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水素パイプライン 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

水素パイプライン
― 「既設のガス管が使えるか」は、鋼の水素脆化と継手・シールで決まる

水素を管で運ぶ方法は、天然ガス管に混ぜる道と、水素専用の管を使う道に大別できます。 どちらでも、材料の側で効いてくるのは鋼が水素にさらされたときの「粘り」と「疲労」、そして溶接部・継手・シールです。 ドイツは水素コアネットワーク9,040 kmを2024年10月に承認し、2025年12月にはGASCADEが約400 kmの既設ガス管を水素用に切り替えたと発表しました。

構成:ドイツ連邦ネットワーク庁、GASCADE、Gasunie、米国エネルギー省、EU官報、経済産業省、査読・学会論文などの公表資料を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

水素パイプラインのheroを示す概念画像
概念図(AI生成イメージ)。陸上の大口径ガスパイプラインを敷設・検査する現場の雰囲気を表したものです。実在の事業・設備・管径を示すものではありません。
この記事の構成
  1. 水素パイプラインとは何か(3行でつかむ)
  2. 三つの道 ― 混合、転用、新設
  3. 本稿の計算:体積で混ぜた量は、熱量ではいくつになるか
  4. 水素脆化とは、鋼の中で何が起きることか
  5. 素材技術者の視点①:「強さ」は落ちず、「粘りと疲労」が落ちる
  6. 水素ガス中で試験する ― 評価のしかた
  7. 本稿の計算:混合比ではなく「分圧」で考える
  8. 素材技術者の視点②:管本体よりも、継手・シール・溶接部が先に問題になる?
  9. 溶接部・継手・シールと樹脂管
  10. 規格 ― ASME B31.12
  11. 実在の計画 ― ドイツ、オランダ、米国、日本
  12. 制度 ― 欧州、米国、日本
  13. 課題と、本稿で確認できなかったこと
  14. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。

水素は可燃性ガスで、取扱いには高圧ガス保安法などの法令・規格が適用されます。 本記事は材料・原理・評価・制度の解説であり、設備の設計・運用・取扱いに関する個別の助言ではありません。

1. 水素パイプラインとは何か(3行でつかむ)

水素パイプラインは、気体の水素を管で送る設備です。天然ガスのパイプラインと似ていますが、 鋼が水素にさらされると、粘り・割れにくさ・疲労寿命が変わるため、材料と設計の考え方が少し異なります。

  • すでに動いている:米国エネルギー省(DOE)は、米国で約1,600マイルの水素パイプラインが稼働しているとしています。所有者は水素の製造事業者で、製油所や化学工場が集中するメキシコ湾岸などにあります事実
  • 大きな課題:DOEは研究課題として、水素が鋼と溶接部を脆くする可能性、水素の透過と漏れの制御、より低コストで信頼性の高い圧縮機を挙げています事実
  • 拡張の障壁:DOEは、新設パイプラインの初期の資本コストが高いことを、配送網拡大の大きな障壁としています事実
この記事でいちばん大事な一行

水素パイプラインの材料の問題は、「鋼が弱くなる」ではなく「鋼の壊れ方が変わる」ことです。 引張強さはほぼ変わらないのに、延性・破壊靭性・疲労き裂の進み方が変わります(第5章)。 だから、強さで選んだ既設の天然ガス管をそのまま使えるかどうかは、破壊力学の評価で決まります。

2. 三つの道 ― 混合、転用、新設

「水素パイプライン」という言葉は、実際には条件の異なる三つの道を含みます。材料から見ると、問われる内容が変わります(本記事による整理)。

水素を管で運ぶ三つの道(本記事による整理) ※ 材料から見た論点の整理です。各道の可否や上限を示すものではありません。 ① 混合 ② 転用 ③ 新設の専用管 既設の天然ガス管に 水素を一部混ぜる 既設の天然ガス管を 水素専用に切り替える 水素用に設計して 新しく敷設する 材料の論点 分圧が低い条件での 疲労・破壊の挙動 PE管・シール・計量器 など末端の部材 材料の論点 古い鋼・既存の溶接部 の水素中の破壊抵抗 圧力変動による疲労 既存の欠陥の評価 材料の論点 鋼種・強度の選定 溶接の品質管理 初期の建設コスト が障壁 NREL 2013の整理:低濃度 例:ドイツのコアネットワーク 例:オランダ・ロッテルダム ※ ① NREL(2013)は、体積で5〜15%未満なら軽微な課題にとどまり、15〜50%、50%超ではそれぞれ別の課題が出るとしています。 ※ ② ドイツのコアネットワークは、承認された9,040 kmのうち約56%が既設ガス管の転用です(連邦ネットワーク庁の比較表)。 ※ ③ DOEは、新設管の高い初期資本コストが拡大の障壁だとしています。オランダは既設管の転用を主とし、一部を新設しています。
図1 概念図(ベクター作図)。三つの道の区分と「材料の論点」は本記事による整理です。数値は米国NREL[参考資料7]、ドイツ連邦ネットワーク庁[参考資料2]、DOE[参考資料6]、Gasunie[参考資料4]によります。各方式で許される混合率や圧力を示すものではありません。

① 混合:米国NRELの2013年の総説は、体積で5〜15%未満の低い混合率なら、エンドユーザー機器・公衆安全・既設管の耐久性に大きな問題は生じないように見えると整理しています。 ただし、適切な混合率は管網ごと・ガス組成ごとに大きく異なり、個別に評価する必要があるとしています。 15〜50%では家庭用機器の改造や圧縮能力の増強が、50%超では管材料・安全・機器の改造で一層難しい課題が出るとしています事実。

② 転用:ドイツの水素コアネットワークは、承認された9,040 kmのうち約56%が既設の天然ガス管の転用です(連邦ネットワーク庁の比較表。同庁のプレスリリースは「約60%」と表現)事実。 オランダのGasunieも、水素網を主に既設管で作り、使えない箇所を新設するとしています事実。

③ 新設:水素用に設計・建設する管です。設計の自由度は高い一方で、初期コストがかかります(DOE)事実。

3. 本稿の計算:体積で混ぜた量は、熱量ではいくつになるか

混合の話では「水素を体積で20%混ぜる」のように、体積の割合で語られます。ところが、水素は同じ体積あたりの熱量がメタンよりずっと小さい気体です。 そこで、混合率(体積)を熱量の割合に直してみます本稿の計算。

