TECHNOLOGY EXPLAINER
カーボンナノチューブ
― 「ひとつの材料」ではなく、巻き方・作り方・選び方で別物になる
カーボンナノチューブ(CNT)は、グラフェンのシートを筒に巻いた形の炭素です。 筒が1枚か何枚か、どう巻くか(カイラリティ)で、金属にも半導体にもなります。 この記事では、構造、製法(アーク・レーザー・CVD、スーパーグロース、浮遊触媒)、分離と分散、電池・複合材料・配線・トランジスタの用途の段階、そして公的機関による安全性の評価を、論文・メーカーの公式資料・IARCとNIOSHの文書にもとづいて整理します。

- カーボンナノチューブとは何か(3行でつかむ)
- 構造 ― 単層・多層と、巻き方で決まる金属性・半導体性
- 本稿の計算:巻き方から直径を出す
- 製法 ― アーク・レーザー・CVD・スーパーグロース・浮遊触媒
- 本稿の計算:公称値を幾何と照らす
- 素材技術者の視点①:公称値は、版・時点・測定法で読む
- 分離と分散 ― 混ざった筒をそろえ、ほぐす
- 用途 ― 電池・複合材料・配線・トランジスタの段階
- 安全性 ― 公的機関の評価をそのまま読む
- 素材技術者の視点②:「ナノだから」ではなく、形と量と取り扱いで見る
- 確認できなかったこと/このシリーズの他の記事との分担
- 用語集/参考資料/出典対応表
事実=論文・規格・公的文書・製品ページに記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・見通しであり、実績が確認できていない事項
このほか、材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
メーカーの値は「メーカー公称」と明記し、測定法・時点が分かる場合は添えます。
安全性については、公的機関の評価を原文に即して紹介するもので、特定の製品・取扱いについての個別の助言ではありません。
センサー向けの話(電極・FET・機能化)は、本シリーズ「グラフェンとカーボンナノチューブ」(バイオセンサー編)で扱いました。本記事は材料そのものを扱います。
1. カーボンナノチューブとは何か(3行でつかむ)
CNTは、グラフェンのシートを継ぎ目なく筒に巻いた形の炭素です。 1991年にIijimaが、アーク放電で得られた炭素から、同心の筒が2層から約50層入れ子になった針状の構造を報告しました事実[参考資料1]。 1993年には、IijimaとIchihashiが直径約1 nmの単層の筒を、Bethuneらがコバルトを加えたアークで壁が原子1層で直径約1.2 nmの筒を、それぞれ報告しています事実[参考資料2・3]。
- 巻き方で電気的性質が変わる:理論計算では、筒の直径と炭素の六角形が並ぶ螺旋の度合いで、金属的から、バンドギャップの狭い・中程度の半導体的まで変わると予測されました事実[参考資料9]。おおよそ1/3が金属、2/3が半導体という見積もりもあります事実[参考資料10]
- 作り方で出てくる形が違う:アーク、レーザー、CVD、スーパーグロース、浮遊触媒。単層か多層か、直径、長さ、金属触媒の残り、フォレストか繊維かが変わります(第4章)
- 安全性は「形」で語る:IARC(国際がん研究機関)は2017年のモノグラフ第111巻で、MWCNT-7を「ヒトに対しておそらく発がん性がある(グループ2B)」、他の多層CNTと単層CNTを「分類できない(グループ3)」としました事実[参考資料24]。「ナノだから危険」とも「安全」とも一般化できません(第9章)
「CNT」という名前の中に、直径・層数・長さ・巻き方・純度・凝集の仕方が違う、多くの別の材料が入っています。 仕様書では名前よりも、単層か多層か、直径と長さの分布、金属触媒と非晶質炭素の量、そして分散した状態の写真を見ます。 同じメーカーの同じ製品でも、公称値は版や時点で変わります(第6章)(本記事による解説)。
2. 構造 ― 単層・多層と、巻き方で決まる金属性・半導体性
単層CNT(SWCNT)は1枚の筒、多層CNT(MWCNT)は何枚もの筒が入れ子になったものです。 SWCNTの電気的な性質は、どのようにシートを巻くか(カイラリティ、整数の組 (n, m))で決まります。 Hamadaらは1992年に、炭素の微小な管が、直径と六角形の螺旋配列の度合いに応じて、金属的から半導体的まで大きく変わると予測しました事実[参考資料9]。 Saitoらは同年、単層の筒の約1/3が一次元の金属で、残りの約2/3が一次元の半導体になると計算しています事実[参考資料10]。

形状・色・寸法は説明用です。数値・原文の対応は下の元図で確認できます。
元のSVG模式図と正確な説明を見る
図の読み方・元図の説明:CNTの構造と、巻き方で決まる電気的性質(概念図) / 原子の数・直径・長さは縮尺どおりではありません / ① シートを巻く / ② 単層と多層 / ③ 巻き方で性質が変わる / 巻く向き (n, m) / 継ぎ目なく / 筒にする / 1枚の筒=単層 / SWCNT / 断面(1枚) / MWCNT / 断面(入れ子) / Iijima 1991:2層〜約50層 / 金属 約1/3 / 半導体 約2/3 / 単層の筒の理論計算の見積もり(Saito 1992) / 直径が違えばバンドギャップも変わる / (Hamada 1992) / 合成直後は混合物になりやすい / 電子用途では選り分けが必要(第7章) / ※ 左のシートと筒は説明用です。実際の六角格子の原子配列や (n, m) の対応は描いていません。 / ※ 約1/3・約2/3は理論計算にもとづく見積もりで、実際の合成物の割合を示すものではありません[参考資料10]。 / ※ 層数は Iijima(1991)の報告[参考資料1]。単層・多層の断面の数は模式です。
機械的な数字も「どの試料で測ったか」
