COMPANY PROFILE / 次世代蓄電
CATL(寧徳時代)
― リチウムイオン(LFP・三元)で年間661GWhを販売し、ナトリウムイオン「Naxtra」の量産にも踏み出している電池メーカー
CATL(Contemporary Amperex Technology Co., Limited)は、乗用車・商用車用の動力電池と蓄電用の電池を作る電池メーカーです。2025年の電池の販売量は661GWh(前年比+39.16%)、売上は4,237億元で、うち動力電池システムが74.70%、蓄電電池システムが14.74%を占めます。化学系はLFP(リン酸鉄リチウム)と三元(NCM)が主で、2025年4月にナトリウムイオン電池「Naxtra」を発表し、会社は2026年末に本格量産に入る計画です。本稿は、CATLのリチウムイオン(LFP・三元)とナトリウムイオンに絞り、何を作り、どこに投資し、誰と組み、どこまでが実績でどこからが計画かを、深圳・香港の開示と会社の公式資料、政府の公式文書の範囲で整理します。全固体電池は本シリーズの別分野で扱うため、ここでは取り上げません。投資の助言ではありません。
- 30秒でわかるCATLと、次世代蓄電での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 次世代蓄電の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(蓄電に関わる範囲を中心に)
- 次世代蓄電にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は次世代蓄電で何を目指しているか
- 次世代蓄電分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるCATLと、次世代蓄電での立ち位置
香港 03750香港には2025年5月20日に上場(年度報告)
蓄電システム(従)化学系の中心:LFP・三元(NCM)・ナトリウムイオン。リサイクル(邦普)も傘下にある
CATLは、電池の化学系を1つに絞らず、LFP・三元・ナトリウムイオン・LFPと三元の混合(超混)を並べ、用途と価格帯ごとに使い分ける会社です 事実。1つの電池パックにLFPとナトリウムイオンなど複数の化学系を入れる設計(Freevoy)も発表しています。つまりCATLは「1つの正解」ではなく複数の化学系を量産で持つことを強みにしており、次世代蓄電の中では、量産規模のある既存化学(LFP・三元)と、これから量産を広げるナトリウムイオンの両方を見る必要があります。なお、会社の資料に載る世界シェアなどの順位は調査会社(SNE Research等)の推計で、本稿は採用しません。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:正式名称は寧徳時代新能源科技股份有限公司(簡体字では宁德时代新能源科技股份有限公司)、英文は Contemporary Amperex Technology Co., Limited、略称はCATLです。邦普(Brunp)は傘下のリサイクル・材料の子会社で、本体とは別の法人です。Naxtra、Shenxing(神行)、Qilin(麒麟)、Freevoy(驍遥)、TENERは製品・ブランドの名前です。ロゴ画像は公式サイトが公開しているものを取得しました。
公式サイト:https://www.catl.com/en/3. 次世代蓄電の世界で、この会社はどこにいるか
主たる類型はセル・材料メーカーです。会社の資料から、化学系ごとの位置づけを整理します 事実。
| 化学系 | 主な用途 | 会社の資料で確認できた内容(メーカー公称) | 区分 |
|---|---|---|---|
| LFP(リン酸鉄リチウム) | 乗用車・商用車・蓄電・船舶・電動二輪など | 年度報告の製品別の技術指標:角形・円筒のセル質量エネルギー密度180〜200Wh/kg、レート0.25C〜5C、サイクル4,000〜15,000回(製品群の範囲で、測定条件は記載なし)。第2世代神行は「LFPで航続800km・ピーク12C充電」と説明(2025年4月) | 事実(会社の説明) |
| 三元(NCM) | 乗用車・商用車・電動工具など | 年度報告:角形のセル質量エネルギー密度220〜310Wh/kg、レート1C〜5C、サイクル2,000〜6,000回(製品群の範囲)。第3世代麒麟は「セル280Wh/kg、航続1,000km、10C充電」と説明(2026年4月) | 事実(会社の説明) |
| LFPと三元の混合(超混) | 増程式・プラグインなど | 第2世代 Freevoy 超混電池:LFPの骨格にNCMを粉体の粒子レベルで均一に混ぜる。エネルギー密度230Wh/kg、10C充電(2026年4月、会社の説明) | 事実(会社の説明) |
| ナトリウムイオン(Naxtra) | 乗用車・商用車の始動電池・蓄電 | 乗用車用は175Wh/kg、-40℃で90%の使用可能出力を維持、10,000サイクル超(2025年4月)。セルかパックか、サイクルの試験条件は記載なし | 事実(会社の説明) |
