COMPANY PROFILE / ナノテクノロジー
ASMインターナショナル
― 原子1層ずつ膜を積む「ALD」の装置とプロセスの会社。2nm世代のGAAトランジスタの層づくりに使われる
ASM International(以下ASM)は、オランダの半導体製造装置メーカーです。ナノテクノロジーの文脈で名前が出るのは、原子層堆積(ALD)という、膜を原子1層ずつ積み上げる方法の装置とプロセスを、チップの量産向けに供給しているからです。 会社は、ALDの装置で首位だと説明しています(会社の推計。本稿は市場シェアの数字を採用しません)。年次報告書は、ALDが装置の売上の過半を占める最大の製品群だと書いています。 2025年の売上は31.7億ユーロで、最先端のロジック/ファウンドリー(2 nm世代のゲート・オール・アラウンド〔GAA〕トランジスタ)への投資が牽引しました。 ASMは自社を「材料発見の会社」と呼び、前駆体(膜の原料となる化学物質)の化学、プラズマ、原子レベルのプロセスが強みだと説明しています。 本稿は、ALD装置・プロセスに絞り(エピタキシー、CMP、縦型炉などは触れる程度)、一次資料で確認できたことと、確認できなかったことを整理します。
- 30秒でわかるASM Internationalと、ナノテクノロジーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- ナノテクノロジーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- ナノテクノロジーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はナノテクノロジーで何を目指しているか
- ナノテクノロジー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるASMインターナショナルと、ナノテクノロジーでの立ち位置
ASMは「膜を原子1層ずつ積む装置と、その膜の原料・条件(レシピ)を、一体で売る会社」です 本稿の計算。 ALDは、前駆体の気体を交互に流し、間を不活性ガスで洗い流すことを繰り返して、飽和した表面反応で1層ずつ膜を作る方法です(ASMの公式ページ) 事実。 どんな形の凹凸にも均一に膜が付く(段差被覆性)ことと、厚みを原子の層の単位で決められることが、GAAのように立体で複雑な構造で効きます。 一方で、ALDの装置の性能(膜厚の均一性、欠陥、スループットなど)の数値は、参照した資料に載っていません。 会社の「市場シェア」や「市場規模」の数字は会社自身の推計で、本稿では採用しません 未確定/将来。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:会社名はASM International N.V.、通称はASM(以前は「ASMI」とも)です。リソグラフィ装置のASMLとは別の会社です。ASMは1980年代半ばにPhilipsとリソグラフィ技術の合弁事業を始め(現在のASML)、1988年に持分を売却したと、ASMの年次報告書は記載しています。 もう1つ、香港で設立されたASMPT(後工程装置)は、ASMが過去に設立した会社で、ASMは2025年末に24.65%の持分を持っていますが、別の会社です。 ロゴ画像は、同社の公式サイトで使われているものを取得しました。
公式サイト:https://www.asm.com/3. ナノテクノロジーの世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模
ASMは年間売上が約32億ユーロの会社で、ALD以外(エピタキシー、縦型炉など)の事業もあるため、会社全体の数字を簡潔に示し、ALDに関わる数値は文章で補います。会計年度は暦年、金額はユーロ、会計基準はIFRSです。
| 指標(百万ユーロ) | 2025年 | 2024年 |
|---|---|---|
| 売上 | 3,173.2 | 2,932.7 |
| うち 装置の売上 | 2,457.5 | 2,303.3 |
| うち 保守・サービス(Spares & Services)の売上 | 715.7 | 629.4 |
| 売上総利益(粗利益率) | 1,643.6(51.8%) | 1,481.4(50.5%) |
| 営業利益 | 938.0 | 802.1 |
| 純研究開発費(総研究開発費は2025年に512百万) | 409.0 | 369.8 |
| 設備投資 | 218 | 168 |
| 従業員(年末) | 4,519人 | 4,558人 |
