COMPANY PROFILE / 機能性材料
ルモティブ
― 半導体チップの上で、光ビームの向きを電気で変える。米国ワシントン州の非上場の会社で、距離センサー(LiDAR)から、AIデータセンターの光回路スイッチへ広げようとしている
Lumotive(ルモティブ)は、光制御メタサーフェス(Light Control Metasurface、LCM)と呼ぶチップで、レーザー光の向きを機械部品なしで電気的に変える会社です。鏡を回す機械式の方式の代わりに、光の波長より小さな構造を並べた面で光を曲げます。本社は米国ワシントン州レッドモンドで、非上場です。売上・利益は公式資料で確認できませんでした。
主力のチップ「LM10」は、2024年5月に米国の半導体メーカーSkyWaterの製造工程で量産の認定を受けたと、両社が発表しています。LM10を使った顧客の製品として、Hokuyo(北陽電機)の3D LiDAR「YLM-10LX」(2024年5月発売と発表)などが公表されています。2025年にはシリーズB(公表US$4,500万、のちに「US$5,900万」と表記)を調達し、2026年3月には、データセンター向けの2次元のビーム操作チップを実証したと発表しました。ただしこの2次元チップは実証の段階で、データセンター向けの製品の出荷は確認できません。
本稿は、同社の公式サイトと公式リリース、取引先(SkyWater、Hokuyo)の公式資料を一次情報とし、何を確認でき、何を確認できなかったかを整理します。性能の数値はすべてメーカー公称で、条件が書かれていないものが多くあります。
- 30秒でわかるLumotiveと、機能性材料での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- 機能性材料にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は機能性材料で何を目指しているか
- 機能性材料分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集
- 出典
- 主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるルモティブと、機能性材料での立ち位置
レッドモンド2025年7月・12月のリリースの発信地。2023〜2024年のリリースにはシアトルの表記もある。通りの住所は確認できなかった
部品・デバイス(従)ビーム操作チップとモジュール、参照設計を提供。製造は外部の半導体工場
(LCM)CMOSのチップ上のメタサーフェスで光を操作。波長はLM10が905・940 nm。調整には液晶を使うと、取引先と同社のページが記載
(2024年5月)2025年12月に「複数のCMOSと先端パッケージの製造パートナーに拡大」と同社が説明(社名は書かれていない)
Lumotiveの位置は、メタサーフェスを「動く光学部品」として、半導体工場で作って売っている会社です。LM10の量産認定(SkyWater、2024年5月)、Hokuyoの製品ページ(Hokuyo自身が「Lumotiveと開発した固体の3D LiDAR」と記載)、NAMUGAなどの製品の発表と、取引先の公式資料で確認できる事実があります 事実。
ただし、出荷量、売上、顧客別の採用状況は確認できません。データセンター向けの光回路スイッチは、2026年3月に2次元チップの実証を発表した段階で、「1万×1万ポート」などの数値は同社の設計目標です。性能の数値はメーカー公称で、測定条件が不明なものが多いです 未確定/将来。
2. ロゴと社名の表記について

ロゴは同社の公式サイト(lumotive.com)のページ上部に掲載されている画像(9つの点の並びと「LUMOTIVE」の文字)を、そのまま取得して設置しています。生成画像による再現は行っていません。
表記の注意:社名は Lumotive(頭文字だけ大文字)です。LCM(Light Control Metasurface)は同社のチップの名称で、LM10、M30、NM120、MD41、MD42などは製品・開発キットの型番です。「ビーム操作(beam steering、ビームフォーミング)」は、光の向きや形を変えることです。
公式サイト:https://lumotive.com/3. 機能性材料の世界で、この会社はどこにいるか
Lumotiveの主たる類型はスタートアップ・新方式(メタサーフェスで光を電気的に操作する、という新しい原理の事業化)、従たる類型は部品・デバイス(チップ、開発キット、参照設計の供給)です。本シリーズの技術解説『メタマテリアルとメタサーフェス』が扱う原理を、「動かせる」形にして事業にした会社と言えます。事業を公式資料で確認できた範囲で整理します。
| 事業・製品 | Lumotiveでの位置づけ | 確認できた一次情報 | 区分 |
|---|---|---|---|
| LM10(1次元のビーム操作チップ) | 中心の製品。11×9 mmの有効面積、905・940 nm。SkyWaterで量産認定(2024年5月)。顧客のセンサー内で出荷中と両社が発表 | 公式サイト、SkyWaterとの共同発表 | 事実(共同発表)/出荷量は確認できず |
