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次世代電池の化学と比較 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

次世代電池の化学と比較
― 「どれが最強か」ではなく、「何を手放して、何を得るか」を読む

リチウムイオン電池(LFP・NMC)を基準に、シリコン負極、リチウム金属、ナトリウムイオン、リチウム硫黄、レドックスフロー、鉄空気、亜鉛系、NAS、多価イオンなど十数種類の電池を、同じ型の表と図で並べて比べます。 見るのは、原理と材料、いい点、リスク、乗り越える課題、成熟度、向く用途の6つです。優劣をつける記事ではありません。電池は、何かを得るために何かを手放す設計の産物で、同じ数字でも「セルの値か、システムの値か」で意味が変わるからです。

構成:査読論文、DOE系の国立研究所(PNNL)の報告、公的研究機関の調査、企業の公式資料・取引所開示を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

研究用セル、実用セル、モジュール、設備の段階を並べています
概念画像(ImageGenで生成)。研究用セル、実用セル、モジュール、設備の段階を並べています。形や大きさから化学系や優劣を判断する図ではありません。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。
この記事の構成
  1. 比べる前に(3行でつかむ)
  2. 比べ方の約束 ― 評価軸、成熟度の定義、基準の分け方
  3. 電池ごとの整理 ― 原理と材料、いい点、リスク、課題、成熟度
  4. 図解①:比較の俯瞰表
  5. 図解②:エネルギー密度・往復効率とサイクル寿命
  6. 素材技術者の視点①:数字は「材料・セル・システム」の三層で読む
  7. 図解③:実用化の成熟度のはしご
  8. 図解④:課題の地図
  9. 素材技術者の視点②:いい点が、そのまま課題になる
  10. 図解⑤:用途別の向き不向き
  11. 選ぶときの質問の順番
  12. 限界と、確認できなかったこと
  13. 評価・標準の読み方
  14. 用語集
  15. 参考資料(一次情報)
  16. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や読み取りは「解説」として区別しています。企業の発表は「企業の主張」であり、独立した検証・公的機関の推計とは区別して書いています。 ◎○△は「本稿の整理」であり、評価軸と根拠を表の外の本文と参考資料に示します。電池の優劣を決めるものではありません。調査会社の市場予測や価格予測は使っていません。

1. 比べる前に(3行でつかむ)

  • 何を並べるか:基準のリチウムイオン電池(LFP・NMC)、シリコン負極リチウムイオン、リチウム金属二次、ナトリウムイオン、リチウム硫黄、リチウム空気、カリウムイオン、多価イオン(マグネシウム・カルシウム・アルミニウム)、レドックスフロー(バナジウムほか)、鉄空気、亜鉛系(亜鉛ハイブリッド・亜鉛空気・水系亜鉛イオン)、NAS(ナトリウム硫黄、高温型)、鉛蓄電池、ニッケル水素。全固体電池は別の分野で扱うため、本論には入れません。
  • 何を見るか:各電池の原理と材料、いい点、リスク(安全・資源・環境・技術)、乗り越える課題、成熟度(研究/実証/商用)、向く用途。そのうえで、俯瞰表、散布図、成熟度のはしご、課題の地図、用途別の表の5種類の図解で並べます。
  • どう読むか:この記事は比較と選び方に集中します。各電池の詳しい説明は、本シリーズの『ナトリウムイオン電池』『リチウム硫黄電池』『レドックスフロー電池』『長時間蓄電』『リチウム金属負極』『デンドライト』『シリコン負極とナノ構造電極』などの記事に譲り、重なる説明は参照にとどめます。
この記事でいちばん大事な一行

電池の「性能」は一つの数字ではなく、「何を得て、何を手放したか」の組み合わせです。 たとえば、リチウム硫黄は質量あたりのエネルギー密度を得る代わりに寿命と体積あたりの値を、レドックスフローは出力と容量の独立性と長寿命を得る代わりに往復効率と体積あたりの値を、NASは長時間・大容量と長寿命を得る代わりに300℃級の運転温度を、それぞれ手放しています。 だから、「どれが良いか」ではなく、「自分の用途が何を手放せるか」から選ぶのが、素材技術者にとっていちばん役に立つ読み方です(本記事による解説)。

2. 比べ方の約束 ― 評価軸、成熟度の定義、基準の分け方

(1) 評価軸と、◎○△の決め方

俯瞰表(図1)の◎○△は、次の4つの軸ごとに、本稿が確認した資料の値から機械的に分けたものです。値が確認できなければ「-」とし、推測で埋めません。

軸◎○△基準にした値(出所)
エネルギー密度(セル基準)300 Wh/kg超150〜300150未満公表値のうち条件つきの最良値。LFP 140〜175、NMC 240〜270、Faradion 160 Wh/kg(2020年中ごろの企業データ)[1]。Si負極セルは315〜450(メーカー公称、包装込み)[3]。Li-Sは456〜498(10 Ah、企業の主張)[5]。★は企業の主張のみ
寿命(サイクル)5,000回以上、または設計上の制限なし1,500〜5,000回1,500回未満PNNLの推計(80% DOD、2021年)を優先:LFP 2,400、NMC 1,520、鉛蓄電池1,370、亜鉛系1,000〜12,500、バナジウムRFBは制限なし(PNNLの仮定)[2]。NAS 7,300回相当(メーカー)[26]。Si負極セルは150〜1,400回(メーカー公称)[3]。ナトリウムは、独立研究で市販18650が350回で80%未満[8]のため△
材料の入手性Li・Coを使わず、希少元素が中心でないLiを使う、または価格・純度の指摘があるLi・Co・Niへの依存を資料が指摘Li・Coの供給リスク[27]。ナトリウムの地殻存在量2.36%、リチウム0.0065%[33]。バナジウム価格の変動(PNNL)[2]。K・Mgの記述[13・14]
成熟度商用/初期商用(限定)/実証/研究(定義は次項)公式資料・査読論文で確認できる範囲(第6章)

表の値は事実(各資料の記載。企業の値は主張・公称)。◎○△への分け方は本稿の整理です。

(2) 成熟度の定義

  • 商用:継続的な納入・運転が、公式資料(企業の開示、公的機関の報告など)で確認できる。
  • 初期商用(限定):販売・納入は確認できるが、規模や独立の評価が限られる。
  • 実証:試作セルの試験、パイロット設備が確認できる。
  • 研究:論文・研究報告の段階。

企業の「世界初」「量産開始」「出荷計画」は企業の主張で、計画は未確定/将来として扱い、成熟度の判断には、独立の第三者の記述や公的資料があるものを優先しました。

(3) 数字の「基準」を三つに分ける

次の三つは、同じ表に並べても比較できません。本稿では必ず分けて書きます。

  • 材料基準:活物質の理論容量・理論エネルギーなど(例:硫黄の理論エネルギー約2,600 Wh/kg)。
  • セル基準:実際のセル(包装込み)のWh/kg・Wh/L、セルの寿命。この記事の図2。
  • システム基準:コンテナや設備全体の値、往復効率(AC-AC)、設置費。この記事の図3。

3. 電池ごとの整理 ― 原理と材料、いい点、リスク、課題、成熟度

次の三つの表は、電池をリチウム系、ナトリウム・カリウム・多価イオン、定置・長時間向けに分けて、同じ型で整理したものです。企業の値は「企業の主張」、独立研究・公的機関の値は出所を明記します。向く用途は第10章でまとめます。