2025年は、ALDが最大の製品群で、装置の売上の半分超を占め、前年比で2桁の増収でした(ALD単独の金額は非公表。会社の説明) 事実。 売上の地域別は、アジアが80.2%(2,544.1百万ユーロ)、米国15.3%、欧州4.5%でした。中国向けの装置売上は全売上の30%超(2025年)です。 上位5顧客が売上の53.6%、上位10顧客が72.3%を占め、2社がそれぞれ10%を超えました(顧客名は資料に記載なし) 事実。 2026年上半期は、売上18.66億ユーロ(前年同期比+11%、為替一定で+20%)、粗利益率52.6%、調整後の営業利益6.16億ユーロ(営業利益率33.0%)。装置の売上のうち、ロジック/ファウンドリーが77%、メモリが15%、パワー・アナログ・ウエハーが8%でした 事実。
ALD装置の売上・利益・出荷台数は、参照した資料に独立した金額として開示されていません。 年次報告書は製品群の相対的な規模を言葉で示すだけです(「ALDが最大で、装置の売上の半分超」)。 また、年次報告書や投資家向け資料には、ALDやエピタキシーの「市場規模」「市場シェア」「対象となる市場の拡大額」が出ますが、算定の根拠は会社の推計や外部の調査会社の数字で、本稿は採用しません 未確定/将来。
5. ナノテクノロジーにかけているリソース
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 会社全体で4,519人(2025年末)、2026年6月末は4,908人(FTE)。従業員の27%が研究開発。研究開発拠点は世界8か所:コーポレートR&DはHelsinki(フィンランド。前駆体の化学)とLeuven(ベルギー。材料の応用とデバイスの評価)、製品開発はAlmere(オランダ。縦型炉)、Phoenix(米国。熱ALD・エピタキシー)、Hwaseong(韓国。PEALD)、Tama(日本。PECVD・PEALD)、イタリア(SiCエピタキシー) | 事実 |
| 金(研究開発・設備投資) | 総研究開発費は512百万ユーロ(2025年。前年比+9%)、純研究開発費は409.0百万ユーロ。2026年上半期の調整後の純研究開発費は209.9百万ユーロ。設備投資は218百万ユーロ(2025年)で、今後は拡張期の年に年150〜250百万ユーロを見込む(会社の見通し)。ALD単独の研究開発費・設備投資は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 買収・出資・合弁・売却 | 1999年にASM Microchemistry(Microchemistry Oy。Helsinki)、2004年にASM Genitech Koreaを取得し、ALDの基盤を作ったと会社は説明。2022年にLPE(SiCエピタキシー)、2025年12月にAxus Technology(米国Chandler。CMP装置)を取得(買収の現金は81百万ユーロ、LPEの追加支払い100百万ユーロ)。ASMPTの24.65%の持分を保有 | 事実 |
| 大学・研究機関・公的資金 | imec(ベルギー)と1990年から連携(1994年から現地に拠点)、2026年1月に6回目の戦略的連携契約。University of Helsinkiと、ASMが出資して設立したALD Center of Excellence。米国のSemiconductor Research Corporation(SRC)のナノ製造プロセスのプログラムに参加。TU/e(アイントホーフェン工科大学)と4年間の連携(2024年署名)、TU Delftとも連携。オランダのNWO(TTW領域)の資金を通じた大学の研究、ベルギーのVLAIOが支援するプロジェクトに参加。個別の助成金額は確認できず | 事実/金額は確認できず |
主要な製品・設備の状況
| 製品・設備 | 内容(会社の説明) | 段階 | 日付・出典 |
|---|---|---|---|
| ALD装置群 | 熱ALDとPEALDの装置(Pulsar、EmerALD、Synergis、XP8のDCM/QCM/JQCM/Magma など)。XP4・XP8は300 mmの枚葉プラットフォーム。XP8は最大16チャンバー | 供給中 | 2025年・2026年(出典1・5) |
| Mo ALD(モリブデンのALD) | 2 nm世代で最初の用途を出荷。会社は、導入の速度は数年前の想定より遅いが、長期の機会だと説明。1.4 nm世代でも採用を獲得したと2026年7月に記載 | 量産に出荷(2 nm)。1.4 nmは未確定/将来 | 2026年3月・7月(出典1・3) |
| Scottsdaleの新R&Dセンター(米国) | ALDとエピタキシーの研究開発を拡張。2023年に発表 | 建設中。開所は2027年初めの予定(未確定/将来) | 2026年3月(出典1) |
