COMPANY PROFILE / ナノテクノロジー
東京エレクトロン
― ナノスケールの回路パターンを「塗る・削る・積む・洗う」ための装置を、先端ロジックとメモリの工場へ供給する半導体製造装置メーカー
東京エレクトロン(Tokyo Electron、以下TEL)が、ナノテクノロジーの文脈で語られるのは、半導体の回路を、数ナノメートル〜数十ナノメートル級の寸法でつくる工程の装置を作っている会社だからです。2026年3月期の売上は2兆4,435億円、従業員は20,236人。このうち、新しい装置の売上(1兆7,754億円)の36%がエッチング、28%が塗布現像、20%が成膜、9%が洗浄と、同社は開示しています。最大の顧客はSamsung Electronics(売上の15.1%)とTSMC(同12.9%)で、地域別では中国が34.1%です。一方で、売上の何割が「ナノ」にあたるかという分け方は、同社は開示していません。装置の売上そのものが、ほぼ全部ナノスケールの加工にかかわる、と読めます。本稿は、同社が何を作り、どこに投資し、誰と組み、どこまでが実績でどこからが計画かを、会社の公式資料の範囲で整理します。投資の助言ではありません。
- 30秒でわかる東京エレクトロンと、ナノテクノロジーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- ナノテクノロジーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(ナノ加工に関わる範囲を中心に)
- ナノテクノロジーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はナノテクノロジーで何を目指しているか
- ナノテクノロジー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかる東京エレクトロンと、ナノテクノロジーでの立ち位置
プライム市場(8035)2022年にプライム市場へ移行(会社の沿革)
TSMC 12.9%2026年3月期の売上に占める割合。子会社を含む
TELは、ナノスケールの回路を自分で作る会社ではなく、顧客(半導体メーカー)の工場で回路を作るための装置を供給する会社です。統合報告書の製造工程図で、同社の製品が示されているのは、成膜、レジストの塗布と現像、エッチング、洗浄、ウェハーの接合、検査(プローバ)で、露光(光で回路を焼き付ける工程)の欄には同社製品の記載がありません 事実。同社は、ナノスケールの加工に必要な工程のうち、露光の前後を挟む「塗る(レジスト)・削る(エッチング)・積む(成膜)・洗う」を束ねているのが特徴で、「EUV(極端紫外線)露光に使う塗布現像装置のシェアは100%」と会社は説明しています(会社の推計)事実。ただし、この「100%」は第三者の統計ではなく、TELの自己推計です。本稿は事実としては扱わず、会社の主張として書きます。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:会社の正式な英語名は Tokyo Electron Limited(略称 TEL)、日本語表記は東京エレクトロンです。TELには「TEL」を冠した子会社・拠点が多数あります(Tokyo Electron Miyagi、Tokyo Electron Kyushu、TEL Technology Center America など)。また、名前の似たTokyo Electron Device(東京エレクトロンデバイス)は別の上場会社で、本稿の対象ではありません。ロゴ画像は同社の公式サイト(tel.com)が公開しているものを取得しました。
公式サイト:https://www.tel.com/3. ナノテクノロジーの世界で、この会社はどこにいるか
TELの類型はナノ加工・装置です。同社の公式サイトは、開発拠点を「ナノスケールの技術要求の複雑化・多様化に応える」場と説明しています 事実。ただし、会社の資料は「ナノテクノロジー」という分類で事業を分けていません(出典:出典8 https://www.tel.com/rd/base/index.html)。以下は、本稿が「ナノスケールの回路を加工する工程」の切り口で、同社の開示を整理した表です。
| 工程(製品群) | ナノ加工での役割 | 新装置売上に占める割合(2026年3月期) | 区分 |
|---|---|---|---|
| エッチング | レジストで描いたパターンに沿って、膜を削って溝や穴をつくる。DRAMやNANDでは深く細い穴(高アスペクト比)を削る | 36%(約639億円×10。下の注を参照) | 事実 |
| 塗布現像(コータ/デベロッパ) | ウェハーにレジストを均一に塗り、露光後に現像してパターンを出す。EUV露光と組み合わせて使う | 28% | 事実 |
| 成膜 | 酸化膜・窒化膜・金属膜などを、CVDやALD(原子層堆積)で積む | 20% | 事実 |
| 洗浄 | エッチ後に残るレジストや微粒子を除く | 9% | 事実 |
| ウェハープローバ・その他 | 回路ができたウェハーの検査(プローバ)など | プローバ5%、その他2% | 事実 |
割合は新装置(半導体製造装置)の売上1兆7,754億円に対するもので、サービス・中古装置・改造の売上(Field Solutions、6,260億円)は含みません。金額は、四捨五入された整数の割合を掛けた概算です 本稿の計算。出典:出典5 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_data_section_en.pdf
