TECHNOLOGY EXPLAINER
導電性高分子とイオン伝導体
― 電子を運ぶ高分子とイオンを運ぶ高分子、そして「導電率」という一つの数字の読み方
導電性高分子(PEDOT:PSS、ポリアニリン、ポリピロールなど)は、高分子の主鎖に電子(正孔)の通り道をつくった材料です。一方、イオン伝導体(イオン液体、ポリマー電解質、イオンゲル)は、電子ではなくイオンを運ぶ材料です。 どちらも「導電率(S/cm)」で語られますが、何が動いているか(電子かイオンか)、どんな条件で測ったか(膜厚、湿度、温度、周波数)で、数字の意味がまったく変わります。 この記事では、ドーピングと導電性の仕組み、PEDOT:PSS の導電率を上げる処理と、その数字の読み方、安定性(水・酸素・熱)、イオン液体・ポリマー電解質・イオンゲル、固体電解質との関係、有機エレクトロニクス・センサー・アクチュエータ・コンデンサでの使われ方、評価規格の読み方を、一次情報の範囲で整理します。

- 導電性高分子とイオン伝導体(3行でつかむ)
- 導電性高分子とは ― 共役とドーピング
- PEDOT:PSS ― 導電率を上げる処理と、その数字の読み方
- 本稿の計算:導電率と膜厚から、シート抵抗を求める
- ポリアニリンとポリピロール ― 加工性と安定性
- 素材技術者の視点①:水・酸素・熱・電位に、導電性高分子は弱い
- イオン伝導体 ― イオン液体・ポリマー電解質・イオンゲル
- 本稿の計算:電解質の層の面抵抗と、電圧降下
- 素材技術者の視点②:導電率だけでは決まらない
- 固体電解質との関係
- 使われ方 ― 有機エレクトロニクス、センサー、アクチュエータ、コンデンサ
- 導電率の測定条件と、安定性の落とし穴
- 実験室の性能と実装の違い
- 限界と、確認できなかったこと
- 評価・標準の読み方
- 用語集
- 参考資料(一次情報)
- 主張と出典の対応表(監査)
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・予定・研究段階の事項であり、実績が確認できていないもの
このほか、材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。推測は太字で示します。
ここに出てくる導電率・イオン伝導度・安定性の数字は、特定の試料を、特定の膜厚・温度・湿度・周波数で測った研究室の結果、またはメーカー公称です。研究室の最高値(チャンピオンデータ)を、量産品や実使用条件の性能として読まないでください。 メーカーの値は「メーカー公称」と示し、条件の異なる値を並べて優劣をつけません。製品や企業の優劣は論じません。 全固体電池の固体電解質は本シリーズ『全固体電池』分野、PFAS 規制と電解液は『電解液とセパレータ』編、PEDOT:PSS の熱電への応用は『熱電変換材料』編、エレクトロクロミックは『エレクトロクロミック材料とスマートウィンドウ』編で扱います。
1. 導電性高分子とイオン伝導体(3行でつかむ)
- プラスチックが電気を通す:ノーベル財団の2000年の発表(化学賞:Heeger、MacDiarmid、白川)は、高分子が導電性をもつには、炭素原子の間に単結合と二重結合が交互に並び、さらに「ドープ」(電子を取り除く酸化、または導入する還元)が必要だと説明しています事実[参考資料1]
- 「導電率」には二種類ある:電子(正孔)を運ぶ導電性高分子と、イオンを運ぶイオン伝導体があり、PEDOT:PSS のように両方を運ぶ「混合伝導体」もあります。水を含むと、正孔とイオンの両方を効率よく運べる、と Rivnay らは述べています事実[参考資料13]
- 数字は条件で桁が変わる:PEDOT:PSS の導電率は、成膜直後は1 S/cm 程度以下でも、極性溶媒・強酸などの処理で2〜3桁上がり、最高で約4,000 S/cm とされます。ただし、膜厚・湿度・処理の有無で値が大きく動き、湿気で膨潤し、水溶液は強い酸性(pH 1)です事実[参考資料12]
導電性高分子は「電子と、ドーパントと、水」の三者でできた材料です。導電率は、高分子の主鎖だけでなく、ドーパント(PSS など)の量・水の含み方・膜の結晶性で決まり、環境が変われば値が動きます。 イオン伝導体では、導電率に加えて、どのイオンが動くか(輸率)、機械的強度、電位窓が同じくらい大切です。 数字は、膜厚・温度・湿度・周波数・測定法とセットで読みます。
2. 導電性高分子とは ― 共役とドーピング
ノーベル財団の発表によると、高分子が電流を通すには、炭素原子の間で単結合と二重結合が交互に並ぶ(共役)こと、さらに「ドープ」されて、電子が取り除かれるか(酸化)導入されるか(還元)して、「穴」や余分な電子が分子に沿って動けるようになることが必要です。Heeger、MacDiarmid、白川は1970年代の終わりにこの発見をし、導電性プラスチックは、写真フィルムの帯電防止、コンピュータ画面の電磁波シールド、「スマート」ウィンドウなどに使われている、または開発されていると述べています事実[参考資料1]。 Chiang らは、ドープしたポリアセチレンでは、導電率を11桁にわたって系統的かつ連続的に変えられ、ドーパント濃度が1%付近で金属-絶縁体転移がある、と報告しました事実[参考資料2]。 Shirakawa らは、ポリアセチレンのハロゲン誘導体(ドープした)の合成を1977年に報告しています(題名による)事実[参考資料3]。
Le らの総説は、導電性高分子が、従来の半導体と金属の両方に似た電気的・電気化学的性質をもち、穏やかな合成・加工の条件、化学構造の多様性、調整できる導電率、構造の柔軟性を特徴とすると述べています事実[参考資料5]。 導電率は、ドーパントの量で絶縁体から導体までの広い範囲で変わるので、論文の数字は、ドーピングの程度とセットで読みます(本稿の解説)。
3. PEDOT:PSS ― 導電率を上げる処理と、その数字の読み方
PEDOT:PSS は、導電性高分子 PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))が、ポリスチレンスルホン酸(PSS)のポリアニオンと複合した、水に分散する材料です。Kayser と Lipomi は、PEDOT:PSS を、高い導電率、可視光の高い透過、水での加工性、柔軟性をもつ、最もよく知られた有機導体と述べ、一方で伸びは約10%までだとしています事実[参考資料14]。Shi らの総説は、PEDOT:PSS を、成膜性が良く、透明性が高く、導電率を調整でき、熱安定性に優れた、最も注目される導電性高分子とし、導電率を上げる物理的・化学的な方法を、機構とあわせて整理しています事実[参考資料11]。 Rivnay らは、PEDOT:PSS の分散液を、PSS が豊富な殻に囲まれた PEDOT が豊富な粒子(ゲル状)で構成されると説明し、膜はPEDOT:PSS が豊富なコアと、PSS が豊富なマトリックスからなる、と述べています事実[参考資料13]。

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導電率を上げる処理の例を、各論文の値で示します(条件は異なります)。
| 処理・報告 | 報告された値 | 条件・注意 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 成膜直後(無処理) | 1 S/cm 以下 | 総説の記述。変性後は2〜3桁向上し、最良の値は約4,000 S/cm とされる | Fan らの総説[12]事実 |
| 希硫酸処理 | 0.3 → 3,065 S/cm。シート抵抗39 Ω/sq、550 nm の透過率は約80% | Xia らの報告。ITO に匹敵する導電率と透明性があると主張 | Xia ら[9]事実 |
