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白金族金属と触媒 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

白金族金属と触媒
― グラムの単位で効く金属が、水素の規模拡大を縛る理由

水電解と燃料電池の電極には、イリジウム、白金、ルテニウムなどの白金族金属(PGM)が使われています。 使う量は1 kWあたりグラムの桁ですが、イリジウムは世界の年間の鉱山生産が約7トンとされる、きわめて小さな市場の金属です。 この記事は、どこに何がどれだけ使われ、どう劣化し、どこまで減らせて、何で置き換えられるのかを、素材技術者の目線で整理した解説です。 投資・調達に関する助言ではありません。

構成:米国エネルギー省(DOE)の技術目標、IRENA の報告書、査読論文、米国地質調査所(USGS)、国際白金族金属協会(IPA)の資料を使用/最終更新 2026年10月

白金族金属と触媒のheroを示す概念画像
概念図(AI生成イメージ)。「グラムやミリグラムの単位で触媒を量る」作業を雰囲気として表現したものです。実在の製品・装置・粉末の量や色を示すものではありません。
この記事の構成
  1. 白金族金属と水素技術(3行でつかむ)
  2. どこに何が使われているか ― 電解と燃料電池
  3. 使用量の読み方 ― 本稿の計算:mg/cm² と g/kW をつなぐ
  4. 素材技術者の視点①:イリジウムが選ばれる理由は、「活性」ではなく「溶けにくさ」
  5. 触媒の担持と劣化 ― 層の中で何が起きるか
  6. 資源制約 ― 本稿の計算:イリジウムは何ギガワット分あるのか
  7. 素材技術者の視点②:副産物の金属は、需要が増えても供給が増えない
  8. リサイクル ― 閉じた輪と開いた輪
  9. 非貴金属触媒の位置づけ
  10. シリコーン・接着分野とのつながり:白金は別の場所でも使われている
  11. 課題と、本稿で確認できなかったこと
  12. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別し、根拠の弱い見立ては推測と明記しています。

この記事の位置づけ

貴金属の価格や需給は変動します。本記事の価格・生産量は記載時点の公的資料・業界団体資料の値で、将来の予測や投資・調達の助言ではありません。 水素や酸素の取扱いに関する個別の助言でもありません。

1. 白金族金属と水素技術(3行でつかむ)

白金族金属(PGM)は、白金(Pt)、パラジウム、ロジウム、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウムの6元素です。 USGS はこれらをまとめて「白金族金属」として統計に載せています事実[参考資料13]。 水素の分野で主役になるのは、イリジウム、白金、ルテニウムの3つです。

  • PEM 型水電解:アノード(酸素が出る側)に酸化イリジウム系、カソード(水素が出る側)にカーボン担持の白金が標準です。Ru は Ir と組み合わせて使われる例があります事実[参考資料3・5・11・21]
  • 固体高分子形燃料電池(PEFC):両極に白金系の触媒を使います。酸素還元を担うカソードが量の中心です事実[参考資料2・9]
  • アルカリ型・AEM 型・固体酸化物型:電極触媒の主役はニッケルなどの非貴金属で、PGM は主役ではありません事実[参考資料3]
この記事でいちばん大事な一行

問題は「PGM が高い」ことより、「イリジウムの年間生産量が、電解槽の大量導入に比べて桁違いに小さい」ことです。 IPA の資料では、世界のイリジウムの一次供給は約7トン/年で、2019〜2025年を通じてほぼ一定です事実[参考資料10]。 電解槽の規模拡大は、この数字と、1 kWあたりのイリジウム使用量(g/kW)の積で縛られます。

2. どこに何が使われているか ― 電解と燃料電池

水素技術の電極触媒 ― 何が使われているか(出典の例示にもとづく整理) ※ 代表的な例示です。製品や研究によって異なります。 PEM 型水電解 燃料電池(PEFC) PGM が主役でない方式 アノード(酸素発生) 酸化イリジウム系(Ru との組合せ例) 担体:チタン酸化物など カソード(水素発生) 白金(カーボン担持が標準) 貴金属の主役:Ir(量の制約) Pt は量は小さいが両方で使う カソード(酸素還元) 白金または白金合金(カーボン担持) アノード(水素酸化) 白金(カソードより少ない例が多い) 貴金属の主役:Pt 非貴金属への置換は研究段階 アルカリ型 ニッケル被覆のステンレスなど AEM 型 ニッケル・鉄・コバルト系 固体酸化物型 Ni/YSZ(燃料極)、ペロブスカイト ※ AEM 型の陰極は白金の例もある ※ IRENA[3]の表、JRC の報告[21]、DOE の目標表[2]、IPA の資料[10・11・12]の記述にもとづく本記事の整理です。 ※ 「PGM が主役でない」は触媒の主材料についての整理で、PGM が一切使われないという意味ではありません。 ※ 各方式の原理は、本シリーズの各電解・燃料電池の記事で扱います。
図1 概念図(ベクター作図)。イリジウム・白金・ルテニウムは水素の製造と利用の両方に出てきます。量が小さく、かつ供給が小さいのはイリジウムです。この整理は本記事によるもので、特定製品の構成を示すものではありません。

IRENA の表(2020年)は、4種類の電解槽の触媒を並べています。PEM 型は酸素側が酸化イリジウム、水素側がカーボン担持の白金ナノ粒子、アルカリ型はニッケル被覆のステンレス、AEM 型は高比表面積のニッケル、またはニッケル・鉄・コバルト合金、固体酸化物型はペロブスカイト型酸化物(酸素側)と Ni/YSZ(水素側)です事実[参考資料3]。 JRC の報告も、PEM 型ではIrOx と IrOx-RuOy をアノード触媒、Pt をカソード触媒としています[参考資料21]。 IPA のルテニウムの資料は、Ru が Ir と組み合わせて PEM 水電解の触媒に使われる例が増えているとし、「ルテニウムが高い活性を、イリジウムが高い耐久性を与える」と説明しています[参考資料11]。

3. 使用量の読み方 ― 本稿の計算:mg/cm² と g/kW をつなぐ

触媒の使用量は、2通りの単位で書かれます。電極の面積あたりの担持量(mg/cm²)と、装置の出力あたりの使用量(g/kW)です。 両者は、面積あたりの電力密度でつながっています。DOE の PEM 電解の目標表は、この両方を載せています事実[参考資料1]。

項目(PEM 電解、両極の PGM の合計)2022年 状況値2026年 目標究極の目標
PGM 量(mg/cm²)3.00.50.125
PGM 量(g/kW)0.80.10.03
セル性能2.0 A/cm² @ 1.9 V3.0 A/cm² @ 1.8 V3.0 A/cm² @ 1.6 V
劣化率(mV/kh)4.82.32.0

DOE の PEM 電解の技術目標表[参考資料1]。「PGM 量」は両極の合計で、DOE の注記は「イリジウムが PGM 量の大部分を占めるが、カソードには白金もある」としています。2022年の状況値は H2NEW コンソーシアムの分析にもとづくとされています。

