🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

電池の評価と劣化 技術解説

← 次世代蓄電の解説一覧へ戻る

TECHNOLOGY EXPLAINER

電池の評価と劣化
― 「サイクル寿命」という一つの数字の裏にある、測り方と条件

電池の寿命は、データシートの一つの数字では語れません。同じ市販セルでも、温度、放電深度、放電レートを、メーカーの許容範囲の中で変えるだけで、容量が80%に下がるまでのサイクル数が数千サイクルも変わりました。 この記事では、評価の指標の読み方、劣化の機構(SEI の成長、リチウム析出、粒子割れ、遷移金属の溶出)、評価の落とし穴、そして電池を壊さずに内部の劣化を読む方法(dQ/dV など)を、一次情報の範囲で整理します。

構成:査読論文(J. Electrochem. Soc.、Phys. Chem. Chem. Phys.、J. Power Sources、Front. Energy Res.)、米国エネルギー省 Idaho National Laboratory の試験マニュアル、IEC の規格ページを使用/確認日 2026年10月10日

温度を管理した槽内のセルを、繰り返し充放電する寿命試験です
図1 概念画像(ImageGenで生成)。温度を管理した槽内のセルを、繰り返し充放電する寿命試験です。画像は寿命の測定結果ではありません。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。
この記事の構成
  1. 電池の評価とは何か(3行でつかむ)
  2. 指標を正しく読む ― 容量、エネルギー、出力、内部抵抗、寿命、C-rate、放電深度、終点
  3. 劣化の機構 ― SEI の成長、リチウム析出、粒子割れ、遷移金属の溶出
  4. 劣化モード ― 「何が減ったか」で読む
  5. 評価の落とし穴 ― 温度、レート、放電深度、加圧で結果が変わる
  6. 本稿の計算:サイクル数で比べるか、エネルギー量で比べるか
  7. 電池を壊さずに内部を読む ― 容量・抵抗の定期測定、dQ/dV
  8. 試験の規格と手順書
  9. 限界と、確認できなかったこと
  10. 評価・標準の読み方
  11. 用語集
  12. 参考資料(一次情報)
  13. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・予定であり、実績が確認できていない事項
このほか、材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。推測は太字で示します。

この記事の数値の読み方

ここに出てくる寿命・劣化の数値は、特定の市販セルを、特定の条件で試験した研究室の結果です。量産セルや他の製品の寿命を示すものではなく、実機の寿命を予測する値でもありません。 研究室のコイン電池やチャンピオンデータを、量産セルの性能として読まないでください。製品名や企業の優劣は論じません。

1. 電池の評価とは何か(3行でつかむ)

  • 評価は「条件つきの測定」:容量も寿命も、温度、電流、電圧の範囲、休止時間を決めて初めて数字になります。条件を書かない数字は、比べられません
  • 寿命は一つではない:充放電を繰り返して減る寿命(サイクル寿命)と、使わずに置いても減る寿命(カレンダー寿命)があります。どちらも、終点の決め方(容量が何%になったら終わりか)で値が変わります
  • 劣化は「減ったもの」で読む:容量が減る原因は多く、機構の名前(SEI、析出、割れ)より、リチウムが減ったのか、活物質が減ったのか、抵抗が増えたのかという「劣化モード」で整理すると、非破壊の測定から読み取れます事実[参考資料4・5]
この記事でいちばん大事な一行

「サイクル寿命〇〇回」は、条件が書かれて初めて意味を持ちます。 Preger らは、メーカーの許容範囲の中で運転しても、条件の違いが劣化に大きな影響を与え、容量80%に達するまでの時間とサイクル数が各化学系で数千時間・数千サイクルも変わったと報告しています事実[参考資料1]。

2. 指標を正しく読む ― 容量、エネルギー、出力、内部抵抗、寿命、C-rate、放電深度、終点

評価の指標は、手順書によって定義が少しずつ異なります。ここでは、米国エネルギー省 Idaho National Laboratory(INL)の電気自動車用電池試験マニュアル(第3版、2015年6月)の定義を中心に、IEC の規格ページの記載を併せて整理します事実[参考資料6・7・8]。

指標意味読むときの注意
容量(Ah)放電で取り出せる電気量。INLマニュアルの「定格容量」は、C/3 の電流で、上限電圧と下限電圧の間の全範囲を放電したときの使える容量。メーカーが示すか、試験開始時に決めて寿命試験中は固定する定格容量をどの電流で測るかで値が変わる。C/3 は INL の取り決めで、他の手順書では異なりうる
エネルギー(Wh)容量に電圧を掛けたもの。INLマニュアルの「利用可能エネルギー」は C/3 放電での値材料の値か、セルか、パックか(何を分母にしたか)を必ず確認する
出力(W)一定時間に出せる電力。INLマニュアルは、HPPC 試験(ハイブリッドパルス出力特性試験)でパルス出力とエネルギーの経年変化を調べる出力は温度・充電状態・パルスの長さで変わる
内部抵抗電流を流したときの電圧降下から求める抵抗。HPPC 試験のパルス応答から、パルス抵抗を求めるパルスの長さ(数秒か数十秒か)、温度、充電状態で値が変わる
サイクル寿命充放電を繰り返して、終点に達するまでの回数。Preger らは等価フルサイクル数(EFC)=累積の放電容量÷公称容量、を用いた放電深度と電流が違えば、1回の中身が違う。EFC は、容量やエネルギーの違うセルの比較を覆い隠すことがある
カレンダー寿命使わずに置いても進む劣化。SEI は、負極がリチウムを含んで電解液に触れた時点から成長し、使わなくても進む。高温では速い保管の温度と充電状態の条件が必須
C-rate電流を、基準にした容量で割った値(1C は、その容量を1時間で使い切る電流)基準にする容量(公称か、実測か)で電流が変わる。Preger らは公称容量を基準にした
放電深度(DOD)/充電状態(SOC)INLマニュアルでは、DOD は、満充電に対して放電で取り出した容量の割合。SOC は、定格容量に対する充電可能量の推定で、通常は電圧で定めるPreger らの SOC の範囲は、新品の放電曲線で決めた電圧で、劣化に合わせて変えていない
容量保持率の終点寿命の終わりとする容量の割合。仕様書では80%が基準としてよく使われるINLマニュアルは、終点(EOL)を目標を満たせなくなった時点と定め、容量80%のような単純な値ではない。用途で決まる

