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ナトリウムイオン電池 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

ナトリウムイオン電池
― リチウムの代わりにナトリウムを使うと、何が変わり、何が変わらないのか

ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と同じ「ロッキングチェア」の原理で動きます。違いは、運ぶイオンがナトリウムであること。 それだけで、正極の選び方、負極に使える炭素、そして集電体にアルミ箔が使えるという、設計の前提が変わります。 一方で、エネルギー密度はリチウムイオン電池の同じ土俵に届いたとは言えません。

構成:査読論文、2021年のロードマップ(Faraday Institution を中心とする共著)、CATL の公式発表、BSI の規格ドラフト情報を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

電極スラリーをアルミ箔に塗る工程です
概念画像(ImageGenで生成)。電極スラリーをアルミ箔に塗る工程です。ナトリウムイオン電池の材料調製の例で、金属ナトリウムを塗る工程ではありません。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。
この記事の構成
  1. ナトリウムイオン電池とは何か(3行でつかむ)
  2. 動作原理と、リチウムイオン電池との違い
  3. 本稿の計算:リチウムをナトリウムに替えると、理論容量はどうなるか
  4. 正極の三つの系統 ― 層状酸化物、プルシアンブルー類縁体、ポリアニオン
  5. 素材技術者の視点①:三つの系統は、それぞれ別の理由で難しい
  6. 電解液・負極・集電体 ― 「アルミ箔が両側に使える」ことの意味
  7. 素材技術者の視点②:水分と乾燥が、量産の入口になる
  8. エネルギー密度とコストの位置づけ(セル基準・条件つき)
  9. 実用化の状況 ― 企業の発表と、独立に確認できること
  10. 課題(エネルギー密度、サイクル、規格)
  11. 評価・標準の読み方
  12. 用語集
  13. 参考資料(一次情報)
  14. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。企業の発表は「企業の主張」であり、独立した検証とは区別して書いています。 電池の数値は、材料の値か、セルか、パックか、システムかが違うと比べられません。本文では必ず基準を添えます。

1. ナトリウムイオン電池とは何か(3行でつかむ)

ナトリウムイオン電池(SIB)は、「リチウムイオン電池の、運び手のイオンだけをナトリウムに替えた二次電池」です。 正極と負極のあいだでイオンが行き来し、充放電が進む仕組みは同じです。2021年のロードマップ(Faraday Institution を中心とする多数の著者による共著)は、 ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池の基本原理と使う材料は似ているため、既存の製造ラインを使って市場に出やすいと述べています事実。

  • 何が同じか:イオンが正負極の結晶・炭素の中に出入りする「挿入型」。電解液は有機溶媒に塩を溶かしたもの。電極は活物質の粉をバインダーと導電助剤で金属箔に塗る事実(ロードマップ[参考資料1])。
  • 何が違うか:ナトリウムイオンはリチウムイオンより半径が約34%大きく(1.02 Å 対 0.76 Å)、材料の中で受ける歪みが大きくなります。負極に使う炭素は、黒鉛ではなくハードカーボンが主流です事実(同)。
  • どこが設計を変えるか:ナトリウムは低い電位でもアルミと合金を作らないため、負極の集電体にアルミ箔を使う設計が取れます事実(同、[参考資料2])。
この記事でいちばん大事な一行

ナトリウムイオン電池の位置づけは「リチウムイオン電池より優れる」でも「劣る」でもなく、「性能の置きどころが違い、使える用途が違う」です。 2021年のロードマップは、Faradion 社のセルがNMC//黒鉛とLFP//黒鉛の中間のエネルギー・出力を示すと報告し、 同時に、消費者向け機器の一部と長距離EVには向きにくいと整理しています事実。 そのうえで2026年には、CATL が量産と蓄電システムの出荷計画を発表しました。ただしそれは企業の主張であり、独立した検証データは本稿の調査では確認できませんでした。

2. 動作原理と、リチウムイオン電池との違い

(1) 動作原理 ― ロッキングチェア

放電のとき、負極(ハードカーボン)に入っていたナトリウムイオンが電解液の中を通って正極へ移り、正極の結晶の中へ入ります。 同時に、電子は外部回路を通って負極から正極へ流れ、これが電気として取り出されます。充電では逆に、ナトリウムイオンが正極から負極へ戻ります。 イオンが「椅子の両端を揺れ動く」ように行き来するため、ロッキングチェア型と呼ばれます(本記事による解説)。

アルミ集電体、ハードカーボン負極、セパレーター、正極の位置関係です
図1 概念画像(ImageGenで生成)。アルミ集電体、ハードカーボン負極、セパレーター、正極の位置関係です。放電時にはイオンが電解液側、電子が外部回路側を通ります。 [参考資料1] [参考資料2] 形状・色・寸法は説明用です。数値と原文の対応は下の元図で確認できます。
元のSVG模式図と正確な説明を見る
放電時の動作原理と、集電体の組み合わせ(概念図) ※ 層の厚み・イオンの数は模式化したもので、実際の寸法比ではありません。 ナトリウムイオン電池 リチウムイオン電池(比較) Al箔 正極 セパレータ 負極 Al箔 酸化物など ハードカーボン Na+ (放電) 負荷(e- は 負極→正極) Al箔 正極 セパレータ 負極 Cu箔 NMC・LFPなど 黒鉛 など Li+ (放電) ※ ナトリウムイオン電池では負極の集電体にもアルミ箔を使う設計が取れる。リチウムイオン電池の負極側は銅箔が一般的。 ※ ナトリウムは低電位でアルミと合金を作らない、という点がこの違いの根拠[参考資料1・2]。 ※ リチウム側で銅箔を使う理由(低電位でのリチウム–アルミ合金化)は、本稿では一次情報で直接確認していない一般的な理解です。
図1 概念図(ベクター作図)。放電時の動作と、集電体の組み合わせの違いを示しました。負極集電体にアルミ箔を使う設計はFaradion社のセルの説明[参考資料1]と、アルミ集電体が低電圧でナトリウムと適合するという論文の記述[参考資料2]によります。実在製品の構造を描いたものではありません。

(2) リチウムとナトリウムの違いは、材料の設計にどう効くか

観点わかっていること材料設計への影響(本記事による解説)
イオンの大きさNa+ の半径は Li+ より34%大きい(1.02 Å 対 0.76 Å)事実。出し入れで電極材料が受ける歪みが大きく、割れや溶出が増えうる(ロードマップ[参考資料1])歪みに強い構造(ポリアニオン、P2型など)や、ドーピング・被覆の設計が重要になる
結晶構造の自由度Na+ は八面体に加えて三角柱型の席も取れるため、層状酸化物にP2・O3といった積層の違いが生じる事実(ロードマップ[参考資料1])組成と合成条件で、出力向き(P2)と容量向き(O3)を作り分ける余地がある
負極の炭素ハードカーボンが最も広く使われる負極事実(ロードマップ[参考資料1])。詳しくは本シリーズ『ハードカーボン負極』編負極の原料・焼成条件が、セル性能とコストを大きく左右する
集電体負極集電体にアルミ箔を使える。Faradion 社のセルの低い部材コストの根拠の一つに、銅ではなくアルミの集電体が挙げられている事実(ロードマップ[参考資料1])集電体の重量・材料費の削減になる。0 Vまで放電した状態で保管・輸送できる、との記述もある(同)
SEI・溶出ナトリウム塩由来のSEI成分は溶けやすく、SEIの安定性はリチウムイオン電池より劣るとされる事実(同)電解液・添加剤の設計と、遷移金属の溶出の管理が寿命に直結する

