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電池管理システム 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

電池管理システム(BMS)
― 電圧・電流・温度から、見えない「残量」を推し量る

電池の残量(SOC)は、電圧計のように直接は測れません。測れるのは、端子の電圧、電流、そしていくつかの温度だけです。 BMSは、この限られた測定から、残量・劣化・使える出力を推定し、充電・冷却・遮断の判断に変える装置です。 ところが、材料の側に難しさがあります。電圧が残量に対してほとんど変わらない平らな領域をもつLFP、同じ残量でも充電のあとと放電のあとで電圧がずれるヒステリシス。 BMSの推定の難しさの多くは、電極材料の性質から来ています。

構成:Frontiers in Chemistry(2026年)と Communications Engineering(2024年)、iScience(2025年)の論文、ISO・IECの規格の公式ページを一次情報として使用/最終更新 2026年10月

セル電圧の配線、電流センサー、温度センサー、制御基板を見分けてください
図1 概念画像(ImageGenで生成)。セル電圧の配線、電流センサー、温度センサー、制御基板を見分けてください。内部の全状態を直接測っているわけではありません。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。
この記事の構成
  1. BMSとは(3行でつかむ)
  2. BMSの仕事 ― 測る・推定する・守る・そろえる
  3. 残量の推定 ― 三つの考え方
  4. 素材技術者の視点①:電圧は、電極材料の「癖」を含んでいる(ヒステリシス)
  5. 素材技術者の視点②:LFPの平らな電圧は、なぜ推定を難しくするか/本稿の計算
  6. 電流積算のずれ ― 本稿の計算
  7. 劣化の推定(SOH)
  8. 保護とセルバランス ― 素材技術者の視点③:設定値の裏にある材料の限界
  9. 機能安全の規格 ― 番号と題名、範囲、状態
  10. 課題と、本稿で確認できなかったこと
  11. 評価・標準の読み方
  12. 用語集
  13. 参考資料(一次情報)
  14. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・予定であり、実績や決定が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。規格は番号・題名・版・日付と状態(現行/改訂中)を区別して示します。

1. BMSとは(3行でつかむ)

  • 何をするか:電気自動車の電池は、利用できるエネルギー、出力の余力、温度、劣化の進み方が、温度・使い方の履歴・製造のばらつきで変わる「安全上重要な電気化学システム」です。BMSは、端子の電圧、電流、少数の温度という限られた測定を、出力制限、充電、冷却、バランス、遮断、故障対応の判断に変える運用の層です事実(Frontiers in Chemistry, 2026)
  • なぜ難しいか:残量(SOC)は「燃料計」と呼ばれますが、液体燃料と違い直接は測れません。電流を積算する方法は測定誤差がたまり、電圧から求める方法は休止が要り、モデルを使う方法は容量・抵抗・温度の誤差を引き継ぎます事実
  • 素材技術者に大事なこと:推定は、電極材料の電圧と残量の関係(OCV-SOC曲線)に頼っています。その曲線が平ら(LFP)だったり、履歴で動いたり(ヒステリシス)すると、推定は難しくなります(本記事による解説)
この記事でいちばん大事な一行

BMSの精度は、アルゴリズムだけでなく、電極材料の電圧特性が決める部分があります。 電圧の傾きが小さい材料では、同じ電圧の誤差が、ずっと大きな残量の誤差になります。 そして、安全に関する規格は、BMSの「故障」を主に扱い、電池の化学が生む危険そのものを扱うものではありません(本記事による解説。第9章)。

2. BMSの仕事 ― 測る・推定する・守る・そろえる

電圧・電流・温度の入力から、制御基板が接触器や冷却へ指示を出す例です
図2 概念画像(ImageGenで生成)。電圧・電流・温度の入力から、制御基板が接触器や冷却へ指示を出す例です。残量・劣化などは限られた測定から推定します。 [参考資料1] 形状・色・寸法は説明用です。数値と原文の対応は下の元図で確認できます。
元のSVG模式図と正確な説明を見る
BMSの入力・処理・出力(概念図) ※ 機能の分け方は Frontiers in Chemistry(2026)のレビューにもとづく本記事の整理です。 入力(測れるもの) セルの端子電圧 電池に流れる電流 少数の温度 内部の温度・濃度・ 劣化は直接測れない BMS(判断する) 状態の推定 残量・劣化・出力の余力 保護(安全の監督) 電圧・温度・出力などの限界 セルのそろえ(バランス) 弱いセルが全体を決める 出力(動かすもの) 出力の制限 充電の制限 冷却の指示 バランスの実行 遮断・故障への対応 ※ 入力と出力の項目は、論文の記述(端子電圧・電流・少数の温度を、出力制限・充電・冷却・バランス・遮断・故障対応の判断に変える)にもとづきます。 ※ 実際のBMSの構成(基板の数、通信、冷却の制御の分担)はメーカーや車で異なり、本図はそれを示すものではありません。
図2 概念図(ベクター作図)。BMSが限られた測定から判断を出す流れを示した図です。入出力の項目は Li ら(Frontiers in Chemistry, 2026)[参考資料1]の記述によります。三つの機能の分け方は本記事の整理で、実際のBMSの構成を示すものではありません。

