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ナノコーティングと薄膜 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

ナノコーティングと薄膜
― 「どれだけ薄いか」より「どこが欠けているか」

反射防止、撥水、バリア、硬質。ナノメートルの厚みの膜は、ガラスやレンズ、フィルム、工具の表面で働いています。 けれども「ナノコーティング」という言葉は、厚みがナノなのか、中身の構造がナノなのかで意味が変わります。 この記事は、ISO の用語規格、各種の試験規格、メーカーの技術資料、EU・日本・米国の公的文書を一次情報として、 成膜法の地図、膜の機能、評価(膜厚・密着・ピンホール)、PFAS 系撥水材を中心とした環境規制を整理した解説です。 特定の製品や企業の優劣を示すものではなく、法務の助言でもありません。

構成:ISO 80004-1:2023、ISO/TS 80004-8・-11、ISO・ASTM の試験規格、Daikin・Oerlikon Balzers・Edmund Optics・CASTECH の公開資料、EUR-Lex、ECHA、環境省、米国 EPA、査読論文を一次情報として使用/最終更新 2026年10月9日(規制の確認日も同日)

ナノコーティングと薄膜の構造・工程を示す解説画像
概念図(AI生成イメージ)。「真空の中で、基板に薄い膜をつける」という成膜の基本の場面を表現したものです。実在の装置・製品・成膜条件を示すものではありません。
この記事の構成
  1. ナノコーティングとは何か ― 3行でつかむ
  2. 成膜法の地図 ― 物理と化学、乾式と湿式
  3. 本稿の計算:ディップコートで「ナノの厚み」になるまで
  4. 素材技術者の視点①:膜は「応力」を抱えている
  5. 反射防止 ― 薄膜干渉で光を消す
  6. 撥水・防汚 ― メーカー公称値の読み方
  7. バリアと硬質 ― 欠陥と厚みの関係
  8. 評価:膜厚・密着・ピンホール
  9. 素材技術者の視点②:同じ膜でも、測り方が違えば数字が違う
  10. 環境規制 ― PFAS 系撥水材を中心に
  11. 課題と、本稿で確認できなかったこと
  12. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標・審議中の事項で、実績や確定が確認できていないもの
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別し、根拠の弱い見立ては推測と明記しています。
各社の性能値はメーカー公称(代表値)であり、測定条件の異なる数値どうしで優劣をつけていません。規制は提案・採択・適用開始を区別して書き、確認日は2026年10月9日です。

この記事の位置づけ

本記事は技術と制度の解説です。個別の製品の選定、法規制への適合の判断、安全・衛生に関する助言ではありません。 「ナノだから安全/危険」と一般化することもしていません。規制はその後に変わるため、実際の判断には原文と最新の状況の確認が必要です。

1. ナノコーティングとは何か ― 3行でつかむ

「ナノコーティング」は、規格の上では意味が2つに分かれます。ISO/TS 80004-11:2017 の序文は、膜を次の2つのグループに分けています事実。

  • 厚みがナノスケールの膜:nanolayer(ナノレイヤー)、nanocoating(ナノコーティング)、nanofilm(ナノフィルム)。ISO の整理では「ナノ物体(nano-object)」に分類される
  • 内部や表面の構造がナノスケールの膜:ナノ構造をもつ層・コーティング・膜(ナノコンポジット、ナノ物体を分散した膜など)。「ナノ構造材料」に分類される
  • 用語の揺れ:同序文は、film(膜)・coating(被膜)・layer(層)はしばしば同じ意味で使われるとし、PVD/CVD のコーティングのほとんどはナノ構造をもつとも述べています

このうち ISO/TS 80004-11 は2023年に撤回され、同じ分類は ISO 80004-1:2023(ナノテクノロジー用語の中核規格)の第3.7節「ナノコーティング・ナノレイヤー・ナノフィルムなどの用語」に引き継がれています事実。 ISO 80004-1 の序文は、ナノスケールの下限が約1 nmであること、そして ISO 80004 シリーズにおける「ナノスケール」の定義はコミュニケーションを助ける一般的な記述子であることを述べ、 「ナノ材料を含むように作られた物品が、必ずしもナノ材料そのものではない」とも注意しています事実(定義の本文は有料のため、本稿は序文と目次の公開部分を確認しました。一般にナノスケールは約1〜100 nm とされます)。

ナノコーティングと薄膜の構造・工程を示す解説画像
図1 概念画像(ImageGenで生成)。左は膜自体が薄いコーティング、右はより厚い膜の中にナノ粒子が入ったコーティングです。「薄さ」と「含まれる粒子の大きさ」は別の意味です。 [参考資料2] [参考資料1]
形状・色・寸法は説明用です。数値・原文の対応は下の元図で確認できます。
元のSVG模式図と正確な説明を見る

図の読み方・元図の説明:「ナノコーティング」の2つの意味(ISO の整理にもとづく概念図) / ※ 膜の断面を模式的に示したもので、実際の膜の観察像や寸法ではありません。 / ① 厚みがナノスケール / ② 内部構造がナノスケール / 膜の厚み(外形の寸法)が 約1〜100 nm / 例:反射防止膜、極薄の撥水膜 / 用語:nanolayer/nanocoating/nanofilm / 膜は厚くてもよいが、内部にナノ構造がある / 例:ナノ粒子分散膜、ナノコンポジット、多層膜 / 用語:nanostructured coating など / ※ 分類は ISO/TS 80004-11:2017 の序文[参考資料2]と ISO 80004-1:2023 の序文[参考資料1]によります。

「ナノコーティング」の2つの意味(ISO の整理にもとづく概念図) ※ 膜の断面を模式的に示したもので、実際の膜の観察像や寸法ではありません。 ① 厚みがナノスケール ② 内部構造がナノスケール 膜の厚み(外形の寸法)が 約1〜100 nm 例:反射防止膜、極薄の撥水膜 用語:nanolayer/nanocoating/nanofilm 膜は厚くてもよいが、内部にナノ構造がある 例:ナノ粒子分散膜、ナノコンポジット、多層膜 用語:nanostructured coating など ※ 分類は ISO/TS 80004-11:2017 の序文[参考資料2]と ISO 80004-1:2023 の序文[参考資料1]によります。
図1 概念図(ベクター作図)。「ナノコーティング」という言葉が指す2つの意味を、断面の模式図で示したものです。寸法や粒子の大きさは図示のためのもので、実際の膜を示すものではありません。分類は ISO/TS 80004-11:2017[参考資料2]と ISO 80004-1:2023[参考資料1]の序文によります。
素材技術者の読みどころ:「ナノ」と書いてあっても、どちらの意味か確認する

カタログや技術資料の「ナノコーティング」は、厚みを指す場合と、構造を指す場合があることを、規格自体が認めています。 たとえば同規格の序文は、摩耗から表面を守る多層コーティングで、個々の層の厚みがほんの数ナノメートルという例を挙げています事実。 これは「全体は数マイクロメートルでも、中身はナノ構造」という②の意味です。 一方、反射防止膜のように「膜全体が百ナノメートル程度」は①の意味です。 仕様を見るときは、膜の総厚、層構成と各層の厚み、内部構造(結晶粒・粒子・空孔)のどれを指しているかを確かめるのが先です(本記事による解説)。