(1) リチウム系

電池原理と材料いい点リスク(安全・資源・環境・技術)乗り越える課題成熟度(根拠)
リチウムイオン
(LFP・NMC、基準)
LFPはオリビン型のリン酸鉄リチウム、NMCは層状のニッケル・マンガン・コバルト酸化物を正極に、黒鉛を負極に、有機電解液を使う挿入型。詳しくは本シリーズ『リチウムイオン電池の基本』『正極材料』編最も実績がある。セル値は LFP 140〜175 Wh/kg・240〜360 Wh/L、NMC 240〜270 Wh/kg・670〜750 Wh/L[1]。PNNLの2021年推計の設置費は、100 MW・10時間でLFP 356、NMC 405 US$/kWh、往復効率(AC-AC)はどちらも82.59%[2]可燃性の有機電解液と熱暴走(本シリーズ『熱暴走と電池の安全』編)。資源はLiとCoの供給リスクが論じられる[27](LFPはCo・Niを使わない)エネルギー密度が理論的な限界に近づいていること[4]。長時間(100時間)では、電池全般のkWhあたりの費用が、揚水・圧縮空気などより「はるかに高い」とPNNLは推計[2]商用。PNNLの費用・性能評価の基準技術[2]
シリコン負極
リチウムイオン
負極にシリコン(またはシリコン–炭素複合)を混ぜ、正極はNMCなど。リチウムと合金化して大きな容量を得る。本シリーズ『シリコン負極とナノ構造電極』編Amprius の製品カタログ(2026年Q3)は、セルで315〜450 Wh/kg、680〜950 Wh/L(メーカー公称、パウチ、包装込み、1 C放電)と記載[3]。Panasonic Energyは、シリコンの理論容量が黒鉛の約10倍と説明[28]充電時の膨張で容量低下が起こる[28]。型番によって外部クランプ圧(15〜30 PSI)が推奨・必要[3]サイクル寿命:同カタログで150〜1,400回(80% SOHまで、条件は型番で違う)[3]。膨張の抑制商用(限定)。Panasonic EnergyがNexeonからシリコン負極材を購入し、2025年から米国カンザス州の新工場で製造する電池に使うと2023年7月に発表(稼働状況は未確認)[28]。Ampriusはカタログ製品[3]
リチウム金属二次
(液系)
負極にリチウム金属を使う。本シリーズ『リチウム金属負極』『デンドライト』編。全固体電池は別分野名古屋大学の解説は、負極にLi金属を使えばLIBを超える300〜500 Wh/kgが「期待できる」と述べる(期待値。従来のLIBは250 Wh/kg付近が上限とされる)[11]充電でLiが枝状に成長して短絡する。有機電解液の引火点は60〜90℃で、高温で発火・分解する[11]デンドライトと不活性リチウムの抑制。解説(2020年)は、Li金属負極は「現在は1次電池に使用されるのみ」と述べる[11]研究。二次電池としての納入・量産は、本稿の調査では確認できなかった
リチウム硫黄正極に硫黄、負極にLi金属。S8が溶ける多硫化物を経てLi2Sになる変換型。本シリーズ『リチウム硫黄電池』編材料基準の理論エネルギー密度は約2,600 Wh/kg、硫黄は地球上で最も豊富な元素の一つ[4・30]。Li-S Energyは10 Ah半固体セルで初回放電498、化成後456 Wh/kgと主張[5]多硫化物のシャトル効果、体積変化約80%、Li金属の劣化。エーテル系電解液は揮発性・可燃性[4]実用条件(E/S比5 µL/mg未満など)での寿命。独立の測定値は見つからなかった[4・6]実証。ISIは、広く入手できる量産車向けセルは見当たらず、最初の市場はドローン・航空・宇宙・防衛だろうと見る[6]
リチウム空気Li金属と、空気中の酸素を使う(水系または非水系)。Bruceらの総説は、Li–O2とLi–Sを、Liイオンの限界の先に進む二つの選択肢として論じる[12]同総説は、貯められるエネルギーをLiイオンと比べ、大きな可能性があることを述べる[12]。具体的なセルの値は、本稿では確認できなかった反応の理解と新材料が必要な、大きな障害が残る[12]基礎科学の進展と新しい材料[12]研究(総説による)

表は横にスクロールできます。[ ]は参考資料の番号。事実は各資料の記載、企業の値は主張・公称です。

(2) ナトリウム・カリウム・多価イオン

電池原理と材料いい点リスク(安全・資源・環境・技術)乗り越える課題成熟度(根拠)
ナトリウムイオンNa⁺が正負極のあいだを出入りする。正極は層状酸化物・プルシアンブルー類縁体・ポリアニオン、負極はハードカーボン。集電体は正負ともアルミ箔にできる。本シリーズ『ナトリウムイオン電池』『ハードカーボン負極』編地殻存在量がNa 2.36%に対しLi 0.0065%[33]。CoとLiを使わない設計が可能。Faradionのセルは160 Wh/kg・290 Wh/L・寿命3,000回(2020年中ごろの企業データ)[1]独立研究で、市販の18650セルがSOC 30%でも熱暴走した[7]。資源面は、V・Niを含む正極を選べば変わるエネルギー密度(市販18650は97.5 Wh/kg、同形のLFPは122)[7]。独立研究で、市販18650の寿命がデータシートの約10分の1[8]。国際規格(IEC 63635・63591)はドラフト段階初期商用。市販セルが入手でき[7・8]、CATLが量産・蓄電システム出荷計画を発表(企業の主張・計画)[9・10]
カリウムイオンK⁺の挿入。K/K⁺の標準電位が低いため、LIBに匹敵する高い動作電圧が得られる、と総説は述べる[13]希少・有毒な元素を使わず、K⁺は溶媒や陰イオンとの相互作用が弱くLi⁺より拡散が速い(高出力に有利)[13]総説は、残る課題・新たな課題を論じる。個別の内容は本稿では確認できなかった[13]同上研究
マグネシウムMg負極、Mo3S4正極、有機ハロアルミン酸塩の電解液からなる試作系(2000年)。Mg²⁺を挿入する[14]Mgは安価で環境にやさしく扱いが安全。鉛・カドミウム系より高いエネルギー密度が見込める、と報告[14]プロトンを出し入れしない溶液しか使えず、多くは不動態膜を作って反応を妨げる[14]多くの正極でMg²⁺を挿入するのが難しい[14]。多価イオン正極の機構の確かな特定[15]研究(2000年の試作系と2017年の総説)
カルシウムCa²⁺。Ca負極は、これまでめっき(析出)が不可能と考えられていた[16]2015年に、通常の有機電解液で、穏やかな温度でのCaのめっきの可逆性を確認[16]。多価イオンは、Liイオンに比べ、同じ容量に必要なイオン数が減る[16]—可逆性の確認は、新しい電池への最初の一歩[16]研究
アルミニウムAl金属負極、三次元の黒鉛発泡正極、不燃性のイオン液体電解液。クロロアルミン酸の陰イオンが黒鉛に出入りする[17]低コスト・低可燃性・3電子反応[17]。2015年の試作で約2 Vの電圧平坦部、約70 mAh/g、クーロン効率約98%、7,500回超の寿命[17]従来は、正極の崩壊、約0.55 Vの低い電圧、100回未満の寿命が問題[17]容量(約70 mAh/g、正極基準。電圧2 Vとの積は約140 Wh/kg-正極、本稿の計算)研究(ラボの試作セル)

表は横にスクロールできます。Ca・Alの行の一部は、抄録の範囲の記述です。

(3) 定置・長時間向け

電池原理と材料いい点リスク(安全・資源・環境・技術)乗り越える課題成熟度(根拠)
レドックスフロー
(バナジウム)
活物質を溶かした液を外のタンクに貯め、ポンプでセルへ送る。V²⁺/V³⁺とV⁴⁺/V⁵⁺。出力はセル、容量は液量で決まる。本シリーズ『レドックスフロー電池』編住友電工は、電解液は不燃性で、電極・電解液の劣化がなく、設計寿命20年、サイクル数は無制限と説明(企業の主張)[20]。Invinityは1モジュール230 kWh、サイクル寿命2万回超、2〜12時間(メーカー公称)[21]。PNNLはサイクル数に制限なしと仮定[2]バナジウム価格の変動(2021年にV2O5が最高12.80 US$/ポンド)と電解液費[2]。膜はフッ素系が多い(『フッ素樹脂とPFAS』編)往復効率が低い(PNNL:AC-AC 65%、LFPは82.59%)。100 MW・10時間の設置費も385 US$/kWhで、LFPの356を下回らない[2]。エネルギー密度が低い(コンテナ基準で約9 Wh/kg、第6章)商用。住友電工の15 MW/60 MWh(2015年12月稼働)と17 MW/51 MWh(2022年4月稼働)[19]
フロー電池の
他の系
有機(キノン系)、亜鉛臭素、鉄フロー などキノン系は金属を使わず、>99%/サイクルの容量保持を報告(ラボ、2014年)[29]。亜鉛臭素は、PNNLの複合推計で往復効率65〜75%、寿命3,650〜5,000回(80% DOD)[2]鉄フローのESS Techは、2025年の売上1.6百万US$、純損失63.4百万US$で、継続企業の前提に重要な疑義があると開示[31]20,000回超という寿命の主張は、同社が「ラボ規模の結果」にもとづくと書いている[31]研究(有機)/実証〜初期商用(亜鉛臭素・鉄フロー。事業は不安定)
鉄空気放電で空気中の酸素を取り込んで鉄が錆に、充電で錆が鉄に戻る「可逆的な錆」。水系の不燃性電解液(企業の説明)[22]鉄・水・空気という安価で豊富な材料(企業の主張)。最大100時間の蓄電をうたう[22]総説:開回路電位の予測値1.28 V、報告された効率は充電96%・電圧40%・エネルギー35%(古い・ラボの値)[23]二元機能(充電・放電)の酸素極、腐食・水素発生を抑える鉄電極[23]。往復効率の公式値は確認できなかった実証。Great River Energy(米国の電力協同組合)と、最大100時間の蓄電をうたうパイロット事業を2024年に着工[34]。Xcel Energyが300 MW/30 GWhの設置を発表(承認待ちの計画)[35]
亜鉛系亜鉛ハイブリッド(Eos:亜鉛ハロゲン化物・フェルト・樹脂・チタン・導電性ポリマー)、亜鉛空気(PNNLが紹介する1社)、水系亜鉛イオンEosは、静置型でポンプ・圧縮機がなく、−20〜50℃で動作、電圧ゼロ・充電状態0%で製造と記載(企業の主張)[24]。PNNL複合推計:Ni-Zn 71〜88%・1,000〜3,938回、亜鉛空気59%・12,500回[2]水系亜鉛イオンでは、デンドライト・水素発生・腐食が亜鉛負極の主な問題[18]亜鉛空気は2022年のPNNLの時点でパイロット・実証なし[2]。水系亜鉛イオンは「まだ開発中」[18]初期商用(Eos Z3は2023年第3四半期から出荷、企業の記載[24])/実証(亜鉛空気)/研究(水系亜鉛イオン)
NAS
(ナトリウム硫黄、高温型)
負極にナトリウム、正極に硫黄。モジュール内部の運転温度は305〜340℃[26]20フィートコンテナで使用可能エネルギー1,450 kWh-dc、7,300回相当、設計寿命20年、放電深度100%(メーカー公称)[26]。NGKは、長時間・大容量、長寿命・高信頼性を特長と説明[25]高温での運転。本稿の資料に、事故・安全評価の記述は見当たらなかった事業性:NGKは、需要の立ち上がりの遅れ、材料費の高騰、Liイオンとの競争激化を理由に、2025年10月31日に製造・販売の終了を決議[25]商用(終了へ)。最終出荷は2027年1月(予定)[25]
鉛蓄電池鉛と二酸化鉛、硫酸。PNNLの定置用の基準技術の一つ回収が成熟:モジュールの初期費用の10〜12%が回収できる。設置費はLFPに近い(409 US$/kWh、100 MW・10時間)[2]低い充電状態で長く置くと不可逆な硫酸塩化で劣化[2]。Aurbachらは、Mgを「鉛やカドミウムと違って、安価で環境にやさしく扱いが安全」と対比している[14]寿命1,370回(80% DOD)、往復効率71〜78%[2]商用(PNNLの基準技術。往復効率・寿命は上記)[2]
ニッケル水素—(本稿では原理・数値の一次資料を確認できなかった)Choi と Aurbach の総説は、LIBが以前は競合した鉛蓄電池とニッケル水素電池を、今は上回ると述べる[32]——商用(既存。本稿は数値を載せない)