どの材料・工程・用途が中心かをまとめると、先端ロジック(AI向けの高性能チップ)とDRAM・NAND(メモリ)の「パターンを形成する工程」が中心です。用途別では、2026年3月期の新装置売上のうち非メモリ(ロジック・ファウンドリなど)が59%、DRAMが31%、NANDが10%でした 事実。
4. 会社の規模(ナノ加工に関わる範囲を中心に)
TELは半導体製造装置の大企業です。会社全体は簡潔に示し、ナノ加工に関わる数字は、開示されている製品別・用途別の構成を中心にします 事実。TELは事業セグメントを分けて開示しておらず(本稿が確認した統合報告書の範囲)、ナノテクノロジーだけの売上は非公表です。
| 指標(2026年3月期) | 値 | 注記 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,443,533百万円 | 前期比+0.5%、2期連続で過去最高。前期(2025年3月期)は2,431.5十億円 |
| 営業利益 | 624,936百万円 | 前期比-10.4%。営業利益率25.6%(前期28.7%) |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 574,454百万円 | 過去最高。保有株式の売却益(投資有価証券売却益115,494百万円)を含む |
| 新装置(半導体製造装置)の売上 | 1,775.4十億円 | エッチング36%、塗布現像28%、成膜20%、洗浄9%、プローバ5%、その他2% |
| Field Solutions(改造・中古・部品・サービス) | 626.0十億円 | 中古・改造190.0十億円、部品・サービス435.9十億円 |
| 研究開発費 | 277.9十億円 | 前期比+11.1%(27,849百万円増)。売上比 約11.4%(本稿の計算) |
| 設備投資(会社の図) | 216.0十億円 | 2027年3月期の計画は190.0十億円(会社の見通し) |
| 従業員(連結) | 20,236人 | 2026年3月末。公式サイトの会社概要は20,812人(連結)と記載しており、基準日の違いなどの理由は確認できなかった |
| 地域別売上の構成 | 中国34.1%、韓国22.3%、台湾20.4% | 日本9.8%、北米6.8%、東南アジア・その他3.8%、欧州2.8%。前期の中国は41.7% |
| 主要顧客 | Samsung Electronics 368,079百万円(15.1%) TSMC 315,813百万円(12.9%) | 2社で28.0%(本稿の計算)。子会社向けを含む |
| 保有特許 | 26,592件 | 2026年3月末。LexisNexis PatentSight+の集計(会社の記載) |
出典:出典5 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_data_section_en.pdf 出典2 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter2_en.pdf 出典7 https://www.tel.com/about/summary/
売上の約2割〜3割がナノテクノロジー、といった分け方は、同社は開示していません 未確定/将来。また、本稿の「約6,390億円」などの製品別の金額は、公表された整数の割合(四捨五入)を掛けた概算で、会社の公表額ではありません 本稿の計算。新装置1兆7,754億円とField Solutions 6,260億円の合計は、連結売上(2兆4,435億円)とは一致しません。差の約421億円(本稿の計算)の内訳は、本稿が確認した範囲では説明がありません。
5. ナノテクノロジーにかけているリソース
ナノ加工だけを切り出した人員・研究開発費は開示されていません。以下は、会社全体の開示を、ナノ加工の装置開発に使われる資源として並べたものです。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 従業員20,236人(2026年3月末、連結)、技術者の比率68.9%。研究開発拠点は19(日本8、海外11)。5年間(2025年3月期〜)で世界で1万人を採用する計画。ナノ加工に限った人員は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(研究開発) | 2026年3月期の研究開発費は2,778億円(前期2,500億円)。2027年3月期は3,300億円の見通し。5年間(2025年3月期〜)で1.5兆円以上の計画。製品別の内訳は非公表 | 事実/計画は未確定 |
| 金(設備投資) | 2026年3月期の設備投資は2,160億円。同期に、熊本県合志市と宮城県大和町の開発棟、岩手県奥州市の生産・物流センターが完成。宮城イノベーティブ生産センター(宮城県黒川郡)は2027年夏の完成予定。2027年3月期の設備投資は1,900億円の見通し。5年間で7,000億円以上の計画 | 事実/計画は未確定 |