2. 成膜法の地図 ― 物理と化学、乾式と湿式

ナノの厚みの膜を作る方法は多数あります。ISO/TS 80004-11 の序文は、用語が使われる成膜技術の例として、 コーティング、電気化学堆積(ECD)、スピンコート、PVD(物理気相成長)、CVD(化学気相成長)、ゾルゲル、ALD(原子層堆積)、LBL(層ごと堆積)、ラングミュア・ブロジェットを挙げています事実。 ISO/TS 80004-8:2020(ナノ製造プロセスの用語)も、加工の用語として「堆積プロセス」「エッチングプロセス」「印刷およびコーティング」を別の節に分けています事実。 スパッタリングの歴史を整理した Greene の総説(2017)によると、スパッタ成膜は1800年代初めに報告され、1880年までに光学コーティングの市場を占めていたとされ、ロールツーロールの成膜は1930年代半ばに導入されています事実。

成膜法の地図(本記事による整理) ※ 代表的な方法を2つの軸で並べたもので、すべてを網羅した分類ではありません。 物理的に堆積する 化学反応で膜になる 乾式 (真空・気相) 湿式 (液体を塗る) 蒸着・スパッタ(PVD) 固体を蒸発または叩き出して 基板に付着させる 光学膜・硬質膜・金属膜 CVD・ALD 気体の原料が基板の上で反応する ALD は1層ずつ(別の記事で詳述) 絶縁膜・バリア膜・DLC スピンコート・ディップ・塗布 溶液や分散液を塗り広げ、 乾燥させる(物理的な乾燥が主) ゾルゲル・めっき(ECD) 液の中で反応を進めて膜にする ゾルゲルは焼成で緻密化する ※ 方法の名前は ISO/TS 80004-11 の序文[参考資料2]によります。各方法の特徴の記述は本記事による解説です。
図2 概念図(ベクター作図)。代表的な成膜法を「乾式/湿式」と「物理/化学」の2軸で並べたものです。2軸で整理したのは本記事によるもので、規格の分類ではありません。方法の名前は ISO/TS 80004-11[参考資料2]、各方法の特徴は本記事の解説です。
方法膜になるしくみ得意なこと注意する点
蒸着(真空蒸着)加熱で蒸発させた材料が、基板に凝縮する光学膜、金属膜。膜厚をモニターしながら止められる飛ぶ向きが直線的で、段差の側面に付きにくい。基板に届くエネルギーが低く、膜が粗くなりやすい
スパッタプラズマ中のイオンでターゲットを叩き、飛び出した原子が基板に付く合金・化合物の組成を保ちやすい。基板への密着が比較的よい。大面積への展開が確立基板がプラズマや高エネルギー粒子にさらされる。膜応力が成膜条件で大きく変わる
CVD原料ガスが基板上で反応し、固体の膜になる複雑な形状にも付きやすい(条件による)。絶縁膜・DLC など反応温度や副生成物。原料ガスの取扱い
ゾルゲル/ディップ/スピン前駆体の溶液を塗り、乾燥・焼成で酸化物の膜にする真空装置が不要で、低コスト。大型の基板や曲面にも塗れる乾燥・焼成で収縮し、割れやすい。膜厚は引き上げ速度や粘度、固形分で決まる

この表は、成膜法の一般的な性格を整理した本記事の解説であり、個別の装置・材料・条件の性能を示す値ではありません。スパッタの歴史は Greene の総説[参考資料4]、CVD の総説は Choy(2003)[参考資料5]があります。

3. 本稿の計算:ディップコートで「ナノの厚み」になるまで

ゾルゲル法のディップコートは、基板を溶液に浸して一定速度で引き上げるだけの方法です。 Brinker らの「ゾルゲルのディップコーティングの基礎」(1991)が扱うように、引き上げた直後の液膜の厚みは、 引き上げ速度・液の粘度・表面張力・密度で決まります。毛管数(粘性力と表面張力の比)が小さいときの代表的な近似式が、Landau–Levich の式です(本稿の解説。式の本文は論文では確認していません)。

本稿の計算

次の条件を本稿が仮定して計算します本稿の計算。

  • 式:h = 0.94 (ηU)2/3 / (γ1/6 (ρg)1/2)(h:液膜の厚み、η:粘度、U:引き上げ速度、γ:表面張力、ρ:密度、g:重力加速度)
  • 仮定:η = 2 mPa·s、γ = 22 mN/m、ρ = 800 kg/m³(エタノール系の液を想定)、U = 1 mm/s
  • 計算:(0.002 × 0.001)2/3 = 1.58×10⁻⁴、γ1/6 = 0.529、(800 × 9.81)1/2 = 88.6 より、h = 0.94 × 1.58×10⁻⁴ / (0.529 × 88.6) = 約3.2 µm
  • 乾燥後:固形分(酸化物になる成分)が液の1 vol% とすると、3.2 µm × 0.01 = 約32 nm(収縮や焼成による体積変化は無視)
  • 毛管数:ηU/γ = 0.002 × 0.001 / 0.022 = 9×10⁻⁵ で、式が成り立つ「小さい」範囲

前提と限界:粘度・表面張力・固形分はすべて本稿の仮定で、実際のゾルの値ではありません。 実際には溶媒の蒸発が引き上げ中に進む、液の組成が変わる、などのため、この式で実際の膜厚が決まるわけではありません。 ここで言いたいのは桁で、液膜は数µmでも、固形分が1%なら乾燥後はナノの厚みになる、という点です。

引き上げ速度と、引き上げた直後の液膜の厚み(本稿の計算) Landau–Levich の式に、本稿が置いた条件(エタノール系の液を想定)を入れた計算です。 0 1 2 3 4 5 0 2 4 6 8 10 引き上げ速度 U(mm/s) 液膜の厚み(µm) 1 mm/s:3.2 µm 2 mm/s:5.1 µm 5 mm/s:9.3 µm 本稿が置いた条件 粘度 η = 2 mPa·s 表面張力 γ = 22 mN/m 密度 ρ = 800 kg/m³ 毛管数 ηU/γ = 9×10⁻⁵(1 mm/s) 1 mm/s のとき 液膜 約3.2 µm 固形分 1 vol% なら 乾燥後 約32 nm 速度を2倍にすると 液膜は約1.6倍(U の 2/3 乗) ※ 式:h = 0.94 (ηU)^(2/3) / (γ^(1/6)(ρg)^(1/2))。毛管数が十分小さい範囲での近似式で、条件の数値はすべて本稿の仮定です。 ※ 固形分 1 vol% を乾燥後の厚みに掛ける単純化は本稿の仮定で、実際は収縮や焼成で変わります。
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。Landau–Levich の式に本稿が置いた条件を入れた液膜の厚みです。実際のゾルの値ではなく、桁を示すための計算です。乾燥後の厚み(約32 nm)は固形分1 vol% という本稿の仮定にもとづきます。引き上げ速度を2倍にすると液膜は約1.6倍(速度の2/3乗)になります。
素材技術者の読みどころ:湿式は「速度の2/3乗」と「固形分」で膜厚をつくる

湿式の膜厚は、速度の2/3乗で穏やかにしか変わらないので、厚み調整は引き上げ速度よりも固形分(希釈)で行う方が効きやすい、と計算から読めます(本記事による解説)。 たとえば固形分を半分にすれば、乾燥後の厚みは半分になりますが、速度を半分にしても液膜は約0.63倍にしかなりません。 一方で、固形分を下げるほど、乾燥・焼成で膜が均一に広がらず、島状になるリスクが高まることが予想されます。 この点は推測で、本稿が参照した公式資料では確認していません。

4. 素材技術者の視点①:膜は「応力」を抱えている

成膜した膜は、基板との熱膨張の差、成膜中の粒子の衝突、結晶化に伴う体積変化などにより、内部に応力を持ちます。 応力があると、基板が反ります。Stoney は1909年、基板に付けた金属膜の張力で基板が曲がることを式にしました事実(Stoney, Proc. R. Soc. A 82, 172)。

