COMPANY PROFILE / ナノテクノロジー
グラフェン・マニュファクチャリング・グループ
― 天然ガスから自社でグラフェンを作り、HVAC-Rのコーティング・エンジン油添加剤・電池材料へ加工する、ブリスベンの小型素材会社
Graphene Manufacturing Group(以下GMG)は、メタン(天然ガス)を電気プラズマで分解して数層のグラフェンを作り、それを自社の製品に加工して売るオーストラリアの会社です。主な製品は、空調・冷凍機の熱交換器に塗るTHERMAL-XR、エンジン油添加剤のG LUBRICANT、データセンターの冷却水添加剤G FLUID、電池用スラリーSUPA Gで、さらにグラフェン・アルミニウムイオン電池を開発中です。 上場先は、豪州ではなくカナダのTSX Venture Exchange(TSXV)と米国のOTCQXです。2026年6月期の営業収益はA$724 thousandと小さく、純損失はA$29.8 million(うち新株予約権の公正価値変動による損失が A$14.7 million)、期末は債務超過(純資産 △A$292 thousand)で、同社自身が継続企業の前提に関する重要な不確実性を開示しています。 本稿は、同社のMD&A(経営陣による財務分析)、公式サイト、プレスリリース、米国の連邦官報から、何を確認でき、何を確認できなかったかを整理し、素材技術者の視点で「グラフェンを作ることと、使いこなすこと」の違いを書きます。

- 30秒でわかるGMGと、ナノテクノロジーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- ナノテクノロジーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- ナノテクノロジーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はナノテクノロジーで何を目指しているか
- ナノテクノロジー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集
- 出典
- 主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるGMGと、ナノテクノロジーでの立ち位置
(略称 GMG)オーストラリアの会社。同社は自社を「clean-technology company」と説明
(Richlands)製造、経営、本社機能が同じ敷地。2026年5月にRichlandsで3年間の追加の賃貸契約
OTCQX:GMGMFASXではなくカナダのTSXVに2021年4月に上場。フランクフルトでも気配値(0GF)。豪州企業だが豪州の取引所には上場していない
デバイス(従)グラフェンの製造が主。電池セル(G CELLS)は開発段階
天然ガスから合成メタンを電気プラズマで分解して炭素(グラフェン)と水素を得る方式(同社の説明)
(2026年7月に始動)最適化・設置の残工事あり。過去の工場(Gen 1)の能力は確認できなかった
GMGは「グラフェンを自社で作る」ことに加えて、「それを使った製品を自社で売る」ところまで一社で行おうとする小さな会社です。同社の戦略は、グラフェン粉体を売ることではなく、グラフェンを使った省エネ製品・電池材料に絞ることだと、MD&Aが書いています 事実。 一方で、売上は小さく(A$724 thousand)、損失が大きく、財務が安定していないのも事実です。同社は、事業の継続が追加の資金調達に依存することを開示しています。生産能力(Gen 2.0工場で年10 t、将来の新工場で年約100 t)、電池の性能、EPA(米国環境保護庁)の追加承認は、いずれも会社の計画・見通しで、実現は確定していません 未確定/将来。
2. ロゴと社名の表記について

ロゴは同社の公式サイト(graphenemg.com)のヘッダーに掲載されているロゴ(緑の六角形に「GMG」、右側に社名)を、そのままSVGで取得して設置しています。生成画像による再現は行っていません。
表記の注意:社名は Graphene Manufacturing Group Ltd.(略称 GMG)で、日本語では「グラフェン・マニュファクチャリング・グループ」と書かれることがありますが、カタカナ表記は本稿の便宜表記です。 製品名の THERMAL-XR、G LUBRICANT、G FLUID、SUPA G、G CELLS は同社の商標(®、™)で、会社名とは別です。「G+AI(Graphene Aluminium-Ion)電池」は、同社とクイーンズランド大学(UQ)が開発する電池の技術名で、特許はUQが保有し、GMGは世界での独占的な商業化の実施権を持つと説明されています。
