COMPANY PROFILE / ナノテクノロジー
サムスン電子
― 「量子ドット」を使うQD-OLEDディスプレイと、「ナノシート」型GAAトランジスタの量産を、1つのグループの中で手がける総合電子メーカー
Samsung Electronicsは、スマートフォン、テレビ、メモリー、ファウンドリ(半導体の受託製造)、ディスプレイを抱える総合電子メーカーで、ナノテクノロジーとの接点は大きく2つあります。1つは、子会社のSamsung Display(SDC、Samsungが84.8%を保有)が作るQD-OLEDパネルで、会社は量子ドットを「数ナノメートルの大きさの半導体粒子」と説明しています。もう1つは、ファウンドリ事業が量産するGAA(ゲート・オール・アラウンド)トランジスタで、3nm世代を2022年に、2nm世代を2025年に量産したと書いています。2025年の連結売上は333兆6,059億ウォン、研究開発費は37兆7,548億ウォン(売上の11.3%)です。ただし、ファウンドリ事業単独の売上、GAAの歩留まり、QD-OLEDの売上は、本稿が確認した公式資料に載っていません。本稿は、他分野の同社の記事とは別に、量子ドット表示とナノシートトランジスタの視点から、何を作り、どこに投資し、誰と組み、どこまでが実績でどこからが計画かを、会社の公式資料の範囲で整理します。投資の助言ではありません。
- 30秒でわかるSamsung Electronicsと、ナノテクノロジーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- ナノテクノロジーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(ナノに関わる範囲を中心に)
- ナノテクノロジーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はナノテクノロジーで何を目指しているか
- ナノテクノロジー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるサムスン電子と、ナノテクノロジーでの立ち位置
GDRはロンドン証券取引所会社のIRサイトの記載
Samsung Electronicsの売上の大半は、メモリー、スマートフォン、テレビなどで、ナノテクノロジーに直結する事業(ファウンドリのGAA、QD-OLED)の売上は、単独では開示されていません 未確定/将来。2026年4〜6月の連結売上171兆5,000億ウォンのうち、DS部門(半導体)が127兆5,000億ウォン、そのうちメモリーが120兆8,000億ウォンを占めます(ファウンドリとシステムLSIの売上は、メモリーを除いた残りの6兆7,000億ウォン規模に含まれると読めますが、会社はこの内訳を示していません)事実。つまり、同社は「ナノ専業」ではなく、全社の中のごく一部のナノ関連事業です。それでも、会社は「3nm世代のGAAを2022年に、世界で初めて量産した」と説明し、2nm世代のGAAとQD-OLEDを、技術競争力の柱として挙げています 事実。「世界初」などの表現は会社の自己評価であり、第三者の確認は添えられていません。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:正式名称は Samsung Electronics Co., Ltd.、略称は SEC です。Samsung Display(SDC)は子会社(Samsungが84.8%を保有)で、本体とは別の法人です。MBCFET、SAFE、ISOCELL、Exynos、QD-OLED、Neo QLEDは製品・技術・ブランドの名前です。ロゴ画像は、同社の公式サイト(Foundry)が公開しているものを取得しました(もとの色は白で、暗い背景で使う版です)。
公式サイト:https://semiconductor.samsung.com/foundry/3. ナノテクノロジーの世界で、この会社はどこにいるか
主たる類型はデバイス・表示(ナノ構造を製品にする側)です。ナノスケールに関わる事業を、会社の資料から整理します 事実。
| 領域 | ナノスケールの中身 | 会社の資料で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|---|
| ファウンドリのGAA(3nm世代・2nm世代) | トランジスタを、チャネルを薄い板状(ナノシート)にして重ね、ゲートが囲む構造(GAA)にする | 3nm世代のGAAを2022年に量産(会社は「世界初」と説明)。2025年3月に第2世代の3nm GAA、同年9月に第1世代の2nm GAAを量産。公式サイトは、SF2(2nm世代)が2025年に量産を開始と記載 | 事実(会社の説明) |
| QD-OLED(SDC) | 量子ドット(数ナノメートルの半導体粒子)を、発光の色の調整に使う有機ELパネル | 色域と視野角を最大化できると説明。精密インクジェット印刷の技術で製造。27インチQHD 500Hzなどを開発(2025年5月) | 事実(会社の説明) |