本稿の計算

Stoney の式(R = Ms hs² / (6 σ hf))を使い、本稿が仮定した条件で反りの大きさを見積もります本稿の計算。

  • 仮定:膜厚 hf = 100 nm、膜応力 σ = 1 GPa、基板はシリコンウェハ(直径100 mm、厚さ hs = 0.5 mm)、基板の二軸弾性率 Ms = 180 GPa(本稿が置いた値)
  • 曲率半径:R = 180×10⁹ × (0.5×10⁻³)² / (6 × 10⁹ × 100×10⁻⁹) = 45,000 / 600 = 75 m
  • 直径100 mm での反り(中央と縁の高さの差):d²/(8R) = (0.1)² / (8 × 75) = 約17 µm
  • 膜が基板にかける力(幅あたり):σ × hf = 10⁹ × 100×10⁻⁹ = 100 N/m

前提と限界:1 GPa は膜応力の値として本稿が置いた仮定で、実際は成膜条件や材料で符号も大きさも変わります。 Stoney の式は、膜が基板よりずっと薄く、反りが小さい範囲の近似です。

100 nm の膜の応力が、ウェハを反らせる量(本稿の計算) 100 nm 膜厚(仮定) 基板:厚さ0.5 mm 直径100 mm のSi 1 GPa 膜応力(仮定) Si の二軸弾性率 180 GPa(仮定) 75 m 曲率半径 R = Ms hs² / (6σhf) 本稿の計算 約17 µm 100 mm 径での反り d² / (8R) 本稿の計算 反った基板(反りの大きさは誇張) 平らな状態 ※ 膜厚・応力・基板の弾性率はすべて本稿の仮定です。Stoney(1909)の式にもとづく概算で、実際の膜応力は成膜条件で大きく変わります。 ※ 曲線は反りの向きを示す模式で、17 µm の実寸ではありません(実際の曲がりはこの図よりずっと小さい)。
図4 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。Stoney の式[参考資料7]に本稿が置いた仮定を入れた概算です。膜厚・応力・弾性率はすべて仮定で、実測値ではありません。曲線は向きを示す模式で、実寸の反りを描いたものではありません。
素材技術者の読みどころ:ナノの厚みでも、反りもはがれもおきる

100 nm という薄い膜でも、1 GPa の応力があれば、幅あたり100 N/m の力が基板にかかります。 薄いからといって力学的に無視できるわけではありません(本記事による解説)。 反りの量は基板の厚さの2乗に反比例するので、薄い基板(フィルム、薄化したウェハ、ガラス)ほど、同じ膜でも反りが大きくなります。 光学膜では、多層の応力のバランスをとるために圧縮と引張の層を組み合わせる、といった設計も行われますが、具体的な手法は本稿が参照した公式資料では確認できませんでした。

5. 反射防止 ― 薄膜干渉で光を消す

未処理のガラスは、1つの界面で約4%の光を反射し、2面を通ると透過は約92%になる、と Edmund Optics の技術解説は述べています事実。 反射防止膜は、膜の表面と、膜とガラスの界面で反射した2つの光が半波長ずれて打ち消し合うように、光学的な膜厚を4分の1波長の奇数倍にします事実。 同社は、最も単純な反射防止膜として550 nm を中心とした λ/4 の MgF₂(屈折率は550 nm で1.38)を挙げ、ガラスの種類によって結果が変わると述べています事実(メーカー自身の記述)。

本稿の計算

屈折率の波長依存を無視した理想化の条件で計算します本稿の計算。

  • 前提:ガラスの屈折率 ns = 1.52(本稿の仮定)、MgF₂ の n = 1.38(Edmund Optics の記述)、空気 n₀ = 1、垂直入射、吸収・散乱なし、設計波長 550 nm
  • 膜厚:d = λ / (4n) = 550 / (4 × 1.38) = 約99.6 nm
  • 未処理のガラス:R = ((ns − 1) / (ns + 1))² = (0.52 / 2.52)² = 約4.26%
  • MgF₂ 単層(λ/4):R = ((n² − ns) / (n² + ns))² = (0.3844 / 3.4244)² = 約1.26%
  • ゼロにならない理由:単層で反射がゼロになる理想の屈折率は √(n₀ ns) = √1.52 = 約1.23 で、MgF₂(1.38)はこれより高い
  • ずれへの強さ:膜厚が±10%ずれると、550 nm の反射率は約1.26% → 約1.34%。波長が400 nm では約2.2%、700 nm では約1.6%(この理想化モデルでの値)

前提と限界:屈折率の波長依存、基板の種類、入射角、膜の多孔性などを無視した計算です。 メーカーが公表する実測のスペクトルとは一致しません。傾向をつかむための計算です。

ガラス1面の反射率:未処理と MgF2 単層(本稿の計算) 垂直入射、屈折率は波長によらず一定とした理想化の計算です(実測値ではありません)。 400 500 600 700 0 1 2 3 4 5 波長(nm) 反射率(%) 未処理のガラス 約4.26% 550 nm:約1.26% 400 nm:約2.2% 本稿が置いた条件 ガラス ns = 1.52 MgF2 n = 1.38(550 nm) 膜厚 = λ/(4n) = 約99.6 nm 理想の単層の屈折率 √1.52 = 約1.23 MgF2(1.38)より低い 膜厚が±10%ずれると 550 nm の反射率は 約1.26% → 約1.34% (ずれに比較的強い) ※ 未処理 ((ns−1)/(ns+1))² = 4.26%、MgF2 単層 ((n²−ns)/(n²+ns))² = 1.26%(λ/4 の位置)。薄膜干渉を考慮した本稿の計算です。 ※ 屈折率の波長依存や吸収を無視しているため、メーカー公称のスペクトルとは一致しません。
図5 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。ガラス1面の反射率を、未処理と MgF₂ 単層(λ/4、550 nm 設計)について、薄膜干渉の式で計算したものです。屈折率を波長によらず一定とした理想化の計算で、メーカーの実測スペクトルではありません。MgF₂ の屈折率1.38は Edmund Optics[参考資料8]、ガラスの1.52は本稿の仮定です。
公表内容出所と条件
単層 MgF₂ 反射防止:R < 1.5%(540 nm)、R < 2%(400〜700 nm)。同ページには R < 2.0%(540 nm)、R < 3.0%(400〜700 nm)の行も併記(2行の違いはページ上で確認できなかった)CASTECH のコーティング仕様ページ。メーカー公称の仕様値[参考資料9]
多層の可視域用コーティング(VIS 0°):425〜675 nm で平均反射率 0.4%(0°入射)Edmund Optics の技術解説。同社のコーティング選択肢の記述[参考資料8]
ナノ構造でも反射を抑えられる:蛾の目(moth eye)の原理によるレンズ反射の低減を報告Clapham・Hutley, Nature 244, 281(1973)。題名と書誌のみ確認[参考資料11]

すべて事実(メーカーの記述・論文の題名)。条件(波長範囲、基板、入射角、平均の取り方)が異なるため、数値どうしの優劣は比べられません。反射防止膜の総説は Raut ら(2011)[参考資料10]があります。

