TECHNOLOGY EXPLAINER
PEM水電解
― 固体高分子膜の上で、貴金属とチタンが水を分ける
PEM水電解は、プロトンを通す固体高分子膜(PFSA膜)の両側で水を分解する方式です。膜が薄く、1〜3 A/cm²の高い電流密度で運転できる一方、アノードは酸性・高電位・酸素発生という過酷な環境で、イリジウム、チタン、白金や金のコーティングに頼っています。この記事は、その材料の組み合わせと、数字の読み方を整理します。

- PEM水電解とは何か(3行でつかむ)
- 反応とセルの構成 ― 水が水素と酸素に分かれるまで
- 本稿の計算:セル電圧は「kWh/kg」に直せる
- 素材技術者の視点①:膜はPFSA ― 薄さと水素の抜けの綱引き、そしてPFASの議論
- 触媒:イリジウムは1 GWあたり何キログラムか
- 素材技術者の視点②:担持量を減らす、電流密度を上げる、寿命を保つ ― 三つ巴
- チタン部材と貴金属コーティング
- 数字の読み方 ― 目標値・整理値・メーカー公称値を混ぜない
- 劣化は何が起きるのか
- 評価と標準 ― どう測り、どう比べるか
- 課題・限界/用語集/参考資料/出典対応表
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標・提案であり、実績や採択が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
性能値は、何の条件か(単セル/スタック/システム、温度、圧力、電流密度)とどの水準か(実験室/目標/公称)とセットで書いています。
水素は可燃性のガスで、取扱いには法令・規格があります。この記事は材料・原理・評価・制度の解説であり、水素設備の取扱いや運用についての個別の助言ではありません。特定の製品・企業・国の優劣を述べるものでもありません。
1. PEM水電解とは何か(3行でつかむ)
PEMは proton exchange membrane(プロトン交換膜)の略です。「固体高分子の膜を電解質に使い、純水を電気分解して水素をつくる方式」です。
- 膜が薄い:IRENA は、PEM電解槽が厚さ約0.2 mm の PFSA 膜と、抵抗の小さい電極構造を使うと説明しています事実。Babic らのレビューも、薄い高分子電解質のおかげで1〜3 A/cm²の電流密度と大きな差圧での運転ができるとしています事実
- 運転条件:IRENA の整理(2020年)では、運転温度は50〜80 ℃、運転圧力は70 bar未満です事実
- 材料の難しさ:酸性の膜、高い電位、アノードでの酸素発生が重なる「過酷な酸化環境」のため、チタン系の材料、貴金属触媒、保護コーティングが必要で、これが PEM のスタックをアルカリ形より高価にしている、と IRENA は述べています事実
PEM水電解は、フッ素系の膜、イリジウム、チタンと白金・金のコーティングという「特殊な材料の組み合わせ」の上に成り立っています。 性能を上げる(電流密度を上げる)、貴金属を減らす、寿命を保つ――この三つは互いに足を引っ張るので、数字は必ず「どの条件の、どの水準か」とセットで読む必要があります(本記事による解説)。
アルカリ水電解、AEM水電解、固体酸化物電解セルとの違いは、本シリーズ「アルカリ水電解」「AEM水電解」「固体酸化物電解セル」編で扱います。 貴金属の資源面は「白金族金属と触媒」編、スタック全体の部材は「水電解スタックと材料」編、水素のコストは「水素の製造コスト」編で詳しく扱います。
2. 反応とセルの構成 ― 水が水素と酸素に分かれるまで
アノード(陽極)では水が酸素とプロトン(H⁺)と電子に分かれ、プロトンは膜を通ってカソード(陰極)へ移り、そこで電子と結びついて水素になります。 膜はプロトンだけを通し、ガスと電子は通さないことが求められます(反応式と役割は教科書的な内容で、本記事の解説です)。 熱力学的には、すべてのエネルギーを電気でまかなうときのセル電圧(熱中立電圧)は1.48 Vです事実(Babic らのレビュー[参考資料 2])。
