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フラウンホーファー研究機構 機関解説

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INSTITUTION PROFILE / 機能性材料

フラウンホーファー研究機構
― ドイツ発、企業の依頼で材料を研究する応用研究の拠点網

Fraunhofer-Gesellschaft(フラウンホーファー研究機構)は、ドイツの応用研究機関です。 ほかの公的研究機関と違い、予算の大部分を企業の受託研究と公的プロジェクトの獲得でまかなう仕組みで、 材料の分野でも、企業の課題を研究で解く役割を担います。 規制や標準を決める機関でも、研究資金を配る機関でもありません。 本稿では、Fraunhoferが機能性材料にどこまで影響を持つのかに絞って整理します。

構成:Fraunhofer-Gesellschaftの公式サイト(概要、財務、職員の各ページ)、材料・部品グループと各研究所のページ、同機構の2022年のリリース、EUR-Lexの規則(EU)2024/1252を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

企業の課題に合わせて材料を試作・評価する応用研究の場面です
概念画像(ImageGenで生成)。企業の課題に合わせて材料を試作・評価する応用研究の場面です。特定の受託案件や実施設ではありません。
この記事でわかること
  1. 30秒でわかるFraunhofer
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. 機能性材料で何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. 関わっている企業・組織
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるFraunhofer

正式名称Fraunhofer-Gesellschaftドイツの非営利の応用研究機関(公式ページの表記は recognized nonprofit)
国ドイツ国内の74の研究所・独立した研究部門で活動する(2026年4月更新の公式ページ)
機関の種類応用研究機関(非営利)企業の受託研究と公的プロジェクトが予算の中心。規制・標準・研究資金の配分は行わない
設立1949年非営利の組織として設立
人数規模30,898名2025年12月31日時点の職員数。前年より979名(3.1%)減
予算規模36億ユーロ2025年の事業規模。うち受託研究は32億ユーロ(88%)
機能性材料への関与の形受託研究・共同研究材料・部品グループ(21研究所)と、循環材料・プログラマブル材料などの拠点
影響が及ぶ範囲ドイツ中心/取引先は国際産業収入のうち海外分の売上は2025年に2.36億ユーロ
まず押さえるべき1点

Fraunhoferは「お金を配る側」ではなく「お金を取って研究する側」です。 公式ページによると、基盤資金(連邦と州の拠出)は受託研究予算の3分の1以内で、 残りの3分の2以上を民間企業の契約と公的プロジェクトの獲得でまかなう仕組みです 事実。 2025年の産業界からの収入は9.66億ユーロでした 事実。 つまり機能性材料への影響力は、権限ではなく、企業が実際に依頼するという経路で生まれます。 どの材料を研究するかは、依頼する企業や公的プロジェクトの募集に左右されます。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

機能性材料の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では材料を作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

機能性材料を動かす「機関」の4つの型 機関は自分では材料を作らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究・実証に予算を配る 法案・供給政策・化学物質規制 試験方法・材料規格 研究拠点・統計・見通し DOE/NSF/欧州委員会 欧州委員会/経済産業省 ISO/IEC USGS/NIMS/Fraunhofer 何を研究させるか 何を売ってよいか どう測り、どう比べるか 何を知見として示すか 届く範囲=自域の予算 届く範囲=自域の市場 届く範囲=採用する側 届く範囲=参加者・読者 Fraunhoferは「場をつくる」型の研究拠点。企業の依頼で研究するが、規制・標準・資金配分の権限はない 同じ機能性材料でも、どの型の機関かによって影響の届き方がまったく違う
図1 機能性材料に関わる機関の4つの型と、Fraunhoferの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う機関から例示しています 本稿の計算。Fraunhoferは研究拠点として「場をつくる」型に置いています。研究資金を配る機関ではないため、「資金を出す」型は強調していません。

