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電解液とセパレータ 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

電解液とセパレータ
― 本当は分解する液体を、膜で守って使う

リチウムイオン電池の中で、イオンを運ぶのは電解液、正極と負極を隔てるのはセパレータです。 どちらも電極より地味な部材ですが、電解液は「負極では分解してしまう液体」を、できた被膜で守りながら使っています。 セパレータは、熱をもつと溶けて孔を塞ぐことで電池を止める設計が組み込まれた膜です。 どちらも材料の弱点を、設計に取り込んだ部品です。いま欧州で議論されているPFAS規制も、この二つに無関係ではありません。

構成:GS Yuasa Technical Report 掲載の総説(関西大学 石川正司)、米国サンディア国立研究所 Orendorff 氏の解説、Nature Catalysis(アルゴンヌ国立研究所ほか)、旭化成の公表資料、欧州医薬品庁(EMA)の資料などを一次情報として使用/最終更新 2026年10月

電解液の計量とセパレーターの配置を示す組立例です
図1 概念画像(ImageGenで生成)。電解液の計量とセパレーターの配置を示す組立例です。液と膜は別の役割でイオンの移動と短絡防止に関わります。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。
この記事の構成
  1. 電解液とセパレータとは(3行でつかむ)
  2. 電池の中で、液と膜はどこにいるか
  3. 電解液の中身 ― 溶媒・塩・添加剤
  4. 素材技術者の視点①:なぜ溶媒を混ぜるのか
  5. LiPF6の弱点とフッ酸(HF)/本稿の計算
  6. 可燃性とガス発生
  7. SEI・CEI ― 電解液開発の一部は「膜の開発」
  8. セパレータ ― 材料と孔のつくり方
  9. 素材技術者の視点②:孔は、通すためだけでなく止めるためにある
  10. 耐熱コーティング
  11. PFAS規制との関係(段階を区別して)
  12. 素材技術者の視点③:材料を変えることの重さ
  13. 課題と、本稿で確認できなかったこと
  14. 評価・標準の読み方
  15. 用語集
  16. 参考資料(一次情報)
  17. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・予定であり、実績や決定が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。製品名・メーカーの値は「メーカー公称」と明記します。

1. 電解液とセパレータとは(3行でつかむ)

  • 電解液:典型的には、リチウム塩のLiPF6を1モル濃度(1 M)前後、エチレンカーボネート(EC)と低粘度の線状カーボネート(DMC・DEC・EMC)の混合溶媒に溶かしたものです事実
  • セパレータ:正極と負極の間に入る多孔質膜で、「リチウムイオンを透過させる機能を有するとともに、正極と負極の接触を遮断し、ショートを防止する部材」です事実(旭化成)
  • 二つに共通するのは:どちらも弱点を抱えたまま使う材料だということです。電解液は負極では本来耐えられず、セパレータの主材料のポリオレフィンは100℃台で溶けます
この記事でいちばん大事な一行

電解液は「分解する前提」で、セパレータは「溶ける前提」で設計されています。 負極側では初回充電の分解物が膜になって以後の分解を止め事実、 セパレータは温度が上がると溶けて孔を塞ぎ、電流を止めようとします事実。 ただし、その「止め方」が大型の電池でも同じように働くとは限りません。

2. 電池の中で、液と膜はどこにいるか

電池の断面を横から見ると、負極(黒鉛など)、セパレータ、正極が重なっています。 電解液は電極の細孔とセパレータの孔の中に染み込んでいて、電極の表面には液から生じた薄い被膜があります。 負極側の被膜がSEI、正極側の被膜がCEI(正極電解液界面被膜)と呼ばれます。 SEIについては本シリーズ『SEI』編で詳しく扱っているので、ここでは位置づけだけ押さえます。

液は電極・膜の空隙を満たし、セパレーターは二つの電極を隔てます
図2 概念画像(ImageGenで生成)。液は電極・膜の空隙を満たし、セパレーターは二つの電極を隔てます。SEI・CEIの被膜と、独立した膜を見分けてください。 [参考資料1] [参考資料9] 形状・色・寸法は説明用です。数値と原文の対応は下の元図で確認できます。
元のSVG模式図と正確な説明を見る
電池の中で、液と膜はどこにいるか(概念図) ※ 厚みの比率は実際とは異なります。 負極 黒鉛など 正極 リチウム金属酸化物など SEI CEI セパレータ 電解液 溶媒+Li塩+添加剤 電解液 孔の中にも染み込む 電解液の仕事 Liイオンを運ぶ 被膜の原料にもなる SEI・CEIの仕事 以後の液の分解を抑える (負極側は石川総説) セパレータの仕事 電極どうしを隔てる 孔でイオンを通す
図2 概念図(ベクター作図)。電解液・被膜・セパレータの位置関係を示した模式図です。SEIの役割は石川正司氏の総説[参考資料1]、セパレータの役割は旭化成の公表資料[参考資料9]の記述によります。層の厚み・孔の形や数は実際とは異なり、特定の電池の構造を示すものではありません。

3. 電解液の中身 ― 溶媒・塩・添加剤

電解液は「溶媒」「リチウム塩」「添加剤」の三つでできています。 石川正司氏(関西大学)の総説[参考資料1]は、現状と最近の進歩を次のように整理しています。

成分代表的なもの総説の記述(要点)
溶媒EC、DMC、DEC、EMC典型的な電解液は、LiPF6を1 M前後、ECと低粘度溶媒の混合溶媒に溶かしたもの。低粘度溶媒としてはDMC・DEC・EMCが最もよく用いられる
塩LiPF6(主流)、LiFSI、LiBF4、LiClO4現在の電解質は「ほぼLiPF6で占められ」、LiBF4やLiClO4は、SEIに影響を与える添加剤として少量併用される程度。LiFSIは「特に有望」とされる
添加剤(負極用)VC、FEC、LiBOB などVCは黒鉛負極で還元的に重合してSEIを形成し、サイクル容量維持率の向上が期待できる。FECはLiFを多く含む保護効果の高いSEIの形成に寄与し、シリコン系負極にも相性がよいが、ガス発生の原因となることもある
添加剤(その他)ビフェニル類、難燃剤、酸の中和剤、含浸補助ビフェニル類は正極上で重合し、量を増やすと重合遮断による過充電防止作用がある。難燃化のための成分は、添加剤というより溶媒成分として1割以上使われることが多い。含浸補助は、大型EV用電池の生産性向上と、電解液の偏在防止による寿命向上が期待できる

すべて事実(石川正司 GS Yuasa Technical Report[参考資料1])。添加剤の具体的な配合は電池メーカーのノウハウで、総説も「公表されていない場合が多い」としています。

添加剤は少量で効きますが、効きすぎる側面もあります。 総説は、VCについて「電池の内部抵抗を増加させる可能性があり,長期保存用の電池やEV用の電池では添加量に特に注意を要する」としています事実。 LiBOBについては、酸化に弱く電解液への溶解度が非常に劣るため「最適な添加条件を決めづらく使いこなしが比較的難しい」としています事実。

4. 素材技術者の視点①:なぜ溶媒を混ぜるのか

素材技術者の視点①:ECは「固体」で、ほかの溶媒が液体にしている

負極の被膜づくりに欠かせないECは、じつは室温では固体です。融点は36.4 ℃、引火点は143 ℃(開放式)と記録されています事実(PubChemが集約する公的データ。参考資料11〜13)。 一方、DMCの引火点は18 ℃(開放式)、DEC は25 ℃(密閉式)です事実。