公式サイト:https://graphenemg.com/3. ナノテクノロジーの世界で、この会社はどこにいるか
GMGの主たる類型はナノ素材メーカー、従たる類型はデバイス・表示(電池セルの開発段階のもの)です。中心は数層グラフェン(few-layer graphene)で、同社の資料で確認できた範囲では次のとおりです。
| 材料・製品 | GMGでの位置づけ | 確認できた一次情報 | 区分 |
|---|---|---|---|
| グラフェンの合成(メタンの電気プラズマ分解) | 中心の技術。天然ガスを炭素(グラフェン)、水素、少量の炭化水素ガスに分解する連続式のプロセスで、黒鉛は使わないと説明。粉体そのものを外販する計画は確認できず、自社製品の原料として使う方針 | MD&A、公式サイト | 事実(会社の説明) |
| THERMAL-XR(空調・冷凍機の熱交換器用コーティング) | 最も販売が進んでいる製品。水系アクリル樹脂にグラフェンを入れたコーティング。認定施工者が現場で塗る。2026年6月期の売上は同社全体で A$724 thousand(製品別の内訳は非開示) | MD&A、製品ページ | 事実(会社の説明) |
| G LUBRICANT(エンジン油添加剤) | 2025年7月から公式サイトで直接販売。特許は米国で2026年4月に成立、欧州で2026年3月に付与が承認(accepted for grant)、中国でも許可(allowed) | MD&A | 事実(会社の説明) |
| G FLUID(データセンター等の冷却水添加剤) | 2026年8月24日に発売。特許出願中 | プレスリリース(2026年8月) | 事実/売上の実績は確認できず |
| SUPA G(リチウムイオン電池用のグラフェンスラリー) | サンプルを大手電池メーカーとBICに送付して評価中。売上は確認できず | MD&A、製品ページ | 事実(会社の説明)/未確定/将来 |
| G CELLS(グラフェン・アルミニウムイオン電池) | 開発段階。電池の技術成熟度(BTRL)はレベル4のまま。パウチセルの電気化学の確定を2026年内に目指す | MD&A | 事実/目標は未確定/将来 |
| 水素 | メタンの分解で水素も生じるが、同社の資料では、副生水素を自社工場の発電に使う記述(Gen 2.0工場)のみ。水素の販売事業は確認できなかった | MD&A、プレスリリース(2026年9月) | 確認できず |
4. 会社の規模
GMGはTSXVに上場する小型の会社で、財務は豪ドル建てで開示されています。2026年6月期(2025年7月〜2026年6月)の主な数値を示します。前期の数値は、新株予約権(ワラント)の取引費用の会計処理を訂正した修正後の値です 事実。
| 項目(単位:千豪ドル) | 2026年6月期 | 2025年6月期(修正後) |
|---|---|---|
| 営業収益(売上) | 724 | 238 |
| その他収益(主にR&D税額控除) | 2,280 | 4,659 |
| 従業員給付費用 | 5,932 | 4,163 |
| 専門家・コンサルティング費用 | 4,630 | 2,633 |
| 新株予約権の公正価値変動による損益 | 損失 14,653 | 損失 821 |
| 税引前損失(純損失) | 29,794 | 8,692 |
| EBITDA(非IFRS指標。会社の定義) | 損失 13,291 | 損失 5,894 |
| 営業活動によるキャッシュフロー | △12,163 | △4,445 |
| 現金及び現金同等物(期末) | 9,936(ほか制限付き現金 321) | 7,417 |
| 総資産/純資産 | 22,403/△292(債務超過) | 17,220/7,979 |
| 項目 | 確認できた内容 |
|---|---|
| 上場・株式 | TSXV:GMG、OTCQX:GMGMF(2024年2月に取引開始)、フランクフルト:0GF。発行済み株式は133,772,670株(MD&A作成時点)、オプション約455万、ワラント約1,509万、RSU約242万 |
| 最近の資金調達 | 2025年9月に約C$6.9 million(ブローカー経由の買い付け)。2025年7月にC$20 million上限のATM(市場での随時売り出し)を設定。2026年9月に1人の投資家(名称は非公表)へUS$10 million(1株C$2.15、6,465,336株)の私募 |
| 継続企業の前提 | MD&Aは「重要な不確実性があり、継続企業の前提に重大な疑義を生じさせうる」と開示。期末は流動負債超過A$5,672 thousand。同社は現金、ワラント・オプションの行使、R&D税額控除、2026年9月の私募で対応できると説明 |