本稿の計算:メタンに水素を混ぜたときの熱量の割合
  • 前提①(燃焼熱):水素(燃焼で液体の水が生じる場合)285.83 kJ/mol、メタン(気体)890.7 kJ/mol。いずれもNISTの化学データベース(Chemistry WebBook)の値で、高位発熱量の基準です
  • 前提②(理想気体):同じ温度・圧力では、気体1 molの体積は種類によらず同じとみなす。すると体積あたりの熱量は、モルあたりの燃焼熱に比例する
  • 前提③(組成):天然ガスをメタン100%とみなす(実際の天然ガスにはエタンなども含まれるので、水素の熱量割合は本計算より小さくなる)
  • 水素単体とメタンの比:285.83 ÷ 890.7 = 約0.32。同じ熱量を送るのに、体積では約3.1倍が必要
  • 体積20%混合の熱量割合:(0.2×285.83) ÷ (0.2×285.83 + 0.8×890.7) = 約7.4%

限界:高圧では実在気体として理想気体からずれます。ここでは桁をつかむための計算で、設計値ではありません。

水素を体積で混ぜたとき、熱量では何%か(本稿の計算) 前提:メタンとの混合、理想気体、高位発熱量基準(水素285.83、メタン890.7 kJ/mol) 体積の割合 熱量の割合 0% 10% 20% 30% 40% 50% 5% 1.7% 体積5%混合 10% 3.4% 体積10%混合 20% 7.4% 体積20%混合 30% 12.1% 体積30%混合 50% 24.3% 体積50%混合 ※ 熱量の割合は、モルあたりの燃焼熱(NIST)と理想気体を前提に本記事が算出した値で、公表値ではありません。 ※ 実際の天然ガスはメタン以外の成分も含むため、水素の熱量の割合はここより小さくなります。高圧の実在気体では、ずれが生じます。
図2 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。水素285.83 kJ/mol[参考資料20]、メタン890.7 kJ/mol[参考資料19]から本記事が算出しました。体積20%の混合でも、熱量では約7.4%にとどまります。設計値ではありません。

この計算が示すのは、「体積の割合」と「エネルギーの割合」は別物だということです。同じ熱量を同じ圧力の同じ管で送ろうとすると、水素単体では体積で約3.1倍が要ります。 SRNLの総説も、水素は天然ガスよりエネルギー密度が低く、同じエネルギーを運ぶには管を太くするか圧力を上げる必要がある、と述べています事実。 圧力を上げる方向の設計は、次の章以降の「水素脆化」が効く側に近づくことを意味します(本記事による解説)。

4. 水素脆化とは、鋼の中で何が起きることか

水素脆化は、水素が金属に入って、粘りや割れにくさを損なう現象の総称です。NRELの総説は、水素による損傷が、水素と残留応力または外部からの引張応力の組合せで生じ、 ふつうその金属が水素のない環境で受ける応力より低い応力で起きうると説明しています事実。 程度は、水素の圧力・純度・温度、応力の大きさ、ひずみ速度、材料の組織と強度によって変わります事実。

水素ガスに触れた鋼で起きること(模式図) ※ 左は管壁の断面の模式、右は破壊のしかたの違いです。縮尺・寸法は実際とは関係ありません。 水素ガス(管の内側) H₂H₂H₂H₂ ① 表面で原子状の水素になって鋼に入る ② 結晶の中を拡散する ③ 応力が集中するき裂の先端に水素が集まる 鋼(管壁) 空気中 延性破壊が主 微小な空隙の成長と合体 水素ガス中 より脆い擬へき開型の破壊 き裂が進みやすくなる ※ 水素の入り方と、破壊のしかたの変化はSRNLの総説[参考資料8]の記述によります。 ※ 脆化の機構として、結合力を弱める説(HEDE)と局所的な塑性変形を促す説(HELP)が提案されています[参考資料8]。 ※ 水素の濃度は水素ガスのフガシティ(有効圧力)の平方根に比例するというジーベルツ則が、整理に使われます[参考資料8]。
図3 概念図(ベクター作図)。水素が鋼に入りき裂の先端に集まる様子と、空気中・水素中での破壊のしかたの違いを模式的に示しました。内容はSRNLの総説[参考資料8]とNRELの総説[参考資料7]によります。実際の断面・き裂の形・水素の位置を示すものではありません。

SRNLの総説は、水素が鋼に入る過程を、まず金属表面に吸着し、次に原子状の水素として金属の中に吸収される、と整理しています事実。 脆化の機構としては、原子状の水素が金属の結合力を弱める説(HEDE)と、転位の動きを助けて局所的な塑性変形を促す説(HELP)が挙げられています事実。 破壊の様式は、空気中の延性的な空隙の成長・合体から、水素中のより脆い擬へき開型に変わるとされています事実。

水素の濃度とガスの圧力の関係は、ジーベルツ則(定常状態の水素濃度が水素のフガシティの平方根に比例する)で整理されます事実。 フガシティは「有効圧力」にあたる熱力学量です。この関係が、あとの「分圧」の章(第7章)で効いてきます。

5. 素材技術者の視点①:「強さ」は落ちず、「粘りと疲労」が落ちる

素材技術者の読みどころ:引張試験の数字だけでは、水素中の鋼は評価できません

鋼管の材料選びは、降伏強さ(SMYS)のような強さの指標で語られがちです。ところが水素の影響は、ここにほとんど現れません。 SRNLの文献レビューによれば、気体水素にさらしても降伏強さと引張強さへの影響は小さく、変わるのは延性(伸び・絞り)です事実。

つまり、強さのカタログ値は同じでも、割れの進みやすさは別の話です。評価すべきは、破壊靭性と疲労き裂の進展速度のように、 き裂がある前提の破壊力学の量です(本記事による解説)。 既設の天然ガス管を水素に転用できるかどうかが、強度規格だけでは決まらない理由がここにあります。

下の表に、公表されている評価結果を整理します。いずれも室温付近の試験室の結果で、実際の管路での寿命を直接示すものではありません。

性質水素ガス中での傾向条件・注意出典
降伏強さ・引張強さ気体水素にさらしても、影響は小さい文献のレビュー結果。電解チャージ(陰極での水素導入)では、前処理の時間が結果に大きく効く[参考資料8]
延性(伸び・絞り)大きく低下する。フガシティが0から約10 MPaの間で低下が急で、その先は頭打ちになる鋼種によって程度が異なる。材料の強度との明確な相関は見られない、とされる[参考資料8]
破壊靭性(き裂が進み始める抵抗)低下する。鋼種の降伏強さが高いほど、水素の分圧が高いほど低下が大きい1970年代以前の鋼(旧世代)は低下が穏やか。現代の鋼は低下が大きいが、水素中の抵抗は旧世代の鋼より高い[参考資料8・9]
疲労き裂の進展速度空気中より大きく増加する。API 5L X42〜X120の範囲で、鋼種・組織による差は小さい降伏強さと組織が大きく異なる鋼でも、進展速度は2〜3倍以内に収まった。応力比と水素分圧に系統的に依存する[参考資料9・10]
溶接部・熱影響部疲労き裂の進展は溶接で変わらないように見える。破壊挙動は、同じ強さの母材と同程度1 mm超の構造欠陥と残留応力がない試験片での結論。大きな欠陥は構造健全性を損なう。データは限られる[参考資料9]