本稿の計算

DOE の表の数字がつながっていることを、検算で確かめます本稿の計算。

  • 換算式:g/kW = 担持量(g/cm²)÷ 電力密度(kW/cm²)。電力密度 = 電流密度 × セル電圧
  • PEM 電解(2022年の状況値):2.0 A/cm² × 1.9 V = 3.8 W/cm² = 0.0038 kW/cm²。3.0 mg/cm² = 0.0030 g/cm² を割ると 0.0030 ÷ 0.0038 = 約 0.79 g/kW(DOE の表は 0.8)
  • PEM 電解(2026年の目標):3.0 A/cm² × 1.8 V = 5.4 W/cm²。0.5 mg/cm² ÷ 5.4 W/cm² = 約 0.093 g/kW(DOE の表は 0.1)
  • 燃料電池(DOE の電極触媒の表、2015年の状況値):PGM 量 0.13 mg/cm²。電力密度は MEA の表の 810 mW/cm²(150 kPa)[参考資料2]。0.13 ÷ 0.81 = 約 0.16 g/kW(DOE の表は 0.16)
  • 電解と燃料電池の比較:面積あたりでは 3.0 ÷ 0.13 = 約 23倍、出力あたりでは 0.8 ÷ 0.16 = 5倍

前提と限界:電解の「kW」は電力の入力、燃料電池の「kW」は出力で、同じ単位でも向きが逆です。DOE の電解の状況値は分析中のもの(記載時点では DOE のプログラム記録として公表予定との注記)、燃料電池の値は 2015年の状況値(3M の MEA にもとづくと DOE が注記)です。製品どうしの比較ではありません。 なお、IRENA(2020)は PEM 電解の「現在」の値として、Ir 5 mg/cm²(1.3 g/kW)、Pt 2 mg/cm²(0.5 g/kW)を、電流密度 2 A/cm²・電極面積 1,200 cm² の条件で示しています[参考資料3]。DOE の2022年の値(PGM の合計 0.8 g/kW)より大きいのは、基準の年と分析の方法が違うためで、どちらが正しいとは言えません(解説)。

PGM 使用量 ― 電解と燃料電池の比較(本稿の計算) g/kW = 担持量 ÷ 電力密度。数値は DOE の目標表[1・2]から PEM 電解(2022年の状況値) 3.0 mg/cm² ÷ 3.8 W/cm²(2.0 A/cm² × 1.9 V) ≒ 0.8 g/kW 燃料電池(2015年の状況値) 0.13 mg/cm² ÷ 0.81 W/cm²(810 mW/cm²、150 kPa) ≒ 0.16 g/kW 面積あたり 約23倍(3.0 ÷ 0.13) 出力あたり 5倍(0.8 ÷ 0.16) 電解の kW は電力の入力、燃料電池の kW は出力 ※ 3.0 mg/cm²・0.8 g/kW・2.0 A/cm²・1.9 V は DOE の PEM 電解の目標表[1]。両極の PGM の合計で、Ir 単独の量ではありません。 ※ 0.13 mg/cm²・0.16 g/kW・810 mW/cm² は DOE の PEFC 部材の目標表の「2015年の状況値」[2]。MEA の総出力にもとづく値です。 ※ 23倍・5倍・換算の検算は本記事が算出した値です。年代・分析の基準が異なるため、製品どうしの優劣を示すものではありません。
図2 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。担持量・電力密度は DOE の目標表[参考資料1・2]の値です。23倍・5倍は本記事が算出したもので、公表値ではありません。電解は面積あたりでは燃料電池よりずっと多くの貴金属を使いますが、電力密度が高いため、出力あたりの差は縮まります(解説)。

担持量は「減らすほど良い」わけではない

Bernt らは、PEM 電解セル(Nafion 212 膜、アノード IrO2/TiO2、カソード Pt/C)で担持量の影響を調べました。 カソードの白金は0.30 から 0.025 mg/cm² まで下げても性能が落ちなかった(水素発生の反応が速いため)一方、アノードのイリジウムは 1〜2 mg/cm² のあたりで 1 A/cm² 以上の性能が最大になり、0.5 mg/cm² 未満では触媒層が不均一になって利用率が下がり、性能が大きく低下したと報告しています事実[参考資料4]。 高すぎる担持量では、触媒層を通る水の輸送が不足して高電流密度で性能が下がります。 これは実験室の単セルの結果で、商用スタックの仕様ではありません。 「g/kW を減らす」ための道は、単に薄く塗ることではなく、少量でも均一な層を作る、電流密度を上げる、触媒をより有効に使うの組み合わせです(解説)。

4. 素材技術者の視点①:イリジウムが選ばれる理由は、「活性」ではなく「溶けにくさ」

素材技術者の読みどころ:アノードの触媒は、反応させながら溶けずに残らなければならない

PEM 型のアノードは、酸性で高電位という環境です(本シリーズ『水電解スタックと材料』編)。この条件で酸素を発生させながら、触媒が溶けずに残る金属は、ごく限られます。

  • Cherevko らは、Ru、RuO2、Ir、IrO2 の薄膜電極を同一の条件で比べ、酸素発生の活性は Ru > Ir ≒ RuO2 > IrO2、溶解のしやすさは IrO2 < RuO2 < Ir < Ru と報告しています。金属は酸化物より溶解が2〜3桁大きいとも述べています事実[参考資料6]。
  • Babic らのレビューは、RuO2 は過電圧が低いものの、溶解・腐食の速さが許容できないため、IrO2 が PEM 水電解のアノード触媒として残っていると述べています[参考資料5]。
  • IRENA(2020)も、ルテニウムはイリジウムより活性が高いが、長期の安定性に問題があると述べています。また、重要原材料を使わない触媒は、効率の面では優れても、溶解しやすく頑丈さに欠ける傾向があると書いています[参考資料3]。

つまり、触媒の選択は「活性が高い金属」ではなく「その電位で溶けない金属」から先に絞られます。 そして、活性の高い非晶質の酸化イリジウムは、安定性が低いという関係もあります。 Geiger らは、酸素発生量と溶け出したイリジウムの比(安定性の数)という指標を提案し、ペロブスカイト型の混合酸化物から非貴金属が溶け出すと高活性な非晶質酸化イリジウムができるが、その不安定さが溶解を招くと説明しています事実[参考資料7]。 彼らは、耐久性の高い結晶性の酸化イリジウムの利用効率を高めることと、非晶質酸化イリジウムを安定化する方法を探すことが今後の課題だとしています[参考資料7]。

ここから読み取れるのは、「使用量を減らす」と「長持ちさせる」が、しばしば逆向きに働くことです。薄く、活性を高めた触媒は、溶解の影響を受けやすくなります(本記事による解説)。

5. 触媒の担持と劣化 ― 層の中で何が起きるか

(1) 触媒は「粒」ではなく「層」として使われる

触媒は粉のままでは使えません。電子を運ぶ担体の上に、数ナノメートルの金属粒子を載せ、プロトンを運ぶアイオノマー(PEM 型ではパーフルオロスルホン酸の高分子)と混ぜて、膜の上に薄い層として塗ります。

