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レアアースフリー磁石 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

レアアースフリー磁石
― 「磁化」は鉄で稼げても、足りないのは「異方性」と「焼結できる安定さ」

ネオジム磁石とフェライト磁石のあいだには、最大エネルギー積 (BH)max で約10倍のすき間があります。このすき間を、レアアースを使わない材料(窒化鉄 Fe16N2、MnAl、テトラ鉄鉱 L10-FeNi)や、レアアースを減らす材料(Sm-Fe-N、高性能フェライト、Ce・La で置換したネオジム)で埋めようとする試みが続いています。 この記事では、鉄系の材料が高い磁化を持ちながら、なぜ磁石になりにくいのかを、「磁化と磁気異方性の釣り合い」「準安定相は焼結できない」「粉末や薄膜の値は磁石の値ではない」という3つの視点で整理します。企業の実用化の主張は「未確定/将来」として区別し、研究室の粉末の値を量産品の性能として書きません。

構成:査読論文(Engineering、J. Phys.: Condens. Matter、J. Appl. Phys.、Sci. Rep.、J. Phys. D、Phys. Rev. Mater.、Adv. Mater.、Mater. Trans.、Crystals)、東北大学の解説論文(日本AEM学会誌)、メーカーの公称値、トヨタの発表、IEC・JIS の書誌ページを使用/確認日 2026年10月10日

異なる系統の磁石候補を、個別の試料として評価する例です
図1 概念画像(ImageGenで生成)。異なる系統の磁石候補を、個別の試料として評価する例です。見た目や大きさで強さ・量産性を判断する図ではありません。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。
この記事の構成
  1. レアアースフリー磁石とは何か(3行でつかむ)
  2. 置き換えたいのは何か ― 「ギャップ」の大きさ
  3. 設計の考え方 ― 磁化と異方性の釣り合い
  4. 候補ごとの現在地 ― 窒化鉄、MnAl、テトラ鉄鉱、Sm-Fe-N、フェライト、Ce・La 置換
  5. 準安定相の壁 ― 焼結できない
  6. 粉末の値と磁石の値 ― 保磁力はどこまで届いたか
  7. 企業の主張をどう読むか
  8. 限界と、確認できなかったこと
  9. 評価・標準の読み方
  10. 用語集
  11. 参考資料(一次情報)
  12. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=企業や研究者の目標・計画・予備的な見積もりで、実績が確認できていない事項
このほか、材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。推測は太字で示します。

この記事の数値の読み方

ここに出てくる数値の多くは、粉末・薄膜・小さな固化体・天然鉱物の測定値や、理論計算です。粉末の磁化や、薄膜の「エネルギー積」は、磁石として使える値ではありません(Coey)。研究室のチャンピオンデータを、量産品や実用条件の性能として読まないでください。 異なる試料形態の値を並べても、優劣を示すものではありません。企業の目標・計画は「未確定/将来」として区別し、特定の企業や材料の優劣を断定しません。価格と価格の予測は扱いません。

1. レアアースフリー磁石とは何か(3行でつかむ)

  • 狙いは「すき間」:最も強いネオジム磁石と、最も広く使われるフェライト磁石の間は、理想の (BH)max で約516 kJ/m³ と約45 kJ/m³ と、10倍以上離れています。この中間を埋める磁石は「ギャップ磁石」と呼ばれ、レアアースを使わない新材料の目標ですが、成果は限られている、と Coey は述べます事実[参考資料1]
  • 鉄系は磁化が足りているのに、異方性が足りない:窒化鉄や L10-FeNi は、磁化が鉄並みに大きくても、磁石として使うための「逆向きの磁界に耐える力」(保磁力)を生む磁気異方性が、レアアース化合物より小さい。材料の性質だけでなく、安定性と作り方の壁もあります事実[参考資料1・2・5・7]
  • 粉末の値は、磁石の値ではない:候補材料の多くは、粉末・薄膜・小さな固化体の段階で、保磁力は数十〜200 kA/m 程度にとどまり、焼結ネオジム(HcJ 最小値 955 kA/m 以上)には遠く届いていません事実[参考資料6・7・9・10・17]
この記事でいちばん大事な一行

「磁化が大きい」ことは、磁石の入口にすぎません。磁石になるには、十分な異方性(形に縛られない磁石にするための条件は κ>1、形に制約のある磁石でも約0.5以上)、その相を壊さずに固められる安定さ、そして保磁力を生む微細組織が揃う必要があります事実[参考資料1]。

2. 置き換えたいのは何か ― 「ギャップ」の大きさ

Coey は、Nd2Fe14B(理想の (BH)max 515 kJ/m³)と BaFe12O19(45 kJ/m³)の間にある広いすき間を埋める、レアアースフリーの高性能な磁石材料の探索は、あまり成功していない、と述べています。この「ギャップ磁石」の条件として、磁気エネルギー1 J あたりのコストが約1ドル以下という価格性能の基準も挙げています事実[参考資料1]。ここでは価格は扱わず、性能面の距離を確かめます。

材料としての上限と、磁石としての到達点((BH)max、kJ/m³) 薄い棒=材料の上限の見積もり。濃い棒=磁石として報告された値。条件・形態の違う値の並置です。 焼結ネオジム Nd2Fe14B 比較の基準 516 406 Sm2Fe17N3(サマリウム鉄窒素) ボンド磁石は200未満 472 < 200 L10-FeNi(テトラ鉄鉱) 磁石の値は確認できず > 335 なし MnAl(τ相) 実測は論文の引用値 ≈ 120 50 焼結フェライト(Sr 系) 異方性の市販品は33〜41.8 45.8 33–41.8 Fe16N2(窒化鉄) 本稿では確認できず 上限・実測とも、一次資料で確認できなかった 0 100 200 300 400 500 ※ 上限:Nd2Fe14B と Sm2Fe17N3 は Coey の表2[参考資料1]、L10-FeNi は Lewis らの予備的な見積もり[参考資料4]、MnAl は Arapan ら[参考資料11]、  フェライトは Bs=0.48 T からの (1/4)μ0Ms² =45.8 kJ/m³(本稿の計算、論文の記す45とほぼ一致)[参考資料12]。 ※ 実測:N52 は Arnold の典型値[参考資料17]、Sm-Fe-N は Coey の記述[参考資料1]、フェライトは同総説の市販品の範囲[参考資料12]。
図2 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。各候補の (BH)max の上限の見積もり(薄い棒)と、磁石として報告された値(濃い棒)。上限は文献の値または本稿の計算、実測は形態の異なる報告値で、優劣や磁石の性能を示すものではありません。値は[参考資料1・4・11・12・17]によります。
本稿の計算(1):上限と、実際の距離

配向のそろった磁石の (BH)max の上限は、飽和磁化 Ms から (1/4)μ0Ms² で与えられます(Coey)[参考資料1]。次の値を本稿が計算しました本稿の計算。

  • フェライト:Sr フェライトの Bs=0.48 T から45.8 kJ/m³(論文の記す理論値45とほぼ一致)。市販の異方性フェライトの33.0〜41.8 kJ/m³ は、その約72〜91%(33.0÷45.8、41.8÷45.8)[参考資料12]。フェライトは、すでに自分の上限の近くまで来ています
  • MnAl:Ms=0.60 MA/m から約113 kJ/m³(論文の上限の見積もり約120と整合)。引用された実測の50 kJ/m³ は、その約44%[参考資料11]
  • L10-FeNi:μ0Ms=1.6 T なら上限は約509 kJ/m³。Lewis らの予備的な見積もり(335 kJ/m³ 超)は、その約66%[参考資料4・6]。磁石としての実測値は確認できなかった
  • Sm2Fe17N3:理想472 kJ/m³ に対し、配向ボンド磁石は200 kJ/m³ 未満で、42%未満(200÷472)[参考資料1]