| 開発キットと参照設計(M30、NM120、MD41、MD42) | 顧客がセンサーを作る時間を、18か月から3〜6か月へ短縮すると同社が説明。iToF・dToFの両方式に対応 | 公式サイト、リリース(2024年9月〜12月) | 事実(会社の説明) |
| 顧客の製品(LiDAR) | Hokuyo YLM-10LX(2024年5月発表)、NAMUGA Stella/Stella-2(2024年12月〜2025年5月発表)、E-Photonics(サウジアラビアで製造を計画) | リリース、Hokuyoの製品ページ | 事実(会社の説明)/出荷量は確認できず |
| 2次元のビーム操作チップ | 2026年3月に実証を発表。光回路スイッチ、光通信、センサーが用途 | リリース(2026年3月) | 事実(実証の発表)/製品化は未確定/将来 |
| 光回路スイッチ(OCS) | AIデータセンター向けに、256×256から1万×1万までの構成を設計目標として提示。ポート間の切り替え50 µs、挿入損失1〜2 dBと記載(測定の根拠は書かれていない) | 公式サイトのOCSのページ | 未確定/将来(設計目標) |
| 防衛・衛星通信 | 公式サイトが用途として記載(LiDAR、光通信)。顧客・採用の記載は確認できなかった | 公式サイトの防衛のページ | 用途の列挙/採用は確認できず |
4. 会社の規模
Lumotiveは非上場で、財務諸表は公開されていません。公式資料から確認できる規模を示します 事実。
| 項目 | 確認できた内容 |
|---|---|
| 売上・利益・負債 | 非公表。公式サイト・リリースのいずれにも記載がない |
| 従業員 | 非公表。2025年に人員を50%増やしたと同社が説明(2025年12月)。拠点は、レッドモンド(本社)、オマーンのマスカット(Center of Excellence)、台湾 |
| 設立 | 公式資料で確認できなかった。第三者の資料では年が一致しない(本稿は採用しない) |
| 経営陣 | CEO:Sam Heidari(Quantenna Communicationsなどでの経験。同社の経営陣ページ)。創業者兼CTO:Gleb Akselrod(MITでPh.D.。Intellectual Venturesで光メタマテリアルの商業化を率い、Duke大学でメタサーフェスを研究と同社が説明)。製品担当:Apurva Jain。事業開発:Axel Fuchs。ASIC:Sajid Husain。営業:Clement Kong。2025年12月にTristan Joo(Executive Vice President of Global Business) |
| 出資者 | 2025年2月のリリース:新規はSwisscom Ventures、East Bridge、EDOM、Grazia、Hokuyo、TSVC。既存はGates Frontier、MetaVC Partners、Quan Funds、USAA、HiMax。2025年7月:Amazon Industrial Innovation FundとITHCA Group(オマーンの「sovereign tech fund」と同社が説明)。同社の説明にはSamsung Venturesも出資者として載る |
| 特許 | 同社の説明は資料により異なる。技術ページは「100件超」、2024年9月は「100件超」、2025年7月のリリースは「200件超」、公式サイトの会社概要と2026年3月のリリースは「160件超」。基準日・数え方(出願を含むか)は書かれていない |
| 調達(公表額) | 2025年2月 シリーズB US$4,500万。2025年12月のリリースは「US$5,900万のシリーズB」と表記。2025年7月のAmazon・ITHCAの出資は金額が書かれておらず、Stifel Bankによる融資も加わったと説明されている。差額US$1,400万の内訳は公式資料から確認できない |
公式サイトのホームページに、投資家のBill Gates氏の発言が掲載されています。これは同社が引用する出資者の言葉で、本稿は技術や事業の根拠としては採用しません。また、OCSのページが引用する「Googleの光回路スイッチの公開事例で、ネットワークの電力が40%、コストが30%下がった」という数字は、Lumotiveではなく第三者の数字を同社が引いたもので、出所が示されていないため採用しません。「世界初」「最初の商用」といった表現は同社の説明で、第三者の検証は本稿で確認していません。
5. 機能性材料にかけているリソース
非上場のため、金額の開示は限られます。人・金・外部・大学や公的資金の4点で、確認できたか/できなかったかを整理します。
| 項目 | 確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(研究開発拠点・人員) | レッドモンドの本社が中心。マスカット(オマーン)に顧客エンジニアリングとプログラム管理の拠点、台湾に製造・販売・技術支援の拠点(2025年12月)。研究開発の人員数は非公表 | 事実/人員は確認できず |