| Dongtanの製造・イノベーションセンター(韓国) | 製造と研究開発の拠点。2025年に次の段階を完成。シンガポールの製造拠点と合わせて、今後の成長を支える能力と説明 | 稼働(開所済みと記載) | 2026年3月(出典1) |
| Almereの新本社・R&D施設(オランダ) | 世界本社、研究開発センター、研修拠点、製品開発の一部。今後数年で数億ユーロを投資する見込み | 計画(2025年12月に意向を発表。未確定/将来) | 2026年3月(出典1) |
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1968年 | オランダでASMが創業。1976年にASM Americaを設立(エピタキシーの基盤)、1982年からASM Japanがプラズマ CVDを開発 | 成膜装置の会社としての出発点 |
| 1980年代 | 1980年代半ばにPhilipsとリソグラフィ技術の合弁事業を始め(現在のASML)、ASMは1988年に持分を売却 | リソグラフィと成膜は別の道へ |
| 1999年・2004年 | ASM Microchemistry(Helsinki)、ASM Genitech Korea(韓国)を取得 | ALDの前駆体の化学とPEALDの基盤 |
| 2007年 | PulsarのALD装置が、ハフニウム系のhigh-kゲート絶縁膜(45 nmノード)の量産で初めて使われたと会社は説明 | ALDが量産に入った節目(会社の説明) |
| 2011年 | 22 nmへの移行(平面からFinFETへ)で重要な役割を担ったと会社は説明 | 立体トランジスタへの対応 |
| 2024年〜2025年 | 2 nm世代のGAAが量産に入り、ALDの売上が伸びた。2025年は売上が過去最高の31.7億ユーロ | GAAの立ち上がりが業績を牽引 |
| 2025年12月 | Axus Technology(CMP装置)を取得。Almereに新本社・R&D施設を建設する意向を発表 | ALD以外の周辺と、研究開発の拡張 |
| 2026年1月 | imecと6回目の戦略的連携契約に署名 | 30年超の共同研究の継続 |
| 2026年7月28日 | 第2四半期の売上が過去最高の10.03億ユーロ。1.4 nm世代のMo ALDの採用を獲得したと説明 | 次の世代(1.4 nm)への布石 |
7. 今後の計画
ほかに、一次資料には次の方針と計画が書かれています 未確定/将来。
- 1.4 nm世代:2026年7月の発表で、1.4 nm世代が2026年下期に初めて意味のある売上になる見通しと説明。ALDとエピタキシーの両方でシェアを上げたとし、1.4 nm世代のMo ALDの採用を獲得したと述べています。年次報告書は、1.4 nm世代ではトランジスタ層がALD層全体の約60%(2 nm世代は50%)になると見込んでいます(会社の見通し)
- メモリ:2026年は高帯域メモリ(HBM)向けのDRAMが牽引。別のDRAM顧客にエピタキシーの装置が選ばれたと説明。年次報告書は、DRAMの次の世代がASMにとって大きな機会になると記述
- 施設:Scottsdale(米国)の新R&Dセンターは2027年初めに開所の予定。Almereの新本社・R&D施設は今後数年で数億ユーロを投資する見込み。製造能力は、2030年の売上目標とそれ以降に対しても現在の能力で足りると会社は説明
- 設備投資の指針:拡張期の年は年150〜250百万ユーロ(会社の見通し)
ALD単独の売上・利益・出荷台数・研究開発費/ALD装置の性能の数値(膜厚の均一性、欠陥密度、スループット)/1.4 nm世代でASMの装置を採用した顧客の名前/AxusとLPEの取得金額の総額(Axusは現金81百万ユーロの記載のみ)/各大学・公的機関への助成の個別の金額。 いずれも、参照した年次報告書・決算発表・中間報告書・公式ページに記載がないか、本稿で原文を確認できていません。
8. この会社はナノテクノロジーで何を目指しているか
会社が「目指す」と直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 新しい材料と原子レベルのプロセスで、デバイスの世代交代に入り込む | CEOは2026年7月に、自社を「材料発見の会社」と呼び、前駆体の化学と原子レベルのプロセス技術が最先端のロジックとHBMを可能にすると説明。年次報告書は、新しい材料を、より高い制御性と被覆性で堆積する、と記述 | 事実(会社の説明) |