前提と限界:上限は「配向がそろい、完全に緻密で、Ms の値が正しい」場合の理想値で、磁石として達成できる値ではありません。MnAl・FeNi の磁化・異方性の値には文献間のばらつきがあります。

3. 設計の考え方 ― 磁化と異方性の釣り合い

磁石として使える材料の条件を、Coey は硬さのパラメータ κで整理しています。κ は、異方性エネルギー Ku と静磁エネルギー μ0Ms² の比の平方根、κ=(Ku/μ0Ms²)1/2 で、κ>1 なら、どんな形にも作れる磁石(硬磁性)になります。κが0.1〜1 は「セミハード」で、形による反磁界の低減(棒・馬蹄形など)の助けが要り、κが約0.5以上なら磁石が可能とされます。ただし、セミハードの磁石のエネルギー積は、理想の約10%程度にとどまる、とも述べます事実[参考資料1]。

磁化と磁気異方性の地図 ― 候補はどこにいるか(概念図) 横軸は μ0Ms(T)、縦軸は異方性定数(MJ/m³、対数)。点は文献値(K1)で、Coey の図は双極子項を含む Ku を使うため、位置は厳密には同じではありません。 0 0.5 1 1.5 2 0.1 1 10 μ0Ms(T) 異方性定数(MJ/m³) κ = 1 これより上:形に縛られない κ = 0.5 これ以上:形に制約あり Nd2Fe14B Sm2Fe17N3 SrFe12O19(フェライト) L10-FeNi 実測 0.2〜0.93 解析による推定 1.0〜1.3 ※ κ = (Ku/μ0Ms²)^(1/2)。κ > 1 なら形に縛られず、0.5以上なら形に制約のある磁石が可能(Coey[参考資料1])。曲線は本稿が式から描いた。 ※ 値:Nd2Fe14B と Sm2Fe17N3 は Coey の表2(K1)[参考資料1]、SrFe12O19 は Granados-Miralles らの表1(0.35〜0.36)[参考資料12]、L10-FeNi は Woodgate らの表と本文(実測0.2〜0.93、解析による推定1.0〜1.3)と、Goto らの μ0Ms=1.6 T[参考資料5・6]。
図3 概念図(ベクター作図)。磁化(μ0Ms)と異方性定数の地図に、候補の位置と κ=1・0.5の線を描いた説明用の図です。点は文献値(K1)で、Coey の図は双極子項を含む Ku を使うため、位置は厳密には同じではありません。L10-FeNi は文献間で値が大きくばらつくため、範囲で示しています。値は[参考資料1・5・6・12]によります。

地図の読み方は単純です。右へ行くほど磁化が大きく、上へ行くほど異方性が大きい。Nd2Fe14B や Sm2Fe17N3 は、右上にいて、κ>1 の領域に余裕を持って入っています。フェライト(SrFe12O19)は、磁化が小さい(0.48 T)が、異方性との釣り合いで κ>1 の領域に入ります。L10-FeNi は、磁化は大きい(1.6 T)が、異方性が文献により0.2〜1.0 MJ/m³ と幅があり、κ=0.5の線をまたぎます事実[参考資料1・5・6・12]。

本稿の計算(2):窒化鉄で、使える Br はどこまでか

東北大学の小川の解説は、Fe16N2 粉末の異方性磁界を約9.5 kOe(本稿の計算約756 kA/m)としています[参考資料7]。Nd2Fe14B の異方性磁界は5.33 MA/m ですから[参考資料2]、その約14%です(756÷5,330)。 Coey は、保磁力が異方性磁界の20〜30%に届くまでにも通常は多年の開発が要る、と述べます[参考資料1]。この割合を Fe16N2 に当てはめると、保磁力の目安は約150〜230 kA/m(756×0.2、756×0.3)です。 さらに、(BH)max の点で使う設計では、使う温度で μ0HcJ が Br の半分を超えている必要があります(Hirosawa ら)[参考資料2]。この条件を逆に読むと、Br の上限は 2μ0HcJ で、保磁力150〜230 kA/m なら約0.4〜0.6 Tです(2×4π×10−7×150,000〜230,000)。これは、焼結フェライトの Br(380〜400 mT、Eclipse Magnetics のデータシート)と同程度です[参考資料18]。

前提と限界:保磁力が異方性磁界の20〜30%という割合は、希土類磁石の経験則で、窒化鉄に当てはまる保証はありません。動作点が (BH)max の点にあることを仮定しており、磁気回路の設計(負荷線)によって必要な保磁力は変わります。窒化鉄の粉末の磁化が鉄を上回っても、磁石として使える Br は、異方性(保磁力)の上限で頭打ちになりうるという見方を示すための概算で、窒化鉄磁石の性能の予測ではありません。

素材技術者の視点①:磁化は「元素」で、異方性は「構造」で決まる

磁化の大きさは、主に鉄・コバルトなど3d 金属の量で決まります。一方、強い一軸異方性は、希土類の4f 電子の軌道が、結晶の電場の中で一方向に偏ることで生まれます(Hirosawa ら)[参考資料2]。希土類を使わない3d 金属だけの磁石では、強い異方性を得る一般的な設計指針がない、と Kuz’min らは述べ[参考資料3]、結晶構造の歪みや規則化(窒化鉄の窒素、L10 の規則配列)といった「構造の工夫」に頼ることになります。

つまり、レアアースフリーとは、希土類が担っていた異方性を、構造の工夫で肩代わりさせる試みです。肩代わりした構造(準安定相、規則合金)は、熱や不純物に弱くなる(第5章)。素材技術者にとっては、「磁化を稼ぐ組成」と「異方性を生む構造」と「その構造を保つ工程」の三つが、一組の設計になります(本記事による解説)。

4. 候補ごとの現在地 ― 窒化鉄、MnAl、テトラ鉄鉱、Sm-Fe-N、フェライト、Ce・La 置換

候補の整理を、まず一覧にします。数値は、試料の形態(粉末・薄膜・固化体・天然鉱物・理論計算)と条件を添えています。形態の違う値の優劣は示しません。

候補主な値(試料の形態・条件)確認できた現在地主な難しさ
α″-Fe16N2(窒化鉄)粉末:Ms 226 A·m²/kg(300 K、鉄は218)、K 約9.6×106 erg/cm³(≒0.96 MJ/m³)、Hk 約9.5 kOe[7]粉末は数十グラム規模で再現性よく合成[7]。固化体の保磁力は最大86.5〜121 kA/m、磁石としての値は未確立[9・10]約200 ℃で分解する準安定相[7]。焼結できない。単磁区の臨界粒径は約70 nm
τ-MnAl(C 添加を含む)Ms 0.60 MA/m、(BH)max 50 kJ/m³(引用された実測値)、上限の見積もり約120 kJ/m³[11]安価な元素だが、Js が小さく、HEV・EV 用の磁石には向かないとされる[2]準安定。逆位相境界・双晶が保磁力と(BH)maxを下げる[11]
L10-FeNi(テトラ鉄鉱)Js 1.6 T、キュリー温度 550 ℃以上[6]。異方性:実測0.2〜0.93 MJ/m³、理論0.23〜0.78[5]。隕石由来の鉱物で保磁力95.5 kA/m、(BH)max の予備的な見積もり335 kJ/m³ 超[4]粉末(NITE 法)で規則度 S=0.71、保磁力142 kA/m[6]規則・不規則変態が200〜320 ℃で、原子拡散が極端に遅い。高規則度の合成が難しい[6]
Sm2Fe17N3(Sm-Fe-N)TC 749 K、μ0Ms 1.54 T、K1 8.6 MJ/m³、理想の(BH)max 472 kJ/m³[1]ボンド磁石用の粉末として販売される。配向ボンド磁石は200 kJ/m³ 未満[1]約600 ℃で分解し焼結できない。Sm を使う(希土類フリーではなく、Nd・重希土類を使わない)
M 型フェライト(Sr 系、高性能化)Bs 0.48 T、TC 473 ℃、(BH)max の理論値約45 kJ/m³。市販の異方性品33.0〜41.8、La・Co 置換品は最大44 kJ/m³[12]最も多く生産される磁石[12]。IEC 60404-8-1:2023 は La・Co 置換のフェライトを追加[20]焼結(1,100〜1,350 ℃)で粒が成長し、保磁力が下がる[12]
Ce・La 置換 Nd-Fe-Bトヨタ:Nd 使用量を最大50%減、Tb・Dy 不使用、従来と同等の耐熱性(企業の発表)[15]企業の発表と論文の報告。実用化の状況は確認できなかった[14・15]La・Ce は T 過剰の R-T 化合物で磁気モーメントを持たず、異方性への寄与も小さい[2]