つまり、「高い誘電率でLi塩を溶かし、被膜の主役になるEC」と「液体にして粘度を下げ、イオンを動きやすくする線状カーボネート」を混ぜているわけです(本記事による解説)。 石川総説も、電解液開発は「ECを必須とした電解液から徐々に改良や変更を加えて」きたもので、長寿命・高電圧・高温低温・高速充放電・安全性といった要求には「それぞれ相反する要求項目も少なくなく」実現は簡単ではない、としています事実。

線状カーボネートを増やせば粘度は下がりますが、可燃性の高い成分の割合が増える方向でもあります。 粘度とのトレードオフに安全性が絡むのが、この材料の難しさの核心です(本記事による解説)。

塩を変えると、溶媒の組み合わせが変わる ― LiFSIの例

総説は、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)の電解液を、LiPF6系と比べて紹介しています。 LiFSIは解離性が高く、ECの割合を大きく減らしても、イオン伝導率が保たれるというのが要点です。

電解液(石川総説の表1)粘度(mPa s)イオン伝導率(mS cm⁻¹)
LiPF6 / EC:DMC=1:13.6411.3
LiFSI / EC:DMC=1:13.3912.1
LiFSI / EC:DMC=1:91.8911.2

すべて事実(石川総説[参考資料1]の表1)。測定温度と、溶媒比(体積比か質量比か)は、総説の本文では確認できませんでした。総説の要旨には、例として「1 M LiFSI」の電解液が挙げられています。

さらに総説は、LiFSI/EC:DMC=1:9では黒鉛負極の充放電が問題なくでき(初回効率・通常サイクルの効率・放電容量はLiPF6/EC:DMC=1:1とほぼ同じ)、10 Cの高い電流でも分極が最も小さかったと報告しています事実。 一方、LiPF6/EC:DMC=1:9では「SEIの形成がうまく進行せず黒鉛負極の充放電は事実上不可能」としています事実。 これは塩が違えば、同じ溶媒比でも被膜ができるかどうかが変わることを示しています(本記事による解説)。

読み方の注意

この比較は、黒鉛負極と金属リチウムを対極にした半電池、および黒鉛/LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2フルセルの実験室データです事実。 量産セルでの寿命や安全性を保証する数値ではありません。 LiFSI電解液の実用上の課題として、アルミ集電体への影響があります(第5章)。

5. LiPF6の弱点とフッ酸(HF)/本稿の計算

LiPF6は圧倒的な主流ですが、扱いにくい塩です。石川総説は次のように述べています。

石川総説の記載(LiPF6)

「実はLiPF6は熱的に安定であるとは言いがたく,80℃付近から電解液中で残留水分による加水分解と,その後続分解反応が加速される」 一方で、電気化学的に酸化還元しない電位窓が広いこと、加水分解で生じる微量のフッ酸(HF)が「負極界面の良質なSEI形成に寄与する」こと、分解で生じるフッ化物イオンが正極集電体のアルミニウムの腐食、特に孔食を防止することから、今も電解質として好適とされています事実

HFは「悪者」と「役者」の二つの顔を持ちます。 Argonne国立研究所・BMW・ミュンヘン工科大学などによる Nature Catalysis の論文[参考資料3]は、HFを微量の水とLiPF6の反応で生じる、非常に有害な生成物と位置づけたうえで、電解液中のHFが、SEIの形成に影響するだけでなく、酸化物正極や不活性部材の溶解(腐食)を招くと述べています事実。 同じ論文は、SEIの主要成分であるLiFが、HFの電気化学的な変換(LiFとH2の生成)によってできる過程を報告しています事実。

LiPF6と水からHFが生じ、役者にも悪者にもなる(概念図) ※ 反応式(1)は Nature Catalysis の論文[参考資料3]に示された式です。 ① LiPF6が分解してPF5を生じる 高温や微量の水で進む(80℃付近から加速) 石川総説[参考資料1] ② PF5 + H2O → 2HF + POF3 水1分子から、最大でHF 2分子(式1) Nature Catalysis[参考資料3] 役者:SEIの材料 微量のHFは良質なSEI形成に 寄与する(石川総説) LiFはSEIの主要成分 役者:アルミ箔を守る フッ化物イオンが正極集電体 の孔食を防ぐ(石川総説) 悪者:電池を痛める 酸化物正極などを溶かし うる(Nature Catalysis) 量が多いほど不利 ※ 3つの働きの強さは、HFの量・温度・電極材料で変わります。量の関係は図4で計算します。 ※ 「役者」の2つは石川総説、「悪者」は Nature Catalysis の記述です。並べ方は本記事の整理です。
図3 概念図(ベクター作図)。LiPF6の加水分解とHFの三つの働きの整理です。LiPF6の熱挙動・SEI形成への寄与・アルミ集電体の孔食防止は石川正司氏の総説[参考資料1]、反応式とHFの悪影響は Strmcnik ら(Nature Catalysis, 2018)[参考資料3]によります。三つに並べたのは本記事の整理で、各著者が表明した分類ではありません。

本稿の計算:水分20 ppmは、HFをどれだけ生むか

本稿の計算:電解液1 kgの水分とHFの上限

前提本稿の計算

  • 反応は式(1)PF5 + H2O → 2HF + POF3のみを考える(水1 molからHF 2 mol)事実(式は[参考資料3])。POF3がさらに加水分解する分は含めない(その場合、水1分子あたりのHFは少なくなるので、2は上限側の見積り)
  • 電解液は1 kg、LiPF6は1 M、密度は1.2 g/mLと仮定する(密度は本稿の仮定)→ LiPF6は約0.83 mol
  • 水のモル質量18.0 g/mol、HFのモル質量20.0 g/mol

計算(水分が20 ppmの場合)

  • 水:20 mg ÷ 18.0 g/mol = 1.11 mmol
  • HF(最大):1.11 × 2 = 2.22 mmol → × 20.0 = 約44 mg(約44 ppm)
  • 消費されるLiPF6(最大):1.11 mmol ÷ 830 mmol = 約0.13%

読み取り:水1 ppmからは、質量で最大約2.2 ppmのHFができます。 塩はほとんど減らないのに、HFだけが数十ppmの桁で現れます(本記事による解説)。 前提と限界:実際の電解液では、水の大部分が電極やセパレータの表面にも吸着しており、全量がここで反応するわけではありません。 この計算は、水分管理がなぜ厳しく求められるのかを桁で理解するためのもので、実際のセルのHF濃度を予測するものではありません。

水分とHFの最大量(電解液1 kgあたり、本稿の計算) ※ 灰色が水分、赤がそこから生じうるHFの上限です。 10 ppm 22 ppm 20 ppm 44 ppm 50 ppm 111 ppm 水分10 ppmの場合 水分20 ppmの場合 水分50 ppmの場合 LiPF6の消費は最大約0.07% LiPF6の消費は最大約0.13% LiPF6の消費は最大約0.33% ※ 前提:式 PF5+H2O→2HF+POF3 のみ、電解液1 kg、1 M LiPF6、密度1.2 g/mL(仮定)。水分値は計算の例で、規格値ではありません。 ※ 実際のセルでは水は電極や膜にも吸着するため、この値は上限側の見積りです。
図4 本稿の計算による作図(ベクター作図)。反応式は Strmcnik ら[参考資料3]によります。水分10・20・50 ppmは計算の例示で、電解液の規格値や実測値ではありません。HFの値(22・44・111 ppm)とLiPF6の消費率は本記事の算出で、電解液の密度1.2 g/mLも本稿の仮定です。