| GAAのようにALDの層が増える世代で、層の数に比例して機会を増やす | 年次報告書は、GAAでは追加のALDとエピタキシーの工程が必要になり、ALD層数が増えると説明。ALDの製品群は2003年の3〜4層から現在80層超に広がったと記載 | 事実(会社の説明) |
| 次の世代(1.4 nm、DRAMの次世代)でも、材料と装置の組み合わせで採用を取る | 2026年7月:1.4 nm世代のMo ALDの採用を獲得。DRAMでもALD・エピタキシーでシェアを伸ばす姿勢 | 事実(会社の説明)/推測(今後も採用が続くか) |
| 研究開発の拠点を、顧客・研究機関の近くに置く | Leuvenはimecの敷地内、Helsinkiは前駆体の化学、Scottsdale・Dongtan・Almereで拡張 | 事実(拠点の記載)/推測(顧客への近さが狙いか) |
「ASMは、装置の単独の性能よりも、『前駆体と装置とレシピの組み合わせ』で顧客に採用されることを重視している」という読みの根拠は、年次報告書の記述です。 同報告書は、新しいプロセスの用途の多くは顧客ごとの個別の用途で、顧客との共同開発(JDP)の成果であると書き、共同開発は現在の量産ノードから「N+2」以降のノードまで及ぶと説明しています 事実。 また、Helsinkiの拠点が前駆体の化学を、Leuvenが材料の応用とデバイスの評価を担うと、役割を分けて記述しています 事実。 これらから、本稿は、化学物質(前駆体)から装置、デバイスでの評価までを一続きで持つことが、ASMの採用の理由と見ていると読みます。 ただし、個別の採用の理由や、競合との比較は、ASMの資料に書かれていません。前駆体を自社で作るのか外部から調達するのかも、参照した資料では確認できていません 未確定/将来。
9. ナノテクノロジー分野の提携マッピング
参照した資料から確認できるASMの主な連携は、imec(1990年から。Leuvenの敷地内に拠点)、University of Helsinki(ALD Center of Excellence)、オランダ・ベルギー・米国などの大学と研究コンソーシアム、そして顧客との共同開発プログラム(JDP)です 事実。 ASMは顧客のJDPが現在のノードから「N+2」以降まで及ぶと書いていますが、個別の顧客名や、どの顧客がどの装置を採用したかは、資料に書かれていません。 前駆体の供給元や、ASMが化学メーカーと結んでいる個別の契約も、参照した資料に載っていません 未確定/将来。
10. 提供している技術・製品・サービス
本稿はALDの装置とプロセスに絞ります(エピタキシー、PECVD、縦型炉、CMPは触れる程度)。性能の数値は会社の説明であり、条件を添えます。ALD装置の膜厚均一性などの数値は参照した資料に載っていません。
| 区分 | 公式資料に載っている内容 | 条件・規模・出所 |
|---|---|---|
| ALDの方式 | 前駆体と反応剤を交互に流し、間を不活性ガスで洗い流して、1層ずつ膜を作る。飽和した表面反応(自己停止)で、厚みは繰り返しの回数で決まる。段差の大きい面でも均一な膜になる。ナノラミネート(異なる材料の積層)も作れる | 会社の説明(公式ページ)。条件の記載なし |
| 熱ALDとPEALD | 熱ALDは熱で反応を進める。PEALDは高周波プラズマで反応のエネルギーを与えるため、低い温度で済み、熱の負担が小さい用途に向く | 会社の説明(公式ページ)。同じ前駆体を使う |
| 装置(プラットフォームと製品) | XP4(最大4プロセスモジュール)、XP8(最大16チャンバー)、XP8E(最大6つの二重・四重チャンバーモジュール)の枚葉プラットフォーム(300 mm)。ALD製品はPulsar(high-k)、EmerALD(金属・誘電体)、Synergis(熱ALD)、XP8のDCM/QCM/JQCM(PEALD)、Magmaなど | 会社の説明(年次報告書、公式ページ)。スループットの数値は記載なし |
| 主な用途 | high-kメタルゲート(GAA)、ダイポール層、仕事関数の金属、スペーサー、高アスペクト比の埋め込み、EUV露光の下層膜、金属ALD、選択ALD(ASD)、MIMキャパシター | 会社の説明(年次報告書)。Mo ALDとASDは2 nm世代で量産に入ったと会社は説明(2026年3月) |
| プロセスの数 | ALDの製品群は、2003年の3〜4層から、現在は80層超。ALD文献で挙げられる元素の70%超について、参照プロセスを開発したと会社は説明 | 会社の説明(年次報告書)。第三者の検証なし |
| 保守・サービス | 成果連動型のサービス(性能と稼働を保証)。2030年までに保守・サービス売上の半分超を目標 | 2025年の保守・サービス売上は715.7百万ユーロ。目標は会社の計画 |