素材技術者の読みどころ:単層で届かない分は、多層か、屈折率の低い材料か、ナノ構造で埋める

理想の屈折率(約1.23)に届く緻密な材料は、一般にはありません。そこで、多層化(Edmund Optics の VIS 0° は平均0.4%)、 屈折率の低い多孔質膜を使う、表面そのものを微細な凹凸にする(蛾の目)、という3つの道が考えられます(本記事による解説)。 多孔質膜は屈折率を下げられる一方、機械的な強さや汚れの付きやすさ、水分の吸着が弱点になると考えられます。これは推測で、本稿が参照した公式資料では確認していません。 反射防止膜は最表面に出るため、指紋や擦れへの強さが性能の一部になります。次章の防汚・撥水膜が重ねられるのは、この事情による、というのが本稿の推測です。

6. 撥水・防汚 ― メーカー公称値の読み方

撥水膜の性能は、水滴の接触角だけでは決まりません。滑り落ちる角度(滑落角)、油に対する値、擦った後の値が一緒に問われます。 Daikin の OPTOOL DSX-F の技術資料(2026年8月版)は、含フッ素の防汚コーティング剤として、次の値を示しています事実。 これらはガラス基板上に PVD で成膜した例の代表値で、保証値ではないと同資料は注記しています(メーカー公称)。

項目DSX-FDSX-E条件・注記
水の接触角115°114°ガラス基板上に PVD で成膜した例の代表値
水の滑落角16°17°同上
n-ヘキサデカンの接触角/滑落角66°/4°67°/3°油に対する値
耐摩耗後の水の接触角109°108°2000 SW abrasions(原文の表記。SW の定義は同資料に記載なし)、接触面積1 cm²、荷重1 kgf
摩擦係数0.070.07OA 紙を摩擦子として、速度200 mm/min、荷重200 gf
ヘイズ< 0.20< 0.20単位・測定法は同資料に記載なし

すべて事実(Daikin OPTOOL DSX-F 技術資料[参考資料13]。メーカー公称・代表値)。同資料は、ナノメートルスケールの薄い膜をつくるため光学特性に影響しない、と記していますが、膜厚の数値、成分の詳細は記載がありません。溶剤はハイドロフルオロエーテル、有効成分濃度は19.0〜21.0 mass%です。

撥水膜の接触角:初期と、擦った後(メーカー公称の代表値) ※ 液滴の形は、接触角から計算して描いた模式図です(実際の液滴の写真ではありません)。 水・初期 水・摩耗後 n-ヘキサデカン・初期 接触角 115° 接触角 109° 接触角 66° 滑落角 16° 2000 回の摩耗後 滑落角 4° ※ 値は OPTOOL DSX-F 技術資料(2026年8月版)[参考資料13]の代表値(ガラス基板上に PVD で成膜した例。保証値ではない)です。 ※ 摩耗後の条件:2000 SW abrasions、接触面積1 cm²、荷重1 kgf(原文の表記)。摩耗後の接触角の低下は6°(本稿の計算)。 ※ 液滴の曲線は、接触角から円の一部として描いた模式です。実寸・実物ではありません。
図6 概念図(ベクター作図)。Daikin の技術資料[参考資料13]に記載の接触角(代表値)にあわせて、液滴の形を円の一部として描いた模式図です。液滴の写真や実測の形状ではなく、保証値でもありません。水の接触角が2000回の摩耗後に115°から109°へ6°下がったことは本稿の計算(差の計算)です。
素材技術者の読みどころ:初期値より、「擦ったあと」と「滑り落ちるか」

同資料の表は、初期の接触角(115°)に加え、摩耗後(109°)、滑落角(16°)、油の接触角(66°)、摩擦係数を並べています。 115° → 109° は6°(約5%)の低下です本稿の計算((115−109)/115 = 0.052)。 この摩耗試験の条件(SW、1 cm²、1 kgf、2000回)が、実際の使い方での擦れとどう対応するかは、同資料からは分かりません。 撥水膜の評価では、どの条件で、何回擦ったあとの値かを必ず確認するのが先です(本記事による解説)。

接触角の測り方にも規格があります。ASTM D7334 は前進接触角で表面の濡れ性を測る手順で、接触角は表面張力の値を直接は与えないと注意しています事実。 ISO 80004-1:2023 の序文は、意図的にナノスケールの凹凸や化学的な不均一を付けた表面は「ナノ構造材料」と見なされ、そうでない通常の表面は該当しない、としています事実。 表面の粗さと濡れの関係は Quéré の総説(2008)[参考資料12]が扱っています。

7. バリアと硬質 ― 欠陥と厚みの関係

(1) バリア:ナノの厚みの膜は、欠陥の面積で決まる

ガスや水蒸気を通さない薄い無機膜は、膜そのものの緻密さより、欠陥(ピンホール)の数と大きさで性能が決まることがあります。 この点は、本シリーズ「バリア性とコーティング」編(高分子・樹脂)と、ペロブスカイト太陽電池の「封止とバリア層」編で、da Silva Sobrinho らや Carcia らの研究にもとづいて詳しく扱っています。ここでは繰り返さず、評価の面だけ補足します。

  • ASTM F1249-25(変調赤外センサー法による水蒸気透過度)の対象は、コーティング材を含むフィルムで、実証された測定範囲は0.052〜26 g/(m²·日)です事実[参考資料23]
  • ナノ厚みの無機バリアで求められる水蒸気透過度は、この範囲の下限よりはるかに小さい値であることがあり、その場合は別の測定方法(カルシウム腐食法など)が必要になります(本記事による解説。具体的な値と方法は上記2編を参照)

(2) 硬質:「ナノ厚み」より「ナノ構造」が主役になりやすい

工具・部品向けの硬質コーティングは、PVD/CVD で作られます。Oerlikon Balzers は、量産で再現できる典型的な膜厚は0.5〜4 µmと述べています事実[参考資料15]。 同社の2010年版のカタログでは、BALINIT C(WC/C、a-C:H:W)の典型膜厚は1〜4 µm、乾燥状態での鋼に対する摩擦係数は0.1〜0.2とされ、硬さは Knoop 微小硬さ(HK 0.01)で表記されています。同カタログは、値は用途・試験条件に依存すると注記しています事実[参考資料16]。 これはメーカー公称の代表値で、年次の古い版である点に注意が必要です。

素材技術者の読みどころ:硬質コートの「ナノ」は、厚みではなく、層の構成にある

硬質コーティングの厚みはマイクロメートル台で、ナノの厚みではありません(上記の公称値)。 それでも ISO/TS 80004-11 の序文は、摩耗から表面を守る多層コーティングで、個々の層の厚みが数ナノメートルの例を挙げています事実。 つまり、総厚はµm、構造はナノという、図1の②の意味での「ナノコーティング」が硬質膜の主流だと読めます(本記事による解説)。 硬さを測るときは、押し込みが基板の影響を受けない浅さであることが前提です。ISO 14577-4:2016 は、薄い膜の機器化押込み試験の方法で、押込み深さが膜厚に比べて十分小さければ基板の影響を無視して膜をバルクとして扱えるとし、その限界を示しています事実[参考資料17]。