Liら[参考資料1]は、BMSの機能を次のように整理しています事実。

  • 状態の推定:測定とパラメータから、SOC(残量)、SOH(劣化)、SOP(出力の余力)、RUL(残りの寿命)と、その不確かさを求める。適応オブザーバ、ベイズフィルタ、ニューラルネットワークなどが使われる。問題は、現場のデータのラベルが限られ、ドメインのずれ(学習した条件と異なる条件)が主な失敗要因であること
  • 保護:提案されている構成では、決定的な安全の監督層が、電圧・温度・リチウム析出・出力・不均衡・不確かさの限界を、性能の最適化より先に強制する。学習による更新は、認証された局所の安全の枠を迂回できない
  • バランスと充電:セルのばらつきがあるため、最も弱いセルが、パック平均のSOCではなく、安全な電流を決める。受動バランスは予測しやすいが熱を出し、能動バランスはエネルギーを移せるが変換損失とハードの故障・制御の複雑さが増える

なお、Liらのレビューは電気自動車用を主な対象としたもので、定置用や産業用では異なる設計・規格が使われることがあります(第9章)。

3. 残量の推定 ― 三つの考え方

SOCの推定には、大きく三つの考え方があります。それぞれ、何を信じ、どこが弱いかが違います。

考え方何をするか弱点(出典の記述)
電流積算(クーロンカウント)端子の電流を測り、積算して、出入りした電気量から残量を求める測定誤差が使うほどにたまる(Jahnら)。センサーのバイアスが積算される(Liら)。電池が劣化して容量が変わるのに、積算の分母(容量)を固定すると、系統的な偏りが出て、とくに上下限の近くで目立つ(Liら)
開回路電圧(OCV)から求める電圧が残量の関数であることを使い、電圧から残量を読む。電流積算のずれを直すのに使う十分な休止が要る(Liら)。OCVは充放電の履歴にも依存し(ヒステリシス)、これを考えないと正しいSOCにならない(Jahnら)。OCV-SOC曲線の作成自体にも時間がかかる(Li Zら)
モデルを使った推定(オブザーバ、カルマンフィルタ)電池の等価回路などのモデルと測定を突き合わせ、内部状態やパラメータを逐次推定するモデルは容量・抵抗・温度依存性の誤差を引き継ぐ(Liら)。電流が一定の充電や低電流の駐車など、励起が足りない状態では、複数のパラメータを同時に決められない(Li Zら)。データ駆動型は、別のデータセットでの精度だけでは、実機で使える証拠として不十分(Liら)

すべて事実(Liら[参考資料1]、Jahnら[参考資料2]、Li Zら(iScience 2025)[参考資料3])。各論文の記述を本記事が三つに整理したものです。実際のBMSはこれらを組み合わせて使います(本記事による解説)。

Liらは、電圧だけを使う推定器は、見慣れたセルでは精度が出ても、温度・劣化の機構・化学が変わると、識別しにくくなると述べています事実。 そして、何が観測できて何が観測できないかを自覚していることが、有効なBMSの条件だとしています。

4. 素材技術者の視点①:電圧は、電極材料の「癖」を含んでいる(ヒステリシス)

OCVでSOCを補正するとき、前提になるのは「OCVはSOCだけで決まる」という関係です。ところが、現実の電極材料は、そうなっていません。 Jahnら(Communications Engineering, 2024)[参考資料2]は、導入でこう述べています事実。

  • OCVは充放電の履歴にも依存し、この経路依存性が電圧ヒステリシス。正しいSOC推定には、これを考慮する必要がある
  • ヒステリシスは、長い緩和(電流を流さない時間)のあとでも消えない
  • ヒステリシスの大きさは活物質に強く依存する:黒鉛は約10 mV、LFPは最大20 mV、シリコンは200 mV超で顕著、LTO(チタン酸リチウム)はほとんどない
  • 機構も材料で違う:LFPは一次の相転移(リチウムに乏しい相と富む相の二相)、シリコンは充電方向に依存する反応経路
素材技術者の視点①:二相反応の材料は、電圧に「記憶」を残す

LFPのヒステリシスの原因が一次の相転移だという点は、素材の技術者にとって馴染みのある話です。 Jahnらは、ギブズエネルギーに二つの極小があって二つの安定相(リチウムに乏しい相と富む相)がある材料では、相分離を考えない電極電位がリチウム濃度の非単調な関数になる、と説明しています事実。 結晶構造の転移を使う材料の性質が、長い休止でも消えない電圧のずれとして現れ、電圧から残量を読むときの不確かさの下限になっています(本記事による解説)。

この観点は、本シリーズ『シリコン負極とナノ構造電極』編の話にもつながります。シリコンは200 mV超のヒステリシスを示すとされ、容量を稼ぐ材料ほど、推定の側には負担をかけるという関係があります(本記事による解説)。 電極材料を設計する人が、ヒステリシスの小さい材料や、ヒステリシスが予測しやすい組み合わせを選ぶことは、BMSの推定の問題を材料側から減らす方法でもあります。

電圧と残量の関係:傾きとヒステリシス(概念図) ※ 曲線の形は定性的な模式図で、数値の軸は描いていません。 傾きが大きい材料(例:ニッケル系) 傾きが小さい材料(例:LFP) 電圧 電圧 残量 SOC → 残量 SOC → 同じ電圧で、残量の幅は狭い 同じ電圧で、残量の幅は広い 上:充電後 下:放電後 上:充電後、下:放電後 ※ 緑の点線は「測った電圧」、緑の太線はその電圧に対応しうる残量の幅(二本の曲線のあいだ)です。
図3 概念図(ベクター作図)。充電後と放電後で電圧がずれること(ヒステリシス)と、LFPのOCV-SOC曲線が平らな領域を持つことは、Jahnら[参考資料2]とLi Zら[参考資料3]の記述によります。曲線の形・傾き・ヒステリシスの大きさは模式的で、特定の電池の実測を示すものではありません。ヒステリシスの大きさの文献値は本文を参照してください。