セルを構成する部材は、IRENA が次のように整理しています事実。
| 部位 | 材料の例(IRENA 2020) | 役割 | 素材上の難しさ |
|---|---|---|---|
| 電解質(膜) | PFSA(パーフルオロスルホン酸)膜 | プロトンを運び、水素側と酸素側を隔てる | 薄いほど抵抗は下がるが、水素が抜けやすくなる。化学的に薄くなる |
| アノード触媒(酸素側) | イリジウム酸化物 | 酸素を発生させる | 希少金属。溶け出す。使用量の削減が必須 |
| カソード触媒(水素側) | カーボンに担持した白金ナノ粒子 | 水素を発生させる | 白金族金属であり、DOE の目標はアノードとカソードの合計で示される |
| 多孔質輸送層(アノード) | 白金コーティングした焼結多孔質チタン | 水を届け、酸素を逃がし、電気をつなぐ | 表面に酸化皮膜ができて接触抵抗が増える。貴金属コーティングが必要 |
| バイポーラ板 | アノード側は白金コートのチタン、カソード側は金コートのチタン | 隣のセルとつなぎ、流路を作る | チタン部材は設備費の大きな割合を占める(Lettenmeier ら) |
| 枠・シール | PTFE、PSU(ポリスルホン)、ETFE | 液体とガスを漏らさない | フッ素樹脂が使われる(「フッ素樹脂とPFAS」編) |
すべて事実(IRENA[参考資料 1] Table 1、Babic ら[参考資料 2]、Lettenmeier ら[参考資料 6])。「アノードより少ない」などの比較は同資料の数値の読み取りで、メーカーや開発段階によって材料は大きく変わります(IRENA 自身が「企業間で大きく異なる」と注記)。
3. 本稿の計算:セル電圧は「kWh/kg」に直せる
「1.8 V」と「48 kWh/kg」は、じつは同じ情報を別の単位で書いたものです。 換算のしかたを一度確認しておくと、資料ごとに単位が違っても読めるようになります。
水素1 kgの物質量は 1000 ÷ 2.016 ≒ 496 mol。水素1分子を作るのに電子2個が要るので、電子は 992 mol。ファラデー定数 96,485 C/mol をかけると 9.57×10⁷ C、1 Ah = 3,600 C で割ると約26,590 Ah。電流効率を100%と仮定すれば、電力量 = セル電圧 × 26.59 kWh/kg です本稿の計算。
- 1.23 V(可逆電圧、解説)→ 32.7 kWh/kg
- 1.48 V(熱中立電圧)→ 39.4 kWh/kg。水素の高位発熱量(約39.4 kWh/kg)と一致します
- 1.8 V → 47.9 kWh/kg。低位発熱量を約33.3 kWh/kgとすると、電圧効率(LHV)は 33.3 ÷ 47.9 = 約69.6%。DOE の表の「48 kWh/kg(69% LHV)」と整合します
- 1.9 V → 50.5 kWh/kg(65.9%)、1.6 V → 42.5 kWh/kg(78.3%)。DOE の表の 51(65%)・43(77%)と整合します
前提と限界:電流効率100%(水素の取りこぼしがない)と、低位発熱量33.3 kWh/kgは本稿が置いた前提です。 実際には水素の一部が膜を抜けるので、同じ電力量でも得られる水素は少し減ります。 また、この換算はスタック(セルを積んだもの)の値で、整流器・水精製・冷却などを含むシステムの値とは別です。
Nel(ノルウェー)の MC シリーズの資料は、スタックの消費電力が 53.2 kWh/kg、システム全体が 56.77 kWh/kg(いずれも定格100%)と記載しています事実(メーカー公称値、資料の脚注は取得できませんでした)。 上の換算に当てはめると、スタックは平均で約2.0 V(電流効率100%と仮定)、LHV 基準の電圧効率は約62.6%になります本稿の計算。 一方、DOE の表は 2022年の状況を「1.9 V(2.0 A/cm²)」、2026年の目標を「1.8 V(3.0 A/cm²)」としています事実。 これらは測り方も水準も違う数字で、並べて優劣をつけるものではありません(第8章で整理します)。