| 内部統制 | 「財務報告に係る内部統制に重要な欠陥がある」と同社が開示(IT統制、プロセスの統制、会計方針の文書化)。前期の財務諸表を訂正 |
| 従業員 | 人数は今回の資料で確認できなかった(AIFは2026年10月15日ごろの提出予定)。欧州に10人超の営業担当、アジア太平洋にチーム(インド、韓国、日本、シンガポール) |
2026年6月期の純損失(A$29.8 million)の約半分(A$14.7 million)は、新株予約権(ワラント)の公正価値変動による非現金の評価損で、株価の動きに左右されます。そのため同社は、評価損を除いた「調整後の損失」(A$15.1 million)も示しています。 ただし、調整後でも営業収益A$724 thousandに対して費用は大きく、営業活動の現金流出はA$12.2 millionです。本稿は財務の健全性を評価しませんが、黒字化の目処は公式資料に書かれていません 未確定/将来。
5. ナノテクノロジーにかけているリソース
人・金・外部・大学の4点で、確認できたか/できなかったかを整理します。
| 項目 | 確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(研究開発拠点・人員) | 研究・製造・本社は、ブリスベンのRichlandsの敷地(電池開発センター〔Battery Development Centre〕を含む)。技術諮問委員会があり、2026年4月に元Rio TintoのStuart Watson氏をChief Production Growth Officerに任命。従業員数・研究開発人員の内訳は今回の資料で確認できなかった(従業員給付費用 A$5.9 million) | 事実/確認できず |
| 金(研究開発費・設備投資) | 研究開発費(プロジェクト別、2026年6月期):G+AI電池 A$1,336 thousand、G LUBRICANT A$362 thousand、SUPA G A$130 thousand、合計 A$1,828 thousand 本稿の計算(THERMAL-XRなどは別建てで、会社全体のR&D費の総額は確認できなかった)。設備投資:Gen 2.0工場の総額が約A$2.3 million(2026年3月に追加でA$1.4 millionを承認)、新工場Fulcrumの次段階の設計・調達にA$1.2 million(2026年7月に承認) | 事実/総額は確認できず |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | GMG自身による出資・買収・合弁・事業売却は確認できなかった。受け入れ側では、Rio Tintoとの共同開発契約(JDA)で、2年間A$6 millionの資金提供の枠(同社の説明。資金部分は終了し、その他の条項は有効) | 事実/確認できず(自社の出資) |
| 大学・研究機関・公的資金との連携 | クイーンズランド大学(UQ):電池の特許を保有、GMGが世界独占の実施権、共同研究契約を締結。UQは電池開発向けにオーストラリア政府の助成A$880,000を受領。Battery Innovation Center(BIC、米国インディアナ州):電池の試作・試験のサービス契約。オーストラリアのR&D税額控除(R&D tax incentive):2025年6月期に約A$2.03 millionを現金で受領、2026年6月期は約A$1.91 millionを見込む(会社の見込み) | 事実/見込みは未確定/将来 |
主要な製造設備の状況
生産能力はすべて会社の公称または計画です。実際の生産量・稼働率・歩留まりは公開されていません。
| 設備 | 場所 | 規模(公称) | 段階 | 日付・出典 |
|---|---|---|---|---|
| 既存のグラフェン製造設備(Gen 1) | Richlands(ブリスベン) | 確認できなかった | 稼働(THERMAL-XRなどの原料を製造) | MD&A(能力の記載なし) |
| Gen 2.0 Graphene Manufacturing Technology Plant | Richlands(本社と同じ敷地) | 年10 t(最適化後の見込み)。総額約A$2.3 million | 建設・始動を完了(2026年7月6日)。最適化と設置の残工事は2026年9月・12月末までの予定。2026年8月19日に開所式(9月16日の発表) | MD&A、プレスリリース(2026年9月) |
| Gen 2.1(Gen 2.0の複製型モジュール) | 豪州・カナダ・米国 | 数値の記載なし | 計画。Gen 2.0の稼働後に展開すると説明 | MD&A |