すべて事実(SRNLの総説[参考資料8]、HyBlend最終報告書[参考資料9]、Ronevichら[参考資料10])。

Sandia国立研究所のRonevichらは、降伏強さも組織(フェライト/パーライト、アシキュラーフェライト、ベイナイト、マルテンサイト)も幅広い、パイプライン鋼と低合金の圧力容器鋼を高圧水素ガス中で比べました。 結果は、き裂の進展速度が2〜3倍の範囲に収まったというものです。 パーライトの割合が高い旧世代のパイプライン鋼は、水素中のき裂進展速度がやや低い傾向でした。 進展速度は応力比と水素分圧に系統的に依存し、その依存性は、ASME B31.12のコードケース220(パイプライン鋼)とASME BPVCのコードケース2938(圧力容器鋼)に発表された疲労設計曲線で表されるとしています事実。

「旧世代の鋼のほうが水素に強い」のか

HyBlend最終報告書の記載を素直に読むと、旧世代(1970年代以前)の鋼は、水素中で破壊抵抗の低下が穏やかです。 一方、現代の鋼は低下が大きいものの、水素中の破壊抵抗の絶対値は旧世代の鋼より高いとされています事実。

「低下の大きさ」と「水素中での絶対値」は別の量です。どちらも条件つきの試験室データなので、一般則として「旧世代の鋼が有利」「現代の鋼が有利」と言い切ることはできません(本記事による解説)。

6. 水素ガス中で試験する ― 評価のしかた

水素脆化の評価は、「どの水素環境で試験したか」で結果が変わります。SRNLの総説は、試験片への水素の入れ方を二つに分けています事実。

  • 電解チャージ:酸性溶液の中で試験片に電流を流して水素を入れる方法。安価で装置も簡単、高圧水素を扱わないので安全面でも楽です。多くの研究者が引張特性の評価に使っています。ただし、チャージ時間や、水素が試験片から抜けていく効果が結果に影響します。試験片を空気中に置くと水素が拡散して抜け、延性が戻ることも示されています
  • 気体チャージ:圧力容器の中で試験片を水素ガス(純水素、または窒素との混合)にさらす方法。実際の使用環境に近い一方、高圧の水素ガスを扱う設備が要ります。試験前にチャージして空気中で試験する方法と、試験しながらチャージする方法があります
水素パイプラインのsupportingを示す概念画像
図4 概念図(AI生成イメージ)。高圧水素ガス中で鋼の疲労・破壊試験を行う試験室の雰囲気を表したものです。特定の研究機関・装置を示すものではありません。

HyBlend(NREL、Sandia、PNNL、Argonneなどの共同研究)では、一つの試験片で、応力比などを区間ごとに変えながら疲労き裂の進展を測り、同じ試験片を水素環境から出さずに、そのまま破壊試験に移る方法を用いました。 疲労試験が、破壊試験の予き裂導入を兼ねる、という工夫です事実。 また、呼び径2インチ(NPS 2)・スケジュール40の小口径管に、300 barを超える圧力の水素を繰り返し加える試験系を開発して実証しました(大口径管と同等の応力を、高い圧力で得るため)。 管の外面に入れた人工欠陥でも、水素による破壊が起きました。外面の欠陥は水素に直接さらされていませんが、これは、自然酸化皮膜やスケールが水素の侵入と水素による破壊を防がないことを示す、と報告書は書いています事実。

7. 本稿の計算:混合比ではなく「分圧」で考える

混合の話では「水素20%」のような体積の割合が使われますが、材料にとって効くのは、水素の分圧(有効圧力)です。 SRNLの総説は例として、水素30%の混合ガスを全圧10 MPaで加えた場合、試験片に加わる水素の分圧は3 MPaになると説明しています事実。

本稿の計算:同じ「水素の分圧」になる条件
  • 前提:理想気体として扱い、分圧 = 水素の体積割合 × 全圧(高圧ではフガシティがずれるため近似)
  • 水素30% × 全圧10 MPa = 3 MPa(SRNLの例)
  • 水素100% × 全圧3 MPa = 3 MPa
  • 水素20% × 全圧6 MPa = 1.2 MPa(本稿が置いた仮の数値)

つまり、同じ「水素3 MPa」の環境が、混合ガスの高圧側でも、純水素の低圧側でもできます。体積%だけで「安全側」「危険側」を語れない理由です本稿の計算。

水素の分圧 = 体積割合 × 全圧(本稿の計算) 前提:理想気体として扱う近似。高圧ではフガシティを使うのが正確です。 混合ガス 水素30% ・ 全圧10 MPa 3 MPa 水素の分圧(SRNLの例) 純水素 水素100% ・ 全圧3 MPa 3 MPa 水素の分圧(本稿の計算) 混合ガス(仮の例) 水素20% ・ 全圧6 MPa 1.2 MPa 水素の分圧(本稿の計算) ※ 左端の例(水素30%、全圧10 MPa、分圧3 MPa)はSRNLの総説[参考資料8]の説明によります。 ※ 中央・右の例は本記事が置いた仮の数値で、実在の管路や運用条件ではありません。 ※ 疲労き裂進展の分圧依存は、HyBlend[参考資料9]によれば、低圧側では水素分圧の平方根に比例する領域があります。
図5 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。分圧の求め方は、SRNLの総説[参考資料8]の説明に基づき、本記事が例を置いたものです。中央・右の条件は仮の数値で、実在の管路条件ではありません。

HyBlend最終報告書は、水素の分圧と疲労・破壊の関係を次のように整理しています事実。

  • 水素によるき裂進展は二つの領域からなる。一つは、水素のフガシティ(圧力)の平方根に比例する圧力依存の領域。もう一つは、疲労の駆動力(応力拡大係数範囲ΔK)が高い領域で、1〜200 barの間では圧力に依存しない領域
  • 低圧・低ΔKでは、き裂進展速度が湿った空気中の測定値に近づく。条件によっては、水素ガス中の疲労が湿った空気中と同じになる(水素中の水分が一因と考えられる、と報告書は書いている)
  • 水素による破壊抵抗の低下は、圧力への依存が弱く、試験のばらつきが1 barと200 barの平均差と同程度に大きい
  • 低圧側(10 bar未満)の依存性は文献で十分に記述されておらず、空気由来の酸素などの不純物が水素の影響を和らげる効果が競合する。ppmレベルの不純物でも測定値に影響しうる

8. 素材技術者の視点②:管本体よりも、継手・シール・溶接部が先に問題になる?