すべて事実(INL マニュアル[参考資料6]、Preger ら[参考資料1]、Edge ら[参考資料2])。C-rate と内部抵抗の一般的な意味づけは本記事の解説です。

IEC 62660-1:2018 は、電気自動車(BEV・HEV)の駆動に使うリチウムイオンセルについて、容量、出力密度、エネルギー密度、貯蔵寿命、サイクル寿命の試験手順を定めた規格です(第2版、2018年12月12日発行)事実[参考資料7]。 IEC 62620:2014+AMD1:2023 は、定置用を含む産業用のリチウム二次電池の表示、試験、要求事項を定め、路上走行車の IEC 62660 など特定用途の規格が矛盾する場合はそちらが優先されます(第1.1版、2023年5月12日発行)事実[参考資料8]。 どちらも本文は有料のため、本記事は規格の適用範囲の記載にとどめています。

容量の低下は一直線とは限らない(概念図) 縦軸は初期容量に対する割合。曲線の形と数値は説明用で、実在のセルのデータではありません。 100% 80% 60% 寿命の終点の一例:80%(定義は用途・規格で異なる) サイクル数(または経過時間) 段階1 初期の急な低下 SEI の形成でリチウムを消費 段階2 ほぼ直線 副反応でリチウムを失い続ける 段階3 急な低下(ニー) 抵抗増加やリチウム析出など 電気的に見えない経路もある ニー(屈曲点) ※ 3段階の整理は Preger らが引用する劣化モデル[参考資料1]、ニーは Attia らの総説[参考資料3]によります。 ※ 80%を終点とするのは一例で、規格やプログラムによって終点の定義は異なります(第2章)。
図2 概念図(ベクター作図)。曲線の形と数値は説明用で、実在のセルのデータではありません。3段階の整理は Preger らが引用する劣化モデル[参考資料1]、ニーは Attia らの総説[参考資料3]によります。80%を終点にするのは一例です。

Preger らの市販 18650 セルの試験では、条件によらず、容量の低下はおおむね直線的で、サイクルの最初と最後でやや速くなりました。これは、次の3段階の劣化モデルと合致するとしています事実[参考資料1]。

  • 段階1:SEI の形成でリチウムが消費され、容量が急に下がる
  • 段階2:副反応でリチウムが失われ続けて、容量がほぼ直線的に下がる
  • 段階3:セルが壊れるときの急な容量低下。多くは抵抗の増加が原因とされる

段階3の急な屈曲を、Attia らは「ニー(knee)」と呼び、総説で整理しています。ニーに至る道筋として、リチウム析出、電極の飽和、抵抗の増加、電解液・添加剤の枯渇、導電パスの切断(パーコレーション)、機械的な変形の6つを挙げます。一部の道筋は、電気化学的に検出できないという点が重要です事実[参考資料3]。

3. 劣化の機構 ― SEI の成長、リチウム析出、粒子割れ、遷移金属の溶出

Edge らの総説(Phys. Chem. Chem. Phys. 2021、オープンアクセス)は、通常の運転で重要とされる劣化機構を整理しています事実[参考資料2]。

機構何が起きるか(総説の記述)速める条件
SEI の成長SEI は初回の充電で形成され、約10%の容量低下を生じる。その後も、溶媒分子の拡散や、割れで露出した新しい面、析出したリチウム、正極から溶け出した遷移金属などを理由に厚くなる。成長速度は時間の平方根におおむね比例する。リチウムを取り込んで容量を失い、イオンの通りを悪くして抵抗を上げ、電解液の溶媒を消費する高温(拡散が速い)、大電流(割れて新しい面)。使わなくても、負極がリチウムを含んで電解液に触れていれば進む
リチウム析出黒鉛に入る代わりに、金属リチウムが負極の表面に析出する。熱力学的な析出(負極がいっぱい)と、高速充電による動力学的な析出がある。析出したリチウムは電解液と反応してSEIを増やし、電気的に孤立して「デッドリチウム」になる。デンドライトとして成長し、セパレーターを貫いて内部短絡を起こすこともある低温(氷点下では中程度の充電でも)、高い充電状態、大電流、負極の質量や面積の不足。負極に10〜20%の余裕容量と、端部の「張り出し」を設けるのが標準的
粒子の割れ活物質の大きな体積変化で生じる応力により、両極で粒子が割れる。割れで新しい面が露出してSEIが再形成され、粒子間の電気的接触が失われる。圧延(カレンダー)の工程でも、使用前に割れが入りうる体積変化の大きい材料(総説の表:黒鉛約12%、シリコン約320%、LTO約1%)、大電流、深い放電、大きな粒子
正極の構造変化・遷移金属の溶出NMC など層状酸化物では、脱リチウム状態で層状構造が無秩序なスピネル・岩塩相に変わり酸素を出す。Ni²⁺とLi⁺のサイト交換(無秩序化)でリチウムの拡散が遅くなる。電解液中の水分でHFが生じ、酸が正極の遷移金属を溶かす。溶けた金属は負極でSEIの成長を促す高い充電状態(深い脱リチウム)、高温、水分