CNTの強さの数字も、グラフェンと同じく試料・測定法で意味が変わります。 Treacyらは1996年に、透過電子顕微鏡で筒の熱振動の振幅から、単離した筒のヤング率が「テラパスカル級」だと見積もりました事実[参考資料11]。 Yuらは2000年に、走査電子顕微鏡内の「ナノ引張ステージ」で19本のMWCNTを引っ張り、外側の層の引張強度が11〜63 GPa、外側の層のヤング率が270〜950 GPaの範囲だったと報告しています(破壊は外側の層が抜ける「sword-in-sheath」型)事実[参考資料12]。 同じ「CNTの強度」でも、測り方(熱振動か引張か)と試料(単離した筒か、多層の外側か)で幅があります。
3. 本稿の計算:巻き方から直径を出す
(n, m) から直径を出す式と、論文の測定値が合うかを確かめます本稿の計算。
- 前提:グラフェンの格子定数 a = √3 × 0.142 nm = 0.246 nm(炭素–炭素結合長 0.142 nm は本稿の仮定)。直径の式 d = a√(n² + nm + m²) ÷ π(幾何から導かれる標準的な関係。本稿が一次資料で確認したものではない)
- (10, 10):√(100 + 100 + 100) = √300 = 17.32。d = 0.246 × 17.32 ÷ 3.1416 = 約 1.36 nm
- Thessらは、レーザー蒸発で得た単層CNTの直径を、13.8 ± 0.2 Å(1.38 ± 0.02 nm)とX線から求め、「金属的な (10, 10) の筒が強く有利」と述べている事実[参考資料5]
- (6, 5)(直径を調べる例):√(36 + 30 + 25) = √91 = 9.54。d = 0.246 × 9.54 ÷ 3.1416 = 約 0.75 nm
前提と限界:直径の式は標準的な幾何の関係ですが、本稿は式そのものの出典を確認していません。(10, 10) の計算値 1.36 nm と測定値 1.38 nm の一致は、式と結合長の置き方が妥当であることの確認にすぎず、個々の試料の (n, m) 分布を示すものではありません。
4. 製法 ― アーク・レーザー・CVD・スーパーグロース・浮遊触媒
CNTの作り方は、炭素をどこから供給し、触媒をどこに置くかで分けられます。 古い方法(アーク・レーザー)は単層CNTの存在を確かめた方法で、いまの工業生産はCVD系が中心です(本記事による整理)。
| 製法 | 報告・記述(条件つき) | 素材側の課題(出典または解説) |
|---|---|---|
| アーク放電 | Iijima(1991):アーク放電蒸発で、陰極に2〜約50層の入れ子の筒が成長事実[参考資料1]。Iijima・Ichihashi(1993):気相で直径約1 nmの単層の筒が成長(多層は陰極上)事実[参考資料2]。Bethuneら(1993):炭素とコバルトを同時に蒸発させ、壁が原子1層で直径約1.2 nmの筒事実[参考資料3]。Journetら(1997):70〜90%の収率とされるレーザー法に近い性状の単層を、より安価・容易なアーク法で大量に得られると報告事実[参考資料4] | 多層と単層が混在する。金属触媒(Co等)が残る(解説) |
| レーザー蒸発 | Thessら(1996):1200 ℃で炭素—ニッケル—コバルトの混合物をレーザー蒸発させ、収率70%超。直径はほぼ均一で、100〜500本の単層が三角格子の「ロープ」になる。直径約13.8 Å。ロープの抵抗率は300 Kで10⁻⁴ Ω·cm未満事実[参考資料5] | 実験室規模の装置。束になるので、ほぐす工程が要る(解説) |
| CVD:スーパーグロース | Hataら(2004):水で触媒の活性と寿命を高め、高さ最大2.5 mmの垂直に並んだ「フォレスト」を成長。触媒から容易に分離でき、炭素純度99.98%超事実[参考資料6] | フォレストの高さは筒の長さではなく、加工で短くなる(解説)。工業化のしくみは第6章 |
| CVD:浮遊触媒・直接紡糸 | Liら(2004):液体の炭素源と鉄のナノ触媒を使い、炉のCVD反応域から繊維とリボンを直接紡ぎ、回転する紡錘で連続的に巻き取った事実[参考資料7] | 繊維の性能は、筒の配向・束ね方・長さに依る(解説) |
| バルク成長から湿式紡糸 | Behabtuら(2013):バルクで成長させたCNTを、工業繊維と同じ湿式紡糸で繊維にした。炭素繊維の比強度・剛性・熱伝導と、金属の比導電率を併せ持つと報告事実[参考資料8] | 研究報告。量産品としての保証値は未確認 |
各論文の要旨の記述。条件(触媒、温度、原料、測定法)が違うため、製法どうしの優劣を示す表ではありません。
5. 本稿の計算:公称値を幾何と照らす
ZeonのスーパーグロースCNT「ZEONANO SG101」の公称値(メーカー公称)を使って、幾何から導ける値と比べます。 Zeonは英語ページで、比表面積 1,100 m²/g 超、フォレスト長 300〜500 µm、平均直径 3〜5 nm、炭素純度 99%以上、不純物(金属)500 ppm 未満としています事実[参考資料26](測定法は同ページに記載なし)。
- 比表面積の目安:両端の閉じた単層の筒の、外側だけの面積は、グラフェンの片面と同じ 約 1,314 m²/g(グラフェン編の計算:結合長 0.142 nm、炭素1原子 1.994×10⁻²³ g、1原子 0.0262 nm²)。公称 1,100 m²/g 超は、その約 84% 以上。経産省の2022年6月時点の資料にある「800以上」なら約 61% 以上
- フォレスト長 ÷ 直径:300 µm ÷ 5 nm = 6×10⁴、500 µm ÷ 3 nm = 約 1.7×10⁵
前提と限界:比表面積の上限は、筒が閉じていて束にならず、外側の面だけが測られるという理想化です(実際は束・開いた端・内側の面で変わる)。BETの値は吸着の条件(相対圧の範囲)に左右され、メーカーは測定条件を書いていません。フォレスト長は成長した束の高さで、分散・混練のあとの筒の長さではありません(工程で短くなる。解説)。したがって 6×10⁴ 〜 1.7×10⁵ は「材料のアスペクト比」ではなく、成長時の寸法比です。