| 出資・買収・合弁・売却 | TEL Venture Capitalが、スタートアップに出資している(2026年5月のPhosio、2026年8月のAdvance Compositeなどを公式サイトが公表。他は社名を伏せた公表)。2026年6月30日に、米国の2子会社(Tokyo Electron AmericaとTEL Technology Center, America)の合併を発表(7月1日付。グループ内の再編)。2026年3月期に保有株式の一部を売却し、売却益1,155億円を計上。ナノ加工に関わる大型の買収・合弁は、本稿の確認範囲では確認できなかった | 事実/確認できなかった |
| 大学・研究機関・公的資金 | imec(ベルギー)と1995年から協業し、2025年6月に新たな5年間へ更新。ほかの開発拠点・コンソーシアムとして、NY CREATES Albany NanoTech Complex、BRIDG(米)、CEA-Leti(仏)、IME(シンガポール)、産業技術総合研究所。日米の大学連携UPWARDSに参加。2025年9月にインド・ベンガルールに開発拠点を新設し、インドの大学との共同研究を計画。公的資金(補助金など)の受取額は、本稿の確認範囲では確認できなかった | 事実/一部確認できなかった |
出典:出典1 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter1_en.pdf 出典2 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter2_en.pdf 出典3 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter3_en.pdf 出典5 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_data_section_en.pdf 出典6 https://www.tel.com/ir/library/investors-guide/hq95qj0000000734-att/InvestorsGuide_E20260915_rev00.pdf 出典8 https://www.tel.com/rd/base/index.html 出典9 https://www.tel.com/rd/telvc/index.html 出典22 https://www.tel.com/news/ir/2026/20260630_001.html 出典10 https://www.tel.com/news/topics/2025/20250616_001.html 出典21 https://www.tel.com/news/topics/2025/20250905_001.html
主要な製品・設備の状況
| 製品/設備 | 工場・設備/場所 | 規模 | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| 塗布現像装置 CLEAN TRACK LITHIUS Pro DICE | 300mmウェハー用。High NA EUVからDUVまで | 製品表の公称:inline 440 wph(wph=1時間あたり処理枚数。測定条件は表に記載なし) | 発売。2026年9月の資料で、順調に立ち上がり中と会社が説明 | 2025年12月15日 | 14・16・6 |
| ガスクラスタービーム装置 Acrevia | EUV露光後のパターンの寸法・形状の補正 | 生産台数は非公表 | 発売 | 2024年7月8日 | 12 |
| 枚葉成膜 Episode 1 / Episode 2 DMR | 最大8つのプロセスモジュール(Episode 1) | 台数は非公表 | 発売 | 2024年7月8日 | 13 |
| 枚葉成膜 Episode 2 QMR | 4枚同時成膜のモジュール | — | 量産向けの発売を2026年に予定。本稿は発売の確認ができなかった | 2024年7月発表時点の予定 | 13 |
| ウェハー接合・剥離 Synapse、Ulucus L / LX | 先端パッケージ・3D積層向け | 台数は非公表 | 発売(Ulucus LXは2024年12月) | 2024年12月9日 | 15・2 |
| 宮城イノベーティブ生産センター | 宮城県黒川郡 | 生産能力は非公表 | 建設中。完成は2027年夏の予定 | 2026年9月15日の資料 | 6 |
生産能力(台数/年)、装置の累計販売台数は、製品別には開示されていません。設置台数は会社全体で約10万台(2026年3月末、会社の推計)です。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1963年11月11日 | Tokyo Electron Laboratories, Inc.を設立(東京放送の出資)。1964年に米国製の拡散炉の輸入・販売権を取得 | 半導体の「炉」の商社から始まった |
| 1968年 | 拡散炉の国内生産を開始(TEL-Thermco Engineering) | 商社から製造業への転換 |
| 1980〜1984年 | 1980年に東京証券取引所の第二部、1984年に第一部へ上場。1986年に装置の輸出を開始 | 海外顧客への展開 |
| 1990年 | フラットパネルディスプレイ向けの製造装置の開発・販売に本格参入 | 半導体以外へ広げた時期 |
| 1995年 | imecとの協業を開始 | 露光周辺のパターニング技術の共同開発の起点(会社の説明) |