すべて事実(Edge ら[参考資料2])。総説は、塩の析出、集電体の腐食、バインダーの分解、セパレーターの目詰まり、電極と集電体の剥離などは扱わない、としています。

素材技術者の視点①:劣化の入口は、材料の「界面」と「水分」にある

表の4つの機構のうち、SEI、リチウム析出、遷移金属の溶出は、すべて電極と電解液の界面で起こります。しかも互いに加速し合います。溶出した遷移金属がSEI成長を促し、析出したリチウムがSEIを増やし、割れた粒子が新しい界面を作ります。

素材から見ると、電解液の水分と LiPF6 から生じる HF が、正極を溶かす酸の出どころであることが重要です(総説の反応式:LiPF6 → LiF + PF5、PF5 + H2O → POF3 + 2HF)事実[参考資料2]。電極の乾燥工程、材料の吸湿性、電解液の添加剤は、寿命の問題に直結します。

またリチウム析出は、負極の設計(正極に対する容量の余裕、端部の張り出し)で防ぐ対象ですが、総説は「これらの対策は、高速充電や氷点下では析出を止めるのに十分でない」としています。析出は安全性にも関わります。熱暴走の onset の温度を押し下げうることは、本シリーズ「熱暴走と電池の安全」編で扱っています。SEI そのものは「SEI」編、デンドライトは「デンドライト」編、シリコン負極の割れは「シリコン負極とナノ構造電極」編で詳しく扱っています。

4. 劣化モード ― 「何が減ったか」で読む

劣化の機構は多く、互いに絡みます。そこで、機構の根本原因ではなく電極の電圧応答に与える影響で整理するのが「劣化モード」です。Birkl らは、劣化モードを次の3つにまとめ、コイン電池でリチウムと活物質の量を既知の量だけ減らして実験し、その電圧への影響を実験的に示しました事実[参考資料4]。

  • LLI(loss of lithium inventory):使えるリチウムが減る
  • LAM(loss of active material):正極または負極の活物質が減る(LAMPE、LAMNE)
  • 動力学的な制限(kinetic limitation):抵抗の増加や、反応速度の低下
劣化の機構と、外から見える「劣化モード」(本記事による整理) 劣化の機構 劣化モード(観測される形) 主な結果 加速する条件 SEI の成長 リチウム喪失(LLI) 容量低下と抵抗増加。進行は時間の平方 根に近い 高温・満充電側で速い リチウム析出 リチウム喪失(不可逆分) 容量低下、場合により内部短絡 低温・大電流充電で起こりやすい 粒子の割れ 活物質の喪失(LAM) 接触の喪失、新しい表面にSEI 体積変化の大きい材料、高レート 遷移金属の溶出・構造変化 正極の LAM、LLI、抵抗 溶出した金属が負極でSEI成長を促す 高電圧・高温・水分(HF)で加速 ※ 機構は Edge らの総説[参考資料2]、劣化モード(LLI・LAM・動力学的制限)は Birkl ら[参考資料4]と Dubarry と Anseán[参考資料5]によります。 ※ 1つの機構が複数のモードに現れ、機構どうしが互いを加速することもあります。表は単純化したものです。
図3 概念図(ベクター作図)。機構は Edge らの総説[参考資料2]、劣化モードは Birkl ら[参考資料4]と Dubarry と Anseán[参考資料5]によります。機構とモードの対応づけは本記事による整理で、単純化しています。

Dubarry と Anseán(Front. Energy Res. 2022、オープンアクセス)は、黒鉛系のセルの初期の容量低下は、通常 LLI が支配的で、正極か負極の活物質の喪失(LAM)は、電極に余裕があるうちは容量の低下にほとんど現れない「隠れた劣化モード」だと説明しています。活物質を失っても、その電極が容量の制限にならない限り、容量は減りません事実[参考資料5]。 これは、「容量の低下」と「劣化」は別のもの、という重要な指摘です。容量が80%を保っていても、内部では劣化が進んでいる可能性があります。

左は初期、中央は移動できるリチウムの喪失、右は使える活物質の喪失です
図4 概念画像(ImageGenで生成)。左は初期、中央は移動できるリチウムの喪失、右は使える活物質の喪失です。容量低下という同じ見え方でも原因が異なります。 [参考資料5] 形状・色・寸法は説明用です。数値と原文の対応は下の元図で確認できます。
元のSVG模式図と正確な説明を見る
リチウム喪失と活物質喪失の違い(満充電時の概念図) 初期 正極 負極 リチウム喪失(LLI) 正極 負極 正極の活物質喪失(LAM) 正極 負極 両極に余裕がある リチウムが減る。容量低下の主因 タンクが小さくなる。限界になるまで目立たない ※ 青い部分がリチウム。Dubarry と Anseán[参考資料5]が説明する「砂時計(二つの容器)」の例えを、本記事が簡略化したものです。 ※ 寸法・量は説明用で、実在のセルの値ではありません。 ※ 黒鉛系のセルでは、初期の容量低下は主にリチウム喪失が支配的とされます[参考資料5]。
図4 概念図(ベクター作図)。Dubarry と Anseán[参考資料5]の「砂時計」の例えを本記事が簡略化したものです。寸法・量は説明用で、実在のセルの値ではありません。
素材技術者の視点②:「容量が減った」と「活物質が減った」は同じではない