| イメージセンサーのナノ光学(従) | 微細な画素(0.5〜1.0µm)と、ナノプリズム技術 | ISOCELL JNP(ナノプリズム)は、前世代のJN5に比べて感度が25%向上(2025年10月まで、会社の説明) | 事実(会社の説明) |
表の「%」などの数値はメーカー公称で、比べる基準(例:5nm世代のプロセス)や測定条件は、公式資料に詳しく書かれていません。出典:出典1 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_Half_Interim_Report.pdf 出典3 https://news.samsung.com/global/samsung-begins-chip-production-using-3nm-process-technology-with-gaa-architecture 出典4 https://semiconductor.samsung.com/foundry/process-technology/logic-node/ 出典2 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_2Q_conference_eng.pdf
どの材料・工程・用途が中心かをまとめると、ナノスケールの中心は「トランジスタの構造(GAA)」と「量子ドットの発光層(QD-OLED)」です。なお、同社のテレビにはQLEDという名称の製品群もありますが、量子ドットをどのように使うか(例:LCDのバックライトの色変換)は、本稿が確認した資料には書かれていません 未確定/将来。
4. 会社の規模(ナノに関わる範囲を中心に)
Samsung Electronicsは世界の電子産業の大企業です。会社全体は簡潔に示し、ナノ関連事業に関わる数値(ファウンドリを含むDS部門、SDC)を中心にします 事実。
| 指標 | 値 | 注記 |
|---|---|---|
| 連結売上(2025年) | 333兆6,059億ウォン | 2024年は300兆8,709億ウォン。各部門の売上は部門間取引を含み、全社の合計は消去後 |
| 連結売上(2026年上半期) | 305兆3,729億ウォン | 前年同期比+98.7%。DS部門+294.7%、SDC+15.8%(会社の記載) |
| 営業利益(2026年4〜6月) | 89兆5,000億ウォン | 営業利益率52.2%。1〜3月は57兆2,000億ウォンで、上半期の合計は146兆7,000億ウォン(本稿の計算) |
| DS部門(半導体)の売上(2026年4〜6月) | 127兆5,000億ウォン | メモリー120兆8,000億ウォン。ファウンドリ単独は非公表。営業利益は89兆2,000億ウォン |
| SDC(ディスプレイ)の売上(2026年4〜6月) | 7兆5,000億ウォン | 営業利益7,000億ウォン。2025年は29兆8,417億ウォン |
| 研究開発費 | 2025年 37兆7,548億ウォン | 売上の11.3%。2026年4〜6月は16兆ウォン(9.3%)。ナノ関連の内訳は非公表 |
| 設備投資(2026年上半期) | 約28.0兆ウォン | DS部門25兆6,030億ウォン、SDC 1兆3,346億ウォン、その他1兆488億ウォン |
| 保有特許 | 296,468件(世界) | 2026年6月30日時点。全事業の合計で、ナノ関連の件数は非公表 |
| 従業員(国内本社、単体) | 129,200人 | 2026年6月30日。連結の総数は本稿の確認範囲に記載なし |
出典:出典1 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_Half_Interim_Report.pdf 出典2 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_2Q_conference_eng.pdf
2026年に入って売上と利益が大きく伸びているのは、会社の説明ではAI向けのメモリー需要が主な要因で、GAAやQD-OLEDの成果ではありません 事実。メモリーの好況がナノ関連事業の評価を押し上げて見える点に注意してください。また、会社の半期報告書は、ディスプレイ市場の台数見通しなどに調査会社(Omdia)の数値を使っていますが、本稿は調査会社の推計を採用していません。「3nm世代」「2nm世代」は会社の世代名で、他社の同名の世代との性能比較を意味しません。
5. ナノテクノロジーにかけているリソース
ナノ関連事業だけを切り出した人員・研究開発費・設備投資は開示されていません。以下は、会社全体の開示です。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 国内本社(単体)の従業員は129,200人(2026年6月30日)。研究開発は3層:事業部のR&D(1〜2年先)、研究所(Samsung Research、半導体研究所。3〜5年先)、全社の研究所SAIT(Samsung Advanced Institute of Technology)。海外の研究拠点は、米国・ウクライナ・日本・中国・インド・イスラエルなど。ナノ関連の人員は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(研究開発) | 2025年の研究開発費は37兆7,548億ウォン(売上の11.3%)。