4. 素材技術者の視点①:膜はPFSA ― 薄さと水素の抜けの綱引き、そしてPFASの議論
PEMの膜は、パーフルオロスルホン酸(PFSA)系の高分子です。IRENA は、PFSA を「ポリテトラフルオロエチレンをスルホン化した、フッ素系の共重合体」と注記し、膜が化学的・機械的に頑丈なので大きな差圧にも耐えられると述べています事実。 現在の先進的な PEM 電解セルが使う膜は比較的厚い(5〜7 mil、1 mil=25.4 µm)PFSA 膜で、Nafion 115 や 117 がその例だ、と Babic らは書いています事実。 Kim らの論文の実験では、Nafion N115(127 µm、Chemours)と Gore の M275.80(80 µm)が使われています事実。
Babic らは、「膜が薄いと同じセル電圧で電流密度を上げられ、スタックの投資が減る一方、ガスのクロスオーバー(膜を抜けること)が課題になる」と書きます事実。 さらに、運転できる電流密度の下限が「酸素中の水素が2%」という限界で決まる、とも述べています事実。 電流が小さいと、酸素の発生量が減るのに、膜を抜ける水素の量はあまり変わらないので、酸素中の水素の割合が上がるためです(この理由づけは本記事の解説)。 膜を薄くして効率を稼ぐ設計は、再生可能エネルギーの出力が下がる時間帯に運転できる範囲を狭めることにもなります。 IRENA は、抜けた水素を水に戻す触媒を使う方法を挙げています事実。
PFAS の議論との関係
PFSA はフッ素系高分子で、–CF₂– の単位を持つため、OECD の定義を当てはめると PFAS に当たると読めます(本記事の読み取り。定義の詳細は「フッ素樹脂とPFAS」編)。 EU の PFAS 制限案について、五か国当局が2025年8月に更新した背景文書は、「燃料電池と電解槽」を適用除外の候補に挙げ、猶予を「発効後13.5年」とする案を示しています未確定/将来(KemI の概要資料[参考資料 8]、2025年10月23日更新版)。 同じ資料によると、旧版(2023年)の「PEM 燃料電池」という範囲は、すべての燃料電池と電解槽に広げられました。
ただし、これは提案者である五か国当局の案です。 ECHA の RAC は2026年3月に最終意見を採択し、SEAC は同月に意見案を合意しましたが、電解槽の個別の扱いについての両委員会の意見は、本稿では確認していません。 SEAC の最終意見は2026年末までの見込みで、その後に欧州委員会の提案と加盟国の投票が続くため、採択も施行もされていません(「フッ素樹脂とPFAS」編が2026年10月2日に確認した段階)。
5. 触媒:イリジウムは1 GWあたり何キログラムか
アノードの触媒は、酸性・高電位の中で安定なイリジウム酸化物がいまのところ標準です。 Babic らは「IrO₂ が選ばれる材料であり、ルテニウム酸化物は溶出が許容できないほど速い」と書いています事実。 そのイリジウムは希少で、白金の採掘の副産物として得られます。
| 項目 | 公表されている内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 一次供給 | 2025年の世界の一次生産は約7トン。南アフリカが約80%。オープンループ(使用済みから回収して別用途に戻す)のリサイクルは「ほぼない」 | IPA の資料(SFA Oxford 作成)[参考資料 12] |
| 現状の担持量 | アノードで約1〜2 mg/cm²(面積あたり) | Minke ら(2021)[参考資料 3] |
| 「1 GWあたり」 | 「4 W/cm²、Ir 2 mg/cm² では500 kg Ir/GW」 | Babic ら(2017)[参考資料 2] |