表は横にスクロールできます。リチウムイオン電池側の同種の説明は、本シリーズ『リチウムイオン電池の基本』編と『SEI』編を参照してください。

3. 本稿の計算:リチウムをナトリウムに替えると、理論容量はどうなるか

本稿の計算

ナトリウムの原子量(22.99)はリチウム(6.94)の約3.3倍です本稿の計算。 同じ結晶構造でリチウムをナトリウムに替えると、同じ電子数を出し入れしても、重さあたりの理論容量は小さくなります。 ここでは、材料の理論容量(活物質の式量と、出し入れする電子の数から決まる値)を計算します。

前提:理論容量=(出し入れする電子の数 × ファラデー定数 ÷ 3.6)÷ 式量(mAh/g。ファラデー定数 96485 C/mol から 26801 mAh/mol)。 原子量は Li 6.94、Na 22.990、Fe 55.845、V 50.942、P 30.974、O 15.999、F 18.998、C 12.011、N 14.007 を使用。 これは活物質の材料基準の値であり、セルのエネルギー密度(Wh/kg)ではありません。集電体・電解液・負極・外装の重さが入っていません。

正極活物質の理論容量(材料基準、本稿の計算) ※ 式量と出し入れする電子の数から計算。実際に取り出せる容量や、セルの値とは異なります。 0 40 80 120 160 200 mAh/g LiFePO4(Li 1個) 170 NaFePO4(Na 1個) 154 Na3V2(PO4)3(Na 2個) 118 Na3V2(PO4)2F3(Na 2個) 128 Na4Fe3(PO4)2P2O7(Na 3個) 129 Na2Fe[Fe(CN)6](Na 2個) 171 ※ 青:リチウム系の参照。黄:ナトリウム系。NaFePO4は同じ式でLiをNaに替えた場合の計算例で、実際の合成のしやすさとは別の話です。 ※ ( )内は式量あたりに出し入れする電子の数。Na2Fe[Fe(CN)6]はプルシアンブルー類縁体の一例(空孔・水を含まない理想式)。
図2 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。各化合物の式量から計算した理論容量。式量は本記事が上記の原子量から算出。Na3V2(PO4)2F3は128 mAh/g(ロードマップの記載値と一致)、Na4Fe3(PO4)2P2O7は129 mAh/g(原論文の実測値129 mAh/gと一致)[参考資料1・5]。棒の長さは材料の理論値で、セルの性能ではありません。
材料式量あたりの電子数理論容量(mAh/g)備考
LiFePO41170リチウム系の参照
NaFePO41154同じ式で Li を Na に替えた計算例。約9%小さい
Na3V2(PO4)32118ロードマップは、2個のNaを可逆に出し入れでき、電位は3.4 Vと記載[参考資料1]
Na3V2(PO4)2F32128平均3.9 V、理論容量128 mAh/g(ロードマップの記載と一致)[参考資料1]
Na4Fe3(PO4)2P2O73129Fe 1原子あたり1電子。原論文は実測129 mAh/g、約3.2 V(対Na)と報告[参考資料5]
Na2Fe[Fe(CN)6]2171理想式の計算。実際は空孔と水を含み、これより小さくなる(第4章)

計算値は本稿の計算。備考欄のロードマップ・原論文の数値は事実。

計算から読めることは二つです(本記事による解説)。第一に、同じ結晶の骨格なら、リチウムをナトリウムに替えると質量あたりの容量は1割程度下がります(LiFePO4 と NaFePO4 の比較)。 第二に、ポリアニオン系のナトリウム正極は、1個の式量が重い(式量約420〜620)ため、理論容量が120〜130 mAh/g前後にとどまります。 ロードマップも、ポリアニオン系は重いアニオン部分のために層状酸化物より容量が小さくなる、という取引関係を述べています事実。 ここで重要なのは、これは材料の理論値という点です。セルの質量エネルギー密度は、電圧、負極の容量、電極の密度、集電体、電解液、外装で決まり、この計算だけでは決まりません。

4. 正極の三つの系統 ― 層状酸化物、プルシアンブルー類縁体、ポリアニオン

ナトリウムイオン電池の正極は、結晶の骨格によって大きく三つの系統に分かれます。ロードマップは、Faradion(英国)、Tiamat(フランス)、Altris(スウェーデン)、HiNa(中国)、Natron Energy(米国)などの企業が それぞれ別の正極を選んでいること、つまり業界に「正解」の合意がないことを述べています事実(2021年時点の記述)。

左から層状酸化物、プルシアンブルー類似体、ポリアニオン系の骨格の模型です
図3 概念画像(ImageGenで生成)。左から層状酸化物、プルシアンブルー類似体、ポリアニオン系の骨格の模型です。形は特徴の説明用で、正確な結晶構造や組成を描いたものではありません。 [参考資料1] [1] 形状・色・寸法は説明用です。数値と原文の対応は下の元図で確認できます。
元のSVG模式図と正確な説明を見る
正極の三つの系統(構造の概念図) ※ 骨格の特徴を模式化したもので、実際の原子配置・寸法比ではありません。 ① 層状酸化物 ② プルシアンブルー類縁体 ③ ポリアニオン 遷移金属–酸素の層(茶)のあいだに Na+(青)が入る P2:三角柱の席/O3:八面体の席 積層の違いで特性が変わる 空孔 金属(青・黄)をシアン化物が橋渡しする 開いた骨格。空孔と水が入りやすい 空孔1%で最大Na量が3〜4%減る[1] 脱水すると体積が約18%変わる 金属の多面体(茶)を、PO4などの四面体(緑) がつなぐ三次元の骨格。構造が安定 骨格が重く、容量は120〜130 mAh/g前後 (V系は3.4〜3.9 V) ※ 空孔1%→最大Na量3〜4%減、脱水による体積変化約18%は、ロードマップの記載[参考資料1]。 ※ 三つに分類したのは代表的な整理であり、有機材料・酸素レドックス材料など、ここに入らない正極の研究もあります。
図3 概念図(ベクター作図)。三つの系統の骨格の違いを模式化した図。数値は2021年のロードマップ[参考資料1]の記載によります。実在材料の正確な結晶構造・寸法比ではありません。図中の[1]は参考資料1を指します。
系統代表例公表されている数値(条件つき)主な課題
層状酸化物
(P2・O3)
NaFeO2、NaNi1/2Mn1/2O2(O3)/Na2/3MnO2(P2)。Faradion は O3/P2 混相の Na–Mn–Ni–Ti–Mg 酸化物、HiNa は O3 型の Na–Cu–Fe–Mn 酸化物を使うと記載事実[1]P2-Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2:可逆容量190 mAh/g(Fe3+/Fe4+のレドックス、ナトリウムセルでの値、2012年の論文)[3]。同論文は、それまでの層状材料の可逆容量は概ね100 mAh/gに限られていたと述べる繰り返しの中での相変化が複雑で、組成の微小な違いで性能が大きく変わる。Mn溶出(溶出–移動–析出)は、マンガン酸化物系の挿入型電池で容量損失の最大30%に寄与しうるとの推定がある(ロードマップが引く一般的な推定)[1]
プルシアンブルー類縁体
(PBA)
NaxM[M′(CN)6]1−y·zH2O(M, M′ は Fe, Mn, Ni など)。Altris(スウェーデン)が採用と記載[1]2012年の論文:Na挿入で100 mAh/g近く、30サイクルで容量低下なし(炭酸エステル電解液)[4]。ロードマップ:これまでで最良のPBAは120 mAh/gを800サイクル超(0.5 C充電・2 C放電)。水系電解液では8000サイクルの報告があるが、容量は60〜80 mAh/gにとどまることが多い[1]空孔と水。空孔1 mol%で最大Na量が3〜4 mol%減る。乾燥させると体積が約18%変わり、空気中では数分で水和構造に戻る[1]
ポリアニオンNa3V2(PO4)3(NVP)、Na3V2(PO4)2F3(NVPF)、Na4Fe3(PO4)2P2O7(NFPP)。Tiamat は NVPF を使うと記載[1]NVP:2個のNaを3.4 Vで可逆に出し入れ。NVPF:平均3.9 V、理論容量128 mAh/g[1]。NFPP:実測129 mAh/g、約3.2 V(対Na)、高出力・小さい体積変化・高い熱安定性を報告(2012年の論文)[5]骨格が重く容量が小さい。V系はバナジウムの調達と取り扱いが課題。FeやMnのポリアニオンは電位が低いか、かさ高い陰イオンでタップ密度が下がり体積エネルギー密度を損なう[1]