素材技術者の読みどころ:「管の鋼」だけを見ていると、漏れの経路を見落とします

鋼管本体の水素脆化は、試験データが蓄積され、ASME B31.12のコードケースとして設計曲線が整備されています(第5・10章)。 一方で、実際の「漏れ」の経路は別のところにあります。

  • NRELの総説は、鋼管や鋳鉄管の漏れは主にねじ部や機械式継手で起きるとし、GTIの測定では、シールや継手を含めた体積漏れ速度が、水素では天然ガスの約3倍と整理しています事実
  • ポリエチレン(PE)管では、水素の透過速度が、典型的な管材料でメタンの約4〜5倍です。ただし、エラストマーのシールのほうが透過係数は大きく、管のほうが表面積がはるかに大きいため、損失の大部分は管壁の透過になる、と整理されています事実
  • HyBlendは、PE管の機械式継手などの局所的な応力集中が、水素と不純物が加わると劣化を速めうる、としています事実

つまり、管の鋼に注目するだけでは足りず、溶接部・ねじ・フランジのガスケット・PE管とその継手・エラストマー部材まで含めて、材料ごとに水素環境の評価が必要になります(本記事による解説)。

9. 溶接部・継手・シールと樹脂管

材料ごとに違う「水素の通り道」(模式図) ※ 断面の概念図です。縮尺や形状は実際とは関係ありません。 鋼管の溶接部 溶接金属と熱影響部 硬さの管理が論点 大きな欠陥は健全性を損なう ねじ・フランジのシール シール部材(エラストマー等) 漏れは、ねじ部や機械式継手で 起きやすいと整理されている PE管の管壁 壁を透過する 水素の透過はメタンの 約4〜5倍(典型的な管材料) ※ 溶接部の記述はHyBlend最終報告書[参考資料9]、シール・ねじ・PE管の記述はNRELの総説[参考資料7]によります。 ※ NRELの総説の整理は米国の配給網(低圧)が中心で、高圧の送ガス管に直接当てはめられるとは限りません。 ※ 3つの部位を並べたのは本記事によるもので、損失や危険度の大小を比べるものではありません。
図6 概念図(ベクター作図)。溶接部・シール・PE管の「水素の通り道」を並べた模式図です。内容はHyBlend最終報告書[参考資料9]とNRELの総説[参考資料7]によります。実際の継手の構造・材質・寸法を示すものではありません。

NRELの総説は、PEの管路が約41.5万マイルある米国の配給網で、20%の水素混合を行った場合の理論的な損失を計算しています。 文献の透過係数からの試算で、年間約4,300万立方フィート、そのうち水素が約60%、天然ガスが約40%です。同じ総説は、これは天然ガスだけの場合の約2倍だが経済的には無視できる規模、としています。 さらに、この計算は透過係数が実運転条件で観察される値より大きい可能性があるため、おそらく過大評価だと注記しています事実。

ただし、漏れが閉じた空間に入る場合は別の問題で、サービスラインのエラストマーシールからの漏れは、追加のリスク評価が必要としています事実。

DOEは、水素配送向けの代替案として、繊維強化ポリマー(FRP)管を挙げています。鋼管より長い区間で入手でき、溶接が少なくて済むため、敷設コストが約20%低いとされています(DOEの記述)事実。 FRP管の材料については、本シリーズ『CFRPと複合材料』編も参照してください。

10. 規格 ― ASME B31.12

水素の配管とパイプラインを対象にした代表的な規格が、米国機械学会(ASME)のB31.12「Hydrogen Piping and Pipelines」です。 ASMEの販売ページによれば、2023年版は268ページで、気体水素および水素を含む混合ガスを扱う配管・パイプライン、ならびに液体水素用の配管に適用されます。 圧力容器や機器そのものは対象外で、配管がそれらに接続される継手までが適用範囲です事実。

部名称(ASMEの記載)内容(ASMEの記載の要約)
Part GRGeneral Requirements他の部が参照する共通要求。材料、溶接、ろう付け、熱処理、成形、試験、検査、運転、保守などの定義・要求
Part IPIndustrial Piping産業用配管の構成部品、設計、製作、組立、据付、検査、試験
Part PLPipelines水素パイプラインの構成部品、設計、敷設、試験

すべて事実(ASME B31.12 販売ページ[参考資料12])。規格本文は有料のため、本稿は題名・適用範囲・構成の記載の範囲にとどめます。

材料の評価との関係では、次の二点が公表資料から確認できます。

  • HyBlendの報告書は、同プロジェクトの疲労・破壊試験を、ASME B31.12が設計に必要とする特性(疲労・破壊力学の試験片で得る特性)を得るためのものと位置づけています事実
  • 水素分圧と応力比を反映した疲労設計曲線は、他のプロジェクトの成果も合わせて、ASME B31.12のコードケース220として承認されたと報告されています。この設計曲線は、試験したすべての条件に対する疲労の目安の上限になる、とされています事実

DOE水素プログラムの2023年度の年次報告は、Sandiaがこのコードケース(題名:Hydrogen Crack Growth Rate Constants for B31.12 Pipeline Materials)の技術的根拠を作り、ASME B31.12委員会に提示したと記載しています事実。 規格の細部(たとえば材料の強度に応じた設計係数の選び方)は、本稿が参照できた公開資料では確認できなかったため記載していません。