5. 素材技術者の視点②:LFPの平らな電圧は、なぜ推定を難しくするか/本稿の計算

OCV法は、電圧の小さな変化が、残量の大きな変化に対応しているときに強みを発揮します。 Li Zら(iScience 2025)[参考資料3]は、OCV-SOC曲線を推定の中で更新する方法を提案しましたが、その限界として、次を述べています事実。

  • この方法はOCV-SOC曲線の傾きが急な領域でだけ使える。LFPのように曲線が平らな電池では、追加の制約が要る
  • 低温や低SOCの複雑な動特性、LFPの平らなOCV-SOC曲線は、この方法に大きな制約をもたらす
  • 等価回路モデルの精度は、ニッケル系(NCM)では一般に高いが、LFPでは低くなりうる。また、セル単体の精度はパックよりずっと高い
素材技術者の視点②:同じ1 mVの誤差が、材料によって残量の誤差の16倍になる

SOCの誤差は、電圧の不確かさを、曲線の傾き(電圧÷SOC)で割った値です。 傾きが急な材料なら、数mVの誤差は残量の1%以下の誤差にしかなりません。 傾きが小さい材料では、同じ誤差が、桁違いに大きな残量の誤差になります(本記事による解説)。 LFPが定置用蓄電やコスト重視の電気自動車で広く使われるなかで、これは、材料の選択が、システムの制御の難しさを決める典型例です。

本稿の計算:電圧の不確かさは、残量の誤差にどう変わるか

前提本稿の計算

  • SOC誤差 = 電圧の不確かさ ÷ OCV-SOC曲線の傾き
  • 傾き:LFPの平らな領域で0.5 mV/%(SOC)、ニッケル系/黒鉛で8 mV/%(どちらも本稿が置いた仮定。LFPは平らな領域で30 mVが60%のSOCに相当、ニッケル系は約3.4〜4.2 Vが100%に相当、という概念的な値)
  • 電圧の不確かさ:ヒステリシスは、Jahnらが示したLFPで最大20 mV、黒鉛で約10 mVの文献値事実。測定誤差は、仮に±5 mV(本稿の仮定)

計算

  • LFP、ヒステリシス20 mV:20 ÷ 0.5 = 40%(SOC)。測定誤差5 mV:5 ÷ 0.5 = 10%
  • ニッケル系/黒鉛、ヒステリシス10 mV:10 ÷ 8 = 約1.3%。測定誤差5 mV:5 ÷ 8 = 約0.6%
  • 傾きの比:8 ÷ 0.5 = 16倍(同じ電圧の誤差に対する、残量の誤差の比)

読み取り:LFPの平らな領域では、電圧だけからSOCを決めると、ヒステリシス(履歴)だけで数十%の幅が残る可能性があります。 このため、LFPの電池では、電流積算を主にしつつ、電圧が使える領域(充電末期など、曲線が立ち上がる領域)で補正する、といった設計が考えられます(本記事による解説)。 前提と限界:傾きの値は本稿の仮定で、実際のLFP電池の平らな領域の傾きは、セル・温度・劣化で異なります。測定誤差±5 mVも仮の値で、実際のBMSの精度ではありません。ここで示したいのは、傾きの比(16倍)が誤差の比になるという関係です。

電圧の不確かさが、残量(SOC)の誤差になる(本稿の計算) ※ SOC誤差=電圧の不確かさ÷曲線の傾き。傾きは本稿の仮定(LFP 0.5、ニッケル系 8 mV/%)です。 LFP:ヒステリシス20 mV LFP:測定誤差5 mV ニッケル系:ヒステリシス10 mV ニッケル系:測定誤差5 mV 40% 10% 約1.3% 約0.6% ※ ヒステリシスの20 mV(LFP)と約10 mV(黒鉛)は Jahn ら(2024)の文献値の記述。測定誤差±5 mVは本稿の仮定です。 ※ 棒の長さは10 px/%です。LFPの平らな領域での推定が、電圧だけでは難しいことを、桁で示す例です。 ※ 実際のBMSは電流積算やモデルを併用し、LFPでも電圧が立ち上がる領域で補正します(本記事による解説)。
図4 本稿の計算による作図(ベクター作図)。ヒステリシスの文献値は Jahnら[参考資料2]によります。曲線の傾き(0.5と8 mV/%)、測定誤差±5 mV、および40%・10%・約1.3%・約0.6%という誤差は、本記事が仮定を置いて算出した例示であり、実測値でも実際のBMSの精度でもありません。

6. 電流積算のずれ ― 本稿の計算

電流積算は、電圧が使えない領域でも頼れる反面、誤差が積み上がるのが弱点でした(第3章)。どのくらいの桁か、仮の数値で見てみます。

本稿の計算:電流センサーのずれと、劣化した容量の見落とし

前提本稿の計算

  • パックの容量50 Ah、電流センサーに0.1 Aの一定のずれ(オフセット)があるとする(仮の値)
  • 劣化して、実際の容量が40 Ah(SOHは公称の80%)になったのに、BMSが容量を50 Ahのまま使うとする(仮の値)