| 濃硫酸処理(溶液法の結晶化) | 4,380 S/cmのナノ繊維。シート抵抗46 Ω/sq、透過率90% | Kim らの報告。構造が整って密に詰まった PEDOT:PSS ナノ繊維になる、と説明 | Kim ら[10]事実 |
| メーカー公称(Clevios) | 導電率は最大1,000 S/cm、透過率(Y)は膜厚100 nm で最大90% | メーカー公称。製品ページは、測定の条件(処理、膜厚、日付)を示していない | Heraeus Epurio[15]事実 |
| 共溶媒の増量(EG) | 電子の導電率は上がるが、K+ イオンの移動度は 2.2×10−3 から 1.3×10−3 cm²/(V·s)に低下(EG 0 → 50 vol%) | Rivnay らの報告。電子とイオンの輸送が、逆向きに変わる | Rivnay ら[13]事実 |
導電率は、膜厚・測定法・処理で値が変わります。ここで並べた値は、条件が異なる研究室の結果とメーカー公称で、優劣を示すものではありません。強酸(濃硫酸など)を使う処理は、基板・装置・安全面の制約があります(本稿の解説)。
4. 本稿の計算:導電率と膜厚から、シート抵抗を求める
透明電極などの薄膜では、導電率(σ)より、シート抵抗(Rs)が実用の指標です。Fan らの総説は、van der Pauw 法で Rs と σ を求める関係を示しており、σ = 1/(Rs·t)(t は膜厚)です事実[参考資料12]。 この式から、膜厚100 nm(=1×10−5 cm)を仮定すると、σ=1 S/cm で約100,000 Ω/sq、10 S/cm で約10,000 Ω/sq、100 S/cm で約1,000 Ω/sq、1,000 S/cm で約100 Ω/sq、4,380 S/cm で約23 Ω/sq です本稿の計算。 同じ式を、報告の値に逆に当てはめると、Xia らの σ=3,065 S/cm・Rs=39 Ω/sq からは膜厚が約84 nm、Kim らの σ=4,380 S/cm・Rs=46 Ω/sq からは約50 nm と求まり、いずれも透明電極として妥当な薄さです本稿の計算(この膜厚は、論文の記載ではなく、本稿が逆算した値です)。
5. ポリアニリンとポリピロール ― 加工性と安定性
ポリアニリン(PANI):Stejskal と Gilbert の IUPAC 技術報告は、5か国の8人が同じ手順(塩酸アニリンを水中、室温で過硫酸アンモニウムで酸化)でアニリンを重合し、収率はすべて90%を超え、塩酸塩の形のポリアニリンの導電率は4.4 ± 1.7 S/cm(59試料の平均、室温)だったと報告しています。対応する塩基の形の導電率の平均は1.4×10−8 S/cmで、ドープの有無で約8桁違います。保存中には導電率が下がり、1年を超える保存で約10%の低下、粉末の方が圧縮試料よりも劣化が大きいと述べています事実[参考資料4]。 ポリピロール(PPy):Ansari の総説は、ポリピロールの調製、評価、熱的・環境的な安定性、応用を整理し、電気的・電気化学的・熱的・環境的な安定性に影響する因子をまとめています事実[参考資料6]。
どちらも、成形加工のしにくさ(不溶・不融になりやすい)と、環境での劣化が課題とされてきました(本稿の解説)。PEDOT:PSS が広く使われる理由の一つは、水に分散でき、塗って成膜できることです。Kayser と Lipomi も、PEDOT:PSS を「水で加工できる」と述べています[参考資料14]。
6. 素材技術者の視点①:水・酸素・熱・電位に、導電性高分子は弱い
導電性高分子の導電性は、主鎖の正電荷(カルボカチオン)と、それを安定化する対イオン(ドーパント)の組で成り立っています。Sethumadhavan らは、PEDOT が1 mM の塩の水溶液にさらされると、陰イオンの種類によって、PEDOT を酸化してドープする場合と、カルボカチオンの SN1 加水分解で水酸化 PEDOT をつくる場合の二つに分かれ、その境が、陰イオンの共役酸の pKa で約6.4だと報告しています。水環境でドープした導電性高分子を使うこと(センサー、蓄エネルギー、生体デバイス)に関わる、と述べています事実[参考資料8]。
PEDOT:PSS の弱点:Fan らの総説は、PEDOT:PSS の水分散液はpH 1 の酸性で、PSS が他の部材に拡散して有害な反応を起こす可能性があること、PSS の吸湿性のために膜が空気中の水分で膨潤し、構造が不安定になること、成膜直後の膜は熱と湿気に対する安定性が低いことを述べています。熱劣化の機構として Choulis らの報告を引き、PEDOT オリゴマーの正孔ポーラロンの移動度が上がり、PEDOT と PSS のイオン結合が離れる、と紹介しています。一方、強酸で処理した膜は、PSS の大量の除去によると考えられ、高温(約160 °C)でも導電率に目立つ劣化がなかったとされています事実[参考資料12]。
過酸化(オーバーオキシデーション):Holze の総説は、導電性高分子が、強い酸化条件や非常に正の電位にさらされると、分子構造と材料の性質が大きく変わり(過酸化)、多くの場合、材料とデバイスの劣化の原因になる、と述べています。しかも、可逆な酸化還元反応を使う電気化学的なエネルギー変換やエレクトロクロミズムの条件に近い、低い電位でも、遅い速度で進みうるとしています事実[参考資料7]。
解説:導電性高分子の寿命は、「どの水」「どの電位」「どの温度」「どの光」で使うかで決まります。同じ材料でも、乾いた電子部品の中(コンデンサ、帯電防止)と、水と電位をかける環境(生体電極、エレクトロクロミック)では、劣化の主な原因が違います。
7. イオン伝導体 ― イオン液体・ポリマー電解質・イオンゲル
イオン伝導体は、電子ではなくイオンが動いて電気を運ぶ材料です。Hallinan と Balsara の総説は、電池、燃料電池、水の脱塩などの用途でのポリマー電解質について、均一な電解質を五つの型(I:古典的な液体電解質、II:ゲル電解質、III:乾いたポリマー電解質、IV:乾いた単一イオン伝導ポリマー電解質、V:溶媒和された単一イオン伝導ポリマー電解質)に整理しています。ポリマー電解質の力学的性質をイオン伝導度から切り離すことが望ましく、その一つの方法が、一方の相がイオンを運び、もう一方が剛性を与える、ミクロ相分離ポリマーだと述べています事実[参考資料18]。
イオン液体
Armand らは、将来の電気化学の課題のためのイオン液体材料を総説しています(題名による)事実[参考資料16]。MacFarlane らの総説は、イオン液体は、低い揮発性、高い電気化学的・熱的な安定性、イオン伝導度をもつ陽イオンと陰イオンの組み合わせで、電池、スーパーキャパシタ、アクチュエータ、色素増感太陽電池、熱電気化学セルなどの電解質になりうると述べています事実[参考資料17]。 イオン液体の陰イオンのうち、TFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)のようなフッ素を含む構造は、EU の PFAS 制限案の定義との関係の整理が必要です。この整理は、本シリーズ『電解液とセパレータ』編にあります。
ポリマー電解質(PEO 系)
ポリエチレンオキシド(PEO)は、リチウム塩を溶かす代表的なホストです。Arya と Sharma の総説は、PEO は室温で約70〜85%が結晶の半結晶性高分子で、ガラス転移温度は約−60 °C、融点は約65 °C、イオンの移動は主に非晶質の領域で、ガラス転移温度より上で、鎖のセグメント運動によって起こると述べています事実[参考資料19]。同じ総説は、PEO にリチウム塩とイオン液体を加えた研究の例として、PEO+20 wt% LiTFSI の室温の導電率2.50×10−6 S/cm が、イオン液体2.5 wt% で1.43×10−5 S/cm、12.5 wt% で2.08×10−4 S/cm に上がった結果を紹介しています事実(一つの研究の例で、PEO 系の代表値ではありません)[参考資料19]。 Timachova らは、PEO 中の LiTFSI について、パルス磁場勾配 NMR で Li+ と TFSI− の自己拡散係数を測り、PEO の分子量と塩の濃度の広い範囲で、陽イオンの輸率を決められることを示しました。塩は完全に解離している、と述べています事実[参考資料24]。