8. 評価:膜厚・密着・ピンホール

ナノの厚みの膜は、測り方によって読める情報が違います。次の表は、本稿で確認できた規格を、読める情報と限界とともに整理したものです。

評価項目方法と規格公表されている範囲限界・注意(規格・本記事の解説)
膜厚・光学定数分光エリプソメトリ
ISO 23131:2021[参考資料19]
UV–VIS–NIR での光学定数・誘電定数と層の厚みを求める方法。工程管理・品質保証・材料開発向け反射光の偏光変化から求めるため、光学モデルを当てはめて厚みを出す方法(本記事による解説)。モデルの選び方で結果が変わりうる
膜厚・密度・界面幅X線反射率法(XRR)
ISO 16413:2020[参考資料18]
約1 nm〜1 µm の単層・多層膜の厚み、密度、界面幅を、平らな基板上で評価単一波長では化学情報が得られない。表面の汚染や反応、測定中の層の不安定さが精度を下げうる、と規格が注意
密着(粗い区分)テープ試験
ASTM D3359-23[参考資料21]
碁盤目などを切ってテープで剥がし、0〜5の区分で評価規格自身が、低い密着レベルの評価に限られ、大きな差にしか敏感でないと述べる
密着(引き剥がし強さ)プルオフ試験
ASTM D4541-22[参考資料22]
携帯型の試験器で、被膜を引き剥がす強さを測る接着剤、治具の大きさ、硬化時間、引く速度、環境条件などを変えると結果が変わりうると規格が注意
密着(引っかき)スクラッチ試験
ISO 20502:2005[参考資料20]
ダイヤモンド圧子を一定または増加する荷重で引っかき、接着破壊・凝集破壊を促す。厚み20 µm までのセラミックス被膜が対象セラミックス被膜用の規格で、他の被膜への適用は「適しているかもしれない」とされる。2005年版で、見直し中(改訂予定の段階)
硬さ機器化押込み試験
ISO 14577-4:2016[参考資料17]
金属・非金属の薄い被膜。ナノ〜マイクロ領域に適する基板の影響が無視できる浅さでない場合に使う方法。単層の評価が前提で、多層・傾斜膜は断面から測る場合も
水蒸気透過(ピンホールの影響を含む)変調赤外センサー法
ASTM F1249-25[参考資料23]
0.052〜26 g/(m²·日)高いバリア性の膜の評価には別の方法が必要(前章)
濡れ性前進接触角
ASTM D7334[参考資料14]
水や有機液体の接触角で、親水・疎水の別を判断接触角から表面張力は直接求まらない、と規格が注意

すべて事実(規格団体のページの公開部分。規格本文は有料のため、適用範囲や注意書きの公開部分のみ確認)。多くの規格は、µm台の被膜を主に想定して作られており、nm台の膜への適用は規格ごとに確認が必要です(本記事による解説)。

ナノコーティングと薄膜の構造・工程を示す解説画像
図7 概念図(AI生成イメージ)。「膜を引っかいて、どの荷重ではがれるかを調べる」密着評価の場面を表現したものです。実在の装置・試験条件・結果を示すものではありません。

9. 素材技術者の視点②:同じ膜でも、測り方が違えば数字が違う

素材技術者の読みどころ:数字を見るときの5つの確認
  • 「平均の膜厚」はピンホールを教えない:XRR もエリプソも、膜の平均的な厚みと密度を読む方法です(規格の記述)。欠陥の有無は別の方法(顕微鏡、電気的な方法、透過度の測定)で確かめる必要があります(本記事による解説)
  • 密着の数字は、試験方法の名前とセット:テープ試験は大きな差にしか反応せず(ASTM D3359)、プルオフは接着剤や引く速度で変わり(ASTM D4541)、スクラッチは荷重の与え方で破壊の形が変わります(ISO 20502)。ナノ厚みの膜で、どの方法が差を見分けられるかは、本稿が参照した公式資料では確認できませんでした
  • 撥水の数字は、初期・摩耗後・滑落角を分けて見る:Daikin の資料のように、初期115°と摩耗後109°は別の数字です。「接触角が高い」だけでは、使い続けたときの性能は分かりません
  • 反射率は、波長範囲と平均の取り方で変わる:CASTECH は540 nm と400〜700 nm を分けて示し、Edmund Optics は425〜675 nm の平均を示しています。同じ「反射率」でも条件が違えば比べられません
  • 基板が数字を決めることがある:MgF₂ はガラスの種類によって結果が変わる(Edmund Optics)。硬さは基板の影響が効く浅さかどうか(ISO 14577-4)で意味が変わります

成膜装置の性能を見るときは、膜厚の再現性(ロット間、面内)も重要ですが、本稿が参照した公式資料には、一般的な面内均一性の目安の数値は見つかりませんでした。

10. 環境規制 ― PFAS 系撥水材を中心に

撥水・防汚膜には含フッ素の材料が使われることが多く、PFAS(パー・ポリフルオロアルキル化合物)の規制の影響を受けます。 どの製品が PFAS に該当するかは、各制度の定義と、製品の組成によります。 上で見た Daikin の OPTOOL DSX-F は含フッ素と明記されていますが、成分の詳細は技術資料に記載がなく、本稿は PFAS への該当を判断していません。 PFAS の定義と規制の全体像は、本シリーズ「フッ素樹脂とPFAS」編(高分子・樹脂)で詳しく扱っています。ここでは、撥水・防汚に関わる範囲を、提案・採択・適用開始の段階とともに整理します。

PFAS 関連規制の「いまの位置」(2026年10月9日に確認できた範囲) ※ 各規制の段階を要約した概念図です。詳細は本文の表と参考資料を参照してください。 EU:PFAS 包括制限案 EU:PFHxA 制限 日本:PFOA 米国:TSCA 報告 提案・評価中 採択済み 施行済み 最終化済み・期限変動 RAC 意見採択 2026年3月2日 SEAC 意見案 2026年3月10日 SEAC 最終意見は 2026年末の見込み 規則 2024/2462 2024年9月19日 衣類用の繊維など 2026年10月10日から その他の繊維 2027年10月10日から 化審法の 第一種特定化学物質 PFOA またはその塩 2021年10月22日施行 撥水剤等13種の 輸入禁止製品を指定 報告規則は 2023年10月11日に最終化 2025年11月に 範囲見直しを提案 報告期間は見直し の発効日後60日の延長 ※ EU の包括制限案は ECHA の発表[参考資料25〜27]、PFHxA は EUR-Lex の規則本文[参考資料24]によります。 ※ 日本は環境省[参考資料28]、米国は EPA[参考資料29]によります。 ※ 段階(提案・採択・施行)の整理は本記事によるもので、今後の手続きで変わる可能性があります。 ※ 法務・投資の助言ではありません。実際の判断には原文と最新の状況の確認が必要です。
図8 概念図(ベクター作図)。撥水・防汚に関わるPFAS関連規制の段階を、2026年10月9日に確認できた範囲で整理したものです。段階の整理と各ボックスの要約は本記事によるもので、今後の手続きで変わる可能性があります。EU の包括制限案はECHAの発表[参考資料25〜27]、PFHxA は EUR-Lex[参考資料24]、日本は環境省[参考資料28]、米国は EPA[参考資料29]によります。
地域・制度内容(段階)撥水・防汚に関わる点
EU:PFHxA の制限
委員会規則(EU)2024/2462
採択済み。2024年9月19日採択、官報掲載2024年9月20日。PFHxA とその塩は25 ppb 以上、PFHxA 関連物質は1,000 ppb 以上(均質な材料での濃度)で、次の用途で上市・使用を禁止。2026年10月10日から:一般向けの衣類・関連付属品の繊維・皮革・毛皮、一般向けの履物、食品接触の紙・板紙、一般向けの混合物、化粧品。2027年10月10日から:一般向けのその他の繊維・皮革など。泡消火剤は2026年4月10日(訓練・試験・公共消防)と2029年10月10日(民間航空)。個人用保護具(リスクカテゴリーIIIの一部)、医療機器、建築用繊維などは対象外同規則の前文は、PFHxA 関連物質が繊維、食品接触の紙・板紙、泡消火剤に大量に使われているとしています。2026年10月10日は本稿の確認日(10月9日)の翌日です。特定の撥水剤が該当するかは、成分次第で、本稿は判断しません
EU:PFAS の包括的制限案
REACH 附属書XVII
提案・評価中。5か国の当局が準備し、ECHA に提出。RAC が最終意見を2026年3月2日に採択、SEAC が意見案を同年3月10日に合意し、ECHA は両委員会が適切な適用除外つきの EU 全体の制限を支持すると発表。SEAC の最終意見は2026年末までの見込み。その後、欧州委員会が提案し、REACH 委員会で議論・投票未確定/将来範囲は多数の分野に及びます。適用除外の長さや分野ごとの扱いは案で、確定していません。詳細は「フッ素樹脂とPFAS」編を参照
日本:化審法施行済み。PFOA またはその塩を、2021年10月22日に第一種特定化学物質に追加指定(2021年4月16日に政令を閣議決定)環境省は、PFOA またはその塩の用途として撥水剤等を挙げ、使用されている場合に輸入できない製品として撥水剤等13種類を指定
米国:TSCA 第8条(a)(7)最終化済み(2023年10月11日)。2011年以降に製造・輸入した PFAS(物品に含まれるものを含む)の用途・量・曝露などの報告を要求。2025年11月に範囲の見直しを提案(濃度0.1%以下の混合物・製品、輸入物品などを免除する案)。2026年4月、EPA は報告期間の延長を最終化(原文:extension of the reporting period ... by 60 days following the effective date of the agency's revision to the rule)未確定/将来提出の時期は、本稿の確認日の時点で見直し規則の確定を待つ状態です(EPA のページは2026年4月16日更新)