LiFSIとアルミ集電体

LiPF6の分解で生じるフッ化物がアルミ箔を守るという石川総説の記述を裏返すと、フッ素源が違う塩ではアルミ側の配慮が要ることになります。 Xia らは、LiFSIとLiPF6を混ぜた二塩系を調べ、LiFSIの濃度が0.3 mol/L未満の電解液は、4.3 V(対Li/Li⁺)でアルミ集電体を不動態化でき、サイクル性能も改善したと報告しています事実[参考資料6]。 黒鉛/NMC111のパウチセルでは、LiFSI 0.2 mol/L+LiPF6 1.0 mol/Lの電解液で、1 Cで360サイクル後の容量維持率は93.9%とされています事実(この値は同論文の実験室規模のセルの結果です)。 LiFSIの全量置換ではなく、少量添加という形が選ばれていることは、アルミ集電体への配慮の一例と読めます(本記事による解説)。

6. 可燃性とガス発生

電解液は有機溶媒なので、燃えます。引火点は、公的データベースに次のように記録されています。

溶媒引火点(記録値)備考
DMC(ジメチルカーボネート)18 ℃(開放式)ILO-WHO 国際化学物質安全性カード(ICSC)の値。HSDBは14 ℃(密閉式)、18 ℃(開放式)
DEC(ジエチルカーボネート)25 ℃(密閉式)ICSC・HSDBの値
EC(エチレンカーボネート)143 ℃(開放式)HSDBの値。融点36.4 ℃
EMC—本稿が参照したPubChemのページでは確認できなかった

すべて事実(PubChem[参考資料11〜13]が集約するICSC・HSDBの記録)。引火点は測定方法(密閉式/開放式)で値が変わります。

線状カーボネートの引火点は室温付近かそれ以下です。 ここに、電池の充電状態、温度、混合比、塩の存在(蒸気圧の変化)が絡むので、「電解液の引火点」を一つの数値で言うことはできません。 本稿は電解液混合物の引火点の一次情報を確認できなかったため、個々の溶媒の値のみを示しています。

難燃化の方向

石川総説は、安全性を保つ機能として難燃化の成分があり、これは添加剤というより溶媒成分として1割以上使われることが多いこと、代表として部分フッ素置換アルキルエーテル類・有機リン化合物・ホスファゼンがあることを述べています事実。 別の表現をすれば、難燃化は「少量の添加」では済まず、溶媒の組成そのものを動かす話だということです(本記事による解説)。

ガスはどこから出るか

電解液が分解すれば、ガスが出ます。 Michalak ら(Scientific Reports, 2015)は中性子イメージングで、動作中のパウチセルのガス発生を直接観察しました。 論文は冒頭で、電解液の分解によるガス発生は高性能な二次電池の主要な課題の一つだと述べ、 高電圧のLiNi0.5Mn1.5O4/黒鉛セルについて、金属の溶出や高電位での分解生成物がガス発生に悪影響を与え、特に初回充電(黒鉛のSEI形成時)で顕著と結論づけています事実[参考資料5]。

熱でも分解します。Campion らは、1.0 M LiPF6のカーボネート電解液を加熱したときの生成物として、CO2、エチレン、ジアルキルエーテル、フッ化アルキル、OPF3、フルオロリン酸エステルなどを同定しました事実[参考資料4]。 さらに、微量のプロトン性不純物が、LiPF6とカーボネートを自己触媒的に分解するフルオロリン酸エステルを生むこと、DEC があるとエチレンが生じ、EC があるとオリゴエチレンオキシドが生じることも報告されています事実。 ここでも、水を含む「微量の不純物」が連鎖の起点になっています。

この章で書いていないこと

電池の火災・熱暴走の原因や、特定の製品・事故の評価は、本稿の範囲外です。 熱暴走については本シリーズ『熱暴走と電池の安全』編で扱います。 本稿が示したのは、材料の性質(引火点、分解生成物)に関する公表データだけです。

7. SEI・CEI ― 電解液開発の一部は「膜の開発」

ここまでの話は、被膜の話につながります。 SEIは「初回充電における電解液の還元分解物で形成される,電子絶縁性かつイオン透過性の電極界面被膜」で、「それ以上の電解液分解を防いでいる」と石川総説は述べています事実。 本シリーズ『SEI』編は、この考え方を「熱力学的には不安定だが、速度論的なバリアで守られている」という不動態の見方で整理しています。

ここで、電解液の成分が被膜の材料になっていることを確認しておきます(石川総説、いずれも事実)。

  • EC:炭素負極のSEI形成に関わり、負極を安定化する主役
  • LiPF6:加水分解で生じる微量のHFがSEI形成に寄与する
  • LiFSI:FSIが初期サイクルで黒鉛界面のフッ素源になり、LiFに富むSEIを黒鉛上に形成するとされる
  • VC:還元的に重合してSEIを形成。正極でも酸化的に重合して保護被膜をつくるとされる
  • FEC:LiFを多く含む、保護効果の高いSEIの形成に寄与する

正極側のCEIについて、総説は「正極に対する添加剤はさらに学術情報が少なく,負極のような明確なSEI という概念がない」ため、ケースバイケースで一般的な指針が少ないとしています事実。 つまり、負極の被膜は設計の対象として語れる段階にありますが、正極の被膜は、材料の組み合わせごとに確かめる段階にあります(本記事による解説)。

8. セパレータ ― 材料と孔のつくり方

セパレータは、電極どうしを物理的に隔てながらイオンを通す膜です。 サンディア国立研究所の Orendorff 氏の解説[参考資料2]によれば、小型電池(3 Ah未満)向けの市販品は、多くがポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンの単層または多層膜で、転移温度はPEが約135 ℃、PPが約165 ℃(分子量によりやや変わる)です事実。 同解説は、典型的な値として気孔率40%超、厚さ約25 µm、面積あたりのイオン抵抗1.5〜2.5 Ω cm²、突刺し強度300 g/mil超を挙げ、12〜20 µmの薄いものもあるが「機械的強度が大きく失われる」としています事実(2012年時点の解説)。 薄くすればイオンは通りやすいが、強度が落ちる ― 機械的な強さと、孔のあいた構造の間のトレードオフが、設計の出発点です。

湿式と乾式 ― 孔のあけ方が違う

旭化成は、乾式膜はPPを主成分とし溶媒を使わない工程で製造し、湿式膜はPEを主成分として可塑剤を加えて製膜し、その可塑剤を溶媒で抽出すると説明しています事実[参考資料8]。 同社はLIB用セパレータとして湿式の「ハイポア」と乾式の「セルガード」の双方を手がけています事実[参考資料10]。 Li らのレビュー(Polymers, 2023)[参考資料7]は、孔のできかたを次のように整理しています。

上は乾式の延伸、下は湿式の製膜・延伸・抽出の流れです
図5 概念画像(ImageGenで生成)。上は乾式の延伸、下は湿式の製膜・延伸・抽出の流れです。孔は拡大した模型で、肉眼で見える穴や実際の孔径ではありません。 [参考資料8] [参考資料7] 形状・色・寸法は説明用です。数値と原文の対応は下の元図で確認できます。
元のSVG模式図と正確な説明を見る
セパレータの孔のあけ方:乾式と湿式(概念図) ※ 工程の区切り方は本記事による整理です。 乾式(溶融押出し延伸法):主にPP ① 溶融・押出し 樹脂を溶かして製膜 ② アニール 結晶を整える ③ 延伸 結晶の間が開いて孔になる ④ 熱固定 孔の構造を固定する 湿式(熱誘起相分離法):主にPE ① 樹脂+可塑剤 高温で均一に溶かす ② 押出し 冷やして相分離 ③ 二軸延伸 縦横に引き伸ばす ④ 抽出 溶剤で可塑剤を除く ⑤ 熱処理 応力を除き構造を固定 ※ 乾式は溶媒を使わず、湿式は可塑剤を溶剤で抽出します(旭化成)。一軸延伸のPP膜は縦と横で強度に差が出やすく、   湿式のPE膜は縦横の強度が揃いやすいとされます(Polymers 2023のレビュー)。
図5 概念図(ベクター作図)。乾式は溶融押出し・アニール・延伸、湿式は熱誘起相分離(PEを低分子の溶媒に溶かす)・二軸延伸・抽出という流れを示しています。溶媒の有無は旭化成の公表資料[参考資料8]、工程の詳細は Li らのレビュー[参考資料7]によります。工程の区切り方は本記事の整理で、特定メーカーの実際の製造ラインを示すものではありません。

