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ソフト・ロボティクス(現 オキシピタルAI) 企業解説

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COMPANY PROFILE / 機能性材料

ソフト・ロボティクス(現在は オキシピタルAI)
― ハーバード大学発の「ソフトグリッパー」の会社。2024年8月にグリッパー事業をドイツのSchmalzへ売却し、会社は視覚AIに専念している

Soft Robotics(ソフト・ロボティクス)は、ハーバード大学のGeorge M. Whitesides博士が2012年に創業した、米国の非上場企業です。シリコーンなどの柔らかい材料でできた指を、空気圧で曲げてものをつかむ「ソフトグリッパー」を、食品工場などへ売っていました。本社は米国マサチューセッツ州ベッドフォードです。売上・利益は公式資料で確認できませんでした。

ただし、この会社は、いまはグリッパーを作っていません。2024年8月6日、同社はグリッパー事業の資産をドイツのSchmalz(シュマルツ)グループへ売却したと発表しました。売却の対象はmGripと呼ぶ指型グリッパーの製品群、特許、技術のノウハウで、Schmalzが発表しています。残った事業は、3D視覚とAIによる検査・ロボットのピッキングで、同社は「Oxipital AI」へ名前を変えたと説明しています。公式サイトは、現在Oxipital AIが所有しています。

本稿は、この「売却と再編」を中心に、同社の公式資料(過去の公式サイトの保存記録を含む)、Oxipital AIとSchmalzの公式発表、SECのForm D、特許の公開記録を一次情報とし、何を確認でき、何を確認できなかったかを整理します。材料としての見どころは、Schmalz自身が「指はシリコーン製」と記載している点です。

構成:公式サイトの保存記録(2024年2〜5月)、Oxipital AIの公式発表(2024年8月、2026年7月更新)、Schmalzの公式発表(2024年8月・2026年)、SEC Form D(2015年・2018年・2022年)、特許の公開記録(2件)、査読論文(2011年)を一次情報として使用/最終更新 2026年10月10日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるSoft Roboticsと、機能性材料での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模
  5. 機能性材料にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は機能性材料で何を目指しているか
  9. 機能性材料分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集
  13. 出典
  14. 主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるソフト・ロボティクスと、機能性材料での立ち位置

正式名称Soft Robotics Inc.SECの届出の法人名(デラウェア州法人)。現在の社名はOxipital AIと同社が説明。法人の手続き(改称か新会社か)は確認できなかった
本社米国 マサチューセッツ州
ベッドフォード
32 Crosby Drive(2022年のForm Dとオキシピタル社の発表)。2015年・2018年のForm Dの所在地はケンブリッジ
上場非上場2024年の公式サイトが挙げた出資者:ABB Technology Ventures、FANUC、Honeywell Ventures、Marel、Tyson Ventures、Yamaha Motor ほか
この分野での類型かつて部品・デバイス
(ソフトグリッパー)
グリッパー事業は2024年8月にSchmalzへ。現在の会社に、この分野の材料・部品の事業は確認できない
中心となる材料・技術シリコーン製の指型の
空気圧ソフトグリッパー
Schmalzの現行ページが「指はシリコーン製(任意でFDA適合)、IP69K」と記載。過去の公式サイトは「指の材料の特許」をうたう
事業の現状グリッパーはSchmalz、
視覚AIはOxipital AI
売却は2024年8月5日付(Schmalz)。売却額は非公表
従業員非公表公式資料に人数の記載なし
売上・利益非公表財務の開示は確認できなかった。Form Dは調達の届出で、売上は載らない
まず押さえるべき1点

Soft Roboticsは、ハーバード大学の「柔らかい素材で作るロボット」の研究を、食品工場で使えるグリッパーにした会社でした。2024年の公式サイトは、「116件の特許と営業秘密(指の材料、製造方法、AIアルゴリズム)」「数百のシステムが日々稼働」と記載していました 事実。

しかし、グリッパー事業は2024年8月にSchmalzに移り、同社は視覚AIの会社になりました。いま「Soft Roboticsの製品」を買うことはできません。mGripはSchmalzの製品として販売が続いています 事実。性能の数値はメーカー公称で、測定条件が公開されていません。売却額、Oxipital AIの規模は確認できません 未確定/将来。