11. 実在の計画 ― ドイツ、オランダ、米国、日本

公式資料で確認できる範囲で、水素パイプラインの実在の計画と進捗を整理します。計画の数字は承認された計画値・想定値であり、実績ではありません。

地域・事業公表内容段階(日付)出典
ドイツ
水素コアネットワーク
延長9,040 km。既設ガス管の転用が約56%(連邦ネットワーク庁の比較表。プレスリリースは「約60%」)、新設が約44%。想定投資額は189億ユーロ。2032年までに順次稼働とされる承認:2024年10月22日
稼働:未確定/将来
[参考資料1・2]
ドイツ
GASCADE「Flow – making hydrogen happen」
直径1.4 mの既設天然ガス管を含む約400 kmを水素用に切り替え、最初の充填を実施。バルト海地域からザクセン=アンハルト州に至る南北軸。南ドイツの産業拠点への接続拡大は2029年までを予定。この発表は、充填した水素の由来を示していない会社発表:2025年12月11日
2029年の接続:未確定/将来
[参考資料3]
オランダ
Hynetwork(Gasunieの100%子会社)
5つの産業クラスターを結ぶ全国網を、主に既設管、一部新設で建設。ロッテルダム港の最初の32 kmは2025年8月中旬に最終溶接が完了。水素を充填して所定の圧力にした後、2026年3月16日に、200 MWのHolland Hydrogen 1(マースフラクテ)が接続された。全国網の完成は当初の2030年から「遅くとも2033年」に変更された32 km:完了
全国網:未確定/将来
[参考資料4・5]
米国約1,600マイルの水素パイプラインが稼働。製造事業者が所有し、メキシコ湾岸などの大口需要家が集中する地域にある。新設の資本コストの高さが拡大の障壁DOEのページ(2026年10月時点で確認)[参考資料6]
日本水素パイプラインの全国的な計画や稼働中の延長について、本稿が参照した公式資料では確認できなかった確認できなかった―

稼働・接続・完了の記載は会社・政府の発表にもとづく事実。いずれも会社・当局の発表であり、第三者による検証を本稿では確認していません。

ドイツ水素コアネットワーク ― 草案から承認までの数字の変化 ドイツ連邦ネットワーク庁の比較表から転記・作図(延長はkm、投資は想定額) 既設ガス管の転用 新設 草案(2023年11月15日) 58% 42% 9,721 km 投資 198億ユーロ 申請(2024年7月22日) 57% 43% 9,666 km 投資 197億ユーロ 修正申請(2024年9月26日) 56% 44% 9,668 km 投資 198億ユーロ 承認(2024年10月22日) 56% 44% 9,040 km 投資 189億ユーロ ※ 数字は連邦ネットワーク庁の比較表[参考資料2]によります。投資額は表中の想定額で、第三者負担分を含みます。 ※ 同庁のプレスリリース[参考資料1]は、承認時の転用を「約60%」と表現しています(表では56%)。 ※ 承認された計画の数字であり、実際の稼働・投資の実績ではありません。稼働は2032年までに順次の予定です。
図7 概念図(ベクター作図)。ドイツ連邦ネットワーク庁の比較表[参考資料2]から延長・転用と新設の比率・投資額を転記し、棒グラフに作図したものです。承認時に延長が9,668 kmから9,040 kmに縮小した点が読み取れます。計画値であり、実績ではありません。

図7が示すように、ドイツの計画は草案から承認までの間に、延長が9,721 kmから9,040 kmに、想定投資額が198億ユーロから189億ユーロに変わりました。 連邦ネットワーク庁は、承認にあたり、コアネットワークの輸送任務に必要な管のみを承認した、と説明しています事実。

「転用」の中身は、管ごとにちがう

GASCADEの発表は、転用した管の直径が1.4 mであることを強調しています。大口径の既設管を水素に切り替えるのは、材料の面では その管の鋼種・製造年代・溶接部・運転履歴ごとに、水素中の破壊抵抗と疲労を評価する作業を意味します(第5〜7章)。 本稿が参照した発表には、評価の方法や結果の詳細は書かれていません(本記事による解説)。

12. 制度 ― 欧州、米国、日本

制度は提案・採択・施行(適用開始)の段階を区別して読みます。以下は2026年10月時点で確認した内容です。

地域制度・法令内容段階(日付)
EU規則(EU)2024/1789
(再・天然ガス・水素の域内市場)
2024年6月13日に採択、官報掲載は2024年7月15日。公布から20日後に発効し、2025年2月5日から適用(一部の規定はこれより早い)。水素の送ガス網や事業者の定義は指令2024/1788に委ねている。天然ガス網の越境品質調整の条文(第21条)は、水素の混合割合が体積で2%を超える混合には適用しないとされる発効:2024年8月4日
適用:2025年2月5日
EU指令(EU)2024/1788
(上記市場の共通規則)
2024年6月13日に採択、官報掲載は2024年7月15日。加盟国は指令の主な条文を2026年8月5日までに国内法化する義務を負う。「水素ネットワーク」を、高純度の水素を需要家へ届けるための陸上・洋上の管のネットワークと定義(第2条)。水素の送ガス網・配給網とその事業者も定義国内法化期限:2026年8月5日
各国の国内法化の状況は確認していない
ドイツエネルギー事業法(EnWG)第28q条ほかガス長距離網事業者の申請にもとづき、連邦ネットワーク庁が水素コアネットワークを承認する制度。承認は申請の完了から2か月以内。EU委員会による国家補助の承認は2024年6月21日承認:2024年10月22日
米国連邦規則集第49編192.3
(パイプライン安全規則)
同規則の「ガス」の定義は、天然ガス、可燃性ガス、または有毒・腐食性のガスを含む。水素は可燃性ガスにあたるため、水素管にこの規則が関わりうる(本記事による読み取り。適用の詳細は確認していない)現行規則(2026年9月30日時点の版で確認)
日本水素社会推進法
(令和6年法律第37号)
低炭素水素等の供給・利用を促進する法律。計画の認定を受けた事業者に対し、「価格差に着目した支援」と「拠点整備支援」を行う。拠点整備支援は、複数の利用事業者が共同で使う輸送・貯蔵の設備の整備を支援。また特例として、高圧ガス保安法の手続き(製造に係る導管での輸送を含む)、港湾法、道路占用(ガス小売事業用の導管に限る)を定める公布:2024年5月24日
施行:2024年10月23日

すべて事実(EU官報[参考資料13・14]、ドイツ連邦ネットワーク庁[参考資料2]、eCFR[参考資料15]、e-Gov法令検索[参考資料16]、経済産業省[参考資料17]、資源エネルギー庁[参考資料18])。

日本については、資源エネルギー庁のページ(2026年7月1日更新)に、水素社会推進法にもとづく認定計画が9件掲載されています(2025年9月30日〜2026年6月30日に認定)。 拠点整備支援は2025年度にFEED(基本設計)支援のみを実施する予定とされ、申請の受付は2025年6月30日に締め切られています事実。 これらの認定計画のうち、パイプラインを含むものがあるかどうかは、本稿では確認していません。

EUの規則が定める「2%」は、越境の天然ガス流のガス品質調整に関する条文の適用範囲の線引きです。各国の管網にいくら混ぜてよいか、という許容上限を直接定めたものではありません。 個々の管網での許容混合率は、NRELが述べるように、管網ごと・ガス組成ごとの個別評価が前提です(本記事による解説)。