| 2021年9月 | 宮城技術革新センター(宮城県大和町)が完成 | 先端装置の開発拠点 |
| 2023年6月9日 | 3D NANDの400層超向けに、10µm深のメモリチャネルホールを33分で削るエッチング技術を発表。誘電体エッチングを初めて極低温領域へ。地球温暖化係数を従来技術比84%削減(会社発表) | 極低温エッチの起点。VLSI Symposium 2023で発表予定とされた |
| 2024年7月8日 | Acrevia(ガスクラスタービーム装置)と、枚葉成膜 Episode 1 / Episode 2 DMRを発売。Episode 2 QMRの発売予定を発表 | EUV後のパターン補正、メモリ向け成膜 |
| 2024年12月9日 | Ulucus LX(レーザーによるウェハー剥離)を発売 | 貼り合わせ後のウェハーを薄くする工程を置き換える提案 |
| 2025年6月16日 | imecと、2nm世代超を見据えた協業を新たな5年間に更新 | High NAパターニング、CFET向けの成膜・エッチを重点に |
| 2025年9月5日 | インド・ベンガルールに新開発拠点を発表 | 装置設計・シミュレーションのソフト開発、現地の大学との共同研究 |
| 2025年12月15日 | CLEAN TRACK LITHIUS Pro DICE(塗布現像装置)と、バッチ式熱処理装置EVAROSを発売 | High NA EUV対応の塗布現像 |
| 2026年4月16日 | デバイスプローバ Prexa SDP を発売 | 先端パッケージ向けの検査 |
| 2026年9月15日 | 統合報告書2026を公表 | 本稿の主な出典 |
出典:出典1 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter1_en.pdf 出典8 https://www.tel.com/rd/base/index.html 出典11 https://www.tel.com/news/product/2023/20230609_001.html 出典12 https://www.tel.com/news/product/2024/20240708_002.html 出典13 https://www.tel.com/news/product/2024/20240708_001.html 出典15 https://www.tel.com/news/product/2024/20241209_001.html 出典10 https://www.tel.com/news/topics/2025/20250616_001.html 出典21 https://www.tel.com/news/topics/2025/20250905_001.html 出典14 https://www.tel.com/news/product/2025/20251215_002.html 出典19 https://www.tel.com/product/telindy.html 出典6 https://www.tel.com/ir/library/investors-guide/hq95qj0000000734-att/InvestorsGuide_E20260915_rev00.pdf
7. 今後の計画
営業利益率35%以上
ROE 30%以上会社の目標。2026年3月期の営業利益率は25.6%、ROEは29.6%
営業利益4,580億円上方改定後(2026年9月15日付の資料)。前期上期は売上1兆1,796億円
エッチ+25%超
先端パッケージ+70%超前期比の会社見通し。エッチは通期1兆円が「手の届く範囲」と説明
設備投資1,900億円2027年3月期の見通し。5年間で研究開発1.5兆円以上、設備投資7,000億円以上
接合関連装置 5,000億円会社が示した目標。実績ではない
上の数値は、すべて会社の見通し・目標です 未確定/将来。会社は、2026年3月期の営業利益率が前期より下がった理由として、先端装置向けの研究開発を積極的に進めたことと、原材料価格・人件費の上昇を挙げています 事実。営業利益率の目標の達成を難しくする要因として、米中の緊張に伴う規制・関税、中東情勢、為替、顧客の投資計画の変化を、社長メッセージが挙げています。
次はいずれも、本稿が確認した公式資料に記載がありません 未確定/将来。
ナノ加工に限った売上・利益/製品別の生産能力と累計販売台数/High NA EUV向け製品の顧客別の導入状況/Episode 2 QMRの発売の発表/研究開発費の製品別の内訳/公的補助金の受取額/輸出規制が売上に与えた具体的な金額(リスクの記載は一般的な表現にとどまる)。
8. この会社はナノテクノロジーで何を目指しているか
会社が直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 露光の前後を挟む4工程(塗る・削る・積む・洗う)を束ねて、パターンの出来栄え全体を最適化する | 統合報告書:「パターニングに必要な4つの主要工程の先端製品を組み合わせて、全体最適の解を提供する」と記載。研究開発では、塗布現像・マスク・計測と補正を含む「統合的なプロセス設計」を中心に置くと説明 | 事実(会社の説明) |
| 次のトランジスタ構造(GAA、CFET)に向け、成膜とエッチングの精度を研究の中心に置く | imecとの更新した協業で、CFET向けの成膜・エッチングの共同開発を対象に挙げた。統合報告書は、FinFETからGAA、CFETへの移行を変化として説明 | 事実 |