2026年上半期は27兆3,627億ウォン。政府補助は2025年に約144億ウォン(研究開発費の0.04%、本稿の計算)で、研究開発費から差し引かれている。ナノ関連の内訳は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(設備投資) | 2026年上半期の設備投資は約28.0兆ウォン。「先端ノード・先端プロセスの能力拡張と技術移行、DS部門とSDCのインフラ」に集中と説明。内訳はDS部門25兆6,030億ウォン、SDC 1兆3,346億ウォン。ファウンドリ・QD-OLED単独の投資額は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 出資・買収・合弁・売却 | SDCを84.8%保有(子会社)。SDCは2024年1月31日に、Samsung Venture Investmentの2社が持つDOWOOINSYSの持分56.8%を売却(OLED競争が激しくなるなかで、主力事業と研究開発に集中するため、と会社が説明)。テキサス州の半導体製造子会社SAS。ナノ関連の大型買収は、本稿の確認範囲では確認できなかった | 事実/確認できなかった |
| 大学・研究機関・公的資金 | EDA各社(Ansys、Cadence、Siemens、Synopsys)とのSAFE(Samsung Advanced Foundry Ecosystem)で、3nm GAAの設計環境を2021年第3四半期から提供(2022年の発表)。大学・研究コンソーシアムの名称は、半期報告書に具体的な記載を確認できなかった。公的資金は、研究開発の政府補助が小さい | 事実/一部確認できなかった |
出典:出典1 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_Half_Interim_Report.pdf 出典3 https://news.samsung.com/global/samsung-begins-chip-production-using-3nm-process-technology-with-gaa-architecture
主要な製品・設備の状況
| 製品/設備 | 場所・内容 | 規模 | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3nm世代のGAA(MBCFET) | ファウンドリ。ナノシートのトランジスタ | 性能・面積の比較値は下のメモ | 初期生産を開始(第1世代)。第2世代は量産 | 2022年6月30日/2025年3月 | 3・1 |
| 2nm世代のGAA(SF2) | ファウンドリ。モバイル向けから | 性能5%向上・消費電力8%減・面積5%減(第2世代の3nmに対する比較、会社の説明) | 量産(第1世代)。第2世代のモバイル向けは2026年後半に量産の予定 | 2025年9月/2026年下半期 | 1・4・2 |
| Exynos 2600 | 2nm世代のGAAを使うモバイル向けのチップ | CPU性能が前モデル(Exynos 2500)比+39%(会社の説明) | 発表(会社は「業界初」と説明) | 2026年3月までの発表 | 1 |
| ファウンドリの製造拠点 | 韓国:器興(Giheung)、華城(Hwaseong)、平沢(Pyeongtaek)。米国:テキサス州のオースティンとテイラー | 各拠点の枚数・能力は非公表 | テイラーの稼働状況は確認できなかった | 2026年10月9日確認 | 5 |
| QD-OLEDの大型パネル | SDC。27インチQHD 500Hzなど | 出力は、SDC全体で2026年上半期に899千枚(8世代ガラス換算) | 量産。IT向け8.6世代OLEDラインの量産は予定 | 2025年〜2026年 | 1・2 |
比較値のメモ(会社の説明):第2世代の3nm GAAは、5nm世代のプロセスに比べて、面積-35%、消費電力-40%超、性能最大+30%(2025年3月の半期報告書)。2022年の発表では、第2世代の3nmは「消費電力-50%、性能+30%、面積-35%」という計画値で、量産後の記載(消費電力-40%超)と異なります。測定条件は書かれていません。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1969年1月13日 | Samsung Electronics Industry Co., Ltd.として設立。1975年に株式公開 | 電子産業のグループの出発点 |
| 2022年6月30日 | 3nm世代のGAA(MBCFET)の初期生産を開始。ナノシートのトランジスタを、高性能・低消費電力の計算向けに最初に適用し、モバイル向けへ広げる計画と説明 | FinFETの次の構造への移行 |
| 2022年 | 次世代半導体の研究開発棟の起工式。3nm GAAを量産(会社は「世界初」と記載) | 先端研究への投資 |
| 2024年1月31日 | SDCが、Samsung Venture Investmentの2社が持つDOWOOINSYSの持分56.8%を売却 | OLED事業への集中 |