13. 課題と、本稿で確認できなかったこと

確認できなかった項目
  • ASME B31.12の詳細な要求:規格本文は有料で、材料強度に応じた設計係数の選び方や試験の要求などの細部は、本稿が参照した公開資料では確認できませんでした
  • ISOなど他の規格:パイプライン向けの国際規格や、日本のJIS・高圧ガス保安法の技術基準の具体的な数値は、本稿では確認していません
  • 日本の水素パイプライン:全国的な計画や稼働延長は、公式資料で確認できませんでした。水素社会推進法の認定計画に含まれるパイプラインの有無も確認していません
  • GASCADEの水素の由来、転用の評価方法:発表には記載がありません
  • 継手・シール材料の具体的な推奨:エラストマーやガスケットの個別の耐水素性は、本稿では評価していません
  • 日本の既設ガス管の鋼種と水素脆化:日本の配管鋼(JIS規格鋼など)の水素ガス中データは、本稿の調査範囲では確認していません
  • コスト:水素管のkm当たり建設費、輸送コストは、一次資料で条件を揃えて確認できなかったため記載していません

(1) 試験室のデータを、管路の寿命に直接つなげることはできない

第5章の表は、室温付近の試験室の結果です。実際の管路には、残留応力、溶接欠陥、腐食欠陥、圧力変動の履歴、ガスの不純物があります。 HyBlendの報告書自身も、溶接部のデータは限られており、1 mm超の構造欠陥と残留応力を含めていない、と注記しています。

(2) 不純物の効果は、よく分かっていない部分が大きい

ppmレベルの酸素などが、水素の影響を和らげることがあります。ただしその効果は荷重速度などの条件に依存し、低圧側では十分に記述されていません(HyBlend)。 管網に水素以外の成分が含まれる場合の長期の挙動は、今後の研究課題とされています。

(3) 混合比の「上限」は一つではない

NRELの総説は、適切な混合率が管網ごとに大きく異なり、個別評価が前提だとしています。第7章のとおり、材料にとっての水素の分圧は混合比と全圧の両方で決まります。

この記事のまとめ
  • 水素中の鋼で変わるのは強さではなく、粘り・破壊靭性・疲労き裂の進み方です事実
  • 疲労き裂の進展速度は、API 5L X42〜X120の範囲で鋼種による差が小さく、水素分圧と応力比で整理されます事実。その設計曲線はASME B31.12のコードケース220として承認されています
  • 体積20%の水素混合は、熱量では約7.4%です本稿の計算。材料に効くのは体積比ではなく分圧です
  • 漏れの経路は、鋼管本体だけでなく、ねじ・機械式継手・シール・PE管の管壁にもあります事実
  • ドイツのコアネットワークは9,040 kmで承認済み、GASCADEは約400 kmの既設管を水素用に切り替えたと発表しました事実。2032年までの完成は未確定/将来です

14. 用語集

水素脆化
水素が金属に入り、延性・靭性・疲労寿命などが損なわれる現象の総称。
フガシティ
実在気体の「有効圧力」にあたる熱力学量。高圧では圧力と一致しない。
分圧
混合ガスのうち、その成分が占める圧力。理想気体なら体積割合×全圧。
ジーベルツ則
気体が金属に溶けた量が、気体の圧力(フガシティ)の平方根に比例するという関係。
破壊靭性
き裂がある材料が、き裂の進み始めに耐える性質。
疲労き裂進展速度
繰り返し荷重で、き裂が1サイクルあたりどれだけ進むか。
応力拡大係数範囲 ΔK
繰り返し荷重でき裂の先端にかかる負荷の幅。疲労き裂の進みやすさの目安になる。
応力比 R
繰り返し荷重の最小応力と最大応力の比。
API 5L
ラインパイプの規格。X42、X52、X70などの記号は鋼の降伏強さの区分を表す。
SMYS
規定最小降伏強さ。パイプの設計に使う強さの指標。
熱影響部(HAZ)
溶接の熱で組織や性質が変わった母材の部分。
コードケース
規格の本体を改訂する前に、新しい技術的内容を認める追加の取決め。
電解チャージ
溶液中で電流を流して試験片に水素を入れる方法。
コアネットワーク
ドイツで承認された、主要な水素の製造・輸入・消費地点をつなぐ基幹の水素パイプライン網。

15. 参考資料(一次情報)