3. 機能性材料で何をしているか

機能性材料に関わるFraunhoferの仕事は、大きく3つの系統に分かれます 事実。

系統規模・時期中身担い手
企業の受託研究・共同研究2025年の産業収入9.66億ユーロ(契約7.68億、ライセンス1.98億)産業収入の48.0%は製造業の顧客。公式ページは、同機構が特許出願でドイツと欧州で最も活発な出願人の一つと説明する。材料は全分野に共通の基盤で、材料だけの売上は公表されていない各研究所が顧客と契約
材料・部品グループ
Fraunhofer Group for Materials and Components
21研究所が参加(事務局はダルムシュタット)基礎的な材料科学から、材料を使ったシステムの解決策まで、産業の価値連鎖全体をカバーする。グループは21研究所の専門性を束ねる枠組み参加する21研究所
研究拠点の例
循環材料とプログラマブル材料
IWKS(ハーナウほか)。CPM(5つの中心研究所)IWKS:循環型経済のための材料技術。重要原材料の代替や、Nd-Fe-B永久磁石を合金のままリサイクルする方法(水素処理、溶解と急冷)を研究する。CPM(プログラマブル材料):IWM・IAP・IWU・ICT・IBPが、形・光学特性・力学特性、熱の伝わり方などを「プログラム」できる材料を研究する研究所の連携(クラスター)
素材技術者の視点:研究所の「実証」と「実用化」は別

IWKSのFUNMAG事業は、リサイクルした磁石で電動自転車・電動スクーターなどのモーターを動かし、出力を落とさず使えることを示したと、同機構は2022年のリリースで説明しています 事実。 同じリリースは、機能的な磁石リサイクルの方法は開発されたが実際には使われておらず、磁石は鉄スクラップと一緒に溶かされ続けているとも書いています。 また、その事業はHessen Agenturの助成を受けたものです。 永久磁石とレアアース、レアアースフリー磁石の技術解説で触れる「回収して再び磁石にする」議論と、実際に市場で使われる段階の間には距離があります。 研究所の実証の結果が、そのまま量産品の仕様になるわけではありません。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点Fraunhoferが持っているもの持っていないもの
権限企業や公的機関から研究を請け負い、成果を特許やライセンスで企業に移す実務。2025年のライセンス収入は1.98億ユーロ。基盤資金を使った、企業の将来課題(5〜10年先)に向けた研究規制や標準を決める権限(公式資料に、その権限を持つとする記載は確認できなかった)。研究資金を他者に配る権限(連邦と州の基盤資金や公的プロジェクトを受け取る側)
地域ドイツの74研究所・研究部門が中心。顧客は国際的で、海外の売上は2025年に2.36億ユーロ(EU域内0.88億、域外1.48億)。最大の市場は米国0.40億、スイス0.32億、日本0.21億ユーロ他国の産業政策や規制を動かす権限。海外の売上2.36億ユーロは事業規模36億ユーロの約7%(本稿の計算)で、収入の大半は国内
期間基盤資金を使った研究は5〜10年先の課題が対象。事業規模は36億ユーロ前後(2025年は前年と同水準)特定の材料を長期に研究し続けることの保証(公的プロジェクトや企業の依頼が減れば縮む)
規模職員30,898名、事業規模36億ユーロ(2025年)。外部から獲得した収入の割合は71.1%機能性材料だけの人数・予算は公表されていない
数字の読み方の注意

36億ユーロ、30,898名、9.66億ユーロはいずれも全分野の合計で、機能性材料だけの数字ではありません 事実。 なお、海外の売上2.36億ユーロを事業規模36億ユーロで割ると約7%になります 本稿の計算。 どの研究所のどの案件が材料の実用化につながったかを、Fraunhofer全体の数字から読み取ることはできません 未確定/将来。

5. 関わっている企業・組織

この章では、一次情報に記載のある「資金の入口と、材料分野の研究拠点」だけを図にしています。Fraunhoferの資料で関係を確認できた本シリーズの企業はありません(確認できなかった)。