計算

  • オフセットの積算:0.1 A ÷ 50 Ah = 0.2%/時間。10時間で2%、100時間で20%(補正がなければ、の話)
  • 容量の見落とし:実際に20 Ah放電したとき、BMSは 20 ÷ 50 = 40%分減ったと推定するが、実際は 20 ÷ 40 = 50%分減っている。差は10ポイント

読み取り:小さな一定のずれでも、時間がたてば無視できなくなります。 Liらが「劣化に応じて容量を更新しないと、系統的な偏りが生じる」と述べているのは、この計算の2つ目のことです事実。 OCVによる補正(休止中に電圧から残量を読み直す)が必要になる理由も、ここにあります(本記事による解説)。 前提と限界:0.1 Aの偏りと、容量50 Ah・40 Ahは本稿の仮定で、実際のセンサーやパックの値ではありません。

電流積算の誤差は、時間とともにたまる(本稿の計算) ※ 容量50 Ah、電流センサーのずれ0.1 A(どちらも仮の値)。補正を行わない場合の誤差です。 0% 5% 10% 15% 20% 0 50時間 100時間 10時間で2% 50時間で10% 100時間で20% SOCの誤差 もう一つのずれ 容量が50→40 Ahに劣化 でも50 Ahで計算すると 20 Ah放電のとき 推定40%減 vs 実際50%減 差は10ポイント ※ 容量を更新しない偏りは、Li ら(2026)の記述(系統的な偏り)にもとづく例示です。数値は本稿の仮定です。
図5 本稿の計算による作図(ベクター作図)。電流積算の誤差が蓄積すること(Jahnら[参考資料2])と、容量を更新しないと系統的な偏りが出ること(Liら[参考資料1])は文献の記述によります。0.1 Aのずれ、50 Ah・40 Ah、2%・10%・20%・10ポイントはいずれも本稿が仮定を置いた例示で、実際のセンサーやパックの値ではありません。

7. 劣化の推定(SOH)

SOHは、電池がどれだけ劣化したかを表す指標です。劣化そのものの機構と評価の方法は、本シリーズ『電池の評価と劣化』編で扱うので、ここではBMSがSOHを推定する難しさだけを整理します。

  • 観測できるものが限られる:BMSが現場で得られるのは、電圧・電流・少数の温度だけです。Liらは、部分的な充電の電圧波形や、初期サイクルのデータが、電池の健全度と寿命の予測に役立つ特徴を持つことが示されている一方、EIS(電気化学インピーダンス分光)やDRT(緩和時間分布)は、低誤差のSOH特徴を与えうるが、ハードウェア、励起の設計、識別性、測定時間の制約があると述べています事実
  • データの偏り:現場データのラベルが限られ、ドメインのずれが主要な失敗要因。部分充電や転移学習は実用性を高めるが、範囲外のデータを検知する仕組みが要る事実
  • 化学が変わると校正し直し:推定する潜在状態、観測できる電気化学的特徴、安全な電圧・温度・圧力の範囲、劣化の兆候は、化学とセル設計ごとに再校正が必要で、共通の数値パラメータや診断の閾値を他の化学にそのまま使ってはならない(負の転移を避けるため)事実

8. 保護とセルバランス ― 素材技術者の視点③:設定値の裏にある材料の限界

BMSの保護の設定値(電圧の上下限、温度の範囲、充電電流の上限)は、多くが材料の限界から来ています。 いくつかを、本シリーズの内容と一次情報で結びつけます。

BMSが守るもの背後にある材料の事情出典
電圧の下限(過放電)銅の集電箔は低い電圧で腐食しうる。レビューは、化成を、銅集電体を腐食から守るため比較的低い電圧(例:1.5 V)への充電から始める、と説明しているiScience 2021のレビュー[参考資料8]
低温・高SOCでの充電電流低温や高SOCでは、負極の輸送と挿入が追いつかず、リチウム析出が起きやすい。BMSの安全監督は、リチウム析出の限界を強制するLiら[参考資料1]
電圧の上限(過充電)過充電の試験では、シャットダウン型セパレータの電池でも、試験条件しだいで内部短絡と熱暴走に至った例がある。電池側の安全機構が、BMSの遮断の代わりになるとは限らない(解説)Orendorff(2012)[参考資料9]
セル間のばらつき最も弱いセルが、末期の電圧の余裕と、急速充電の電流を決める。電圧をそろえることが、容量・抵抗が違うセルの正しい目標とは限らないLiら[参考資料1]

すべて事実。各行の「背後の事情」は、出典の記述を本記事が対応づけたものです。セパレータと過充電の詳細は、本シリーズ『電解液とセパレータ』編を参照してください。

素材技術者の視点③:BMSの「閾値」は、材料の安全な窓の写し絵

Liらは、安全な電圧・温度・圧力の範囲は、化学とセル設計ごとに再校正が必要だと述べています事実。 逆に言えば、BMSの設定値の裏には、集電体の腐食電位、負極のリチウム析出、電解液の分解電位、セパレータの耐熱といった材料の限界が隠れています(本記事による解説)。 材料を変えれば(たとえばシリコン負極、ナトリウムイオン、新しい電解液)、その閾値が変わり、BMSの設計と試験も作り直しになります。 材料開発の成果が、電池に載るまでに時間がかかる理由の一つです。

