月更新の技術資料)。 https://product.tdk.com/en/system/files?file=dam/doc/product/magnet/magnet/neodymium/datasheets/magnet_neo_summary_en.pdf
- TDK株式会社 Dy Free Neodymium Magnet(公式ページ。HAL法)。2026年10月10日に取得。 https://product.tdk.com/en/products/magnet/renaissance/video02.html
- 欧州委員会 Commission Delegated Directive (EU) 2025/2363 of 8 September 2025 amending Directive 2011/65/EU as regards an exemption for lead in glass or ceramic components(OJ L, 21.11.2025)。EU官報(Publications Office経由で本文を確認)。 http://data.europa.eu/eli/dir_del/2025/2363/oj
- TDK株式会社 公式サイト(ロゴの取得、会社概要の確認。IRライブラリ)。 https://www.tdk.com/en/ir/ir_library/index.html
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月10日/Troy Technical
本稿の数値は、TDKの有価証券報告書・決算短信・公式の製品ページ・技術資料と、EU官報に載る公式文書に基づきます。製品の性能値は同社の説明(メーカー公称)で、測定条件が異なる値を並べて優劣を判断していません。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。