6. 素材技術者の視点①:公称値は、版・時点・測定法で読む
ZEONANO SG101の比表面積は、2026年10月に確認したZeonの英語ページで「1,100 m²/g超」、経済産業省が公表するナノマテリアル情報提供シート(日本ゼオン、令和4年〔2022年〕6月時点)では「800以上」(BET法)です事実[参考資料26・27]。 同じ表に、炭素含有量99%以上(TGA)、製品形状は粉体で一次粒子は繊維状、製品粒径は凝集体で数µmから数mmと記載されています事実[参考資料27]。 どちらが「正しい」という話ではなく、公称値は規格値(保証する下限)か、代表値か、測定時点・仕様の版かで変わります(以下は本記事による解説)。
- 下限か代表値か:「min」「超」「以上」は保証値の言い方で、代表値とは違います。受け入れ仕様に使うときは、どちらかを確かめます
- 測定法:比表面積はBET(吸着ガスと相対圧の範囲で値が動く)、炭素純度はTGA(燃焼残渣=金属酸化物を見る)です。TGAの炭素含有量99%以上は、「SWCNTが99%」ではなく、非晶質炭素など他の炭素も含みうる値です(解説)
- メーカー公称の「G/D比」:OCSiAlは自社のTUBALLについて「G/D>90」「不純物<1%」と述べています事実(メーカー公称。ページに測定条件〔励起波長など〕の記載なし)[参考資料28]。ラマンのG/D比は励起波長で変わるので(グラフェン編のラマンの章を参照)、条件を添えてもらいます
- 市場の規模感:経産省のシートには、会員企業の令和3年度(2021年度)の製造量の合計が「172t〜222t」(NBCI調べ)とあり事実[参考資料27]、単位は t です。OCSiAlは2026年4月のニュースで、合成ユニットを増やし、最終的に1,000 t の生産能力を目標にするとしています未確定/将来(会社の計画)[参考資料29]
7. 分離と分散 ― 混ざった筒をそろえ、ほぐす
合成したままのSWCNTは、直径・カイラリティ・金属性が混ざり、束になっています。 電子用途や光学用途では、金属的な筒と半導体的な筒、さらには単一の (n, m) に選り分ける必要があります。
Arnoldらは、密度勾配遠心で直径が0.02 nmの範囲に97%以上が入るSWCNTを分離し、ほぼ単一の電子的タイプのSWCNTを大量に得たと報告しています(グラフェンとCNT〔センサー編〕と同じ論文)事実[参考資料13]。 Zhengらは2003年に、1本鎖DNAと超音波でSWCNTを水に分散し、イオン交換クロマトグラフィーで電子構造の異なる分画に分けられると報告しました事実[参考資料14]。 Tuらは2009年に、プリンの後にピリミジンが1つ以上続く繰り返しのDNA配列が、混合物の中の特定の構造を精製できると報告しています事実[参考資料15]。 Liuらは2011年に、1種の界面活性剤と垂直に連結したゲルカラムで、13種の (n, m) を大規模に分離し、金属的なSWCNTは最後に非吸着として回収されると報告しました事実[参考資料16]。 Nishらは2007年に、特定の芳香族ポリマーが特定のSWCNT種を選択的に分散し、相対濃度で最大約60%が単一の種、蛍光量子収率が最大1.5%の懸濁液が得られたと報告しています事実[参考資料17]。
一方、工業的には、電池の導電助剤として、SWCNTをNMPなどに分散した分散液が使われます。OCSiAlは2026年4月に、NMP系の超微細な分散液、Li-CMC結合剤用の分散液、全固体電池向けの分散液を発表しています事実(メーカーの発表。具体的な含有率・性能値は同ニュースに記載なし)[参考資料29]。 分散の質(束のほぐれ方、筒の折れ・短縮)は、導電ネットワークの作りやすさに直結しますが、この点の数値の一次資料は、本稿の調査範囲では確認できませんでした。

8. 用途 ― 電池・複合材料・配線・トランジスタの段階
用途ごとに、報告されている内容と、確認できた実証の段階を分けます。製品として売られていることと、最終製品で採用されていることは別です。後者の公式資料は、本稿の調査範囲では確認できませんでした(第11章)。
| 用途 | 報告・記述(条件つき) | 段階 |
|---|---|---|
| 電池の導電助剤 | 総説は、CNTを従来のカーボンブラックや黒鉛より低い重量割合で導電助剤に使うと、電気的なパーコレーション網をより効率よく作れる、と整理事実[参考資料18]。Zeonは、SG101の長い筒が低いパーコレーション閾値と、結合剤のない自立膜を可能にし、金属触媒の残りが少ないため電解液と反応しない、と説明事実(メーカー説明)[参考資料26]。OCSiAlは、自社のTUBALLが0.01%の超低濃度でも有効で、用途によって0.03〜0.1%で使うと述べる事実(メーカー公称。測定条件の記載なし)[参考資料28] | メーカーが分散液・粉末を製品として公表。特定のセル・車への採用の公式資料は未確認 |
| 複合材料・繊維 | CNT・グラフェンの複合材は約20年研究されたが、荷重伝達・界面・分散・粘度に由来する課題が残る事実[参考資料19]。バルク成長のCNTを湿式紡糸した繊維は、炭素繊維の比強度・剛性・熱伝導と金属の比導電率を併せ持つと報告事実[参考資料8] | 研究報告。量産品の保証値は未確認 |
| 配線・導体 | CNT–銅複合材で、導電率 2.3〜4.7×10⁵ S/cm(銅は 5.8×10⁵ S/cm)、許容電流密度(ampacity)は銅の約100倍の 6×10⁸ A/cm²事実[参考資料20] | 研究報告(下の計算) |
| トランジスタ | CNT電界効果トランジスタだけで作った計算機(178個、各10〜200本のCNT、簡単なOSでマルチタスク)事実[参考資料21]。14,000個超の相補型CNFETによる16ビットのRISC-Vマイクロプロセッサ。著者は、ナノスケールの欠陥とばらつきを完全には制御できないことが大規模集積を妨げてきたと述べ、それを克服する製造の方法論を提案事実[参考資料22] | 実証(研究)。量産は未確認未確定/将来 |