すべて事実(参考資料の番号を各セルの[ ]に示す)。形態の異なる値の並置で、優劣を示すものではありません。単位換算:1 emu/g=1 A·m²/kg、1 kOe=79.577 kA/m。

(1) 窒化鉄 α″-Fe16N2 ― 高い磁化、足りない異方性

窒化鉄は、鉄の bcc 格子8個分の単位に窒素を特定の位置へ入れて歪ませた準安定相で、窒素が入ることで正方晶になり、c 軸が磁化容易軸になります。高飽和磁化の可能性は1972年に薄膜で提唱されました(Ogawa の記述)事実[参考資料7]。 Coey は、バルクの多相試料の測定と電子状態計算を調べて、鉄原子の平均磁気モーメントは0 K 付近で2.3〜2.6 μBの範囲にあり、窒素が隣にない4d 位置ではさらに大きい約2.9 μBだと結論しています[参考資料8]。Ogawa は偏極中性子回折で、最も窒素から離れた鉄の位置のモーメントが2.6±0.3 μBと、bcc 鉄の2.1〜2.2 μBより大きいことを示しました[参考資料7]。

一方で、磁石にするには課題が重なります。Ogawa が合成した粉末は、飽和磁化が鉄を上回り(226対218 A·m²/kg、300 K)、結晶磁気異方性は約0.96 MJ/m³ですが[参考資料7]、Coey の整理では、窒化鉄はセミハード(κ<1)の群に入ります[参考資料1]。Hirosawa らも、Fe16N2 の粒子を、バルクの工業的な永久磁石の基盤材料にするには技術的な困難がある、としています[参考資料2]。固化の面では、200 ℃程度で分解するため従来の焼結が使えず、圧縮成形などの低温成形によるボンド磁石の形が中心になります。低い充填率で、磁場中で固化した粉末は、角形比 Mr/Ms が0.80、保磁力2.5 kOe(約199 kA/m)でしたが、充填率を上げると、20 kOe 以上の磁場中でも c 軸の配向が確認できなかった、と Ogawa は述べます[参考資料7]。

固化体の例では、ガスアトマイズ粉を窒化して、スパークプラズマ焼結(498〜598 K、40〜80 MPa)で固めた研究が、548 K・60 MPa で密度約80%、飽和磁化約230 A·m²/kg、最大の保磁力約86.5 kA/m、Mr/Ms 0.42 を報告しています。α″相は約523 K まで安定で、それ以上では α-Fe と γ′-Fe4N へ分解が進みます[参考資料9]。リーチング(溶出)で作った多孔質の合金を窒化する方法では、保磁力は最大121 kA/m で、飽和磁化は鉄より小さくなりました[参考資料10]。

Ogawa は、窒化鉄が希土類磁石の完全な代替にはならないとし、希土類磁石とのナノコンポジット化による一部の代替や、フェライト・アルニコを超える「高磁化・低〜中保磁力型」の新しい磁石の可能性を挙げています。窒化鉄と Sm-Fe-N 粉末を混ぜ、樹脂で固めた無配向の試料では、磁化曲線が両者の中間になり、粒子間に交換相互作用に似た強い磁気的な相互作用があることが示唆された、と報告しています[参考資料7]。

(2) MnAl(τ相) ― 安い元素と、欠陥の壁

τ-MnAl は、Mn が50%より少し多い組成で現れる準安定の強磁性相で、Mn と Al が L10 型の規則構造を作ります。磁化は0.60 MA/m と控えめで、(BH)max は50 kJ/m³(引用された実測値)、上限の見積もりは約120 kJ/m³ です。原料が豊富で安く、高性能の希土類磁石と汎用のフェライトの間を埋める材料として期待されます事実[参考資料11]。 組織の問題は逆位相境界(APB)と双晶です。τ相の形成後、保磁力は APB が原因で比較的低く、APB は磁壁の核生成を起こしやすくします。細かい双晶と APB を含む粒状組織は、(BH)max を理論値のわずか5%まで下げうる、と計算の論文は述べ、製造では避けるべきだとしています[参考資料11]。Hirosawa らは、MnAl(C) は Js が約0.7 T と小さく、HEV・EV 用の磁石の候補からは外れる、としています[参考資料2]。

(3) テトラ鉄鉱 L10-FeNi ― 隕石が教えた、作れない材料

L10-FeNi は、鉄とニッケルの原子層が交互に積み重なった規則合金で、極めてゆっくり冷えた鉄隕石の中に天然に見つかります。Goto らは、Js が1.6 T(Nd-Fe-B に匹敵)、キュリー温度が550 ℃以上、一軸異方性が1×106 J/m³ を超える(引用値)と述べます[参考資料6]。ところが、実験で測った異方性は、Woodgate らの表で0.2〜0.93 MJ/m³ と文献ごとにばらつき、計算は0.23〜0.78 MJ/m³ で、解析によっては1.0〜1.3 MJ/m³ に達しうるとされます。両者のずれの原因を、彼らは、実験試料がナノスケールの多結晶・多変種の組織であることに求めています事実[参考資料5]。

隕石由来のテトラ鉄鉱(NWA 6259、組成約Fe55Ni44)の測定では、3つの直交する L10 変種が残留磁化を下げる組織で、室温の保磁力は95.5 kA/m、キュリー温度は830 K 以上、異方性は温度にほとんど依存せず、理論上のエネルギー積は335 kJ/m³ を超える可能性が予備的に示されています未確定/将来[参考資料4]。 人工的な合成の壁は、規則・不規則変態の温度が200〜320 ℃と低く、その温度以下では原子拡散が極端に遅いことです。Goto らは、窒素を入れて FeNiN とし、窒素を取り除く(NITE 法)ことで、拡散に頼らず規則度 S=0.71の単相粉末を得て、保磁力を14.5 kA/m(無秩序相)から142 kA/m に高めました[参考資料6]。

(4) Sm-Fe-N ― 希土類フリーではないが、Nd と重希土類を使わない

Sm2Fe17N3 は、キュリー温度749 K、μ0Ms 1.54 T、K1 8.6 MJ/m³ と、固有の性質は Nd2Fe14B に匹敵または上回る一方、約600 ℃で分解し、焼結ができません事実[参考資料1]。Coey は、配向させた高分子ボンド磁石で、これまでに200 kJ/m³ を超えたものはなく、粉末の値の約半分にとどまると述べます。溶融急冷した Sm-Fe-N の粉末は、完全に緻密とみなした場合のエネルギー積が164 kJ/m³ で、ナノ結晶(平均約15 nm)の効果により、等方の場合の予想(理想の4分の1)を上回ります[参考資料1]。生産量は Nd-Fe-B の1%未満で、加工コストも高い、と同論文は記します[参考資料1]。IEC 60404-8-1:2023 は、等方性の REFeN ボンド磁石を追加しました[参考資料20]。