2. ロゴと社名の表記について

Soft Robotics

ロゴは、取得できませんでした。現在の公式サイト(softroboticsinc.com)は、Oxipital AIの案内のページに替わっており、Soft Roboticsのロゴ画像は掲載されていません。過去の公式サイトの保存記録(Internet Archive)は、第三者の保存サービス上のもので、そこから取れる画像は公式サイトから取得した正規のロゴ画像ではないため、本稿は設置していません。上の枠は、文字による表記です。

表記の注意:社名は Soft Robotics(Soft Robotics Inc.)です。ソフトロボティクス(柔らかい素材によるロボット)という研究分野の名称と同じつづりのため、検索では、研究分野の情報と区別が必要です。製品名のmGrip、mGripAIは、いま別の会社が扱っています(mGripはSchmalz、mGripAIの視覚AIはOxipital AIの系統)。

公式サイト(現在はOxipital AIが所有):https://softroboticsinc.com/

3. 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか

機能性材料に関わる企業の4つの類型 同じ「材料の会社」でも、原料・部品・表面・新方式で、強みと売り先が違う 素材・原料 部品・デバイス コーティング・表面 新方式・新興 原料と材料をつくる 機能を部品に仕立てる 表面に機能を付ける 新しい材料や原理を事業化 MP Materials/信越化学 Croda/Aspen Aerogels 村田製作所/TDK 京セラ/Gentex PPG/AkzoNobel ほか Niron/Metalenz Lumotive/Phononic 資源と量産規模 設計・品質・顧客網 配合技術と施工網 独自技術と成長余地 資源価格と規制に左右 需要と認定に左右 用途ごとの認定が必要 量産と資金が不確実 Soft Roboticsは、かつて「部品・デバイス」(ソフトグリッパー)の新興会社だった 2024年8月にグリッパー事業をSchmalzへ売却。現在の会社は視覚AIが中心
図1 機能性材料に関わる企業の4類型と、Soft Roboticsの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。過去の事業は部品・デバイス(ソフトグリッパー)、位置づけは新方式の新興会社です。現在の会社には、この分野に当たる材料・部品の事業は確認できません。

Soft Roboticsの過去の事業は、部品・デバイス(ソフトグリッパー)で、位置づけはスタートアップ・新方式(柔らかい素材の空気圧アクチュエータの事業化)でした。本シリーズの技術解説『ソフトアクチュエータと人工筋肉』『ポリウレタンとエラストマー』が扱う材料を、食品の取り扱いに使えるグリッパーにした会社と言えます。現在のOxipital AIの事業は、視覚AIが中心で、この分野に当たる材料・部品の事業は確認できません。事業を公式資料で確認できた範囲で整理します。

事業・製品Soft Roboticsでの位置づけ(〜2024年)現在の状態区分
ソフトフィンガーグリッパー(mGrip)中心の製品。指型のシリコーン製のグリッパーを、空気圧で曲げてつかむ。食品の取り扱いが中心2024年8月5日付でSchmalzが製品群・特許・ノウハウを取得。ボストンの既存の拠点も継続事実(Schmalzの発表)
mGripAI3D視覚、AI、ソフトグリッパーを組み合わせた、ばら積みのピッキングの一式。「毎分90個超(ロボット1台、用途による)」と同社が説明グリッパー部分はSchmalz、視覚AIはOxipital AIの事業に(Oxipital AIの公式発表)事実(会社の説明)/現行の製品名・提供は確認できず
視覚検査・ロボットのピッキング(視覚AI)2024年の公式サイトで、mGripAIの一部Oxipital AIの現在の中心事業(食品加工、農業、消費財)事実(Oxipital AIの発表)
特許2024年の公式サイトは「116件の特許と営業秘密」と記載(指の材料、製造方法、AIのアルゴリズム)グリッパーの特許は、Google Patentsの記録で現在の権利者がSchmalz Flexible Gripping Inc。AI関連の帰属は確認できなかった事実(公開記録)/AI関連は確認できず