本稿の計算
- 2.3×10⁵ ÷ 5.8×10⁵ = 約 40%、4.7×10⁵ ÷ 5.8×10⁵ = 約 81%
- 許容電流密度は「約100倍」で 6×10⁸ A/cm²。銅の値は、論文の記述(100倍)から逆算すると 約 6×10⁶ A/cm²
前提と限界:導電率と許容電流密度は論文の記述(要旨)です。逆算の銅の値は、本稿が「100倍」から置いたもので、論文が示した銅の測定値ではありません。試料は微小な導体の実験室の報告で、バルクの電線の性能ではありません。体積あたりの導電率と、質量あたりの導電率は別の指標です(本稿は質量あたりの値を確認していません)。
9. 安全性 ― 公的機関の評価をそのまま読む
CNTの安全性は、「ナノだから危険」とも「安全」とも言えません。 形(長さ・直径・剛性)、層数、金属触媒の残り、凝集の状態、曝露の経路で結果が違うため、公的機関は種類ごとに評価しています。
- IARC(第111巻、2017年):ヒトの発がん性の証拠は不十分。動物では、MWCNT-7の証拠は十分、MWCNT-7に似た寸法の2種類の多層CNTは限定的、他の多層CNTと単層CNTは不十分。総合評価は、MWCNT-7が「ヒトに対しておそらく発がん性がある(グループ2B)」、他の多層CNTと単層CNTは「ヒトでの発がん性について分類できない(グループ3)」です事実[参考資料24]。IARCは、メカニズムの面では、ラットやマウスで単層・二層・多層のCNTにより肺の炎症・肉芽腫・線維化が見られ、胸膜の炎症や増殖が3種類の多層CNT(MWCNT-7、MWCNT-N、Helix)で見られたこと、またCNTの不均一さと長期試験の少なさのため、機構の理解に大きなデータの欠落が残ることを述べています事実[参考資料24]
- MWCNT-7の吸入試験:Kasaiらは、直線状の繊維型MWCNT(MWNT-7)を、雄雌のF344ラットに104週間、全身吸入曝露(0、0.02、0.2、2 mg/m³)で調べました。肺がん(主に細気管支肺胞がん)が、雄の0.2・2 mg/m³、雌の2 mg/m³で有意に増え、胸膜中皮腫は見られませんでした事実[参考資料23]
- NIOSH(米国労働安全衛生研究所、2013年4月):動物試験の用量反応から定量的なリスク評価を行い、呼吸性元素状炭素として 1 µg/m³(8時間加重平均)を勧告曝露限度(REL)として提案しています。ヒトで同様の影響が出るかは分かっていない一方、動物の結果は曝露を最小にする必要性を示すとしています事実[参考資料25](RELは勧告であり、法的な許容濃度ではない。解説)
- 事業者の記載:経産省のシートで、日本ゼオンは、SG-CNTについて、ラットの腹腔内投与で中皮細胞に発がん性は認められず、13週吸入曝露で肺や他の器官に病理組織学的変化は認められず、マウスのリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験で遺伝毒性は認められなかったと記載し、詳細はSDSにあるとしています事実(事業者の記載。試験データそのものは本稿では未確認)[参考資料27]
日本の労働安全衛生法令などでの扱いは、本稿の調査範囲では公的文書で確認できなかったため記載しません。EUのREACHのナノフォームなどの規制は、本シリーズ「ナノ材料の定義と規制」編で扱います。
10. 素材技術者の視点②:「ナノだから」ではなく、形と量と取り扱いで見る
- 種類で見る:IARCはMWCNT-7だけを2Bとし、他を3としました。つまり、同じ「CNT」でも一括りにできません。調達するCNTが、MWCNT-7に似た長く直線的な多層なのか、短くて曲がった多層なのか、単層なのか、直径・長さの分布で確かめます(解説)
- 「グループ3」を安全と読まない:証拠が不十分という意味で、長期の試験が少ないことの裏返しです(IARCも、データの欠落が残ると述べています)
- 粉体の取り扱い:NIOSHは、CNTが古典的なエアロゾルのように振る舞うので、発生源の囲い込みや局所排気などの標準的な曝露対策が実行可能とみられる、と述べています事実[参考資料25]。粉末を量る・混ぜる工程が、材料側の曝露の主な場所になります(解説)。日本ゼオンの記載にも、クリーンルーム内の作業、HEPAフィルター経由の排気、保護具、密閉容器での保管があります事実[参考資料27]
- 分散液にすると:飛散しやすさは変わりますが、乾燥・研磨・加工で再び粉塵になりえます(解説)。個別の安全対策は、SDSと所管の指針に従い、本稿は助言をしません
11. 確認できなかったこと/このシリーズの他の記事との分担
(1) 本稿の調査範囲で確認できなかったこと
- CNTを導電助剤として使った特定の量産セル・車種の公式資料、およびメーカーが公称する測定条件(BET、G/D比)の詳細は確認できませんでした未確定/将来
- 複合材料・繊維・配線の量産品の保証値、CNTの価格・製造原価の一次資料は確認できませんでした
- CNTトランジスタの量産の実績は確認できませんでした。Hillsらの値は研究室での実証です未確定/将来
- 日本・EU・米国のCNTの個別の規制(法令上の位置づけ)は、公式文書で確認できていません
- 分散の質(束のほぐれ、筒の短縮)を定量した一次資料、ISO/TC 229のCNT評価の技術仕様書の番号と内容は、公式ページで確認できなかったため記載していません。用語の標準(ISO/TS 80004-3)は、グラフェンとCNT(センサー編)で触れています
(2) このシリーズの他の記事との分担
グラフェンの製法・品質・転写は、本シリーズ「グラフェン」編で扱いました。CNTとグラフェンをセンサーに使うときの電極・FET・機能化は「グラフェンとカーボンナノチューブ」(バイオセンサー編)、高分子への分散と複合は「ポリマーブレンドとフィラー」編、電池の導電助剤の周辺は「シリコン負極とナノ構造電極」編・「スーパーキャパシタ」編で扱います。