出典:出典1 https://disc.static.szse.cn/download/disc/disk03/finalpage/2026-03-10/f019f96b-b960-410b-b88f-08838a36d81b.PDF 出典4 https://www.catl.com/en/news/6401.html 出典6 https://www.catl.com/en/news/6811.html
会社は2026年4月の説明で、LFPは理論上のエネルギー密度の限界に近く急速充電を軸にした技術路線が向く、三元は高エネルギー密度で先頭に立ち続ける、ナトリウムイオンは極端な温度と蓄電に広い可能性がある、と化学系ごとの位置づけを述べています 事実。これは会社の見解です。「凝聚態電池」は会社が別の製品群として発表していますが、本稿はその電解質の系統を一次資料で確認できていないため、化学系の分類と比較には入れません。
4. 会社の規模(蓄電に関わる範囲を中心に)
CATLは電池メーカーなので、会社全体の数字の大半が電池事業の数字です。会社全体を簡潔に示し、事業別(動力・蓄電・材料)の数値を中心にします 事実。金額は人民元のままで、為替換算はしていません。
| 指標(千元) | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|
| 営業収入 | 400,917,045 | 362,012,554 | 423,701,834 |
| 上場会社株主帰属純利益 | 44,121,248 | 50,744,682 | 72,201,282 |
| 研究開発費 | 18,356,108 | 18,606,756 | 22,146,581 |
| 研究開発費の売上比 | 4.58% | 5.14% | 5.23% |
| 事業別(2025年) | 売上(千元) | 売上に占める割合 | 売上総利益率 |
|---|---|---|---|
| 動力電池システム | 316,506,369 | 74.70% | 23.84% |
| 蓄電電池システム | 62,439,820 | 14.74% | 26.71% |
| 電池材料・回収 | 21,860,936 | 5.16% | 27.27% |
| 電池鉱物資源 | 5,978,096 | 1.41% | 11.25% |
| その他 | 16,916,612 | 3.99% | 記載なし |
| 事業別(2026年上半期) | 売上(千元) | 前年同期比 | 売上総利益率 |
|---|---|---|---|
| 動力電池システム | 192,124,890 | +46.02% | 20.63% |
| 蓄電電池システム | 53,260,967 | +87.54% | 23.96% |
| 電池材料・回収・鉱物資源 | 18,811,078 | +67.23% | 27.04% |
| 合計(営業収入) | 276,916,580 | +54.80% | 23.93% |
| 規模(2025年末) | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 従業員 | 185,839人 | 親会社16,233人、主要子会社169,606人。うち生産145,568人、技術22,901人 |
| 電池の販売量/生産量 | 661GWh / 748GWh | 在庫は186GWh(前年106GWh)。販売量は前年比+39.16%、生産量は+44.96% |
| 生産能力/建設中の能力 | 772GWh / 321GWh | 稼働率96.9%。リチウムイオン電池全体(電池システム)の数字で、化学系別の内訳は記載なし |
| 海外売上 | 129,641,258千元 | 売上の30.60%(2026年上半期は31.46%) |
| 主要顧客 | 38.96% | 上位5社の合計。最大の1社は13.73%(社名は秘密保持契約のため非開示) |
| 2026年上半期の生産能力欄 | 525GWh / 764GWh | 生産能力/建設中の能力。生産量498GWh、稼働率94.86%。年間の値か半期の値かの定義は記載を確認できなかった |
出典:出典1 https://disc.static.szse.cn/download/disc/disk03/finalpage/2026-03-10/f019f96b-b960-410b-b88f-08838a36d81b.PDF 出典2 https://disc.static.szse.cn/disc/disk03/finalpage/2026-07-25/8e6750da-b178-4be9-a74a-4b1d8fc42c58.PDF
年度報告・半年度報告は、世界シェア(2025年に動力電池使用量で39.2%など)を調査会社SNE Researchの数値で示しています。調査会社の推計なので本稿は採用しません。会社が示す販売量・売上・生産能力は会社自身の開示値です。また、蓄電用セルだけの販売量や、LFP・三元・ナトリウムの別の販売量は、本稿が確認した開示では分かれていません 未確定/将来。