表は横にスクロールできます。「—」は、本稿の資料で確認できなかった項目です。

4. 図解①:比較の俯瞰表

第2章の約束で、15の行(電池)を4つの軸に分けて並べた俯瞰表です。◎○△は「本稿の整理」で、優劣ではありません。評価軸の定義と基準にした値は第2章の表に、各電池の個別の根拠は第3章の表と参考資料にあります。

比較の俯瞰表(◎○△は本稿の整理で、優劣ではありません) ※ 評価軸と根拠は表の下の本文と参考資料にあります。-は「確認できなかった/セル基準の値がない」。★は企業の主張のみ。 電池 エネルギー密度 寿命 材料の入手性 成熟度 LFP//黒鉛 ○ ○ ○ 商用 NMC//黒鉛 ○ ○ △ 商用 シリコン負極LIB ◎★ △★ △ 商用(限定) リチウム金属二次 - - △ 研究 ナトリウムイオン ○★ △ ◎ 初期商用 リチウム硫黄 ◎★ △ ○ 実証 リチウム空気 - - ○ 研究 カリウムイオン - - ◎ 研究 多価(Mg・Ca・Al) - - ◎ 研究 レドックスフロー(V) - ◎ ○ 商用 鉄空気 - - ◎ 実証 亜鉛系 - ○ ○ 初期商用 NAS(高温型) - ◎★ ◎ 商用(終了へ) 鉛蓄電池 - △ ○ 商用 ニッケル水素 - - - 商用 ※ エネルギー密度:セル基準の公表値のうち条件つきの最良値。◎300 Wh/kg超 ○150〜300 △150未満(企業データ・主張を含む)。 ※ 寿命:サイクル寿命(条件は電池ごとに違う)。◎5,000回以上または設計上の制限なし ○1,500〜5,000 △1,500未満。独立の評価があれば優先。 ※ 材料の入手性:◎Li・Coを使わず希少元素が中心でない ○Liを使う、または価格・純度の指摘あり △Li・Co・Niへの依存を資料が指摘。 ※ 成熟度:商用=継続的な納入・運転が公式資料で確認できる/初期商用=販売・納入はあるが規模・独立評価が限られる/実証=試験・パイロット/研究=論文段階。 ※ ナトリウムイオンの材料の入手性は、V・Niを含む正極を選ぶと変わります。多価イオンの◎はMgの記述に基づきます。
図1 概念図(ベクター作図)。15の電池を4つの軸で整理した俯瞰表。◎○△は本稿の整理で、定義と基準の値は第2章の表にあります。優劣を示すものではありません。★は企業の主張のみ、-は確認できなかったことを示します。

この表の読み方は、次の三つです(本記事による解説)。

  • 「-」が多い。セル基準のエネルギー密度は、フロー電池・鉄空気・NASなど、システムとして売られる電池ではそもそも示されないことが多く、確認できなかった電池も多いためです。これは「低い」という意味ではありません。
  • ◎が並ぶ電池は、同時に★(企業の主張)が付く。エネルギー密度の◎は、シリコン負極(メーカー公称)とリチウム硫黄(企業の主張)で、どちらも寿命は△です。高い質量エネルギー密度と長い寿命は、いまのところ同じ電池に揃っていません。
  • 寿命の◎は、定置用の系統向けの電池に偏る。レドックスフロー、NASは、設計上サイクル数に制限がない、または7,300回相当(メーカー公称)とされ、エネルギー密度は低い(または確認できない)電池です。

5. 図解②:エネルギー密度・往復効率とサイクル寿命

(1) セル基準:エネルギー密度 × サイクル寿命

図2は、セル基準で、エネルギー密度とサイクル寿命の両方の値が公表されている電池だけを、範囲で示しています。点ではなく箱にしたのは、条件(放電レート、放電深度、劣化の終点)で値が変わるためです。

セル基準のエネルギー密度 × サイクル寿命(範囲。条件は電池ごとに違う) ※ 優劣の図ではありません。点・箱は公表値の範囲で、出所と条件は下の注記と本文にあります。 100 200 300 400 500 100 300 1,000 3,000 10,000 セル基準のエネルギー密度(Wh/kg) 寿命(回) LFP NMC Si負極LIB Na-ion(Faradion) Li-S(寿命の公表なし) 456〜498 Wh/kg(10 Ah) ※ LFP・NMC:2021年のロードマップの表[1]。寿命は20%劣化まで・80% DOD・±1 C。NMCは円筒セルで600回。LFPは大型パウチ・角形。 ※ Si負極LIB:Amprius製品カタログ Q3 2026[3]のメーカー公称5型番(包装込み、1 C放電)。寿命は80% SOHまで、レートやDODが型番で異なる。 ※ Na-ion:Faradion 32 Ahパウチ(企業データ、3,000回)[1]。独立研究の市販18650(350回で80%未満)は別セルのため入れていません[7・8]。 ※ Li-S:Li-S Energy 10 Ah(半固体、初回放電498・化成後456、企業の主張)[5]。サイクル寿命の公表がないため、横の帯だけで示しました。
図2 概念図(ベクター作図)。セル基準のエネルギー密度とサイクル寿命の公表値の範囲。出所はロードマップ[1]、Ampriusのカタログ[3]、Li-S Energyの開示[5]。条件・世代・出所が揃っておらず、優劣の比較には使えません。
  • LFPとNMC(青):2021年のロードマップの値で、LFPは140〜175 Wh/kg・3,500〜6,000回、NMCは240〜270 Wh/kg・600回(円筒セル)です[1]。寿命は20%劣化まで・80% DOD・±1 Cという同じ条件です。
  • シリコン負極(橙の破線):Amprius の5つの型番(メーカー公称)が、315〜450 Wh/kgの範囲に、150〜1,400回で散らばっています[3]。高いエネルギー密度の型番ほど、記載された寿命が短い(400 Wh/kgで300回、450 Wh/kgで150回)傾向が見えますが、放電レート・放電深度・正極が型番で違うため、膨張だけが原因とは言えません(本記事による解説)。
  • ナトリウムイオン(橙の点):Faradionの企業データ(160 Wh/kg・3,000回)です[1]。同じ「ナトリウムイオン電池」でも、独立研究では、市販18650セルが97.5 Wh/kg(データシート由来、別のセル)[7]、また別の2銘柄が0.5 Cで350サイクルまでに容量が80%を下回りました[8]。企業データと独立の評価の差は大きいため、図には入れず、本文で示しています。
  • リチウム硫黄(紫の帯):456〜498 Wh/kg(10 Ahセルの企業の主張)は示せるものの、サイクル寿命の公表がありません[5]。第三者の測定値は、本稿では見つかりませんでした[6]。

(2) システム基準:往復効率 × サイクル寿命

系統用の蓄電では、「何回使えるか」と「入れた電気のうち何割が戻るか(往復効率)」が費用を決めます。図3は、米国PNNLの2022年報告書の推計(2021年値)を中心に、システム基準で並べたものです[2]。