表の[1][3][4][5]は参考資料の番号。すべて事実(論文・ロードマップの記載)。条件(半電池か、電解液か、サイクル数)は各資料の記載に従います。

CATL は、2025年9月にNaxtraが国家標準GB 38031-2025の認証を得たと発表し、2026年6月には蓄電システム「TENER Sodium」を発表しました(第9章)。 しかしこれらの発表では、Naxtraの正極がどの系統か、また TENER Sodium の正極が何かは記載されていません。 後者のリリースには「NFPP」という略称の材料の製造コストが今後下がる見通しとの記述がありますが、略称の定義も、それが TENER Sodium の正極だとする記述もありません事実[10〜14]。 したがって本稿は、CATL の正極の種類を断定しません(確認できなかった項目)。

5. 素材技術者の視点①:三つの系統は、それぞれ別の理由で難しい

素材技術者の読みどころ:「難しさの種類」が系統ごとに違う

三つの系統の難しさは、材料の化学の違いにそのまま対応しています(本記事による解説)。

  • 層状酸化物は「構造の動き」の問題です。充放電のたびにNa+の席(P2とO3)や層の積み重なりが変わる相変化があり、さらにNa+が大きいため歪みが大きくなります。ロードマップは、わずかな量のMg2+やTi4+を加えるだけで性能が大きく変わる現象が未解明だと述べています事実[1]。配合の探索空間が広い反面、再現性の確保(焼成条件、組成の揺らぎ、不純物)が量産品質の核心になります。
  • PBAは「欠陥と水」の問題です。合成(共沈)で入る空孔が、最大Na量と構造安定性を直接削ります。さらに水は、構造を支える一方で(体積変化を抑える)、高電位で電解液と反応する原因にもなります。乾燥の仕方で結晶の相が変わり、乾かしても空気中に出せば数分で水和すると報告されています事実[1]。つまり粉の乾燥・保管・電極化の工程管理が、そのまま性能になります。
  • ポリアニオンは「重さと電子伝導」の問題です。骨格が安定な分、電子が流れにくく、粒子の微細化や炭素被覆が必要になります(NVPの炭素被覆を扱う2012年の論文[9]が、その一例です)。容量が小さい分、電極を厚く・密に作る塗工・圧延の条件が、体積エネルギー密度を左右します。

ここから、素材メーカーの立場では、ナトリウム正極は「どの系統が勝つか」ではなく、用途ごとに別の系統が候補になる多様な市場として始まっている、と読めます(本記事による解説)。 ロードマップの記述を並べると、ポリアニオンは「高出力で耐久性のある系の有望な道」、PBAは「正極として価格あたりの性能が最良」、層状酸化物は容量重視のO3型と出力重視のP2型の作り分けができる、と整理されています事実[1]。 ただし、2021年以後に産業側が実際にどの系統へ動いたかは、本稿では独立の資料で確認できていません。

6. 電解液・負極・集電体 ― 「アルミ箔が両側に使える」ことの意味

(1) 電解液:有機溶媒に溶かすナトリウム塩

非水系のナトリウムイオン電池の電解液は、リチウムイオン電池と同様に、有機溶媒(EC、DMC、PCなどのカーボネート類)にナトリウム塩を溶かしたものが基本です。 ロードマップに載る代表例は 1 M NaPF6 in EC/DMC(質量比1:1)、1 M NaClO4 in EC/DEC などです事実[1]。 塩については、同じロードマップが次の整理をしています。

  • NaClO4:最もよく研究されているが、強い酸化性のため安全上の理由から商用には使えず、乾燥もしにくい。
  • NaPF6:最有望だが、水分に敏感で加水分解してHFを生じ、電解液の劣化と安全上の懸念につながる。市販のNaPF6の品質にも問題があり、NaFが生成する。
  • NaFSI・NaTFSI:毒性が低く熱安定性が高いが、単独の塩ではアルミ集電体を腐食し、コストも高い。
  • ナトリウム塩全般:リチウム塩より融点が高く、乾燥しやすく熱安定性にも有利。

すべて事実(ロードマップ[参考資料1]の記述)。

また、ナトリウム系のSEIの成分(Na2CO3、ROCO2Naなど)はリチウム系より溶けやすく、ナトリウムイオン電池の界面はリチウムイオン電池より安定性が劣るとされています事実[1]。 SEIの一般論は本シリーズ『SEI』編に譲ります。

(2) 負極:ハードカーボン

負極にはハードカーボンが最も広く使われています。ロードマップによれば、ハードカーボンの実測容量はコイン型セルの半電池で200〜450 mAh/g、文献の多くは平均で約300 mAh/gです(黒鉛のLiC6の理論372 mAh/gと対比されます)事実[1]。 高エネルギー用途で、当面ハードカーボンに置き換わる負極は見当たらない、という見方も示されています事実[1]。 構造(乱層・閉孔)、ナトリウム貯蔵の機構、前駆体と焼成、初回効率は、本シリーズ『ハードカーボン負極』編で詳しく扱います。 合金系(Sn、Sb、Pなど)は、ナトリウム化でリチウム系以上に大きく膨らみ、実用面の障害になっています事実[1]。

(3) 集電体:アルミ箔が正負極の両側に

リチウムイオン電池では、負極側の集電体に銅箔を使うのが一般的です。ナトリウムイオン電池では、ナトリウムが低電位でアルミと合金を作らないため、負極側もアルミ箔にできます。 2024年の論文は、アルミ集電体はナトリウムと低電圧で適合しており、SIBの報告のなかでアルミが負極集電体の有力な候補であるにもかかわらず、銅が一般に使われていると述べています事実[2]。 ロードマップは、Faradion のセルの低い部材コストの根拠の一つに、銅ではなくアルミの集電体を使うことを挙げています事実[1]。 Vaalma らの2018年のコスト分析(BatPaCモデル)も、負極集電体の箔の材料を替えたときのコストへの影響を検討項目に入れています事実[8](抄録の記載。結果の数値は本稿では確認していません)。

本稿の計算:箔の重さはどれだけ違うか

アルミの密度は 2.70 g/cm³、銅は 8.96 g/cm³ です(標準的な物性値。本稿の前提)。同じ厚さの箔なら、アルミ箔の面積あたりの重さは銅箔の約30%です本稿の計算(2.70 ÷ 8.96 = 0.30)。 たとえば厚さ8 µmなら、銅箔は 71.7 g/m²、アルミ箔は 21.6 g/m² です。

この計算は、同じ厚さを仮定した比較です。実際の箔の厚さは製品ごとに違い、アルミ箔を銅箔と同じ厚さにできるかは、機械強度や塗工条件によります。電池全体の重さ・コストにどれだけ効くかは、セル設計に依存し、ここからは決まりません。