レビューによれば、乾式は一般に「溶融押出し延伸法」で、押し出した膜をアニールして結晶性を高めたのち、冷間延伸で結晶ラメラが分かれて微小な孔の核になり、熱間延伸で孔を成長させ、熱固定で構造を固定します事実。 湿式は「熱誘起相分離(TIPS)」法で、PEを低分子の溶媒(パラフィンオイルが最も一般的)と高温で均一にし、押出し・冷却で相分離させたのち、二軸延伸し、溶剤で抽出します事実。 同レビューは、湿式のPE膜は縦と横で引張強度が揃い、一方乾式の一軸延伸PP膜は縦と横で強度に大きな差が出て、引き裂きに弱くなると述べています事実。

製品(当時の表記)構成製法厚さ気孔率融解温度
Entek TeklonPE単層湿式押出し25 µm38%135 ℃
Exxon TonenPE単層湿式押出し25 µm36%135 ℃
Degussa Separionセラミック/PET/セラミック湿式不織布(ウェットレイド)25 µm40%超220 ℃
Celgard 2325PP/PE/PP 三層乾式押出し25 µm41%134/166 ℃

Orendorff[参考資料2]の表I(各社データシート記載値、事実)。2012年の解説の値で、現行品の仕様ではありません。各社の現行の製品を比べる材料にはなりません。

本稿の計算:25 µm・気孔率41%の膜は、どれだけの電解液を抱えるか

前提本稿の計算:厚さ25 µm、気孔率41%(上表のCelgard 2325の記載値)、面積1 m²。孔がすべて電解液で満たされると仮定する。

  • 膜の体積:2.5×10⁻³ cm × 10⁴ cm² = 25 cm³
  • 孔の体積:25 cm³ × 0.41 = 約10 cm³(約10 mL)

読み取り:この膜1 m²の孔には、最大で約10 mLの電解液が入ります。膜が実際に抱える量は、孔の形、濡れ性、圧縮の状態で変わります。 石川総説が「電極やセパレータへの含浸補助」を添加剤の重要な効果に挙げている理由は、この孔に液を速く行き渡らせることが、大型電池の生産性に響くからと読めます(本記事による解説)。

9. 素材技術者の視点②:孔は、通すためだけでなく止めるためにある

素材技術者の視点②:「溶けて孔を塞ぐ」という設計

Orendorff氏の解説によれば、多層セパレータの多くはシャットダウン機能を持ちます。 転移温度の異なる2つの層があり、温度が上がると低融点の成分が溶けて、もう一方の層の孔を埋め、イオンの輸送と電流を止める仕組みです事実。 たとえばPE(約135 ℃)は溶けて孔を塞ぎ、PP(約165 ℃)は骨格として形を保つ ― 材料の融点の差を、そのまま安全機構にしています(本記事による解説)。

ただし、この機構には限界も記録されています。同解説が紹介する過充電試験では、次の三つの結果が並んでいます事実。

  • 理想的な例:LiCoO2の18650セルを1 Cで過充電。セル温度が135 ℃(充電状態215%)でセパレータが働き、セルが抵抗体になって電圧が12 Vの上限に達し、安全に冷えた
  • NCAの18650セル(1 C):缶温度125 ℃(充電状態170%)でシャットダウンしたが、試験の電圧上限を20 Vにしていたため電流が流れ続け、内部短絡から熱暴走に至った
  • LiCoO2セル(2 C):セルの温度が収縮温度(110 ℃)に達したところで内部短絡し、熱暴走した

解説は、これらの結果は試験条件(電圧の上限、充電レート)の小さな変更で大きく変わると述べ、また、シャットダウン型セパレータは当初、低電圧(20 V未満)・小型(10 A未満)の民生用電池向けに設計されたもので、より高電圧・大型の電池では「シャットダウンの耐性は同じように頑健とは限らない」と指摘しています事実。 引用されている文献(Roth ら)では、シャットダウン後のセパレータが20 V の保持電圧で200 mA、30 V で350 mAの電流を通すという結果も示されています事実。

大型セルでは別の問題もあります。大面積のセルは内部の温度が不均一になりやすく、一部だけシャットダウンしたり、孔の一部だけが塞がって(不完全なシャットダウン)残った孔に電流が集中したりしうる、と解説は述べています事実。

温度のはしご:電解液とセパレータに起こること(概念図) ※ 値は出典の記載による目安で、分子量・試験法・電池の構成で変わります。 60℃ 200℃ 240℃ 約80℃ LiPF6の加水分解と後続分解が加速(石川総説) 約110℃ ポリオレフィンの収縮が始まる目安(Orendorff) 約130〜135℃ PEが溶けて孔を塞ぐ(シャットダウン) 約165℃ PPの転移温度。ポリオレフィンが短絡しはじめる目安 180/190℃ LiCoO2/NCAセルの熱暴走温度(Orendorff) 220℃超 セラミック/PET複合膜でインピーダンスが安定(Roth らの結果) ※ ハシゴの順序は、「セパレータが働く温度」と「セルが暴走する温度」の間に余裕があるかを見るための整理です。
図6 概念図(ベクター作図)。各温度は石川総説[参考資料1]と Orendorff の解説[参考資料2]の記載にもとづく目安です。電池の種類・分子量・試験条件で値は変わり、特定の電池の安全性を示すものではありません。並べ方は本記事の整理です。

解説は、この隙間(セパレータの収縮・溶融と、セルの暴走温度の間)を埋める方向として、二つの考え方を紹介しています。 一つは、80 ℃以下で止まる低温シャットダウン(ただし、多数のセルを直列にした電池では漏れ電流の問題が残りうる)、もう一つはシャットダウンをやめ、熱安定性を高める方向です事実。 どちらにも利点と引き換えがあり、安全コミュニティで検討が続いている領域だ、というのが同解説の整理です。

10. 耐熱コーティング

熱安定性を高める実際の方法の一つが、ポリオレフィンの膜にセラミックなどを塗る方法です。 旭化成は「ハイポア」として、ポリオレフィン微多孔膜(基材膜)と、基材膜の上にセラミック等を塗工した膜(塗工膜)の2種類を供給していると説明し、2023年にはこの塗工能力の増強を発表しています事実[参考資料9]。

Orendorff氏の解説は、セラミックを使った複合膜の利点を数字で示しています事実。

  • Al2O3とPETの複合膜は、105 ℃・1時間での収縮が4%にとどまり、PE膜の14%より小さい(Choi らの研究の引用)
  • Rothらの比較では、ポリオレフィンのシャットダウン膜は135 ℃でシャットダウン、165 ℃で劣化して短絡したが、セラミック/PET膜のインピーダンスは220 ℃超まで安定していた
  • NCA/黒鉛の18650セルを1 Cで過充電した試験では、ポリオレフィン膜のセルは135 ℃(充電状態170%)で短絡して熱暴走したが、複合膜のセルは正極の分解温度(180 ℃)に達する300%まで暴走しなかった(1.2 M LiPF6 in EC:PC:DMC=1:1:3、20 V超の試験条件)