| 金(研究開発費・設備投資・調達) | 研究開発費・設備投資の実績額は非公表。調達はシリーズB(2025年2月US$4,500万、2025年12月に「US$5,900万」と表記)。製造は外部委託のため、自社の工場投資は確認できなかった | 事実/実績額は非公表 |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | Lumotiveによる他社への出資・買収・合弁・事業売却は確認できなかった。Hokuyo、EDOM(台湾の電子部品商社)は出資者であり、同時に顧客・販売パートナー | 確認できず(自社の出資) |
| 大学・研究機関・公的資金との連携 | 大学:創業者がDuke大学で研究した(同社の経歴の説明)。2026年3月のリリースに、Duke大学のDavid R. Smith教授のコメントがあるが、共同研究の記載はない。公的資金:米国政府の助成を公式資料で確認できなかった。ITHCA(オマーン政府系)は出資 | 公的資金は確認できず |
主要な製品・設備の状況
次の表は、会社・取引先の公式資料で確認できた範囲です。生産能力と出荷数はいずれも非公表です。
| 製品・設備 | 製造・出荷の経路 | 規模(公称) | 段階 | 日付・出典 |
|---|---|---|---|---|
| LM10(LCMチップ) | SkyWater(米国の半導体メーカー。本社はミネソタ州ブルーミントン)で量産認定。製造場所は書かれていない。「カスタムのフォトニクス工程」を2年弱で共同開発 | 非公表(有効面積11×9 mm、波長905・940 nm) | 量産認定・出荷中(顧客のセンサー内、と両社が説明) | SkyWater・Lumotive共同発表(2024年5月1日) |
| その他のCMOS・パッケージの製造 | 「複数のCMOSと先端パッケージの製造パートナー」(社名なし)。2024年9月に「複数のシリコン工場で本格生産」と説明 | 非公表 | 説明のみ(社名・能力は確認できず) | 2024年9月、2025年12月のリリース |
| Hokuyo YLM-10LX | HokuyoがLM10を搭載。HokuyoのページはLumotiveと開発した固体3D LiDARと記載 | 非公表 | 発売(Lumotiveが2024年5月22日に発表) | リリース、Hokuyoの製品ページ |
| NAMUGA Stella/Stella-2 | NAMUGAが製造・販売。Stella-2は2025年5月に初公開、Stella-180(180°)は試作で、OEM向けのサンプルは「2026年中」を目標 | 非公表 | 発売の発表(2024年12月、商用展開は2025年第2四半期の予定と説明)/Stella-180は未確定/将来 | リリース(2024年12月、2025年5月、2026年4月) |
| E-Photonics(サウジアラビア) | L30、L42を現地で製造する計画(LEAP 2025で発表) | 非公表 | 計画。未確定/将来 | リリース(2025年2月) |
| 2次元ビーム操作チップ、OCS | 実証(2026年3月)。製造の記載なし。OCSは「CMOSの製造と、液晶を使うLCOSの組み立て」と説明 | 設計目標:256×256(4×3×2 cm³)から1万×1万(3RUシャーシ) | 実証。製品は未確定/将来 | リリース(2026年3月)、公式サイトのOCSのページ |
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2023年11月 | LM10を「世界で初めて商用で入手できるデジタルビーム操作ソリューション」と説明。中国・韓国・欧州向けに、Macnica Cytech、Uniquest、Redtree Solutionsの販売パートナーを追加 | チップの販売網の整備 |
| 2024年4月・5月 | 4月に台湾の商社EDOMと提携。5月1日にSkyWaterでLM10の量産認定。5月22日にHokuyoがYLM-10LXを発売と発表 | 製造の確保と、最初の顧客製品 |
| 2024年9月〜12月 | 9月にOpen Development Platform(ODP)。11月にSonyのセンサーを使うMD41。12月にNAMUGAのStella、LatticeのFPGAを組み込むMD42、MulticoreWareとのAI連携 | 顧客が使いやすい形(キット化)への展開 |
| 2025年1月〜5月 | 1月にCESでSonyのSPADセンサー(IMX459、IMX560)との統合を発表。2月にE-Photonics(サウジアラビア)と、シリーズB(US$4,500万)。5月にNAMUGAのStella-2、E-Photonicsのスペインでの発表 | 資金と販売地域の拡大 |
| 2025年7月 | 14日にSolidVue(韓国のSPADセンサーの会社)と共同開発。22日にAmazon Industrial Innovation FundとITHCAの出資を発表 | 産業用ロボットの顧客・資金の拡大 |