パッシブバランスの桁

Liらは、受動バランスは予測しやすいが熱を出す、能動バランスはエネルギーを再配分できるが、変換損失・ハードの故障・制御の複雑さが増えるとしています事実。 受動バランスがどのくらい遅いか、仮の数値で見ておきます。

本稿の計算:受動バランスは、どのくらい時間がかかるか

前提本稿の計算

  • セル電圧3.3 V、放電抵抗50 Ω(仮の値)
  • 容量100 Ahのセルが、ほかより2%(2 Ah)多く充電されている(仮の値)

計算

  • 電流:3.3 V ÷ 50 Ω = 66 mA。熱:3.3 V × 0.066 A = 約0.22 W
  • 2 Ah ÷ 0.066 A = 約30時間

読み取り:受動バランスは小電流で熱を捨てるので、大きな容量差の解消には長い時間がかかります。熱は、セルの近くの基板で出ます(本記事による解説)。 前提と限界:抵抗値・容量・差はすべて本稿の仮定で、実際のBMSの回路や運用(バランスの電流、動作する期間)を示すものではありません。

模擬セルと計測器でBMSの応答を検証する例です
図6 概念画像(ImageGenで生成)。模擬セルと計測器でBMSの応答を検証する例です。実際の電池を危険な条件に置かずに試す方法の一例です。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。

9. 機能安全の規格 ― 番号と題名、範囲、状態

BMSの安全に関わる規格は、いくつかの層に分かれます。ここでは、公式のページで番号・題名・版・日付・範囲・状態を確認できたものだけを挙げます。 本文は有料のため、各規格が BMS に求める具体的な要件は、本稿では確認していません。

BMSに関わる規格の位置づけ(確認できた範囲、2026年10月10日) ※ 公式ページで確認できた番号・版・状態・範囲です。BMSへの具体的な要件は本稿では未確認です。 IEC 61508-1:2010 電気・電子・プログラマブル電子の 安全関連系の機能安全(一般要求) 第2版、2010年4月30日。分野別規格づくりを 助けることが主な目的 ISO 26262-1:2018 道路車両の機能安全(第1部:用語) 第2版、2018年12月。量産の道路車両の 電気・電子の安全関連系が対象 (感電・火災などは、故障が直接の原因の場合のみ) ISO 6469-1:2019(+Amd 1:2022) 電動道路車両の安全仕様 第1部:RESS 第3版、2019年4月。Amd 1は「熱伝播の 安全管理」。状態:改訂予定(ISO/DIS 6469-1が草案) IEC 62619:2022 産業用リチウム二次電池の安全要求 第2版、2022年5月24日。定置用を含む産業用。 道路車両はIEC 62660系が優先される、と 範囲に記載 ※ 規格の「状態」は各機関のページの表示です。改訂版が出れば変わります。購入前に最新の版を確認してください。
図7 概念図(ベクター作図)。各規格の番号・題名・版・日付・範囲・状態は、ISOとIECの公式ページ[参考資料4〜7]の記載によります。規格の本文(要件)は有料のため直接確認しておらず、BMSへの具体的な要件を示すものではありません。配置は本記事の整理です。
規格(番号・題名)版・日付・状態範囲(公式ページの記載)
IEC 61508-1:2010
Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety-related systems — Part 1: General requirements
第2版、2010年4月30日(1998年の第1版を置き換え)E/E/PE系を安全機能に使うときの考慮事項を扱う。分野別・応用別の国際規格づくりを助けることが主な目的。分野別規格のない場合に安全関連系の開発を可能にすることが第二の目的
ISO 26262-1:2018
Road vehicles — Functional safety — Part 1: Vocabulary
第2版、2018年12月(現行、公開)量産の道路車両(モペッドを除く)に搭載される、電気・電子(E/E)系を含む安全関連系に適用。安全関連E/E系の誤動作による危険を扱い、感電、火災、煙、熱、毒性、可燃性、腐食、エネルギーの放出などの危険は、安全関連E/E系の誤動作が直接の原因である場合を除き扱わない
ISO 6469-1:2019
Electrically propelled road vehicles — Safety specifications — Part 1: Rechargeable energy storage system (RESS)
第3版、2019年4月(現行)。Amd 1:2022 "Safety management of thermal propagation"。ステージ「改訂予定」。次の版 ISO/DIS 6469-1 は草案(2026年10月10日に確認)電動道路車両の充電式エネルギー貯蔵システム(RESS)の、人の保護のための安全要求を規定する。製造・保守・修理の包括的な安全情報は提供しない
IEC 62619:2022
Secondary cells and batteries containing alkaline or other non-acid electrolytes — Safety requirements for secondary lithium cells and batteries, for use in industrial applications
第2版、2022年5月24日(現行。安定期限2026年)定置用を含む産業用リチウム二次電池の、安全な運用のための要求と試験。道路車両用の IEC 62660 系など、特殊用途の規格と矛盾する場合は、そちらが優先される

すべて事実(IEC 61508-1[参考資料7]、ISO 26262-1[参考資料4]、ISO 6469-1[参考資料5]、IEC 62619[参考資料6]の公式ページ)。規格の存在と範囲を示すもので、BMSの設計がこれらに適合することを保証する記述ではありません。