| メモリでは、DRAMの高アスペクト比エッチングとNANDの極低温エッチングに注力する | 統合報告書:DRAMの高アスペクト比エッチングとキャパシタ成膜、NANDの深い穴・溝のための極低温エッチング、ワード線の遷移金属材料、チャネルシリコンの低抵抗化に取り組むと記載 | 事実 |
| 先端パッケージ(接合)を、エッチ・成膜に続く第3の柱に育てる | Investors' Guide:接合関連装置の2030年までの累計売上5,000億円を目標に。接合装置の市場は2026〜2030年に年平均30%超で成長し、2030年に3,000億円超と会社が推計 | 事実(会社の推計)/推測(第3の柱という位置づけ) |
| 装置の開発と運用に、AIとロボットを使う(Epsira) | Epsiraを2025年12月に発表。2026年7月にNVIDIAと、AIエージェントとロボットで協業を拡大 | 事実 |
「TELの強みは、単体の装置の性能より、リソグラフィの前後の工程を束ねて、パターン全体を最適化する力にある」という読みの根拠は、同社自身の説明の組み立て方です。統合報告書は、強みの第1に「スケーリングに必要な4つの主要工程(成膜、塗布現像、エッチング、洗浄)の先端製品をそろえていること」を挙げます 事実。研究開発の章でも、EUVの前後の工程(成膜・エッチング・洗浄が露光後の結果にどう影響するか)を、半導体メーカー・材料メーカー・研究機関との共同実験で検証する、と書いています 事実。同社が単独で決められるのは装置の性能までで、パターンの出来栄えは露光装置・レジスト・マスクとの組み合わせで決まります。そのため、TELは他社の製品との相性を共同研究で詰める立場にある、と本稿は考えます 推測 未確定/将来。
9. ナノテクノロジー分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
TELの製品は、顧客の工場に据え付ける半導体製造装置と、その保守・改造・部品のサービスです。以下は、ナノ加工に関わる主な製品群で、会社の資料に書かれている内容です 事実。性能値はメーカー公称であり、測定条件が公表されていないものは、条件が不明であることを書きます。
| 製品群 | 資料に書かれている内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 塗布現像(CLEAN TRACK LITHIUS) | LITHIUS Pro DICEは300mm用で、High NA EUVからDUVまで対応。レジスト塗布の欠陥に起因するウェハー不良とコストを、従来機種より50%以上減らせると会社が推計(過去機種との比較による会社の推計)。塗布・現像の速度は業界最速、クリーンルームの床面積あたりの生産性と環境性能は25%以上向上、と会社が説明。製品表では、LITHIUS Pro DICEが inline 440 wph、LITHIUS Pro Zが inline 300 wph(測定条件の記載なし) | 14・16 |
| エッチング(Episode UL、Tactras、Certas LEAGA) | Episode ULは最大12チャンバー、4〜12チャンバーを柔軟に構成でき、省スペースを特長に。Tactras・Certas LEAGAは300mmウェハー用で、Certas LEAGAは誘電体のケミカルドライエッチング(プラズマを使わない気相の化学エッチング)。2023年に、3D NAND向けの極低温でのチャネルホールエッチ(10µm深を33分、地球温暖化係数84%減)を発表 | 17・11 |
| 成膜(NT333、TELINDY PLUS、EVAROS、Episode) | NT333は同社初のALD用のセミバッチチャンバーで、空間分割ALD方式。膜厚を原子レベルで制御でき、プロセスは SiO₂・SiN・High-k、1チャンバー6枚(装置全体で12枚)。EVAROSは300mmウェハーを1バッチで最大200枚処理し、TELINDY PLUS比でウェハーあたりのCO₂排出を約25%低減(会社の主張)。Episode 1は、シリコン表面の自然酸化膜を除くOPTCUREと、チタンを成膜するORTASのモジュールを構成でき、先端ロジックの配線の接触抵抗の低減に使う | 18・19・13 |
| パターンの補正(Acrevia) | EUV露光で描いた微細パターンの寸法・形状を、ガスクラスタービーム(ガス原子の塊を高エネルギーのビームにして照射)で、低ダメージで修正する。ウェハーの場所ごとに削る量を制御でき、パターン側壁の粗さ(LER)や、確率的なリソグラフィの欠陥を減らせる、と会社が説明 | 12 |
| 洗浄 | CELLESTAシリーズの枚葉洗浄装置。エッチング後に残るレジストや微粒子を取り除く(製品名のみ統合報告書に記載) | 1 |
| 接合・剥離・プローバ(先端パッケージ) | Synapse(ウェハー接合)、Ulucus L / LX(レーザーによるエッジトリミング、ウェハー剥離)、Prexa(プローバ)。Ulucus LXは、貼り合わせ後のバックグラインド・研磨・エッチングの置き換えにより、純水の使用を90%超減らせると会社が推計(従来のプロセスとの比較) | 15・2 |