5. 次世代蓄電にかけているリソース
会社全体の開示に加え、ナトリウムイオンについては公式ニュースに個別の投入額・人員があります。蓄電事業だけを切り出した人員・研究開発費は開示されていません。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 研究開発人員22,901人(2025年末、全従業員の12.32%)。博士745人・修士5,242人・学士9,418人。研究センター6か所(会社の説明)。ナトリウムイオンは2016年に研究を開始し、研究開発人員300人超(うち博士20人)と説明(2026年2月)。蓄電事業だけの人員は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(研究開発) | 研究開発費22,146,581千元(2025年、売上の5.23%)。2026年上半期は11,376,545千元。会社は過去10年の累計が900億元超と説明。ナトリウムイオンは「約100億元を投じ、約30万個の試験セルを作った」(2026年2月)、「過去10年で約12億ユーロ」(2026年6月)と、通貨の異なる2つの説明がある(算定範囲の定義は記載なし) | 事実 |
| 金(設備投資) | 2025年の投資額は49,031,517千元(前年34,726,381千元、+41.19%)。主要な非株式の投資プロジェクト5件の2025年の投入額は合計23,551,653千元(下表)。ナトリウムイオンは、福鼎基地の生産ラインの増設に50億元を投じ年産40GWhを加えた、と説明(2026年6月) | 事実 |
| 外部への出資・合弁・事業 | Stellantisとスペインで50:50の合弁(LFP、2024年12月に合意)。その他の持分投資として奇瑞汽車(香港)、湖南裕能(LFP正極材)、Merdeka Copper Gold(インドネシア)、吉利汽車などを公正価値で保有(2025年末)。2026年上半期に鉱物資源の投資運営会社「時代資源集団」を新設。英国のOctopus Energyと欧州の重トラック用交換網の合弁設立を発表(2026年上半期、会社の記載)。買収・事業売却は本稿の確認範囲では確認できなかった | 事実/確認できなかった |
| 大学・研究機関・公的資金 | 年度報告は研究開発を「自主研究を主、外部との協力を補助」と説明するだけで、大学・研究機関の名称を挙げた共同研究は確認できなかった。政府補助は財務諸表にあるが、蓄電事業に結びつく金額は本稿の確認範囲で記載を見つけられなかった | 確認できなかった |
出典:出典1 https://disc.static.szse.cn/download/disc/disk03/finalpage/2026-03-10/f019f96b-b960-410b-b88f-08838a36d81b.PDF 出典2 https://disc.static.szse.cn/disc/disk03/finalpage/2026-07-25/8e6750da-b178-4be9-a74a-4b1d8fc42c58.PDF 出典5 https://www.catl.com/en/news/6720.html 出典7 https://www.catl.com/en/news/6861.html 出典8 https://www.catl.com/en/news/6773.html
主要な製品・設備の状況
| 製品/設備 | 場所・内容 | 規模 | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電池工場(全体) | 年度報告は電池工場24か所(2025年末)、目論見書は主要13拠点(2024年末)。国内は寧徳、西寧、溧陽、宜賓、肇慶、上海、廈門、宜春、貴陽、済寧、洛陽。海外は独テューリンゲンとハンガリーのデブレツェン | 生産能力772GWh、建設中321GWh | 稼働/建設中 | 2025年末 | 1・3 |
| ハンガリー(デブレツェン) | 会社は2022年に年産100GWhを3期に分けて建設する案(投資総額は73億ユーロ以内)を承認。第1期34GWh、第2期38GWh(計72GWh)。第1期の投資予定27億ユーロ、第2期21億ユーロ | 設計能力 第1期34GWh/第2期38GWh | 建設中(年度報告・半年度報告の項目表)。目論見書は第1期の生産開始を「2025年中」と計画。量産の開始は開示から確認できなかった | 2025〜2026年 | 1・2・3 |
| スペイン(サラゴサ) | Stellantisとの50:50の合弁。LFP。投資は最大41億ユーロ | 最大50GWh(市況と当局の支援に左右されると明記) | 建設中(2026年半年度報告)。生産開始は「2026年末までを目標」(2024年12月の計画) | 2024年12月〜2026年7月 | 2・9 |
| インドネシア | 動力電池のサプライチェーン事業 | 累計投入1,483,482千元(2025年)/5,369,789千元(累計) | 建設中 | 2025年末 | 1 |