読み方の注意:機能安全は、「電池の化学の危険」そのものを扱うのではない

ISO 26262-1の範囲の記載のとおり、機能安全の規格が扱うのは、電気・電子の安全関連系の「誤動作」が生む危険です。 BMSの例で言えば、SOCの推定の誤りやセンサーの故障から、過充電や過熱の保護が働かない、という危険です。 一方、電池の材料が持つ熱暴走や火災の危険そのものは、誤動作が直接の原因でない限り、この規格の範囲の外です(本記事による解説)。 電池の安全には、材料・セルの設計(本シリーズ『熱暴走と電池の安全』編)、パック・車両の安全仕様(ISO 6469-1の熱伝播の安全管理など)、そしてBMSの機能安全が、別の層として重なっています。

10. 課題と、本稿で確認できなかったこと

(1) 規格が BMS に求める具体的な要件

ISO 26262、ISO 6469-1、IEC 62619の本文は有料のため、BMSに求められる具体的な要件(診断の範囲、故障の許容時間、ASILの割り当てなど)は、本稿では確認していません。 また、IEC 62619:2022がBMSの機能安全をどう扱うかは、公式ページの記載からは確認できませんでした。

(2) 実機のBMSの精度

実際の電気自動車や定置用蓄電池のBMSの、SOC・SOH推定の誤差の実績値は、本稿では確認できませんでした。第5章・第6章の計算は、仮定を置いた例示です。

(3) 他の規格・規制(UL 1973、UN GTR 20 など)

定置用蓄電のUL 1973や、国連の電気自動車安全の世界技術規則(GTR No. 20)なども関係しますが、本稿では公式ページで番号・題名・状態を確認できなかったため、扱っていません。

(4) 論文の位置づけ

Liら(2026)はミニレビュー、Jahnら(2024)は電圧ヒステリシスのモデル論文、Li Zら(2025)はOCV-SOC曲線の同定の提案です。 いずれも、BMSの実装や規格適合を直接評価した論文ではありません。引用した数値(ヒステリシス10〜200 mV超など)は、実験室の測定にもとづく文献値です。

この記事のまとめ
  • BMSは、端子の電圧・電流・少数の温度を、出力制限・充電・冷却・バランス・遮断の判断に変える。SOCは直接測れない事実
  • 推定には電流積算・OCV・モデルの三つの考え方があり、それぞれ弱点がある。誤差の蓄積、休止の必要、励起不足事実
  • ヒステリシスは、黒鉛約10 mV、LFP最大20 mV、シリコン200 mV超、LTOはほぼなし。LFPの原因は一次の相転移事実
  • LFPのように曲線が平らな電池では、OCV法の適用が難しい。傾きの比(仮定で16倍)が、残量の誤差の比になる本稿の計算
  • 容量を更新しないと、系統的な偏りが出る。仮の例で、容量が50→40 Ahなら、20 Ah放電で10ポイントの差本稿の計算
  • BMSの閾値は、材料の限界(集電体の腐食、リチウム析出など)の写し絵。材料が変われば再校正が必要事実
  • 機能安全の規格(ISO 26262など)は、電気・電子系の誤動作の危険を扱い、電池の化学の危険そのものは範囲外。ISO 6469-1は改訂中事実

11. 評価・標準の読み方

初めて読むときは、「どの数字が大きいか」より先に、次の順番で比較の条件を揃えてください。以下は本記事の編集上の確認手順で、規格が定める合格値や試験条件ではありません。

① 何を測ったか
推定誤差、検出時間、保護動作、バランス能力。単位と、材料・部品・完成システムのどこを測った値かを確認します。
② どの条件か
温度、劣化度、電流履歴、センサー誤差、異常の想定。条件が異なる結果は、まず別の結果として読みます。
③ 比較で間違えやすい点
推定精度の試験と、異常時の機能安全の確認を分ける
④ 規格の役割は何か
規格番号・名称・発行年・適用範囲を発行機関の資料で確認します。試験方法、安全性、相互接続、管理体制のどれを扱う規格かを分けて読みます。規格名の記載だけで、試験実施・適合・認証まで済んでいるとは判断しません。

比較を始めるためのメモ:対象/単位/測定条件/試料数とばらつき/比較対象/規格の版/確認できない点を、ひとまとまりで残しましょう。公開概要しか確認できない規格の数値条件や合格基準は、推測して補いません。

12. 用語集

BMS
電池管理システム(Battery Management System)。電池の電圧・電流・温度を監視し、状態を推定し、保護・バランスを行う。
SOC
充電状態(State of Charge)。電池の残量を表す割合。直接は測れない。
SOH
健全度(State of Health)。電池の劣化の程度を表す指標。
SOP
出力の余力(State of Power)。そのときに出せる・受け入れられる電力。
OCV
開回路電圧。電流を流さず、十分休ませたときの電圧。
クーロンカウント
電流を時間で積算して、出入りした電気量を求める方法。
ヒステリシス
同じ残量でも、充電後と放電後で電圧が異なる経路依存の現象。
カルマンフィルタ
モデルと測定の両方を使い、状態を逐次推定する手法。
セルバランス
直列のセルのSOCや電圧のばらつきを小さくする機能。受動(抵抗で捨てる)と能動(エネルギーを移す)がある。
機能安全
電気・電子の安全関連系が、誤動作しても危険にならないようにする考え方。
RESS
充電式エネルギー貯蔵システム。電動車の駆動用電池のこと。
ASIL
自動車の安全度水準。ISO 26262で危険の大きさに応じて定める区分(本稿では詳細未確認)。