アルミ集電体にはもう一つ、ロードマップが記す特徴があります。ナトリウムイオン電池は0 Vの状態で保管・輸送できるという点です事実[1]。 理由は、同ロードマップの記述では明示されていません。本記事の解説としては、銅集電体を使う電池は、完全に放電して負極の電位が上がると銅の溶出が起こるため、この運用が難しい——と考えられますが、本稿は一次情報で直接確認していません(推測)。

7. 素材技術者の視点②:水分と乾燥が、量産の入口になる

封をした試料容器とグローブボックスで、水分に敏感な材料を管理する例です
図4 概念画像(ImageGenで生成)。封をした試料容器とグローブボックスで、水分に敏感な材料を管理する例です。材料ごとの乾燥条件は示していません。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。
素材技術者の読みどころ:ナトリウム系は、水に対して寛容ではない

ロードマップを読むと、水分が影響するポイントが電池のあちこちに出てきます事実[1]。

  • 電解液のNaPF6は、水分で加水分解してHFを生じる。市販塩の品質にもばらつきがある。
  • PBAは、乾燥度合いで結晶の相が変わり、空気に出せば数分で水和する。
  • 溶媒・電解液・水分やCO2の混入が、ナトリウム正極の母材の劣化を、リチウム系より大きな速度で進めうる。

CATL は、2026年4月の発表で、ナトリウムイオン電池の量産で解決した4つの障害として「水分の極端な制御」「ハードカーボンでのガス発生」「アルミ箔の密着」「自己形成負極」を挙げています事実[13](CATL の主張。各項目の具体的な中身は同リリースには書かれていません)。 水分管理が最初に出てくる点は、材料側の事情とよく合っています(本記事による解説)。

素材メーカーの立場でこれを読むと、粉体の「含水率の規格」と「保管・出荷の形態」が、電池メーカーの歩留まりを左右する、ということになります。 正極粉・ハードカーボン粉・バインダー・電解液塩のそれぞれで、どの含水率まで許されるか、輸送中の吸湿をどう防ぐか(防湿包装、不活性ガス封入)が、仕様書の重要項目になります。 この要求水準は、リチウムイオン電池の材料で培われた管理手法を土台にしつつ、材料ごとに追加の検討が要る領域です(本記事による解説。具体的な許容含水率は、本稿の調査範囲では公表資料に確認できませんでした)。

8. エネルギー密度とコストの位置づけ(セル基準・条件つき)

「ナトリウムイオン電池のエネルギー密度は、LFPと同等か」という問いには、数字の基準を揃えないと答えられません。 下の図は、ロードマップが示すセル基準の値と、市販の18650セルを独立に調べた研究の値、CATL の主張を、基準を明記して並べたものです。

セル基準のエネルギー密度(条件の違う値を並べた一覧) ※ 優劣を示す図ではありません。セルの大きさ・世代・出所が違います。 (a) 質量エネルギー密度(Wh/kg、セル) 0 50 100 150 200 250 300 NMC//黒鉛(円筒) 240–270 LFP//黒鉛(大型) 140–175 Na-ion(Faradion) 160 Na-ion 18650(市販) 97.5 LFP 18650(比較) 122 CATL Naxtra(主張) 最大175(基準の記載なし) (b) 体積エネルギー密度(Wh/L、セル) 0 200 400 600 800 NMC//黒鉛(円筒) 670–750 LFP//黒鉛(大型) 240–360 Na-ion(Faradion) 290 ※ NMC・LFP・Faradionは2021年のロードマップの表[1]。Faradionは32 Ahパウチセルで、2020年中ごろ時点の企業データ。LFPは25〜280 Ahのパウチ・角形。 ※ 18650の2点は、独立研究[6]で使われた市販セルのデータシート由来の値(Na-ion 1300 mAh・3.0 V・40 g、LFP 1600 mAh・3.2 V・42 g)。 ※ CATLの値は企業の主張で、セルかパックか明記なし。体積エネルギー密度はCATLの発表には見当たらない。 ※ 材料の値ではなくセルの値ですが、パック・システムの値ではありません。
図5 概念図(ベクター作図)。セル基準のエネルギー密度。点は単一の値、帯は範囲。出所は、ロードマップの表[1]、BAMの論文[6]、CATLの発表[10・12]。世代・セルの大きさ・出所が揃っていないため、優劣の比較には使えません。図中の[6]は参考資料6を指します。

この図から読めることは三つあります(本記事による解説)。

  • 2020年中ごろの Faradion のセルは、質量エネルギー密度ではLFP//黒鉛の範囲(140〜175 Wh/kg)の内側、NMC//黒鉛(240〜270 Wh/kg)よりは低い——というのがロードマップの整理です事実[1]。体積エネルギー密度は、LFPの範囲(240〜360 Wh/L)のなかにあります。
  • 同じ「ナトリウムイオン電池」でも、セルの設計によって数字が大きく違います。独立研究で使われた市販の小型18650セルは、データシート由来で97.5 Wh/kgと、同じ形のLFPセル(122 Wh/kg)より低い値でした事実[6]。形状・世代・電極設計の違いが効くため、「ナトリウムは何Wh/kg」と一つの値では言えません。
  • CATLの175 Wh/kgは、基準が書かれていません。2026年2月の発表は「最大175 Wh/kg」と書き、「量産のベンチマーク」と述べています事実[12]が、セルの値か、どの条件か、独立の測定があるかは確認できませんでした。企業の主張として扱い、上の範囲と同じ土俵では比べません。

コストの位置づけ

コストについて、本稿は調査会社の価格予測を使いません。公表資料で確認できるのは、次のような限られた記述です。

  • 2021年のロードマップの techno-economic の節は、BatPaCなどのコストモデルによる欧州通貨建ての試算で、ナトリウムイオン電池(NaMO2/ハードカーボン)とLFPのセルコストは同程度で、NMCはそれより低いと述べ、コストは量産規模とエネルギー密度の向上で下がりうるとしています事実[1]。
  • 同じロードマップの Faradion の節は、同社のセルの部材コスト(BOM)がLFP//黒鉛パウチより25〜30%低く、今後もこの差を保つ目標だと記しています事実(企業の整理・目標。前提の年や規模は本文から確認できず)[1]未確定/将来。
  • Vaalmaらの2018年の論文は、ナトリウムイオン電池のコスト優位は「よく語られるが、詳しくは検討されてこなかった」として、BatPaCでセルと電池の材料コストを解析しています事実[8](抄録の記載)。

同じロードマップの中にも、前提の異なる二つの見方がある(LFPと同程度/LFPより低い)ため、本稿は「ナトリウムのほうが安い」とも「高い」とも断定しません。 ハードカーボンについては、ロードマップは、黒鉛の価格が1トンあたり500〜2000米ドルで、ハードカーボンの一般的な前駆体(セルロースやスクロース)の価格と同程度であるにもかかわらず、ハードカーボンのコストは黒鉛よりかなり高いと述べています事実[1]。 最近の$/kWhの実勢価格は、公的機関の統計で確認できるものを、本稿では見つけられませんでした(確認できなかった項目)。

9. 実用化の状況 ― 企業の発表と、独立に確認できること

最も情報が多いのは CATL です。以下はすべて CATL の公式発表(企業の主張)であり、基準・条件が書かれていない数字が含まれます。 独立の検証が見つかったものは、別に示します。