Fraunhoferの資金はどこから来て、材料分野はどこで動くか 2025年の公表値(財務ページ・概要ページ)と、材料・部品グループ、IWKS、CPMの各ページによる 連邦と州の基盤資金 連邦と州が9対1で負担 受託研究予算の3分の1以内 産業界の受託・ライセンス 9.66億ユーロ(2025年) 契約7.68億+ライセンス1.98億 公的資金の研究プロジェクト 12.54億ユーロ(2025年) 連邦7.55億・州1.86億・EU1.57億 Fraunhofer-Gesellschaft 74の研究所・研究部門 職員30,898名(2025年末) 事業規模 36億ユーロ うち受託研究 32億ユーロ 外部から獲得した収入は71.1% 規制・標準・資金配分の権限なし 材料・部品グループ 21研究所の専門性を束ねる 事務局はダルムシュタット IWKS(ハーナウ・アルツェナウ) 循環材料・重要原材料の代替 磁石合金のリサイクル プログラマブル材料(CPM) IWM・IAP・IWU・ICT・IBP 形・熱・力学特性を設計する 届く先 産業収入の48.0%は製造業の顧客。海外の売上は2.36億ユーロ(EU域内0.88億、域外1.48億) 最大の市場は米国0.40億、スイス0.32億、日本0.21億ユーロ 全体の数字は全分野の合計。材料分野だけの金額は公表されていない
図2 Fraunhoferの資金の入口と、材料分野の研究拠点。出典:Fraunhoferの財務ページ・概要ページ・職員ページ(2025年の値)、材料・部品グループ、IWKS、CPMの各ページ。図の矢印は資金と研究の流れを本稿が整理したもので、個別の案件の金額ではありません 本稿の計算。
組織役割(一次情報の記載)このシリーズとの関係
連邦研究技術宇宙省(BMFTR)と州政府基盤資金を90対10の割合で拠出。連邦の公的プロジェクト資金は2025年に7.55億ユーロ(前年比11%減)資金の出し手。Fraunhoferは受け取る側
産業界の顧客産業収入の48.0%は製造業。次いで専門・科学・技術サービス業が27.8%本シリーズの企業との個別の関係は確認できなかった
Hessen AgenturIWKSのFUNMAG事業を助成磁石リサイクルの実証事業
EU(欧州委員会)EUからの公的プロジェクト収入は2025年に1.57億ユーロ。EUの重要原材料法は、永久磁石の再生材含有率の開示を求める(第29条)欧州委員会の機関解説を参照。IWKSの研究と規則の主題は重なるが、両者の関係を示す記載は確認できなかった
他の応用研究機関本シリーズでは、物質・材料研究機構(NIMS)や米国エネルギー省(DOE)が別の型の機関それぞれの機関解説を参照。Fraunhoferは資金を配らない点で異なる

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
2025年は、職員が前年より979名(3.1%)減り、連邦の公的プロジェクト収入は11%減った一方、産業収入は11%増えたFraunhoferの職員ページと財務ページ(2025年の値)事実
磁石のリサイクルが実際に量産の工程で使われるかは、2022年のリリース以降の動きを確認できなかった。リリース自体は「まだ実用化されていない」と書いているFraunhofer 2022年のリリース「Magnet recycling pays off」未確定/将来
公的プロジェクト収入が減り、産業収入が増える流れが続くなら、材料分野でも実用化に近い企業案件の比率が高まる2025年の収入構成(連邦プロジェクト収入11%減、産業収入11%増)。1年分の変化で、傾向と言えるかは確認できない推測
EUが永久磁石の再生材含有率の開示を求める(2027年5月24日以降)ため、磁石のリサイクル研究への需要は高まりうる規則(EU)2024/1252 第29条(開示の開始は2027年5月24日か委任法の発効2年後のいずれか遅い日)と、IWKSの磁石リサイクル研究推測

7. 用語集

応用研究
基礎的な発見を、企業が使える技術や製品に近づけるための研究。
基盤資金
連邦と州が研究所の運営のために出す資金。Fraunhoferでは受託研究予算の3分の1以内。
受託研究
企業や公的機関の依頼を受けて行う研究。Fraunhoferの中心の活動。
材料・部品グループ
Fraunhoferの中で、材料と部品に関わる21の研究所が連携する枠組み。
CPM
Fraunhofer Cluster of Excellence Programmable Materials。複数の研究所が、仮想の研究所として共同で研究する枠組み。
IWKS
材料リサイクルと資源戦略の研究所(Fraunhofer Research Institution for Materials Recycling and Resource Strategies)。