13. 参考資料(一次情報)

  1. F. Li, Y. Li, W. Wu, H. Qiao, L. Jiang "From state estimation to active intelligence: safety-aware battery management for electric vehicles" Frontiers in Chemistry 14, 1960882 (2026)(英語、ミニレビュー) — pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  2. L. Jahn, P. Mößle, F. Röder, M. A. Danzer(バイロイト大学) "A physically motivated voltage hysteresis model for lithium-ion batteries using a probability distributed equivalent circuit" Communications Engineering 3, 74 (2024)(英語) — pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  3. Z. Li, C. Chen, R. Yang, H. Li, R. Xiong "Entropy-driven online open circuit voltage identification for precise state estimation in lithium-ion batteries" iScience 28(9), 113290 (2025)(英語) — pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  4. ISO "ISO 26262-1:2018 Road vehicles — Functional safety — Part 1: Vocabulary"(第2版、2018年12月) — iso.org
  5. ISO "ISO 6469-1:2019 Electrically propelled road vehicles — Safety specifications — Part 1: Rechargeable energy storage system (RESS)"(第3版、2019年4月、Amd 1:2022、ISO/DIS 6469-1が草案) — iso.org
  6. IEC "IEC 62619:2022 Secondary cells and batteries containing alkaline or other non-acid electrolytes — Safety requirements for secondary lithium cells and batteries, for use in industrial applications"(第2版、2022年5月24日) — webstore.iec.ch
  7. IEC "IEC 61508-1:2010 Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety-related systems — Part 1: General requirements"(第2版、2010年4月30日) — webstore.iec.ch
  8. Y. Liu, R. Zhang, J. Wang, Y. Wang "Current and future lithium-ion battery manufacturing" iScience 24(4), 102332 (2021)(英語、レビュー) — pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  9. C. J. Orendorff(サンディア国立研究所) "The Role of Separators in Lithium-Ion Cell Safety" The Electrochemical Society Interface, Summer 2012, 21(2), 61-65(英語) — electrochem.org

14. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
牽引用電池が、使えるエネルギー・出力・温度・劣化の進みが温度・使い方・充電・製造ばらつきで変わる「安全上重要な電気化学システム」であること。BMSが、端子電圧・電流・少数の温度という限られた測定を、出力制限・充電・冷却・バランス・遮断・故障対応の判断に変えることLi ら Frontiers in Chemistry 14, 1960882 (2026)[参考資料 1]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13619866/事実
SOCが直接測れないこと。電流積算がセンサーのバイアスを積算し、OCV法が十分な休止を要し、モデルベースのオブザーバが容量・抵抗・温度依存性の誤差を引き継ぐこと。劣化しても容量を固定したままだと積算に系統的な偏り(上下限付近で顕著)が出ること。電圧だけの推定器は、温度・劣化機構・化学が変わると識別しにくくなることLi ら (2026)[参考資料 1]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13619866/事実
BMSの機能の整理:SOC・SOH・SOP・RUL と不確かさの推定(適応オブザーバ、ベイズフィルタ、ニューラルネットワーク等)、現場のデータのラベルが限られドメインのずれが主な失敗要因であること、決定的な安全の監督層が電圧・温度・リチウム析出・出力・不均衡・不確かさの限界を性能最適化より先に強制すること、学習による更新が認証された局所の安全の枠を迂回できないことLi ら (2026)[参考資料 1]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13619866/事実
最も弱いセルが、パック平均のSOCではなく、安全な電流と末期の電圧の余裕を決めること。受動バランスが予測しやすいが熱を出し、能動バランスが変換損失・ハードの故障・制御の複雑さを増すこと。電圧をそろえることが容量・抵抗の違うセルの正しい目標とは限らないこと。低温や高SOCでリチウム析出が起きやすいことLi ら (2026)[参考資料 1]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13619866/事実
SOH推定について、部分充電の電圧波形や初期サイクルのデータが特徴を持つこと、EIS・DRTが低誤差のSOH特徴を与えうるがハードウェア・励起設計・識別性・測定時間の制約があること、部分充電・転移学習が範囲外の検知を要すること、化学とセル設計ごとの再校正が必要で共通の閾値を他の化学に流用してはならないことLi ら (2026)[参考資料 1]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13619866/事実
SOCがクーロンカウントで求められ、測定誤差が使うほどにたまること。OCVが履歴に依存し(電圧ヒステリシス)、SOC推定で考慮が必要なこと。ヒステリシスが長い緩和の後も消えないこと。ヒステリシスの大きさが黒鉛約10 mV、LFP最大20 mV、シリコン200 mV超で、LTOはほとんどないこと。LFPの機構が一次の相転移であること。ギブズエネルギーの二つの極小と二つの安定相(リチウムに乏しい相・富む相)Jahn ら Communications Engineering 3, 74 (2024)[参考資料 2]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11139865/事実
OCV-SOC曲線の作成が時間のかかる試験であること。EKFと忘却係数付き再帰最小二乗法が代表的なオンライン同定であること。電流が一定の充電や低電流の駐車など励起が足りないとパラメータを同時に決められないこと。提案手法がOCV-SOC曲線が急な領域でだけ使え、LFPのような平らな曲線では追加の制約が要ること。等価回路の精度がNCMで一般に高くLFPで低くなりうること、単セルのほうがパックより高いこと。黒鉛/NCMのヒステリシスが目立たない扱いLi Z ら iScience 28(9), 113290 (2025)[参考資料 3]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12496173/事実
ISO 26262-1:2018(Road vehicles — Functional safety — Part 1: Vocabulary)が第2版(2018年12月)で、モペッドを除く量産の道路車両のE/E系を含む安全関連系に適用され、安全関連E/E系の誤動作による危険を扱い、感電・火災・煙・熱・毒性・可燃性・腐食・エネルギーの放出などの危険はE/E系の誤動作が直接の原因でない限り扱わないことISO 公式ページ[参考資料 4]https://www.iso.org/standard/68383.html事実
ISO 6469-1:2019(Electrically propelled road vehicles — Safety specifications — Part 1: RESS)が第3版(2019年4月)で、人の保護のためのRESSの安全要求を規定し、Amd 1:2022が「Safety management of thermal propagation」であること。状態が「改訂予定」で、次の版 ISO/DIS 6469-1 が草案であること(2026年10月10日に確認)ISO 公式ページ[参考資料 5]https://www.iso.org/standard/68665.html事実
IEC 62619:2022が第2版(2022年5月24日)で、定置用を含む産業用リチウム二次電池の安全な運用の要求と試験を規定し、IEC 62660系など特殊用途の規格と矛盾する場合はそちらが優先されること。安定期限が2026年であること。公式ページにBMSの機能安全の記載がないことIEC Webstore[参考資料 6]https://webstore.iec.ch/en/publication/64073事実
IEC 61508-1:2010(Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety-related systems — Part 1: General requirements)が第2版(2010年4月30日、1998年の第1版を置き換え)で、分野別・応用別の規格づくりを助けることが主な目的であることIEC Webstore(要旨)[参考資料 7]https://webstore.iec.ch/en/publication/5515事実
化成が、銅集電体を腐食から守るため比較的低い電圧(例:1.5 V)への充電から始まることiScience 2021のレビュー(Liu ら)[参考資料 8]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8050716/事実
過充電試験で、シャットダウン型セパレータの電池が試験条件(電圧の上限、充電レート)によって内部短絡と熱暴走に至った例があることOrendorff, ECS Interface 21(2) (2012)[参考資料 9]https://www.electrochem.org/dl/interface/sum/sum12/sum12_p061_065.pdf事実
LFPの平らな領域0.5 mV/%、ニッケル系/黒鉛8 mV/%(仮定)で、ヒステリシス20 mV・10 mVと測定誤差5 mV(仮定)から、SOC誤差がLFP 40%・10%、ニッケル系約1.3%・約0.6%となること。傾きの比が16倍であること本稿の計算。傾きと測定誤差±5 mVは本稿の仮定。ヒステリシスの20 mVと約10 mVは Jahn らの文献値。実際のBMSの精度ではない本稿の計算
容量50 Ahに0.1 Aのオフセットで0.2%/時間(10時間で2%、100時間で20%)となること。容量が50→40 Ahに劣化したのに50 Ahで計算すると、20 Ah放電で推定40%減・実際50%減で10ポイントの差になること本稿の計算。0.1 A、50 Ah、40 Ah は本稿の仮定。実際のセンサーやパックの値ではない本稿の計算
3.3 V・50 Ωで66 mA(約0.22 W)、2 Ahの差の解消に約30時間かかること本稿の計算。抵抗・容量・差は本稿の仮定。実際のBMSの回路や運用を示すものではない本稿の計算
三つの推定の考え方の整理。ヒステリシスが長い休止でも消えない電圧のずれとして推定の不確かさの下限になるという読み取り。シリコンのヒステリシスと容量の関係。LFPでは電流積算を主にし電圧が立ち上がる領域で補正するという設計の読み。材料の選択がシステムの制御の難しさを決めるという整理。BMSの閾値が材料の限界の写し絵だという整理。機能安全がE/E系の誤動作の危険を扱い電池の化学の危険そのものは範囲外だという整理。電池の安全が三つの層(材料・セル、パック・車両、BMS)で重なるという整理本記事による解説解説
各規格がBMSに求める具体的な要件(診断の範囲、故障の許容時間、ASILの割り当て等)、IEC 62619:2022のBMS機能安全の扱い、UL 1973・UN GTR 20、実機のBMSの推定精度本稿の調査範囲で公開された一次情報に確認できなかったため記載していない(規格本文は有料)解説
図2・図3・図4・図5・図7が実際のBMSや電池の構成・測定ではなく説明のための作図であること。図1と図6がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月10日/出典は一次情報(査読論文・レビュー、ISOとIECの公式ページ)に限定しています。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 規格が BMS に求める具体的な要件、実機のBMSの推定精度、UL 1973・UN GTR 20 については、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 規格の状態(現行/改訂中)は2026年10月10日に各機関のページで確認したもので、改訂版が出れば変わります。 第5章・第6章・第8章の計算は本記事が仮定を置いた例示であり、実測値でも実際のBMSの精度でもありません。 図はすべて説明用の概念図です。図2〜図5・図7はベクター作図、図1と図6はAI生成イメージであり、いずれも実際の電池・BMS・試験の実物や測定結果を示すものではありません。