イオンゲル
Susan らは、イオン液体(EMITFSI)の中で、メタクリル酸メチルを in situ でラジカル重合してつくるイオンゲル(自立し、柔軟で透明な膜)を報告しました。イオン伝導度は、温度依存が VTF 式に従い、常温で10−2 S/cm に近い値に達し、陽イオンの輸率は EMITFSI の濃度が低いほど大きいと述べています事実[参考資料20]。Lee らは、イオン液体と三元ブロック共重合体のイオンゲルをゲート絶縁層に使った高分子薄膜トランジスタを報告し、ゲートの容量は10 Hz で最大40 µF/cm²、1 kHz で2 µF/cm²、分極の応答は従来の固体ポリマー電解質より速いと述べています事実[参考資料21]。

8. 本稿の計算:電解質の層の面抵抗と、電圧降下
電池の電解質の層では、イオン伝導度(σ)と厚み(L)から、面積あたりの抵抗(面抵抗)が「L÷σ」で決まります。厚み20 µm(=2×10−3 cm)の層なら、σ=10−2 S/cm(イオンゲルの報告の常温の値に近い)で約0.2 Ω·cm²、10−3 S/cm で約2 Ω·cm²、10−4 S/cm で約20 Ω·cm²、10−5 S/cm で約200 Ω·cm² です本稿の計算。 面積容量3 mAh/cm² の電極を1Cで放電する(電流3 mA/cm²)と仮定すると、層の抵抗だけによる電圧降下は、それぞれ約0.6 mV、約6 mV、約60 mV、約0.6 V です本稿の計算(濃度分極、界面の抵抗、陽イオンの輸率は含みません)。
9. 素材技術者の視点②:導電率だけでは決まらない
輸率:電池では、動いてほしいのは Li+ だけですが、塩を溶かした電解質では、陰イオンも動きます。Hallinan と Balsara は、単一イオン伝導ポリマー電解質(IV 型・V 型)を、均一な電解質の別の型として区別しています[参考資料18]。Evans、Vincent、Bruce は、ポリマー電解質の輸率の電気化学的な測定法を提案しています(題名による)[参考資料23]。 同じ導電率の電解質でも、陰イオンが多く動くと、電極の近くに濃度の勾配ができ、実際に使える電流が下がる、という関係があります(本稿の解説)。
伝導度と強度のトレードオフ:PEO 系は、結晶部分では伝導せず(Arya と Sharma)、非晶化させるほど鎖が動き伝導度が上がる一方、柔らかくなります(本稿の解説)。Hallinan と Balsara は、ミクロ相分離で、イオンを運ぶ相と、強度を保つ相を分ける方法を挙げています[参考資料18]。この関係は、本シリーズ『ハイブリッド電解質』編の「ポリマーが抱えるトレードオフ」にもあります。
混合伝導体のトレードオフ:PEDOT:PSS では、共溶媒 EG を増やすと電子の導電率は上がる一方、イオン移動度は下がります(K+ の移動度が EG 0 → 50 vol% で 2.2×10−3 から 1.3×10−3 cm²/(V·s))。Rivnay らは、電子輸送とイオン輸送のバランスがとれた最適な形態が、混合伝導体のデバイスで重要だと述べています事実[参考資料13]。電子を運ぶ道には、結晶性のよい緻密な構造、イオンを運ぶ道には、水を含む開いたヒドロゲル状の構造が有利だ、と同論文は整理しています事実[参考資料13]。
温度依存:Aziz らの総説は、直流導電率と1000/T の関係に、Arrhenius と Vogel–Tammann–Fulcher(VTF)の二つのイオン輸送モデルがあることを整理しています事実[参考資料22]。ある温度の値を、別の温度の値と比べるときは、温度依存の型を確認します。
10. 固体電解質との関係
電池の分野では、イオン伝導体は液体(有機電解液、イオン液体)、ポリマー、ゲル、無機の固体(硫化物、酸化物、ハロゲン化物)のスペクトルとして整理されます。ここでは、無機の固体電解質(硫化物系・酸化物系・ハロゲン化物系・アルジロダイト)の個別の内容には立ち入らず、本シリーズ『全固体電池』分野の各記事(硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質、アルジロダイト、ハイブリッド電解質、界面抵抗)を参照してください。
| 観点 | ポリマー電解質・イオンゲル(この記事) | 無機の固体電解質(『全固体電池』分野) |
|---|---|---|
| 動くもの | 陽イオンと陰イオン(塩を溶かす型)。単一イオン伝導型もある[18] | 主に Li+ が動く、と一般に説明される(本稿の解説) |
| 伝導の機構 | 鎖のセグメント運動(PEO では非晶質の領域)[19]。温度依存は Arrhenius または VTF[22] | 結晶・ガラス中のイオンのホッピング(本稿の解説。詳細は各記事) |
| 力学 | 柔らかい。伝導度と強度のトレードオフがある[18] | 硬く、脆い。粒界・界面の接触が課題(各記事) |
| 加工 | 溶液・塗布・成膜で作れる | 粉体のプレス、焼結、成膜など |
| 両者を組み合わせる発想 | ポリマーの柔らかさと無機の伝導度を組み合わせる「ハイブリッド電解質」は、本シリーズ『ハイブリッド電解質』編で扱います(本稿は詳細に立ち入らない) | |
この表は、本稿の整理です。個々の数値(伝導度、輸率、界面抵抗)の比較は、条件が異なるため、ここでは行いません。
11. 使われ方 ― 有機エレクトロニクス、センサー、アクチュエータ、コンデンサ
- 有機エレクトロニクス・透明電極:Xia らは、硫酸処理した PEDOT:PSS が、ITO に匹敵する導電率と透明性をもち、光電デバイスの透明電極として ITO の代わりになりうると述べています事実[参考資料9]。Fan らの総説は、PEDOT:PSS が、太陽電池、ディスプレイ、トランジスタ、さらにひずみ・圧力・温度・湿度・バイオセンサーなどに使われると整理しています事実[参考資料12]。透明導電膜は、本シリーズ『透明導電膜』編を参照してください
- バイオエレクトロニクスと混合伝導:有機電気化学トランジスタ(OECT)は、電解質から入ったイオンが、導電性高分子の正孔の伝導度を変えるデバイスです。高い相互コンダクタンスから、神経や生体のセンシングに使われ、導電性高分子が電解質にイオンを出す逆の動作は、薬剤の送達に使われている、と Rivnay らは述べています事実[参考資料13]
- アクチュエータ:Hu らの総説は、PEDOT と PEDOT:PSS が、ソフトアクチュエータや人工筋肉の材料基盤になると述べています。PEDOT は他の導電性高分子と比べ、導電率と化学的安定性が高く、密度と動作電圧が低い、としています。一方、PEDOT 系のアクチュエータは初期の段階で、多くの未知と課題があると述べています事実[参考資料25]。動作は、イオンの出入りによる体積変化にもとづきます(本稿の解説)
- 固体電解コンデンサ:Heraeus Epurio は、Clevios PEDOT:PSS の用途として、高性能の電解コンデンサ、柔軟なディスプレイ、帯電防止・導電性の保護・シールド層、印刷エレクトロニクスを挙げています(メーカーの記述)事実[参考資料15]。IEC 60384-25 は、導電性高分子の固体電解質をもつ、固定のアルミ電解の面実装コンデンサの個別規格です事実[参考資料29]