同解説は、これらは特定の試験条件での結果であり、新しい膜の安全性への寄与を定量するには、さらに評価が必要だとも述べています事実。 セラミックを層として積む構造は、異種の層どうしの剥離に注意が要り、セラミックをUHMWPE(超高分子量PE)の中に埋め込む方式(セラミック含有量60%超)は、剥離や割れを避けられる可能性があるとされています事実。

Li らのレビューは、PE膜に塗るセラミック粒子としてAl2O3とベーマイト(γ-AlOOH)を比べた研究を紹介し、極性基(–OH)をもつベーマイト系では塗膜とPE基材の相互作用が強まり、電解液の保持量と濡れ性が高まったと述べています。また塗膜の微細構造が、異常時の変形や熱シャットダウンのしかたにも影響することも述べています事実[参考資料7]。 コーティングは「孔の上に膜を足す」ことなので、厚みの増加や孔の目詰まりと引き換えになる点は、設計上の論点になります(本記事による解説。具体的な数値は本稿の調査範囲で確認できていません)。

白い薄膜を連続で送り、塗工・検査する設備例です
図7 概念画像(ImageGenで生成)。白い薄膜を連続で送り、塗工・検査する設備例です。微細孔は肉眼で見える大穴ではありません。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。

11. PFAS規制との関係(段階を区別して)

電解液とセパレータの周辺には、フッ素を含む材料が多くあります。 欧州で進められているPFAS(有機フッ素化合物)の包括的な制限案が、これらに及ぶのかを、提案・評価・決定の段階を区別して整理します。

いま、どの段階か

段階内容状況(2026年10月10日に確認できた範囲)
1. 提案デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの当局が、REACH規則にもとづく制限案をECHA(欧州化学品庁)に提出提出済み(2023年)事実
2. 意見募集2023年3〜9月の6か月間。5,600件の回答終了事実
3. 科学的評価ECHAのリスク評価委員会(RAC)と社会経済分析委員会(SEAC)が、提案を14分野ごとなどに分けて評価RACは2026年3月2日に意見を採択。SEACの意見案に対する60日間の意見募集が2026年3月26日に始まり、5月25日まで事実
4. SEAC最終意見意見募集を踏まえ、ECHAが最終意見を欧州委員会に提出2026年末までに提出される予定未確定/将来
5. 欧州委員会の決定欧州委員会が制限案を作成し、加盟国とともにコミトロジー手続きで決定2027年に決定される予定未確定/将来
6. 採択・適用開始決定後に法令として採択され、適用開始日が定まる日付は存在しない(確認できなかった)未確定/将来

段階1〜2、4〜5はEMA(欧州医薬品庁)のECHA手続き解説資料(2026年2月)[参考資料14]。段階3の2026年3月の動きはECHAの案内ページ[参考資料15・16]。提案の受領はECHAの案内[参考資料17]。ECHAのサイトは自動アクセスが遮断されるため、本稿はECHAのページを直接開いて全文を読むことはできず、ページの要旨は検索結果の記載で確認しました。

欧州PFAS制限案:いま、どの段階か(2026年10月10日時点) ※ 緑=完了、橙=進行中、紫=予定。 ① 提案 5か国の当局が ECHAに提出 2023年 ② 意見募集 6か月間で 5,600件の回答 2023年3〜9月 ③ 科学的評価 RAC意見は採択済み SEACは案の段階 2026年3月〜 ④ SEAC最終 欧州委員会に提出 される予定 2026年末まで ⑤ 委員会決定 加盟国と手続き で決める予定 2027年 ⑥ 適用開始 日付は未定 確認できず ※ 段階①②④⑤はEMA資料[参考資料14]、③はECHAの案内[参考資料15・16]によります。 ※ 電池用途への個別の適用除外などの結論は、RAC・SEACの意見案の段階では、本稿の調査範囲で確認できていません。 ※ 予定は変わりうるため、読むときの最新状況をECHAの公式ページで確認してください。
図8 概念図(ベクター作図)。欧州のPFAS包括制限案の手続きの段階を、完了・進行中・予定に分けて示しています。④〜⑥は予定または未定であり、制限の内容や適用日は決まっていません。日付は本稿の確認日(2026年10月10日)時点のものです。

電解液・セパレータの材料は、PFASにあたるのか(構造から見た整理)

PFASの定義は国際的に統一されているわけではありませんが、OECD(経済協力開発機構)が2021年7月に公表した報告書[参考資料18]は、完全にフッ素化されたメチル基(–CF3)またはメチレン基(–CF2–)を一つでも含むフッ素化物質という構造にもとづく定義を提示しています事実(定義の文言はOECDの報告書の概要を伝える資料で確認)。 この構造の考え方に、電池の材料をあてはめてみます。

材料使われる場所構造上の特徴OECDの構造定義にあてはまるか(本稿の整理)
LiPF6電解液の塩炭素を含まない(PF6⁻)あてはまらない
LiFSI電解液の塩(FSO2)2N⁻。炭素を含まないあてはまらない
LiTFSI電解液の塩(TFSI)(CF3SO2)2N⁻。–CF3を持つあてはまる
FEC電解液の添加剤ECの水素1つをフッ素に置換(同じ炭素に水素が残る)あてはまらない(炭素に水素が残るため)
PVDF電極のバインダー、膜の塗工など–CH2–CF2–の繰り返し。–CF2–を持つあてはまる
PTFEドライ電極のバインダー–CF2–CF2–の繰り返しあてはまる
部分フッ素置換アルキルエーテル難燃・高電圧用の溶媒成分分子ごとに異なる(–CF3を持つものも、–CF2H のように水素が残るものもある)構造しだい

LiFSIとTFSI、FECの構造は石川総説[参考資料1]の記述、PVDF・PTFEの繰り返し単位は一般的な化学構造。表の「あてはまるか」の欄は、OECDの構造定義を本記事が機械的にあてはめた整理であり(本稿の計算ではなく「解説」)、ECHAの提案や法令がどの物質をどう扱うかを示すものではありません。

ここで言えること/言えないこと

言えるのは、構造による定義にあてはめると、塩のLiPF6とLiFSIは炭素を含まないので対象外に見える一方、バインダーのPVDFやPTFE、塩のLiTFSIは対象にあたりうるという整理までです(本記事による解説)。 言えないのは、制限案がこれらの個別の物質や用途にどんな規制(禁止・期限付きの適用除外など)を課すかです。電池用途への扱いは、RACとSEACの評価と欧州委員会の判断を待つ段階で、未確定/将来です。

12. 素材技術者の視点③:材料を変えることの重さ

素材技術者の視点③:「フッ素を抜く」は、フッ素の役割を代わりに担う材料を探すこと

この記事で見てきたとおり、電解液のフッ素はSEIの材料(LiF)であり、アルミ箔の防食であり、セパレータやバインダーの耐熱・耐薬品性でもあります。 フッ素を含む材料を減らす議論は、これらの役割を誰が代わりに担うのかという設計の議論になります(本記事による解説)。

面白いのは、LiFSIの扱いです。石川総説は、FSIが「フッ酸発生を伴わないフッ素ドナー」の役割を持つとまとめています事実。 炭素を含まないので、先の構造定義には出てきません。 規制が「構造」で線を引くのに対し、電池は「機能」で材料を選ぶ ― この二つの線が一致しないことが、材料選択を難しくしている点だと思います(本記事による解説)。