| Fulcrum Facility(新工場) | 場所は確認できなかった | 年約100 t。ほか、年最大12台のモジュール(合計で追加240 t/年)を組み立てる計画 | 設計段階(2026年7月8日にA$1.2 millionの次段階を承認)。未確定/将来 | MD&A |
| Richlandsの追加の賃貸施設 | Richlands | 生産拡大と人員増のため | 賃貸契約を締結(3年、2026年5月12日) | MD&A |
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2021年4月 | カナダのTSX Venture Exchangeに上場(上場前の発表は2021年3月30日) | 非公開企業から公開企業へ |
| 2023年初め・5月 | オーストラリア政府の承認を得てTHERMAL-XRの量産販売が可能に(2023年初め)。5月にRio Tintoと共同開発契約(JDA)を開始 | 製品の販売と電池の共同開発の本格化 |
| 2024年2月 | 電池で目標の1 Ah容量のセルを達成。OTCQXで取引開始(2月26日〜27日) | 米国市場での取引の拡大 |
| 2025年7月 | G LUBRICANTの直接販売を開始。電池の特許(UQ保有)がオーストラリアで成立。C$20 millionのATMを設定 | 製品の販売開始と資金調達 |
| 2025年10月 | EUのREACH登録を取得(THERMAL-XRを欧州で販売可能に)。Beijer Refがオーストラリアの約73拠点でTHERMAL-XRの塗布を選択肢として提供(11月17日から) | 欧州の規制対応と、大手販売網の採用 |
| 2026年3月16日 | 米国EPAがPMN P-25-0018について同意命令(TSCA第5条(e))を出し、THERMAL-XRの輸出・流通・販売・使用・廃棄を認可 | 米国での販売の道が開く(製造は含まない) |
| 2026年4月 | Advanced Carbons Councilの「Verified Graphene Producer」に認証。G LUBRICANTの特許が米国で成立 | 第三者による材料・設備の検証 |
| 2026年6月〜7月 | 2日にEPAへ重要新規利用届(SNUN)を提出し、米国での製造等の許可を求める。12日にNu Calgonへ初の大口出荷。6日にGen 2.0工場の始動、21日にAlstomと鉄道向けHVAC-Rの覚書 | 米国での事業の拡大と生産能力の増強 |
| 2026年8月〜10月 | 24日にG FLUIDを発売。9月にUS$10 millionの私募を実行。10月8日に電池の試験データを発表 | 新製品と資金調達、電池の進捗 |
7. 今後の計画
最適化は2026年末まで2026年9月・12月末までに残工事を終える予定。タイミングは建設・試運転の状況で変わりうる
+モジュール240 t/年設計・長納期品の調達の段階。最終投資決定や建設の時期は確認できなかった
2027年6月末の見込み製造・販売・使用の許可を求める届出(SNUN)。審査が終わるまで、米国での製造は未承認
2026年に確定させるBTRL 4から7〜8へ進める計画。確定後に顧客でのサンプル試験、量産へ
同社は、2026年末までのGen 2.0工場の完成を前提に、Gen 2.1を豪州・カナダ・米国に展開し、量産能力と調達先の分散を図るとしています 未確定/将来。電池については、鉱山・エネルギー貯蔵・航空・鉄道などの顧客が「秘密保持契約のもとで関心を示している」と説明しますが、顧客名・数量・時期は公式資料に記載がありません。
次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。
従業員数/Gen 1設備の能力と実際の生産量/Fulcrum Facilityの立地・総投資額・最終投資決定の時期/製品別の売上/THERMAL-XR・G LUBRICANT・G FLUID・SUPA Gの顧客数/黒字化の目標時期/G CELLSの量産時期と顧客名/ASXなどオーストラリアの取引所への上場計画/EPA審査の結果。
8. この会社はナノテクノロジーで何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| グラフェンを外販する素材ではなく、自社製品の「付加価値の源」として使う(垂直統合)方針である | MD&A:用途を絞ることで自社製造のグラフェンから高いリターンを得られると経営陣が考え、垂直統合で長期の競争優位を築く | 事実(会社の説明) |