- 帯電防止:ノーベル財団は、導電性プラスチックの用途に、写真フィルムの帯電防止を挙げ事実[参考資料1]、Heraeus Epurio は、帯電防止・静電気放電(ESD)対策のコーティングを用途に挙げています(メーカーの記述)事実[参考資料15]
- 電池・調光窓:ポリマー+イオン液体の窓は、本シリーズ『エレクトロクロミック材料とスマートウィンドウ』編で扱っています。ポリマー電解質の電池への使い方は、上の『ハイブリッド電解質』編を参照してください
12. 導電率の測定条件と、安定性の落とし穴
| 測定するもの | 代表的な手法 | 数字が動く条件・落とし穴 | 根拠・区分 |
|---|---|---|---|
| 膜の電子の導電率 | シート抵抗(4探針・van der Pauw)を測り、膜厚で割る(σ=1/(Rs·t)) | 膜厚の誤差がそのまま導電率の誤差になる。湿度で膜が膨潤し、導電率・形が変わる。処理(溶媒・酸)、成膜法、膜の異方性(面内か面に垂直か)で変わる | [12][35]事実。Saha らは、PEDOT:PSS の粒の形と向きの制御が、膜の異方的な導電率の制御につながると述べる[35] |
| ブロックや成形品の抵抗率 | ISO 3915(導電性プラスチックの抵抗率)、JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法) | ISO 3915 は、抵抗率が106 Ω·cm 未満の材料に適用でき、表面伝導のため厳密には体積抵抗率ではない(影響は通常無視できる)と記載 | [26][30]事実 |
| 中程度の導電材料 | 絶縁体向けの方法は不適。中程度の導電材料向けの別の方法を使う | ASTM D257 は、中程度の導電材料の測定には適さず、D4496 を使うと記載。D4496 は、中程度の導電材料(絶縁体でも良導体でもない)を対象とすると、ANSI Webstore の掲載に記載 | [33][34]事実 |
| イオン伝導度 | 交流インピーダンス分光(EIS)。等価回路で解析し、Arrhenius/VTF で温度依存を整理 | 温度、水分(水の混入が電位窓に影響)、電極の接触、試料の厚み、周波数範囲。比べるときは、温度依存の型も確認 | [22][18]事実 |
| 輸率(陽イオンの割合) | 電気化学的な測定(Bruce–Vincent の方法)、NMR の自己拡散係数 | 分子量、塩の濃度、温度に依存。手法が違うと、同じ試料でも値が一致するとは限らないため、手法を確認する(本稿の解説) | [23][24]事実 |
| 保存中の変化(エージング) | 同じ試料の導電率を時間で追う | PANI は、1年を超える保存で約10%低下し、粉末の方が圧縮試料より変化が大きい。PEDOT:PSS は湿度・熱で劣化 | [4][12]事実 |
13. 実験室の性能と実装の違い
| 観点 | 実験室・メーカー公称で示されたこと | 実装で問われること | 根拠・区分 |
|---|---|---|---|
| 導電率 | 無処理1 S/cm 以下、処理後に最大約4,000 S/cm の報告。メーカー公称は最大1,000 S/cm(条件は示されていない) | 量産で再現できる処理か(強酸、溶媒)、基板と装置への影響、膜厚の均一性 | [12][10][15]事実(メーカー公称を含む) |
| 安定性 | 強酸処理した膜は約160 °C でも導電率に目立つ劣化がないという報告 | 湿度・熱・光・電位のもとで、数年〜数十年 | [12][7]事実/長期は未確定/将来 |
| イオン伝導度 | イオンゲルは常温で10−2 S/cm に近い。PEO 系は室温で10−6〜10−5 S/cm 台の例 | 輸率、機械強度、電位窓、水分、大面積での薄い自立膜の製造 | [20][19][18]事実 |
| アクチュエータ | PEDOT 系は導電率・化学的安定性が高く、動作電圧が低い | PEDOT 系は初期の段階と総説が記述。耐久性・応答・力の定量は確認できない | [25]事実 |
| コンデンサ・帯電防止 | 実用の用途として、メーカーが挙げる | 規格(IEC 60384-25)への適合。個別の製品の性能は確認できない | [15][29]事実 |
14. 限界と、確認できなかったこと
(1) 材料の個別の数値
PEDOT:PSS の導電率、PANI・PPy の導電率、イオン液体・ポリマー電解質の伝導度は、条件(膜厚、湿度、温度、処理、塩・分子量)が異なる論文の値で、本稿は代表値を示していません。PPy の導電率、PEDOT:PSS の量産品の公式のデータシート(導電率、固形分、処理)は、確認できませんでした。
(2) 論文の本文
Fan らの総説(Adv. Sci. 2019)と Rivnay ら(Nat. Commun. 2016)は PubMed Central の公開本文、Arya と Sharma の総説は arXiv の本文を確認しました。Armand らのイオン液体の総説、Shirakawa らの原著、Rivnay らの OECT 総説(Nat. Rev. Mater. 2018)は、要旨を確認できなかったため、題名の範囲でのみ扱うか、引用していません。
(3) 規格の本文と、対応関係
ISO 3915、IEC 62631-3-1・3-2、IEC 60384-25、JIS K 7194、JIS K 0130、JIS C 2139 の本文(有料)は確認していません。JIS と ISO・IEC の対応関係、版の年は、本稿では確認していません。固体のイオン伝導体のイオン伝導度を測る専用の規格は、確認できませんでした。
(4) 安全・規制
導電性高分子・イオン液体の毒性、環境、規制(REACH、PFAS 制限案など)の個別の状況は、本稿では確認していません。PFAS 制限案とイオン液体・電解質塩の関係は、本シリーズ『電解液とセパレータ』編の整理を参照してください。ナノ材料やイオン液体を「安全」または「危険」と一般化することはしません。
(5) 他の応用
熱電変換(本シリーズ『熱電変換材料』編)、有機太陽電池・有機 EL の内部の材料設計、燃料電池のプロトン伝導膜、人工筋肉の製品、バイオ電極の安全性・長期の信頼性は、ここでは扱っていません。
- 導電性高分子は、共役した主鎖にドープして電子(正孔)を運ぶ材料です。PEDOT:PSS の導電率は、成膜直後の1 S/cm 以下から、処理で最大約4,000 S/cm まで報告されます事実
- 導電率から実用の指標へ:膜厚100 nm の仮定で、1,000 S/cm は約100 Ω/sq、4,380 S/cm は約23 Ω/sq です本稿の計算
- 安定性は水・熱・電位の問題です。PEDOT:PSS は吸湿して膨潤し、水溶液は pH 1。PEDOT は塩水中で、陰イオンによってはカルボカチオンが加水分解されます事実
- イオン伝導体は、導電率だけでなく、輸率・強度・温度依存を読みます。厚み20 µm の層で、10−5 S/cm なら約200 Ω·cm²、10−2 S/cm なら約0.2 Ω·cm² です本稿の計算
- 測定法・規格は、対象で分かれます。導電性プラスチックの抵抗率(ISO 3915、JIS K 7194)、絶縁材料の抵抗(IEC 62631-3)、導電性高分子コンデンサ(IEC 60384-25)はありますが、ポリマー電解質のイオン伝導度を測る専用の規格は確認できませんでした事実
15. 評価・標準の読み方
何を測るか:導電性高分子は、膜のシート抵抗と導電率(4探針・van der Pauw)、ブロックや成形品の抵抗率、湿度・温度・時間での変化を測ります。イオン伝導体は、交流インピーダンス分光(EIS)で求めるイオン伝導度、温度依存(Arrhenius/VTF)、陽イオンの輸率(電気化学的な方法、NMR)、電位窓、機械強度を測ります。 導電性高分子・イオン伝導体を名指しして、導電率・イオン伝導度の測り方を決めた ISO・IEC・IEEE の規格は、調べた範囲では、導電性プラスチックの抵抗率(ISO 3915)、絶縁材料の抵抗(IEC 62631-3)、コンデンサ(IEC 60384-25)を除いて、確認できませんでした事実(確認できなかったことの記載)。