  • カソード(白金):Meier らが調べた標準的な Pt/C は、粒径 3〜4 nm の白金をカーボンブラック(Vulcan)に載せたものです事実[参考資料8]。
  • アノード(イリジウム):電位が高く炭素は酸化されるため、担体にカーボンは使えません[参考資料5]。Bernt らの実験セルでは IrO2/TiO2 が使われています[参考資料4]。Babic らは、チタンや酸化スズの担体が貴金属量を減らす候補で、タングステンをドープした酸化チタンにイリジウムを載せて 0.1 mg/cm² で良い性能と安定性が示された例、3M のナノ構造薄膜触媒でイリジウム 0.25 mg/cm² の例を紹介しています[参考資料5]。
白金族金属と触媒の構造や工程を立体的に示す概念画像
概念画像(ImageGenで生成)。触媒層では、担体表面の微小な触媒粒子と、その周囲のアイオノマーが接するという関係を拡大して示した概念画像です。左は酸化イリジウム系、右は炭素担持白金系を例示しています。実際の顕微鏡像ではなく、粒径・粒数・色・配置や左右の優劣を示しません。劣化の種類は下の元の模式図に残しています。
数値・反応・材料を詳しく示す元のSVG模式図を見る
触媒層の構造と、知られている劣化の様式(概念図) ※ 粒の大きさ・数は模式です。実在の触媒層の構造を描いたものではありません。 アノード(電解):酸化イリジウム系 カソード(電解・燃料電池):Pt/C 担体:酸化チタンなど(淡色の大きな粒) 触媒:酸化イリジウム(茶色の小さな粒) 担体:カーボン(黒い大きな粒) 触媒:白金ナノ粒子(淡色の小さな粒) アイオノマー(曲線) アイオノマー(曲線) 劣化:イリジウムの溶解と再析出 非晶質は活性が高いが溶けやすい[7] 劣化:白金の溶解・粒成長・担体の腐食 小さい粒ほど溶けやすい。起動停止が厳しい[8] ※ 担体・触媒の組合せは、Bernt ら[4]、Meier ら[8]、IRENA[3]、JRC[21]にもとづく例示です。 ※ 左右の優劣を示す図ではありません。どちらの層でも、アイオノマー(PFSA)が触媒どうしと膜をつないでいます。
図3 概念図(ベクター作図)。触媒は、担体・金属粒子・アイオノマーの3つが組み合わさった薄い層です。粒の数・大きさは模式で、実在の触媒層を示すものではありません。

(2) 白金(燃料電池・電解のカソード)の劣化

Meier らは、Pt/C の劣化として、白金の溶解が特に小さい粒子で起こりやすいこと(小さい粒子は表面エネルギーが高く、より低い電位で溶ける。ギブス・トムソン効果)、溶けた白金が大きな粒子に再析出して粒が成長する(オストワルド熟成)こと、粒どうしが移動・合体すること、炭素担体の腐食が合体を招くことを整理しています事実[参考資料8]。 また、起動・停止や局所的な燃料不足でカソードの電位が一時的に 1.5 V に達しうることが、触媒の劣化を速める条件として知られると述べています[参考資料8]。 DOE の PEFC の目標表も、担体の安定性(質量活性の低下)を別の項目にしており、2015年の状況値は 41%の低下、目標は 40% 未満です事実[参考資料2]。

(3) イリジウム(電解のアノード)の劣化

前章のとおり、Cherevko らは酸化イリジウムの溶解が小さいことを示し、Geiger らは、活性の高い非晶質の酸化イリジウムほど溶けやすい関係を指摘しています[参考資料6・7]。 JRC の報告も、劣化機構の例としてイリジウムの溶解と再析出、カーボン担体の腐食に伴う白金ナノ粒子の凝集を挙げています[参考資料21]。 なお、これらは材料と試験の単位が違い(薄膜電極、単セル、スタック)、同じ尺度では比べられません。

6. 資源制約 ― 本稿の計算:イリジウムは何ギガワット分あるのか

(1) 供給の規模

金属供給・価格の数字出典・注意
イリジウム(Ir)2025年の世界の一次生産は約7トン。2019〜2025年でほぼ一定。南アフリカが約80%。一次供給の約3トンが電気化学用途(塩素製造、水処理、銅箔の電気めっき、水電解など)。価格 約4,400 ドル/トロイオンス(2025年推定、年平均)IPA の資料(JM のデータ)[10]、USGS[13]
ルテニウム(Ru)2025年の世界の一次生産は約30〜31トン。価格 約690 ドル/トロイオンス(2025年推定)IPA の資料[11]、USGS[13]
白金(Pt)2025年の世界の一次生産は約178トン(JM)/約170トン(USGS 推定)。南アフリカは約121トンで68%。価格 約1,200 ドル/トロイオンス(2025年推定)IPA の資料[12]、USGS[13]。2つの資料で値が異なる

IPA の資料は、国際白金族金属協会が、調査会社 SFA(Oxford)に作成させたもので、データは Johnson Matthey の2026年1月の公表値です。業界団体の資料であり、価格は USGS の「年平均価格の推定値」で、実際の取引価格はこれと異なります。

  • 副産物であること:IPA の資料によれば、イリジウムは単独では採掘されず、白金・パラジウム主体の鉱山、またはニッケル・銅の硫化物鉱床の副産物として得られます。世界のPGM の生産量に占めるイリジウムの割合は質量で約2%、需要では約1%です事実[参考資料10]。
  • 地理的な集中:EU の欧州委員会は、2023年の評価で、白金族金属を重要原材料(Critical Raw Materials)のリストに載せ、「南アフリカが EU の白金需要の71%を、イリジウム・ロジウム・ルテニウムではさらに高い割合を供給している」と記述しています事実[参考資料22]。
  • 電解槽への導入ペースとの関係:IRENA(2020)は、現在のイリジウムと白金の生産は、年間 3〜7.5 GW 分の PEM 電解槽の製造を支える程度で、2030年に必要になる年間約 100 GW(IRENA の想定)に比べて小さいと述べています[参考資料3]。

(2) 本稿の計算

本稿の計算

電解槽を年間に何ギガワット導入すると、イリジウムはどれだけ要るのか。仮の導入量を置いて桁を見ます本稿の計算。

  • 換算:1 GW = 1,000,000 kW。Ir 使用量 x g/kW のとき、1 GW あたり x トン(1 g/kW × 106 kW = 1 トン)
  • IRENA(2020)の「現在」:Ir 1.3 g/kW → 1 GW あたり 1.3 トン。年間 10 GW なら 13 トンで、年間の一次生産(約7トン)の約 1.9倍
  • IRENA の「将来」の例:Ir 0.4 g/kW → 10 GW で 4 トン(約7トンの 57%)
  • DOE の2022年の状況値:PGM の合計 0.8 g/kW。これは Pt を含む上限として扱うと、10 GW で 8 トン(114%)
  • DOE の2026年の目標:PGM の合計 0.1 g/kW → 10 GW で 1 トン(14%)。究極の目標 0.03 g/kW → 0.3 トン(4%)
  • 実績の桁:IEA によれば、世界の水電解の設備容量は2024年末で約2 GW、2024年の追加は約600 MWで、アルカリ型が追加の60%です[参考資料20]。残り最大40%(≒240 MW)がすべて PEM で、Ir 1.3 g/kW だったと仮定すると 240,000 kW × 1.3 g/kW = 約 312 kg(約0.3トン)で、一次生産の約4%