| 必要条件 | 将来の需要を満たすには、①イリジウム担持量の大幅な削減、②90%以上の回収率を持つリサイクルの仕組み、の二つが前提 | Minke ら(2021)[参考資料 3] |
| 企業の見通し | Johnson Matthey は2022年12月、「イリジウムは年1.5トン(一次供給の約20%)あれば、2030年までに100 GW超のグリーン水素設備を実現できる」と述べた | Johnson Matthey(2022)[参考資料 13] |
すべて事実。Johnson Matthey の値は同社の見解(企業の主張)で、前提はこの発表文からは確認できません。
担持量(mg/cm²)を出力密度(W/cm²)で割ると g/kW になります。Minke らの三つの想定を使います本稿の計算。
- 2 mg/cm² ÷ 3 W/cm² = 0.67 g/kW → 1 GW(100万 kW)で670 kg。約7 tの約9.6%
- 1 mg/cm² ÷ 3 W/cm² = 0.33 g/kW → 330 kg。約4.7%
- 0.4 mg/cm² ÷ 8 W/cm² = 0.05 g/kW → 50 kg。約0.7%
- 年に10 GW 設置するなら、それぞれ 6.7 t/3.3 t/0.5 t(約7 tの96%/47%/7%)
前提と限界:三つの組(担持量と出力密度)は Minke らの論文が置いた想定で、実在製品の値ではありません。 7 t はすべての用途の一次供給の推定で、PEM水電解だけが使える量ではありません。 リサイクル、他の貴金属(白金など)、設備の寿命による交換は考えていません。
DOE の目標表も、同じ考え方で書かれています。DOE は白金族金属の合計(アノードとカソード)の目標を、2022年の状況が3.0 mg/cm²(0.8 g/kW)、2026年の目標が0.5 mg/cm²(0.1 g/kW)、最終目標が0.125 mg/cm²(0.03 g/kW)としています事実。 mg/cm² を電流密度×電圧で割ると g/kW になり(3.0 ÷ (2.0 × 1.9) ≒ 0.79、0.5 ÷ (3.0 × 1.8) ≒ 0.093、0.125 ÷ (3.0 × 1.6) ≒ 0.026)、DOE の g/kW と整合しました本稿の計算。
どう減らすか。Bernt らは、イリジウム量を大規模展開に見合う水準まで減らすには、充填密度の低い、高度に構造化した触媒が必要だとし、活性は回転ディスク電極で、安定性は膜電極接合体(MEA)での加速劣化試験で評価する必要がある、と述べています事実。 実験室の例として、Kim らは酸化イリジウムの表面に原子層堆積で TiO₂ を被せ、Ir 0.4 mg/cm²、3.0 A/cm²、80 ℃の単セルで、運転と休止を繰り返す試験を2600時間続けても電圧の劣化がほとんどなかったと報告しています。被せない酸化イリジウムは、1000時間にわたり 31.5 mV/kh で電圧が落ち続けました事実(2026年、実験室の単セルの結果であり、商用システムの寿命ではありません)。
6. 素材技術者の視点②:担持量を減らす、電流密度を上げる、寿命を保つ ― 三つ巴
第5章の計算が示すように、g/kW = 担持量 ÷ 出力密度です。下げるには、分子(担持量)を減らすか、分母(出力密度、つまり電流密度×電圧)を上げるかのどちらかです。
- 電流密度を上げる:同じ面積で多く作れるので、g/kW も、膜やチタンの量も減ります。しかし IRENA は、温度・圧力・電流密度が高いほど寿命に悪いと述べ、穏やかな条件(50〜60 ℃、10 bar、2 A/cm²)と次世代の厳しい条件(80 ℃、70 bar、5 A/cm²)を対比しています事実
- 担持量を減らす:触媒層が薄く・まばらになるほど、溶出や剥がれが目立ちやすくなります。IRENA は、過酷な条件に備える設計として5 mg/cm²超(2.5 g/kW)のイリジウムや、保護層への貴金属の追加で厚く守る方法を挙げています事実