4. 会社の規模

Soft Roboticsは非上場で、財務諸表は公開されていません。公式資料とSECのForm Dから確認できる規模を示します 事実。

項目確認できた内容
売上・利益・負債非公表。公式サイト(保存記録を含む)・発表・Form Dのいずれにも記載がない
従業員非公表
設立・本社2012年に、ハーバード大学のGeorge M. Whitesides博士が創業(2024年の公式サイトの沿革)。2015年のForm Dも設立年を2012年と記載。本社:ケンブリッジ(2015年・2018年のForm D)から、ベッドフォード(2022年のForm D)
経営陣2024年1月からMark Chiappetta(President兼CEO。2016年に創業CTOとして入社、のちにCOO)。2022年のForm Dの署名者はJeff Beck(CEO)、2015年・2018年はCarl E. Vause(CEO)。取締役(2022年):Jeff Beck、Carmichael Roberts、George Whitesides、Adam Sharkawy、Rory O’Driscoll、Kevin Dunlap。Oxipital AIでは、CEOはMark Chiappetta、VP(製品・マーケティング)はAustin Harvey
導入実績(会社の説明)「数百のシステムが世界で日々稼働」「数十億回のピッキング」(2024年の公式サイト)。顧客として、Just Born Quality Confections、Dominos、Johnsonville、消費財メーカー、eコマース企業を挙げる。数値の基準日・算定範囲は書かれていない
出資者(2024年の公式サイト)ABB Technology Ventures、Calibrate Ventures、FANUC、Honeywell Ventures、Hyperplane Venture Capital、Johnsonville Holdings、Marel、Material Impact、Scale Venture Partners、Tekfen Ventures、Tyson Ventures、Yamaha Motor Co., Ltd.
調達(SEC Form D)2015年12月:募集上限約US$945万、売却額約US$445万(10投資家)。2018年5月:売却額約US$2,025万(債務の転換を含む。9投資家)。2022年12月:募集上限約US$3,595万、売却額約US$3,165万(16投資家。最初の売却は2022年11月16日)。各届出の合算はしない(届出の範囲・重複が確認できないため)。2022年以降のForm Dは公開データベースで確認できなかった
ここで注意

調達の累計額や評価額は、報道や投資情報サイトに複数の数字がありますが、公式資料ではないため本稿は採用しません。「世界初」「業界をリードする」といった表現も同社の説明で、第三者の検証は本稿で確認していません。また、売却額は、SchmalzとSoft Roboticsのいずれの発表にも書かれていません。

5. 機能性材料にかけているリソース

非上場のため、金額の開示は限られます。人・金・外部・大学や公的資金の4点で、確認できたか/できなかったかを整理します。

項目確認できた内容区分
人(研究開発拠点・人員)ベッドフォードが本社。研究開発の人員数は非公表。2024年8月の売却で、「グリッパーの特許・ノウハウ」はSchmalzに移り、Schmalzは「ボストンの既存の拠点」を継続すると説明(従業員の移籍は、公式発表では確認できなかった)事実/人員は確認できず
金(研究開発費・設備投資・調達)研究開発費・設備投資の実績額は非公表。調達はForm Dで3回確認(2015年、2018年、2022年)。売却額は非公表事実/実績額は非公表
外部への出資・買収・合弁・事業売却事業売却:2024年8月、グリッパー事業の資産をSchmalzへ売却(Soft Robotics・Oxipital AIの発表、Schmalzの発表)。他社への出資・買収・合弁は確認できなかった事業売却は事実/売却額は確認できず
大学・研究機関・公的資金との連携大学:ハーバード大学のWhitesides研究室(創業者のWhitesidesは2022年も取締役。2011年のPNAS論文『Multigait soft robot』などの著者)。公的資金:米国政府の助成を公式資料で確認できなかった大学は事実/公的資金は確認できず

主要な製品・設備の状況

次の表は、各社の公式資料で確認できた範囲です。生産能力・出荷数はいずれも非公表です。

製品・設備現在の担い手・拠点規模(公称)段階日付・出典
mGrip(指型グリッパー)Schmalz。ボストン(マサチューセッツ州)の既存の拠点を継続「毎分最大120回のピック」「許容荷重最大10 kg」「ワーク幅最大300 mm」(Schmalzの公称)販売中(Schmalzの製品として)Schmalzの発表(2024年8月)、Schmalzのページ(2026年)
mGrip Basic(新モデル)と制御モジュールSchmalz指はシリコーン製(任意でFDA適合)、IP69K、毎分最大120回発売(Schmalzが2026年に発表)Schmalzの発表(2026年)
mGripAI(旧:Soft Roboticsの一式)記載なし「毎分90個超」(旧公式サイト、用途による)現行の提供は確認できず公式サイトの保存記録(2024年4月)
Oxipital AIの視覚AIベッドフォード非公表提供中と同社が説明(顧客・規模は確認できず)Oxipital AIの発表