負極は、リチウムの析出を防ぐために、正極より余裕を持たせて作られます(総説は10〜20%の余裕が標準的としている)[参考資料2]。また、SEI の形成で初回にリチウムが消費されるため、正極は完全にはリチウムを戻せない。つまり両極には「使っていない部分」があるので、活物質の一部が失われても、その部分が余りのうちは容量に現れません[参考資料5]。

素材から見ると、これは、粒子の割れや被覆の剥がれで活物質が孤立しても、初期の容量試験では気づけないことを意味します。逆に、容量低下が「リチウム喪失」と読めても、その原因が SEI なのか析出なのかは、別の情報(温度履歴、充電レート、dQ/dV の形)がないと分けられません。評価は、容量一つの数字ではなく、複数の測定の組み合わせで読むことになります(本記事による解説)。

5. 評価の落とし穴 ― 温度、レート、放電深度、加圧で結果が変わる

劣化の試験は、条件を一つ変えると、順位が入れ替わることがあります。次の表に、一次情報で確認できた主な例をまとめます。

条件結果がどう変わるか出典
温度15〜35 ℃ の範囲で、LFP セルは温度が上がるほど容量低下の速度が大きくなり、NMC セルは小さくなった。支配的な劣化機構が違うことを示す。Preger らは、極端な温度だけでなく、通常の運転範囲で複数の温度を試す価値があるとする[1]
放電レート放電レートは統計的に有意な因子だったが、依存の向きは化学系ごとに異なる。NMC セルは、この試験では系統的な依存を示さなかった[1]
放電深度(SOC の範囲)NMC と NCA セルは、フル範囲(0〜100%)の充放電に対して、LFP セルより敏感だった[1]
加圧(パウチ・角形)外部圧力がゼロでも、高すぎても、ニー(急な低下)が早く現れる。中間に最適値がある。37 Ah の NMC/黒鉛パウチセルで、サイクル寿命が500回(拘束なし)から3,200回(最適なばね圧縮)に延びたという報告がある。圧力のむらは、局所的なリチウム析出も起こす[3](引用)
セル間のばらつきPreger らは、同じ条件で試験した過去の研究との比較でも、結果に幅があることを示し、劣化モデルは標準偏差つきで報告すべきだとする。各条件で少なくとも2個のセルを試験した[1]
指標の選び方サイクル数(EFC)で比べると LFP が圧倒的に長寿命だが、エネルギー量で比べると差は縮まる(第6章)。往復効率も、条件で最大約10%変わり、劣化で5%以上低下しうる[1]
基準の置き方C-rate は公称容量を基準にした。SOC の範囲は新品の放電曲線で決めた電圧を使い、劣化に合わせて変えていない。100% DOD の充電は CCCV(定電流定電圧)で電流を 0.05 A まで絞った[1]
抵抗の測り方内部抵抗は、測定の時間スケールに強く依存する。HPPC などの直流パルスと、インピーダンス分光(EIS)では、時間スケールが合えば抵抗の値が揃う(20 Ah LFP/黒鉛パウチセルでの結果)[9]

すべて事実(Preger ら[1]、Attia ら[3]、Barai ら[9])。Preger らの試験は市販18650セル、Barai らは20 Ah のパウチセルで、他のセルに一般化はできません。

「研究室の最良の結果」を、一般の寿命として読まない

Harlow らは、NMC532/黒鉛のパウチセルで、20、40、55 ℃ の長期サイクル、貯蔵、高精度クーロン効率測定を最長3年行い、「このセルは電気自動車を160万 km 以上走らせ、定置用では20年以上持つはずだ」と結論しました。ただし著者自身が、円筒形など他の形式のセルに固有の損失は捉えていないかもしれない、と断っています事実[参考資料10]。 これは、ある優れたセル化学の、特定の条件の外挿です。ほかのセルや実機の寿命を示す値としては使えません(本記事による注意)。

素材技術者の視点③:加圧は「電極の空隙」の問題

圧力の影響は、単なる機械の問題ではありません。Attia らは、レート依存のリチウム析出が、負極の空隙率が臨界値を下回った時点で始まる(閾値型の経路)と整理しています。圧力が高すぎると局所の空隙が減ってイオンの通り道が細り、析出を誘発します。逆に圧力が足りないと、粒子の接触と導電が悪くなる事実[参考資料3]。 電極の厚み、空隙率、バインダーの量と、セルを締める圧力は、ひとつの設計の組み合わせとして評価されるべきで、コイン電池やラボ用治具の圧力で得た寿命は、パウチやモジュールの圧力条件に当てはまるとは限りません(本記事による解説)。