| 国内の新基地 | 山東(済寧):2025年6,801,291千元・累計8,799,218千元。中州(洛陽):7,804,396/9,767,971千元。宜昌邦普の電池材料産業園:2,262,305/16,528,380千元 | GWh規模は個別に記載なし | 建設中 | 2025年末 | 1 |
| ナトリウムイオン(量産) | 福鼎基地:50億元で年産40GWhを増設。済寧基地:年産160GWhを計画 | 40GWh(増設)/160GWh(計画) | 福鼎は「量産ラインは稼働」(会社の説明)。済寧は計画 未確定/将来 | 2026年6月 | 7 |
本稿が確認した年度報告・半年度報告・目論見書の製造拠点の一覧に、米国の工場は載っていません 事実。目論見書は海外の拡大手段として自社建設・合弁・技術供与・LRS(ライセンス、ロイヤルティ、サービス)を挙げていますが、個別の米国案件の名称・数量はこの資料からは分かりません 未確定/将来。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2011年12月16日 | 福建省寧徳市で設立 | 設立から15年ほどの会社 |
| 2016 | ナトリウムイオン電池の研究を開始(2026年の会社説明) | 量産まで約10年かけたと会社が説明 |
| 2022年 | ハンガリー・デブレツェンの工場に年産100GWh(3期)を取締役会・株主総会で承認 | 欧州で現地生産に踏み出した |
| 2024年12月10日 | StellantisとスペインでLFP電池工場の50:50合弁に合意(最大41億ユーロ) | LFPを欧州で合弁生産する計画 |
| 2025年1月7日 | 米国国防総省が1260H条の「中国の軍事企業」リストにCATLを掲載。会社は同日、誤りだと反論 | 米国事業に関する不確実性(第11章) |
| 2025年4月21日 | 初の超級科技日で、Naxtra(ナトリウムイオン)、第2世代神行、Freevoyを発表 | 「量産できるナトリウムイオン」を打ち出した |
| 2025年5月20日 | 香港証券取引所に上場。総額410億香港ドルを調達し、ハンガリー事業と運転資金に充当と説明 | 海外投資の資金基盤 |
| 2025年10月9日・11月7日 | 中国の商務部・海関総署が公告第58号で、300Wh/kg以上のリチウムイオン電池等の輸出管制を公布(施行は11月8日の予定)。11月7日の公告第70号で2026年11月10日まで暫定停止 | 輸出管理の段階(第11章) |
| 2026年2月5日 | 長安汽車と提携し、Naxtraを長安の全ブランドに供給すると発表。ナトリウムイオン乗用車は2026年半ばに市場投入の予定 | 車載での初の量産搭載計画 |
| 2026年4月 | 第3世代神行・麒麟、超混、Naxtraの量産計画を発表(21日)。海博思創とナトリウムイオン蓄電60GWh(3年)の協力を締結(会社は「契約」「戦略協力協定」と表現) | 蓄電でGWh級の数量が見える案件 |
| 2026年6月22日 | ミュンヘンでTENER Sodium(ナトリウムイオン蓄電システム)を発表 | 蓄電システムへのナトリウムの展開 |
| 2026年7月25日 | 2026年半年度報告を提出。上半期の売上2,769億元、純利益433億元 | 最新の開示 |
出典:出典1 https://disc.static.szse.cn/download/disc/disk03/finalpage/2026-03-10/f019f96b-b960-410b-b88f-08838a36d81b.PDF 出典2 https://disc.static.szse.cn/disc/disk03/finalpage/2026-07-25/8e6750da-b178-4be9-a74a-4b1d8fc42c58.PDF 出典3 https://www.catl.com/en/uploads/1/file/public/202505/20250512071033_9of2dqw816.pdf 出典4 https://www.catl.com/en/news/6401.html 出典5 https://www.catl.com/en/news/6720.html 出典6 https://www.catl.com/en/news/6811.html 出典7 https://www.catl.com/en/news/6861.html 出典9 https://www.stellantis.com/en/news/press-releases/2024/december/stellantis-and-calt-to-invest-up-to-4-1-billion-in-joint-venture-for-large-scale-lfp-battery-plant-in-spain 出典10 https://www.federalregister.gov/documents/2025/01/07/2025-00070/notice-of-availability-of-designation-of-chinese-military-companies 出典13 https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_b1ec77dd3f0d4762952904df7cdaadec.html