(5) フェライト ― すでに上限の近く、課題は焼結

M 型フェライト(BaFe12O19、SrFe12O19)は、Bs 0.48 T、キュリー温度が Nd2Fe14B より150 ℃以上高く、化学的に安定で、最も多く生産される磁石材料です。市販の異方性磁石の(BH)max は33.0〜41.8 kJ/m³、La・Co 置換品は最大44 kJ/m³、等方性では約10 kJ/m³ までです(理論値は約45)。保磁力は温度とともに増え(多結晶 BaM では約250 ℃で約380 kA/m の極大)、そのあと下がります事実[参考資料12]。 課題は焼結で保磁力を保つことです。粉末の保磁力は単結晶の最大値(487〜525 kA/m)に近いのに、1,100〜1,350 ℃の焼結で粒が成長し、固化体では多くの標準的な手法で300 kA/m 未満になります[参考資料12]。最近の研究では、Ca・La・Co 置換の Sr フェライトのサブミクロン粒子で、保磁力が最大7,880 Oe(約627 kA/m)に達し、磁化(71〜72 emu/g)は落ちなかったと報告されています事実(研究室の粉末の値で、磁石の値ではありません)[参考資料13]。

(6) Ce・La 置換 ― 「レアアースを減らす」ための置換

Nd の一部を、より豊富で安い La・Ce で置き換える試みがあります。Coey は、格子の合った La と Ce の混合で置換できるとし[参考資料1]、Pathak らは、Ce と Co を同時に添加した合金で、固有保磁力が T≧453 K の範囲で既知の最高値だと報告しています事実(研究報告)[参考資料14]。トヨタは2018年2月20日に、Nd の一部を La・Ce で置き換え、Nd 使用量を最大50%減らし、Tb・Dy を使わず、従来のネオジム磁石と同等の耐熱性を保つ磁石を開発したと発表しました。実現の手段として、結晶粒を従来の10分の1以下にする微細化、結晶粒の表面の Nd 濃度を高め内部を下げる二層構造、La と Ce の特定の比率の3つを挙げています事実(企業の発表)[参考資料15]。実用化の状況は、本稿では確認していません未確定/将来。 La・Ce が難しい理由を、Hirosawa らは、T 過剰の R-T 化合物では La・Ce が磁気モーメントを持たず、異方性への寄与も小さいためだと説明します[参考資料2]。同じ理由で、1:12 型(ThMn12 型)など希土類を減らした化合物では、Pr・Nd・Sm のような磁性のある軽希土類を使うのが有望と読めます[参考資料2]。

5. 準安定相の壁 ― 焼結できない

ネオジム磁石もフェライトも、粉を成形して高温で焼き固めることで、緻密な磁石になります。ところが、レアアースフリーの有力候補の多くは、高温では壊れる準安定相です。窒化鉄は約200 ℃で α-Fe と γ′-Fe4N に分解し事実[参考資料7]、Sm-Fe-N は約600 ℃で分解します[参考資料1]。L10-FeNi は、規則・不規則変態の温度が200〜320 ℃で、規則相が安定な温度では原子がほとんど動かないので、通常の熱処理では規則度が上がらず、「待っても作れない」材料です[参考資料6]。これに対して M 型フェライトは、1,100〜1,350 ℃で焼結します[参考資料12]。

準安定な候補は、焼結の温度に耐えない(温度の目安、℃) 青=安定に使える上限、緑=変態・分解の温度の範囲、橙=焼結に使う温度。資料の記述の並置です。 α″-Fe16N2(窒化鉄) 約200 ℃で α-Fe と γ′-Fe4N に分解 ≈ 200 °C L10-FeNi(規則合金) 規則・不規則変態 200〜320 ℃ 200–320 °C Sm2Fe17N3(窒化物) 約600 ℃で分解 ≈ 600 °C M型フェライト(酸化物) 焼結は1,100〜1,350 ℃ 1,100–1,350 °C 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 温度(℃) ※ Fe16N2 は Ogawa(2024)[参考資料7](スパークプラズマ焼結の研究は約523 K〔250 ℃〕まで安定と記す[参考資料9])。 ※ FeNi は Goto ら(2017)[参考資料6]、Sm2Fe17N3 は Coey[参考資料1]と Hirosawa ら[参考資料2]、フェライトは Granados-Miralles ら[参考資料12]。 ※ 概念図。焼結ネオジムの焼結温度は、本稿の一次資料で数値を確認できなかったため示していません。
図4 概念図(ベクター作図)。候補の熱的な限界(安定に使える上限・変態の範囲)と、フェライトの焼結温度を、温度軸の上に並べた説明用の図です。資料ごとに測定法・記述が異なる値の並置です。値は[参考資料1・2・6・7・9・12]によります。

窒化鉄は、焼結の代わりに、低温で固める方法が探られています。スパークプラズマ焼結(548 K)で固めた例では、密度は理論値の約80%にとどまりました[参考資料9]。ボンド磁石にすると、Coey が整理したとおり、磁性粉の割合が下がるうえ、配向を揃えない場合は理想の(BH)maxがさらに低くなります(充填率0.7のランダムなボンド磁石で理想63 kJ/m³)[参考資料1]。

素材技術者の視点②:準安定相は「作る」ことより「壊さずに固める」ことが難しい

これらの材料は、合成の温度(低温)と、固化の温度(高温)が食い違うところに本質があります。窒化鉄は、低温で窒化して作るため、固めようとして温度を上げると分解します。L10-FeNi は、低温でないと規則相が安定にならないのに、低温では拡散が遅くて作れません。NITE 法が有効だったのは、窒素を入れて規則配列を「先に作り」、窒素だけを抜く、という経路で、拡散の遅さを回避したからです[参考資料6]。

この食い違いの先にあるのは、充填率と配向の勝負です。焼結できないなら、粒を単磁区サイズ(窒化鉄で約70 nm)に保ちつつ、できるだけ密に詰め、c 軸をそろえる必要があります[参考資料7]。粒を小さくすると、詰められる磁性成分の割合が下がる、というトレードオフも Ogawa は指摘しています。素材と工程の言葉で言えば、粉の粒度分布、表面の酸化膜(非磁性の被覆)、成形圧、磁場での配向、低温での固化が、材料そのものの性質と同じくらい重要な設計変数になります(本記事による解説)。

粉体の取扱いと温度管理を分けて示しています
図5 概念画像(ImageGenで生成)。粉体の取扱いと温度管理を分けて示しています。準安定な材料では高温で別の相へ変わる場合があり、一般的な焼結条件をそのまま使えるとは限りません。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。

6. 粉末の値と磁石の値 ― 保磁力はどこまで届いたか

Coey は、粉末や薄膜で報告されるエネルギー積に注意を促しています。粉末では、反磁界の補正をかけて充填率で割って「完全密度」の曲線に直すため、粉末の値は誤解を招くほど楽観的で、磁石の値のほうが実用に近い、とします。薄膜の「永久磁石」は、一様に磁化された薄膜が外へほとんど磁界を出さないため、エネルギー積が実質ゼロになる、いわば言葉の矛盾(oxymoron)だとも述べます事実[参考資料1]。

保磁力はどこまで届いたか(kA/m、条件の違う値の並置) 試料の形態(粉末・固化体・天然鉱物)が違います。優劣や、磁石の性能を示すものではありません。 Fe16N2 粉末を磁場中で固化(充填率低) Ogawa 2024:2.5 kOe 199 Fe16N2 のスパークプラズマ焼結体 密度約80%、最大値 86.5 Fe16N2 のリーチング法試料 最大値 121 L10-FeNi 粉末(NITE 法、S=0.71) 無秩序相は14.5 142 L10-FeNi 隕石由来の鉱物 室温 95.5 [参考]焼結フェライト Y30H-1 HcJ 235〜290 235–290 [参考]焼結ネオジム N35 HcJ 最小値 955 0 200 400 600 800 1000 例:398 ※ 破線は、Br=1.0 T の磁石の動作点で μ0HcJ が Br の半分を超える条件(Hirosawa ら)を当てはめた HcJ =398 kA/m(本稿の計算の例)。  実際の条件は動作温度での値で、室温の値より高い HcJ が要ります。 ※ 出典:Ogawa[参考資料7]、SPS 焼結体[参考資料9]、リーチング[参考資料10]、Goto ら[参考資料6]、Lewis ら[参考資料4]、Eclipse[参考資料18]、Arnold[参考資料17]。
図6 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。候補の保磁力の報告値(粉末・固化体・天然鉱物)と、参考の焼結磁石(フェライト、ネオジム)。破線は、Br=1.0 T の磁石を (BH)max の点で使う場合に必要な HcJ の例(398 kA/m、本稿の計算)。試料の形態が異なり、優劣や磁石の性能を示すものではありません。値は[参考資料4・6・7・9・10・17・18]によります。
本稿の計算(3):必要な保磁力の例