系統用の往復効率 × サイクル寿命(システム基準の推計) ※ 米国PNNLの2022年報告書[2]の2021年値(AC-AC、80% DOD)が中心。セルの性能ではありません。 30 40 50 60 70 80 90 100 300 1,000 3,000 10,000 ∞ 往復効率(%、AC-AC) 寿命(回) LFP NMC 鉛蓄電池 Zn-Br Ni-Zn 亜鉛空気(1社) レドックスフロー(V):サイクル制限なしと仮定 鉄空気(総説のエネルギー効率35%、寿命は不明) ※ PNNL[2](80% DOD、AC-AC、2021年推計):LFP 2,400回・82.59%、NMC 1,520回・82.59%、鉛蓄電池1,370回・71〜78%。 ※ 亜鉛系(PNNL):Zn-Br 3,650〜5,000回・65〜75%、Ni-Zn 1,000〜3,938回・71〜88%、亜鉛空気12,500回・59%(1社の情報)。 ※ バナジウムRFBは、PNNLが「サイクル数に制限なし」と置いた仮定(往復効率65%)。 ※ 鉄空気は2014年の総説の報告値(エネルギー効率35%、古いラボの値)[23]。比較できる寿命の値は確認できなかった。 ※ すべて推計・報告値で、実勢や契約ではありません。往復効率はAC-ACの変圧器レベルです。
図3 概念図(ベクター作図)。系統用の往復効率とサイクル寿命。PNNLの2022年報告書[2]の2021年推計と、鉄空気の総説の値[23]。システム基準の推計で、セルの性能ではなく、実勢価格・契約でもありません。
  • リチウムイオン(LFP・NMC)は往復効率が高い(82.59%)一方、PNNLの前提のサイクル寿命は2,400回、1,520回(80% DOD)です。
  • バナジウムのフロー電池は往復効率が65%と低く、サイクル寿命は制限なしと仮定されています。寿命を取って効率を手放す形です。
  • 亜鉛系は、技術と規模で値がばらつき(Zn-Br:65〜75%・3,650〜5,000回、Ni-Zn:71〜88%・1,000〜3,938回、亜鉛空気:59%・12,500回)、一つの「亜鉛」としてまとめて語れません。
  • 鉄空気は、総説のエネルギー効率35%(古いラボの値)しか確認できず、現行品の効率は公式には確認できませんでした[22・23]。

(3) 本稿の計算:往復効率が、充電電力の費用にどう効くか

本稿の計算

放電1 MWhを取り出すのに必要な充電電力量は、1 ÷ 往復効率です本稿の計算。往復効率82.59%(LFP、PNNL)なら1.211 MWh、71%(鉛蓄電池2時間)なら1.408 MWh、65%(バナジウムRFB)なら1.538 MWh、59%(亜鉛空気)なら1.695 MWh、35%(鉄空気の総説の値)なら2.857 MWhです。

前提:充電電力の価格を20 US$/MWhと仮定(本稿の仮定。実勢ではありません)すると、放電1 MWhあたりの充電電力の費用は、24.2、28.2、30.8、33.9、57.1 US$になります。 効率の値はPNNLの2021年の推計と、2014年の総説の古い値です。充電電力の価格が安い時間帯(再エネの余剰)を使えれば、効率の低さの影響は小さくなります(本記事による解説。均等化蓄電コスト・LCOSの計算は本シリーズ『蓄電の経済性』編)。

6. 素材技術者の視点①:数字は「材料・セル・システム」の三層で読む

素材技術者の読みどころ:同じ「Wh/kg」でも、桁が違う

次の計算は、セル基準とシステム基準の値が、1桁違うことを示します本稿の計算。

対象基準エネルギー質量質量あたり体積あたり(外形)
NAS(NGK、BASF配給の Model L24)20フィートコンテナ、使用可能エネルギー(DC、初期)1,450 kWh約21 t約69 Wh/kg約37.9 kWh/m³
バナジウムRFB(Invinity VS3-022)1モジュール(コンテナ)、定格230 kWh24.6 t(満液)約9.4 Wh/kg約6.0 kWh/m³
シリコン負極セル(Amprius SA02)セル、包装込み、1 C放電39.4 Wh111.2 g340 Wh/kg(公称)770 Wh/L(公称)

コンテナの外形はどちらも6,058×2,438×2,591 mm(38.27 m³)。本稿の計算:1,450 ÷ 21,000 kg、230 ÷ 24,600 kg、各エネルギー ÷ 38.27 m³。値の出所:BASFのNAS L24データシート[26]、Invinityのデータシート[21]、Ampriusのカタログ[3](いずれもメーカー公称)。

コンテナには、電解液のタンク・配管・ポンプ・制御・断熱など、電池本体以外が含まれます。システム基準の値は、セル基準の値と並べて優劣を言うために使えません。 一方で、「同じ1 MWhを置くのに、どれだけの重さと面積が要るか」という設置の目線では、この差がそのまま、基礎・輸送・設置面積の違いになります(本記事による解説)。 素材技術者にとっての含意は、材料の改良(例:セル値が1割上がる)が、システムでどれだけ効くかは、電池の種類で大きく違うということです。

また、NASの数字から使用時間も読めます。250 kW-dc(最大出力)で1,450 kWh を出すと5.8時間(1,450 ÷ 250)で、NGKがNASを「長時間・大容量」向けとする説明[25]と整合します本稿の計算。

7. 図解③:実用化の成熟度のはしご

第2章の定義で、各電池を「研究→実証→初期商用(限定)→商用」の4段に置きました。公式資料・査読論文で確認できる範囲での位置づけで、性能や将来性の優劣ではありません。

実用化の成熟度:研究 → 実証 → 初期商用 → 商用(本稿の整理) ※ 公式資料・査読論文で確認できる範囲での位置づけです。性能や将来性の優劣ではありません。 研究 リチウム金属二次 リチウム空気 カリウムイオン Mg・Ca・Al 水系Zn-ion 実証 リチウム硫黄 鉄空気 亜鉛空気 初期商用・限定 シリコン負極LIB ナトリウムイオン 亜鉛ハイブリッド 商用 LFP//黒鉛 NMC//黒鉛 レドックスフロー(V) 鉛蓄電池 ニッケル水素 NAS(高温型) ※ NASは商用だがNGKが2025年10月に製造・販売の終了を決議(最終出荷は2027年1月予定)。根拠は本文の表を参照。
図4 概念図(ベクター作図)。実用化の成熟度のはしご。定義は第2章、根拠は直後の表。本稿の整理で、性能や将来性の優劣ではありません。
電池置いた段根拠(公式資料・査読論文で確認できた範囲)
LFP・NMC・鉛蓄電池商用PNNLが費用・性能の推計の基準技術として扱う[2]。具体的な納入量は本稿では確認していない
ニッケル水素商用(既存)総説が、Liイオン電池が以前競合した方式として挙げる[32]。数値は確認できなかった
レドックスフロー(V)商用住友電工の15 MW/60 MWh(2015年12月稼働)、17 MW/51 MWh(2022年4月稼働)[19]。Invinityの製品データシート[21]
NAS商用(終了へ)2002年に商用化[25]。BASF配給の製品データシート[26]。2025年10月31日に製造・販売の終了を決議、最終出荷は2027年1月(予定)[25]
シリコン負極LIB初期商用(限定)Amprius の製品カタログ[3]。Panasonic Energyが2025年からの米国工場の電池にNexeonのシリコン負極材を使うと発表(稼働状況は未確認)[28]
ナトリウムイオン初期商用市販の18650セルを独立研究が評価[7・8]。CATLは量産・蓄電システムの出荷計画を発表(企業の主張・計画)[9・10]。国際規格はドラフト段階(『ナトリウムイオン電池』編)
亜鉛ハイブリッド(Eos)初期商用Z3モジュールは2023年第3四半期から出荷(同社の10-K)[24]。DOEの融資保証つき融資枠(最大3.035億US$)、2027年までに年8 GWhの製造能力を計画(未確定/将来)[24]
リチウム硫黄実証10 Ahセルの試作と、UAV向けの納入の発信(企業の主張)[5・6]。ISIは「広く商用化されていない」と整理[6]
鉄空気実証パイロット事業の着工(2024年)[34]。300 MW/30 GWhの計画の発表(承認待ち、未確定/将来)[35]。全面稼働を示す公式資料は確認できなかった
亜鉛空気実証(試作)PNNL(2022年)は、パイロット・実証は行われていないと記載[2]
リチウム金属(液系)、リチウム空気、カリウムイオン、マグネシウム・カルシウム・アルミニウム、水系亜鉛イオン、有機フロー研究論文・総説の記述[11〜18・29]。リチウム金属負極は「現在は1次電池のみ」(2020年の解説)[11]

企業の発表は主張・計画で、段の判断には独立・公的な記述を優先しました。

8. 図解④:課題の地図

次の地図は、電池ごとに、資料が課題として挙げているものを6つの種類に分けて●で示したものです。空欄は「問題がない」ではなく、本稿の資料では確認していないという意味です。