会社の資料から、素材が効く場所は大きく3つ読み取れます。(1) レジストの塗布と現像:塗布では、膜厚の均一性と欠陥が歩留まりを決めます。LITHIUS Pro DICEは、レジスト塗布の欠陥に起因する不良を減らすことを特長に挙げ、統合報告書は、高感度で安定なレジストの組み合わせを評価していると書き、金属酸化物レジスト(MOR)の採用を、EUV露光の回数を最適化する検討項目に挙げています 事実。(2) 原子層の成膜:NT333は空間分割ALDで、SiO₂やSiN、High-k膜を積みます。製品ページは、低温での運転、膜の応力の調整、プラズマダメージの小ささを特長に挙げています 事実。(3) 極低温でのエッチング:誘電体のエッチングを極低温の領域に持ち込み、深い穴を高速に削るとともに、地球温暖化係数を下げたと会社が発表しています。使うガスの種類は発表に書かれていません。いずれもTEL自身は材料メーカーではなく、装置の設計と、顧客・材料会社との共同評価で価値を出す側に見えます 推測。素材の基礎は、本シリーズの技術解説「リソグラフィとEUV」「レジストとフォトマスク」「原子層堆積」「エッチング」を参照してください。
出典:出典14 https://www.tel.com/news/product/2025/20251215_002.html 出典16 https://www.tel.com/product/lithius.html 出典17 https://www.tel.com/product/episode_ul.html 出典11 https://www.tel.com/news/product/2023/20230609_001.html 出典18 https://www.tel.com/product/nt333.html 出典19 https://www.tel.com/product/telindy.html 出典13 https://www.tel.com/news/product/2024/20240708_001.html 出典12 https://www.tel.com/news/product/2024/20240708_002.html 出典1 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter1_en.pdf 出典15 https://www.tel.com/news/product/2024/20241209_001.html 出典2 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter2_en.pdf 出典3 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter3_en.pdf
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 顧客と地域への集中 | 売上の15.1%がSamsung Electronics、12.9%がTSMC(2社で28.0%)。地域別では中国が34.1%(前期41.7%)。中国の設備投資が「横ばいの兆し」と同社が説明 | 事実 |
| 半導体の景気循環 | 2024年3月期は売上が前期比で約17%減(2,209.0十億円→1,830.5十億円、本稿の計算)。会社も「半導体市場が急に縮むと、過剰在庫につながる」を主要リスクの1つに挙げる | 事実 |
| 米中対立・規制・関税 | 社長メッセージが、米中の緊張に伴う規制・関税、中東情勢、ロシア・ウクライナ情勢、為替、顧客の投資計画の変化が、営業利益率目標の達成を難しくしていると記載。輸出管理の具体的な規制と、その売上への影響額は、本稿の確認範囲では確認できなかった | 事実/確認できなかった |
| 先端技術の遅れ | 主要リスク2:新製品の発売の遅れや、顧客のニーズとのずれで、製品の競争力が下がる。High NA EUVやGAA・CFETなど、顧客の技術の方向が変わる影響を受ける | 事実 |
| 供給網・部品の調達 | 主要リスク4:需要が仕入先の能力を超えること、法規制の変更、物流の逼迫が、製品の供給の遅れにつながる | 事実 |
| 知的財産 | 主要リスク9:独自技術の権利が取れない、または第三者の権利を侵害する場合の、生産・販売の制限と損害賠償 | 事実 |
| 人材の確保 | 主要リスク11:必要な人材の採用と定着が続かないと、開発力と支援の質が下がる。5年で1万人の採用計画は、この課題の裏返し | 事実/推測 |
| 計画の実現 | 売上3兆円・営業利益率35%の目標、研究開発・設備投資の計画、宮城の新工場は、いずれも会社の計画であり、達成は確認されていない | 未確定/将来 |
出典:出典5 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_data_section_en.pdf 出典1 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter1_en.pdf 出典4 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter4_en.pdf 出典6 https://www.tel.com/ir/library/investors-guide/hq95qj0000000734-att/InvestorsGuide_E20260915_rev00.pdf
12. 用語集
- エッチング