前提と限界:「年間10 GW」は仮のシナリオで、予測ではありません。約7トンはイリジウムの全用途の一次供給で、すべてを電解槽に回せるわけではありません。IEA の「追加」は電力入力の容量で、PEM かどうかの内訳は本稿では確認できていません。アノードの担持量だけを Ir とし、リサイクル材は考慮していません。

仮に年間 10 GW の PEM 電解槽を導入すると(本稿の計算) 使用量(g/kW)× 10,000,000 kW = 必要な金属量(トン)。点線は世界の Ir の一次生産(約7トン/年) IRENA 現在(Ir 1.3 g/kW) IRENA 将来例(Ir 0.4 g/kW) DOE 2022 状況値(PGM 計 0.8) DOE 2026 目標(PGM 計 0.1) DOE 究極の目標(PGM 計 0.03) 約7トン 13 t 4 t 8 t 1 t 0.3 t ※ 棒の長さは必要量(トン)に比例します。DOE の値は Pt を含む PGM の合計のため、Ir の上限として扱っています。 ※ 年間 10 GW は仮のシナリオで予測ではありません。使用量は IRENA[3]・DOE[1]、約7トンは IPA の資料[10]。必要量は本記事が算出した値です。
図4 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。使用量(g/kW)は IRENA[参考資料3]・DOE[参考資料1]、一次生産の約7トンは IPA の資料[参考資料10]の値です。必要量(トン)は本記事が算出したもので、公表値ではありません。基準の年や分析の方法が違う値を並べているため、優劣を示すものではありません。
本稿の計算:金属の「値段」で見る

USGS の2025年の推定年平均価格(Ir 4,400、Pt 1,200 ドル/トロイオンス[参考資料13])を 1トロイオンス = 31.1035 g で換算します本稿の計算。

  • 換算:Ir = 約 141 ドル/g、Pt = 約 38.6 ドル/g
  • IRENA の「現在」(Ir 1.3 g/kW、Pt 0.5 g/kW):Ir 1.3 × 141 = 約 184 ドル/kW、Pt 0.5 × 38.6 = 約 19 ドル/kW
  • DOE の2022年の状況値(PGM 0.8 g/kW):全量が Ir だとすると 0.8 × 141 = 約 113 ドル/kW(上限)。DOE のスタックの設備費の状況値は 450 ドル/kW[参考資料1]

前提と限界:金属の素材価格だけで、触媒の製造・加工費、リース、在庫、保険などを含みません。価格は年平均の推定値で、変動します。 それでも、イリジウムの金属代だけで、DOE の示すスタックの設備費の状況値(450 ドル/kW)の約4分の1〜4割強(113〜184 ドル/kW)に相当する計算になります。ただし、これは基準の違う二つの資料の数字を並べたもので、一つの製品の内訳ではありません。

7. 素材技術者の視点②:副産物の金属は、需要が増えても供給が増えない

素材技術者の読みどころ:イリジウムの価格が上がっても、鉱山は「イリジウムのため」には増産されない

IPA の資料は、イリジウムが白金・パラジウム主体の鉱山の副産物であり、生産量はPGM 全体の価格と需要に左右される、と述べています事実[参考資料10]。 さらに、PGM の生産設備について、既存の設備を使う再開や浅い斜坑の拡張で8〜18か月、機械化した浅い新規鉱山で3〜4年、深い立坑で6〜8年かかると書いています[参考資料10]。

ここから素材技術者が読み取れるのは、次の点です(本記事による解説)。

  • 需要の信号が、供給に伝わりにくい:イリジウムの収入への寄与は小さく、鉱山の投資は白金やパラジウムの採算で決まります。イリジウムだけの価格上昇では、一次供給は増えにくい構造です。
  • 鉱石の種類に依存する:IPA の資料は、UG2 鉱床がイリジウムを多く含み(ルテニウム・ロジウムも)、その採掘が増えたことでイリジウムの潜在的な供給が広がったと述べています[参考資料10]。すなわち供給は鉱床の性質に縛られます。
  • 需要の見通しは振れる:USGS は、2025年にイリジウム価格が前年比で9%下がったことについて、増産と、水素分野への投資家の熱の低下が影響した可能性があると書いています[参考資料13]。電解槽の導入計画が減速すれば、イリジウムの需要の見通しも下がります(計画ではなく、実際の発注を見る必要があります)。

そのため、「資源が足りない」ことを前提に使用量を減らす(g/kW)だけでなく、電解槽が導入されるペース自体を見ること、そして回収して回す(リサイクル)ことが、同じ重さで効きます。

8. リサイクル ― 閉じた輪と開いた輪

IPA の資料は、PGM のリサイクルを閉じた輪(クローズドループ)と開いた輪(オープンループ)に分けています。閉じた輪は、使用後の金属を元の所有者が回収して再び使う形で、市場には見えにくい量です。 開いた輪は、金属を他者が回収して市場に戻す形で、自動車の排ガス触媒が代表です事実[参考資料10・12]。

金属リサイクルについて資料が述べていること出典
白金回収された白金のほぼ90%が閉じた輪。使用済みの排ガス触媒からは、現在の技術で約95%の PGMを回収できる。二次供給は排ガス触媒が支配的IPA の白金の資料[12]
イリジウム開いた輪のリサイクルは世界でほぼない。再生量はほぼすべて閉じた輪。製品中の含有量が極めて少なく(スパークプラグで数 mg)、回収の経済性が成り立ちにくいIPA のイリジウムの資料[10]
電解槽の使用済み MEA(実験室)Alexiou らの2026年の論文:機械的な剥離で触媒層を膜から分け、塩素系の湿式冶金で処理。浸出率は Pt で99%超、Ir で80%超。再生 Pt を使うと MEA 製造の地球温暖化係数が最大70%下がる。電力需要と Nafion 膜の廃棄が環境上の課題[17](要旨)

電解槽の MEA の回収は、実験室の報告です。浸出率は工程全体の回収率ではありません。

白金族金属と触媒のsupportingを示す概念画像
図5 概念図(AI生成イメージ)。「使用済みの膜電極接合体から触媒層を分ける」作業を表現したものです。実在の設備・工程・回収率を示すものではありません。

回収が供給を補うまでの「時間のずれ」

Minke らは、PEM 水電解がギガワット/年の規模に達するための前提として、イリジウムの担持量の大幅な削減と、使用済みの触媒の技術的な回収率を90%以上にするリサイクルの仕組みの二つを挙げています[参考資料14]。 Clapp らは、モデル計算で、イリジウムの利用効率が2050年までに1桁向上し、2035年までに閉ループのリサイクルを導入すれば、2050年の設置容量を約2.7倍にでき、世界の PEM 電解の設備を1.3 TWまで、世界の一次供給の約20%で賄える、としています事実[参考資料15]。これらはモデルのシナリオで、実現を保証するものではありません。 一方、Kiemel らのドイツの事例研究では、使用済みの電解槽からの二次材料は、2020〜2050年の期間では一次資源への依存を大きくは減らさないと評価されています[参考資料16]。