| 2025年12月 | 9日に、オマーンと台湾の拠点、Tristan Jooの就任、人員50%増を発表。同月にGSAの「Start Up to Watch」 | 体制の拡大 |
| 2026年3月・4月 | 3月19日に2次元のビーム操作チップの実証を発表。4月9日にLM10とAdaps PhotonicsのdToFセンサーで、固体の180° LiDAR(30 FPS)を発表 | データセンター向けへの拡張と、LiDARの高性能化 |
7. 今後の計画
構成を提示公式サイトのOCSのページ。2次元チップの実証(2026年3月)が前提で、製品や出荷の記載は確認できなかった
(2026年中を目標)NAMUGAの試作と同社が説明。基準は2026年4月のリリース
(計画)2025年2月の発表。製造開始の時期・規模の記載は確認できなかった
日韓中台の販売パートナーRestar(日本)、Uniquest(韓国)、EDOM(台湾)、Macnica Cytech(中国)
公式サイトは、防衛・衛星通信(LiDARの距離50〜5,000 m超、衛星間・航空機と衛星の通信)も用途として挙げます。これらは用途の列挙で、採用や計画の確定ではありません 未確定/将来。
次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。
売上・利益・従業員数・研究開発費/設立年/LM10の出荷数、顧客別の採用状況/各顧客製品の売上/SkyWater以外の製造パートナーの社名と生産能力/2次元チップの性能(ポート数、損失、切り替え時間の実測)とOCSの製品化の時期/OCSの顧客・評価先/LM10の保証する動作温度範囲と寿命/各性能値の測定条件/防衛・衛星通信の採用/シリーズBの金額差(US$4,500万と「US$5,900万」)の内訳。
8. この会社は機能性材料で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| LiDARに限らず、「光を電気でプログラムする」汎用の部品として位置づけ直している | 2024年は「3D感知」中心の発表。2025年2月の調達で、データセンターと衛星通信を成長分野に挙げ、2026年3月に「汎用の平らな光学素子(general-purpose flat optics)」の可能性に言及 | 事実(会社の説明)/位置づけは推測 |
| センサー部品メーカーとの組み合わせの枠を増やし、LM10を標準部品にしようとしている | Sony、Adaps、SolidVue、Lattice、ams OSRAM、Seoul Roboticsなどとの発表。ODPで顧客が部品を選べる設計 | 事実(会社の説明)/意図は推測 |
| 資金と顧客を産業用ロボット、アジア・中東に求めている | Amazonの産業向けファンド、ITHCA(オマーン)、Hokuyo・EDOM(アジア)の出資。マスカット・台湾の拠点、E-Photonics(サウジアラビア) | 推測 |
| 製造を外部の半導体工場に任せ、設計と知財で価値を出す | SkyWaterとの共同開発、複数のCMOS・パッケージ会社。特許件数を繰り返し強調(ただし件数は資料により異なる) | 推測 |
「LiDARから、光を電気でプログラムする汎用部品へ位置づけ直している」と読む根拠は、同社の説明の主語が変わっていることです。2023〜2024年のリリースは「LiDARの鏡を置き換える、固体のビーム操作」でした。2025年7月には「光をソフトウェアのように賢く柔軟に制御する、プログラム可能な光学(programmable optics)」という言い方になり、公式サイトのトップも「Programmable Optics」を前面に出しています。2026年3月の2次元チップの発表は、「同じチップで、鏡、レンズ、ビームスプリッターなどの機能を果たせる」と述べています。
ただし、LiDAR事業が縮小したとは公式資料から言えません。2026年4月にも180° LiDARの発表があるためです。これは公式発表の内容から本稿が読み取った解釈です 未確定/将来。
9. 機能性材料分野の提携マッピング
同社の関係の特徴は、センサー部品の会社との「組み合わせ」の広さと、出資者のうちHokuyo・EDOMが顧客・販売パートナーを兼ねることです。事業会社との合弁・買収は確認できません。顧客の製品名は公表されていますが、出荷量・売上は確認できません 未確定/将来。
10. 提供している技術・製品・サービス
以下は、同社と取引先の公式資料の記述です。数値はすべてメーカー公称で、基準・条件が資料に書かれていないものは、そのことを併記しています。他社の製品との優劣を示すものではなく、条件の異なる値は並べて比べられません。原理は、本シリーズの技術解説『メタマテリアルとメタサーフェス』を参照してください 事実。
| 項目 | メーカー公称の値・記述 | 基準・条件(資料の記載) |
|---|---|---|
| LM10(チップ) | 有効面積11×9 mm。波長905・940 nm。ネイティブ視野160°、拡大光学で180°超。VCSELと端面発光レーザーの両方に対応。iToF・dToFの両方式に対応 | ネイティブ視野の定義、出力・損失の記載なし |