- 回路パターンに沿って、膜を削り取る工程。プラズマを使う方式と、化学反応だけを使う方式(ケミカルドライエッチ)がある。
- 成膜(CVD/ALD)
- ウェハー上に薄い膜を積む工程。CVDは化学反応で、ALD(原子層堆積)は原子の層を1枚ずつ積む。
- 塗布現像装置(コータ/デベロッパ)
- レジスト(光に反応する材料)をウェハーに塗り、露光後に現像する装置。露光装置とつないで使う。
- EUV/High NA EUV
- 波長13.5nmの極端紫外線を使う露光技術。High NAは、より細かいパターンを描くために光学系の開口数を大きくした方式。
- GAA/CFET
- トランジスタの構造。FinFETの次がGAA(ゲートが全周を囲む)、その次がCFET(2種類のトランジスタを縦に積む)とされる。
- 高アスペクト比エッチング
- 幅に対して深さが大きい穴や溝を削るエッチング。DRAMのキャパシタや3D NANDの穴で必要になる。
- 極低温(クライオ)エッチ
- 極めて低い温度でウェハーを冷やして行うエッチング。TELは誘電体の深い穴に使うと発表した。
- ガスクラスタービーム(GCB)
- ガス原子の塊(クラスター)を加速して照射し、表面を低ダメージで加工する技術。
- POR(Process of Record)
- 顧客の量産工程に装置の採用が認められた状態。
- wph
- 1時間あたりに処理できるウェハーの枚数。

13. 出典
- Tokyo Electron Tokyo Electron Integrated Report 2026, Chapter 1 About Tokyo Electron(2026年9月15日公表)。社長メッセージ、会社概要(拠点数、沿革)、半導体製造工程と主要製品、主要指標。 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter1_en.pdf
- Tokyo Electron Tokyo Electron Integrated Report 2026, Chapter 2 Value Creation Story。強み(装置の種類、特許、設置台数)、中期経営計画、事業の機会、トランジスタ構造の変化、従業員数。 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter2_en.pdf
- Tokyo Electron Tokyo Electron Integrated Report 2026, Chapter 3 Initiatives in the Value Chain。研究開発(High NA EUV、先端パッケージ)、開発拠点とコンソーシアム。 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter3_en.pdf
- Tokyo Electron Tokyo Electron Integrated Report 2026, Chapter 4 Foundations Supporting Growth。リスク管理の16の主要リスク区分。 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_chapter4_en.pdf
- Tokyo Electron Tokyo Electron Integrated Report 2026, Data Section(財務レビュー)。売上・利益、新装置売上の製品別・用途別構成、地域別構成、主要顧客、設備投資、従業員数。 https://www.tel.com/ir/library/ar/g4alje00000000pq-att/ir2026_data_section_en.pdf
- Tokyo Electron Investors' Guide(2026年9月15日付)。2027年3月期の見通し、研究開発費・設備投資の計画、成長の見込み。 https://www.tel.com/ir/library/investors-guide/hq95qj0000000734-att/InvestorsGuide_E20260915_rev00.pdf
- Tokyo Electron 公式サイト「Company Info」(2026年4月1日時点)。所在地、設立、資本金、従業員数。 https://www.tel.com/about/summary/
- Tokyo Electron 公式サイト「R&D sites」。開発拠点とコンソーシアム、imecとの協業の説明。 https://www.tel.com/rd/base/index.html
- Tokyo Electron 公式サイト「TEL Venture Capital」。スタートアップへの出資の公表。 https://www.tel.com/rd/telvc/index.html
- Tokyo Electron ニュース「Tokyo Electron and imec extend partnership to accelerate the development of beyond-2nm nodes」(2025年6月16日)。 https://www.tel.com/news/topics/2025/20250616_001.html