| 評価項目 | ISO | IEC・IEEE | JIS | ASTM | 測定条件で値が変わる点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 導電性プラスチックの抵抗率事実 | ISO 3915:2022(Plastics – Measurement of resistivity of conductive plastics)。第2版、2022年2月、ISO 3915:1981 を置き換え。導電性フィラーなどで導電性にしたプラスチックの特別に調製した試験片が対象で、抵抗率が106 Ω·cm 未満の材料に適用。表面伝導のため厳密には体積抵抗率ではない[26] | 確認できなかった | JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)。版の年と ISO 3915 との対応は未確認[30] | ASTM D4496(Standard Test Method for D-C Resistance or Conductance of Moderately Conductive Materials)。D4496-13 の ANSI Webstore の掲載で題名と対象(絶縁体でも良導体でもない材料)を確認[34] | 試験片の調製、電極の配置、温度、湿度、表面伝導の寄与。膜(薄膜)には、シート抵抗の方法を使うため、条件が違う |
| 絶縁材料の体積・表面の抵抗(帯電防止の範囲)事実 | 確認できなかった | IEC 62631-3-1:2023(Dielectric and resistive properties of solid insulating materials – Part 3-1: Determination of resistive properties (DC methods) – Volume resistance and volume resistivity – General method)。第2.0版、2023年1月23日。IEC 62631-3-2:2023(同 – Part 3-2: … – Surface resistance and surface resistivity)。第2.0版、2023年10月16日。IEC 60093 の置き換え[27・28] | JIS C 2139-3-1・3-2(固体電気絶縁材料の誘電特性及び抵抗特性-直流電圧印加による抵抗特性の測定、体積抵抗・表面抵抗)。版の年と IEC との対応は未確認[32] | ASTM D257(Standard Test Methods for DC Resistance or Conductance of Insulating Materials)。D257-14 の ANSI Webstore の掲載で確認。中程度の導電材料には適さず、D4496 を使うとの記載[33] | 電極の配置、印加電圧と時間、湿度(記録すべき環境条件)。導電性高分子の高い導電率の領域には、絶縁材料向けの規格が適さない場合がある(D257 の記載) |
| 液体の電気伝導率(イオン液体・電解液の溶液)事実 | 確認できなかった | 確認できなかった | JIS K 0130(電気伝導率測定方法通則)。イオン液体やポリマー電解質に適用してよいかは未確認[31] | 確認できなかった | 温度(導電率は温度で大きく変わる)、セル定数、水分。固体・ゲルのイオン伝導度には、EIS が使われる[22] |
| ポリマー電解質のイオン伝導度・輸率未確定/将来 | 確認できなかった | 確認できなかった | 確認できなかった | 確認できなかった | 専用の規格は確認できず、EIS(等価回路)、Arrhenius/VTF、Bruce–Vincent の方法、NMR が、論文で使われている[22・23・24] |
| 導電性高分子コンデンサ事実 | 確認できなかった | IEC 60384-25:2021(Fixed capacitors for use in electronic equipment – Part 25: Sectional specification – Fixed aluminium electrolytic surface mount capacitors with conductive polymer solid electrolyte)。第3.0版、2021年7月14日、安定期限2030年[29] | JIS C 5101-25(電子機器用固定コンデンサ-第25部:品種別通則:表面実装用固定アルミニウム固体(導電性高分子)電解コンデンサ)。版の年と IEC との対応は未確認[36] | 確認できなかった | 部品の規格で、材料の導電率の規格ではない。導電性高分子の材料の優劣は、この規格では比べられない(本稿の解説) |
どの規格をどの評価項目に当てるかの整理は本稿の計算(本稿の整理)です。ISO は ISO の公式ページ、IEC は IEC Webstore、JIS は JISC の JIS 検索で番号・題名を確認しました。ASTM の2件は、ASTM 以外のページ(ANSI Webstore)で確認し、ASTM のサイトは開いていません。
位置づけの違い
- ISO・IEC は国際規格、JIS は日本の国家規格です。JIS K 7194 と ISO 3915 の対応、JIS C 2139 と IEC 62631-3 の対応(題名は近い)は、本稿では確認していません
- ASTM は米国の業界規格です。D257 と D4496 は、対象の導電性(絶縁体か、中程度の導電材料か)で使い分けられています[33・34]
- IEC 60384-25 は部品(コンデンサ)の規格で、材料の規格ではありません。
規格の読み方の注意
- 規格は「試験方法」で、材料の性能を保証するものではありません。導電性高分子の薄膜は、シート抵抗と膜厚から求めるため、ISO 3915 のような成形品・ブロックの方法と、同じ試験ではありません[12・26]
- 同じ名前の特性でも、規格や版で手法が違います。「導電率」は、電子を運ぶものか、イオンを運ぶものか、両方か(混合伝導体)を区別し、測定の周波数・湿度・温度を確認します[13]
- メーカーの値は、準拠規格・版・試験条件とセットで読みます。Heraeus Epurio の「最大1,000 S/cm」「膜厚100 nm で透過率最大90%」は、処理・測定法・日付が製品ページに示されていません[15]
- 規格値の範囲と実使用条件のずれ:乾いた状態の導電率は、湿度・熱・時間の変化を含みません。PEDOT:PSS は吸湿して膨潤し、PANI は保存で導電率が下がります[12・4]
16. 用語集
- 共役(共役二重結合)
- 単結合と二重結合が交互に並び、電子が広がっている構造。
- ドーピング
- 酸化(電子を取り除く)または還元(導入する)により、導電性を与える操作。
- PEDOT:PSS
- 導電性高分子 PEDOT とポリスチレンスルホン酸 PSS の複合体。水に分散する。
- シート抵抗(Ω/sq)
- 薄膜の面抵抗。導電率と膜厚の積の逆数。
- 混合伝導体
- 電子(正孔)とイオンの両方を運ぶ材料。
- OECT
- 有機電気化学トランジスタ。イオンの出入りで導電性高分子の伝導度を変える。
- イオン液体
- 室温付近で液体の塩(イオンだけでできた液体)。
- ポリマー電解質
- 高分子に塩を溶かし、イオンを運ばせる材料。PEO 系が代表。