課題の地図:電池 × 課題の種類(資料に記載があるものに●) ※ ●は本稿が使った資料に課題として記載があるもの。空欄は「問題がない」ではなく、本稿では確認していないという意味です。 電池 界面・金 属負極 活物質・電極 電解液・膜 ・動作条件 効率 資源・コスト 評価・規 格・事業 NMC//黒鉛 シリコン負極LIB リチウム金属二次 ナトリウムイオン リチウム硫黄 多価(Mg・Ca・Al) レドックスフロー(V) 鉄空気 亜鉛系 NAS(高温型) 鉛蓄電池 ※ 根拠は本文の表(電池ごと)。Li-ion(LFP)、リチウム空気、カリウムイオン、ニッケル水素は、課題の詳細を本稿の資料で確認できなかったため載せていません。 ※ 列の定義:界面・金属負極=SEI・デンドライト・金属の析出。活物質・電極=溶出・体積変化・空気極など。電解液・膜・動作条件=可燃性溶媒、膜、高温など。
図5 概念図(ベクター作図)。電池ごとの課題の地図。●は、本稿が使った資料に課題として記載があるもの。空欄は「問題がない」という意味ではありません。根拠は直後の表。
電池●の根拠(資料に書かれた課題)
NMC//黒鉛資源:LiとCoの供給リスク[27]
シリコン負極LIB活物質:充電時の膨張で容量低下[28]。評価:型番ごとに放電レート・DOD・クランプ圧が違い、寿命が150〜1,400回に散らばる[3]
リチウム金属二次界面:Liが枝状に成長して短絡[11]。電解液:有機電解液の引火点60〜90℃[11]。事業:二次電池としては量産が確認できない(2020年の解説は一次電池のみ)[11]
ナトリウムイオン活物質:三つの正極系統がそれぞれ別の難しさ(相変化、空孔と水、重い骨格)[1]。電解液:SEI成分が溶けやすい、NaPF6のHF生成[1]。効率:ハードカーボンの初回効率[33]。評価:市販18650の寿命が約1/10[8]、規格はドラフト段階(『ナトリウムイオン電池』編)
リチウム硫黄界面:Li金属の劣化[4]。活物質:体積変化約80%・絶縁性・多硫化物[4]。電解液:E/S比と可燃性のエーテル[4]。効率:シャトル効果で効率低下[4]。評価:「Wh/kg」のレベルが揃わず、独立の測定値は未確認[6]
マグネシウム・カルシウム・アルミニウム界面:Caのめっきは長く不可能と考えられた[16]。活物質:Mg²⁺の挿入の難しさ、Alの正極の崩壊[14・17]。電解液:Mgで不動態膜を作らない溶液が限られる[14]
レドックスフロー(V)電解液・膜:膜と液のバランス(『レドックスフロー電池』編)。効率:往復効率65%[2]。資源・コスト:バナジウム価格の変動と設置費[2]
鉄空気活物質・電極:二元機能の酸素極、鉄電極の腐食と水素発生[23]。効率:エネルギー効率35%(古いラボの値)[23]。評価:往復効率の公式値が確認できない[22]
亜鉛系界面:水系亜鉛イオンの亜鉛負極のデンドライト・水素発生・腐食[18]。効率:亜鉛空気59%・Zn-Br 65〜75%[2]。評価:亜鉛空気はパイロットなし(2022年)、水系亜鉛イオンは開発中[2・18]
NAS動作条件:運転温度305〜340℃[26]。資源・コスト:材料費の高騰[25]。事業:需要の遅れと競争で製造・販売を終了[25]
鉛蓄電池活物質:低い充電状態で長く置くと不可逆な硫酸塩化[2]。効率:往復効率71〜78%、寿命1,370回[2]

9. 素材技術者の視点②:いい点が、そのまま課題になる

素材技術者の読みどころ:「得るもの」と「手放すもの」はセットで現れる

これまでの表と図を、「何を得て、何を手放したか」の組として読み直すと、次のようになります(本記事による整理。各行の根拠は第3章・第8章の表)。

電池得ているもの手放しているもの
シリコン負極LIB高い容量(315〜450 Wh/kg)膨張の管理(クランプ圧)と寿命(150〜1,400回)[3・28]
リチウム金属二次300〜500 Wh/kgの期待値デンドライトと短絡、液系では二次電池としての実績[11]
リチウム硫黄質量あたりの高い値体積あたりの値と寿命、多硫化物の移動[4・6]
ナトリウムイオン豊富な資源(Na 2.36%)、Co・Li不要の設計エネルギー密度、独立評価の寿命[1・7・8・33]
レドックスフロー(V)出力と容量の独立、設計上の長寿命、不燃性の液(企業の主張)往復効率(65%)、体積あたりの値、バナジウム価格への依存[2・20]
鉄空気鉄・水・空気という安価で豊富な材料、最大100時間(企業の主張)効率(古い総説で35%)、酸素極の複雑さ、実績[22・23]
亜鉛系水系・静置型など、構成の単純さ(企業の主張)、安価な材料亜鉛負極の制御、技術ごとのばらつき[2・18・24]
NAS長時間・大容量、設計上の長寿命(7,300回相当)305〜340℃の運転、事業としての持続[25・26]
マグネシウム等の多価イオン安価で豊富な素材、理論上の高い容量電解液、正極への挿入[14・15・17]

この整理は、電池の設計の「手の内」を示します。ある電池の弱点は、たいてい、その強みを得るために選んだ構造の裏返しです。素材技術者が課題を見るときは、弱点だけを切り出して直そうとするのではなく、「何を得るために、その弱点を受け入れているのか」を先に確かめると、改良が他の性能を壊さないかを判断しやすくなります(本記事による解説)。

10. 図解⑤:用途別の向き不向き

再生可能エネルギー設備と蓄電設備を組み合わせる例です
図6 概念画像(ImageGenで生成)。再生可能エネルギー設備と蓄電設備を組み合わせる例です。出力・容量・運転時間は画像では示していません。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。
用途別の向き不向き(本稿の整理。優劣ではありません) ※ ○=資料から向くと読める △=条件つき・企業の主張のみ ×=資料から向かないと読める -=判断材料なし 電池 乗用車な どの車載 定置・短時間 (〜4時間) 長時間の定置 (6時間〜) 重さが決め手( ドローン等) 毎日1回以 上の高頻度 LFP//黒鉛 ○ ○ △ △ ○ NMC//黒鉛 ○ ○ △ △ △ シリコン負極LIB ○ - - ○ × ナトリウムイオン △ △ - × △ リチウム硫黄 × × - ○ × レドックスフロー(V) × ○ ○ × ○ 鉄空気 × - △ × - 亜鉛系 × △ △ × ○ NAS(高温型) × - ○ × ○ 鉛蓄電池 - △ △ - × ※ 根拠は本文の「用途別の読み取り」表。Li金属二次・Li空気・カリウム・多価イオンは研究段階のため載せていません。 ※ 向き不向きは、本稿が確認した値・実績・企業の主張から読んだものです。個別の製品や案件の適否を判断するものではありません。
図7 概念図(ベクター作図)。用途別の向き不向き。○=資料から向くと読める、△=条件つき・企業の主張のみ、×=向かないと読める、-=判断材料なし。本稿の整理で、優劣ではなく、個別の製品や案件の適否でもありません。
電池用途ごとの読み取りと根拠
LFP車載○(商用、140〜175 Wh/kg[1])。定置・短時間○(PNNLの基準技術、往復効率82.59%[2])。長時間△(100時間では電池のkWh単価が高い[2])。重さ△(150〜175 Wh/kg帯)。高頻度○(2,400回、暦寿命16年[2])
NMC車載○(240〜270 Wh/kg[1])。定置・短時間○[2]。長時間△[2]。重さ△。高頻度△(1,520回、暦寿命13年[2])
シリコン負極LIB車載○(Panasonic Energyの調達契約[28]。稼働状況は未確認)。重さ○(315〜450 Wh/kg、航空・防衛向けと自社紹介[3])。高頻度×(150〜1,400回[3])
ナトリウムイオン車載△(CATLが乗用車への搭載を発表、2026年中ごろの市場投入予定[9])。定置・短時間△(TENER Sodiumの出荷計画[10]、企業の主張・計画)。重さ×(市販18650で97.5 Wh/kg[7])。高頻度△(独立研究で寿命が短い[8])
リチウム硫黄車載×(広く入手できる車載セルは見当たらない[6])。定置・短時間×(ISIは最初の市場を定置ではないと見る[6])。重さ○(UAV・航空・宇宙・防衛[6])。高頻度×(実用条件で寿命が縮む[4])
レドックスフロー(V)車載×(コンテナ基準で約9 Wh/kg、第6章)。定置・短時間○(17 MW/51 MWh[19])。長時間○(2〜12時間[21])。重さ×。高頻度○(制限なしの仮定[2]、2万回超(メーカー公称)[21])
鉄空気長時間△(最大100時間の主張[22]、パイロットと計画の段階[34・35])。車載×・重さ×(エネルギー密度の値が確認できず、効率も低い報告[23])
亜鉛系定置・短時間△(Ni-Zn 2〜6時間の推計[2])。長時間△(亜鉛空気8〜100時間は1社[2])。高頻度○(PNNL推計の寿命3,650〜12,500回[2])。車載×・重さ×
NAS長時間○(使用可能エネルギー1,450 kWh・最大250 kW、約5.8時間[26])。高頻度○(7,300回相当、放電深度100%[26])。車載×・重さ×(300℃超の運転、約69 Wh/kg[26])。ただし製造・販売は終了へ[25]
鉛蓄電池定置・短時間△(往復効率71〜78%[2])。長時間△(PNNLは、低い設備費の鉛蓄電池が高い持続時間のLCOSを下げうると記載[2])。高頻度×(1,370回[2])