- Tokyo Electron ニュースリリース「Tokyo Electron Develops Memory Channel Hole Etch Technology That Enables Ultra-fast 10-µm-deep Etching for 3D NAND Flash with Over 400 Layers and an 84% Reduction of Global Warming Potential」(2023年6月9日)。 https://www.tel.com/news/product/2023/20230609_001.html
- Tokyo Electron ニュースリリース「Tokyo Electron Launches Acrevia, a Gas Cluster Beam System for Ultra-Fine Patterning in EUV Lithography」(2024年7月8日)。 https://www.tel.com/news/product/2024/20240708_002.html
- Tokyo Electron ニュースリリース「Tokyo Electron Launches Single Wafer Deposition Systems Episode 1 and Episode 2 DMR, Announces Planned Release of Episode 2 QMR」(2024年7月8日)。 https://www.tel.com/news/product/2024/20240708_001.html
- Tokyo Electron ニュースリリース「Tokyo Electron Releases CLEAN TRACK LITHIUS Pro DICE, a 300mm Wafer Coater/Developer」(2025年12月15日)。 https://www.tel.com/news/product/2025/20251215_002.html
- Tokyo Electron ニュースリリース「Tokyo Electron Launches Ulucus LX, an Extreme Laser Lift Off System for 300mm Wafer-Bonded Devices」(2024年12月9日)。 https://www.tel.com/news/product/2024/20241209_001.html
- Tokyo Electron 公式製品ページ「Coater/Developer LITHIUS Series」。製品比較表(処理枚数、対応プロセス)。 https://www.tel.com/product/lithius.html
- Tokyo Electron 公式製品ページ「Etch Episode UL Series」。エッチング装置3機種の比較表(チャンバー数、用途)。 https://www.tel.com/product/episode_ul.html
- Tokyo Electron 公式製品ページ「Deposition NT333 Series」。原子層堆積(ALD)装置の説明と仕様。 https://www.tel.com/product/nt333.html
- Tokyo Electron 公式製品ページ「Deposition TELINDY Series」。バッチ式熱処理装置の説明(EVAROSを含む)。 https://www.tel.com/product/telindy.html
- Tokyo Electron ニュース「Tokyo Electron and NVIDIA Expand Collaboration for Agentic AI and Robotics」(2026年7月16日)。 https://www.tel.com/news/topics/2026/20260716_001.html
- Tokyo Electron ニュース「Announcement of New Development Site in Bengaluru, India」(2025年9月5日)。 https://www.tel.com/news/topics/2025/20250905_001.html
- Tokyo Electron ニュース「Merger of Tokyo Electron America, Inc. and TEL Technology Center, America, LLC」(2026年6月30日)。グループ内の合併。 https://www.tel.com/news/ir/2026/20260630_001.html
- Tokyo Electron 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.tel.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月9日/Troy Technical
本稿の数値は、TELの統合報告書2026(年次報告書にあたる文書)、Investors' Guide、公式の製品ページ、公式ニュースリリースに基づきます。調査会社の市場推計・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。会社の計画・目標・見通し(業績、投資、発売時期、市場推計など)は未確定の将来の見通しです。「会社の推計」とあるものは、第三者の統計ではなく同社の自己推計です。本稿は投資の助言ではありません。