ALDの要は、前駆体の化学と基板の表面です。ASMの年次報告書によると、Helsinkiの拠点は新しいALD材料の前駆体の化学を、Leuvenの拠点は材料の応用とデバイスでの評価を担当しています 事実。 金属のALDでは、膜の堆積の前に表面の不純物や水分を除く表面洗浄(surface clean)を、同じプラットフォームの中で真空を破らずに行う技術を開発したと説明しています 事実。 金属酸化物には、5〜7種類の元素を混ぜ合わせて堆積できる反応炉を開発したとされます。一方、ALDの膜がどんな前駆体(化学物質)から作られているかは、参照した資料に載っていません。
GAAトランジスタでは、ゲートがチャネル(積み重ねたナノシート)を完全に取り囲むため、すき間の奥まで均一に膜を付けられることが必要です。年次報告書は、GAAのトランジスタ層として、high-k絶縁膜、複数のしきい値電圧のためのダイポール層、仕事関数の金属を挙げ、1.4 nm世代ではこれらがALD層全体の約60%(2 nm世代は50%)になると見込んでいます(会社の見通し) 未確定/将来。 また、配線・コンタクトでは、MoのALDが、将来はタングステンや銅の層を置き換えていくと会社は説明しています(導入の速度は想定より遅いとも記載)。その理由(抵抗率、バリア膜の厚みなど)の数値は、参照した資料に載っていません。 ALDは1サイクルで原子1層程度しか積めないため、層が増えるほどサイクル数と時間が増えるのが一般的な課題です(一般的な説明。会社の資料の数値ではありません)。会社が複数チャンバーの構成(XP8は最大16チャンバー)を強調するのも、スループットの確保が狙いと考えられます 本稿の計算。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 顧客の集中 | 2025年は、上位5顧客が売上の53.6%、上位10顧客が72.3%を占め、2社が各10%超。先端ロジックの数社の投資計画に左右される | 事実 |
| 中国向けと輸出管理 | 2025年は、中国向けの装置売上が全売上の30%超(成熟ロジック・ファウンドリー中心)。年次報告書は、将来の輸出管理の措置が、中国での販売可能な市場をさらに限定しうると記載。具体的な新しい規制の施行は、参照した資料に書かれていない(提案・採択・施行の段階は個別に確認が必要) | 事実(会社の記載) |
| 需要の変動 | 2025年はパワー・アナログ・ウエハーの落ち込みと中国メモリの正常化があり、2025年第4四半期の売上は前年同期比で為替一定で−7%。半導体の設備投資の波に左右される | 事実 |
| 新材料・新用途の導入の遅れ | Mo ALDは、導入の速度が数年前の想定ほど速くないと会社が記載。1.4 nm世代の量産の開始は顧客の計画(2027〜2028年)で、遅れうる | 事実(会社の記載)/未確定/将来 |
| 会社の推計への依存 | 市場シェアや対象市場の拡大額は会社の推計で、第三者の検証は参照資料に記載なし。外部から確かめにくい | 事実 |
| 拠点・投資の負担 | Scottsdale、Dongtan、Almereの新施設で設備投資が増える(年150〜250百万ユーロの指針)。Almereは「数億ユーロ」と記載。需要が想定を下回れば負担が重くなりうる | 事実/推測 |
| 専門人材の確保 | 従業員は2026年上半期に389人(FTE)増え、全体の離職率は15%(2025年上半期は14%)に上昇。事業拡大に合わせた採用と定着が課題になりうる | 事実/推測(採用・定着の負担) |
12. 用語集
- ALD(原子層堆積)
- 前駆体と反応剤を交互に流し、1層ずつ膜を積む方法。本シリーズの技術解説「原子層堆積」を参照。
- PEALD
- プラズマ援用のALD。プラズマで反応のエネルギーを与え、低温で成膜できる。
- 前駆体
- 膜の原料となる化学物質。ALDでは基板の表面と反応する気体として供給する。
- 自己停止(自己制限)反応
- 表面が飽和すると、それ以上は反応が進まない性質。膜厚が回数で決まる理由。
- GAA(ゲート・オール・アラウンド)
- ゲートが、積み重ねたナノシートのチャネルを全周で囲むトランジスタ。本シリーズの技術解説「ナノスケールのトランジスタ」を参照。
- high-k/メタルゲート
- 誘電率の高いゲート絶縁膜と、金属のゲート電極。ALDで作る代表的な層。
- ダイポール層
- トランジスタのしきい値電圧を調整するための極薄の層(複数のしきい値電圧に使う)。
- 選択ALD(ASD)
- 特定の表面にだけ膜を成長させる方法。位置合わせの余裕を増やす狙い。
- エピタキシー(Epi)
- 下の結晶に合わせて結晶の膜を成長させる方法。ASMの別の主力の製品群。