本稿の計算:電解槽の「寿命」が、回収の時間を決める

DOE の寿命の目標と、連続運転で何年分かを換算します本稿の計算。

  • 40,000 時間 ÷ 8,760 時間/年 = 約 4.6年(2022年の状況値)、80,000 時間 ÷ 8,760 = 約 9.1年(2026年の目標)[参考資料1]
  • 稼働率が50%なら、同じ運転時間でも暦の上では約9年、約18年

前提と限界:運転時間は DOE の定義(初期電圧から10%の上昇)にもとづく寿命の目標で、設備の実際の使用期間ではありません。 それでも、いま設置した電解槽の触媒が回収に回るのは、数年から十数年後であり、それまでは新規の一次供給が必要になる、という構図は変わりません(解説)。

触媒金属のリサイクルの流れ(概念図) ※ 一般的な流れの整理です。各社の工程や実際の回収率を示すものではありません。 触媒の製造 金属を触媒に加工 運転 数年から十数年 使用済みの MEA 触媒層を分ける 回収・精製 湿式冶金など 閉じた輪(元の所有者が金属を保持して戻す) 開いた輪:他者が回収して市場へ戻す形。イリジウムでは世界でほぼ行われていない[10] 理由の一つは、製品あたりの含有量が数 mg など極めて少ないこと ※ 閉じた輪/開いた輪の定義は IPA の資料[10・12]、MEA の回収の実験は Alexiou ら[17]によります。
図6 概念図(ベクター作図)。電解槽や燃料電池の触媒は、金属の所有者が回収して戻す閉じた輪の設計になじみます。この整理は本記事によるもので、特定企業の事業を示すものではありません。

9. 非貴金属触媒の位置づけ

「貴金属を使わない」道は、方式によって状況がまったく違います。

方式状況出典・区分
アルカリ型・AEM 型・固体酸化物型触媒の主材料はニッケル、鉄、コバルト系など。IRENA は、アルカリ型の主要メーカーはすでに、希少な材料を使わない解決策を実施しており、AEM 型はそもそも希少な材料を必要としないと述べる。ただし JRC は、AEM 型の課題として膜の化学的・熱機械的安定性、アルカリ型の課題として低い電流密度と圧力を挙げる[3・21]事実
PEM 型のアノード(酸性で高電位)実験室の報告:Chong らは、La と Mn を共ドープしたコバルトスピネルが、酸性で 360時間の酸素発生で低い劣化を示し、PEM 電解セルで 2,000 mA/cm² を 2.47 V(Nafion 115)で得たと報告。2025年6月に訂正(Erratum)が出ており、内容は確認できていない[19]事実(要旨)。単セル・実験室
PEM 型のアノード(企業の発表)IEA は、米国のスタートアップ企業 Calicat が2025年2月に、非イリジウムの触媒で 2 A/cm² 超(セル電圧 2 V)を 15,000時間維持したと報告したと記載。企業の自己報告で、IEA が独自に検証したものではない[20]事実(企業の主張として)。未確定/将来の段階
燃料電池のカソード(Fe-N-C など)Helsel と Choudhury(2025)のミニレビューは、酸性中で、市販の Pt/C の性能と耐久性に並んだ PGM フリー触媒はまだないと述べる。DOE の目標表では、PGM フリー触媒の活性は 0.016 A/cm²(0.9 V、2015年の状況値)に対し、2020年の目標は 0.044 A/cm² 超[18・2]事実
素材技術者の読みどころ:「貴金属フリー」は、置き換えではなく「使い分け」から進んでいる

非貴金属の触媒が実用になっているのは、環境が穏やかな方式(アルカリ型など)です。ニッケル系は強アルカリ中で安定に使えるため、貴金属の役目を果たせます(解説)。 一方、酸性・高電位の PEM 型のアノードでは、活性だけでなく、数万時間の耐久性が要求されます。第4章のとおり、ここで溶けない金属がごく限られるためです。 実験室で「貴金属なしで動いた」という報告は増えていますが、その多くは数百時間規模です。DOE の寿命の目標が 40,000〜80,000 時間[参考資料1]であることと比べると、桁が違う点に注意が必要です(本記事による解説)。

したがって、当面の現実的な道は、(1) PGM を使う方式で使用量を減らし(g/kW)、(2) 回収して回し、(3) 貴金属を使わない方式を適した用途に使うという、三つを並行させることだと整理できます(解説)。

10. シリコーン・接着分野とのつながり:白金は別の場所でも使われている

白金は、水素の分野以外でも、触媒として使われています。IPA の白金の資料は、白金触媒の用途として硝酸、シリコーン、一部の水素関連の工程を挙げています事実[参考資料12]。 同じ資料の貿易コードの付録では、ヒドロシリル化に使う均一系の白金触媒(Karstedt 触媒、Speier 触媒)が例示されています[参考資料12]。

  • 付加硬化型シリコーンは、白金触媒を使うヒドロシリル化で硬化します。本シリーズ『シリコーン』編で扱う「付加型の被毒」は、この白金触媒が、硫黄・窒素・スズなどの成分で働きを失うという話です(解説)。
  • 電解槽や燃料電池のスタックでは、シール材や封止材としてシリコーンやゴムが使われます(本シリーズ『水電解スタックと材料』編)。同じ「白金」という元素が、片方では触媒として電極に、もう片方では硬化の触媒としてシール材に入っていることになります(解説)。
  • 電極の白金・イリジウムの視点では、シール材から出る成分が触媒を汚染する可能性が、材料の観点からの懸念になります。ただし、電解槽でその影響を測った報告は、本稿では確認できませんでした(推測)。
  • もう一つの接点は、触媒層のアイオノマーです。JRC は、PEM 型の電解質膜やアイオノマーにフッ素樹脂が使われ、将来の PFAS 規制が課題になりうると述べています[参考資料21]。触媒層の結合材が変われば、触媒の使用量や耐久性の議論も変わりうる、という関係があります(解説)。本シリーズ『フッ素樹脂とPFAS』編をご覧ください。

11. 課題と、本稿で確認できなかったこと

主な課題
  • 量と寿命のトレードオフ:活性を上げて使用量を減らすほど、溶解の影響を受けやすい[参考資料3・7]
  • 供給の構造:イリジウムは副産物で、一次供給は約7トン/年にとどまり、需要の信号が伝わりにくい[参考資料10]
  • 回収の仕組み:イリジウムの開いた輪のリサイクルは世界でほぼなく、閉じた輪の設計が必要[参考資料10・14]
  • 代替の耐久性:非貴金属の PEM アノード触媒は、実験室の報告にとどまる[参考資料19・20]

(1) 商用製品のイリジウム・白金の実際の使用量は確認できなかった

本稿が挙げた g/kW や mg/cm² は、DOE(目標・状況値)、IRENA(2020年の分析)、論文の実験セルの値です。各社の商用スタックの実際の担持量は、公開された一次情報で確認できなかったため、記載していません。