- CNTは単一の材料ではありません。単層・多層、巻き方(金属1/3・半導体2/3の見積もり)、製法で、直径も長さも純度も違います事実
- 公称値は版と時点で変わります。同じZEONANO SG101の比表面積は「800以上」(2022年6月の資料)と「1,100超」(現行ページ)事実
- 分離は研究規模です。13種の (n, m) の分離、最大約60%の単一種の分散などが報告されています事実
- 用途の段階は違います。導電助剤は分散液が製品として公表され、トランジスタは14,000個超の集積まで実証。複合材料・配線は研究段階事実
- 安全性は種類ごとの評価です。IARCは MWCNT-7 を2B、他の多層と単層を3としました事実
- NIOSHのRELは 1 µg/m³(呼吸性元素状炭素、8時間)。勧告であり、法的な許容濃度ではありません事実
12. 用語集
- 単層CNT(SWCNT)
- グラフェンを1枚の筒に巻いたもの。直径は約1 nmから数nm。
- 多層CNT(MWCNT)
- 筒が何枚も入れ子になったもの。層数は2層から数十層まで。
- カイラリティ((n, m))
- シートを巻く向きと太さを表す整数の組。電気的な性質(金属/半導体)を決める。
- アーク放電法
- 黒鉛電極間のアークで炭素を蒸発させ、凝縮させて筒を得る方法。
- レーザー蒸発法
- 金属を含む炭素ターゲットをレーザーで蒸発させる方法。単層のロープが得られる。
- CVD
- 化学気相成長。触媒の上で炭素を含む気体から筒を成長させる。
- スーパーグロース法
- 水を加えて触媒の寿命を延ばし、垂直に並んだ長い単層CNTのフォレストを成長させる方法(産総研の発見)。
- フォレスト
- 基板上に垂直に林立して成長したCNTの集合体。高さは筒の長さの目安。
- 浮遊触媒CVD
- 触媒を基板に固定せず、炉の中で気相のまま反応させる方法。繊維の直接紡糸に使われる。
- 密度勾配遠心
- 界面活性剤の違いによる浮力密度の差で、筒を電子構造ごとに分ける方法。
- BET比表面積
- 窒素の吸着から求める比表面積。条件(相対圧の範囲)で値が動く。
- TGA
- 熱重量分析。加熱による質量の変化から、炭素の量と燃え残り(金属酸化物)を見る。
- G/D比
- ラマンのG帯とD帯の強度比。結晶性の目安だが、励起波長で変わる。
- パーコレーション閾値
- 導電性の網が全体につながり、導電率が急に上がる添加量。細長い筒ほど低い。
- ampacity(許容電流密度)
- 導体が壊れずに流せる最大の電流密度。
- IARCのグループ2B/グループ3
- 2Bは「ヒトに対しておそらく発がん性がある」、3は「ヒトでの発がん性について分類できない」。3は安全の宣言ではない。
- REL(勧告曝露限度)
- NIOSHが勧告する職場の曝露限度。法的な許容濃度ではない。
13. 参考資料(一次情報)
- Iijima S 「Helical microtubules of graphitic carbon」Nature 1991;354:56–58 — doi.org/10.1038/354056a0
- Iijima S, Ichihashi T 「Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter」Nature 1993;363:603–605 — doi.org/10.1038/363603a0
- Bethune DS ほか 「Cobalt-catalysed growth of carbon nanotubes with single-atomic-layer walls」Nature 1993;363:605–607 — doi.org/10.1038/363605a0
- Journet C ほか 「Large-scale production of single-walled carbon nanotubes by the electric-arc technique」Nature 1997;388:756–758 — doi.org/10.1038/41972
- Thess A ほか 「Crystalline Ropes of Metallic Carbon Nanotubes」Science 1996;273:483–487 — doi.org/10.1126/science.273.5274.483
- Hata K ほか 「Water-Assisted Highly Efficient Synthesis of Impurity-Free Single-Walled Carbon Nanotubes」Science 2004;306:1362–1364 — doi.org/10.1126/science.1104962
- Li Y-L, Kinloch IA, Windle AH 「Direct Spinning of Carbon Nanotube Fibers from Chemical Vapor Deposition Synthesis」Science 2004;304:276–278 — doi.org/10.1126/science.1094982
- Behabtu N ほか 「Strong, Light, Multifunctional Fibers of Carbon Nanotubes with Ultrahigh Conductivity」Science 2013;339:182–186 — doi.org/10.1126/science.1228061
- Hamada N, Sawada S, Oshiyama A 「New one-dimensional conductors: Graphitic microtubules」Phys Rev Lett 1992;68:1579–1581 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.68.1579