- イオンゲル
- イオン液体を高分子のネットワークに含ませた、柔らかい固体状の電解質。
- 輸率
- 電流のうち、特定のイオン(陽イオンなど)が運ぶ割合。
- EIS
- 交流インピーダンス分光。周波数を変えて抵抗成分を分け、イオン伝導度を求める。
- VTF
- Vogel–Tammann–Fulcher の式。ガラス転移に近い系の、伝導度の温度依存を表す。
17. 参考資料(一次情報)
- ノーベル財団(The Royal Swedish Academy of Sciences) 「The 2000 Nobel Prize in Chemistry」プレスリリース(2000年10月10日、英語) — nobelprize.org/prizes/chemistry/2000/press-release
- Chiang C. K. ほか “Electrical Conductivity in Doped Polyacetylene”, Phys. Rev. Lett. 39, 1098–1101 (1977), DOI 10.1103/PhysRevLett.39.1098 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.39.1098
- Shirakawa H. ほか “Synthesis of electrically conducting organic polymers: halogen derivatives of polyacetylene, (CH)x“, J. Chem. Soc., Chem. Commun. 578 (1977), DOI 10.1039/C39770000578 — doi.org/10.1039/C39770000578
- Stejskal J., Gilbert R. G. “Polyaniline. Preparation of a conducting polymer (IUPAC Technical Report)”, Pure Appl. Chem. 74, 857–867 (2002), DOI 10.1351/pac200274050857 — doi.org/10.1351/pac200274050857
- Le T.-H., Kim Y., Yoon H. “Electrical and Electrochemical Properties of Conducting Polymers”, Polymers 9, 150 (2017), DOI 10.3390/polym9040150(オープンアクセス) — doi.org/10.3390/polym9040150
- Ansari R. “Polypyrrole Conducting Electroactive Polymers: Synthesis and Stability Studies”, E-Journal of Chemistry 3, 186–201 (2006), DOI 10.1155/2006/860413 — doi.org/10.1155/2006/860413
- Holze R. “Overoxidation of Intrinsically Conducting Polymers”, Polymers 14, 1584 (2022), DOI 10.3390/polym14081584(オープンアクセス) — doi.org/10.3390/polym14081584
- Sethumadhavan V. ほか “Hydrolysis of doped conducting polymers”, Commun. Chem. 3, 153 (2020), DOI 10.1038/s42004-020-00404-y(オープンアクセス) — doi.org/10.1038/s42004-020-00404-y
- Xia Y., Sun K., Ouyang J. “Solution-Processed Metallic Conducting Polymer Films as Transparent Electrode of Optoelectronic Devices”, Adv. Mater. 24, 2436–2440 (2012), DOI 10.1002/adma.201104795 — doi.org/10.1002/adma.201104795
- Kim N. ほか “Highly Conductive PEDOT:PSS Nanofibrils Induced by Solution-Processed Crystallization”, Adv. Mater. 26, 2268–2272 (2014), DOI 10.1002/adma.201304611 — doi.org/10.1002/adma.201304611
- Shi H. ほか “Effective Approaches to Improve the Electrical Conductivity of PEDOT:PSS: A Review”, Adv. Electron. Mater. 1, 1500017 (2015), DOI 10.1002/aelm.201500017 — doi.org/10.1002/aelm.201500017
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- Evans J., Vincent C. A., Bruce P. G. “Electrochemical measurement of transference numbers in polymer electrolytes”, Polymer 28, 2324–2328 (1987), DOI 10.1016/0032-3861(87)90394-6(題名のみ確認) — doi.org/10.1016/0032-3861(87)90394-6
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- ISO “ISO 3915:2022” ページ — iso.org/standard/81838.html
- IEC “IEC 62631-3-1:2023” 製品ページ(IEC Webstore) — webstore.iec.ch/en/publication/62314
- IEC “IEC 62631-3-2:2023” 製品ページ(IEC Webstore) — webstore.iec.ch/en/publication/62315
- IEC “IEC 60384-25:2021” 製品ページ(IEC Webstore) — webstore.iec.ch/en/publication/64363
- 日本産業標準調査会(JISC) JIS検索「JIS K 7194」の一覧 — jisc.go.jp(JIS K 7194)
- 日本産業標準調査会(JISC) JIS検索「JIS K 0130」の一覧 — jisc.go.jp(JIS K 0130)
- 日本産業標準調査会(JISC) JIS検索「JIS C 2139」の一覧 — jisc.go.jp(JIS C 2139)
- ANSI Webstore(ASTM 以外の販売ページ) ASTM D257-14 の題名・範囲の掲載ページ — webstore.ansi.org/standards/astm/astmd25714
- ANSI Webstore(ASTM 以外の販売ページ) ASTM D4496-13 の題名・範囲の掲載ページ — webstore.ansi.org/standards/astm/astmd449613