(2) 将来のイリジウム供給と、電解槽の導入ペースは予測していない

第6章の「年間10 GW」は仮のシナリオです。将来の導入量、イリジウムの増産、価格は、本稿では予測しません。IEA が示す設備容量の実績(2024年末で約2 GW)以外の導入見通しは扱っていません。

(3) リサイクルの経済性と、電解槽の回収量は確認できなかった

MEA からの回収は実験室の報告(浸出率)で、工業規模の回収率やコストは確認できませんでした。

(4) 他の PGM(パラジウム・ロジウム)と、触媒以外の用途

パラジウムやロジウム、水素の精製・貯蔵に使われる PGM の用途は、本稿では扱っていません。IPA の白金の資料は、白金が水素の中流工程(輸送・貯蔵)でも使われると述べるのみで、詳細は確認していません[参考資料12]。

(5) 日本国内の動向・制度は扱っていない

日本の企業や研究機関の取り組み、国内の備蓄・リサイクルの制度は、本稿では一次情報を確認できていないため記載していません。

この記事のまとめ
  • PEM 電解ではアノードがイリジウム、カソードが白金、燃料電池では両極が白金。アルカリ型などは非貴金属が主役です事実
  • DOE の PEM 電解の PGM 量は、2022年の状況値で 3.0 mg/cm²(0.8 g/kW)。燃料電池(2015年の状況値)の0.13 mg/cm²(0.16 g/kW)の約23倍(面積)/5倍(出力)です本稿の計算
  • イリジウムが選ばれるのは、活性より「溶けにくさ」のためです事実
  • イリジウムの世界の一次生産は約7トン/年。1.3 g/kW なら年間 10 GW で 13 トン必要になる計算で、供給の約1.9倍です本稿の計算
  • イリジウムは副産物で、開いた輪のリサイクルがほぼないため、使用量の削減と閉じた輪の設計が必要です事実
  • 非貴金属の PEM アノード触媒は、実験室または企業の報告の段階で、数万時間の耐久性の公的な確認は本稿では確認できませんでした未確定/将来

12. 用語集

PGM(白金族金属)
白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムの6元素。
OER/HER/ORR
酸素発生反応/水素発生反応/酸素還元反応。
担持量(mg/cm²)
電極の面積あたりに載せた触媒金属の質量。
g/kW
装置の出力(または電力入力)あたりの触媒金属の使用量。担持量 ÷ 電力密度。
担体
触媒の金属粒子を載せる土台。電子を運ぶ。カーボンや酸化チタンなど。
アイオノマー
触媒層の中でプロトンを運ぶ高分子。PEM 型ではパーフルオロスルホン酸系。
オストワルド熟成
小さい粒子が溶け、大きい粒子に再析出して粒が成長する現象。
安定性の数
発生した酸素と溶け出したイリジウムの量の比。触媒の溶けにくさの指標(Geiger ら)。
副産物金属
主たる金属の採掘・精錬に付随して得られる金属。イリジウムなど。
閉じた輪/開いた輪
金属の所有者が回収して戻す形/他者が回収して市場に戻す形のリサイクル。
湿式冶金
酸などの水溶液で金属を溶かし出して分離・精製する方法。
PGM フリー触媒
貴金属を使わない触媒。Fe-N-C など。
ヒドロシリル化
Si–H 結合が C=C 二重結合に付加する反応。付加硬化型シリコーンで白金触媒を使う。
重要原材料(CRM)
EU が供給リスクと経済的重要性で選定する原材料のリスト。

13. 参考資料(一次情報)

  1. 米国エネルギー省(DOE)"Technical Targets for Proton Exchange Membrane Electrolysis"(2026年10月5日に閲覧、掲載日の記載なし) — energy.gov
  2. 米国エネルギー省(DOE)"DOE Technical Targets for Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell Components"(表は2015年の状況値と2020年の目標。2026年10月5日に閲覧) — energy.gov
  3. IRENA"Green Hydrogen Cost Reduction: Scaling up Electrolysers to Meet the 1.5°C Climate Goal"(2020年12月、PDF 報告書) — irena.org
  4. Bernt, Siebel, Gasteiger"Analysis of Voltage Losses in PEM Water Electrolyzers with Low Platinum Group Metal Loadings", Journal of The Electrochemical Society 165, F305–F314 (2018) — doi.org/10.1149/2.0641805jes
  5. Babic, Suermann, Büchi, Gubler, Schmidt"Critical Review—Identifying Critical Gaps for Polymer Electrolyte Water Electrolysis Development", Journal of The Electrochemical Society 164(4), F387–F399 (2017) — doi.org/10.1149/2.1441704jes
  6. Cherevko ら"Oxygen and hydrogen evolution reactions on Ru, RuO2, Ir, and IrO2 thin film electrodes in acidic and alkaline electrolytes: A comparative study on activity and stability", Catalysis Today 262, 170–180 (2016)(要旨を確認) — doi.org/10.1016/j.cattod.2015.08.014
  7. Geiger ら"The stability number as a metric for electrocatalyst stability benchmarking", Nature Catalysis 1, 508–515 (2018) — doi.org/10.1038/s41929-018-0085-6
  8. Meier ら"Design criteria for stable Pt/C fuel cell catalysts", Beilstein Journal of Nanotechnology 5, 44–67 (2014) — doi.org/10.3762/bjnano.5.5
  9. Kongkanand, Mathias"The Priority and Challenge of High-Power Performance of Low-Platinum Proton-Exchange Membrane Fuel Cells", The Journal of Physical Chemistry Letters 7, 1127–1137 (2016)(要旨を確認) — doi.org/10.1021/acs.jpclett.6b00216
  10. 国際白金族金属協会(IPA)"PGM Fact Sheet: Iridium"(SFA(Oxford)執筆、データは Johnson Matthey、2026年5月、PDF) — ipa-news.com
  11. 国際白金族金属協会(IPA)"PGM Fact Sheet: Ruthenium"(同上、2026年5月、PDF) — ipa-news.com
  12. 国際白金族金属協会(IPA)"PGM Fact Sheet: Platinum"(同上、2026年5月、PDF) — ipa-news.com
  13. 米国地質調査所(USGS)"Mineral Commodity Summaries 2026"(2026年2月、白金族金属の項) — pubs.usgs.gov
  14. Minke, Suermann, Bensmann ら"Is iridium demand a potential bottleneck in the realization of large-scale PEM water electrolysis?", International Journal of Hydrogen Energy 46, 23581–23590 (2021)(要旨を確認) — doi.org/10.1016/j.ijhydene.2021.04.174
  15. Clapp, Zalitis, Ryan"Perspectives on current and future iridium demand and iridium oxide catalysts for PEM water electrolysis", Catalysis Today 420, 114140 (2023)(要旨を確認) — doi.org/10.1016/j.cattod.2023.114140
  16. Kiemel, Smolinka, Lehner ら"Critical materials for water electrolysers at the example of the energy transition in Germany", International Journal of Energy Research 45, 9914–9935 (2021)(要旨を確認) — doi.org/10.1002/er.6487
  17. Alexiou, Zagoraiou, Moschovi ら"Life Cycle Assessment of Closed-Loop Hydrometallurgical Recovery of Platinum Group Metals from PEM Fuel Cells and Electrolyzers", Purification 2(3), 12 (2026)(要旨を確認) — doi.org/10.3390/purification2030012
  18. Helsel, Choudhury"Non-Platinum Group Metal Oxygen Reduction Catalysts for a Hydrogen Fuel Cell Cathode: A Mini-Review", Catalysts 15(6), 588 (2025)(要旨を確認) — doi.org/10.3390/catal15060588
  19. Chong ら"La- and Mn-doped cobalt spinel oxygen evolution catalyst for proton exchange membrane electrolysis", Science 380, 609–616 (2023)(要旨を確認。2025年に Erratum あり) — doi.org/10.1126/science.ade1499
  20. 国際エネルギー機関(IEA)"Global Hydrogen Review 2025"(2025年、改訂版は10月) — iea.org
  21. 欧州委員会 共同研究センター(JRC)Malkow, T., Pilenga, A. "EU harmonised accelerated stress testing protocols for low-temperature water electrolyser", EUR 31748 EN, 2024, DOI 10.2760/988717 — clean-hydrogen.europa.eu
  22. 欧州委員会"Critical raw materials"(2023年の重要原材料リストの解説ページ) — single-market-economy.ec.europa.eu

14. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
DOE の PEM 電解の目標表:PGM 量(両極の合計)が 2022年状況値 3.0 mg/cm²(0.8 g/kW)、2026年目標 0.5 mg/cm²(0.1 g/kW)、究極の目標 0.125 mg/cm²(0.03 g/kW)。セル性能 2.0 A/cm² @ 1.9 V、3.0 A/cm² @ 1.8 V、3.0 A/cm² @ 1.6 V。劣化率 4.8 / 2.3 / 2.0 mV/kh。寿命 40,000 / 80,000 / 80,000 時間。スタックの設備費 450 ドル/kW(2022年状況値)。イリジウムが PGM 量の大部分を占める旨の注記。状況値は H2NEW の分析にもとづく旨の注記DOE 技術目標表(PEM 電解)[参考資料 1]https://www.energy.gov/eere/fuelcells/technical-targets-proton-exchange-membrane-electrolysis事実
DOE の PEFC の電極触媒の表(2015年状況値/2020年目標):PGM の合計量 0.16 g/kW(150 kPa abs、MEA の総出力)・0.13 mg/cm²、目標 0.125。質量活性 0.5 A/mg 超(目標 0.44)。担体の安定性(質量活性損失 41%、目標 40% 未満)。PGM フリー触媒の活性 0.016 A/cm² @ 0.9 V(2015年)、目標 0.044 A/cm² 超。MEA の表の 810 mW/cm²(150 kPa)。状況値は 3M などの結果にもとづく旨の注記DOE 技術目標表(PEFC 部材)[参考資料 2]https://www.energy.gov/eere/fuelcells/doe-technical-targets-polymer-electrolyte-membrane-fuel-cell-components事実
IRENA の Table 1(PEM 型:アノード酸化イリジウム、カソードはカーボン担持白金ナノ粒子。アルカリ型:Ni 被覆ステンレス。AEM 型:高比表面積 Ni または NiFeCo 合金。固体酸化物型:ペロブスカイトと Ni/YSZ)。Table 7(Ir 5 mg/cm²・1.3 g/kW、Pt 2 mg/cm²・0.5 g/kW、2 A/cm²・1,200 cm²。将来 Ir 0.2 mg/cm²・0.4 g/kW、Pt 0.05 mg/cm²・0.1 g/kW、5 A/cm²・5,000 cm²)。Ir・Pt の現在の生産は年間 3〜7.5 GW 分の製造を支える程度で、2030年に年間約 100 GW が必要との想定。ルテニウムは活性が高いが長期安定性に問題。重要原材料を使わない触媒は溶解しやすい傾向。アルカリ型の主要メーカーは希少材料を使わない解決策を実施、AEM 型は希少材料を必要としない旨IRENA(2020)[参考資料 3]https://www.irena.org/Publications/2020/Dec/Green-hydrogen-cost-reduction事実
Nafion 212 膜・IrO2/TiO2 アノード・Pt/C カソードの単セル。カソードの Pt は 0.30 から 0.025 mg/cm² まで性能に影響なく低減可能。アノードの Ir は 0.20〜5.41 mg/cm² で調べ、≥1 A/cm² で 1〜2 mg/cm² が最適。高担持では水輸送が不足、0.5 mg/cm² 未満では触媒層が不均一Bernt ら(2018)[参考資料 4]https://doi.org/10.1149/2.0641805jes事実
RuO2 は過電圧が低いが溶解・腐食が許容できず IrO2 が選ばれること。アノード電位でカーボンが酸化されるため担体にならないこと。チタンや酸化スズの担体の候補、Ir 0.1 mg/cm²(W ドープ酸化チタン担持)、3M の NSTF の Ir 0.25 mg/cm² の紹介Babic ら(2017)[参考資料 5]https://doi.org/10.1149/2.1441704jes事実
Ru・RuO2・Ir・IrO2 薄膜電極の比較(活性 Ru > Ir ≒ RuO2 > IrO2、溶解 IrO2 < RuO2 < Ir < Ru、金属は酸化物より溶解が2〜3桁大きい)Cherevko ら(2016)の要旨[参考資料 6]https://doi.org/10.1016/j.cattod.2015.08.014事実
安定性の数(発生酸素と溶解イリジウムの比)。ペロブスカイト型の混合酸化物から非貴金属が溶け出すと高活性な非晶質酸化イリジウムができ、その不安定さが溶解を招くこと。耐久性の高い結晶性酸化イリジウムの利用効率向上が課題Geiger ら(2018)の要旨[参考資料 7]https://doi.org/10.1038/s41929-018-0085-6事実
標準的な Pt/C の粒径 3〜4 nm(Pt/Vulcan)。白金の溶解、ギブス・トムソン効果、オストワルド熟成、粒子の合体、炭素担体の腐食。起動・停止でカソード電位が局所的に 1.5 V に達しうることMeier ら(2014)[参考資料 8]https://doi.org/10.3762/bjnano.5.5事実
カソードの Pt 担持量が 0.4〜0.8 から約 0.1 mgPt/cm² に下がったこと、低担持量で高電流密度の性能損失があることKongkanand と Mathias(2016)の要旨[参考資料 9]https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.6b00216事実
イリジウムの一次生産が約7トン(2019〜2025年でほぼ一定)、南アフリカが約80%、電気化学用途が約3トン、需要の約1%・生産の約2%、副産物であること、UG2 鉱床、開いた輪のリサイクルが世界でほぼないこと、閉じた輪の定義、鉱山の立ち上げ期間(8〜18か月、3〜4年、6〜8年)IPA のイリジウムの資料[参考資料 10]https://ipa-news.com/assets/pdfs/factsheets/2026-05-ipa-iridium-factsheet.pdf事実
ルテニウムの一次生産が約30〜31トン(2025年)。Ru が Ir と組み合わせて PEM 水電解に使われる例が増え、Ru が高い活性、Ir が高い耐久性を与えるとの説明IPA のルテニウムの資料[参考資料 11]https://ipa-news.com/assets/pdfs/factsheets/2026-05-ipa-ruthenium-factsheet.pdf事実
白金の2025年の世界の一次生産が178トン、南アフリカ121トン(68%)。回収された白金のほぼ90%が閉じた輪、排ガス触媒から約95%を回収可能。白金触媒の用途に硝酸・シリコーン・一部の水素関連の工程。ヒドロシリル化の均一系の白金触媒(Karstedt、Speier)の例示(貿易コードの付録)IPA の白金の資料[参考資料 12]https://ipa-news.com/assets/pdfs/factsheets/2026-05-ipa-platinum-factsheet.pdf事実