段階の区別(採択済み/提案・評価中/施行済み/最終化済み)は各機関の文書にもとづく本記事の整理です。EU の包括制限案の日付は、ECHA のニュースとホットトピックのページ[参考資料25〜27]を2026年10月9日に確認した内容です。ホットトピックのページには、2026年10月7日付で11月の SEAC 会合の議題が公表された旨があり、SEAC の最終意見はまだ採択されていません(2026年末までの見込み)。

素材技術者の読みどころ:規制は「物質の名前」と「用途」の組み合わせで効いてくる

PFHxA の制限は、物質(PFHxA とその関連物質)と用途(衣類の繊維、食品接触、化粧品など)と閾値(25 ppb/1,000 ppb)が組み合わさっており、適用開始日も用途ごとに違います。 同じ含フッ素の撥水・防汚材でも、炭素数、用途、最終製品の種類で、規制の対象かどうかが分かれる、と読めます(本記事による解説)。 代替となる非フッ素系の撥水材の性能や耐久性については、本稿が参照した公的な資料では確認できなかったため、記載していません。 ナノ材料そのものの規制(定義・登録)は、本シリーズ「ナノ材料の定義と規制」編で扱います。

11. 課題と、本稿で確認できなかったこと

(1) 「ナノコーティング」の定義の曖昧さ

規格自身が、film・coating・layer を同義に使う慣行を認めています事実。 仕様書や論文では、膜厚の数値と層構成を必ず確認する必要があります。

(2) 膜厚の均一性・欠陥・応力の公開データ

本稿が参照した公式資料では、成膜装置の面内均一性、ロット間の再現性、ピンホール密度の一般的な水準を示す数値は確認できませんでした。膜応力の大きさも成膜条件によって変わり、本稿の計算は仮定にもとづく概算です。

(3) ナノ厚みの膜への評価規格の適用

密着試験の規格(テープ、プルオフ、スクラッチ)は、µm台の被膜を主に想定した記述になっています。nm台の膜で、どの方法がどの範囲で差を見分けられるかは、本稿の調査範囲では確認できませんでした。

(4) 撥水膜の耐久性と代替

メーカー公称の摩耗試験(2000回、1 cm²、1 kgf)が実使用の摩耗とどう対応するかは分かりません。非フッ素系の代替の性能・耐久性も、公的な資料では確認できませんでした。

(5) 規制の動き

EU の PFAS 包括制限案は提案・評価中で、確定していません未確定/将来。米国の報告規則も提出時期が見直し規則の確定待ちです。制度はその後に変わる可能性があります。

この記事のまとめ
  • 「ナノコーティング」は、厚みがナノの膜と、内部構造がナノの膜の2つを指します。PVD/CVD の膜の多くはナノ構造をもつ、と ISO は述べています事実
  • 湿式の膜厚は固形分で調整しやすい:液膜3.2 µm、固形分1%なら約32 nm(仮定にもとづく計算)本稿の計算
  • ナノ厚みの膜も応力を持ち、100 nm・1 GPa の仮定でシリコンウェハが約17 µm 反る概算です本稿の計算
  • MgF₂ 単層の反射防止は、理想的な計算でも約1.26%で止まります。理想の屈折率(約1.23)に届かないためです本稿の計算
  • 撥水膜の数字は、初期値と摩耗後で別:Daikin の代表値では115° → 109°(メーカー公称、保証値ではない)事実
  • 評価は測り方で読める情報が変わり、密着の規格には大きな差にしか敏感でないものがあります事実
  • PFHxA の制限は、2026年10月10日から衣類用の繊維などで適用開始、EU の包括制限案は提案・評価中です事実未確定/将来

12. 用語集

ナノスケール
約1 nm から約100 nm の長さの範囲(ISO 80004 シリーズでは上下限は概数)。
ナノコーティング(nanocoating)
厚みがナノスケールの被膜。ISO ではナノ物体に分類される。
ナノ構造コーティング
内部や表面の構造がナノスケールの被膜(ナノコンポジットなど)。
PVD
物理気相成長。蒸着やスパッタなど、固体を気相にして基板に付ける方法。
CVD
化学気相成長。原料ガスを基板上で反応させて膜にする方法。
ゾルゲル法
金属アルコキシドなどの溶液から、ゲルを経て酸化物の膜を作る方法。
ディップコート
基板を溶液に浸して引き上げ、液膜を乾燥させて膜を作る方法。
膜応力
膜が基板に及ぼす力。基板の反りやはがれの原因になる。
薄膜干渉
膜の表と裏で反射した光が重なって、強め合ったり弱め合ったりする現象。
接触角・滑落角
水滴が表面となす角度と、表面を傾けたときに滑り落ち始める角度。
XRR
X線反射率法。膜の厚み・密度・界面の粗さを調べる方法。
エリプソメトリ
反射光の偏光の変化から、膜の厚みと光学定数を求める方法。
PFAS
パー・ポリフルオロアルキル化合物。定義は制度ごとに違う。
PFHxA
ペルフルオロヘキサン酸。EU の規則2024/2462で制限される物質。

13. 参考資料(一次情報)