- Saha A. ほか “Effect of Film Morphology on Electrical Conductivity of PEDOT:PSS”, Nanomaterials 14, 95 (2024), DOI 10.3390/nano14010095(オープンアクセス、PubMed Central の公開本文で確認) — doi.org/10.3390/nano14010095
- 日本産業標準調査会(JISC) JIS検索「JIS C 5101-25」の一覧 — jisc.go.jp(JIS C 5101-25)
18. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| 2000年のノーベル化学賞(Heeger、MacDiarmid、白川)、共役とドーピング、導電性プラスチックの用途(写真フィルムの帯電防止、電磁波シールド、スマートウィンドウ) | ノーベル財団のプレスリリース 出典1 https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2000/press-release/ | 事実 |
| ドープしたポリアセチレンの導電率が11桁にわたって変わる、ドーパント約1%で金属-絶縁体転移 | Chiang ら(1977) 出典2 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.39.1098 | 事実 |
| ポリアセチレンのハロゲン誘導体の合成(1977年。題名による) | Shirakawa ら(1977) 出典3 https://doi.org/10.1039/C39770000578 | 事実 |
| ポリアニリン塩酸塩の導電率4.4±1.7 S/cm(59試料)、塩基の形1.4×10−8 S/cm、保存で約10%低下、粉末の方が変化が大きい | IUPAC 技術報告(2002) 出典4 https://doi.org/10.1351/pac200274050857 | 事実 |
| 導電性高分子の電気的・電気化学的性質、穏やかな合成・加工、化学構造の多様性、調整できる導電率 | Le ら(2017) 出典5 https://doi.org/10.3390/polym9040150 | 事実 |
| ポリピロールの調製、安定性(電気的・電気化学的・熱的・環境的)に影響する因子の整理 | Ansari(2006) 出典6 https://doi.org/10.1155/2006/860413 | 事実 |
| 導電性高分子の過酸化(強い酸化条件・正の電位)と劣化、低い電位でも遅く進みうること | Holze(2022) 出典7 https://doi.org/10.3390/polym14081584 | 事実 |
| PEDOT が1 mM の塩水溶液で、陰イオンによりドープまたはカルボカチオンの加水分解、共役酸の pKa 約6.4が境 | Sethumadhavan ら(2020) 出典8 https://doi.org/10.1038/s42004-020-00404-y | 事実 |
| 希硫酸処理で PEDOT:PSS の導電率が0.3から3,065 S/cm、シート抵抗39 Ω/sq、550 nm の透過率約80%、ITO の代わりになりうるとの主張 | Xia ら(2012) 出典9 https://doi.org/10.1002/adma.201104795 | 事実 |
| 濃硫酸による PEDOT:PSS ナノ繊維の導電率4,380 S/cm、シート抵抗46 Ω/sq、透過率90% | Kim ら(2014) 出典10 https://doi.org/10.1002/adma.201304611 | 事実 |
| PEDOT:PSS を、成膜性が良く、透明性が高く、導電率を調整でき、熱安定性に優れた導電性高分子とする整理、導電率の向上方法の機構 | Shi ら(2015)の総説 出典11 https://doi.org/10.1002/aelm.201500017 | 事実 |
| 成膜直後の導電率が1 S/cm 以下、処理後に2〜3桁向上し最良約4,000 S/cm、σ=1/(Rs·t)(van der Pauw)、水分散液が pH 1、吸湿による膨潤、熱・湿気に対する安定性、強酸処理膜の約160 °C での安定性、Choulis らの熱劣化機構、用途(太陽電池・ディスプレイ・トランジスタ・各種センサー) | Fan ら(2019)の総説(PubMed Central の公開本文) 出典12 https://doi.org/10.1002/advs.201900813 | 事実 |
| PEDOT:PSS が混合伝導体であること、PEDOT:PSS が豊富なコアと PSS が豊富なマトリックス、導電率が1,000 S/cm 超、EG 添加で電子の導電率は上がりイオン移動度(K+)が2.2×10−3 から1.3×10−3 cm²/(V·s)に低下、OECT・薬剤送達・アクチュエータ | Rivnay ら(2016)(PubMed Central の公開本文) 出典13 https://doi.org/10.1038/ncomms11287 | 事実 |
| PEDOT:PSS が最もよく知られた有機導体であること、伸びは約10%まで、水で加工できること | Kayser と Lipomi(2019) 出典14 https://doi.org/10.1002/adma.201806133 | 事実 |
| Clevios の公称(最大1,000 S/cm、膜厚100 nm で透過率最大90%)、用途(コンデンサ、帯電防止、柔軟ディスプレイ、シールド層、印刷エレクトロニクス)。メーカーの記述 | Heraeus Epurio の製品ページ 出典15 https://www.heraeus-epurio.com/en/applications/clevios/ | 事実 |
| イオン液体材料に関する総説があること(題名による) | Armand ら(2009) 出典16 https://doi.org/10.1038/nmat2448 | 事実 |
| イオン液体の低い揮発性・高い電気化学的・熱的安定性・イオン伝導度、電解質としての用途 | MacFarlane ら(2014) 出典17 https://doi.org/10.1039/C3EE42099J | 事実 |
| 均一な電解質の5つの型(I〜V)、ミクロ相分離による力学とイオン伝導度の切り離し、水分の混入 | Hallinan と Balsara(2013) 出典18 https://doi.org/10.1146/annurev-matsci-071312-121705 | 事実 |
| PEO は室温で約70〜85%結晶、Tg 約−60 °C、融点約65 °C、非晶質でのイオン伝導、PEO+LiTFSI+イオン液体の室温導電率の例(2.50×10−6、1.43×10−5、2.08×10−4 S/cm)、輸率の測定法 | Arya と Sharma の総説(arXiv の本文) 出典19 https://arxiv.org/abs/1808.03699 | 事実 |
| イオンゲル(EMITFSI+PMMA)の常温の導電率が10−2 S/cm に近い、VTF 式、陽イオン輸率の濃度依存 | Susan ら(2005) 出典20 https://doi.org/10.1021/ja045155b | 事実 |
| イオンゲルをゲート絶縁層にした高分子薄膜トランジスタ(容量10 Hz で最大40 µF/cm²、1 kHz で2 µF/cm²、100 Hz 超で動作) | Lee ら(2007) 出典21 https://doi.org/10.1021/ja070875e | 事実 |