本稿の計算Hirosawa らの条件((BH)max の点で使うとき、使う温度で μ0HcJ が Br の半分を超える)[参考資料2]を、Br=1.0 T の磁石(例示)に当てはめると、HcJ は約398 kA/m 以上(0.5 T÷μ0)が必要です。図6の窒化鉄・L10-FeNi の報告値(86.5〜199 kA/m)は、その約2割〜5割です(86.5÷398=22%、199÷398=50%)。

前提と限界:Br=1.0 T は説明のための例で、実際に要る保磁力は磁気回路と動作温度で決まります(動作温度では室温より HcJ が下がるため、室温の値はさらに高く要る)。粉末・固化体・天然鉱物の値は、磁石としての Br・HcJ ではありません。窒化鉄の値は、充填率・密度・配向の違う試料の最大値です。

素材技術者の視点③:「保磁力」を一桁上げるのは、材料より組織の仕事

焼結フェライト(HcJ 235〜290 kA/m、Eclipse Magnetics のデータシート)[参考資料18]は、窒化鉄の固化体や FeNi 粉末と同じ桁の保磁力に、すでに届いています。ただしフェライトは、Br が小さいので、必要な保磁力も小さくて済みます。Br が0.4 T なら、必要な HcJ は本稿の計算約159 kA/m(0.2 T÷μ0)です。窒化鉄・FeNi が高い Br の磁石になるには、Br を保ったまま、保磁力を数倍に上げる必要があり、そのための道具は、第4章の窒化鉄・MnAl・フェライトの例にあるとおり、粒の大きさ・欠陥(MnAl の逆位相境界)・粒界(フェライトの焼結での粒成長)の制御です[参考資料11・12]。

Coey は、新しい磁石材料の開発を、次の4つの関門で整理しています。(1)手頃な元素、(2)有用な固有の磁気特性、(3)保磁力を生む微細組織(高い磁化ほど難しい)、(4)工業生産の道筋。「永久磁石の開発に、ホームランはない」とも述べます[参考資料1]。素材技術者としては、固有の磁気特性(第2の関門)の数字だけでなく、第3・第4の関門がどこまで進んでいるかを問う必要があります(本記事による解説)。

7. 企業の主張をどう読むか

企業の実用化の発表は、目標・計画と実績を分けて読みます。本稿で確認できたものを整理します。

  • トヨタ(2018年2月20日の発表):Nd の一部を La・Ce で置換し、Nd 使用量を最大50%減らす磁石。Tb・Dy は使わない。発表は「量産技術の開発を加速し、自動車やロボットでの早期の採用をめざす」で、実用化の状況は確認できなかった未確定/将来[参考資料15]
  • 窒化鉄磁石の事業化をめざす企業:Niron Magnetics の公開資料の確認を試みましたが、公式サイトとして想定したドメイン(niromagnetics.com)を、本稿の作業環境から名前解決できず、同社の量産時期・性能・工場計画などの主張は確認できなかったため、本稿では扱いません
  • 標準化の動き:IEC 60404-8-1:2023(第4版)は、熱間加工の REFeB 磁石、HDDR 法の REFeB ボンド磁石、La・Co 置換の高エネルギーフェライト、等方性の REFeN ボンド磁石を追加しました[参考資料20]。窒化鉄・MnAl・L10-FeNi を対象にした規格は確認できませんでした(第9章)
  • 輸出管理:中国商務部の公告2025年第62号(2025年10月9日)は、「磁材製造」技術として、Sm-Co、Nd-Fe-B に加えCe 磁石の製造技術を輸出管理の対象としましたが、公告第70号により2026年11月10日まで停止中です(確認日 2026年10月10日)事実[参考資料27]。詳しい段階は、本シリーズ「永久磁石とレアアース」編にまとめています

企業の「世界初」「画期的」という表現は、企業や研究者の主張として扱い、本稿では、数値は条件つきで、資料に書かれた範囲だけを示しました。

8. 限界と、確認できなかったこと

(1) 原典の確認範囲

Kuz’min ら[参考資料3]、Lewis ら[参考資料4]、Coey(1994)[参考資料8]、窒化鉄の固化体の論文[参考資料9・10]、Pathak ら[参考資料14]、Cui ら[参考資料16]は、出版社のサイトに接続できなかったり、本文が非公開だったりしたため、要旨(書誌データベースの記載)のみ確認しています。Cui らの総説(Acta Materialia 158, 118–137)は、本文を確認していないため、内容を引用していません。

(2) 窒化鉄の値

窒化鉄の飽和磁化の値(Tesla 換算)は、密度を一次情報で確認できなかったため、A·m²/kg のまま示しています。窒化鉄磁石の企業の主張(Niron Magnetics を含む)は確認できませんでした。Fe16N2 のバルク磁石としての (BH)max の実測値は、本稿の資料では確認できていません。

(3) MnAl・FeNi の値

MnAl の異方性定数と、市販・試作の MnAl-C 磁石の性能は、本稿の資料で確認できませんでした。L10-FeNi の異方性は文献間でばらつき(0.2〜1.3 MJ/m³)、本稿は範囲で示しています。Lewis らの (BH)max の見積もり(335 kJ/m³ 超)は予備的です。

(4) 計算の前提

第3章の「窒化鉄で使える Br の上限」と第6章の「必要な保磁力」は、保磁力が異方性磁界の20〜30%という希土類磁石の経験則と、(BH)max の点で使う設計を仮定した概算です。窒化鉄磁石の性能の予測ではありません。

(5) 範囲外

アルニコ、Co ナノワイヤー、交換スプリング磁石、1:12 型の薄膜、新規化合物の計算スクリーニング、価格と価格の予測、添加元素の個別の効果は扱っていません。永久磁石の全体像は「永久磁石とレアアース」編、磁気熱量材料は「磁気熱量効果と磁気冷凍」編、薄膜の磁性体は「スピントロニクス材料」編で扱います。

この記事のまとめ
  • 狙いは、ネオジム(上限約516 kJ/m³)とフェライト(約45 kJ/m³)の間のすき間です。フェライトは市販品で自分の上限の約72〜91%に達しています事実/本稿の計算
  • 磁化は3d 金属で稼げても、異方性は構造の工夫で肩代わりさせる必要があります。κ>1 なら形に縛られない磁石、約0.5以上なら形に制約のある磁石が可能です事実
  • 候補は、準安定で焼結できません。窒化鉄は約200 ℃、Sm-Fe-N は約600 ℃で分解し、L10-FeNi は変態温度が200〜320 ℃で、拡散が遅く作れません事実
  • 粉末・固化体の保磁力は、86.5〜199 kA/m にとどまります。Br=1.0 T の磁石の動作点で要る保磁力の例(約398 kA/m)の約2〜5割です事実/本稿の計算
  • 企業の主張は、目標と実績を分けます。トヨタの Ce・La 置換は2018年の発表で、実用化の状況は未確認です未確定/将来