- Saito R, Fujita M, Dresselhaus G, Dresselhaus MS 「Electronic structure of chiral graphene tubules」Appl Phys Lett 1992;60:2204–2206 — doi.org/10.1063/1.107080
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- Yu M-F ほか 「Strength and Breaking Mechanism of Multiwalled Carbon Nanotubes Under Tensile Load」Science 2000;287:637–640 — doi.org/10.1126/science.287.5453.637
- Arnold MS, Green AA, Hulvat JF, Stupp SI, Hersam MC 「Sorting carbon nanotubes by electronic structure using density differentiation」Nat Nanotechnol 2006;1:60–65 — doi.org/10.1038/nnano.2006.52
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- Tu X ほか 「DNA sequence motifs for structure-specific recognition and separation of carbon nanotubes」Nature 2009;460:250–253 — doi.org/10.1038/nature08116
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- Kinloch IA ほか 「Composites with carbon nanotubes and graphene: An outlook」Science 2018;362:547–553 — doi.org/10.1126/science.aat7439
- Subramaniam C ほか 「One hundred fold increase in current carrying capacity in a carbon nanotube–copper composite」Nat Commun 2013;4:2202 — doi.org/10.1038/ncomms3202
- Shulaker MM ほか 「Carbon nanotube computer」Nature 2013;501:526–530 — doi.org/10.1038/nature12502
- Hills G ほか 「Modern microprocessor built from complementary carbon nanotube transistors」Nature 2019;572:595–602 — doi.org/10.1038/s41586-019-1493-8
- Kasai T ほか 「Lung carcinogenicity of inhaled multi-walled carbon nanotube in rats」Part Fibre Toxicol 2016;13:53 — doi.org/10.1186/s12989-016-0164-2
- IARC 「Carbon nanotubes」IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, Volume 111(Some Nanomaterials and Some Fibres)2017、該当章(PDF)。第6章「Evaluation」を引用 — publications.iarc.who.int
- NIOSH 「Occupational Exposure to Carbon Nanotubes and Nanofibers」Current Intelligence Bulletin 65, DHHS (NIOSH) Publication No. 2013-145, 2013年4月(PDF) — cdc.gov
- Zeon Corporation 「Carbon Nanotube — ZEONANO SG101」英語の製品ページ(2026年10月確認)。メーカー公称値 — zeon.co.jp
- 経済産業省 「ナノマテリアル情報提供シート:カーボンナノチューブ(日本ゼオン株式会社)」令和4年6月時点(PDF、日本語) — meti.go.jp
- OCSiAl 「Graphene Nanotubes For Industrial Applications」製品紹介ページ(2026年10月確認)。メーカー公称値 — ocsial.com
- OCSiAl 「OCSiAl Introduces New SWCNT Products for High-Performance Electrodes and Emerging Battery Chemistries」ニュース、2026年4月28日 — ocsial.com
14. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| 1991年、アーク放電の炭素から、2層〜約50層の同心の筒が入れ子になった針状構造を報告 | Iijima 1991(Nature)[参考資料 1]https://doi.org/10.1038/354056a0 | 事実 |
| 1993年、気相で直径約1 nmの単層の筒(多層は陰極上)、およびコバルトを加えたアークで壁が原子1層・直径約1.2 nmの筒を報告 | Iijima・Ichihashi 1993(Nature)[参考資料 2]https://doi.org/10.1038/363603a0;Bethuneら 1993(Nature)[参考資料 3]https://doi.org/10.1038/363605a0 | 事実 |