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2011年ハーバード大学のWhitesides研究室が、柔らかい高分子(エラストマー)だけでできた、空気圧で動くロボットをPNAS誌に報告(『Multigait soft robot』)。同年にAngewandte Chemie誌に『Soft Robotics for Chemists』研究の源流
2012年Soft Roboticsを創業(Whitesides博士。2024年の公式サイトの沿革)研究から事業へ
2015年12月Form D(売却額約US$445万、10投資家)初期の資金調達
2016年Mark Chiappettaが創業CTOとして入社(公式サイトの経営陣の紹介)製品開発の強化
2018年5月Form D(売却額約US$2,025万、債務の転換を含む)事業拡大の資金
2022年11〜12月Form D(売却額約US$3,165万、16投資家)。本社はベッドフォード最後に確認できる調達
2024年1月Mark ChiappettaがPresident兼CEOに就任経営体制の交代
2024年8月5〜6日グリッパー事業の資産をSchmalzへ売却(Schmalz:8月5日付で取得、8月6日に発表。Soft Robotics:8月6日に「Oxipital AIになる」と発表)事業の再編
2025〜2026年softroboticsinc.comはOxipital AIが所有(2025年の表記)。2026年6月にSchmalzがmGrip Basicを発表。2026年7月にOxipital AIが発表のページを更新両社の事業の継続

7. 今後の計画

Oxipital AI食品加工・農業・消費財の
視覚AIに注力
同社の説明(2024年8月、2026年7月更新)。具体的な数値目標・時期の記載は確認できなかった
Schmalz食品向けの指型グリッパーを
自社のポートフォリオに
「食品産業は成長市場」とSchmalzが説明(2024年8月)。販売目標の数値は確認できなかった
両社の関係売却で両社とも
視覚検査などに集中
Soft Roboticsの公式サイトの説明。契約の内容は非公表
V-CORTXOxipital AIの
プラットフォーム名
公式サイトの保存記録・発表に名称があるが、詳細は確認できなかった

これらは各社の計画・説明で、達成の事実ではありません 未確定/将来。

確認できなかったこと

次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。

売上・利益・従業員数・研究開発費/売却額と、従業員の移籍/Oxipital AIの法人としての扱い(改称か新設か)、規模、顧客/mGripAIの現行の提供状況/AI関連の特許と営業秘密の帰属/2022年12月以降の資金調達/指の材料(シリコーンの種類・硬さ・配合)、耐久回数(空気圧サイクルでの寿命)と、各性能値の測定条件/導入台数の基準日と台数(公式資料にあるのは「数百のシステム」という表現のみ)。

8. この会社は機能性材料で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
材料・機械の部分(グリッパー)を手放し、ソフトウェア(視覚AI)に集中する選択をした2024年8月の発表:グリッパー事業の資産をSchmalzへ売却し、「視覚検査と欠陥検出」に集中。Oxipital AIの説明:「エンドツーエンドの視覚AI」、残る事業は検査とピッキング事実(会社の説明)/理由は推測
グリッパーは、量産・販売網を持つ会社(Schmalz)が担うほうが続けやすいと判断したSchmalzは、真空グリッパーの事業と販売網(約70か国と同社が説明)、食品向けの拡大を目的に取得。売却後も製品は販売が続く推測
この分野(ソフトアクチュエータ)では、材料単独より、用途と一体のシステムで価値が出ると見ていた2024年の公式サイトは、mGripAIを「3D視覚+AI+ソフトグリッパー」の一式で説明し、材料単体の販売を前面に出していない推測
推測の根拠を1つだけ詳しく

「グリッパーを手放し、視覚AIに集中した」と読む根拠は、売却の対象と、残った事業の線引きです。Schmalzの発表が挙げる売却の対象は、「mGripの製品群、すべての指型グリッパーの構成、特許、関連するノウハウ」です。一方、Oxipital AIの発表は、残った事業を「食品加工などの視覚検査とロボットのピッキング」と説明します。2024年の公式サイトが「指の材料の特許」と「AIのアルゴリズムの特許」を並べて数えていたことを考えると、どの特許が売却の対象で、どれが残ったかが重要ですが、公式資料には書かれていません。