この表は、本稿が確認した値・実績・企業の主張からの読み取りで、個別の製品や案件の適否を判断するものではありません。

11. 選ぶときの質問の順番

次の質問を上から順に確かめると、候補が絞られます。表や図の○△×は、そのための手がかりです(本記事による解説。個別の案件の判断ではありません)。

  1. 重さが決め手か、体積が決め手か。重さが決め手なら、シリコン負極やリチウム硫黄の「公表値」が候補になりますが、レベルと条件を必ず確認(企業の主張のみ、寿命が短い)。体積が決め手なら、LFP・NMCが基準です。
  2. 1日に何回、何年使うか。毎日1回以上なら、寿命が数千回か、設計上制限なしの電池(LFP・NMC、レドックスフロー、NASなど)。ただし、各電池の寿命は条件つきで、独立の評価があるものを優先します。
  3. 何時間分を貯めるか。4時間まではリチウムイオンが基準。6時間以上では、レドックスフロー、NAS(終了へ)、亜鉛系、鉄空気(実証)が論じられますが、費用・効率・実績は電池ごとに違います。
  4. 運転環境は。低温や高温の条件があるか。NASは305〜340℃で運転します。ナトリウムイオンの低温性能はCATLの主張にとどまります[9]。
  5. 資源・調達の制約は。CoやLiへの依存を避けたいか、バナジウム価格の変動を許容できるか。
  6. 実績と独立評価があるか。企業の主張と、公的機関・独立研究の値を分けて見る。
  7. 規格・認証は。国際規格が整っていない電池(ナトリウムイオンのIEC規格はドラフト段階)は、用途ごとの確認が要ります。

12. 限界と、確認できなかったこと

  • セル基準の値が確認できなかった電池:リチウム金属二次(液系)、リチウム空気、カリウムイオン、多価イオン、鉄空気、亜鉛系、鉛蓄電池、ニッケル水素。俯瞰表で「-」としています。
  • ニッケル水素:原理・性能の一次資料を確認できなかったため、数値を載せていません。
  • 企業の発表:Naxtra・TENER Sodiumの正極の種類、Li-S Energyのサイクル寿命、Form Energyの往復効率、Eosの往復効率は、確認できませんでした。
  • 独立の第三者による測定値:リチウム硫黄のセル性能、鉄空気の現行品の効率は見つかりませんでした。
  • 安全性:個別の事故原因や製品の安全性は、本稿では評価していません。電池の安全一般は本シリーズ『熱暴走と電池の安全』編を参照してください。
  • 市場・価格:調査会社の予測や、実勢価格($/kWh)は扱っていません。PNNLの値は開発者調査にもとづく2021年の推計です。
  • 全固体電池:別分野のため本論に入れていません。『全固体電池』分野の記事をご覧ください。
この記事のまとめ
  • 電池の性能は、何を得て何を手放したかの組み合わせです。優劣ではなく、用途が手放せるものから選びます(本記事による解説)
  • 数字は材料・セル・システムの三層で読みます。コンテナ基準の値(NAS 約69 Wh/kg、バナジウムRFB 約9.4 Wh/kg)は、セル基準(LFP 140〜175、シリコン負極 315〜450 Wh/kg)と桁が違います本稿の計算
  • 高いエネルギー密度と長い寿命は、いまのところ同じ電池に揃っていません。シリコン負極は150〜1,400回、リチウム硫黄は寿命の公表なし、ナトリウムは独立評価で短い事実
  • 系統用では、往復効率が低い電池ほど充電電力の費用が増えます。LFP 82.59%、バナジウムRFB 65%、亜鉛空気59%(PNNL)事実
  • 成熟度:LFP・NMC・鉛蓄電池・レドックスフロー・NASは商用、ナトリウムイオン・シリコン負極・亜鉛ハイブリッドは初期商用、リチウム硫黄・鉄空気は実証、ほかは研究です(本稿の整理)
  • NASは、NGKが2025年10月に製造・販売の終了を決議しました。技術として使えることと、事業として続くことは別です事実

13. 評価・標準の読み方

初めて読むときは、「どの数字が大きいか」より先に、次の順番で比較の条件を揃えてください。以下は本記事の編集上の確認手順で、規格が定める合格値や試験条件ではありません。

① 何を測ったか
エネルギー密度、出力、寿命、コスト、安全性。単位と、材料・部品・完成システムのどこを測った値かを確認します。
② どの条件か
材料かセルかシステムか、温度、負荷、試験終了の定義、量産時点。条件が異なる結果は、まず別の結果として読みます。
③ 比較で間違えやすい点
理論値、研究室の最高値、メーカーの目標、製品仕様を順位表に混ぜない
④ 規格の役割は何か
規格番号・名称・発行年・適用範囲を発行機関の資料で確認します。試験方法、安全性、相互接続、管理体制のどれを扱う規格かを分けて読みます。規格名の記載だけで、試験実施・適合・認証まで済んでいるとは判断しません。

比較を始めるためのメモ:対象/単位/測定条件/試料数とばらつき/比較対象/規格の版/確認できない点を、ひとまとまりで残しましょう。公開概要しか確認できない規格の数値条件や合格基準は、推測して補いません。

14. 用語集

挿入型/変換型
イオンが結晶に出入りする方式/物質そのものが化学変化する方式。
往復効率(RTE)
充電に使った電力量に対する、放電で取り出せる電力量の割合。AC-ACは交流側の値。
DOD
放電深度。容量のうち何%を使うか。
SOH
電池の劣化の状態。初期容量に対する現在の容量の割合。
サイクル寿命
容量が一定の割合(20%減など)に下がるまでの充放電回数。条件で値が変わる。
材料基準・セル基準・システム基準
活物質の値/包装込みのセルの値/コンテナ・設備全体の値。
LCOS
蓄電の均等化コスト。仮定を置いた計算。
NAS電池
ナトリウムと硫黄を使う高温型の二次電池。
レドックスフロー電池
活物質を溶かした液を外のタンクに貯めてポンプで送る電池。
多価イオン
Mg²⁺・Ca²⁺・Al³⁺のように、価数が2以上のイオンを使う電池。
クランプ圧
セルを外から押さえる圧力。一部のシリコン負極セルで推奨される。
成熟度
実用化の段階。本稿では研究・実証・初期商用・商用に分けた。

15. 参考資料(一次情報)

  1. Tapia-Ruiz ら(Faraday Institution の NEXGENNA コンソーシアムほか)"2021 roadmap for sodium-ion batteries," Journal of Physics: Energy 3, 031503 (2021)(オープンアクセス、英語) — doi.org/10.1088/2515-7655/ac01ef
  2. 米国PNNL(太平洋岸北西部国立研究所)"2022 Grid Energy Storage Technology Cost and Performance Assessment"(PNNL-33283、2022年8月、英語) — pnnl.gov
  3. Amprius Technologies"Product Portfolio Q3 2026"(製品カタログ・データシート集、PDF、英語) — amprius.com
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  6. Neef, Rugerri(フラウンホーファー研究機構 ISI)"Where does Europe stand on lithium-sulfur batteries? Research activities and start-ups in this alternative battery technology," 2026年6月24日(英語) — isi.fraunhofer.de
  7. Böttcher ら(BAM)"Sodium-ion battery research @ BAM (I): investigating the thermal runaway behaviour of commercial sodium-ion battery cells," Sustainable Energy & Fuels 9, 5832–5838 (2025)(英語) — doi.org/10.1039/d5se00687b
  8. Wittman ら(Sandia 国立研究所、ハワイ大学ほか)"Initial characterization and cycling of two batches of commercial hard-carbon/NaxNiyFezMn1−y−zO2 sodium ion 18650 batteries as a potential replacement for lithium-ion batteries," EES Batteries 2, 11–22 (2026)(オープンアクセス、英語) — doi.org/10.1039/d5eb00161g
  9. CATL"CATL and CHANGAN Launch World's First Mass-Production Sodium-Ion Passenger Vehicle"(2026年2月5日、英語) — catl.com
  10. CATL"CATL Debuts World's First Field-Validated Sodium-Ion BESS, Bringing Sodium Storage to Commercial Reality"(2026年6月22日、英語) — catl.com
  11. 本山宗主・山本貴之・入山恭寿(名古屋大学)「全固体Li電池の高性能化に向けた固体電解質の短絡機構の解明」応用物理 第89巻 第4号 213–217(2020)(PDF) — jstage.jst.go.jp
  12. Bruce, Freunberger, Hardwick, Tarascon"Li–O2 and Li–S batteries with high energy storage," Nature Materials 11, 19–29 (2012)(抄録を確認) — doi.org/10.1038/nmat3191
  13. Hosaka, Kubota, Hameed, Komaba"Research Development on K-Ion Batteries," Chemical Reviews 120, 6358–6466 (2020)(抄録を確認) — doi.org/10.1021/acs.chemrev.9b00463
  14. Aurbach, Lu, Schechter, Gofer ら"Prototype systems for rechargeable magnesium batteries," Nature 407, 724–727 (2000)(抄録を確認) — doi.org/10.1038/35037553
  15. Canepa ら"Odyssey of Multivalent Cathode Materials: Open Questions and Future Challenges," Chemical Reviews 117, 4287–4341 (2017)(抄録を確認) — doi.org/10.1021/acs.chemrev.6b00614
  16. Ponrouch ら"Towards a calcium-based rechargeable battery," Nature Materials 15, 169–172 (2016)(抄録を確認) — doi.org/10.1038/nmat4462
  17. Lin ら(Stanford)"An ultrafast rechargeable aluminium-ion battery," Nature 520, 324–328 (2015)(抄録を確認) — doi.org/10.1038/nature14340
  18. Yang ら"Zinc Anode for Mild Aqueous Zinc-Ion Batteries: Challenges, Strategies, and Perspectives," Nano-Micro Letters 14, 42 (2022)(総説、抄録を確認) — doi.org/10.1007/s40820-021-00782-5
  19. 住友電気工業「レドックスフロー電池 導入事例」(日本語) — sumitomoelectric.com
  20. 住友電気工業「レドックスフロー電池の特長」(日本語) — sumitomoelectric.com
  21. Invinity Energy Systems"Invinity VS3-022 Six Pack Vanadium Flow Battery Data Sheet"(MAR00016、2023年1月版、PDF、英語) — invinity.com
  22. Form Energy"Battery Technology"(技術ページ、英語、2026年10月に確認) — formenergy.com
  23. McKerracker ら"A Review of the Iron–Air Secondary Battery for Energy Storage," ChemPlusChem 80, 323–335 (2015)(抄録を確認) — doi.org/10.1002/cplu.201402238
  24. Eos Energy Enterprises, Inc.(米国SEC提出書類)Form 10-K 2025年12月期(2026年提出、英語) — sec.gov
  25. NGK INSULATORS, LTD."Notice Regarding Discontinuation of Manufacturing and Sales Activities of NAS Batteries"(2025年10月31日、PDF、英語版) — ssl4.eir-parts.net
  26. BASF(NGK製のNASを配給)"Technical Data Sheet for NAS Battery System, NAS MODEL L24"(PDF、英語) — promo.basf.com
  27. Vaalma ら(Passerini ら)"A cost and resource analysis of sodium-ion batteries," Nature Reviews Materials 3, 18013 (2018)(抄録のみ確認) — doi.org/10.1038/natrevmats.2018.13
  28. Panasonic Energy"Panasonic Energy to Purchase Silicon Anode Materials from Nexeon, Enabling Production of Higher-energy-density EV Batteries in the U.S."(2023年7月25日、PDF、英語) — news.panasonic.com
  29. Huskinson ら"A metal-free organic–inorganic aqueous flow battery," Nature 505, 195–198 (2014)(抄録を確認) — doi.org/10.1038/nature12909
  30. Manthiram, Fu, Su"Challenges and Prospects of Lithium–Sulfur Batteries," Accounts of Chemical Research 46, 1125–1134 (2013)(抄録を確認) — doi.org/10.1021/ar300179v
  31. ESS Tech, Inc.(米国SEC提出書類)Form 10-K 2025年12月期(2026年提出、英語) — sec.gov
  32. Choi, Aurbach"Promise and reality of post-lithium-ion batteries with high energy densities," Nature Reviews Materials 1, 16013 (2016)(抄録のみ確認) — doi.org/10.1038/natrevmats.2016.13
  33. Gan ら(中南大学)"Comprehensive Understanding of Closed Pores in Hard Carbon Anode for High-Energy Sodium-Ion Batteries," Nano-Micro Letters 17, 325 (2025)(オープンアクセス、英語) — doi.org/10.1007/s40820-025-01833-x
  34. Great River Energyプレスリリース "Great River Energy, Form Energy break ground on first-of-its-kind multi-day energy storage project"(2024年8月15日、英語) — econdev.greatriverenergy.com
  35. Xcel Energyプレスリリース "Xcel Energy to power new Google data center in Minnesota"(2026年2月24日、英語) — newsroom.xcelenergy.com

16. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
LFP 140〜175 Wh/kg・240〜360 Wh/L・寿命3,500〜6,000回、NMC(円筒)240〜270 Wh/kg・670〜750 Wh/L・寿命600回(20%劣化まで、80% DOD、±1 C)、Faradionのセル160 Wh/kg・290 Wh/L・寿命3,000回(2020年中ごろの企業データ)。ナトリウムイオン電池の集電体にアルミ箔を使えること、三つの正極系統の難しさ、SEI成分が溶けやすいこと、NaPF6のHF生成Tapia-Ruiz ら[参考資料 1] https://doi.org/10.1088/2515-7655/ac01ef事実
PNNLの2021年推計:往復効率(AC-AC)LFP・NMC 82.59%、バナジウムRFB 65%、鉛蓄電池71〜78%(2〜10時間)、亜鉛空気59%、Zn-Br 65〜75%、Ni-Zn 71〜88%。サイクル寿命(80% DOD)LFP 2,400回、NMC 1,520回、鉛蓄電池1,370回、Zn-Br 3,650〜5,000回、Ni-Zn 1,000〜3,938回、亜鉛空気12,500回、バナジウムRFBは制限なし(PNNLの仮定)。暦寿命LFP 16年・NMC 13年。設置費(100 MW・10時間)LFP 356、NMC 405、バナジウムRFB 385、鉛蓄電池409 US$/kWh。亜鉛空気はパイロット・実証なし(2022年)。1,000 MW・100時間で電池は他の技術よりはるかに高い。鉛蓄電池の不可逆な硫酸塩化、回収で費用の10〜12%、V2O5価格の最高12.80 US$/ポンド(2021年)、低い設備費の鉛蓄電池が長時間のLCOSを下げうること米国PNNL[参考資料 2] https://www.pnnl.gov/sites/default/files/media/file/ESGC%20Cost%20Performance%20Report%202022%20PNNL-33283.pdf事実
Amprius製品カタログ Q3 2026:SA04 315 Wh/kg・680 Wh/L・1,400回(+1C/−1C、100% DOD、80% SOHまで)、SA02 340 Wh/kg・770 Wh/L・700回、SA03 400 Wh/kg・875 Wh/L・300回(+0.3C/−1C)、SA09 395 Wh/kg・805 Wh/L・150回、SA102 450 Wh/kg・950 Wh/L・150回(+0.2C/−0.2C)。SA03・SA09は外部クランプ15 PSI、SA102は30 PSIを推奨・必要とすること。SA02は39.38 Wh・111.2 g。いずれも包装込み・メーカー公称Amprius Technologies[参考資料 3] https://amprius.com/documents/Amprius_Product_Catalog.pdf事実(企業の主張)
リチウム硫黄の実用条件(E/S比5 µL/mg未満など)、体積変化約80%、理論容量1,675 mAh/g・約2,600 Wh/kg、LIBが理論限界に近づいていること、エーテル系電解液の揮発性・可燃性Chan, Wu, Chung[参考資料 4] https://doi.org/10.20517/energymater.2026.51Manthiram, Fu, Su[参考資料 30] https://doi.org/10.1021/ar300179v事実
Li-S Energyが10 Ah半固体セルで初回放電498 Wh/kg、化成後456 Wh/kgと主張(2024年10月28日)Li-S Energy Limited[参考資料 5] https://announcements.asx.com.au/asxpdf/20241028/pdf/069n1jdcvn96gc.pdf事実(企業の主張)
ISI(2026年6月):Li-Sは広く商用化されていない、量産車向けの広く入手できるセルは見当たらない、最初の市場はUAV・航空・宇宙・防衛、各社の値のレベルの違いへの注意、Lyten・Zeta Energy・LGES・SVOLT・Solidionなどの活動Neef, Rugerri[参考資料 6] https://www.isi.fraunhofer.de/en/blog/themen/batterie-update/lithium-schwefel-batterien-europa-forschung-start-ups.html事実(企業の主張)
BAM:市販のナトリウムイオン18650(1300 mAh、3.0 V、40 g、97.5 Wh/kg)とLFP 18650(122 Wh/kg)、SOC 30%でも穏やかな熱暴走Böttcher ら[参考資料 7] https://doi.org/10.1039/d5se00687b事実
Sandiaらの独立研究:市販18650(Tycorun・Hakadi)が0.5 C・25℃で350サイクルまでに80%未満、データシートの約10分の1Wittman ら[参考資料 8] https://doi.org/10.1039/d5eb00161g事実
CATLの発表(2026年2月):Changanとの量産乗用車、2026年中ごろの市場投入予定、最大175 Wh/kg、−40℃で容量維持率90%超などの主張。TENER Sodium(2026年6月):出荷計画CATL[参考資料 9] https://www.catl.com/en/news/6720.htmlCATL[参考資料 10] https://www.catl.com/en/news/6861.html事実(企業の主張)
名古屋大学の解説:Li金属負極でLIBを超える300〜500 Wh/kgが期待できること(LIBは250 Wh/kg付近が上限)、Liが枝状に成長して短絡すること、有機電解液の引火点60〜90℃、Li金属負極は現在は一次電池のみ(2020年)本山宗主・山本貴之・入山恭寿[参考資料 11] https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu/89/4/89_213/_pdf事実
Li–O2とLi–Sを、Liイオンの限界の先に進む選択肢として論じ、克服すべき大きな障害があること(抄録)Bruce, Freunberger, Hardwick, Tarascon[参考資料 12] https://doi.org/10.1038/nmat3191事実
K/K⁺の低い標準電位による高い動作電圧、希少・有毒元素を使わないこと、K⁺の速い拡散(抄録)Hosaka, Kubota, Hameed, Komaba[参考資料 13] https://doi.org/10.1021/acs.chemrev.9b00463事実
Mg負極・Mo3S4正極・有機ハロアルミン酸塩電解液の試作系、Mgは安価で環境にやさしく安全、鉛・カドミウム系より高い密度が見込める、不動態膜の問題、正極への挿入の難しさ(抄録)Aurbach, Lu, Schechter, Gofer ら[参考資料 14] https://doi.org/10.1038/35037553事実
多価イオン正極の挿入機構の確かな特定の必要(抄録)Canepa ら[参考資料 15] https://doi.org/10.1021/acs.chemrev.6b00614事実
2015年にCaのめっきを通常の有機電解液で穏やかな温度で実証し、可逆性を確認したこと。これまでCaのめっきは不可能と考えられていたこと(抄録)Ponrouch ら[参考資料 16] https://doi.org/10.1038/nmat4462事実
Al金属負極・黒鉛発泡正極・イオン液体電解液の電池が約2 Vの平坦部、約70 mAh/g、クーロン効率約98%、7,500回超の寿命を示したこと。従来は正極の崩壊、約0.55 Vの低電圧、100回未満の寿命が問題(抄録)Lin ら[参考資料 17] https://doi.org/10.1038/nature14340事実
水系亜鉛イオンの亜鉛負極の主な問題がデンドライト・水素発生・腐食で、研究はまだ開発中であること(抄録)Yang ら[参考資料 18] https://doi.org/10.1007/s40820-021-00782-5事実
住友電工:15 MW/60 MWh(2015年12月稼働)、17 MW/51 MWh(2022年4月稼働)、米国SDG&Eの設備住友電気工業[参考資料 19] https://sumitomoelectric.com/jp/products/redox/cases事実(企業の主張)
住友電工:電解液は不燃性、電極・電解液の劣化なし、システム設計寿命20年、サイクル数は無制限(企業の主張)住友電気工業[参考資料 20] https://sumitomoelectric.com/jp/products/redox/features事実(企業の主張)