また、電解液の変更は、SEIの質、アルミ箔の腐食、HFの量、ガス発生と連鎖します。 バインダー(PVDFの代替)は、正極の高電位で酸化されやすいかどうかが論点になります。いずれも、「入れ替えて終わり」にならない理由は、この連鎖にあります。

13. 課題と、本稿で確認できなかったこと

(1) 電解液混合物の引火点・実セルのガス量・水分管理値

個々の溶媒の引火点は確認できましたが、電解液(溶媒+塩+添加剤)としての引火点や、実セルでのガス発生量、電解液の水分・HFの管理値の一次情報は、本稿の調査範囲で確認できませんでした。 水分とHFの計算(第5章)は、桁を理解するための仮定計算です。

(2) セパレータの現行品の仕様

第8章の比較表は2012年の解説の値です。ハイポアやセルガードの現行品の厚み・気孔率・耐熱性などのメーカー公称値は、本稿では確認していません。製品を比べる材料にはなりません。

(3) 電池用途へのPFAS制限の扱い

電池用途への適用除外などの結論は、本稿の調査範囲では確認できませんでした。 ECHAのサイトは自動アクセスが遮断されるため、一部は検索結果の要旨に頼っています。最新の状況は、ECHAの公式ページで読む人が確認してください。

(4) 一次情報が古い箇所

Orendorff氏の解説は2012年、Campionらの論文は2005年の発表です。基本的な材料の性質は今も参考になりますが、現行のセル設計に当てはまるかは、本稿では確認していません。

この記事のまとめ
  • 電解液はLiPF6+EC+線状カーボネートが標準形。ECは室温で固体(融点36.4 ℃)で、液体の溶媒を混ぜて使う事実
  • LiPF6は水と反応してHFを生む。HFはSEIの材料にもアルミ箔の防食にもなる一方、正極などを傷める事実
  • 水分20 ppmから生じうるHFは最大約44 ppm。塩はほとんど減らない本稿の計算
  • 溶媒の引火点は室温付近。難燃化は溶媒組成を動かす話になる事実
  • セパレータは湿式(PE)と乾式(PP)で孔のあけ方が違う。湿式は縦横の強度が揃い、乾式の一軸延伸は異方性が出やすい事実
  • シャットダウンは試験条件しだいで働かないこともある。耐熱コーティングはその隙間を埋める方向の一つ事実
  • PFAS制限案は評価の途中。SEAC最終意見は2026年末まで、委員会の決定は2027年の予定で、電池用途への扱いは未確定未確定/将来

14. 評価・標準の読み方

初めて読むときは、「どの数字が大きいか」より先に、次の順番で比較の条件を揃えてください。以下は本記事の編集上の確認手順で、規格が定める合格値や試験条件ではありません。

① 何を測ったか
イオン伝導度、電極との適合性、熱収縮、セル寿命。単位と、材料・部品・完成システムのどこを測った値かを確認します。
② どの条件か
温度、濃度、膜厚、気孔、添加剤、電圧範囲。条件が異なる結果は、まず別の結果として読みます。
③ 比較で間違えやすい点
液や膜だけの測定を、組み立てたセルの安全性や寿命の証明にしない
④ 規格の役割は何か
規格番号・名称・発行年・適用範囲を発行機関の資料で確認します。試験方法、安全性、相互接続、管理体制のどれを扱う規格かを分けて読みます。規格名の記載だけで、試験実施・適合・認証まで済んでいるとは判断しません。

比較を始めるためのメモ:対象/単位/測定条件/試料数とばらつき/比較対象/規格の版/確認できない点を、ひとまとまりで残しましょう。公開概要しか確認できない規格の数値条件や合格基準は、推測して補いません。

15. 用語集

電解液
リチウム塩を有機溶媒に溶かし、添加剤を加えた液体。電極の間でLiイオンを運ぶ。
EC(エチレンカーボネート)
高誘電率の環状カーボネート。室温で固体(融点36.4 ℃)。黒鉛負極のSEI形成に関わる。
DMC/DEC/EMC
ジメチル/ジエチル/エチルメチルカーボネート。粘度を下げる線状カーボネート。
LiPF6
六フッ化リン酸リチウム。最も普及したリチウム塩。水と反応してHFを生じる。
LiFSI/LiTFSI
イミド系のリチウム塩。FSIは(FSO2)2N⁻、TFSIは(CF3SO2)2N⁻。
HF(フッ酸)
フッ化水素の水溶液。電池内では微量でもSEIや正極、アルミ箔に作用する。
VC/FEC
ビニレンカーボネート/フルオロエチレンカーボネート。負極の被膜をつくる添加剤。
SEI/CEI
負極側/正極側の電極表面の被膜。SEIは初回充電の電解液の還元分解物。
セパレータ
正負極の間に入る多孔質膜。電極を隔て、孔でイオンを通す。
湿式/乾式
セパレータの製法。湿式は可塑剤を抽出して孔をあけ、乾式は溶媒を使わず延伸で孔をあける。
シャットダウン
温度上昇時にセパレータの孔が塞がり、電流が止まること。
PFAS
有機フッ素化合物の総称。OECDは構造にもとづく定義を提示している。
RAC/SEAC
ECHAのリスク評価委員会/社会経済分析委員会。制限案を科学的に評価する。

16. 参考資料(一次情報)

  1. 石川正司(関西大学)「リチウム二次電池の電解液開発動向」GS Yuasa Technical Report 第15巻 第2号(2018年12月)/総説(PDF) — gs-yuasa.com
  2. C. J. Orendorff(サンディア国立研究所)"The Role of Separators in Lithium-Ion Cell Safety" The Electrochemical Society Interface, Summer 2012, 21(2), 61-65(英語) — electrochem.org
  3. D. Strmcnik ほか(アルゴンヌ国立研究所、BMW、ミュンヘン工科大学など)"Electrocatalytic transformation of HF impurity to H2 and LiF in lithium-ion batteries" Nature Catalysis 2018(英語) — doi.org/10.1038/s41929-018-0047-z
  4. C. L. Campion, W. Li, B. L. Lucht"Thermal Decomposition of LiPF6-Based Electrolytes for Lithium-Ion Batteries" Journal of The Electrochemical Society 152(12), A2327 (2005)(英語、要旨を確認) — digitalcommons.uri.edu
  5. M. Michalak ほか"Gas Evolution in Operating Lithium-Ion Batteries Studied In Situ by Neutron Imaging" Scientific Reports 5, 15627 (2015)(英語) — nature.com
  6. Xia ほか"Lithium Bis(fluorosulfony)imide-Lithium Hexafluorophosphate Binary-Salt Electrolytes for Lithium-Ion Batteries: Aluminum Corrosion Behaviors and Electrochemical Properties" ChemistrySelect 3(7), 1954-1960 (2018)(英語、要旨を確認) — doi.org/10.1002/slct.201702488
  7. L. Li, Y. Duan ほか"Engineering Polymer-Based Porous Membrane for Sustainable Lithium-Ion Battery Separators" Polymers 15(18), 3690 (2023)(英語) — pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  8. 旭化成"Establishment of joint venture in China for dry-process LIB separator" 2021年9月22日(英語) — asahi-kasei.com
  9. 旭化成「リチウムイオン電池用セパレータの塗工能力を大幅に増強」2023年10月31日 — asahi-kasei.com
  10. 旭化成「リチウムイオン二次電池用セパレータの生産能力増強について」2021年3月15日 — asahi-kasei.com
  11. PubChem(米国国立医学図書館)Dimethyl carbonate(引火点などの集約データ) — pubchem.ncbi.nlm.nih.gov
  12. PubChem(米国国立医学図書館)Diethyl carbonate — pubchem.ncbi.nlm.nih.gov
  13. PubChem(米国国立医学図書館)Ethylene carbonate — pubchem.ncbi.nlm.nih.gov
  14. 欧州医薬品庁(EMA)"Next steps in the ECHA assessment of the PFAS universal restriction proposal under REACH"(PCWP/HCPWP合同会議資料, 2026年2月4日, 英語、PDF) — ema.europa.eu
  15. ECHA(欧州化学品庁)"ECHA's Risk Assessment Committee adopts its opinion on PFAS restriction proposal"(英語) — echa.europa.eu
  16. ECHA(欧州化学品庁)"ECHA to launch consultation on draft SEAC PFAS opinion"(英語) — echa.europa.eu
  17. ECHA(欧州化学品庁)"ECHA receives PFASs restriction proposal from five national authorities"(英語) — echa.europa.eu
  18. OECD"Reconciling Terminology of the Universe of Per- and Polyfluoroalkyl Substances: Recommendations and Practical Guidance" OECD Series on Risk Management of Chemicals, 2021年7月9日(英語) — oecd.org

17. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
典型的な電解液が、LiPF6を1モル濃度前後、ECと低粘度溶媒(DMC・DEC・EMC)の混合溶媒に溶かしたものであること。現在の電解質は「ほぼLiPF6で占められ」、LiBF4やLiClO4は少量併用される程度であること。EC を必須とした電解液から徐々に改良されてきたこと、要求項目に「それぞれ相反する要求項目も少なくなく」実現は簡単ではないこと石川正司「リチウム二次電池の電解液開発動向」GS Yuasa Technical Report 15(2)(2018)[参考資料 1]https://www.gs-yuasa.com/en/technology/technical_report/pdf/vol15_2/015_02_001.pdf事実
「実はLiPF6は熱的に安定であるとは言いがたく,80℃付近から電解液中で残留水分による加水分解と,その後続分解反応が加速される」こと。微量のHFが「負極界面の良質なSEI形成に寄与する」こと。分解で生じるフッ化物イオンが正極集電体のアルミニウムの腐食(孔食)を防止すること石川総説[参考資料 1]https://www.gs-yuasa.com/en/technology/technical_report/pdf/vol15_2/015_02_001.pdf事実
LiFSIの表1(粘度3.64/3.39/1.89 mPa s、イオン伝導率11.3/12.1/11.2 mS cm⁻¹)。LiFSI/EC:DMC=1:9で黒鉛負極の充放電が可能で、10 Cの分極が最も小さいこと。LiPF6/EC:DMC=1:9では黒鉛負極の充放電が事実上不可能であること。測定温度・溶媒比の基準は本文で確認できなかったこと石川総説(表1、4.2〜4.4節)[参考資料 1]https://www.gs-yuasa.com/en/technology/technical_report/pdf/vol15_2/015_02_001.pdf事実
VC(還元重合でSEI形成、内部抵抗増加の可能性、添加量に注意)、FEC(LiFに富むSEI、シリコン系に好相性、ガス発生の原因にもなる)、LiBOB(酸化に弱く溶解度が劣り使いこなしが難しい)、ビフェニル類の正極上での重合と過充電防止、難燃成分は溶媒として1割以上使われることが多く部分フッ素置換アルキルエーテル・有機リン化合物・ホスファゼンが代表であること、含浸補助の効果石川総説(5章)[参考資料 1]https://www.gs-yuasa.com/en/technology/technical_report/pdf/vol15_2/015_02_001.pdf事実
FSIが「フッ酸発生を伴わないフッ素ドナー」という役割を持つこと。正極への添加剤は学術情報が少なく「負極のような明確なSEIという概念がない」こと。SEIの定義(「初回充電における電解液の還元分解物で形成される,電子絶縁性かつイオン透過性の電極界面被膜」)石川総説(1、6章)[参考資料 1]https://www.gs-yuasa.com/en/technology/technical_report/pdf/vol15_2/015_02_001.pdf事実
HFが微量のH2OとLiPF6の反応で生じる非常に有害な生成物であること。HFが電解液中でSEI形成に影響し、酸化物正極や不活性部材の溶解(腐食)を招くこと。反応式 H2O+PF5→2HF+POF3。LiFの生成がHFの電気化学的変換(LiFとH2)で説明されること。最も一般的な電解液がLiPF6と環状・線状アルキルカーボネートの混合であることStrmcnik ら Nature Catalysis(2018)。OSTI掲載の著者原稿でも確認[参考資料 3]https://doi.org/10.1038/s41929-018-0047-z事実
1.0 M LiPF6のカーボネート電解液の熱分解生成物(CO2、エチレン、ジアルキルエーテル、フッ化アルキル、OPF3、フルオロリン酸エステルなど)。微量のプロトン性不純物がOPF2ORを生み、LiPF6とカーボネートを自己触媒的に分解すること。DECでエチレン、ECでオリゴエチレンオキシドが生じることCampion ら JES 152(12)(2005)の要旨[参考資料 4]https://digitalcommons.uri.edu/chm_facpubs/775/事実
電解液の分解によるガス発生が高性能な二次電池の主要な課題の一つであること。LiNi0.5Mn1.5O4/黒鉛セルで、金属の溶出や高電位での分解生成物がガス発生に悪影響を与え、特に初回充電(黒鉛のSEI形成時)で顕著であることMichalak ら Scientific Reports 5, 15627(2015)の要旨[参考資料 5]https://www.nature.com/articles/srep15627事実
LiFSI濃度が0.3 mol/L未満のLiFSI-LiPF6二塩系電解液が、4.3 V(対Li/Li⁺)でアルミ集電体を不動態化し、サイクル性能も改善したこと。LiFSI 0.2 mol/L+LiPF6 1.0 mol/Lの黒鉛/NMC111パウチセルで、1 C・360サイクル後の容量維持率が93.9%であったことXia ら ChemistrySelect 3(7)(2018)の要旨(実験室規模)[参考資料 6]https://doi.org/10.1002/slct.201702488事実
DMCの引火点18 ℃(開放式、ICSC)、DECの引火点25 ℃(密閉式)、ECの引火点143 ℃(開放式)、ECの融点36.4 ℃。EMCの値は確認できなかったことPubChem が集約する ICSC・HSDB の記録[参考資料 11]https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/12021[参考資料 12]https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/7766[参考資料 13]https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/7303事実
式 PF5+H2O→2HF+POF3 のみを考え、電解液1 kg・1 M・密度1.2 g/mL(仮定)で、水分20 ppm → 水1.11 mmol、HF最大約44 mg(約44 ppm)、LiPF6の消費最大約0.13%になること。水分10・50 ppmの場合の値(22 ppm・0.07%/111 ppm・0.33%)。水1 ppmあたり最大約2.2 ppmのHF本稿の計算。密度1.2 g/mLと、水が電極等に吸着せず全量が反応するという前提は本稿の仮定。実際のセルのHF濃度を予測するものではない本稿の計算
厚さ25 µm・気孔率41%・面積1 m²の膜の孔の体積が約10 cm³(約10 mL)になること本稿の計算。孔がすべて電解液で満たされるという前提は本稿の仮定。気孔率41%はOrendorff表I(Celgard 2325)の記載値本稿の計算
小型電池向けセパレータの多くがPE・PPのポリオレフィンで、転移温度が約135 ℃・約165 ℃であること。典型値(気孔率40%超、約25 µm、1.5〜2.5 Ω cm²、突刺し強度300 g/mil超)。表I(Teklon、Tonen、Separion、Celgard 2325の厚さ・気孔率・融解温度)。2012年時点の各社データシート記載値であることC. J. Orendorff, ECS Interface 21(2)(2012)[参考資料 2]https://www.electrochem.org/dl/interface/sum/sum12/sum12_p061_065.pdf事実
乾式膜がPPを主成分とし溶媒を使わない工程で製造され、湿式膜がPEを主成分に可塑剤を加えて製膜し溶媒で可塑剤を抽出すること旭化成 ニュースリリース(2021年9月22日)[参考資料 8]https://www.asahi-kasei.com/news/2021/e210922.html事実