8. 出典

  1. Fraunhofer Profile/Structure(74の研究所・独立した研究部門、設立1949年、事業規模36億ユーロ、受託研究32億ユーロ、特許の出願人、2026年4月更新)。 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure.html
  2. Fraunhofer Facts and Figures: Finances(2025年の事業規模、産業収入、公的プロジェクト収入、基盤資金の仕組み、国際収入)。 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure/facts-and-figures/finances.html
  3. Fraunhofer Facts and Figures: Employees(2025年12月31日時点の職員30,898名)。 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure/facts-and-figures/employees.html
  4. Fraunhofer Fraunhofer Group for Materials and Components – Materials(21研究所、事務局の所在地)。 https://www.materials.fraunhofer.de/en.html
  5. Fraunhofer IWKS About us(循環型経済のための材料、拠点はアルツェナウとハーナウ)。 https://www.iwks.fraunhofer.de/en/about-us.html
  6. Fraunhofer IWKS Recycling of permanent magnets(合金のままのリサイクル、水素処理、溶解と急冷)。 https://www.iwks.fraunhofer.de/en/competencies/MagneticMaterials/Recycling.html
  7. Fraunhofer リリース「Magnet recycling pays off」(2022年。FUNMAG事業、Hessen Agenturの助成、まだ実用化されていないとの記述)。 https://www.fraunhofer.de/en/press/research-news/2022/july-2022/magnet-recycling-pays-off.html
  8. Fraunhofer CPM Fraunhofer Cluster of Excellence Programmable Materials(5つの中心研究所、目的、実証機)。 https://cpm.fraunhofer.de/en/fraunhofer-cluster-of-excellence-programmable-materials.html
  9. EUR-Lex Regulation (EU) 2024/1252 第29条(永久磁石の再生材含有率の開示)。 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1252/oj/eng

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
74の研究所・独立した研究部門、1949年設立、非営利、事業規模36億ユーロ、受託研究32億ユーロ(88%)、特許の出願人としての位置づけ事実出典1 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure.html
出典2 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure/facts-and-figures/finances.html
職員30,898名(2025年12月31日時点)、前年より979名(3.1%)減事実出典3 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure/facts-and-figures/employees.html
基盤資金の仕組み(受託研究予算の3分の1以内、連邦と州が90対10)、外部から獲得した収入の割合71.1%事実出典2 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure/facts-and-figures/finances.html
出典1 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure.html
2025年の産業収入9.66億ユーロ(契約7.68億、ライセンス1.98億)、製造業が48.0%・専門科学技術サービスが27.8%事実出典2 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure/facts-and-figures/finances.html
公的プロジェクト収入12.54億ユーロ(連邦7.55億・州1.86億・EU1.57億)、連邦は前年比11%減事実出典2 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure/facts-and-figures/finances.html
海外の売上2.36億ユーロ(EU域内0.88億・域外1.48億)、最大の市場(米国・スイス・日本)事実出典2 https://www.fraunhofer.de/en/about-fraunhofer/profile-structure/facts-and-figures/finances.html
海外の売上が事業規模の約7%という比率本稿の計算本稿による計算(出典2の2.36億ユーロ÷36億ユーロ)
材料・部品グループは21研究所、事務局はダルムシュタット事実出典4 https://www.materials.fraunhofer.de/en.html
IWKSの目的、拠点(アルツェナウとハーナウ)事実出典5 https://www.iwks.fraunhofer.de/en/about-us.html
IWKSの磁石の合金リサイクル(水素処理、溶解と急冷)事実出典6 https://www.iwks.fraunhofer.de/en/competencies/MagneticMaterials/Recycling.html
FUNMAG事業の結果、Hessen Agenturの助成、まだ実用化されていないとの記述事実出典7 https://www.fraunhofer.de/en/press/research-news/2022/july-2022/magnet-recycling-pays-off.html
CPMの中心研究所(IWM・IAP・IWU・ICT・IBP)、目的、実証機事実出典8 https://cpm.fraunhofer.de/en/fraunhofer-cluster-of-excellence-programmable-materials.html
EUの重要原材料法 第29条の開示の要件と開始日事実出典9 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1252/oj/eng
Fraunhoferが規制や標準を決める権限を持つとする記載は、出典にない未確定/将来出典1〜9に該当する記載を確認できなかった。本稿では推定しない
Fraunhoferの資料で関係を確認できた本シリーズの企業が無いこと、材料だけの人数・予算未確定/将来出典1〜9に記載なし。本稿では推計しない
磁石リサイクルが量産の工程で使われるか(2022年のリリース以降)未確定/将来出典7以降の動きを確認できなかった。本稿では推定しない
機関の4つの型の区分、図2の整理本稿の計算本稿による整理
第6章の推測2項目(実用化に近い案件の比率、磁石リサイクル研究への需要)推測出典2・8・9からの本稿の解釈

最終更新:2026年10月10日/Troy Technical
本稿の数値はFraunhofer-Gesellschaftの公式サイト(2025年の公表値)とEUR-Lexに基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。