| 当面の売上の柱は、省エネ製品(THERMAL-XR、G LUBRICANT、G FLUID)で、電池は将来の選択肢として育てている | 売上は製品販売で、電池は開発段階(BTRL 4)。研究開発費はG+AI電池が最大(A$1,336 thousand) | 推測 |
| 米国・欧州・アジア太平洋の販売チームと流通の提携を増やし、グラフェン製品を世界で売る準備をしている | 欧州の営業チーム10人超(2026年3月)、アジア太平洋チーム(2026年9月)、Nu Calgon、Beijer Ref、Curran International | 事実(会社の説明) |
| グラフェンの量産と原価低減(Gen 2.0 → Gen 2.1 → Fulcrum)を、製品の価格競争力と電池の供給に不可欠と見ている | MD&A:Gen 2.0は「大幅に低い製造原価と品質向上」を見込む。モジュール型の複製を計画 | 推測 |
「当面の売上は省エネ製品、電池は選択肢」と読む根拠は、事業の進み具合の差です。MD&Aによれば、THERMAL-XRとG LUBRICANTは販売が始まり、承認(EPA、REACH)や特許も進んでいます。 一方、G+AI電池は「電池技術成熟度レベル(BTRL)4」にとどまり、同社はパウチセルの電気化学が確定するまで先へ進めないと書いています。 電池向けの研究開発費は最大ですが、売上は確認できません。2026年10月8日の発表では1,000サイクルでの性能維持などが示されましたが、セルは1.5 Ahの試作品で、同社自身が「セル容量の拡大と、10C条件での寿命の延長にはさらに作業が必要」と述べています。 これは公式資料の記述の組み合わせから本稿が読み取った解釈で、電池を主力事業にする意図があるかは、同社の資料では確認できません 未確定/将来。
9. ナノテクノロジー分野の提携マッピング
GMGの関係の特徴は、流通(販売店)と電池の開発パートナーが中心で、顧客名の公開が少ないことです。販売店の大部分は、公式資料から出荷数量や契約金額を確認できません。Rio TintoのJDAは電池向けで、鉱山・鉱物産業での利用を想定した共同開発です 未確定/将来。
10. 提供している技術・製品・サービス
以下は、同社のMD&A、公式サイト、プレスリリースの記述です。数値はすべてメーカー公称(会社の主張)で、試験条件は発表資料に書かれた範囲に限られます。他社の製品との優劣を示すものではありません 事実。
| 製品 | 同社の説明(会社の主張) | 条件・注意 |
|---|---|---|
| THERMAL-XR ENHANCE | 水系アクリル樹脂に、熱をよく通すGMGグラフェンを入れたコーティング。空調・冷凍機のアルミ・銅の熱交換器(RTPF、マイクロチャネル)に認定施工者が塗る。腐食の防止、熱伝達の回復、撥水。30,000時間超の塩水噴霧試験(ASTM B117-19)で腐食なし(米国の第三者ラボの証明、2026年7月9日) | 現場の省エネ率は設置先ごとに11.6〜36.7%と大きくばらつく(例:シンガポールのデータセンター15.4%、ルーマニアの冷凍機18%、テキサスの屋上空調36.7%)。測定方法・期間・機器の状態は公式ページに記載なし。「10〜50%の省エネ」は同社の表示 |
| G LUBRICANT | エンジン油に1%(1:100)加えると、油中のグラフェン濃度は約1:10,000。UQが検証した試験で、ディーゼルエンジンの燃費が最大8.4%向上。同じ試験設備で、エネルギー効率10%向上・排気中の粒子状物質33%減との結果。シール、センサー、触媒コンバーターへの影響はこれまでの検証では問題なしと説明 | 条件が異なる試験(ラリーカー1台の走行で約13.8%の燃費改善)もあるが、単一の事例。「最大8.4%」は最良値で、典型値ではない。自動車メーカーの承認の有無は確認できなかった |
| G FLUID | データセンター・産業用冷却水への添加剤(1リットルを100リットルに)。約20%の熱伝達の向上(脱塩水に1%添加=グラフェン0.01重量%、社内の予備試験)、抗菌性の試験結果は最大87%(EN 1276、外部ラボ) | 社内の予備試験。第三者による熱伝達の検証は確認できず。指標の定義は発表に書かれていない。市場規模の記述は調査会社の推計のため本稿では採用しない |
| SUPA G | 電池電極用のグラフェンスラリー。添加量0.5〜2重量%(一般的な炭素系添加剤は2〜5重量%と同社が表示)。BET表面積 約250 m²/g、かさ密度0.3〜0.4 g/cm³、粒子は約20 µmからサブµmまで。「標準的な黒鉛より平均イオン抵抗が2.5倍低い」と同社が報告 | 比較対象と測定法の詳細は公式ページに記載なし。電池セルでの第三者の評価結果は確認できなかった(BICが評価中) |