ただし、なぜ売却したかの理由は、公式資料に書かれていません。これは公式発表の内容から本稿が読み取った解釈です 未確定/将来。

9. 機能性材料分野の提携マッピング

Soft Roboticsを中心とした、事業売却・継承・研究・顧客・出資との関係 各社の公式資料に記載のある関係のみ。売却額、契約の内容は非公表 顧客・供給 研究・事業の継承 出資・事業売却 Soft Robotics ソフトグリッパー Schmalz(ドイツ) グリッパー事業を取得(2024年8月) Oxipital AI 視覚AIの事業を継承 ハーバード大学 Whitesides研究室が源流 食品メーカーなどの顧客 Just Born、Johnsonvilleほか 出資者 ABB、FANUC、Honeywellほか
図2 Soft Roboticsを中心とした事業売却・継承・研究・顧客・出資との関係。出典:2024年の公式サイト(保存記録)、Oxipital AIとSchmalzの公式発表、SECのForm D。図に含めたのは公式資料に記載のある関係だけです。顧客は2024年の公式サイトが挙げたもので、現在の取引は確認できていません。出資者は2024年の公式サイトが挙げたもので、各社の出資額・出資時期はForm Dからは分かりません。売却額は非公表です。

この会社の関係の特徴は、事業が2つに分かれ、材料・機械の側はSchmalzに移ったことです。事業会社との合弁は確認できません。顧客・出荷量は確認できません 未確定/将来。

10. 提供している技術・製品・サービス

以下は、各社の公式資料の記述です。数値はすべてメーカー公称で、基準・条件が資料に書かれていないものは、そのことを併記しています。他社の製品との優劣を示すものではなく、条件の異なる値は並べて比べられません。材料の原理は、本シリーズの技術解説『ソフトアクチュエータと人工筋肉』を参照してください 事実。

項目メーカー公称の値・記述基準・条件(資料の記載)
mGrip(Schmalzの製品カテゴリー。2024年8月の発表ページに併記)許容荷重 最大10 kg、ワーク幅 最大300 mm、グリッパーの速度 最大120ピック/分。FDA適合の材料(POM、シリコーン、ステンレス)、保護等級IP69K荷重・速度の測定条件、ワークの形態の記載なし
mGrip Basic(Schmalz、2026年)空気圧制御の指型グリッパー。指はシリコーン製(任意でFDA適合)、指モジュールの保護等級IP69K。最大120ピック/分、許容荷重10 kg、ワーク幅300 mm。制御モジュールSRCU Basic(供給電圧24 V、出力圧を手動で調整)FDA適合は「任意(optional)」と記載。適合の範囲・試験の記載なし
mGripAI(旧Soft Robotics、2024年)3D視覚、AI、ソフトグリッパーの一式。ロボット1台あたり毎分90個超(用途による)。保護等級IP69K。フィルター・並べ替えのパラメータ20以上、ピックごとのデータ「用途による」と注記。対象物・条件の記載なし
Oxipital AI(現在)視覚検査(製品検査)と、視覚誘導のロボットのピッキング。食品加工、農業、消費財が重点性能の数値の記載は確認できなかった
導入実績(旧Soft Robotics、2024年)「数百のシステムが日々稼働」「数十億回のピッキング」基準日・算定範囲の記載なし
素材技術者の視点:公開された情報から、ソフトグリッパーについて何が言えるか

(1) 何でできているか:シリコーンの指と、空気圧。Schmalzの現行ページは、mGrip Basicの指を「シリコーン製(任意でFDA適合)」、グリッパーの材料を「POM、シリコーン、ステンレス」と書いています。創業の源流となった2011年のPNAS論文は、ロボットを弾性高分子(エラストマー)だけで作り、ソフトリソグラフィで成形し、10 psi未満の低い空気圧で動かしたと報告しています。この系統の考え方(柔らかい材料の内部に空気の室を作り、圧力で曲げる)が現在のmGripと同じかは公式資料には書かれていませんが、「空気圧制御の指型グリッパー」という記述は整合しています。

(2) 材料の設計は、「つかむ力」と「傷つけない」のトレードオフ。指が柔らかいほど、形がまちまちの食品に沿って変形できますが(Schmalzの説明:「形に合わせて、傷めずに」)、同時に重いものを保持する力は下がります。許容荷重の最大10 kgは、この中で成り立つ値と読めますが、どの形状・材質のワークに対する値かは書かれていません(解説)。シリコーンの硬さ、配合、表面の仕上げは、公式資料に書かれていません。