  1. ISOISO 80004-1:2023 "Nanotechnologies — Vocabulary — Part 1: Core vocabulary"(2023年7月。目次と序文の公開プレビューを確認) — committee.iso.org
  2. ISOISO/TS 80004-11:2017 "Nanotechnologies — Vocabulary — Part 11: Nanolayer, nanocoating, nanofilm, and related terms"(撤回済み。序文の公開プレビューを確認) — committee.iso.org
  3. ISOISO/TS 80004-8:2020 "Nanotechnologies — Vocabulary — Part 8: Nanomanufacturing processes"(目次と序文の公開プレビューを確認) — committee.iso.org
  4. Greene"Review Article: Tracing the recorded history of thin-film sputter deposition: From the 1800s to 2017" J. Vac. Sci. Technol. A 35, 05C204(2017) — doi.org
  5. Choy"Chemical vapour deposition of coatings" Prog. Mater. Sci. 48, 57(2003)(総説。本稿では題名と書誌のみ確認) — doi.org
  6. Brinker ら"Fundamentals of sol-gel dip coating" Thin Solid Films 201, 97(1991)(題名と書誌のみ確認) — doi.org
  7. Stoney"The tension of metallic films deposited by electrolysis" Proc. R. Soc. Lond. A 82, 172(1909)(題名と書誌のみ確認) — doi.org
  8. Edmund Optics"In Depth Look at Anti-Reflection Coatings"(Laser Focus World 掲載の Edmund Optics によるスポンサー記事) — laserfocusworld.com
  9. CASTECHAntireflective coatings(単層 MgF₂ などの仕様) — castech-us.com
  10. Raut ら"Anti-reflective coatings: A critical, in-depth review" Energy Environ. Sci. 4, 3779(2011)(総説。題名と書誌のみ確認) — doi.org
  11. Clapham ・ Hutley"Reduction of Lens Reflexion by the 'Moth Eye' Principle" Nature 244, 281(1973)(題名と書誌のみ確認) — doi.org
  12. Quéré"Wetting and Roughness" Annu. Rev. Mater. Res. 38, 71(2008)(総説。題名と書誌のみ確認) — doi.org
  13. Daikin"OPTOOL DSX-F Technical Datasheet"(2026年8月版、PDF) — daikinchemicals.com
  14. ASTM InternationalASTM D7334-08(2022) "Standard Practice for Surface Wettability of Coatings, Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement" — store.astm.org
  15. Oerlikon BalzersBALINIT coatings(量産での典型的な膜厚) — oerlikon.com
  16. Oerlikon Balzers"Coated components"(カタログ、第3版、2010年11月、PDF) — oerlikon.com
  17. ISOISO 14577-4:2016 "Metallic materials — Instrumented indentation test for hardness and materials parameters — Part 4: Test method for metallic and non-metallic coatings" — committee.iso.org
  18. ISOISO 16413:2020 "Evaluation of thickness, density and interface width of thin films by X-ray reflectometry" — committee.iso.org
  19. ISOISO 23131:2021 "Ellipsometry — Principles" — committee.iso.org
  20. ISOISO 20502:2005 "Fine ceramics (advanced ceramics, advanced technical ceramics) — Determination of adhesion of ceramic coatings by scratch testing" — committee.iso.org
  21. ASTM InternationalASTM D3359-23 "Standard Test Methods for Rating Adhesion by Tape Test" — store.astm.org
  22. ASTM InternationalASTM D4541-22 "Standard Test Method for Pull-Off Strength of Coatings Using Portable Adhesion Testers" — store.astm.org
  23. ASTM InternationalASTM F1249-25 "Standard Test Method for Water Vapor Transmission Rate Through Plastic Film and Sheeting Using a Modulated Infrared Sensor" — store.astm.org
  24. 欧州委員会委員会規則(EU)2024/2462(PFHxA とその塩・関連物質に関する REACH 附属書XVIIの改正)、2024年9月19日、官報 2024年9月20日 — eur-lex.europa.eu
  25. ECHA"Per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS)" 特設ページ — echa.europa.eu
  26. ECHA"ECHA supports PFAS restriction with targeted derogations" 2026年3月26日 — echa.europa.eu
  27. ECHA"ECHA's Risk Assessment Committee adopts its opinion on PFAS restriction proposal" 2026年3月3日 — echa.europa.eu
  28. 環境省「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について(PFOA、2021年4月16日) — env.go.jp
  29. 米国 EPA"TSCA Section 8(a)(7) Reporting and Recordkeeping Requirements for Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl Substances"(2026年4月16日更新) — epa.gov

14. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
ISO/TS 80004-11:2017 の序文:厚みがナノスケールの nanolayer/nanocoating/nanofilm と、内部構造がナノスケールの膜の2つに分けられること。film・coating・layer がしばしば同義で使われること。PVD/CVD のコーティングのほとんどがナノ構造をもつこと。摩耗から守る多層コーティングで個々の層の厚みが数ナノメートルの例。成膜技術の例としてコーティング、ECD、スピンコート、PVD、CVD、ゾルゲル、ALD、LBL、ラングミュア・ブロジェットが挙げられていること出典2 https://committee.iso.org/standard/63253.html事実
ISO 80004-1:2023:2023年7月発行。ISO/TS 80004-1・-2・-4・-11 が撤回済みの旧版として記載されていること。序文でナノスケールの下限が約1 nm、定義は一般的な記述子であること、ナノ材料を含むように作られた物品が必ずしもナノ材料ではないこと、意図的に加工・テクスチャしたナノスケールの表面のみがナノ構造材料に当たること。第3.7節にナノコーティング関連の用語があること出典1 https://committee.iso.org/standard/79525.html事実
ISO/TS 80004-8:2020:ナノ製造プロセスの用語規格で、堆積プロセス、エッチングプロセス、印刷およびコーティングなどの節があること出典3 https://committee.iso.org/standard/74666.html事実
Greene の総説:スパッタ成膜は1800年代初めに報告され、1880年までに光学コーティング市場を占め、ロールツーロールの成膜は1930年代半ばに導入された。CVD(Choy 2003)、ディップコート(Brinker ら 1991)、Stoney(1909)、反射防止の総説(Raut ら 2011)、蛾の目(Clapham・Hutley 1973)、濡れと粗さの総説(Quéré 2008)は題名と書誌のみ確認出典4 https://doi.org/10.1116/1.4998940
出典5 https://doi.org/10.1016/S0079-6425(01)00009-3
出典6 https://doi.org/10.1016/0040-6090(91)90158-T
出典7 https://doi.org/10.1098/rspa.1909.0021
出典10 https://doi.org/10.1039/c1ee01297e
出典11 https://doi.org/10.1038/244281a0
出典12 https://doi.org/10.1146/annurev.matsci.38.060407.132434
事実
Edmund Optics:未処理のガラスは1つの界面で約4%反射し透過は約92%、λ/4 の奇数倍の光学膜厚、550 nm 中心の λ/4 MgF₂(屈折率1.38)が最も単純な反射防止膜でガラスにより結果が変わること、VIS 0° は425〜675 nm で平均反射率0.4%出典8 https://www.laserfocusworld.com/sponsored/edmund-optics/article/16571954/in-depth-look-at-anti-reflection-coatings事実
CASTECH:単層 MgF₂ 反射防止の仕様 R<1.5%(540 nm)、R<2%(400〜700 nm)、および R<2.0%(540 nm)・R<3.0%(400〜700 nm)の行出典9 https://castech-us.com/optics_coatings.htm事実
Daikin OPTOOL DSX-F(2026年8月版):含フッ素の防汚コーティング剤。ガラス基板上に PVD で成膜した例の代表値(保証値ではない):水の接触角115°、滑落角16°、n-ヘキサデカンの接触角66°・滑落角4°、2000 SW abrasions 後の水の接触角109°、摩擦係数0.07、ヘイズ<0.20。溶剤はハイドロフルオロエーテル、有効成分濃度19.0〜21.0 mass%。ナノメートルスケールの薄い膜で光学特性に影響しない。DSX-E の値も併記出典13 https://www.daikinchemicals.com/library/pb_common/pdf/tds/OPTOOL_anti-smudge_coating/tds-dsx-f-E_ver01_Aug_2026.pdf事実
ASTM D7334:前進接触角で表面の濡れ性を評価する手順。接触角は表面張力の値を直接は与えない出典14 https://store.astm.org/d7334-08r22.html事実
Oerlikon Balzers:量産で再現できる典型的な膜厚は0.5〜4 µm。2010年版カタログ:BALINIT C の典型膜厚1〜4 µm、乾燥状態の鋼に対する摩擦係数0.1〜0.2、微小硬さを HK 0.01 で表記、値は用途・試験条件に依存出典15 https://www.oerlikon.com/balzers/com/en/portfolio/balzers-surface-solutions/pvd-and-pacvd-based-coatings/balinit/
出典16 https://www.oerlikon.com/ecoma/files/HQ040EN_Coated-Components.pdf?download=1
事実
ISO 14577-4:2016:薄い被膜の機器化押込み試験。押込み深さが膜厚に比べ十分小さければ基板の影響を無視できる場合があり、その限界が示されていること。単層が前提出典17 https://committee.iso.org/standard/61823.html事実
ISO 16413:2020:XRR による約1 nm〜1 µm の単層・多層膜の厚み・密度・界面幅の評価。平らな基板。単一波長では化学情報は得られない。表面の変化が精度に影響する出典18 https://committee.iso.org/standard/76403.html事実
ISO 23131:2021:UV–VIS–NIR での光学定数・誘電定数と層厚の決定。工程管理・品質保証・材料開発向け出典19 https://committee.iso.org/standard/74663.html事実
ISO 20502:2005:ダイヤモンド圧子のスクラッチ試験でセラミックス被膜の接着破壊・凝集破壊を促す方法。厚み20 µm までが対象で、他の被膜にも適する可能性。見直し中の段階出典20 https://committee.iso.org/standard/34189.html事実
ASTM D3359-23:テープ試験は低い密着レベルの評価に限られ、大きな差にしか敏感でなく、0〜5の区分で評価する。ASTM D4541-22:接着剤・治具・硬化時間・引く速度・環境条件を変えると結果が変わりうる出典21 https://store.astm.org/d3359-23.html
出典22 https://store.astm.org/d4541-22.html
事実
ASTM F1249-25:コーティング材を含むフィルムの水蒸気透過度。実証された範囲は0.052〜26 g/(m²·日)出典23 https://store.astm.org/f1249-25.html事実
EU 委員会規則(EU)2024/2462:2024年9月19日採択、官報2024年9月20日。PFHxA とその塩25 ppb、関連物質1,000 ppb。2026年4月10日(訓練・試験・公共消防の泡消火剤)、2026年10月10日(衣類・付属品の繊維・皮革・毛皮、履物、食品接触の紙・板紙、一般向け混合物、化粧品)、2027年10月10日(その他の繊維・皮革など)、2029年10月10日(民間航空の泡消火剤)。個人用保護具の一部、医療機器、建築用繊維は対象外。前文:PFHxA 関連物質は繊維、食品接触の紙・板紙、泡消火剤に大量に使われている出典24 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/2462/oj/eng事実
EU の PFAS 包括制限案:RAC が最終意見を2026年3月2日に採択(ECHA の発表は3月3日)、SEAC が意見案を3月10日に合意し3月26日に公表、ECHA は両委員会が適切な適用除外つきの EU 全体の制限を支持すると発表。SEAC の最終意見は2026年末までの見込み、その後に欧州委員会の提案と REACH 委員会の議論・投票。案の提出(5か国当局、2023年1月13日)。SEAC の意見案への意見募集は2026年5月25日まで。ホットトピックのページ(2026年10月9日確認)に、2026年10月7日付で11月の SEAC 会合の議題を公表とあり、最終意見の採択は未確認出典25 https://echa.europa.eu/hot-topics/perfluoroalkyl-chemicals-pfas
出典26 https://echa.europa.eu/-/echa-supports-pfas-restriction-with-targeted-derogations
出典27 https://echa.europa.eu/-/echa-s-risk-assessment-committee-adopts-its-opinion-on-pfas-restriction-proposal
未確定/将来
日本:PFOA またはその塩を2021年10月22日に化審法の第一種特定化学物質へ追加指定(2021年4月16日閣議決定)。用途は撥水剤等。使用されている場合の輸入禁止製品として撥水剤等13種類を指定出典28 https://www.env.go.jp/press/109478.html事実
米国 EPA:TSCA 8(a)(7) の報告・記録保管規則を2023年10月11日に最終化。2025年11月に範囲の見直しを提案(0.1%以下の混合物・製品、輸入物品などを免除)。2026年4月に報告期間の延長を最終化(見直しの発効日後60日)。ページは2026年4月16日更新出典29 https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/tsca-section-8a7-reporting-and-recordkeeping未確定/将来
ディップコートの液膜の厚み(η=2 mPa·s、γ=22 mN/m、ρ=800 kg/m³、U=1 mm/s で約3.2 µm)、固形分1 vol% で約32 nm、速度を2倍で約1.6倍。Stoney の式による反り(100 nm、1 GPa、Si ウェハ0.5 mm 厚・100 mm 径、二軸弾性率180 GPa で、曲率半径75 m、反り約17 µm、幅あたりの力100 N/m)。MgF₂ 単層の反射率(ガラス1.52、n=1.38)約1.26%、未処理約4.26%、理想の屈折率約1.23、膜厚±10%で約1.34%、400 nm で約2.2%、700 nm で約1.6%、膜厚約99.6 nm。接触角の低下(115°→109°、6°、約5.2%)本稿の計算。条件はすべて本稿の仮定で、実際のゾル・膜・ガラスの値ではない。反射率は屈折率の波長依存・吸収・入射角を無視した理想化の計算本稿の計算
成膜法の地図と各方法の特徴(蒸着・スパッタ・CVD・ゾルゲル/ディップ/スピン)、単層の限界を多層・多孔質・ナノ構造で補うという整理、湿式の膜厚は固形分で調整しやすいという読み取り、ナノ厚みでも応力で反るという読み取り、硬質コートのナノは層の構成にあるという読み取り、評価の数字を見るときの5つの確認、規制は物質・用途・閾値の組み合わせで効くという整理公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない解説
多孔質の反射防止膜の機械的強さ・汚れ・吸湿の弱点、反射防止膜に防汚膜を重ねる設計が行われること、固形分が低いと島状になる可能性根拠の弱い見立てで推測。本稿が参照した公式資料に記載はない解説
成膜装置の面内均一性・ロット間再現性・ピンホール密度の一般的な水準、ナノ厚みの膜に適した密着試験の方法、撥水膜の膜厚の数値と成分の詳細、非フッ素系撥水材の性能と耐久性、OPTOOL がPFASに該当するか、応力を相殺する多層設計の具体的手法本稿の調査範囲では公式資料に確認できなかったため記載していない解説
図1・図2・図5・図6・図8が概念を示す作図であること。ヒーロー画像と図7がAI生成イメージであること。図3・図4・図5が本稿の計算を含む作図であること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月9日/規制の確認日も同日です。出典は一次情報(ISO・ASTM の規格ページ、EUR-Lex、環境省、米国 EPA、メーカーの技術資料、査読論文)に限定しています。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 成膜装置の面内均一性とピンホール密度の一般水準、ナノ厚みの膜に適した密着試験、撥水膜の膜厚と成分の詳細、非フッ素系撥水材の性能、特定製品が PFAS に該当するかについては、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 メーカーの値は代表値・公称値であり、測定条件の異なる数値どうしで優劣をつけていません。 図はすべて説明用の概念図です。図1・図2・図6・図8はベクター作図、図3・図4・図5は本稿の計算を含む作図、ヒーロー画像と図7はAI生成イメージで、いずれも実際の膜の断面・顕微鏡像・製品の実物を示すものではありません。