| 走査の速さ | 「機械の慣性がないため、視野内のどんなパターンもマイクロ秒の単位で作れる」(技術ページ) | 「マイクロ秒」が何の切り替えかの定義、測定条件の記載なし |
| M30の開発キット | 最大範囲25 m(反射率85%・環境光10 klux)、10 m(反射率10%・100 klux)。視野120°(固定)×90°(操作)。10 Hz。消費電力8 W。55×35×25 mm。動作温度−20〜+70 ℃。クラス1のアイセーフ | ソフトウェア設定で変わると注記。同社の「M30 Reference Design」のページは「10 mを超える」と記載で、開発キットのページの「25 m」と表記が異なる |
| NM120の開発キット | dToF。256×192画素(Adaps ADS6311)。フルフレーム30 Hz、関心領域で900 Hz。レンジクラス72 m(反射率10%・100 kluxで32 m)。視野120°×90°。消費電力17 W未満 | 視野・関心領域はソフトウェア設定で変わる |
| Hokuyo YLM-10LX(顧客製品) | Hokuyo自身の仕様:検出距離0.3〜10 m(反射率10%)、1〜15 m(反射率90%)、視野110°(水平)×80°(垂直)、フレーム2〜60 Hz、25 W以下 | Hokuyoのページの条件・脚注に従う。ここはHokuyoの公称値 |
| NAMUGA Stella/Stella-2(顧客製品) | Stella:25 m、10 Hz、120°×90°。Stella-2:80 m、20 Hz。開発期間を18か月から3〜6か月へ短縮と説明 | 発表(2024年12月)の記述。測定条件の記載なし |
| 180° dToF(LM10+Adaps) | 水平180°、垂直最大140°、30 FPS、範囲は最大50 m、関心領域で最大900 Hz | 2026年4月の発表。参照設計の段階で、測定条件の記載なし |
| OCS(設計目標) | 切り替え50 µs、挿入損失1〜2 dB(ポート数によらないと説明)、256×256が4×3×2 cm³、1万×1万が3RU | 2次元チップは2026年3月に実証した段階。OCSの実測値は確認できなかった |
(1) 何でできているか:CMOSのチップ上のメタサーフェスと、液晶。公式の技術ページは「CMOSチップで機械部品がない」「光の波長より小さな構造」と説明し、OCSのページは「CMOSの製造と、液晶(LCOS)の組み立て」と書きます。取引先のHokuyoのページは「液晶による偏向(LCM)」と書いています。つまり、メタサーフェスの共振の状態を、液晶の状態を電気で変えて切り替える構造と読めます(解説。ナノ構造の材料、液晶の種類・厚みは公開されていません)。
(2) 偏光の扱いが設計の前提と読める。開発キットのページは、送信モジュールが「VCSEL、コリメート光学、偏光光学」を含むと書いています。液晶を使う素子は、特定の偏光の光に対して動作するものが一般的なため(解説)、レーザーの偏光をそろえる部品が必要になっている、と推測できます。同社の資料は、この点を直接には説明していません。
(3) 速さと温度は、液晶のトレードオフ。液晶の応答は一般にミリ秒級とされますが(解説)、同社は「マイクロ秒」「50 µs」と書き、その条件は書いていません。また、液晶は温度で粘度や配向が変わるため、動作温度が設計の論点になります。技術ページは「車載の温度範囲に適する」と書きますが、M30の開発キットの動作温度は−20〜+70 ℃で、LM10単体の保証温度範囲は公式資料から確認できません。
(4) 数値の読み方。範囲(25 m、80 m、50 m)は、反射率、環境光、レーザー出力、受光センサーによって変わり、同社自身も「システムの性能はレーザー出力、光学の視野、センサーで決まる」と書いています。表の値は互いに同じ条件のものではありません。他社の方式との優劣の判断は、本稿では行いません。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 財務の不透明さ | 売上・利益・手元資金が公式資料にない。調達額の表記も「US$4,500万」と「US$5,900万」で異なり、内訳は確認できない。本稿は財務の健全性を評価できない | 確認できず |
| 出荷量・売上の見えにくさ | LM10の出荷数、顧客別の採用は非公表。Hokuyo・EDOMは出資者であり顧客・販売パートナーでもあるため、需要の独立性は公式資料から判断できない | 確認できず/推測 |
| 製造の依存 | 量産認定を公表しているのはSkyWaterのみ。他の製造パートナーの社名・能力は書かれていない。液晶を使う素子の組み立てが、どこで、どの規模かも確認できない | 確認できず |
| 新規分野(OCS)の実証段階 | 2次元チップは2026年3月に実証を発表した段階で、ポート数・損失・切り替え時間の実測は確認できない。「1万×1万」は設計目標。データセンター向けの顧客・評価先は書かれていない | 未確定/将来 |