Invinity VS3-022:1モジュール230 kWh、質量24,600 kg(満液)、外形6,058×2,438×2,591 mm、サイクル寿命2万回超、最大DC往復効率75%、2〜12時間、年間の容量低下0.5%未満(メーカー公称)Invinity Energy Systems[参考資料 21] https://invinity.com/wp-content/uploads/2023/03/Invinity-VS3-022-Vanadium-Flow-Battery-Data-Sheet-MAR00016-2023-01.pdf事実(企業の主張)
Form Energy:可逆的な錆の原理、水系の不燃性電解液、鉄・水・空気、最大100時間の蓄電(企業の主張)Form Energy[参考資料 22] https://formenergy.com/technology/battery-technology/事実(企業の主張)
鉄空気の総説:開回路電位の予測値1.28 V、比電荷容量300 Ah/kg未満、報告された効率は充電96%・電圧40%・エネルギー35%、課題は二元機能の酸素極と鉄電極の腐食・水素発生(抄録)McKerracker ら[参考資料 23] https://doi.org/10.1002/cplu.201402238事実
Eos 10-K:Z3の主な原料(亜鉛ハロゲン化物・フェルト・樹脂・チタン・導電性ポリマー)、静置型でポンプ・圧縮機なし、−20〜50℃、電圧ゼロ・充電状態0%で製造、Z3は2023年第3四半期から出荷、化学が300万サイクル超の耐久性を示したという記載(企業の主張)、DOE融資枠最大3.035億US$、2027年までに8 GWhEos Energy Enterprises, Inc.[参考資料 24] https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1805077/000162828026011961/eose-20251231.htm事実(企業の主張)
NGKの決議(2025年10月31日):NAS電池の製造・販売を終了、2002年に商用化、長時間・大容量・長寿命・高信頼性が特長と説明、終了の理由(需要の遅れ、材料費の高騰、Liイオンとの競争)、最終出荷2027年1月(予定)、特別損失約180億円NGK INSULATORS, LTD.[参考資料 25] https://ssl4.eir-parts.net/doc/5333/tdnet/2705285/00.pdf事実(企業の主張)
NAS Model L24:20フィートコンテナ、約21 t、使用可能エネルギー1,450 kWh-dc、最大250 kW-dc、7,300回相当、設計寿命20年、放電深度100%、モジュール内部の運転温度305〜340℃(メーカー公称)BASF[参考資料 26] https://promo.basf.com/Documentos/BASF_NAS_Technical_Data_Sheet_Model-L-24%20(1).pdf事実(企業の主張)
リチウムとコバルトの供給リスクの評価(抄録)Vaalma ら[参考資料 27] https://doi.org/10.1038/natrevmats.2018.13事実
Panasonic EnergyがNexeonのシリコン負極材を購入し、2025年から米国カンザス州の新工場の電池に使う(2023年7月25日の発表)、シリコンの理論容量が黒鉛の約10倍、膨張による容量低下の問題Panasonic Energy[参考資料 28] https://news.panasonic.com/uploads/tmg_block_page_image/file/17703/en230725-3-1.pdf事実(企業の主張)
キノン系の金属を使わない水系フロー電池で、サイクルあたり99%超の容量保持を示したこと(ラボ、2014年、抄録)Huskinson ら[参考資料 29] https://doi.org/10.1038/nature12909事実
鉄フローのESS Tech:2025年の売上1.6百万US$、純損失63.4百万US$、継続企業の前提に重要な疑義、Energy Warehouse・Energy Centerは販売していないこと、20,000回超という主張は「ラボ規模の結果」にもとづくことESS Tech, Inc.[参考資料 31] https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1819438/000181943826000012/ghw-20251231.htm事実(企業の主張)
Choi・Aurbachの総説:LIBが以前競合した鉛蓄電池とニッケル水素電池を上回ること、ポストLIB技術を近い将来と長期に分けて論じること(抄録)Choi, Aurbach[参考資料 32] https://doi.org/10.1038/natrevmats.2016.13事実
ナトリウムの地殻存在量2.36%に対しリチウム0.0065%、ハードカーボンの初回効率が課題であることGan ら[参考資料 33] https://doi.org/10.1007/s40820-025-01833-x事実
Great River Energyが、鉄空気電池の最大100時間の蓄電をうたうパイロット事業を着工(2024年8月15日)Great River Energy[参考資料 34] https://econdev.greatriverenergy.com/news/in-the-news/p/item/59190/press-release-great-river-energy-form-energy-break-ground-on-firstofitskind-multiday-energy-storage-project事実(企業の主張)
Xcel Energyが、Form Energyの300 MW(30 GWh)の鉄空気電池の設置を含む計画を発表(2026年2月24日、承認を要する計画)Xcel Energy[参考資料 35] https://newsroom.xcelenergy.com/news/xcel-energy-to-power-new-google-data-center-in-minnesota未確定/将来
コンテナ基準:NAS 1,450 kWh÷21 t=約69 Wh/kg(約37.9 kWh/m³)、Invinity 230 kWh÷24.6 t=約9.4 Wh/kg(約6.0 kWh/m³)、外形38.27 m³。NASの1,450 kWh÷250 kW=約5.8時間本稿の計算。値は参考資料21・26(メーカー公称)。コンテナにはタンク・配管・制御などを含み、セル基準とは比べられない本稿の計算
往復効率からの充電電力量(1÷効率:82.59%で1.211、71%で1.408、65%で1.538、59%で1.695、35%で2.857)と、20 US$/MWhと仮定したときの放電1 MWhあたり24.2、28.2、30.8、33.9、57.1 US$本稿の計算。効率は参考資料2・23の値、充電電力の価格20 US$/MWhは本稿の仮定。実勢ではない本稿の計算
アルミニウム電池の正極基準のエネルギー(70 mAh/g × 2 V = 約140 Wh/kg-正極)本稿の計算。参考資料17の容量と電圧にもとづく正極質量あたりの概算で、セルの値ではない本稿の計算
◎○△の分け方(エネルギー密度・寿命・材料の入手性・成熟度)、「-」の扱い、成熟度の定義、課題の地図の●、用途別の○△×、「得るものと手放すもの」の整理、選ぶときの質問の順番、アルミニウム電池・Mg・Caの位置づけ公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない。優劣を決めるものではない解説
リチウム金属二次(液系)・リチウム空気・カリウムイオン・多価イオン・鉄空気・亜鉛系・鉛蓄電池・ニッケル水素のセル基準の値、ニッケル水素の原理・性能、Form Energy・Eosの往復効率、リチウム硫黄の独立の測定値、各電池の安全性の個別評価、市場価格本稿の調査範囲では公開された一次情報に確認できなかったため記載していない解説
図1・図2・図3・図4・図5・図7が実際の測定結果・設計図ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像と図6がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月10日/出典は一次情報(査読論文、国立研究所の報告、公的研究機関の調査、企業の公式資料・取引所開示、規格団体・企業の製品データシート)に限定しています。 企業の発表は「企業の主張」として、独立した評価・公的機関の推計と区別しています。◎○△・○△×・●・成熟度の段は本稿の整理で、優劣ではありません。構造の整理や読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 リチウム金属二次(液系)・リチウム空気・カリウムイオン・多価イオンのセル基準の値、ニッケル水素の性能、Form Energy・Eosの往復効率、リチウム硫黄の独立の測定値、各電池の安全性の個別評価、市場価格については、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用の概念図です。図1・図2・図3・図4・図5・図7はベクター作図、ヒーロー画像と図6はAI生成イメージであり、いずれも実際の測定結果・断面写真・製品の実物を示すものではありません。