7. 今後の計画
2026年末までに累計1GWh海外の出荷は2027年6月から(会社の計画)
済寧160GWh(計画)福鼎は稼働と説明、済寧は計画(2026年6月)
上の内容は、すべて会社の計画・目標・予定です 未確定/将来。実績として確認できるのは、2025年の販売量661GWhや2026年上半期の売上など、開示された決算の数字です。
次はいずれも、本稿が確認した公式資料に記載がありません 未確定/将来。
Naxtraの販売価格・出荷台数・出荷GWh(蓄電用の2026年末累計1GWhの計画を除く)/ナトリウムイオンの全社売上に占める割合/ハンガリー第1期の量産開始日と歩留まり/LFP・三元・ナトリウム別の販売量・売上/輸出管理・関税が売上に与えた影響額/CATLの米国での製造拠点。
8. この会社は次世代蓄電で何を目指しているか
会社が直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 化学系を複数そろえて使い分ける戦略 | 2026年4月の超級科技日で、化学系ごとの長所と限界を説明し「複数の化学系の協調発展が必要」と述べた。Freevoyは複数の化学系を1パックに入れる設計 | 事実 |
| ナトリウムはリチウム価格変動への備えの意味もある | TENER SodiumはLFPシステムと同じ筐体・設置面積で、同じ設備にナトリウムでもリチウムでも載せられ、リチウム価格の変動に対応する手段だと会社が説明。半年度報告は電池級炭酸リチウム価格の上昇を挙げる | 事実/推測 |
| ナトリウムは蓄電で数量が先に見える | GWh単位の数字が示されているのは蓄電(海博思創60GWh、2026年末までに累計1GWh、福鼎40GWh)。車載は2026年半ばの市場投入と供給先の発表にとどまり、台数・GWhの記載がない | 推測 |
| 海外は自社工場・合弁・技術供与の併用で進める | 目論見書と年度報告が「自社建設、合弁、技術供与、LRS」を挙げる。欧州ではハンガリーの自社工場とスペインの合弁、米国は工場の記載なし | 事実/推測 |
| 材料・資源を内製と出資で押さえる | 正極材の邦普・宜昌の産業園、持分投資(湖南裕能、Merdeka)、2026年上半期の時代資源集団の新設、リサイクル21.0万トン(2025年) | 事実/推測 |
「ナトリウムイオンは蓄電が先に数量で立ち上がる」という読みの根拠は、数量の書き方の違いです。蓄電では、2026年4月に海博思創と3年60GWhの協力、2026年6月に2026年末までの累計出荷1GWhの計画と福鼎の増設40GWhが示されました 事実。一方、車載は、長安汽車への供給と2026年半ばの市場投入が述べられるだけで、台数もGWhもありません。LFPとの比較でも、蓄電は筐体の共通化で置き換えやすいと会社が説明しています。このため、最初に量が見えてくるのは蓄電だと本稿は読みますが、車載の数量を会社が出していない以上、これは見通しの推測です 推測 未確定/将来。
9. 次世代蓄電分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
CATLの製品は、セル・パック・蓄電システム・材料にまたがります 事実。以下の性能値はメーカー公称で、測定条件は発表資料に詳しく書かれていないため、異なる製品どうしの数値の優劣は比べません。
| 製品 | 資料に書かれている内容(メーカー公称) | 出典 |
|---|---|---|
| 神行(LFP、急速充電) | 第2世代:LFPで航続800km、ピーク12C、ピーク充電出力1.3MW、-10℃で5→80%を15分(2025年4月)。第3世代:ピーク15C、10→80%を3分44秒、1,000サイクル後も容量維持率90%超、-30℃で20→98%に約9分(2026年4月)。試験の条件・対象セルは各発表のとおり | 4・6 |
| 麒麟(三元) | 第3世代:セル280Wh/kg、航続1,000km、10C充電、ピーク3MW、パック625kg(2026年4月)。セルごとに独立した密閉の排気路を持たせ「熱と電気を分離」して熱の連鎖を防ぐ設計と説明 | 6 |
| Freevoy(複数化学系・超混) | Freevoy 双動力:1つのパックに2つのエネルギー領域を持ち、ナトリウムとLFP、LFPとLFP、NCMとLFPなどを組み合わせる(2025年4月)。第2世代超混:LFPとNCMを粉体レベルで混合、230Wh/kg、10C、純電動航続最大600km(2026年4月) | 4・6 |
| Naxtra | 乗用車用:175Wh/kg、-40℃で使用可能出力90%、10,000サイクル超、-40〜+70℃で作動。24V重トラック始動用もある(2025年4月)。2026年2月:-30℃で同等のLFPの約3倍の放電出力、-40℃で容量維持率90%超と説明 | 4・5 |