| 2025年3月 | 第2世代の3nm GAAを量産 | GAAの改良世代 |
| 2025年5月 | 27インチQHD 500Hz QD-OLED(自己発光で最高のリフレッシュレートと説明)を開発 | QD-OLEDの高速化 |
| 2025年7月26日 | Tesla, Inc.と、半導体の受託製造の供給契約(2025年7月〜2033年12月、US$165億4,400万)を開示 | ファウンドリの大型契約 |
| 2025年9月 | 第1世代の2nm GAAを量産(モバイル向け) | ナノシートの2nm世代へ |
| 2025年 | 公式サイトは、SF2の量産開始を記載 | ファウンドリの世代名 |
| 2026年4〜6月 | ファウンドリは「より高い稼働率と先端ノードの需要」。2nmの大手データセンター顧客からの受注拡大を進める | 2nm世代のHPC向け |
出典:出典1 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_Half_Interim_Report.pdf 出典3 https://news.samsung.com/global/samsung-begins-chip-production-using-3nm-process-technology-with-gaa-architecture 出典4 https://semiconductor.samsung.com/foundry/process-technology/logic-node/ 出典2 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_2Q_conference_eng.pdf
7. 今後の計画
上の内容は、すべて会社の予定・見通し・目標です 未確定/将来。ファウンドリについて会社は、「各ノード・用途ごとの戦略を整え、先端ノードの増収を見込む」と説明します。2026年4〜6月期にはメモリーが売上の大半を占めており、ナノ関連事業の計画は、全社の業績を左右するものではない、と本稿は読みます 推測。
次はいずれも、本稿が確認した公式資料に記載がありません 未確定/将来。
ファウンドリ事業の売上・利益/GAAの歩留まりと月産枚数/2nm世代の顧客名(Tesla以外)/QD-OLEDの売上・販売枚数/量子ドット材料の調達先と組成(カドミウムの有無など)/ナノ関連の研究開発費・人員/米国テイラー工場の稼働状況/輸出管理・関税の売上への影響額。
8. この会社はナノテクノロジーで何を目指しているか
会社が直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| GAAを、3nm世代から2nm世代へ、モバイルからAI/HPCへ広げる | 2022年に3nm GAAを高性能・低消費電力の計算向けに適用し、モバイルへ拡大と説明。2026年は、2nmのモバイル量産に加え、2nmのHPC案件と大手データセンター顧客からの受注拡大に言及 | 事実 |
| 設計と製造を一体で最適化する(DTCO) | 2022年の発表と2025年の2nm GAAの記載が、設計・技術の共同最適化(DTCO)を挙げる。設計環境はSAFEパートナーと整備 | 事実 |
| 大型パネルでは、QD-OLEDのプレミアム製品に集中する | 半期報告書:大型パネルは、高性能のQD-OLEDプレミアム製品に注力。ゲーミングモニターの顧客を拡大 | 事実 |
| 自社の半導体と、自社の製品を組み合わせる垂直統合 | Exynos 2600(自社のモバイルAP)を2nm GAAで発表。ファウンドリの顧客にTeslaなど外部も | 事実/推測(垂直統合という位置づけ) |
| ナノ光学(nano prism)を、イメージセンサーの画素微細化の手段にする | ISOCELL JNP(ナノプリズム)を「業界初」と発表。0.5µm・200メガピクセルのセンサーも | 事実(会社の説明) |
「Samsung Electronicsは、ナノ関連の技術を、自社の製品(スマートフォン、モニター)の差別化にも使い、外部顧客にも売る二面作戦を取っている」という読みの根拠は、同じ技術が2つの形で登場することです。GAAは、自社のExynos 2600に使われると同時に、Teslaなど外部顧客向けのファウンドリ契約(2033年12月まで)でも売られます 事実。QD-OLEDも、自社のテレビ・モニターだけでなく、SDCを通じて外部のブランドにも供給していると読めますが、外部顧客の名前は本稿が確認した資料に載っていません。このため、ナノ関連の投資は、自社製品の差別化と受託による稼働率の確保の両方を狙っている、と本稿は考えます 推測 未確定/将来。
9. ナノテクノロジー分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
ナノ関連の「製品」は、ファウンドリのプロセス技術と、SDCのQD-OLEDパネル、イメージセンサー、自社設計のチップです 事実。以下は会社の資料に書かれている内容で、性能値はメーカー公称です。