6. 本稿の計算:サイクル数で比べるか、エネルギー量で比べるか

本稿の計算

Preger らの結果から、容量80%までの等価フルサイクル数(EFC)の範囲を、公称エネルギーを掛けて累積放電エネルギーに直してみます本稿の計算。

  • 公称エネルギー(公称容量×公称電圧):LFP は 1.1 Ah × 3.3 V = 3.63 Wh、NCA は 3.2 Ah × 3.6 V = 11.52 Wh、NMC は 3 Ah × 3.6 V = 10.8 Wh(論文の表Iの値)
  • EFC の範囲(論文):LFP 2,500〜9,000、NCA 250〜1,500、NMC 200〜2,500
  • 換算:LFP は 2,500 × 3.63 = 約 9.1 kWh から 9,000 × 3.63 = 約 32.7 kWh。NCA は 250 × 11.52 = 約 2.9 kWh から 1,500 × 11.52 = 約 17.3 kWh。NMC は 200 × 10.8 = 約 2.2 kWh から 2,500 × 10.8 = 約 27.0 kWh
  • 比の変化:範囲の下端どうしの LFP と NCA の比は、EFC で 2,500 ÷ 250 = 10倍、エネルギー量で 9.1 ÷ 2.9 = 約3.2倍。上端どうしでは、EFC で 9,000 ÷ 1,500 = 6倍、エネルギー量で 32.7 ÷ 17.3 = 約1.9倍

前提と限界:公称エネルギーに全サイクルで同じ値を使った概算で、実際の累積放電エネルギー(Preger らは各放電のエネルギーを合計)とは違います。また、範囲は温度、放電深度、放電レートの違う条件を含み、LFP の上端は80%に未到達のセルの外挿を含みます。条件の揃った比較ではありません。 それでも、「何を数えるか」で差の大きさが数倍変わることは確かで、論文も、エネルギー量で見るとLFPの差が縮まると述べています[参考資料1]。

「何を数えるか」で優劣の見え方が変わる 市販18650セルが容量80%に達するまで(Preger らの結果の範囲)。右は本稿の計算で、公称エネルギーを掛けたものです。 等価フルサイクル数(EFC) 累積放電エネルギー(kWh、本稿の計算) LFP 2500–9000 NCA 250–1500 NMC 200–2500 0 9000 LFP 9.1–32.7 NCA 2.9–17.3 NMC 2.2–27 0 35 ※ LFP の上端は、80%に未到達のセルを現在の直線的な低下から外挿した値を含みます(原論文の記載)。 ※ エネルギーは「公称容量×公称電圧」(LFP 1.1 Ah×3.3 V、NCA 3.2 Ah×3.6 V、NMC 3 Ah×3.6 V)を掛けた概算です。 ※ 範囲は温度・放電深度・放電レートの条件の違いを含み、1つのセルの寿命の幅を示すものではありません。
図5 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。左は Preger らの結果[参考資料1]の範囲、右は本稿の計算(公称エネルギーを掛けた概算)です。条件の違いを含む範囲であり、特定のセルの寿命の幅でも、製品の優劣でもありません。
本稿の計算(もう一つ):時間の平方根で進む劣化は、どう見えるか

SEI の成長が時間の平方根にほぼ比例する、という総説の記述[参考資料2]を使います本稿の計算。この機構だけで失う容量が、最初の1年で 2% だったとすると(例示の値)、4年で 2% × √4 = 4%、9年で 2% × √9 = 6%、25年で 2% × √25 = 10%になります。

前提と限界:SEI だけが容量を決める、温度と充電状態が一定、という強い単純化です。実際にはニー(第2章)、リチウム析出、温度の変化が加わるため、この外挿は寿命の予測に使えません。時間の平方根で減る機構は、放物線的に進みが遅くなるため、短い試験での外挿は楽観的になりやすく、後から別の機構が現れると外れる、という注意を示すための計算です。

7. 電池を壊さずに内部を読む ― 容量・抵抗の定期測定、dQ/dV

分解(破壊)して調べる方法は正確ですが、そのセルは使えなくなります。Dubarry と Anseán は、電圧応答の微分を使う方法を、単純な容量・抵抗の監視と、完全な分解調査(ポストモーテム)の中間にある、精度と資源のつり合いの良い方法と位置づけています事実[参考資料5]。

方法何が分かるか条件と注意
基準性能試験(RPT)寿命試験を定期的に中断して、容量などを同じ条件で測り、最初の測定(RPT0)と比べて劣化の速度を求める。INLマニュアルの方式測定の条件を固定して繰り返す(本記事の解説)。最初の測定(RPT0)が基準になる
パルス試験(HPPC など)、インピーダンス分光(EIS)内部抵抗とその時間スケール依存。抵抗の増加は出力の低下につながり、ニーに至る道筋の一つでもある[3]抵抗の値は測定の時間スケールで変わる(第5章)。方法をまたいだ数字の比較に注意
dQ/dV(増分容量解析、ICA)、dV/dQ(微分電圧解析、DVA)電圧曲線の微分から、電極の相変化に対応するピークの位置・高さ・幅を読む。劣化モード(LLI、LAM、動力学的制限)を定量できる。ICA は抵抗の変化にも敏感低レート(C/10 以下、C/25 が望ましい)の定電流データが最も正確。電圧の分解能は 1 mV 以下が望ましい。化学系ごとに読み方が違い、ある化学系の方法を他に流用すると誤りやすい
開回路電圧(OCV)のフィッティングOCV 曲線を電極ごとの曲線で再現して、リチウム喪失と活物質喪失の量を見積もるBirkl らは、既知の量のリチウムと活物質を減らしたコイン電池で、モードの影響を実験的に示した