CATL のナトリウムイオン電池に関する公式発表(企業の主張) ※ すべて CATL の発表。独立の検証ではありません。最右の欄は計画で、実績ではありません。 2016年 2025年4月 2025年9月 2026年2月 2026年6月 計画 ナトリウムイオン 電池の研究を 開始したと説明 Naxtraを発表 最大175 Wh/kg と主張。24 V 始動用も発表 中国の国家規格 GB 38031-2025 の認証を取得 と発表 Changanと量産 乗用車を発表。 市場投入は 2026年中ごろ予定 蓄電システム TENER Sodium を発表。 1モジュール 30 MWh超 2026年9月 中国で最初の納入 2026年末 全面量産入り 2027年6月 海外の納入開始 約10年の研究 出典[10] 出典[11] 出典[12] 出典[14] 出典[13・14] ※ 2026年4月(出典[13])の発表でも「2026年末までに全面量産入り」と説明されている。9月の納入開始が実際に行われたかは、公式資料で確認できなかった。 ※ 研究開始の年と投資額は[12][14]の記載。投資額は通貨の違う記述が並ぶため、本稿は換算しない([12]は100億元近く、[14]は12億ユーロ近くと記載)。 ※ 6区分への整理は本記事によるもので、CATLの発表のすべてを網羅した年表ではありません。
図6 概念図(ベクター作図)。CATLの公式発表[10〜14]を年月順に抜き出したもの。すべて企業の主張で、最右欄は計画(未確定/将来)です。実績の確認ができた項目ではありません。

(1) 乗用車向け(Naxtra)

項目CATLの発表内容確認できなかった点
2025年4月21日の発表Naxtra乗用車用電池が175 Wh/kg、航続500 km、10,000サイクル超、−40℃で90%の使用可能出力、−40〜+70℃の動作温度範囲を主張。24 V重量トラック用始動電池は8年超の寿命、鉛蓄電池に比べライフサイクルコストを61%削減と主張事実[10]175 Wh/kgの基準(セルかパックか)。10,000サイクルの条件(放電深度、温度、レート、容量保持率の終点)。航続500 kmの車種・条件
2025年9月8日の発表Naxtraが国家標準GB 38031-2025(電動車用駆動電池の安全要求)の認証を、ナトリウムイオン電池として世界で初めて得たと発表。試験は中国汽車技術研究センター(CATARC)のNEV試験センターの第三者試験で、セル・パックとも全項目に合格したと記載。標準は2026年7月1日に施行とCATLは記載事実[11]試験報告書の公開。各試験の条件・結果の数値
2026年2月5日の発表Changan との量産乗用車を発表。市場投入は2026年中ごろ。純電気で400 km超。−30℃で同等のLFPの約3倍の放電出力、−40℃で容量維持率90%超、−50℃でも安定した出力と主張。押しつぶし・穿孔・のこぎりによる試験で発煙・発火なしと主張事実[12]「同等のLFP」の仕様。試験の条件。実車の販売開始

すべて企業の発表です。表の[10][11][12]は参考資料の番号。

(2) 蓄電システム向け(TENER Sodium)

2026年6月22日に CATL は、ドイツ・ミュンヘンで蓄電システム「TENER Sodium」を発表しました。 リリースは、1モジュールあたり30 MWh超、蓄電時間1・2・4・6・8時間に対応、LFP版と同じ設置面積で互換、2026年末までに累積出荷1 GWh、中国での最初の納入は9月、国際向けの納入は2027年6月から、と記しています事実[14]。 同リリースは、福鼎の拠点で年40 GWhの生産能力を追加(投資50億元)、山東省の済寧で160 GWhを計画、とも書いています(計画分は未確定/将来)。 また、2026年4月に HyperStrong との3年間・60 GWhの契約を結んだと記しています事実[14](企業の発表。契約内容は本稿では確認できていません)。 2026年4月の別の発表(出典[13])では、「水分の極端な制御」などの4つの障害を解決し、「2026年末までに全面量産に入る」と述べています未確定/将来。

同リリースは、システムの工夫として、ナトリウム電池の広い電圧範囲に対応する双方向DC電圧調整(システム往復効率が約2%向上)、なだらかに傾く電圧曲線を利用したBMSのSOC推定、補機電力の削減(平均2%から1%へ)を挙げています事実[14]。 いずれも企業の主張で、独立した測定結果は見つかりませんでした。

(3) 独立に確認できること

企業の発表とは別に、市販のナトリウムイオン電池を第三者が調べた研究が出ています。ただし対象はCATLの製品ではなく、小型の18650セルです。

  • サイクル寿命:Sandia国立研究所などの共著による論文[7](2025年10月公開、EES Batteries 2巻、2026年)は、中国の2社(Tycorun、Hakadi)の18650セル(NaNi1/3Fe1/3Mn1/3O2/ハードカーボン)計150個を調べ、バッチ内のばらつきはリチウムイオン電池並みである一方、0.5 C充放電・25℃(一部は20℃)・0〜100% SOCの条件で、350サイクルまでに両社とも容量が80%を下回り、これは同条件でのデータシートの記載の約10分の1だったと報告しています事実。著者は、同じ化学組成でも製造者によって品質に大きなばらつきがありうると結論づけています。
  • 熱暴走:ドイツの連邦材料試験研究所(BAM)の2025年の論文[6]は、市販の18650ナトリウムイオンセルを窒素雰囲気で加熱(15 K/分)し、SOC 30%でも穏やかな熱暴走が起こること、満充電では熱暴走のパラメータの多くがLFPセルと同程度で、圧力上昇はより大きいこと、ジェリーロールの噴出傾向が強いこと、を報告しています事実。著者は、これらのセルをリチウムイオン電池と同列に分類すべきだとしています。

つまり、「ナトリウムなので本質的に安全」という説明は、独立の試験では支持されていません。CATLは「材料レベルで助燃要因をなくす」と述べていますが[10]、前述のGB 38031-2025の試験結果の数値は公開されておらず、BAMが調べたのは別の(Ni・Fe・Mn系の)セルです。 どちらの結果も、特定の製品の安全性を判定するものではありません。電池の火災・熱暴走一般は、本シリーズ『熱暴走と電池の安全』編を参照してください。

(4) 規格の整備状況

国際規格では、IEC TC 21(二次電池)で、産業用ナトリウムイオン電池の安全要求(IEC 63635)と、電気自動車の駆動用ナトリウムイオンセルの規格(IEC 63591、第1部:性能試験、第2部:安全要求と試験方法)の審議が進んでいます。 英国規格協会(BSI)の公開ページでは、これらはいずれもコメント募集用のドラフト(DC)として2025年6月と2026年8月の日付で掲載されています事実[15〜17]。 本稿の調査では、IEC の公式ページで制定済みの規格として確認できませんでした未確定/将来。

素材技術者の読みどころ:同じ「名前」の電池が、別の品質で出てくる

Sandia 国立研究所などの論文[7]が調べた2社のセルは、正極がどちらもNaNi1/3Fe1/3Mn1/3O2、負極がハードカーボンで、化学組成の「名前」は同じです。 それでも同論文は、バインダー(PVDFかSBRか)と電解液の組成が違い、その結果としてSEIの性質が違うこと、 そして寿命は構成の違いより上限電圧の設定の影響が大きく見えること、さらに2社とも寿命がデータシートの記載より大幅に短いことを報告しています事実。

材料技術者の読みとしては、正極・負極の「組成名」だけでは電池の品質は決まらず、バインダー、電解液の添加剤、使う電圧範囲といった周辺の材料と運転条件が、寿命の見え方を左右するということになります(本記事による解説)。 ロードマップが述べるように、ナトリウム系ではSEI成分が溶けやすく、遷移金属の溶出の影響も異なるため、リチウムイオン電池の経験がそのまま当てはまるとは限りません事実[1]。 素材メーカーにとっては、材料単体の性能表より、バインダー・電解液・運転電圧を揃えた「評価条件」を示せることが採用の入口になる、と読めます。

10. 課題(エネルギー密度、サイクル、規格)