| EIS の原理、等価回路、Arrhenius と VTF のイオン輸送モデル | Aziz ら(2018) 出典22 https://doi.org/10.1016/j.jsamd.2018.01.002 | 事実 |
| ポリマー電解質の輸率の電気化学的な測定法の提案(題名による) | Evans ら(1987) 出典23 https://doi.org/10.1016/0032-3861(87)90394-6 | 事実 |
| PEO 中の LiTFSI の Li+・TFSI− の自己拡散係数(NMR)と陽イオン輸率、分子量・塩濃度の依存、塩の完全解離 | Timachova ら(2015) 出典24 https://doi.org/10.1021/acs.macromol.5b01724 | 事実 |
| PEDOT 系アクチュエータ(導電率・化学的安定性が高く、密度と動作電圧が低い)、開発の初期の段階 | Hu ら(2019) 出典25 https://doi.org/10.3389/frobt.2019.00114 | 事実 |
| 規格の番号・題名・版:ISO 3915:2022(第2版、2022年2月、106 Ω·cm 未満、表面伝導の影響) | ISO 出典26 https://www.iso.org/standard/81838.html | 事実 |
| 規格の番号・題名・版:IEC 62631-3-1:2023(第2.0版、2023年1月23日、IEC 60093 の置き換え) | IEC Webstore 出典27 https://webstore.iec.ch/en/publication/62314 | 事実 |
| 規格の番号・題名・版:IEC 62631-3-2:2023(第2.0版、2023年10月16日) | IEC Webstore 出典28 https://webstore.iec.ch/en/publication/62315 | 事実 |
| 規格の番号・題名・版:IEC 60384-25:2021(第3.0版、2021年7月14日、安定期限2030年) | IEC Webstore 出典29 https://webstore.iec.ch/en/publication/64363 | 事実 |
| 規格の番号・題名:JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法) | JISC JIS検索 出典30 https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=K7194 | 事実 |
| 規格の番号・題名:JIS K 0130(電気伝導率測定方法通則) | JISC JIS検索 出典31 https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=K0130 | 事実 |
| 規格の番号・題名:JIS C 2139-3-1・3-2(固体電気絶縁材料の誘電特性及び抵抗特性、直流電圧印加による抵抗特性の測定、体積抵抗・表面抵抗) | JISC JIS検索 出典32 https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=C2139 | 事実 |
| ASTM D257 の題名と範囲(絶縁材料。中程度の導電材料には適さず D4496 を使う)。ASTM 以外の販売ページで確認。ASTM のサイトは開いていない | ANSI Webstore 出典33 https://webstore.ansi.org/standards/astm/astmd25714 | 事実 |
| ASTM D4496 の題名と対象(中程度の導電材料、絶縁体でも良導体でもない)。ASTM 以外の販売ページで確認。ASTM のサイトは開いていない | ANSI Webstore 出典34 https://webstore.ansi.org/standards/astm/astmd449613 | 事実 |
| PEDOT:PSS の粒の形・向きの制御が膜の異方的な導電率の制御につながること | Saha ら(2024)(PubMed Central の公開本文) 出典35 https://doi.org/10.3390/nano14010095 | 事実 |
| 規格の番号・題名:JIS C 5101-25(表面実装用固定アルミニウム固体(導電性高分子)電解コンデンサの品種別通則) | JISC JIS検索 出典36 https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISNumberNameSearchList?show&jisStdNo=C5101-25 | 事実 |
| シート抵抗(膜厚100 nm の仮定:1 S/cm で約100,000 Ω/sq、10 S/cm で約10,000、100 S/cm で約1,000、1,000 S/cm で約100、4,380 S/cm で約23 Ω/sq)、報告値の逆算(Xia らは膜厚約84 nm、Kim らは約50 nm)、電解質層の面抵抗(厚み20 µm、10−2 S/cm で約0.2、10−3 で約2、10−4 で約20、10−5 で約200 Ω·cm²)と1C(3 mA/cm²)での電圧降下(約0.6 mV、6 mV、60 mV、0.6 V) | 本稿の計算。シート抵抗=1÷(導電率×膜厚)で、膜厚100 nm は仮定、逆算した膜厚は論文の記載ではない。面抵抗=厚み÷伝導度。面積容量3 mAh/cm² の電極の1C=3 mA/cm² という仮定で、層の抵抗のみ(界面・濃度分極・輸率は含まない) | 本稿の計算 |
| PPy の導電率、PEDOT:PSS の量産品の公式データシートの値、固体のイオン伝導度専用の規格、導電性高分子・イオン液体の毒性・規制の個別状況、Armand ら・Shirakawa ら・Evans らの本文 | 本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため記載していない | 解説 |
| 「導電性は、ドーパントがそこにいることで保たれる」「ポリピロール・ポリアニリンは加工性と環境での劣化が課題」「輸率が低いと実際に使える電流が下がる」「PEO 系は非晶化で伝導度が上がる代わりに柔らかくなる」「IEC 60384-25 は部品の規格」という読み取り。無機の固体電解質との比較の表 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない | 解説 |
| 図2・図3・図5が実データではなく説明のための作図であること。図1と図4がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月10日/出典は一次情報(査読論文、IUPAC 技術報告、ノーベル財団・Heraeus Epurio の公式ページ、ISO・IEC・JISC の公式ページ)に限定しています。規格の本文は有料のため確認できていません。ASTM International のサイトは開いていません。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 ポリピロールの導電率、PEDOT:PSS の量産品の公式データシート、固体のイオン伝導度を測る専用の規格、導電性高分子・イオン液体の毒性と規制の個別の状況、規格の本文は、確認できなかったため記載していません。 導電率・イオン伝導度は特定の試料・条件の結果またはメーカー公称であり、他の試料や製品に一般化できません。 図はすべて説明用の概念図です。図2・図3・図5はベクター作図、図1と図4はAI生成イメージであり、いずれも実際の写真・実測データ・製品の実物を示すものではありません。