(3) 食品現場では、洗浄と耐久が材料の論点。IP69Kは、高温・高圧の洗浄水に耐える保護等級として知られ(解説)、食品の洗浄工程を想定した表記と読めます。一方、空気圧で何万回も曲げ伸ばしされる指は、疲労や摩耗の影響を受けます。寿命(サイクル数)は公式資料に書かれていません。

(4) 数値の読み方。「毎分90個超(mGripAI)」と「最大120ピック/分(mGrip)」は、別の製品・別の主体の値で、条件も書かれておらず、同じ尺度ではありません。他の方式(吸着、機械式の指)との優劣の判断は、本稿では行いません。食品の安全・衛生に関する個別の助言も、本稿は行いません。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
事業の実体が変わっている「Soft Robotics」の名前でグリッパーを買うことはできない。製品はSchmalz、会社はOxipital AI。この記事の「この分野の事業」は、過去の事実の整理が中心になる事実
財務の不透明さ売上・利益・手元資金・売却額が公式資料にない。最後に確認できる調達は2022年12月のForm D。本稿は現在の財務の健全性を評価できない確認できず
法人・名称の整理Soft Roboticsが「Oxipital AIになった」という説明と、SECのForm Dの法人名(Soft Robotics Inc.)の関係が公式資料で確認できない。検索や契約で、旧社名・新社名・製品名(mGrip、mGripAI)が混在する確認できず
特許・営業秘密の帰属グリッパーの特許はSchmalzに移ったと記録されるが、AI関連の帰属や、売却の対象外の特許は公式資料で確認できない事実(公開記録)/AI関連は確認できず
導入実績・顧客の見えにくさ「数百のシステム」「数十億回」は2024年の同社の説明で、売却後の運用、顧客との契約の移行は確認できない確認できず
競合技術・代替吸着、機械式の指、他のソフトグリッパーが併存する。ソフトグリッパーの優位は各社の説明で、本稿は比較しない。市場規模の推計も採用しない確認できず
食品・衛生の表記「FDA適合(任意)」「IP69K」は各社の製品の記載で、適合の範囲・試験は書かれていない。本稿は、食品の安全性を保証するものではない事実(会社の説明)

12. 用語集

ソフトロボティクス
柔らかい材料(エラストマーなど)でロボットや部品を作る研究分野。ここでは、その成果を製品にした会社の名前でもある。
ソフトグリッパー
柔らかい指などでものをつかむ装置。ここでは、空気圧で曲がるシリコーン製の指を使うもの。
エラストマー
ゴムのように、変形してもとに戻る高分子材料。シリコーンはその一種。
ソフトリソグラフィ
型にエラストマーを流し込んで、微細な形を作る成形の方法。
IP69K
高温・高圧の水での洗浄に耐えることを示す保護等級の表記。食品の工場で使う機器でよく書かれる。
FDA適合
米国のFDAの規則に合う材料であることを示す製品の表記。適合の範囲は製品ごとに確認が必要。
mGrip/mGripAI
指型グリッパーの製品名/グリッパーに3D視覚とAIを組み合わせた一式の製品名。
Form D
米国で、非公開の資金調達(私募)を行ったときにSECへ出す届出。調達額と投資家数は分かるが、売上は載らない。
メーカー公称
メーカー自身が示す説明や性能値。測定条件と版が一緒でないと、他の製品と比べられない。
旧ソフトグリッパー事業の技術イメージです
図3 概念画像(ImageGenで生成)。旧ソフトグリッパー事業の技術イメージです。現在の会社の事業状況は本文で確認し、画像を現行製品と受け取らないでください。 実際の企業の製品・工場・測定結果を示しません。