9. 評価・標準の読み方

レアアースフリー候補の性能は、まず粉末や小さな試料で、振動試料型磁力計(VSM)・SQUID・トルク測定・スイッチング磁界分布などで測る固有の磁気特性(Ms、異方性、Hk、キュリー温度)と、固化した試料のヒステリシス(Br、HcJ、(BH)max)に分かれます。磁石としての性能(Br・HcJ・(BH)max)は、体積全体が均質とみなせる試料を、規格に沿って測ったものです[参考資料19・23]。

評価項目ISOIEC・IEEEJISASTM(番号・題名のみ)測定条件で値が変わる点
減磁曲線・Br・HcJ・(BH)max(閉磁路、焼結・ボンド磁石)確認できなかったIEC 60404-5:2015「Magnetic materials – Part 5: Permanent magnet (magnetically hard) materials – Methods of measurement of magnetic properties」(第3版)[19]
IEEE:確認できなかった
JIS C 2501:2019「永久磁石試験方法」(IEC 60404-5:2015 の MOD)[22]ASTM A977/A977M「Standard Test Method for Magnetic Properties of High-Coercivity Permanent Magnet Materials Using Hysteresigraphs」(確認した版:A977M-07〔2013年再承認〕)[25]測定温度(JIS C 2501 は23±5 ℃を推奨)。HcJ が1.6 MA/m を超えると閉磁路では誤差が出ることがある(JIS C 2500 の注記[23])。ボンド磁石は充填率・配向が値を決める
高保磁力磁石の開磁路測定(超電導磁石、反磁界補正)確認できなかったIEC 60404-18:2025(第1版、2025-02-20)[21]。IEC 60404-8-1 に規定する材料のように、体積全体が均質とみなせる磁石が対象JIS C 2500:2022「超電導磁石を用いる開磁路法による永久磁石の磁気特性測定方法」[23]確認できなかった反磁界補正の方法で、測った減磁曲線が変わる。小さな試料・粉末では形状の影響が大きい
材料グレードの最小値(フェライト、REFeN・REFeB のボンド磁石など)確認できなかったIEC 60404-8-1:2023(第4版、2023-09-20)。熱間加工 REFeB、HDDR ボンド、La・Co 置換フェライト、等方性 REFeN ボンドを追加[20]JIS C 2502:2019「永久磁石材料」(IEC 60404-8-1:2015 の MOD)[24]ASTM A1054「Standard Specification for Sintered Ferrite Permanent Magnets」(確認した版:A1054-16)[26]規格の最小値は保証値で、メーカーの典型値や研究論文の最大値と異なる。対象は商用化された系統のみ
窒化鉄・MnAl・L10-FeNi(候補材料)の固有特性、粉末・薄膜の磁気測定確認できなかった該当する規格は確認できなかった確認できなかった確認できなかった研究ごとに、粉末か薄膜か固化体か、温度、反磁界補正の有無が異なる。報告値の比較には、試料の形態と測定法の確認が必須

各行の規格の番号・題名・版は事実(IEC・JSA・AFNOR の書誌ページ、Arnold の技術ノートの参考文献で確認)。表の整理は本稿の計算に当たる編集作業です。ASTM の規格は、ASTM のサイトを開かず、ASTM 以外の公開資料で番号・題名を確認した範囲のみ記載し、試験条件・手順・合否基準は書いていません。規格の本文は有料で確認していません。

位置づけの違い:IEC 60404 は国際規格(TC 68)、JIS C 2501・C 2502 はそれぞれ IEC 60404-5・60404-8-1 の2015年版を基にした国内規格(MOD)、ASTM は米国の業界規格です。いずれも、商用化された磁石の系統(焼結ネオジム、サマリウムコバルト、フェライト、ボンド磁石)が対象で、レアアースフリーの候補材料を直接の対象にした規格は確認できませんでした。

規格の読み方の注意

  • 規格は「試験方法」であり、性能を保証するものではない。規格に載る材料は、すでに商用化された系統です。候補材料の数値が「規格に準拠」と書かれていても、その材料が規格のグレードに該当するわけではありません
  • 同じ「保磁力」でも、試料の形態で意味が変わる。粉末の保磁力、固化体の HcJ、薄膜の保磁力は、同じ数字でも磁石としての意味が違う。反磁界補正や充填率の扱いを確認する
  • 研究論文の値は、規格値でも保証値でもない。最大値・典型値・最小値のどれか、温度、試料数を併記して読む

10. 用語集

ギャップ磁石
ネオジム磁石とフェライト磁石の間の性能をねらう磁石。
κ(硬さのパラメータ)
異方性エネルギーと静磁エネルギーの比の平方根。1超なら形に縛られない磁石。
セミハード
κが0.1〜1の材料。形による反磁界の低減が要る。
異方性磁界 HA
磁化を回すのに要る磁界の物理的な上限。
準安定相
最も安定ではないが、速度論的に残る相。加熱で分解・変化する。
Fe16N2(窒化鉄)
鉄と窒素だけの準安定相。約200 ℃で分解。
τ-MnAl
MnとAlの準安定な強磁性相(L10 型の規則構造)。
L10-FeNi(テトラ鉄鉱)
FeとNiが層状に規則配列した合金。隕石に天然に存在。
規則度 S
規則配列の程度。完全な規則で1。
NITE 法
窒素を入れて規則配列を作り、窒素を抜く(FeNi の合成法)。
逆位相境界(APB)
規則構造のずれた境界。MnAl で保磁力を下げる。
ナノコンポジット磁石
硬磁性相と高磁化の相を、ナノスケールで複合した磁石。
REFeN
希土類・鉄・窒素の化合物(Sm-Fe-N など)。

11. 参考資料(一次情報)