| 主張・数値の不一致 | 特許件数が資料により「100件超」「160件超」「200件超」と異なる。M30の範囲が「10 m超」と「25 m超」と書かれた資料がある。取引先の公称値と同社の数値の条件は同じではない | 事実(資料間の不一致) |
| 競合技術・代替 | 機械式、MEMS、光フェーズドアレイなど他の方式が併存する。メタサーフェス+液晶の優位は同社の説明で、本稿は比較しない。市場規模の推計も採用しない | 確認できず |
| 地域・政策への依存 | オマーン、サウジアラビア、台湾への展開が公表されている。個別の規制・補助・輸出管理との関係は、公式資料に書かれておらず、本稿は確認していない | 確認できず |
12. 用語集
- LCM(Light Control Metasurface)
- Lumotiveのチップ。メタサーフェスの面で、光の向きや形を電気的に変える。
- ビーム操作(ビームフォーミング)
- 光やレーザーのビームの向き・形・位置を変えること。LiDARでは、視野の中を走査する。
- LiDAR
- レーザー光で距離を測り、周囲の3次元の点の集まり(点群)を作るセンサー。
- iToF/dToF
- 光が戻る時間を、位相のずれから間接的に測る方式(iToF)と、時間を直接数える方式(dToF)。
- VCSEL
- 面発光レーザー。小型で、LiDARや顔認証の光源に使われる。
- LCOS
- シリコンの基板の上に液晶を載せたデバイス。画素ごとに光の位相や偏光を電気で変える。
- 光回路スイッチ(OCS)
- 光信号を電気に変えず、光のまま、入力と出力のポートをつなぎ替えるスイッチ。
- MEMS
- 微小な機械部品(ここでは傾く鏡)を半導体の技術で作った素子。
- メーカー公称
- メーカー自身が示す説明や性能値。測定条件と版が一緒でないと、他の製品と比べられない。

13. 出典
- Lumotive 公式サイト(トップページ。ロゴ画像の取得元)。 https://lumotive.com/
- Lumotive 公式サイト「About」。会社説明、経営陣、特許件数、受賞。 https://lumotive.com/about/
- Lumotive 公式サイト「Technology」。LCMの特徴(視野、波長、特許件数)。 https://lumotive.com/technology/
- Lumotive 公式サイト「LM10」。主な仕様。 https://lumotive.com/products/lm10/
- Lumotive 公式サイト「M30 Development Kit」。仕様表(メーカー公称)。 https://lumotive.com/products/m30-dev/
- Lumotive 公式サイト「NM120 Development Kit」。仕様(メーカー公称)。 https://lumotive.com/products/nm120-development-kit/
- Lumotive 公式サイト「LCM Development & Evaluation Kit」。キットの構成(送信モジュールに偏光光学を含む)。 https://lumotive.com/products/lek/
- Lumotive 公式サイト「M30 Reference Design」。 https://lumotive.com/products/m30-ref/
- Lumotive 公式サイト「Optical Circuit Switching & Communications」。OCSの設計目標、液晶LCOSの記載。 https://lumotive.com/optical-circuit-switching-communications/
- Lumotive 公式サイト「Defense」。防衛・光通信の用途。 https://lumotive.com/defense/
- SkyWater Technology・Lumotive SkyWater and Lumotive Announce Qualification and Production Start for World’s First Commercially Available Optical Beamforming Chip(2024年5月1日の共同発表)。 https://lumotive.com/press-releases/skywater-and-lumotive-announce-qualification-and-production-start-for-worlds-first-commercially-available-optical-beamforming-chip/
- Lumotive・Hokuyo Lumotive and Hokuyo Announce Commercial Release of World’s First 3D Lidar Sensor With True Solid-State Beam Steering(2024年5月22日)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotive-and-hokuyo-announce-commercial-release-of-worlds-first-3d-lidar-sensor-with-true-solid-state-beam-steering/