| G CELLS(開発中) | 1.5 Ahのパウチセル(BICが製造、GMGの材料)。2026年10月7日時点で、6分間の充放電(7C)で1,000サイクルまで性能低下なし、6分充放電(10C)でエネルギー密度58 Wh/kg(前回の39 Wh/kgから増加)、エネルギー効率94% | 同社が選んだ「有名なチタン酸リチウム(LTO)電池」との比較だが、製品名・条件は非公表。同社自身が「結果は予備的で、実際の性能を示すとは限らない」と注記。BTRLは4のまま |
(1) 原料は黒鉛ではなくメタン。 同社の方式は、メタンを電気プラズマで分解し、炭素を数層のグラフェンとして得ます(水素と残りの炭化水素ガスも発生)。黒鉛を原料にしないため、黒鉛の供給や剥離の工程に依存しないのが特徴だと同社は説明します。 独立機関(Advanced Carbons Council)の試験では数層グラフェンと確認された、と同社は述べています。粒子の幅や均一性は用途に合わせて調整できるとされますが、厚さの分布や欠陥の量などの具体値は公開されていません。 詳しくは、本シリーズの技術解説『グラフェン』を参照してください。
(2) 製品で効くのは、「樹脂の中のグラフェンの形と並び方」。 THERMAL-XRは、水系アクリル樹脂に分散させたグラフェンの薄い膜です。熱の通り道を作ることと、水や塩の浸入を防ぐこと、表面を撥水にすることを同時に狙っています。 同社は「1グラムのグラフェンに最大300 m²の表面積」と書きますが、この値の測定法は確認できません。 膜の性能は、グラフェンの量だけでなく、どれだけ均一に分散し、膜の中でどう並び、金属面とどう密着するかに左右されます(一般的な整理。具体的な膜厚や配合量は非公開)。
(3) 微量添加の「分散」が課題。 G LUBRICANTは、油に約1:10,000で入るグラフェンの添加剤です。粒子が凝集して沈むと効果が出ず、フィルターを詰まらせるおそれもあるため、油の中での分散安定性が鍵です。 同社は「シール・センサー・触媒コンバーターへの影響は検証した範囲で問題なし」と説明しますが、分散剤の種類や長期の安定性の数値は確認できません。 G FLUIDも同様に、冷却水の中での長期の安定性と、配管や熱交換器に付着しないことが課題になりえます(推測)。
(4) 電池では、量とばらつきが最大の壁。 SUPA Gの0.5〜2%の添加という仕様は、導電助剤としての使い方です。電池メーカーが採用するには、ロットごとの粒子構造・不純物・水分のばらつきの管理、数十トン規模の安定供給、長期のサイクル試験が必要です。 GMGのGen 2.0工場の公称能力は年10 tで、電池材料の需要規模と比べると小さく、同社自身が「大規模な商業生産」を将来の目標として書いています。 本シリーズの技術解説『グラフェン』『カーボンナノチューブ』『シリコン負極とナノ構造電極』も参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 財務の継続性 | 営業収益はA$724 thousand、営業活動の現金流出はA$12.2 million。期末は債務超過で、継続企業の前提に関する重要な不確実性を同社が開示。事業の継続は、追加の資金調達とワラント・オプションの行使に依存する。希薄化(株式数の増加)が続いている | 事実(会社の説明) |
| 会計・内部統制 | 前期(2025年6月期)の財務諸表を訂正(ワラントの取引費用の処理)。内部統制に重要な欠陥があると開示。同社は小さな会社で資源が限られると説明 | 事実 |
| 規制の不確実性 | 米国では、THERMAL-XRの輸出・流通・販売・使用が認可されたが、製造と、G LUBRICANT・G FLUIDなど他の製品は審査中(SNUN。完了は2027年6月末の見込み)。EPAの同意命令には条件がある。EUではREACH登録(年1トン以上)で販売可能だが、他の製品の登録状況は確認できなかった | 事実/見通しは未確定/将来 |
| 生産能力の実績が見えない | Gen 2.0工場は始動したが、最適化が続き、年10 tは見込み。Gen 1の能力と実際の生産量は非公開。新工場Fulcrumは設計段階で、資金手当ては確認できない | 未確定/将来 |
| 技術の成熟度 | 電池は技術成熟度(BTRL)4で、パウチセルの電気化学が未確定。発表されたデータは1.5 Ahの試作セルで、同社が予備的と注記。量産・顧客での評価は未達 | 事実(会社の説明) |
| 性能値の条件のばらつき | THERMAL-XRの省エネ率は設置先で11.6〜36.7%と幅があり、測定条件が非公開。G LUBRICANTの「最大8.4%」は最良値。製品の優位は、他社の製品との同一条件の比較ではなく、本稿では評価しない | 事実/確認できず(比較) |