  1. ドイツ連邦ネットワーク庁「Bundesnetzagentur genehmigt Wasserstoff-Kernnetz」2024年10月22日 — https://www.bundesnetzagentur.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/2024/20241022_H2Kernnetz.html
  2. ドイツ連邦ネットワーク庁「Wasserstoff-Kernnetz」(承認内容と、草案・申請・承認の比較表、法的根拠) — https://www.bundesnetzagentur.de/DE/Fachthemen/ElektrizitaetundGas/Wasserstoff/Kernnetz/start.html
  3. GASCADE Gastransport GmbH「GASCADE puts 400 kilometers of hydrogen core network into operation」2025年12月11日(PDF) — https://fnb-gas.de/wp-content/uploads/2025/12/251211_GASCADE_PR_400_km.pdf
  4. Gasunie「Hydrogen network Netherlands」(プロジェクトページ、更新履歴を含む) — https://www.gasunie.nl/en/projects/hydrogen-network-netherlands
  5. Gasunie「First major hydrogen plant connected to Dutch hydrogen network」2026年3月16日 — https://www.gasunie.nl/en/news/first-major-hydrogen-plant-connected-to-dutch-hydrogen-network
  6. 米国エネルギー省(DOE)「Hydrogen Pipelines」 — https://www.energy.gov/eere/fuelcells/hydrogen-pipelines
  7. M. W. Melaina, O. Antonia, M. Penev(NREL)「Blending Hydrogen into Natural Gas Pipeline Networks: A Review of Key Issues」NREL/TP-5600-51995, 2013年3月 — https://www.osti.gov/biblio/1068610
  8. J. Herrington, X.-K. Zhu, B. Wiersma(SRNL)「Recent Advances in Pipeline Integrity for Transporting Blended Hydrogen-Natural Gas」ASME PVP2025-154678, SRNL-STI-2025-00041, 2025年 — https://www.osti.gov/biblio/2586411
  9. T. Deutsch, C. San Marchi ほか(NREL、Sandia、PNNL、ANL)「HyBlend Collaborative Research Partnership (CRADA Final Report)」NREL/TP-5900-94949, 2025年7月 — https://www.osti.gov/biblio/2583498
  10. J. Ronevich, M. Agnani, C. San Marchi(Sandia)「Consistency of fatigue crack growth behavior of pipeline and low-alloy pressure vessel steels in gaseous hydrogen」International Journal of Hydrogen Energy, 136, 2025(DOI: 10.1016/j.ijhydene.2024.06.287) — https://www.osti.gov/biblio/2455116
  11. Sandia National Laboratories(DOE Hydrogen Program)「R&D for Safety, Codes and Standards: Materials and Components Compatibility」2023 Annual Merit Review, SCS005(PDF) — https://www.hydrogen.energy.gov/pdfs/review23/scs005_ronevich_2023_p.pdf
  12. ASME「B31.12 - Hydrogen Piping and Pipelines」(2023年版の販売ページ) — https://www.asme.org/codes-standards/find-codes-standards/b31-12-hydrogen-piping-pipelines
  13. 欧州議会・理事会Regulation (EU) 2024/1789 of 13 June 2024 on the internal markets for renewable gas, natural gas and hydrogen (recast), Official Journal L, 15.7.2024 — https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1789/oj/eng
  14. 欧州議会・理事会Directive (EU) 2024/1788 of 13 June 2024 on common rules for the internal markets for renewable gas, natural gas and hydrogen (recast), Official Journal L, 15.7.2024 — https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2024/1788/oj/eng
  15. 米国連邦規則集(eCFR)49 CFR § 192.3 Definitions — https://www.ecfr.gov/current/title-49/section-192.3
  16. e-Gov法令検索「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律」(令和六年法律第三十七号) — https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000037
  17. 経済産業省水素社会推進法の施行期日等を定める政令の閣議決定(ニュースリリース)2024年10月8日 — https://www.meti.go.jp/press/2024/10/20241008003/20241008003.html
  18. 資源エネルギー庁「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(水素社会推進法)」(2026年7月1日更新) — https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/hydrogen_society/carbon_neutral/
  19. NISTChemistry WebBook「Methane」(燃焼熱) — https://webbook.nist.gov/cgi/cbook.cgi?ID=C74828&Units=SI&Mask=1
  20. NISTChemistry WebBook「Water」(液体の水の生成エンタルピー。水素の燃焼熱の算出に使用) — https://webbook.nist.gov/cgi/cbook.cgi?ID=C7732185&Units=SI&Mask=2

16. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
米国で約1,600マイルの水素パイプラインが稼働していること。所有者が水素製造事業者で、メキシコ湾岸など大口需要家が集中する地域にあること。研究課題が、鋼・溶接部の脆化、透過・漏れの制御、圧縮機であること。新設の初期資本コストが障壁であること。FRP管の敷設コストが鋼管より約20%低いとされることDOE「Hydrogen Pipelines」[参考資料 6]https://www.energy.gov/eere/fuelcells/hydrogen-pipelines事実
水素の混合率が体積で5〜15%未満なら軽微な課題にとどまり、15〜50%、50%超でそれぞれ別の課題が出ること。適切な混合率は管網ごとに異なり、個別評価が必要なこと。水素損傷の発生条件と影響因子。配給網の鋼種(API 5L A、B、X42、X46)。PE管の水素透過がメタンの約4〜5倍であること。ねじ部・機械式継手での漏れ、体積漏れ速度が水素で天然ガスの約3倍であること。エラストマーシールの透過係数が大きいこと、管壁の面積が大きいこと。約41.5万マイルのPE管、20%混合での理論損失(年間約4,300万立方フィート、水素約60%)NREL/TP-5600-51995(2013年)[参考資料 7]https://www.osti.gov/biblio/1068610事実
水素が鋼に入る過程(吸着、原子状水素の吸収)。HEDEとHELP。破壊様式が延性的な空隙の成長・合体から擬へき開型に変わること。ジーベルツ則。気体水素が降伏強さ・引張強さへ与える影響が小さく、延性の低下が大きく、フガシティ0〜約10 MPaで低下が急であること。破壊靭性が鋼種の降伏強さと水素分圧の増加で低下すること、溶接部・熱影響部が母材と同様の傾向であること。疲労き裂進展速度が空気中より大きく、鋼種の影響が小さいこと。電解チャージと気体チャージの特徴。水素30%・全圧10 MPaで分圧3 MPaの例。水素のエネルギー密度が天然ガスより低いことSRNL(ASME PVP2025-154678)[参考資料 8]https://www.osti.gov/biblio/2586411事実
疲労き裂進展が鋼種(API 5L X42〜X120)・組織によらずほぼ同じこと。圧力依存の領域(フガシティの平方根に比例)と、ΔKが高く圧力に依存しない領域(1〜200 bar)の二つがあること。低圧・低ΔKで湿った空気中の値に近づくこと。破壊抵抗の圧力依存が弱いこと。高強度ほど水素に敏感、旧世代の鋼と現代の鋼の違い。溶接が疲労き裂進展に影響しないように見えること、破壊挙動が母材と同程度(1 mm超の欠陥・残留応力を含まない条件)。疲労設計曲線がコードケース220として承認されたこと。ASME B31.12が要求する特性を得る試験であること。一つの試験片で疲労から破壊試験へ移る方法。NPS 2・Sch 40の管を300 bar超で繰り返し加圧する試験系と、外面欠陥でも破壊が起きたこと。PE管の機械式継手の局所応力集中HyBlend最終報告書(NREL/TP-5900-94949)[参考資料 9]https://www.osti.gov/biblio/2583498事実
降伏強さ・組織が幅広いパイプライン鋼と圧力容器鋼で、水素ガス中の疲労き裂進展速度が2〜3倍以内に収まったこと。パーライト割合が高い旧世代鋼でやや低いこと。応力比と水素分圧への依存が、ASME B31コードケース220とBPVCコードケース2938の設計曲線で捉えられることRonevichら(IJHE, 2025)[参考資料 10]https://www.osti.gov/biblio/2455116事実
SandiaがB31.12パイプライン材料向けコードケース「Hydrogen Crack Growth Rate Constants for B31.12 Pipeline Materials」の技術的根拠を作り、ASME B31.12委員会に提示したことDOE水素プログラム 2023 AMR(SCS005)[参考資料 11]https://www.hydrogen.energy.gov/pdfs/review23/scs005_ronevich_2023_p.pdf事実
ASME B31.12の2023年版が268ページで、気体水素・水素混合ガスの配管とパイプライン、液体水素の配管に適用されること。機器そのものは対象外であること。Part GR、Part IP、Part PLの構成と内容ASME B31.12 販売ページ[参考資料 12]https://www.asme.org/codes-standards/find-codes-standards/b31-12-hydrogen-piping-pipelines事実
ドイツの水素コアネットワークが2024年10月22日に承認されたこと。延長9,040 km、転用約60%(プレスリリース)、想定投資額189億ユーロ、2032年までに順次稼働とされること。必要な管のみが承認されたこと。EnWG第28q条が根拠であること、承認が申請完了から2か月以内であること、EU委員会の国家補助承認が2024年6月21日であること。草案・申請・承認の延長・比率・投資額の表連邦ネットワーク庁 プレスリリースと解説ページ[参考資料 1]https://www.bundesnetzagentur.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/2024/20241022_H2Kernnetz.html[参考資料 2]https://www.bundesnetzagentur.de/DE/Fachthemen/ElektrizitaetundGas/Wasserstoff/Kernnetz/start.html事実
GASCADEが、直径1.4 mの既設天然ガス管を含む約400 kmを水素用に切り替え、最初の充填を行ったと発表したこと。バルト海地域からザクセン=アンハルト州の南北軸であること。発表日が2025年12月11日であることGASCADE プレスリリース[参考資料 3]https://fnb-gas.de/wp-content/uploads/2025/12/251211_GASCADE_PR_400_km.pdf事実
Gasunieの子会社Hynetworkが、主に既設管による5つの産業クラスターを結ぶ全国網を建設していること。ロッテルダム港の最初の32 kmが2025年8月に溶接完了、全国網の完成が当初の2030年から遅くとも2033年に変更されたこと。2026年3月16日にHolland Hydrogen 1(200 MW)が接続されたことGasunie プロジェクトページとニュース[参考資料 4]https://www.gasunie.nl/en/projects/hydrogen-network-netherlands[参考資料 5]https://www.gasunie.nl/en/news/first-major-hydrogen-plant-connected-to-dutch-hydrogen-network事実
規則(EU)2024/1789の採択日(2024年6月13日)、官報掲載(2024年7月15日)、発効(公布から20日後)、適用開始(2025年2月5日)、第21条の適用除外(水素が体積で2%を超える混合)EU官報 規則(EU)2024/1789[参考資料 13]https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1789/oj/eng事実
指令(EU)2024/1788の採択日、官報掲載、「水素ネットワーク」の定義、2026年8月5日までの国内法化義務EU官報 指令(EU)2024/1788[参考資料 14]https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2024/1788/oj/eng事実
49 CFR 192.3の「ガス」が、天然ガス、可燃性ガス、または有毒・腐食性のガスを意味することeCFR[参考資料 15]https://www.ecfr.gov/current/title-49/section-192.3事実
水素社会推進法が令和6年法律第37号であり、2024年5月24日に公布されたこと。拠点整備支援(第10条)、高圧ガス保安法の特例(第12条、導管による輸送を含む)、道路占用の特例(第31条、ガス小売事業用の導管)の内容e-Gov法令検索[参考資料 16]https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000037事実
水素社会推進法の施行期日が2024年10月23日と定められたこと(閣議決定は2024年10月8日)経済産業省ニュースリリース[参考資料 17]https://www.meti.go.jp/press/2024/10/20241008003/20241008003.html事実
水素社会推進法の支援の概要、拠点整備支援の2025年度のFEED支援のみの実施予定と申請締切(2025年6月30日)、認定供給等事業計画9件(2025年9月30日〜2026年6月30日認定)、2026年7月1日の更新資源エネルギー庁 水素社会推進法のページ[参考資料 18]https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/hydrogen_society/carbon_neutral/事実
体積20%混合で熱量が約7.4%になること(5%で1.7%、10%で3.4%、30%で12.1%、50%で24.3%)。水素とメタンの熱量比が約0.32、同じ熱量に体積で約3.1倍が要ること本稿の計算。メタンの燃焼熱890.7 kJ/mol[参考資料 19]https://webbook.nist.gov/cgi/cbook.cgi?ID=C74828&Units=SI&Mask=1と、水素の燃焼熱285.83 kJ/mol(液体の水の生成エンタルピー)[参考資料 20]https://webbook.nist.gov/cgi/cbook.cgi?ID=C7732185&Units=SI&Mask=2から算出。理想気体、メタン100%、高位発熱量基準は本稿の前提。実在気体・実際の天然ガスの組成では値が変わる本稿の計算
水素20%・全圧6 MPaで分圧1.2 MPa、水素100%・全圧3 MPaで分圧3 MPaとしたこと本稿の計算。理想気体として分圧=体積割合×全圧とした近似で、仮の数値である本稿の計算
ドイツのコアネットワークの2032年までの稼働、GASCADEの2029年までの南ドイツ接続、オランダ全国網の2033年までの完成各社・当局の計画であり、実績ではない見通しである[参考資料 1]https://www.bundesnetzagentur.de/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/2024/20241022_H2Kernnetz.html未確定/将来
ASME B31.12の材料強度に応じた設計係数・試験要求などの細部規格本文が有料であり、本稿が参照した公開資料では確認できなかったため記載していない解説
日本の水素パイプラインの全国的な計画・稼働延長、認定計画に含まれるパイプラインの有無、日本の配管鋼の水素ガス中データ、水素管の建設費、GASCADEの水素の由来本稿の調査範囲では公式資料に確認できなかったため記載していない解説
三つの道(混合・転用・新設)の区分と材料の論点の整理。「強さではなく粘りと疲労が落ちる」「評価すべきは破壊力学の量」という読み取り。「旧世代の鋼が有利/不利と言い切れない」という注意。継手・シール・PE管まで評価が要るという整理。EUの2%が許容上限ではないという注意。転用の評価の中身についての読み取り公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない解説
図1・図2・図3・図5・図6・図7が実際の観察像・設計図ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像と図4がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月6日/出典は一次情報(規格団体・政府・規制当局・国立研究所の報告書、企業の公式発表、査読論文)に限定しています。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 ASME B31.12の詳細な要求、日本の水素パイプラインの計画、日本の配管鋼の水素ガス中データ、継手・シール材料の個別評価、水素管の建設費は、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 水素は可燃性ガスで、取扱いには法令・規格が適用されます。本記事は解説であり、設計・運用・取扱いの個別の助言ではありません。 図はすべて説明用の概念図です。図1・図2・図3・図5・図6・図7はベクター作図、ヒーロー画像と図4はAI生成イメージであり、いずれも実際の断面写真・顕微鏡像・設備の実物を示すものではありません。