- Hokuyo Automatic Co., Ltd. YLM-10LX(3D LiDARの製品ページ。仕様、液晶偏向の記載)。 https://www.hokuyo-aut.jp/search/single.php?serial=250
- Lumotive Lumotive Extends Global Reach, Announces New Sales and Distribution Partners Worldwide(2023年11月30日)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotive-extends-global-reach-announces-new-sales-and-distribution-partners-worldwide/
- Lumotive Lumotive Partners with Leading Electronics Distributor EDOM to Accelerate Solid-State Lidar Adoption in Taiwan(2024年4月16日)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotive-partners-with-leading-electronics-distributor-edom-to-accelerate-solid-state-lidar-adoption-in-taiwan/
- Lumotive Lumotive Unveils Groundbreaking Open Development Platform (ODP)(2024年9月12日)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotive-unveils-groundbreaking-open-development-platform-odp-moves-to-democratize-the-future-of-3d-sensing/
- Lumotive Lumotive Unveils MD41 Development Kit(2024年11月20日。Sonyのセンサーを統合)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotive-unveils-md41-development-kit-elevating-3d-sensing-with-enhanced-flexibility-and-efficiency/
- Lumotive・Lattice Semiconductor Lumotive and Lattice Semiconductor to Demo Chip-Based Beam Steering for 3D Sensing at DevCon 2024(2024年12月5日)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotive-and-lattice-semiconductor-to-demo-chip-based-beam-steering-for-3d-sensing-at-devcon-2024/
- MulticoreWare・Lumotive MulticoreWare and Lumotive Announce Collaboration Designed to Advance 3D Sensing and LiDAR Technology(2024年12月17日)。 https://lumotive.com/press-releases/multicoreware-and-lumotive-announce-collaboration-designed-to-advance-3d-sensing-and-lidar-technology/
- Lumotive・NAMUGA NAMUGA Launches Next-Generation 3D Sensing Solutions, Powered by Lumotive(2024年12月18日)。 https://lumotive.com/press-releases/namuga-launches-next-generation-3d-sensing-solutions-powered-by-lumotive/
- Lumotive E-Photonics Launches Lidar-based 3D Sensing Solutions Powered by Lumotive(2025年2月11日)。 https://lumotive.com/press-releases/e-photonics-launches-lidar-based-3d-sensing-solutions-powered-by-lumotive/