| R&D税額控除への依存 | オーストラリアのR&D税額控除が、その他収益の大半(2026年6月期は約A$1.9 million)を占める。制度が変われば資金調達の負担が増すと同社が記述 | 事実(会社の説明) |
| 上場先の位置づけ | ASXではなくTSXVとOTCQXに上場している。TSXVは小型企業向けの市場で、流動性や開示の要件は豪州の主要市場と異なる。本稿は市場の評価をしない | 事実 |
| 競合・代替材料 | 他のグラフェン企業や、カーボンブラック・カーボンナノチューブなどの代替材料との競合。同社の資料に競合の記述はなく、本稿は評価しない | 推測 |
12. 用語集
- グラフェン
- 炭素原子が六角形に並んだ1原子の厚さのシート。GMGの粉体は数層(few-layer)の薄片。
- メタン熱分解(電気プラズマ)
- メタンをプラズマの熱で炭素と水素に分ける方法。GMGは炭素をグラフェンとして得る。
- THERMAL-XR
- GMGの熱交換器用グラフェンコーティング。HVAC-R(空調・冷凍)で使う。
- HVAC-R
- 暖房・換気・空調・冷凍の略称。
- BTRL(電池技術成熟度)
- 電池技術が基礎研究から量産に至る段階を示す尺度。GMGの電池は4(実験室でのパウチセル)。
- JDA(共同開発契約)
- GMGとRio Tintoの電池に関する契約。
- PMN/SNUN(TSCA)
- 米国の新規化学物質の製造前届出(PMN)と、重要新規利用届(SNUN)。EPAが審査し、同意命令で条件を付けることがある。
- REACH
- EUの化学物質規則。年1トン以上の製造・輸入に登録が必要。
- ワラント(新株予約権)
- 一定の価格で株式を買う権利。GMGのワラントは負債として公正価値で測るため、株価の上昇で損失が出る。
- ATM(市場での随時売り出し)
- 企業が、市場で随時株式を売って資金を調達する仕組み。
- メーカー公称/会社の主張
- メーカー自身が示す性能値や説明。試験条件と版が一緒でないと、他の製品と比べられない。

13. 出典
- Graphene Manufacturing Group Management’s Discussion and Analysis for the years ended 30 June 2026 and 2025(2026年9月29日付、豪ドル建て)。事業の概要、業績、財政状態、リスク。 https://graphenemg.com/wp-content/uploads/2026/10/GMG-FY26-MDA-12-Months-Ended-30-June-2026.pdf
- Graphene Manufacturing Group Management’s Discussion and Analysis for the years ended 30 June 2025 and 2024。Gen 2.0工場の計画と前期の状況。 https://graphenemg.com/wp-content/uploads/2025/10/02.-GMG-MDA-12-Mths-Ended-30-June-2025.pdf
- Graphene Manufacturing Group 公式サイト「About GMG」。事業の概要、所在地、上場市場。 https://graphenemg.com/about-gmg/
- Graphene Manufacturing Group 公式サイト「GMG Graphene & Liquid Graphene」。グラフェンの製法(天然ガスと電気プラズマ)、よくある質問。 https://graphenemg.com/about-gmg/gmg-graphene-liquid-graphene/
- Graphene Manufacturing Group 公式サイト「Investors」。資本構成、財務書類の一覧。 https://graphenemg.com/investors/
- Graphene Manufacturing Group 公式サイト「THERMAL-XR」。コーティングの構成、試験、現場での測定結果。 https://graphenemg.com/graphene-products/thermal-xr/
- Graphene Manufacturing Group 公式サイト「SUPA G」。電池用グラフェンスラリーの仕様。 https://graphenemg.com/graphene-products/supa-g/