| 蓄電システム(TENER・天恒) | 天恒:6.25MWhのコンテナ式液冷蓄電システム、587Ahの蓄電専用セル。TENER Stack:9MWh級のシステム(年度報告は「9MWh」、半年度報告は「近9MWh」)。TENER Sodium:定格30MWh超のモジュール、1GWh設備に34台、持続時間1・2・4・6・8時間に対応、ノイズ65dB、補機電力を2%から1%へ(会社の説明) | 1・2・7 |
| 材料・リサイクル(邦普) | 2025年の廃電池・材料の回収は21.0万トン(前年比+63.2%)、再生リチウム塩2.4万トン。正極材・前駆体・リチウム塩を製造 | 1 |
出典:出典1 https://disc.static.szse.cn/download/disc/disk03/finalpage/2026-03-10/f019f96b-b960-410b-b88f-08838a36d81b.PDF 出典2 https://disc.static.szse.cn/disc/disk03/finalpage/2026-07-25/8e6750da-b178-4be9-a74a-4b1d8fc42c58.PDF 出典4 https://www.catl.com/en/news/6401.html 出典5 https://www.catl.com/en/news/6720.html 出典6 https://www.catl.com/en/news/6811.html 出典7 https://www.catl.com/en/news/6861.html
会社の資料から、素材が効く場所を化学系ごとに読み取れます。(1) LFP:正極のオリビン構造が骨格で、超混電池はこのLFPの粒子にNCMを粉体レベルで混ぜ込む、と会社が説明しています 事実。粒子の混ざり方が均一かどうかが容量と寿命に効くと考えられますが、公式資料に歩留まりの数値はありません 推測。(2) 三元:麒麟凝聚態電池の説明が高ニッケル正極と低膨張のシリコンカーボン負極を挙げており、負極の体積変化への対処が鍵になると考えられますが、詳細は資料にありません 推測。(3) ナトリウムイオン:会社は量産化の難所として水分の管理、ハードカーボンのガス発生、アルミ箔の密着、自己形成負極の4点を2026年に解決したと説明しています 事実。粉体の吸湿性や、負極材と箔の界面が量産の歩留まりに直結する、という本稿の読みです 推測。素材の基礎は、本シリーズの技術解説「正極材料」「ナトリウムイオン電池」「ハードカーボン負極」を参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 中国の輸出管理 | 商務部・海関総署の公告2025年第58号(2025年10月9日公布)は、質量エネルギー密度300Wh/kg以上のリチウムイオン電池(セル・パック)や製造設備などを輸出許可の対象とし、2025年11月8日の施行としました。続く公告第70号(2025年11月7日)で2026年11月10日まで実施を暫定停止。停止後の扱いは本稿の確認範囲で記載なし。会社の第58号・第70号への言及や影響額は確認できなかった | 事実(段階:公布→施行予定→暫定停止) |
| 同上の適用 | 会社が公称するセル350Wh/kgの凝聚態電池(麒麟)は、数値だけ見れば300Wh/kgの閾値を超える。ただし規則の適用の可否は当局の判断で、本稿は断定しない | 推測 未確定/将来 |
| 米国の関税 | 米国通商代表部は通商法301条の追加関税を、リチウムイオンの非車載用電池で2026年1月1日から25%、車載用で2024年9月27日から25%に引き上げると官報に公示(2024年9月18日)。その後の他の関税(2025年に導入された追加関税など)も加わり得て、現在の合計税率は本稿では確認していない。会社は目論見書で、中国から米国への直接輸出の売上への寄与は「比較的小さい」と説明(2025年5月時点) | 事実(段階:公示済み・発効日あり) |
| 米国国防総省の指定 | 2025年1月7日の官報公示で、CATLは1260H条の「中国の軍事企業」リストに掲載された。会社は、軍事に関わる事業はなく指定は誤りで、一部の米国政府機関以外との取引は制限されないと説明し、国防総省と協議中(2025年5月の目論見書)。その後の結果は本稿の確認範囲で確認できなかった | 事実 |
| 原材料価格 | 主原料はリチウム・ニッケル・コバルト等の価格の影響を受ける。2026年上半期は電池級炭酸リチウムの価格が明確に上昇したと会社が記載 | 事実 |
| 在庫と顧客の集中 | 2025年末の在庫は186GWh(前年106GWh、+75.47%)。上位5社の売上比は38.96%、最大の1社は13.73% | 事実 |
| 海外拠点の立ち上げ | 目論見書は「海外の生産能力は小さく、量産の立ち上げ途上」と説明(2025年5月)。ハンガリーとスペインは建設中で、量産の開始は開示から確認できない | 事実/未確定/将来 |