| アーク法は、レーザー法(収率70〜90%)に近い性状の単層を、より安価・容易に大量に得られると報告 | Journetら 1997(Nature)[参考資料 4]https://doi.org/10.1038/41972 | 事実 |
| レーザー蒸発(1200 ℃)で収率70%超、100〜500本のロープ、直径13.8 ± 0.2 Å、ロープの抵抗率は300 Kで10⁻⁴ Ω·cm未満、金属的な (10, 10) の筒が有利 | Thessら 1996(Science)[参考資料 5]https://doi.org/10.1126/science.273.5274.483 | 事実 |
| スーパーグロース:高さ最大2.5 mmのフォレスト、炭素純度99.98%超、水が触媒の活性と寿命を高める | Hataら 2004(Science)[参考資料 6]https://doi.org/10.1126/science.1104962 | 事実 |
| 浮遊触媒CVD:液体の炭素源と鉄のナノ触媒で、炉の反応域から繊維・リボンを直接紡ぐ | Liら 2004(Science)[参考資料 7]https://doi.org/10.1126/science.1094982 | 事実 |
| バルク成長のCNTを湿式紡糸した繊維が、炭素繊維の比強度・剛性・熱伝導と金属の比導電率を併せ持つ | Behabtuら 2013(Science)[参考資料 8]https://doi.org/10.1126/science.1228061 | 事実 |
| 直径と六角形の螺旋配列の度合いで、金属的から半導体的まで変わると予測。単層の約1/3が金属、約2/3が半導体 | Hamadaら 1992(PRL)[参考資料 9]https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.68.1579;Saitoら 1992(Appl Phys Lett)[参考資料 10]https://doi.org/10.1063/1.107080 | 事実 |
| 単離した筒のヤング率はテラパスカル級(熱振動の振幅から見積もり) | Treacyら 1996(Nature)[参考資料 11]https://doi.org/10.1038/381678a0 | 事実 |
| 19本のMWCNTの引張:外側の層の強度11〜63 GPa、ヤング率270〜950 GPa、sword-in-sheath型の破壊 | Yuら 2000(Science)[参考資料 12]https://doi.org/10.1126/science.287.5453.637 | 事実 |
| 密度勾配遠心で直径0.02 nmの範囲に97%超、ほぼ単一の電子的タイプ | Arnoldら 2006(Nat Nanotechnol)[参考資料 13]https://doi.org/10.1038/nnano.2006.52 | 事実 |
| DNAでSWCNTを分散し、イオン交換で電子構造ごとに分画。DNA配列で特定の構造を精製 | Zhengら 2003(Nat Mater)[参考資料 14]https://doi.org/10.1038/nmat877;Tuら 2009(Nature)[参考資料 15]https://doi.org/10.1038/nature08116 | 事実 |
| ゲルクロマトグラフィーで13種の (n, m) を大規模に分離。金属的な筒は非吸着で回収 | Liuら 2011(Nat Commun)[参考資料 16]https://doi.org/10.1038/ncomms1313 | 事実 |
| 芳香族ポリマーで、最大約60%が単一の種、蛍光量子収率最大1.5% | Nishら 2007(Nat Nanotechnol)[参考資料 17]https://doi.org/10.1038/nnano.2007.290 | 事実 |
| Zeonの公称:比表面積1,100 m²/g超、フォレスト長300〜500 µm、平均直径3〜5 nm、炭素純度99%以上、金属不純物500 ppm未満。SWCNTの特長(低いパーコレーション閾値、結合剤のない自立膜、電解液と反応しない)の説明。測定法の記載なし | メーカー公称値。 Zeon 製品ページ[参考資料 26]https://www.zeon.co.jp/en/business/enterprise/nanotube/carbonnanotube/ | 事実 |
| 経産省のシート(日本ゼオン、令和4年6月時点):比表面積800以上(BET法)、炭素含有量99%以上(TGA)、凝集体は数µm〜数mm、粉体で一次粒子は繊維状、会員企業の令和3年度製造量合計172〜222 t(NBCI調べ) | 経産省 ナノマテリアル情報提供シート[参考資料 27]https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/files/nanomaterial/2022nanojouhoushuushuu/CNT3_2022.pdf | 事実 |
| OCSiAl の公称:G/D>90、不純物<1%、0.01%の超低濃度でも有効、用途により0.03〜0.1%。測定条件の記載なし | メーカー公称値。 OCSiAl 製品紹介ページ[参考資料 28]https://ocsial.com/nanotubes/ | 事実 |
| OCSiAl(2026年4月):NMP系分散液、Li-CMC結合剤用、全固体電池向けの分散液を発表。合成ユニット増設により1,000 tの生産能力を目標 | 会社の発表・計画(未確定)。 OCSiAl ニュース(2026年4月)[参考資料 29]https://ocsial.com/news/ocsial-introduces-new-swcnt-products-for-high-performance-electrodes-and-emerging-battery-chemistries/ | 事実 |