- JDP(共同開発プログラム)
- 顧客と共同で、量産に向けた装置とプロセスを開発する取り組み。

13. 出典
- ASM International Annual Report 2025(2026年3月公表)。事業概要、売上・利益、ALD・Epiの事業、研究開発、提携、設備投資、顧客集中。 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf
- ASM International プレスリリース「ASM reports Q4 and full-year 2025 results」(2026年3月3日)。2025年の装置売上、保守・サービスの売上、受注。 https://www.asm.com/media/yvxbavwe/20260303-asm-reports-q4-and-full-year-2025-results.pdf
- ASM International プレスリリース「ASM reports second quarter 2026 results」(2026年7月28日)。第2四半期の実績、見通し、1.4 nm世代の記述。 https://www.asm.com/media/y0mkxj21/20260728-asm-reports-second-quarter-2026-results.pdf
- ASM International Interim Report 2026(2026年上半期)。上半期の売上・研究開発費・従業員数。 https://www.asm.com/media/4s2bztwz/asm-statutory-interim-report-2026.pdf
- ASM International 公式サイト「ALD」。ALDの原理、熱ALDとPEALD、装置の一覧。 https://www.asm.com/our-technology-products/ald
- ASM International 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.asm.com/media/uotnslj4/asm-logo2022_rgb_innovationpurple-1.png
14. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| ASM International N.V.はオランダ法人で本社はAlmere。Euronext Amsterdamに上場(ASM)。AEX指数に採用。会計年度は12月末 | 事実 | 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf 出典3 https://www.asm.com/media/y0mkxj21/20260728-asm-reports-second-quarter-2026-results.pdf |
| 2025年:売上3,173.2百万ユーロ(2024年2,932.7)、装置の売上2,457.5(2,303.3)、保守・サービスの売上715.7(629.4)、売上総利益1,643.6(粗利益率51.8%)、営業利益938.0(802.1)、純研究開発費409.0(369.8) | 事実 | 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf 出典2 https://www.asm.com/media/yvxbavwe/20260303-asm-reports-q4-and-full-year-2025-results.pdf |
| 総研究開発費512百万ユーロ(+9%)、設備投資218百万ユーロ(2024年168)、従業員4,519人(2024年4,558人)。従業員の27%が研究開発。研究開発拠点は世界8か所 | 事実 | 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| ALDは最大の製品群で装置の売上の半分超。ALD単独の金額は非公表。2025年は2桁%の増収 | 事実 | 会社の説明。 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| 売上の地域別:アジア80.2%(2,544.1百万ユーロ)、米国15.3%、欧州4.5%。中国向けの装置売上は全売上の30%超。上位5顧客が53.6%、上位10顧客が72.3%、2社が各10%超 | 事実 | 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf 出典2 https://www.asm.com/media/yvxbavwe/20260303-asm-reports-q4-and-full-year-2025-results.pdf |