すべて事実(INL マニュアル[6]、Birkl ら[4]、Dubarry と Anseán[5]、Barai ら[9])。

使用後のセルを解体して電極を直接観察するポストモーテムです
図6 概念画像(ImageGenで生成)。使用後のセルを解体して電極を直接観察するポストモーテムです。非破壊試験とは得られる情報が異なります。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。

dQ/dV の読みどころ

Dubarry と Anseán は、ICA を実務で使う際の注意を挙げています事実[参考資料5]。

  • ピークは相変化に対応する:固溶体の反応は電圧が連続的に変わるので幅広いピークに、相変化の反応は電圧が平坦(プラトー)になるので鋭いピークになる。電極材料ごとに固有の「指紋」がある
  • 充電と放電のどちらでも読める:用途に合わせる。黒鉛の低電圧側のピークは充電側で見やすく、高電圧側は放電側で見やすい
  • リチウム析出は充電側で見やすい:黒鉛の最後のピークの約80 mV 上に、追加のピークとして現れうる(レートと正極で変わる)。析出は、可逆でなければ容量低下を伴わず、不可逆分が LLI を増やす
  • LFP のピーク面積解析は LFP 専用:ほかの化学系には推奨されない
  • データの質:電圧の分解能が低い、ノイズが多い、電流が大きい、と精度が下がる。フィルターやスムージングでピークの形がゆがんでいないか確認する
  • Dubarry らは、ICA 関連の文献には誤りが多い(「地雷原」)と警告している。化学系ごとに有効な解析が違うことが一因
素材技術者の視点④:ピークの動きは、材料の言葉に翻訳できる

dQ/dV のピークは、「どの電極の、どの相転移か」という材料の情報です。黒鉛、層状酸化物(NMC など)、LFP は、それぞれ別の位置と形のピークを出します(二相共存で反応する LFP は鋭いピーク)。 ピークの位置が動けばどの電極で何が起きているか、ピークが小さくなれば反応に使える材料が減ったか、という形で読めます。

ただしこれは、低レートで取った新品との比較が前提です。高い電流では、熱力学の情報と動力学の情報が混ざり、読みにくくなります。電池管理システムの運転データ(高レート・動的な電流)から同じ解析をするには、モデルが必要です[参考資料5]。実機での劣化診断は、実験室の方法をそのまま持ち込めるとは限りません(本記事による解説)。

8. 試験の規格と手順書

劣化と性能の評価の手順は、用途ごとの規格や手順書に定められています。本記事で、公式のページで番号・題名・適用範囲を確認できたものを整理します事実。

規格・手順書対象確認できたこと
IEC 62660-1:2018電気自動車(BEV・HEV)の駆動に使うリチウムイオンセルの性能と寿命の試験容量、出力密度、エネルギー密度、貯蔵寿命、サイクル寿命の試験手順。第2版、2018年12月12日発行[7]
IEC 62620:2014+AMD1:2023定置用を含む産業用のリチウム二次電池の表示・試験・要求事項第1.1版、2023年5月12日発行。路上走行車の IEC 62660 など、特定用途の規格が優先[8]
INL/EXT-15-34184 第3版(米国エネルギー省)電気自動車用電池の試験マニュアル静的容量試験、HPPC 試験、サイクル寿命の動的ストレス試験、カレンダー寿命試験、基準性能試験(RPT)。2015年6月[6]

規格の本文は有料のため、本記事は適用範囲の記載にとどめます。Barai らの総説は、高出力の車載用・系統用のセルを対象に、国際規格の測定法を比較して、利害関係者が独自の手順を作ってきたため比較しにくいと指摘しています[参考資料11]。

9. 限界と、確認できなかったこと

(1) 規格の本文

IEC 62660-1、IEC 62620 の本文は確認していません。試験の温度、電流、サイクルの手順、終点の判定は記載していません。

(2) 実機・大型セルの寿命

第5・6章の数値は、市販の小型18650セルとパウチセルの研究室の結果です。量産セルや大型セル、実機(パック・システム)の寿命への換算はしていません。

(3) インピーダンス分光(EIS)の手順

EIS の標準的な手順、等価回路の読み方は、一次資料を確認できなかったため記載していません。抵抗が測定の時間スケールで変わる点のみ、Barai らの結果として示しました。

(4) 他の化学系

ナトリウムイオン電池、リチウム硫黄電池、全固体電池など、他の化学系の劣化は扱っていません。全固体電池の界面劣化は本シリーズ「全固体電池」分野で扱っています。

(5) 資料間の違い

終点の定義(80% か、目標を満たせなくなった時点か)は、資料で異なります。本記事は両方を示し、どちらかに統一していません。

この記事のまとめ
  • 「寿命〇〇回」は条件つきの数字です。メーカーの許容範囲の中でも、条件の違いで容量80%までの寿命が数千サイクル変わりました事実
  • 劣化の機構は互いに絡みます。SEI の成長は時間の平方根に近く、リチウム析出は低温・大電流で、粒子割れは体積変化で、遷移金属の溶出は水分由来のHFで進みます事実
  • 「何が減ったか」(LLI、LAM、抵抗)で読むと、非破壊の測定と結びつきます。活物質を失っても容量に現れない「隠れた劣化」があります事実
  • 落とし穴:温度の向きは化学系で逆になり、加圧には最適値があり、抵抗は測定の時間スケールで変わり、指標(サイクル数かエネルギー量か)で差の大きさが数倍変わります事実/本稿の計算
  • dQ/dV は低レートの定電流データで、化学系ごとの読み方で使います。文献には誤りが多いと警告されています事実

10. 評価・標準の読み方

初めて読むときは、「どの数字が大きいか」より先に、次の順番で比較の条件を揃えてください。以下は本記事の編集上の確認手順で、規格が定める合格値や試験条件ではありません。