| CNTを低い重量割合で導電助剤に使うと、パーコレーション網を効率よく作れる(総説) | Landiら 2009(Energy Environ Sci)[参考資料 18]https://doi.org/10.1039/b904116h | 事実 |
| CNT・グラフェンの複合材の課題(荷重伝達、界面、分散、粘度) | Kinlochら 2018(Science)[参考資料 19]https://doi.org/10.1126/science.aat7439 | 事実 |
| CNT–銅複合材:導電率2.3〜4.7×10⁵ S/cm(銅5.8×10⁵)、許容電流密度6×10⁸ A/cm²(銅の約100倍) | Subramaniamら 2013(Nat Commun)[参考資料 20]https://doi.org/10.1038/ncomms3202 | 事実 |
| CNT計算機:178個のトランジスタ、各10〜200本のCNT。14,000個超の相補型CNFETの16ビットRISC-Vマイクロプロセッサ | Shulakerら 2013(Nature)[参考資料 21]https://doi.org/10.1038/nature12502;Hillsら 2019(Nature)[参考資料 22]https://doi.org/10.1038/s41586-019-1493-8 | 事実 |
| IARCの評価:ヒトの証拠は不十分。動物の証拠は MWCNT-7 が十分、似た寸法の2種類が限定的、他の多層と単層が不十分。総合評価は MWCNT-7 がグループ2B、他の多層CNTと単層CNTがグループ3。機構(肺の炎症・肉芽腫・線維化、胸膜の炎症・増殖)とデータの欠落 | IARC モノグラフ第111巻[参考資料 24]https://publications.iarc.who.int/download/mono111-01.pdf | 事実 |
| MWNT-7の104週間の全身吸入(0、0.02、0.2、2 mg/m³、F344ラット):肺がんが雄の0.2・2、雌の2 mg/m³で増加、胸膜中皮腫は見られず | Kasaiら 2016(Part Fibre Toxicol)[参考資料 23]https://doi.org/10.1186/s12989-016-0164-2 | 事実 |
| NIOSH CIB 65(2013年4月):呼吸性元素状炭素として1 µg/m³(8時間加重平均)のREL。ヒトでの影響は不明、標準的な曝露対策が実行可能とみられる | NIOSH CIB 65[参考資料 25]https://www.cdc.gov/niosh/docs/2013-145/pdfs/2013-145.pdf | 事実 |
| 日本ゼオンの記載:ラット腹腔内投与で中皮細胞に発がん性なし、13週吸入曝露で病理組織学的変化なし、遺伝子突然変異試験で遺伝毒性なし。クリーンルーム、HEPA排気、保護具、密閉容器(事業者の記載) | 事業者の記載。試験データ自体は未確認。 経産省 ナノマテリアル情報提供シート[参考資料 27]https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/files/nanomaterial/2022nanojouhoushuushuu/CNT3_2022.pdf | 事実 |
| (10, 10) の直径約1.36 nm(格子定数0.246 nm=√3×0.142 nm)、(6, 5) の約0.75 nm、比表面積の目安約1,314 m²/gに対する84%・61%、フォレスト長÷直径の6×10⁴〜1.7×10⁵、CNT–銅複合材の導電率40〜81% | 本稿の計算。結合長0.142 nm、直径の式、閉じた筒・外面のみ・束なしの理想化は本稿が置いた仮定。フォレスト長は加工後の筒の長さではない。 | 本稿の計算 |
| CNTを使った特定の量産セル・車種、メーカー公称の測定条件、量産品の保証値、価格、トランジスタの量産、各国の個別規制、分散の質を定量した一次資料、ISO/TC 229のCNT評価の技術仕様書 | 本稿の調査範囲で公式資料を確認できなかったため記載していない(解説)。 | 未確定/将来 |
| 公称値は版・時点・測定法で読むという整理、TGAの炭素含有量とSWCNT含有量の違い、「グループ3は安全ではない」という読み方、評価は種類ごとに見て対策は粉体として考えるという整理、製法・用途段階・分離方法の整理 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各著者・機関が表明した見解ではない。 | 解説 |
| 図1・図2・図4・図6・図7が説明のための作図であること。図3は本稿の計算を含む作図であること。ヒーロー画像と図5がAI生成イメージであること | 本記事による注記。 | 解説 |
最終更新:2026年10月9日/出典は一次情報(査読論文、IARCとNIOSHの文書、経済産業省のシート、メーカーの公式ページ)に限定しています。構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 特定の量産セル・車種での採用、メーカー公称の測定条件、量産品の保証値、価格、トランジスタの量産、各国の個別規制、分散の質を定量した一次資料は、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 メーカーの値(Zeon、OCSiAl)は公称であり、測定法・条件の記載がありません。第6章のとおり、公称値は版・時点で変わります。 安全性の記載は公的機関の評価の紹介であり、個別の取扱いについての助言ではありません。 図はすべて説明用の概念図です。図1〜図4・図6・図7はベクター作図(図3は本稿の計算を含む)、ヒーロー画像と図5はAI生成イメージであり、いずれも実際の顕微鏡像・製品の実物を示すものではありません。