- Graphene Manufacturing Group GMG Announces 48% Increase in Energy Density, Doubling of Cycle Life and 94% Energy Efficiency for 6 Minute Fast Charge(2026年10月8日のプレスリリース)。 https://graphenemg.com/gmg-announces-48-increase-in-energy-density-doubling-of-cycle-life-and-94-energy-efficiency-for-6-minute-fast-charge/
- Graphene Manufacturing Group Critical Minerals Minister Officially Opens GMG’s Gen 2.0 Graphene Manufacturing Plant(2026年9月16日のプレスリリース)。 https://graphenemg.com/critical-minerals-minister-officially-opens-gmgs-gen-2-0-graphene-manufacturing-plant/
- Graphene Manufacturing Group GMG Launches New Graphene Water Coolant Additive for Data Centres: G FLUID(2026年8月24日のプレスリリース)。 https://graphenemg.com/gmg-launches-new-graphene-water-coolant-additive-for-data-centres-g-fluid/
- Graphene Manufacturing Group GMG Launches Asia Pacific Sales Team(2026年9月8日のプレスリリース)。 https://graphenemg.com/gmg-launches-asia-pacific-sales-team/
- Graphene Manufacturing Group GMG’s TSXV Listing – Approaching in April(2021年3月30日のプレスリリース)。 https://graphenemg.com/gmgs-tsxv-listing-approaching-in-april/
- Graphene Manufacturing Group Graphene Manufacturing Group Ltd. Commences Trading on OTCQX Under the Symbol GMGMF(2024年2月26日のプレスリリース)。 https://graphenemg.com/graphene-manufacturing-group-ltd-commences-trading-on-otcqx-under-the-symbol-gmgmf/
- U.S. EPA/Federal Register Certain New Chemicals; Receipt and Status Information for February 2025(2025年5月7日、文書番号2025-07941)。PMN P-25-0018の受理(提出者は営業秘密として非開示、graphene platelets)。 https://www.federalregister.gov/documents/2025/05/07/2025-07941/certain-new-chemicals-receipt-and-status-information-for-february-2025
- Graphene Manufacturing Group 公式サイト(トップページ。ロゴ画像の取得元)。 https://graphenemg.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月9日/Troy Technical
本稿の内容は、GMGのMD&A(2026年6月期・2025年6月期)、公式サイト、プレスリリース、米国の連邦官報に基づきます。調査会社の市場推計や報道ベースの数値は使用していません(G FLUIDの発表にある市場規模の記述は調査会社の推計のため採用していません)。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。製品の性能値は同社の主張で、試験条件の異なる他の値とは比較できません。会社の計画・目標は未確定で、実現を保証するものではありません。本稿は、製品の使用・安全、投資の判断について、読者個人に助言するものではありません。