三つの課題と、資料が示すこと(本記事による整理) エネルギー密度 サイクル寿命 規格・試験法 ・セルの値は設計で大きく違う Faradion 160 Wh/kg[1] 市販18650 97.5 Wh/kg[6] ・ポリアニオンは骨格が重い 理論容量120〜130 mAh/g ・ハードカーボンの容量は 平均約300 mAh/g[1] 確認できず:CATLの175の基準 ・市販18650 2銘柄は350回で 80%未満[7](0.5 C・25℃) ・Faradion 3000回(企業データ、 20%劣化まで・80% DOD・ ±1 C)[1] ・CATLは10,000回超と主張 (条件の記載なし)[10] 条件が違う数字が並ぶ ・IEC 63635(産業用の安全) ドラフト段階[15] ・IEC 63591-1/-2(車載用の 性能・安全)もドラフト[16・17] ・熱暴走試験法の整備が必要 とBAMが指摘[6] 制定済みとは確認できず ※ 3つに整理したのは本記事によるもので、業界で定まった課題一覧ではありません。数字の基準は各資料の記載に従います。 ※ 図中の[ ]は参考資料の番号。
図7 概念図(ベクター作図)。三つの課題について、公表資料が示す数値と、確認できなかった点を並べたもの。数値は出所・条件が異なり、優劣を示すものではありません。

(1) エネルギー密度

セルの値は設計・世代で大きく異なります(第8章)。材料面では、ポリアニオンの重い骨格、ハードカーボンの容量(実測で平均約300 mAh/g)、初回の不可逆容量を補うための正極の余剰が効いています事実[1]。 長距離EVや一部のモバイル機器に向きにくい、というロードマップの整理が、いまも直ちに覆ったとは、独立の資料では確認できていません。

(2) サイクル寿命

第9章のとおり、数字の条件が揃っていません。独立研究では、市販の18650セルのサイクル寿命がデータシートの約10分の1でした[7]。 一方、Faradion は80% DODで3000サイクル(20%劣化まで)、CATLは10,000サイクル超を主張しています[1・10]。 これらは別の条件の別のセルの値で、どれが「ナトリウムイオン電池の寿命」かは決められません。 寿命の評価は、劣化の終点、放電深度、温度、レート、上限電圧を明記して比べる必要があります(電池の評価は本シリーズ『電池の評価と劣化』編を参照)。

(3) 規格・試験法

国際規格はドラフト段階で、輸送では国連の「危険物輸送の勧告」への位置づけや、試験法の整備が議論されています(BAMの論文[6]が言及)。 また、電池を載せる用途ごとに適用する規格が違うため、ナトリウムイオン電池を既存のリチウムイオン電池向けの規格で扱ってよいかは、用途と地域ごとの確認が要ります(本記事による解説。個別製品の適合可否は判断しません)。

(4) そのほかの課題

  • 材料の調達:バナジウム系ポリアニオンは、バナジウムの調達と取り扱いが課題です[1]。ハードカーボンは、前駆体と焼成条件で性能が変わり、供給の標準化が必要です(『ハードカーボン負極』編)。
  • 界面の安定性:SEIの成分が溶けやすく、遷移金属の溶出が界面に影響します[1]。
  • 製造の水分管理:第7章のとおりです[1・13]。
この記事のまとめ
  • ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と同じロッキングチェア原理で、運ぶイオンだけを替えた電池です。Na+はLi+より半径が34%大きく、負極にハードカーボン、集電体にアルミ箔を使う設計になります事実
  • 同じ骨格でLiをNaに替えると理論容量は約9%下がり、ポリアニオン系は120〜130 mAh/g前後です本稿の計算
  • 正極は三つの系統があり、難しさの種類が違います(相変化、欠陥と水、骨格の重さ)事実
  • セルの値は設計で大きく違います。2020年中ごろのFaradionのセルは160 Wh/kg、市販の小型18650は97.5 Wh/kg、CATLは最大175 Wh/kgを主張しています(基準は資料ごとに違う)事実
  • CATLは量産と蓄電システムの出荷計画を発表しましたが、いずれも企業の主張・計画です未確定/将来。独立研究では、市販18650セルの寿命がデータシートの約10分の1、熱暴走もリチウムイオン電池と同列に扱うべきと報告されています事実
  • 国際規格(IEC 63635・63591)はドラフト段階です未確定/将来

11. 評価・標準の読み方

初めて読むときは、「どの数字が大きいか」より先に、次の順番で比較の条件を揃えてください。以下は本記事の編集上の確認手順で、規格が定める合格値や試験条件ではありません。

① 何を測ったか
セルのエネルギー密度、低温容量、寿命、原価。単位と、材料・部品・完成システムのどこを測った値かを確認します。
② どの条件か
正負極の組合せ、温度、Cレート、セル構造、製造規模。条件が異なる結果は、まず別の結果として読みます。
③ 比較で間違えやすい点
資源が豊富であることと、現時点の完成セルが安いことを分ける
④ 規格の役割は何か
規格番号・名称・発行年・適用範囲を発行機関の資料で確認します。試験方法、安全性、相互接続、管理体制のどれを扱う規格かを分けて読みます。規格名の記載だけで、試験実施・適合・認証まで済んでいるとは判断しません。

比較を始めるためのメモ:対象/単位/測定条件/試料数とばらつき/比較対象/規格の版/確認できない点を、ひとまとまりで残しましょう。公開概要しか確認できない規格の数値条件や合格基準は、推測して補いません。

12. 用語集

ナトリウムイオン電池(SIB)
リチウムの代わりにナトリウムイオンを運ぶ二次電池。
ロッキングチェア型
イオンが正負極のあいだを行き来して充放電する電池の方式。
P2・O3
層状酸化物でNaが入る席の違いを表すDelmas表記。P=三角柱、O=八面体、数字は積層の周期。
プルシアンブルー類縁体(PBA)
遷移金属をシアン化物が橋渡しする開いた骨格の化合物。空孔と水が性能を左右する。
ポリアニオン
PO4などの多原子の陰イオンで金属を連結した骨格。構造が安定で、重い。
NVP・NVPF・NFPP
Na3V2(PO4)3、Na3V2(PO4)2F3、Na4Fe3(PO4)2P2O7の略称。
ハードカーボン
高温でも黒鉛化しない炭素。ナトリウムイオン電池の負極に広く使われる。
集電体
電極の活物質から電流を外へ導く金属箔。
BOM
部材表。セルの部材費の合計を指す。
DOD
放電深度。容量のうち何%を使うか。
熱暴走
発熱が発熱を呼び、制御できなくなる現象。
BatPaC
米国の研究所が公開している電池のコスト・性能の計算モデル。

13. 参考資料(一次情報)