13. 出典

  1. Soft Robotics(現在はOxipital AIが所有) 公式サイト(トップページ。2024年8月の売却と社名変更の案内)。 https://softroboticsinc.com/
  2. Oxipital AI Soft Robotics Becomes Oxipital AI(2024年8月6日の発表。2026年7月2日に更新)。 https://www.oxipitalai.com/oxipital-ai-press-release/
  3. Soft Robotics 公式サイト「About Soft Robotics」(Internet Archiveの保存記録、2024年2月23日)。沿革、特許116件、出資者、顧客。 https://web.archive.org/web/20240223071520/https://www.softroboticsinc.com/aboutus/
  4. Soft Robotics 公式サイト「Leadership」(Internet Archiveの保存記録、2024年5月25日)。Mark Chiappettaの紹介。 https://web.archive.org/web/20240525074055/https://www.softroboticsinc.com/aboutus/leadership/
  5. Soft Robotics 公式サイト「mGripAI」(Internet Archiveの保存記録、2024年4月18日)。製品の特徴(メーカー公称)。 https://web.archive.org/web/20240418000954/https://www.softroboticsinc.com/products/mgripai/
  6. Soft Robotics 公式サイトのトップページ(Internet Archiveの保存記録、2024年3月4日)。事業の説明(3D視覚、AI、IP69Kのグリッパー)。 https://web.archive.org/web/20240304231002/https://www.softroboticsinc.com/
  7. Schmalz Portfolio expanded: Schmalz takes over finger gripper from Soft Robotics Inc.(2024年8月6日の発表)。 https://www.schmalz.com/en/career-company/latest/news/portfolio-expanded-schmalz-takes-over-finger-gripper-from-soft-robotics-inc
  8. Schmalz Grip what others leave behind(mGrip Basicと制御モジュールの発表。2026年)。 https://www.schmalz.com/en/career-company/latest/news/finger-gripper-mgrip-basic-grip-what-others-leave-behind
  9. U.S. Securities and Exchange Commission Soft Robotics Inc. のForm D一覧(CIK 0001660461)。 https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001660461&type=D&dateb=&owner=include&count=40
  10. U.S. Securities and Exchange Commission Soft Robotics Inc. Form D(2015年12月16日署名。募集上限US$9,450,764、売却額US$4,450,764、投資家10)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1660461/000166046115000002/primary_doc.xml
  11. U.S. Securities and Exchange Commission Soft Robotics Inc. Form D(2018年5月18日署名。売却額US$20,245,554、債務の転換を含む、投資家9)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1660461/000166046118000002/primary_doc.xml
  12. U.S. Securities and Exchange Commission Soft Robotics Inc. Form D(2022年12月1日署名。募集上限US$35,946,521、売却額US$31,652,124、投資家16)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1660461/000166046122000002/primary_doc.xml
  13. Google Patents US10179411B2 Soft robotic grippers for cluttered grasping environments, high acceleration movements, food manipulation, and automated storage and retrieval systems(出願2017年1月20日、付与2019年1月15日。当初の権利者Soft Robotics Inc、現在の権利者Schmalz Flexible Gripping Inc)。 https://patents.google.com/patent/US10179411
  14. Google Patents US12134184B2 Field-assembled soft gripping for industrial and collaborative robots(出願2023年5月19日、付与2024年11月5日。当初の権利者Soft Robotics Inc、現在の権利者Schmalz Flexible Gripping Inc)。 https://patents.google.com/patent/US12134184
  15. Shepherd, R. F.; Ilievski, F.; Choi, W.; Morin, S. A.; Stokes, A. A.; Mazzeo, A. D.; Chen, X.; Wang, M.; Whitesides, G. M. Multigait soft robot. PNAS 108, 20400–20403(2011年11月)。DOIはCrossrefで確認。 https://doi.org/10.1073/pnas.1116564108
  16. Ilievski, F.; Mazzeo, A. D.; Shepherd, R. F.; Chen, X.; Whitesides, G. M. Soft Robotics for Chemists. Angewandte Chemie International Edition 50, 1890–1895(2011年1月)。DOIはCrossrefで確認。 https://doi.org/10.1002/anie.201006464