| 2026年上半期:売上1,865.6百万ユーロ(+11%、為替一定+20%)、装置1,470.0、保守・サービス395.6、粗利益率52.6%、調整後の営業利益616.4(33.0%)、調整後の純研究開発費209.9。装置の売上はロジック・ファウンドリー77%、メモリ15%、パワー・アナログ・ウエハー他8%。従業員は2026年6月末に4,908人(FTE) | 事実 | 出典4 https://www.asm.com/media/4s2bztwz/asm-statutory-interim-report-2026.pdf |
| 2026年第2四半期:売上1,003.1百万ユーロ。第3四半期は1,100百万ユーロ(±5%、為替一定)、下期は上期比で20%超の増収。2027年の売上は37〜46億ユーロの目標レンジの上限を超える見込み | 未確定/将来 | 会社の見通し。 出典3 https://www.asm.com/media/y0mkxj21/20260728-asm-reports-second-quarter-2026-results.pdf |
| 2030年の売上は57億ユーロ以上(年平均成長率12%以上)、営業利益率30%超。保守・サービスは年平均12%超で成長、成果連動型を半分超に | 未確定/将来 | 会社の目標。 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| ALDの原理:前駆体と反応剤を交互に流し、不活性ガスで洗い流す。自己停止の表面反応で、回数で厚みが決まる。段差の大きい面でも均一。ナノラミネートが作れる。PEALDはRFプラズマで反応のエネルギーを与える | 事実 | 会社の説明。 出典5 https://www.asm.com/our-technology-products/ald |
| ASMのALD装置の一覧(EmerALD XP、Pulsar、Synergis、XP8のDCM/QCM/JQCM/Magmaなど)と、XP4・XP8・XP8Eの構成 | 事実 | 会社の説明。 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf 出典5 https://www.asm.com/our-technology-products/ald |
| Mo ALDとASDは2 nm世代で量産に入った。1.4 nm世代でMo ALDの採用を獲得。Mo ALDの導入の速度は想定より遅い。1.4 nm世代のパイロットライン投資は2026年下期、量産は2027〜2028年(顧客の計画) | 未確定/将来 | 会社の説明。 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf 出典2 https://www.asm.com/media/yvxbavwe/20260303-asm-reports-q4-and-full-year-2025-results.pdf 出典3 https://www.asm.com/media/y0mkxj21/20260728-asm-reports-second-quarter-2026-results.pdf |
| GAAのトランジスタ層:high-k、ダイポール層、仕事関数の金属。1.4 nm世代でALD層全体の約60%(2 nm世代は50%)になる見込み | 未確定/将来 | 会社の見通し。 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| ALDの製品群は2003年の3〜4層から80層超。ALD文献で挙げられる元素の70%超について参照プロセスを開発。2007年にPulsarが45 nmノードのhigh-kゲートの量産で初めて使われた。2011年の22 nm(FinFET)でも役割 | 事実 | 会社の説明。第三者の検証なし。 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| 1968年に創業。1976年ASM America、1982年ASM Japan。1980年代半ばにPhilipsとリソグラフィの合弁を始め、1988年に持分を売却。1999年にASM Microchemistry、2004年にASM Genitech Korea、2022年にLPE、2025年12月にAxusを取得。