| 新技術の量産 | ナトリウムイオンの「2026年末に本格量産」は会社の計画で、量産後の歩留まり・コスト・数量は記載がない。会社自身も新技術開発リスクを挙げている | 未確定/将来 |
| 競争 | 会社は、国内外で電池の生産能力が急速に拡大し競争が激しくなるリスクを挙げている | 事実 |
出典:出典1 https://disc.static.szse.cn/download/disc/disk03/finalpage/2026-03-10/f019f96b-b960-410b-b88f-08838a36d81b.PDF 出典2 https://disc.static.szse.cn/disc/disk03/finalpage/2026-07-25/8e6750da-b178-4be9-a74a-4b1d8fc42c58.PDF 出典3 https://www.catl.com/en/uploads/1/file/public/202505/20250512071033_9of2dqw816.pdf 出典10 https://www.federalregister.gov/documents/2025/01/07/2025-00070/notice-of-availability-of-designation-of-chinese-military-companies 出典11 https://www.federalregister.gov/documents/2024/09/18/2024-21217/notice-of-modification-chinas-acts-policies-and-practices-related-to-technology-transfer 出典12 https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_79646f0161564975a938fe00fee158d5.html 出典13 https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_b1ec77dd3f0d4762952904df7cdaadec.html
12. 用語集
- LFP
- リン酸鉄リチウム。ニッケル・コバルトを使わない正極材。
- 三元(NCM)
- ニッケル・コバルト・マンガンの酸化物を正極に使う電池。
- ナトリウムイオン電池
- リチウムの代わりにナトリウムイオンが移動する電池。
- ハードカーボン
- ナトリウムイオン電池の負極に使われる炭素材料。
- NFPP
- 会社のニュースが蓄電用ナトリウムイオンの材料として挙げる略称。正式名称は資料に記載なし。
- C-rate
- 充放電の速さ。1Cは1時間で満充電にする電流、12Cは約5分相当。
- GWh
- 電力量の単位。1GWh=10億Wh。
- BESS
- 蓄電システム(Battery Energy Storage System)。
- 1260H条のリスト
- 米国国防総省が「中国の軍事企業」を公示するリスト。
- 通商法301条
- 米国の通商法に基づき、中国製品に追加関税を課す枠組み。
- LRS
- 会社が目論見書で挙げる「ライセンス・ロイヤルティ・サービス」の形態。

13. 出典
- 寧徳時代 2025年年度報告(2026年3月、深圳証券取引所に提出。中国語)。営業収入・事業別売上・販売量・生産能力・在建能力・主要研究開発プロジェクト・従業員数・投資プロジェクト・主な業務と製品・リスク要因・上場情報。 https://disc.static.szse.cn/download/disc/disk03/finalpage/2026-03-10/f019f96b-b960-410b-b88f-08838a36d81b.PDF
- 寧徳時代 2026年半年度報告(2026年7月25日、深圳証券取引所に提出。中国語)。2026年上半期の売上・事業別売上・生産能力・投資プロジェクト・ナトリウムイオンと蓄電の動向・リスク要因。 https://disc.static.szse.cn/disc/disk03/finalpage/2026-07-25/8e6750da-b178-4be9-a74a-4b1d8fc42c58.PDF
- 寧徳時代 香港上場の目論見書 GLOBAL OFFERING(2025年5月12日。英語)。製造拠点・生産能力の推移・ハンガリー事業の計画と投資額・米国の関税と国防総省の指定に関する会社の説明。 https://www.catl.com/en/uploads/1/file/public/202505/20250512071033_9of2dqw816.pdf
- 寧徳時代 公式ニュース「Naxtra Battery Breakthrough & Dual-Power Architecture」(2025年4月21日)。Naxtra(ナトリウムイオン)の公称値、第2世代神行、Freevoyの説明。 https://www.catl.com/en/news/6401.html