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
現在の公式サイトがOxipital AIの案内であること、2024年8月6日の売却の発表、サイトの所有者事実(会社の説明)出典1 https://softroboticsinc.com/
「Soft RoboticsはOxipital AIになった」、グリッパー事業資産のSchmalzへの売却(売却額は未公表)、残った事業(視覚AI)、本社の所在地、CEOと担当者、V-CORTX、食品加工・農業・消費財事実(会社の説明)出典2 https://www.oxipitalai.com/oxipital-ai-press-release/
2012年の創業(Whitesides博士)、116件の特許と営業秘密、出資者、顧客、「数百のシステム」「数十億回のピッキング」、本社の所在事実(会社の説明)出典3 https://web.archive.org/web/20240223071520/https://www.softroboticsinc.com/aboutus/
Mark Chiappettaの経歴(2016年に創業CTO、のちCOO、2024年1月にPresident兼CEO)事実(会社の説明)出典4 https://web.archive.org/web/20240525074055/https://www.softroboticsinc.com/aboutus/leadership/
mGripAIの特徴(毎分90個超、IP69K、パラメータ20以上)事実(メーカー公称)出典5 https://web.archive.org/web/20240418000954/https://www.softroboticsinc.com/products/mgripai/
2024年3月の事業の説明(3D視覚、AI、グリッパー)事実(会社の説明)出典6 https://web.archive.org/web/20240304231002/https://www.softroboticsinc.com/
SchmalzによるmGrip製品群・特許・ノウハウの取得(8月5日付)、ボストンの拠点の継続、食品向けの拡大、mGripの仕様(10 kg、300 mm、120ピック/分、FDA適合の材料、IP69K)事実(Schmalzの発表)出典7 https://www.schmalz.com/en/career-company/latest/news/portfolio-expanded-schmalz-takes-over-finger-gripper-from-soft-robotics-inc
mGrip Basicと制御モジュール(シリコーン製の指、任意のFDA適合、IP69K、120ピック/分)、100超の事例事実(メーカー公称)出典8 https://www.schmalz.com/en/career-company/latest/news/finger-gripper-mgrip-basic-grip-what-others-leave-behind
Form Dの届出が3件(2015年、2018年、2022年)であること、法人名、所在地事実出典9 https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001660461&type=D&dateb=&owner=include&count=40
2015年のForm D(設立年2012年、約US$445万、10投資家、CEOと取締役)事実出典10 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1660461/000166046115000002/primary_doc.xml
2018年のForm D(約US$2,025万、債務転換を含む、9投資家)事実出典11 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1660461/000166046118000002/primary_doc.xml
2022年のForm D(約US$3,165万、16投資家、ベッドフォード、署名者Jeff Beck、取締役)事実出典12 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1660461/000166046122000002/primary_doc.xml
US10179411の題名・日付・当初の権利者・現在の権利者(Schmalz Flexible Gripping Inc)事実(特許の公開記録)出典13 https://patents.google.com/patent/US10179411
US12134184の題名・日付・当初の権利者・現在の権利者(Schmalz Flexible Gripping Inc)事実(特許の公開記録)出典14 https://patents.google.com/patent/US12134184
2011年のPNAS論文(弾性高分子のみのロボット、ソフトリソグラフィ、10 psi未満の空気圧)、著者にWhitesides事実(査読論文)出典15 https://doi.org/10.1073/pnas.1116564108
2011年のAngewandte Chemie誌『Soft Robotics for Chemists』の書誌事実(査読論文)出典16 https://doi.org/10.1002/anie.201006464
売上・利益・従業員数、売却額、従業員の移籍、Oxipital AIの法人としての扱い・規模・顧客、mGripAIの現行提供、AI関連特許の帰属、2022年12月以降の調達、指の材料の詳細と耐久回数、測定条件未確定/将来本稿による整理・見通し(一次情報で確認できなかった事項。本稿)
「グリッパーを手放し視覚AIに集中した」「量産・販売網のあるSchmalzが担うほうが続けやすいと判断した」「材料単独より用途と一体のシステムで価値が出ると見ていた」という読み推測出典1・2・3・6・7 https://softroboticsinc.com/ https://www.oxipitalai.com/oxipital-ai-press-release/ https://web.archive.org/web/20240223071520/https://www.softroboticsinc.com/aboutus/ https://web.archive.org/web/20240304231002/https://www.softroboticsinc.com/ https://www.schmalz.com/en/career-company/latest/news/portfolio-expanded-schmalz-takes-over-finger-gripper-from-soft-robotics-inc
Soft Roboticsを「かつての部品・デバイス(ソフトグリッパー)、位置づけは新方式の新興会社」とする区分、4類型の整理、用語の整理、ロゴを取得できなかったこと本稿の計算本稿による整理・見通し(本稿)
素材技術者の視点(シリコーンの指と空気圧、つかむ力と傷つけないことのトレードオフ、洗浄と耐久、数値の読み方)解説本稿による解説(公式資料を素材の観点で整理したもの。本稿)

最終更新:2026年10月10日/Troy Technical
本稿の内容は、Soft Robotics(現Oxipital AI)の公式サイト(保存記録を含む)と発表、Schmalzの発表、SECのForm D、特許の公開記録、査読論文に基づきます。調査会社の市場推計や報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。製品の性能値は各社の公称で、測定条件が異なる他の値とは比較できません。会社の計画・目標は未確定で、実現を保証するものではありません。本稿は、機器の選定、食品の安全・衛生、投資・調達の判断について、読者個人に助言するものではありません。