  1. Tapia-Ruiz ら(Faraday Institution の NEXGENNA コンソーシアムほか)"2021 roadmap for sodium-ion batteries," Journal of Physics: Energy 3, 031503 (2021)(オープンアクセス、英語) — doi.org/10.1088/2515-7655/ac01ef
  2. Sadan ら"Overcoming copper-induced conversion reactions in nickel disulphide anodes for sodium-ion batteries," Nanoscale Advances 6, 2508–2515 (2024)(オープンアクセス、英語) — doi.org/10.1039/d3na00930k
  3. Yabuuchi ら"P2-type Nax[Fe1/2Mn1/2]O2 made from earth-abundant elements for rechargeable Na batteries," Nature Materials 11, 512–517 (2012) — doi.org/10.1038/nmat3309
  4. Lu ら(Goodenough ら)"Prussian blue: a new framework of electrode materials for sodium batteries," Chemical Communications 48, 6544 (2012) — doi.org/10.1039/c2cc31777j
  5. Kim ら(Kang ら)"New iron-based mixed-polyanion cathodes for lithium and sodium rechargeable batteries: combined first principles calculations and experimental study," Journal of the American Chemical Society 134, 10369–10372 (2012) — doi.org/10.1021/ja3038646
  6. Böttcher ら(BAM)"Sodium-ion battery research @ BAM (I): investigating the thermal runaway behaviour of commercial sodium-ion battery cells," Sustainable Energy & Fuels 9, 5832–5838 (2025)(英語) — doi.org/10.1039/d5se00687b
  7. Wittman ら(Sandia 国立研究所、ハワイ大学ほか)"Initial characterization and cycling of two batches of commercial hard-carbon/NaxNiyFezMn1−y−zO2 sodium ion 18650 batteries as a potential replacement for lithium-ion batteries," EES Batteries 2, 11–22 (2026)(オープンアクセス、英語) — doi.org/10.1039/d5eb00161g
  8. Vaalma ら(Passerini ら)"A cost and resource analysis of sodium-ion batteries," Nature Reviews Materials 3, 18013 (2018)(抄録のみ確認) — doi.org/10.1038/natrevmats.2018.13
  9. Jian ら"Carbon coated Na3V2(PO4)3 as novel electrode material for sodium ion batteries," Electrochemistry Communications 14, 86–89 (2012)(題名のみ確認) — doi.org/10.1016/j.elecom.2011.11.009
  10. CATL"Naxtra Battery Breakthrough & Dual-Power Architecture: CATL Pioneers the Multi-Power Era"(2025年4月21日、英語) — catl.com
  11. CATL"CATL's Naxtra Battery Passes New National Standard Certification"(2025年9月8日、英語) — catl.com
  12. CATL"CATL and CHANGAN Launch World's First Mass-Production Sodium-Ion Passenger Vehicle"(2026年2月5日、英語) — catl.com
  13. CATL"CATL Unveils Six Major Innovations: Multi-Chemistry Systems to Redefine New Energy Mobility Experience"(2026年4月21日、英語) — catl.com
  14. CATL"CATL Debuts World's First Field-Validated Sodium-Ion BESS, Bringing Sodium Storage to Commercial Reality"(2026年6月22日、英語) — catl.com
  15. BSI(英国規格協会)25/30512501 DC BS EN IEC 63635 "Secondary cells and batteries containing alkaline or other non-acid electrolytes. Safety requirements for secondary sodium ion cells and batteries for use in industrial applications"(コメント募集用ドラフト、掲載日2025年6月13日) — knowledge.bsigroup.com
  16. BSI(英国規格協会)26/30569472 DC BS EN IEC 63591-1 "Secondary sodium-ion cells for the propulsion of electric road vehicles - Part 1: Performance testing"(コメント募集用ドラフト、掲載日2026年8月14日) — knowledge.bsigroup.com
  17. BSI(英国規格協会)26/30569726 DC BS EN IEC 63591-2 "Secondary sodium-ion cells for the propulsion of electric road vehicles - Part 2: Safety requirements and test methods"(コメント募集用ドラフト、掲載日2026年8月21日) — knowledge.bsigroup.com

14. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
Na+ の半径はLi+より34%大きい(1.02 Å 対 0.76 Å)。NIBの基本原理と材料はLIBと似ており、既存の製造ラインで市場に出やすい。0 Vで保管・輸送できる。企業が選ぶ正極が一致していない(Faradion:O3/P2混相のNa–Mn–Ni–Ti–Mg酸化物、Tiamat:Na3V2(PO4)2F3、HiNa:O3型Na–Cu–Fe–Mn酸化物、Altris:PBA、Natron:水系のPBA)。Faradionのセルの低い部材コストの根拠にアルミ集電体が挙げられていること2021 roadmap for sodium-ion batteries[参考資料 1]https://doi.org/10.1088/2515-7655/ac01ef事実
P2・O3の表記と席の違い、P2は出力向き・O3は容量向きという整理。わずかなMg2+やTi4+の添加で性能が変わる現象が未解明であること。ポリアニオンのNVPが2個のNaを3.4 Vで、NVPFが平均3.9 V・理論容量128 mAh/gであること。ポリアニオンは重いアニオンのため層状酸化物より容量が小さいこと。PBAの一般式、空孔1 mol%で最大Na量が3〜4 mol%減ること、最良のPBAが120 mAh/gを800サイクル超、水系で8000サイクルだが容量60〜80 mAh/g、脱水で体積が約18%変わり、空気中では数分で水和すること。Mn酸化物系挿入型電池でDMD過程が容量損失の最大30%を占めうるという推定同ロードマップ(第1章・第6章)[参考資料 1]https://doi.org/10.1088/2515-7655/ac01ef事実
電解液の代表例(1 M NaPF6 in EC/DMC、1 M NaClO4 in EC/DEC)。NaClO4は酸化性が強く商用不可、NaPF6は水分でHFを生じる、NaFSI・NaTFSIは単独ではアルミ集電体を腐食しコストも高い、ナトリウム塩は融点が高く乾燥しやすい。SEI成分が溶けやすく界面の安定性がLIBより劣る。ハードカーボンの実測容量が200〜450 mAh/g(平均約300)、黒鉛の372 mAh/gとの対比。合金系の体積膨張。ハードカーボンのコストが黒鉛よりかなり高く、黒鉛は500〜2000米ドル/トン同ロードマップ(第2章・第4章・第6章)[参考資料 1]https://doi.org/10.1088/2515-7655/ac01ef事実
Faradionのセルが、NMC//黒鉛とLFP//黒鉛の中間のエネルギー・出力を示すこと。表2の値(NMC//黒鉛:240〜270 Wh/kg・670〜750 Wh/L、LFP//黒鉛:140〜175 Wh/kg・240〜360 Wh/L、Faradion:160 Wh/kg・290 Wh/L・32 Ahパウチ、サイクル寿命3000回〔20%劣化まで・80% DOD・±1 C〕)。値は2020年中ごろ時点の企業データを含むこと。部材コストがLFPパウチより25〜30%低い(企業の整理)こと、コストモデルではLFPと同程度でNMCより低いとされること、ナトリウムイオン電池は消費者向け機器の一部と長距離EVには向きにくいこと同ロードマップ(第7章・第8章)[参考資料 1]https://doi.org/10.1088/2515-7655/ac01ef事実(企業データを含む)
アルミ集電体は低電圧でナトリウムと適合し、SIBの報告ではアルミが負極集電体の有力候補だが、銅が一般に使われていることSadanら 2024[参考資料 2]https://doi.org/10.1039/d3na00930k事実
P2-Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2が可逆容量190 mAh/g(Fe3+/Fe4+)を示し、それまでの層状材料は概ね100 mAh/gに限られていたことYabuuchiら 2012[参考資料 3]https://doi.org/10.1038/nmat3309事実
PBAのNa挿入で100 mAh/g近く、炭酸エステル電解液で30サイクルの容量低下なしLuら 2012[参考資料 4]https://doi.org/10.1039/c2cc31777j事実
Na4Fe3(PO4)2(P2O7)が実測129 mAh/g、約3.2 V(対Na)で、高出力・小さい体積変化・高い熱安定性を示すことKimら 2012[参考資料 5]https://doi.org/10.1021/ja3038646事実
市販18650ナトリウムイオンセル(1300 mAh・3.0 V・40 g、97.5 Wh/kg)とLFPセル(1600 mAh・3.2 V・42 g、122 Wh/kg)の値。NFMO111正極とハードカーボン様の負極。SOC 30%でも穏やかな熱暴走、満充電ではLFPと同程度でより大きい過圧、ジェリーロール噴出の傾向。リチウムイオン電池と同列に分類すべきという結論。国連の危険物輸送の分類体系・38.3試験に含める必要への言及BAM 2025[参考資料 6]https://doi.org/10.1039/d5se00687b事実
Tycorun・Hakadiの18650セル計150個(NaNi1/3Fe1/3Mn1/3O2/ハードカーボン)で、バッチ内のばらつきがリチウムイオン電池並み、0.5C・25℃で350サイクルまでに80%未満、データシートの約10分の1、バインダー(PVDFとSBR)・電解液・SEIの違い、寿命は上限電圧の影響が大きく見えることWittmanら 2026[参考資料 7]https://doi.org/10.1039/d5eb00161g事実
Vaalmaらが、BatPaCモデルでセル・電池の材料コストを解析し、負極集電体の箔の材料を替えたときの影響も検討していること。ナトリウムイオン電池のコスト優位は詳しく検討されてこなかったとしていることVaalmaら 2018(抄録)[参考資料 8]https://doi.org/10.1038/natrevmats.2018.13事実
NVPの炭素被覆を扱う2012年の論文があること(題名による)Jianら 2012(題名のみ確認)[参考資料 9]https://doi.org/10.1016/j.elecom.2011.11.009事実
CATLのNaxtra発表(2025年4月21日):175 Wh/kg、航続500 km、10,000サイクル超、−40℃で90%の使用可能出力、−40〜+70℃、24 V始動用電池の8年超寿命・ライフサイクルコスト61%削減という主張CATL 2025年4月21日[参考資料 10]https://www.catl.com/en/news/6401.html事実(企業の主張)
NaxtraがGB 38031-2025の認証を得た(ナトリウムイオン電池として世界初と同社が記載)こと、CATARCのNEV試験センターの第三者試験、標準の施行日2026年7月1日(同社の記載)CATL 2025年9月8日[参考資料 11]https://www.catl.com/en/news/6563.html事実(企業の主張)
Changanとの量産乗用車の発表(2026年2月5日)、最大175 Wh/kg、400 km超、−30℃で同等のLFPの約3倍の放電出力、−40℃で容量維持率90%超、押しつぶし・穿孔・のこぎり試験で発煙・発火なし、研究開始が2016年で投資が100億元近くCATL 2026年2月5日[参考資料 12]https://www.catl.com/en/news/6720.html事実(企業の主張)
2026年4月21日の発表:ナトリウムイオン電池の量産で「水分の極端な制御」「ハードカーボンでのガス発生」「アルミ箔の密着」「自己形成負極」の4つの障害に対処したこと、2026年末までに全面量産に入る予定であることCATL 2026年4月21日[参考資料 13]https://www.catl.com/en/news/6811.html事実(企業の主張)
TENER Sodium(2026年6月22日):1モジュール30 MWh超、蓄電時間1〜8時間、LFPと同じ設置面積で互換、双方向DC電圧調整によるシステム往復効率の約2%向上、補機電力2%から1%、研究開始が2016年で投資が12億ユーロ近く、福鼎で年40 GWh追加(50億元)、HyperStrongとの3年60 GWh契約(2026年4月)。「NFPP」の製造コストが下がる見通しへの言及CATL 2026年6月22日[参考資料 14]https://www.catl.com/en/news/6861.html事実(企業の主張)
2026年9月の中国での最初の納入、2026年末の累積出荷1 GWh、2027年6月の国際向け納入開始、2026年末の全面量産入り、済寧での160 GWh計画CATLの計画であり、実績ではない。納入が行われたかは公式資料で確認できなかった[参考資料 14]https://www.catl.com/en/news/6861.html未確定/将来
IEC 63635(産業用)、IEC 63591-1・-2(車載用)がBSIのコメント募集用ドラフトとして掲載されていること(掲載日 2025年6月13日、2026年8月14日、2026年8月21日)BSI Knowledge の各ページ[参考資料 15]https://knowledge.bsigroup.com/products/bs-en-iec-63635-secondary-cells-and-batteries-containing-alkaline-or-other-non-acid-electrolytes-safety-requirements-for-secondary-sodium-ion-cells-and-batteries-for-use-in-industrial-applications[参考資料 16]https://knowledge.bsigroup.com/products/bs-en-iec-63591-1-secondary-sodium-ion-cells-for-the-propulsion-of-electric-road-vehicles-part-1-performance-testing[参考資料 17]https://knowledge.bsigroup.com/products/bs-en-iec-63591-2-secondary-sodium-ion-cells-for-the-propulsion-of-electric-road-vehicles-part-2-safety-requirements-and-test-methods事実
IEC 63635・63591が制定済みかIEC の公式ページで制定済みの規格として確認できなかったため、制定済みとは書いていない。規格は策定中という位置づけ(見通し)未確定/将来
理論容量の計算(LiFePO4 170、NaFePO4 154、Na3V2(PO4)3 118、Na3V2(PO4)2F3 128、Na4Fe3(PO4)2P2O7 129、Na2Fe[Fe(CN)6] 171 mAh/g)。LiをNaに替えると約9%小さいこと。ポリアニオンの式量が約420〜620であること本稿の計算。原子量(Li 6.94、Na 22.990、Fe 55.845、V 50.942、P 30.974、O 15.999、F 18.998、C 12.011、N 14.007)と、理論容量=電子数×26801÷式量(mAh/g)を前提とする。材料基準の値で、セルのエネルギー密度ではない本稿の計算
アルミ箔の面積あたりの重さが、同じ厚さの銅箔の約30%(8 µmで銅71.7 g/m²・アルミ21.6 g/m²)であること本稿の計算。アルミ2.70 g/cm³、銅8.96 g/cm³(標準的な物性値)と、同じ厚さを仮定した比較。電池全体の重さ・コストへの効果は設計に依存する本稿の計算
0 Vでの保管・輸送が可能な理由が、集電体にアルミを使えることと関連するという読み取り(銅集電体では過放電時に銅の溶出が起こりうる)推測。ロードマップは0 Vで保管・輸送できることを記すが、理由は述べていない。本稿は一次情報で直接確認していない(解説)解説
CATLの正極の種類(Naxtra、TENER Sodium)CATLの発表に記載がなく、確認できなかったため断定していない。「NFPP」の言及はあるが、定義もTENER Sodiumの正極との関係も書かれていない解説
CATLの175 Wh/kgの基準(セルかパックか)、10,000サイクルの条件、GB 38031-2025の試験結果の数値、独立機関による検証、TENER Sodiumの実際の納入、$/kWhの実勢価格本稿の調査範囲では公開された一次情報に確認できなかったため記載していない解説
リチウムイオン電池の負極側で銅箔を使う理由(低電位でのリチウム–アルミの合金化)一般的な理解であり、本稿では一次情報で直接確認していない(図1の注記)解説
三つの正極系統の難しさの種類(構造の動き、欠陥と水、重さと電子伝導)、水分管理が量産の入口になるという読み取り、粉体の含水率規格が歩留まりを左右するという整理、図5・図6・図7の整理、バインダー・電解液・運転電圧が寿命の見え方を左右するという読み取り公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない解説
図1・図2・図3・図5・図6・図7が実際の構造・設計図・測定結果ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像と図4がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月10日/出典は一次情報(査読論文、オープンアクセスの共著ロードマップ、企業の公式ニュースリリース、規格団体の公開ページ)に限定しています。 企業の発表は「企業の主張」として、独立した研究と区別しています。構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 CATLの正極の種類、175 Wh/kgの基準、10,000サイクルの条件、GB 38031-2025の試験結果、TENER Sodiumの納入実績、IEC 63635・63591の制定、$/kWhの実勢価格については、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用の概念図です。図1・図2・図3・図5・図6・図7はベクター作図、ヒーロー画像と図4はAI生成イメージであり、いずれも実際の断面写真・顕微鏡像・製品の実物を示すものではありません。