| 技術・製品 | 資料に書かれている内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 3nm世代のGAA(MBCFET) | 「Multi-Bridge-Channel FET」はSamsungのGAA。幅の広いナノシートを使い、ナノワイヤー型のGAAより高い性能と省電力を狙うと説明。ナノシートのチャネル幅を調整でき、用途ごとに電力と性能を最適化できる。第1世代の3nmは、5nm世代に対して消費電力-45%まで、性能+23%、面積-16%(2022年の発表、会社の主張) | 3 |
| 2nm世代のGAA(SF2) | 第1世代:第2世代の3nmに対して、性能+5%、消費電力-8%、面積-5%(会社の説明)。モバイル向けから開始。DTCOで高性能と低消費電力を両立すると説明。公式サイトはSF2の量産開始(2025年)を記載 | 1・4 |
| QD-OLEDパネル(SDC) | 量子ドットを使う自己発光ディスプレイ。27インチ(QHD 500Hz、UHD 160ppiなど)と31.5インチ(UHD 140ppi)を開発。精密なインクジェット印刷技術で製造 | 1 |
| テレビ・モニター(QD-OLED、Neo QLED) | QD-OLEDテレビ(S95、4K)とQD-OLEDゲーミングモニター(4K 240Hz、500Hz)、Neo QLED(Mini LEDを使うLCD)。Neo QLEDの新しいLEDは「Quantum Nano-Layer Multi-Cell」構造と説明(量子ドットの使い方は書かれていない) | 1 |
| イメージセンサー(ISOCELL) | ISOCELL JNPはナノプリズム技術で、前世代のJN5比で感度+25%。HP5は0.5µm・200メガピクセル。画素の分離にFDTIなどの深い溝を使う | 1 |
| 設計環境(SAFE) | Ansys、Cadence、Siemens EDA、Synopsysなどと、3nm GAAの設計環境を整備 | 3 |
会社の資料から、素材が効く場所は大きく3つ読み取れます。(1) ナノシートのチャネル:Samsungは、ナノワイヤー型より幅の広いナノシートを使い、チャネル幅の調整で電力と性能を最適化すると説明します 事実。シートの厚さや積層の均一さが性能のばらつきに効くと本稿は考えますが、公式資料に歩留まりや欠陥の数値はありません 推測 未確定/将来。(2) 量子ドットの発光層:QD-OLEDは、数ナノメートルの半導体粒子を発光の色の調整に使います。粒子の大きさ・表面処理・分散のばらつきが色純度と寿命に効くと考えられますが、量子ドット材料の組成(カドミウムを含むか)や調達先は、資料に書かれていません 未確定/将来。(3) インクジェットで形成する膜:同社は、精密なインクジェット印刷で高精細(140〜160ppi)のQD-OLEDを作ると説明します 事実。滴下する液の粘度・乾き方・膜厚の均一性が、画素の出来栄えに直結します 推測。素材の基礎は、本シリーズの技術解説「量子ドット」「ナノスケールのトランジスタ」「ナノコーティングと薄膜」を参照してください。
出典:出典3 https://news.samsung.com/global/samsung-begins-chip-production-using-3nm-process-technology-with-gaa-architecture 出典1 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_Half_Interim_Report.pdf 出典4 https://semiconductor.samsung.com/foundry/process-technology/logic-node/
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| ナノ関連の実績が見えない | ファウンドリ・QD-OLEDの売上、GAAの歩留まり、顧客数が公表されていない。「世界初」などの表現は自己評価で、第三者の確認はない | 事実(確認できなかった) |
| メモリー依存の収益構造 | 2026年4〜6月は、連結売上の約70%(メモリーの売上÷連結売上、部門間取引を含むため概算=本稿の計算)をメモリーが占め、営業利益の大半もDS部門。メモリー市況が変われば全社の業績が変わる。ナノ関連事業の投資余力にも影響する | 事実/推測 |
| ファウンドリの競争 | 会社は、大規模な設備投資ができる企業が約5社に絞られ、市場を占めると説明。2nm世代の顧客獲得と稼働率が重要 | 事実 |
| 特定の大型契約への依存 | Teslaとの契約はUS$165億(2025年7月〜2033年12月)。需要・業績で契約が変わりうると会社が記載 | 事実/推測 |
| 部材費の上昇 | DX部門の2026年4〜6月は、部品費の上昇で営業損失(-8,000億ウォン)。QD-OLEDを使うテレビ・モニターの採算にも影響しうる | 事実/推測 |
| 地政学・規制 | 中国の国産化需要が続く見通しと説明。関税・輸出管理の売上への影響額は、本稿の確認範囲では確認できなかった。半期報告書のIR説明会の項目に「関税」の質問が挙がる | 事実/確認できなかった |