  1. Coey J. M. D. “Perspective and Prospects for Rare Earth Permanent Magnets”, Engineering 6, 119–131 (2020), DOI 10.1016/j.eng.2018.11.034(オープンアクセス) — doi.org/10.1016/j.eng.2018.11.034
  2. Hirosawa S., Nishino M., Miyashita S.(NIMS) “Perspectives for high-performance permanent magnets: applications, coercivity, and new materials”, Adv. Nat. Sci.: Nanosci. Nanotechnol. 8, 013002 (2017), DOI 10.1088/2043-6254/aa597c(オープンアクセス) — doi.org/10.1088/2043-6254/aa597c
  3. Kuz’min M. D. ほか “Towards high-performance permanent magnets without rare earths”, J. Phys.: Condens. Matter 26, 064205 (2014), DOI 10.1088/0953-8984/26/6/064205(要旨のみ確認) — doi.org/10.1088/0953-8984/26/6/064205
  4. Lewis L. H. ほか “Inspired by nature: investigating tetrataenite for permanent magnet applications”, J. Phys.: Condens. Matter 26, 064213 (2014), DOI 10.1088/0953-8984/26/6/064213(要旨のみ確認) — doi.org/10.1088/0953-8984/26/6/064213
  5. Woodgate C. D. ほか “Revisiting Néel 60 years on: The magnetic anisotropy of L10 FeNi (tetrataenite)”, J. Appl. Phys. 134, 163905 (2023), DOI 10.1063/5.0169752(プレプリント arXiv:2307.15470 の本文を確認) — doi.org/10.1063/5.0169752
  6. Goto S. ほか “Synthesis of single-phase L10-FeNi magnet powder by nitrogen insertion and topotactic extraction”, Sci. Rep. 7, 13216 (2017), DOI 10.1038/s41598-017-13562-2(オープンアクセス) — doi.org/10.1038/s41598-017-13562-2
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  8. Coey J. M. D. “The magnetization of bulk α″Fe16N2 (invited)”, J. Appl. Phys. 76, 6632–6636 (1994), DOI 10.1063/1.358156(要旨のみ確認) — doi.org/10.1063/1.358156
  9. Grigoras M. ほか “Microstructural and Magnetic Evolution of α″-Fe16N2 Bulk Magnets Consolidated by Spark Plasma Sintering”, Crystals 15(11), 969 (2025), DOI 10.3390/cryst15110969(要旨のみ確認) — doi.org/10.3390/cryst15110969
  10. Kojima T. ほか “FeNi and Fe16N2 Magnets Prepared Using Leaching”, Mater. Trans. 60(6), 1066–1071 (2019), DOI 10.2320/matertrans.M2019019(要旨のみ確認) — doi.org/10.2320/matertrans.M2019019
  11. Arapan S. ほか “Influence of antiphase boundary of the MnAl τ-phase on the energy product”, Phys. Rev. Mater. 3, 064412 (2019)(プレプリント arXiv:1903.06518 を確認) — doi.org/10.1103/PhysRevMaterials.3.064412
  12. Granados-Miralles C., Jenuš P. “On the potential of hard ferrite ceramics for permanent magnet technology—a review on sintering strategies”, J. Phys. D: Appl. Phys. 54, 303001 (2021), DOI 10.1088/1361-6463/abfad4(オープンアクセス) — doi.org/10.1088/1361-6463/abfad4
  13. Lee J. ほか “Anisotropic characteristics and improved magnetic performance of Ca–La–Co-substituted strontium hexaferrite nanomagnets”, Sci. Rep. 10, 15929 (2020), DOI 10.1038/s41598-020-72608-0(オープンアクセス) — doi.org/10.1038/s41598-020-72608-0
  14. Pathak A. K. ほか “Cerium: An Unlikely Replacement of Dysprosium in High Performance Nd–Fe–B Permanent Magnets”, Adv. Mater. 27, 2663–2667 (2015), DOI 10.1002/adma.201404892(要旨のみ確認) — doi.org/10.1002/adma.201404892
  15. Toyota Motor Corporation “Toyota Develops New Magnet for Electric Motors Aiming to Reduce Use of Critical Rare-Earth Element by up to 50%”(2018年2月20日、ニュースリリース) — global.toyota/en/newsroom/corporate/21139684.html
  16. Cui J. ほか “Current progress and future challenges in rare-earth-free permanent magnets”, Acta Mater. 158, 118–137 (2018), DOI 10.1016/j.actamat.2018.07.049(要旨のみ確認) — doi.org/10.1016/j.actamat.2018.07.049
  17. Arnold Magnetic Technologies “Neodymium Iron Boron Magnet Catalog”(Rev. 210607) — arnoldmagnetics.com/…/Arnold-Neo-Catalog.pdf
  18. Eclipse Magnetics “Ferrite and ceramic magnets datasheet”(流通業者のデータシート) — eclipsemagnetics.com/…/ferrite_and_ceramic_datasheet.pdf
  19. IEC “IEC 60404-5:2015” 製品ページ(IEC Webstore) — webstore.iec.ch/en/publication/22142
  20. IEC “IEC 60404-8-1:2023” 製品ページ(IEC Webstore) — webstore.iec.ch/en/publication/68440
  21. IEC “IEC 60404-18:2025” 製品ページ(IEC Webstore) — webstore.iec.ch/en/publication/76495
  22. 日本規格協会(JSA) JIS C 2501:2019「永久磁石試験方法」閲覧用プレビュー — webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_jis_c_02501_000_000_2019_j_ed10_ch.pdf
  23. 日本規格協会(JSA) JIS C 2500:2022「超電導磁石を用いる開磁路法による永久磁石の磁気特性測定方法」閲覧用プレビュー — webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_jis_c_02500_000_000_2022_j_ed10_ch.pdf
  24. 日本規格協会(JSA) JIS C 2502:2019「永久磁石材料」閲覧用プレビュー — webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_jis_c_02502_000_000_2019_j_ed10_ch.pdf
  25. Arnold Magnetic Technologies “What is the Magnetic Hysteresis Loop”(TECHNote TN 1501 rev.2015a。参考文献に ASTM A977M-07〔2013年再承認〕の番号・題名を記載) — arnoldmagnetics.com/…/Tech-Notes_Hysteresis-Loop.pdf
  26. AFNOR “ASTM A1054-16” 書誌ページ(AFNOR Editions。ASTM のサイトではない) — boutique.afnor.org/…/am95890/275610
  27. 中国 商務部 公告2025年第62号「公布对稀土相关技术实施出口管制的决定」2025年10月9日(中国語) — mofcom.gov.cn/…/art_04a2df12…

12. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
Nd2Fe14B(理想515 kJ/m³)と BaFe12O19(45 kJ/m³)の間のギャップ磁石の探索があまり成功していないこと、ギャップ磁石の価格性能の基準(1 J あたり約1ドル以下)、κ の定義と硬磁性(κ>1)・セミハード(0.1〜1、約0.5以上で磁石が可能、エネルギー積は理想の約10%程度)、窒化鉄・L10-FeNi がセミハード、保磁力が異方性磁界の20〜30%に届くまでの年数、Sm2Fe17N3 の値(TC 749 K、1.54 T、K1 8.6 MJ/m³、(BH)max 472 kJ/m³、約600 ℃で分解、配向ボンド磁石は200 kJ/m³ 未満・粉末の約半分、溶融急冷粉164 kJ/m³・ナノ結晶約15 nm、生産量は Nd-Fe-B の1%未満)、Nd2Fe14B の値(1.61 T、K1 4.3、(BH)max 516)、粉末・薄膜の値の注意、La・Ce 置換、コバルトに関する記述、4つの関門Coey(2020)の総説
出典1 https://doi.org/10.1016/j.eng.2018.11.034
事実
Nd2Fe14B の HA=5.33 MA/m、使う温度で μ0HcJ が Br の半分を超える必要、MnAl(C) は Js が約0.7 T で HEV・EV 用の候補から外れること、Fe16N2・FeCo・L10-FeNi の薄膜・粒子はバルク磁石の基盤にするには技術的な困難があること、希土類が異方性の起源(4f 電子)であること、T 過剰の R-T 化合物で La・Ce が磁気モーメントを持たないことHirosawa ら(2017、NIMS)
出典2 https://doi.org/10.1088/2043-6254/aa597c
事実
3d 金属で強い異方性を得る一般的な設計指針がないこと(要旨)Kuz’min ら(2014)の要旨
出典3 https://doi.org/10.1088/0953-8984/26/6/064205
事実
隕石由来テトラ鉄鉱(NWA 6259、約 Fe55Ni44):室温の保磁力95.5 kA/m、キュリー温度830 K 以上、3つの直交する変種が残留磁化を下げること、(BH)max が335 kJ/m³ を超える可能性(予備的)Lewis ら(2014)の要旨
出典4 https://doi.org/10.1088/0953-8984/26/6/064213
未確定/将来
L10-FeNi の異方性:実測0.2〜0.93 MJ/m³、計算0.23〜0.78 MJ/m³、解析で1.0〜1.3 MJ/m³ になりうること、ずれの原因(ナノスケールの多結晶・多変種の組織)、キュリー温度が830 K 以上Woodgate ら(2023)
出典5 https://doi.org/10.1063/5.0169752
事実
L10-FeNi:Js 1.6 T、キュリー温度550 ℃以上、異方性1×106 J/m³ 超(引用値)、規則・不規則変態200〜320 ℃、NITE 法で規則度 S=0.71、保磁力14.5→142 kA/mGoto ら(2017)
出典6 https://doi.org/10.1038/s41598-017-13562-2
事実
Fe16N2 粉末の Ms 226 A·m²/kg(300 K、鉄218)、K 約9.6×106 erg/cm³、Hk 約9.5 kOe、約200 ℃で分解、単磁区の臨界粒径約70 nm、鉄原子の位置ごとのモーメント(2.6±0.3 μB)、低充填率で配向した固化体の Mr/Ms 0.80・保磁力2.5 kOe、高充填率で配向が確認できないこと、Sm-Fe-N とのナノコンポジット、数十グラムの合成小川(2024、東北大学)
出典7 https://doi.org/10.14243/jsaem.32.524
事実
鉄原子の平均磁気モーメントが2.3〜2.6 μB、窒素が隣にない4d 位置で約2.9 μBCoey(1994)の要旨
出典8 https://doi.org/10.1063/1.358156
事実
Fe16N2 のスパークプラズマ焼結体(548 K・60 MPa、密度約80%、約230 A·m²/kg、最大保磁力86.5 kA/m、Mr/Ms 0.42、α″相は約523 K まで安定)Grigoras ら(2025)の要旨
出典9 https://doi.org/10.3390/cryst15110969
事実
リーチング法の Fe16N2:保磁力最大121 kA/m、飽和磁化は鉄より小さい、L10-FeNi の相は確認されなかったKojima ら(2019)の要旨
出典10 https://doi.org/10.2320/matertrans.M2019019
事実
τ-MnAl:Ms 0.60 MA/m、(BH)max 50 kJ/m³(引用値)、上限の見積もり約120 kJ/m³、準安定、APB・双晶による保磁力の低下、微細な双晶と APB で(BH)max が理論値の5%まで下がりうることArapan ら(2019)
出典11 https://doi.org/10.1103/PhysRevMaterials.3.064412
事実
M 型フェライトの Bs 0.48 T・TC 473 ℃・K1 0.35〜0.36 MJ/m³・理論 (BH)max 約45 kJ/m³、市販の異方性品33.0〜41.8 kJ/m³、La・Co 置換品最大44、等方性約10、保磁力の温度依存、焼結1,100〜1,350 ℃と粒成長による保磁力低下(300 kA/m 未満)、最も多く生産される磁石材料Granados-Miralles と Jenuš(2021)
出典12 https://doi.org/10.1088/1361-6463/abfad4
事実
Ca・La・Co 置換 Sr フェライトのサブミクロン粒子:保磁力最大7,880 Oe(約627 kA/m)、磁化71〜72 emu/g を維持Lee ら(2020)
出典13 https://doi.org/10.1038/s41598-020-72608-0
事実
Ce・Co 同時添加の Nd-Fe-B で、固有保磁力が T≧453 K の範囲で既知の最高値(論文の報告)Pathak ら(2015)の要旨
出典14 https://doi.org/10.1002/adma.201404892
事実
トヨタの Ce・La 置換磁石(2018年2月20日の発表:Nd 最大50%減、Tb・Dy 不使用、3つの技術)と早期採用をめざす記述。実用化の状況は未確認トヨタのニュースリリース(企業の発表・目標)
出典15 https://global.toyota/en/newsroom/corporate/21139684.html
未確定/将来
レアアースフリー磁石の総説の存在と、非希土類磁石の目標が「ギャップを埋めること」であること(要旨のみ確認。本文は引用していない)Cui ら(2018)の要旨
出典16 https://doi.org/10.1016/j.actamat.2018.07.049
事実
焼結ネオジム N52((BH)max 典型406 kJ/m³)、N35 の HcJ 最小値955 kA/mArnold のカタログ(Rev. 210607)
出典17 https://www.arnoldmagnetics.com/wp-content/uploads/2019/06/Arnold-Neo-Catalog.pdf
事実
焼結フェライト Y30H-1:Br 380〜400 mT、Hcj 235〜290 kA/m(流通業者のデータシート)Eclipse Magnetics
出典18 https://www.eclipsemagnetics.com/site/assets/files/22199/eclipsemagnetics_ferrite_and_ceramic_datasheet.pdf
事実
規格:IEC 60404-5:2015、IEC 60404-8-1:2023(第4版、追加された材料)、IEC 60404-18:2025IEC Webstore
出典19 https://webstore.iec.ch/en/publication/22142
出典20 https://webstore.iec.ch/en/publication/68440
出典21 https://webstore.iec.ch/en/publication/76495
事実
規格:JIS C 2501:2019、JIS C 2500:2022(閉磁路で HcJ が1.6 MA/m を超えると誤差)、JIS C 2502:2019JSA の閲覧用プレビュー
出典22 https://webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_jis_c_02501_000_000_2019_j_ed10_ch.pdf
出典23 https://webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_jis_c_02500_000_000_2022_j_ed10_ch.pdf
出典24 https://webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_jis_c_02502_000_000_2019_j_ed10_ch.pdf
事実
規格:ASTM A977M-07(題名)、ASTM A1054-16(題名・適用範囲の記述)。ASTM のサイトは開かず、Arnold の参考文献と AFNOR の書誌ページで確認Arnold TN 1501、AFNOR Editions
出典25 https://www.arnoldmagnetics.com/wp-content/uploads/2017/10/FINAL_Tech-Library_Tech-Notes_Hysteresis-Loop.pdf
出典26 https://www.boutique.afnor.org/en-gb/standard/astm-a105416/standard-specification-for-sintered-ferrite-permanent-magnets/am95890/275610
事実
中国商務部の公告2025年第62号で、「磁材製造」技術が Sm-Co・Nd-Fe-B・Ce 磁石の製造技術を指すこと。公告第70号による停止(2026年11月10日まで)商務部の公告
出典27 https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/blgg/gg/2025/art/2025/art_04a2df12aa7c4529be797fd70eaf0dc8.html
事実
上限と実測の距離(フェライト約45.8 kJ/m³ の72〜91%、MnAl 約113 kJ/m³ の約44%、FeNi 約509 kJ/m³ の約66%、Sm2Fe17N3 の42%未満)、Fe16N2 の異方性磁界が Nd2Fe14B の約14%、保磁力の目安150〜230 kA/m と Br の上限0.4〜0.6 T、Br=1.0 T 磁石の HcJ 398 kA/m と図6の値との比(22〜50%)、Br 0.4 T の磁石の HcJ 約159 kA/m本稿の計算。(1/4)μ0Ms²、HA と HcJ の割合(Coey の20〜30%)、μ0HcJ>Br/2(Hirosawa ら)を仮定。実際の値は磁気回路・動作温度・試料で異なる。窒化鉄磁石の性能の予測ではない本稿の計算
窒化鉄の磁化のテスラ換算、Fe16N2 バルク磁石の(BH)max の実測、MnAl の異方性定数・MnAl-C 磁石の性能、窒化鉄磁石の企業の主張(Niron Magnetics を含む)、アルニコ・Co ナノワイヤー・1:12 薄膜、価格、焼結ネオジムの焼結温度本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかった、または本稿の方針で扱わなかったため記載していない解説
「磁化は元素で、異方性は構造で決まる」「準安定相は作るより壊さずに固めることが難しい」「保磁力を一桁上げるのは組織の仕事」という読み取り。レアアースフリーを「異方性を構造の工夫で肩代わりさせる試み」とする整理公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない解説
図2〜4・6が実際の測定図・実データではなく説明のための作図であること。図1と図5がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月10日/出典は一次情報(査読論文、東北大学の解説論文、磁石メーカーの公称値、トヨタの発表、中国商務部の公告、規格団体の書誌ページ)に限定しています。規格の本文は有料のため確認していません。ASTM International のサイトは、同団体が AI の利用を禁じる旨を表示しているため、開いていません。 一部の論文(Kuz’min ら、Lewis ら、Coey 1994、窒化鉄の固化体の論文、Pathak ら、Cui ら)は要旨のみ確認しました。粉末・薄膜・小さな固化体・天然鉱物の値と理論計算を含むため、磁石としての性能や量産品の値として読まないでください。構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 窒化鉄磁石の企業の主張(Niron Magnetics を含む)、Fe16N2 バルク磁石の(BH)max、MnAl の異方性定数、トヨタ磁石の実用化の状況については、確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用の概念図です。図2〜4・6はベクター作図、図1と図5はAI生成イメージであり、いずれも実際の顕微鏡像・製品の実物を示すものではありません。