ASMPTの持分は24.65% | 事実 | 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| Axusの取得は現金81百万ユーロ(LPEの追加支払い100百万ユーロと合わせて181百万ユーロのM&Aの現金) | 事実 | 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| imecと1990年から連携(1994年から現地に拠点)、2026年1月に6回目の戦略的連携契約。University of HelsinkiとのALD Center of Excellence。SRCのナノ製造プログラム。TU/eとの4年間の連携(2024年)、TU Delftとの連携。NWO(TTW)とVLAIOのプロジェクト。顧客とのJDP(N+2以降まで) | 事実 | 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| Scottsdaleの新R&Dセンターは建設中で、2027年初めの開所予定。Dongtan(韓国)の製造・イノベーションセンターは2025年に次の段階を完成。Almereの新本社・R&D施設は数億ユーロの投資見込み(2025年12月に意向を発表)。設備投資の指針は年150〜250百万ユーロ | 未確定/将来 | 会社の計画。 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| 将来の輸出管理の措置が、中国での販売可能な市場をさらに限定しうる | 事実 | 会社のリスク記述。具体的な規制の施行は記載なし。 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| 2026年上半期に従業員が389人(FTE)増え、離職率は15%(2025年上半期14%) | 事実 | 出典4 https://www.asm.com/media/4s2bztwz/asm-statutory-interim-report-2026.pdf |
| ALD単独の売上・利益・出荷台数・研究開発費、ALD装置の性能の数値、1.4 nm世代の採用顧客名、個別の助成金額 | 未確定/将来 | 参照した資料に記載なし。確認できず。本稿では推計しない(見通し)。 |
| 市場シェア・対象市場の拡大額(会社の推計)は本稿で採用しない | 本稿の計算 | 本稿の方針。算定の根拠が会社の推計や外部の調査会社のため。 |
| ロゴ画像は公式サイトのもの | 事実 | 出典6 https://www.asm.com/media/uotnslj4/asm-logo2022_rgb_innovationpurple-1.png |
| 4類型の区分と企業名の例示 | 本稿の計算 | 本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示。 |
| 「ALDは1サイクルで原子1層程度しか積めず、層が増えるほどサイクル数と時間が増える」「複数チャンバー構成はスループットの確保が狙い」という説明 | 本稿の計算 | 解説(一般的な説明と本稿の解釈)。会社の資料に載る数値ではない。 |
| ASMは前駆体と装置とレシピの組み合わせで採用されることを重視しているという読み | 推測 | 顧客とのJDPと、HelsinkiとLeuvenの役割分担の記述からの本稿の解釈。 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
| 事業拡大に合わせた採用・定着が課題になりうるという見立て | 推測 | 中間報告書の人員増と離職率の上昇からの本稿の解釈。 出典4 https://www.asm.com/media/4s2bztwz/asm-statutory-interim-report-2026.pdf |
| 研究開発拠点を顧客・研究機関の近くに置くことが狙いという読み | 推測 | 拠点の配置(Leuvenはimecの敷地内など)からの本稿の解釈。 出典1 https://www.asm.com/media/3skhiimk/asm-2025-annual-report.pdf |
最終更新:2026年10月9日/Troy Technical
本稿の数値は、ASM Internationalの Annual Report 2025、決算発表(2026年3月、7月)、2026年上半期の中間報告書、公式サイトに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。市場シェア・市場規模は会社の推計であり、本稿では採用していません。会社の見通し・計画・目標は会社の説明であり、第三者の検証を経たものではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。