USGS:白金の世界の鉱山生産 2025年推定 170,000 kg。2025年推定の年平均価格(Ir 4,400、Pt 1,200、Ru 690 ドル/トロイオンス)。イリジウム価格が前年比9%低下し、増産と水素分野への投資家の熱の低下が影響した可能性との記述USGS Mineral Commodity Summaries 2026[参考資料 13]https://pubs.usgs.gov/periodicals/mcs2026/mcs2026.pdf事実
PEM 水電解のイリジウム需要の前提:担持量の大幅削減と、技術的な回収率90%以上のリサイクルインフラMinke ら(2021)の要旨[参考資料 14]https://doi.org/10.1016/j.ijhydene.2021.04.174事実
イリジウムの利用効率が2050年までに1桁の向上が必要、2035年までの閉ループのリサイクルで2050年の設置容量が約2.7倍、1.3 TW を世界の一次供給の約20%で賄える(モデル)Clapp ら(2023)の要旨[参考資料 15]https://doi.org/10.1016/j.cattod.2023.114140事実
ドイツの事例研究で、白金・イリジウム・スカンジウム・イットリウムなどの供給リスク評価、使用済み電解槽からの二次材料は2020〜2050年に一次資源への依存を大きくは減らさない、アルカリ型の材料は重大な供給リスクにさらされないKiemel ら(2021)の要旨[参考資料 16]https://doi.org/10.1002/er.6487事実
使用済み MEA の閉ループ湿式冶金の LCA(浸出率 Pt 99%超・Ir 80%超、再生 Pt で MEA 製造の地球温暖化係数が最大70%低下、電力需要と Nafion 廃棄が課題)Alexiou ら(2026)の要旨[参考資料 17]https://doi.org/10.3390/purification2030012事実
酸性中で市販 Pt/C に並ぶ PGM フリー触媒はまだないHelsel と Choudhury(2025)の要旨[参考資料 18]https://doi.org/10.3390/catal15060588事実
La・Mn 共ドープのコバルトスピネル:10 mA/cm² で過電圧 353 mV、酸性で360時間の酸素発生で低い劣化、PEM 電解セルで 2,000 mA/cm² を 2.47 V(Nafion 115)、4,000 mA/cm² を 3.00 V(Nafion 212)。2025年の Erratum の存在(内容は未確認)Chong ら(2023)の要旨[参考資料 19]https://doi.org/10.1126/science.ade1499事実
世界の水電解の設備容量が2024年末で約2 GW、2024年の追加が約600 MW(2023年は700 MW)、アルカリ型が追加と設備容量の60%。Calicat の非イリジウム触媒が 2 A/cm² 超(2 V)で15,000時間という報告(IEA が記載、企業の報告)IEA Global Hydrogen Review 2025[参考資料 20]https://www.iea.org/reports/global-hydrogen-review-2025事実
PEM 型のアノード触媒 IrOx・IrOx-RuOy、カソード Pt。AEM 型のカソードに Ni と Pt。劣化機構の例(イリジウムの溶解と再析出、カーボン担体腐食と白金凝集)。電解質膜・アイオノマーのフッ素樹脂と PFAS 規制の課題。アルカリ型の低電流密度・圧力、AEM 型の膜の安定性の課題JRC の AST 提案報告(2024)[参考資料 21]https://www.clean-hydrogen.europa.eu/system/files/2024-02/ast.pdf事実
白金族金属が2023年の重要原材料リストにあること。南アフリカが EU の白金需要の71%を、イリジウム・ロジウム・ルテニウムではさらに高い割合を供給するとの記述欧州委員会の重要原材料のページ[参考資料 22]https://single-market-economy.ec.europa.eu/sectors/raw-materials/areas-specific-interest/critical-raw-materials_en事実
g/kW の換算(3.0 mg/cm² ÷ 3.8 W/cm² = 約0.79 g/kW、0.5 ÷ 5.4 = 約0.093、0.13 ÷ 0.81 = 約0.16)。電解と燃料電池の比(約23倍・5倍)。年間 10 GW の必要量(13、4、8、1、0.3 トン)と7トンとの比。240 MW × 1.3 g/kW = 約312 kg。金属の価格換算(Ir 約141 ドル/g、Pt 約38.6 ドル/g、184・19・113 ドル/kW)。40,000 時間 ÷ 8,760 = 約4.6年、80,000 ÷ 8,760 = 約9.1年本稿の計算。電解の kW は電力入力、燃料電池の kW は出力。DOE の電解の値は PGM の合計(Pt を含む)で、Ir の上限として扱った。年間 10 GW は仮のシナリオ。約7トンは全用途の一次供給。価格は推定の年平均で、金属の素材価格のみ。基準の年・分析の違う値を並べており、優劣を示さない本稿の計算
非貴金属の PEM アノード触媒の実用化、Calicat の主張の独立した検証計画・報告の段階であり、公的な確認は本稿では確認できなかった。実験室または企業の自己報告であり、見通しである未確定/将来
各社の商用スタックの実際の担持量、将来のイリジウム供給と導入ペース、リサイクルの工業規模の回収率とコスト、パラジウム・ロジウムの用途、日本国内の動向、シール材の溶出が触媒に与える影響本稿の調査範囲では公開された一次情報に確認できなかったため記載していない。溶出の影響は推測であり、測定報告は確認できなかった解説
イリジウムの選択は「活性より溶けにくさ」で絞られるという整理。使用量削減と耐久性が逆向きに働くという読み取り。副産物金属の需給の構造の整理。回収の時間のずれの整理。「貴金属フリー」は使い分けから進んでいるという整理。付加硬化型シリコーンの白金触媒とシール材・触媒汚染の関連づけ公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない解説
図1・図2・図3・図4・図6が実際の断面図・設計図ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像と図5がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月6日/出典は一次情報(政府機関・国際機関の公式文書、査読論文、業界団体の資料)に限定しています。IPA の資料は業界団体の文書で、価格は USGS の推定の年平均です。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 商用スタックの実際の担持量、将来の供給・導入ペースの予測、リサイクルの工業規模の実績、日本国内の動向については、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 DOE の数値は目標または状況値であり、実績の保証ではありません。投資・調達や、水素・酸素の取扱いに関する個別の助言ではありません。 図はすべて説明用の概念図です。図1・図2・図3・図4・図6はベクター作図、ヒーロー画像と図5はAI生成イメージであり、いずれも実際の触媒層の顕微鏡像・製品の実物を示すものではありません。