旭化成グループがLIB用セパレータとして湿式の「ハイポア」と乾式の「セルガード」の双方を手がけていること旭化成 ニュースリリース(2021年3月15日)[参考資料 10]https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2020/ze210315.html事実
ハイポアにポリオレフィン微多孔膜(基材膜)と、基材膜の上にセラミック等を塗工した膜(塗工膜)の2種類があること。2023年に塗工能力の増強を発表したこと。セパレータが「正極と負極の接触を遮断し、ショートを防止する部材」であること旭化成 ニュースリリース(2023年10月31日)[参考資料 9]https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2023/ze231031事実
乾式(溶融押出し延伸):アニール→冷間延伸→熱間延伸→熱固定。湿式(TIPS):PEと低分子の溶媒(パラフィンオイルが最も一般的)の溶液→押出し・冷却による相分離→二軸延伸→抽出。湿式PE膜は縦横の強度が揃い、乾式一軸延伸PP膜は縦横の強度差が大きく引き裂きに弱いこと。Al2O3・ベーマイトの塗工例、–OH による塗膜とPEの相互作用・電解液保持量・濡れ性の向上、塗膜の微細構造が変形やシャットダウンに影響することLi, Duan ら Polymers 15(18), 3690(2023)のレビュー[参考資料 7]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10534950/事実
多層セパレータのシャットダウン機能の仕組み。LiCoO2の18650セル(1 C過充電)で135 ℃・充電状態215%でシャットダウンし12 V上限に達して冷えた例。NCAの18650セル(1 C、上限20 V)で缶温度125 ℃・170%でシャットダウン後に内部短絡・熱暴走した例。LiCoO2セル(2 C)で110 ℃の収縮温度で短絡・熱暴走した例。20 Vで200 mA、30 Vで350 mAの電流がシャットダウン後に流れうること。民生用向けに設計されたこと。大型セルの不均一な温度と不完全なシャットダウン。低温シャットダウンと非シャットダウン熱安定化の2つの方向Orendorff, ECS Interface 21(2)(2012)[参考資料 2]https://www.electrochem.org/dl/interface/sum/sum12/sum12_p061_065.pdf事実
Al2O3-PET複合膜の105 ℃・1時間の収縮が4%でPE膜の14%より小さいこと。Rothらの比較(135 ℃でシャットダウン、165 ℃で短絡、セラミック/PET膜のインピーダンスは220 ℃超まで安定)。NCA/黒鉛18650セルの1 C過充電で、ポリオレフィン膜のセルは135 ℃・170%で熱暴走、複合膜のセルは180 ℃・300%で熱暴走。セラミックをUHMWPEに埋め込む方式(60%超)が剥離や割れを避けうることOrendorff, ECS Interface 21(2)(2012)[参考資料 2]https://www.electrochem.org/dl/interface/sum/sum12/sum12_p061_065.pdf事実
欧州のPFAS制限案の手続き:5か国の当局が提出、2023年3〜9月の6か月間の意見募集(5,600件)、14分野の評価、SEACの最終意見は2026年末までに欧州委員会に提出される予定、欧州委員会の決定は2027年にコミトロジー手続きで行われる予定EMA(欧州医薬品庁)資料(2026年2月4日)。予定は変わりうる[参考資料 14]https://www.ema.europa.eu/en/documents/presentation/presentation-next-steps-echa-assessment-pfas-universal-restriction-under-reach-l-enes-r-mezzasalma-ema_en.pdf未確定/将来
RACが2026年3月2日に意見を採択したことECHAの案内。ECHAのサイトは自動アクセスが遮断され、本稿はページを直接開けず、検索結果の要旨で確認した[参考資料 15]https://www.echa.europa.eu/-/echa-s-risk-assessment-committee-adopts-its-opinion-on-pfas-restriction-proposal事実
SEACの意見案に対する60日間の意見募集が2026年3月26日に始まり5月25日までであることECHAの案内。同上[参考資料 16]https://echa.europa.eu/-/echa-to-launch-consultation-on-draft-seac-pfas-opinion事実
5か国の当局からPFAS制限案をECHAが受領したこと(2023年)ECHAの案内のページ題名。同上[参考資料 17]https://echa.europa.eu/-/echa-receives-pfass-restriction-proposal-from-five-national-authorities事実
OECDが2021年7月9日にPFASの用語に関する報告書を公表し、完全にフッ素化されたメチル基(–CF3)またはメチレン基(–CF2–)を含む物質というPFASの構造定義を示したことOECDの出版物ページ(公表日・題名を確認)。定義の文言は報告書の概要を伝える資料で確認し、報告書本文は直接開いていない[参考資料 18]https://www.oecd.org/en/publications/reconciling-terminology-of-the-universe-of-per-and-polyfluoroalkyl-substances_e458e796-en.html事実
表の「OECDの構造定義にあてはまるか」の欄(LiPF6・LiFSI・FECはあてはまらない、LiTFSI・PVDF・PTFEはあてはまる、部分フッ素置換アルキルエーテルは構造しだい)。電池用途へのPFAS制限の個別の扱いが未確定であること本記事による解説。構造定義を機械的にあてはめた整理であり、ECHAの提案や法令の扱いを示すものではない。電池用途の適用除外などの結論は本稿の調査範囲で確認できなかった解説
ECは固体で線状カーボネートを混ぜて液体にしているという整理。塩を変えると被膜ができるかが変わるという読み取り。「溶けて孔を塞ぐ」設計、規制は構造で・電池は機能で線を引くという整理。HFの3つの働きの並べ方。難燃化が溶媒組成を動かす話だという整理。コーティングの厚み増加の論点本記事による解説解説
電解液混合物の引火点、実セルのガス発生量、電解液の水分・HFの管理値、ハイポア・セルガード現行品の仕様、電池用途へのPFAS適用除外の結論本稿の調査範囲で公開された一次情報に確認できなかったため記載していない解説
図2〜図6、図8が実際の電池・膜の構造や観察像ではなく説明のための作図であること。図1と図7がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月10日/出典は一次情報(技術報告に掲載された総説、国立研究所・学会誌の解説、査読論文の要旨、企業の公式発表、EUの機関の資料)に限定しています。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 電解液混合物の引火点、実セルのガス発生量・水分管理値、セパレータ現行品の仕様、電池用途へのPFAS制限の個別の扱いについては、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 第5章の水分とHFの計算、第8章の孔の体積の計算は本記事が仮定を置いた例示であり、実測値ではありません。 ECHAのサイトは自動アクセスが遮断されるため、ECHAの案内は検索結果の要旨で確認しています。PFAS制限案は評価の途中で、最新の状況は公式ページでご確認ください。 図はすべて説明用の概念図です。図2〜図6・図8はベクター作図、図1と図7はAI生成イメージであり、いずれも実際の断面写真・顕微鏡像・製品の実物を示すものではありません。