① 何を測ったか
容量保持率、内部抵抗、暦寿命、サイクル寿命。単位と、材料・部品・完成システムのどこを測った値かを確認します。
② どの条件か
温度、Cレート、放電深度、充電状態、休止時間、終了判定。条件が異なる結果は、まず別の結果として読みます。
③ 比較で間違えやすい点
サイクル数だけを比べず、経過時間と1回の使用量も確認する
④ 規格の役割は何か
規格番号・名称・発行年・適用範囲を発行機関の資料で確認します。試験方法、安全性、相互接続、管理体制のどれを扱う規格かを分けて読みます。規格名の記載だけで、試験実施・適合・認証まで済んでいるとは判断しません。

比較を始めるためのメモ:対象/単位/測定条件/試料数とばらつき/比較対象/規格の版/確認できない点を、ひとまとまりで残しましょう。公開概要しか確認できない規格の数値条件や合格基準は、推測して補いません。

11. 用語集

C-rate
電流を基準容量で割った値。1Cは基準容量を1時間で使い切る電流。
DOD/SOC
放電深度/充電状態。使った容量の割合/残っている充電の割合。
EFC
等価フルサイクル数。累積の放電容量を公称容量で割った値。
SOH
健全度。新品に対する容量や抵抗の状態。
EOL
寿命の終点。資料により容量80%、または目標を満たせなくなった時点。
RPT
基準性能試験。寿命試験を中断して定期的に同じ条件で性能を測る。
HPPC
ハイブリッドパルス出力特性試験。パルスで出力・抵抗を調べる。
EIS
電気化学インピーダンス分光。交流の周波数を変えて抵抗成分を分ける。
LLI/LAM
リチウム喪失/活物質喪失。劣化モードの二つ。
ICA/DVA
電圧曲線の微分(dQ/dV、dV/dQ)で電極反応を読む方法。
ニー(knee)
容量や抵抗の推移が急に折れ曲がる点。
デッドリチウム
電気的に孤立して使えなくなった金属リチウム。

12. 参考資料(一次情報)

  1. Preger Y. ほか "Degradation of Commercial Lithium-Ion Cells as a Function of Chemistry and Cycling Conditions", J. Electrochem. Soc. 167, 120532 (2020), DOI 10.1149/1945-7111/abae37(オープンアクセス) — doi.org/10.1149/1945-7111/abae37
  2. Edge J. S. ほか "Lithium ion battery degradation: what you need to know", Phys. Chem. Chem. Phys. 23, 8200–8221 (2021), DOI 10.1039/D1CP00359C(オープンアクセス) — doi.org/10.1039/d1cp00359c
  3. Attia P. M. ほか "Review—'Knees' in Lithium-Ion Battery Aging Trajectories", J. Electrochem. Soc. 169, 060517 (2022), DOI 10.1149/1945-7111/ac6d13(オープンアクセス) — doi.org/10.1149/1945-7111/ac6d13
  4. Birkl C. R. ほか "Degradation diagnostics for lithium ion cells", J. Power Sources 341, 373–386 (2017), DOI 10.1016/j.jpowsour.2016.12.011 — doi.org/10.1016/j.jpowsour.2016.12.011
  5. Dubarry M., Anseán D. "Best practices for incremental capacity analysis", Front. Energy Res. 10, 1023555 (2022), DOI 10.3389/fenrg.2022.1023555(オープンアクセス) — doi.org/10.3389/fenrg.2022.1023555
  6. Christophersen J. P.(Idaho National Laboratory) "Battery Test Manual for Electric Vehicles, Revision 3", INL/EXT-15-34184, 2015年6月(米国エネルギー省) — inldigitallibrary.inl.gov
  7. IEC "IEC 62660-1:2018" 製品ページ(IEC Webstore) — webstore.iec.ch/en/publication/28965
  8. IEC "IEC 62620:2014+AMD1:2023" 製品ページ(IEC Webstore) — webstore.iec.ch/en/publication/85493
  9. Barai A. ほか "A study of the influence of measurement timescale on internal resistance characterisation methodologies for lithium-ion cells", Sci. Rep. 8, 21 (2018), DOI 10.1038/s41598-017-18424-5(オープンアクセス) — nature.com/articles/s41598-017-18424-5
  10. Harlow J. E. ほか "A Wide Range of Testing Results on an Excellent Lithium-Ion Cell Chemistry to be used as Benchmarks for New Battery Technologies", J. Electrochem. Soc. 166, A3031–A3044 (2019), DOI 10.1149/2.0981913jes(オープンアクセス) — doi.org/10.1149/2.0981913jes
  11. Barai A. ほか "A comparison of methodologies for the non-invasive characterisation of commercial Li-ion cells", Prog. Energy Combust. Sci. 72, 1–31 (2019), DOI 10.1016/j.pecs.2019.01.001(オープンアクセス) — doi.org/10.1016/j.pecs.2019.01.001

13. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
市販の18650セル(LFP・NCA・NMC)の試験条件(15・25・35 ℃、SOC範囲、放電0.5〜3C、充電0.5C、各条件で2個以上)、容量80%までのEFC(LFP 2,500〜9,000、NCA 250〜1,500、NMC 200〜2,500)、LFPの多くが未到達で外挿であること、3段階の劣化モデル、80%が仕様書の基準としてよく使われること、エネルギー量で見ると差が縮まること、往復効率の幅、温度(LFPは上がると劣化が速く、NMCは遅い)・放電深度・放電レートの依存、EFCの定義、C-rateとSOCの基準の置き方、公称値の表Preger ら(2020)
出典1 https://doi.org/10.1149/1945-7111/abae37
事実
SEI の初回形成(約10%の容量低下)と時間の平方根に近い成長、リチウム析出の機構と要因(氷点下、10〜20%の負極余裕)とデッドリチウム、NMC の構造変化・遷移金属溶出・HF、粒子割れと体積変化(黒鉛約12%、シリコン約320%、LTO約1%)、機構どうしの加速Edge ら(2021)の総説
出典2 https://doi.org/10.1039/d1cp00359c
事実
ニーの定義と6つの道筋(リチウム析出、電極の飽和、抵抗増加、電解液・添加剤の枯渇、パーコレーション、機械的変形)、一部が電気化学的に検出できないこと、加圧の影響(ゼロ・高すぎるとニー、最適値、37 Ah NMC/黒鉛パウチで500回から3,200回)、負極の空隙率が臨界値を下回ると析出が始まることAttia ら(2022)の総説(引用された研究を含む)
出典3 https://doi.org/10.1149/1945-7111/ac6d13
事実
劣化モード(LLI、LAM、動力学的制限)を、コイン電池で既知の量のリチウム・活物質を減らす実験で示したこと、OCVフィッティングによる定量Birkl ら(2017)
出典4 https://doi.org/10.1016/j.jpowsour.2016.12.011
事実
ICA/DVAの位置づけ(単純な監視と分解調査の中間)、低レート(C/10以下、C/25が望ましい)、分解能1 mV以下、ピークの意味(固溶体と相変化)、析出ピーク(黒鉛の最後のピークの約80 mV上)、LFPのピーク面積解析、隠れた劣化モード、文献に誤りが多いという警告Dubarry と Anseán(2022)
出典5 https://doi.org/10.3389/fenrg.2022.1023555
事実
INLマニュアルの定義(定格容量はC/3、DOD、SOC、EOLは目標を満たせなくなった時点、RPT、HPPC)、試験の構成(静的容量、HPPC、動的ストレス、カレンダー寿命)INL/EXT-15-34184 第3版(2015年6月)
出典6 https://inldigitallibrary.inl.gov/sites/STI/STI/6492291.pdf
事実
IEC 62660-1:2018 の適用範囲と第2版・2018年12月12日発行。IEC 62620:2014+AMD1:2023 の適用範囲と第1.1版・2023年5月12日発行、IEC 62660 が優先されることIEC Webstore
出典7 https://webstore.iec.ch/en/publication/28965
出典8 https://webstore.iec.ch/en/publication/85493
事実
内部抵抗が測定の時間スケールに強く依存し、時間スケールが合えばHPPCとEISの抵抗が揃うこと(20 Ah LFP/黒鉛パウチセル)。国際規格の測定法を比較した総説の指摘(手順が統一されていない)Barai ら(2018、2019)
出典9 https://www.nature.com/articles/s41598-017-18424-5
出典11 https://doi.org/10.1016/j.pecs.2019.01.001
事実
NMC532/黒鉛パウチセルの長期試験(20・40・55 ℃、最長3年)と、著者の結論(電気自動車を160万 km 以上、定置用で20年以上)、他の形式の損失を捉えていない可能性の断りHarlow ら(2019)の要旨
出典10 https://doi.org/10.1149/2.0981913jes
事実
公称エネルギー(LFP 3.63 Wh、NCA 11.52 Wh、NMC 10.8 Wh)、EFCの範囲から換算した累積エネルギー(LFP 約9.1〜32.7 kWh、NCA 約2.9〜17.3 kWh、NMC 約2.2〜27.0 kWh)、下端の比(10倍→約3.2倍)と上端の比(6倍→約1.9倍)。SEIの平方根則による損失(最初の1年2%の例示値で、4年4%、9年6%、25年10%)本稿の計算。公称容量×公称電圧を全サイクルで一定とした概算で、条件の異なる範囲を含み、LFP上端は外挿を含む。平方根則の例は単一機構・一定条件の単純化で、寿命の予測に使えない本稿の計算
IEC 62660-1・62620 の本文、EISの標準手順と等価回路の読み方、量産セル・大型セル・実機の寿命への換算、他の化学系の劣化本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため記載していない解説
「劣化の入口は界面と水分」「容量が減ったと活物質が減ったは同じではない」「加圧は電極の空隙の問題」「ピークの動きは材料の言葉に翻訳できる」「実機での劣化診断は実験室の方法をそのまま持ち込めない」という読み取り。機構と劣化モードの対応づけ(図3)。「何を数えるか」の整理公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない解説
図2・図3・図4・図5が実際の観察像・実データではなく説明のための作図であること。図1と図6がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月10日/出典は一次情報(査読論文、米国エネルギー省の試験マニュアル、規格団体のページ)に限定しています。規格の本文は有料のため確認できていません。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 IEC 62660-1・62620 の本文、EIS の標準手順、量産セル・大型セル・実機の寿命への換算、他の化学系の劣化については、確認できなかったため記載していません。 寿命・劣化の数値は特定の市販セルを特定の条件で試験した研究室の結果であり、他のセルや実機に一般化できません。 図はすべて説明用の概念図です。図2・図3・図4・図5はベクター作図、図1と図6はAI生成イメージであり、いずれも実際の断面写真・顕微鏡像・製品の実物を示すものではありません。