| 計画の実現 | 第2世代2nmの量産、8.6世代OLEDライン、ファウンドリの2桁増収は、いずれも会社の計画・目標で、達成は確認されていない | 未確定/将来 |
出典:出典1 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_Half_Interim_Report.pdf 出典2 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_2Q_conference_eng.pdf
12. 用語集
- GAA(ゲート・オール・アラウンド)
- ゲートがチャネルを全周から囲むトランジスタ構造。FinFETの次の構造。
- ナノシート/MBCFET
- チャネルを薄い板状にして重ねるGAAの一種。MBCFETはSamsungの商標。
- DTCO
- 設計と製造技術を同時に最適化すること。
- 量子ドット
- 数ナノメートルの半導体の粒子。粒子の大きさで色(波長)を調整できる。
- QD-OLED
- 量子ドットを使って色を調整する有機ELディスプレイ(会社の説明)。
- SDC
- Samsung Display Co., Ltd.。Samsung Electronicsが84.8%を保有する子会社。
- ISOCELL
- Samsungのイメージセンサーのブランド。
- SAFE
- Samsung Advanced Foundry Ecosystem。設計ツール・IPの協力企業の枠組み。
- SF2
- Samsung Foundryの2nm世代のプロセス名。
- HPC
- 高性能計算。AI向けのチップなど。

13. 出典
- Samsung Electronics Samsung Electronics Business Report(2026年上半期の半期報告書、2026年6月30日時点)。会社概要、事業別の売上、研究開発費、設備投資、知的財産、市場の状況、主要な契約、研究開発の実績(ファウンドリのGAA、ディスプレイのQD-OLED)。 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_Half_Interim_Report.pdf
- Samsung Electronics 2Q 2026 Earnings Call(2026年4〜6月期の決算説明資料)。事業別の業績と見通し、ファウンドリ・ディスプレイの記述。 https://images.samsung.com/is/content/samsung/assets/global/ir/docs/2026_2Q_conference_eng.pdf
- Samsung Electronics ニュースリリース「Samsung Begins Chip Production Using 3nm Process Technology With GAA Architecture」(2022年6月30日)。 https://news.samsung.com/global/samsung-begins-chip-production-using-3nm-process-technology-with-gaa-architecture
- Samsung Electronics 公式サイト「Foundry - Logic Node」(2026年10月9日に確認)。SF2の量産開始の記載。 https://semiconductor.samsung.com/foundry/process-technology/logic-node/
- Samsung Electronics 公式サイト「Foundry - Manufacturing Sites」(2026年10月9日に確認)。ファウンドリの製造拠点の一覧。 https://semiconductor.samsung.com/foundry/manufacturing/manufacturing-sites/
- Samsung Electronics 公式IRサイト「Listing Information」。上場市場。 https://www.samsung.com/global/ir/stock-information/listing-Info/
- Samsung Electronics 公式サイト「Foundry」(ロゴ画像の取得元)。 https://semiconductor.samsung.com/foundry/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月9日/Troy Technical
本稿の数値は、Samsung Electronicsの2026年上半期の半期報告書、2Q 2026 Earnings Call資料、公式サイト、2022年のニュースリリースに基づきます。調査会社の市場推計(半期報告書が引用するものを含む)・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。会社の計画・目標・見通し(量産時期、増収目標、新ライン)は未確定の将来の見通しです。「世界初」「業界初」などの表現は会社の自己評価です。「3nm」「2nm」は会社の世代名で、他社との比較を意味しません。本稿は投資の助言ではありません。