- 寧徳時代 公式ニュース「CATL and CHANGAN Launch World's First Mass-Production Sodium-Ion Passenger Vehicle」(2026年2月5日)。長安汽車との提携、Naxtraの公称値、ナトリウムイオン研究の投入額と人員。 https://www.catl.com/en/news/6720.html
- 寧徳時代 公式ニュース「CATL Unveils Six Major Innovations」(2026年4月21日の超級科技日)。第3世代神行・麒麟・凝聚態・超混電池、Naxtraの量産計画。 https://www.catl.com/en/news/6811.html
- 寧徳時代 公式ニュース「CATL Debuts World's First Field-Validated Sodium-Ion BESS」(2026年6月22日、ミュンヘン)。TENER Sodiumの仕様、出荷計画、福鼎・済寧の生産能力、海博思創との契約。 https://www.catl.com/en/news/6861.html
- 寧徳時代 公式ニュース「Zero-Carbon Technology Powers All-Domain Growth: CATL Releases 2025 Annual Report」(2026年3月10日)。年度報告の要約、研究開発の累計投入額。 https://www.catl.com/en/news/6773.html
- Stellantis プレスリリース「Stellantis and CATL to Invest Up to €4.1 Billion in Joint Venture for Large-Scale LFP Battery Plant in Spain」(2024年12月10日)。スペインの合弁事業の投資額・能力・開始目標。 https://www.stellantis.com/en/news/press-releases/2024/december/stellantis-and-calt-to-invest-up-to-4-1-billion-in-joint-venture-for-large-scale-lfp-battery-plant-in-spain
- 米国国防総省(連邦官報) Notice of Availability of Designation of Chinese Military Companies(2025年1月7日、文書番号2025-00070)。1260H条に基づく指定企業の一覧。 https://www.federalregister.gov/documents/2025/01/07/2025-00070/notice-of-availability-of-designation-of-chinese-military-companies
- 米国通商代表部(連邦官報) Notice of Modification: China's Acts, Policies and Practices Related to Technology Transfer, Intellectual Property and Innovation(2024年9月18日、文書番号2024-21217)。リチウムイオン電池の追加関税の引き上げ。 https://www.federalregister.gov/documents/2024/09/18/2024-21217/notice-of-modification-chinas-acts-policies-and-practices-related-to-technology-transfer
- 中国商務部・海関総署 公告2025年第58号「リチウム電池と人造黒鉛負極材料に関連する品目への輸出管制の決定」(2025年10月9日公布、2025年11月8日施行とされた。中国語)。 https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_79646f0161564975a938fe00fee158d5.html
- 中国商務部・海関総署 公告2025年第70号「公告第55・56・57・58号等の実施を暫定停止する決定」(2025年11月7日。2026年11月10日まで停止。中国語)。 https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_b1ec77dd3f0d4762952904df7cdaadec.html
- 寧徳時代 公式サイト(ロゴの取得元。会社概要の確認用)。 https://www.catl.com/en/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月10日/Troy Technical
本稿の数値は、寧徳時代が深圳・香港に提出した法定開示書類と公式ニュース、米国連邦官報、中国商務部の公告に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。性能値はメーカー公称で、条件が異なる値は比較していません。