- Lumotive Lumotive Raises $45 Million to Expand Sales of Programmable Optical Semiconductors(2025年2月19日)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotive-raises-45-million-to-expand-sales-of-programmable-optical-semiconductors/
- Lumotive・NAMUGA NAMUGA Unveils Stella-2: Compact, Solid-State Lidar Powered by Lumotive, at Embedded Vision Summit(2025年5月21日)。 https://lumotive.com/press-releases/namuga-unveils-stella-2-compact-solid-state-lidar-powered-by-lumotive-at-embedded-vision-summit/
- SolidVue・Lumotive SolidVue and Lumotive Collaborate to Advance Next-Generation Lidar Systems(2025年7月14日)。 https://lumotive.com/press-releases/solidvue-and-lumotive-collaborate-to-advance-next-generation-lidar-systems/
- Lumotive Amazon and ITHCA Invest in Lumotive(2025年7月22日)。 https://lumotive.com/press-releases/amazon-and-ithca-invest-in-lumotive/
- Lumotive Lumotive Expands Global Footprint and Adds Key Leaders Amid Growing Demand for Programmable Optical Semiconductors(2025年12月9日)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotive-expands-global-footprint-and-adds-key-leaders-amid-growing-demand-for-programmable-optical-semiconductors/
- Lumotive Lumotive Creates World’s First 2D Photonic Beamforming Semiconductor(2026年3月19日)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotive-creates-worlds-first-2d-photonic-beamforming-semiconductor/
- Lumotive Lumotive’s LCM Optical Semiconductor Platform Enables First Solid-State 180° dTOF LiDAR at 30 FPS(2026年4月9日)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotives-lcm-optical-semiconductor-platform-enables-first-solid-state-180-dtof-lidar-at-30-fps/
- Lumotive Lumotive Introduces Transformative Advanced 3D Sensing Utilizing Sony’s Sensors at CES 2025(2025年1月7日)。 https://lumotive.com/press-releases/lumotive-introduces-transformative-advanced-3d-sensing-utilizing-sonys-sensors-at-ces-2025/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月10日/Troy Technical
本稿の内容は、Lumotiveの公式サイト・プレスリリース、SkyWaterとの共同発表、Hokuyoの製品ページに基づきます。調査会社の市場推計や報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。製品の性能値は同社・取引先の公称で、測定条件が異なる他の値とは比較できません。会社の計画・目標は未確定で、実現を保証するものではありません。本稿は、機器の選定、投資・調達の判断について、読者個人に助言するものではありません。