つまり、寿命を守ろうとして貴金属を増やし、貴金属を減らそうとして寿命が縮むという引っ張り合いが、この方式の開発の中心にあります(本記事による解説)。 触媒の論文が「初期性能」だけでなく劣化率(mV/kh)と試験時間、担持量、電流密度、温度をセットで書く理由は、ここにあります。
7. チタン部材と貴金属コーティング

アノード側は、触媒だけでなく周りの金属部材も「貴金属に頼る」設計になっています。 Babic らは、アノードの部材について「高い電気化学的電位のため、材料の選択はチタン系の多孔質材料(焼結粉末・繊維・メッシュ)に限られるのが普通」と書いています事実。
- チタンの宿命:表面に酸化皮膜ができ、時間とともに電気伝導が落ち、セルの性能が下がる、とBabic らは述べます事実
- 貴金属コーティング:IRENA は、アノードの多孔質チタン層は厚さ1 mm超で膜を支え(差圧運転のため)、この層には1 mg/cm²超(0.5 g/kW)の白金をコーティングしてチタンの酸化を抑える設計がある、と記しています事実。カソード側のバイポーラ板は金コートのチタンです
- コストの偏り:Lettenmeier らは、バイポーラ板などのチタン系部材が設備費への寄与が最も大きいと述べ、その代案としてステンレス鋼の板に Nb(スパッタ)と Ti(溶射、厚さ50 µm)を被覆する方法を試しています。Nb の層は50分の1の薄さで、接触抵抗をほぼ1桁下げ、アノードの環境で1000時間超耐えたと報告しています事実(単純化した実験室での評価)
- 安価な金属への期待:Babic らは、TiN、Pt、Au などの適切なコーティングがあれば、ステンレス鋼も使える可能性があるが、電解運転での有効性はまだ調べられている段階だと述べています事実
PEM の貴金属は、アノード触媒の Ir とカソード触媒の Pt だけではありません。 IRENA の整理では、アノードの多孔質層とバイポーラ板に白金、カソード側のバイポーラ板に金が使われます事実。 部材の貴金属を含めて考えないと、「g/kW」を見誤ります。
ステンレスなど安価な金属への置き換えは、基材そのものの腐食と表面の接触抵抗の二つを同時に解く問題です。 Lettenmeier らの例が、保護の層(Ti)と電気をつなぐ層(Nb)を役割ごとに分けたことは、材料設計として読み取る価値があります(本記事による解説)。 塗膜の欠陥(ピンホール)、厚さ、密着の評価は、「バリア性とコーティング」編の考え方がそのまま使えます。
8. 数字の読み方 ― 目標値・整理値・メーカー公称値を混ぜない
PEM水電解の「性能」は、出所によって指しているものが違います。 下の表は、3種類の出所を、それぞれの水準のまま並べたものです。
| 項目 | DOE の表(2022年の状況 → 2026年目標 → 最終目標) | IRENA の整理(2020年12月) | Nel MC シリーズ(メーカー公称) |
|---|---|---|---|
| 何の数字か | スタック(セル)の状況と目標。性能・耐久・設備費の目標は同時に満たすこと、電力価格0.03 $/kWh 以下・稼働率90%超が前提 | 2020年時点の最新水準の整理(IRENAの分析) | モジュール型システムの製品資料(MC1000〜MC4000、5〜20 MW級) |
| 電流密度と電圧 | 2.0 A/cm² @ 1.9 V → 3.0 A/cm² @ 1.8 V → 3.0 A/cm² @ 1.6 V | 公称電流密度 1〜2 A/cm²、電圧範囲 1.4〜2.5 V | 記載なし(脚注は確認できず) |
| 電力量 | スタック 51 → 48 → 43 kWh/kg。システム 55 → 51 → 46 kWh/kg | スタック 47〜66、システム 50〜83 kWh/kg | スタック 53.2、システム 56.77 kWh/kg(定格100%) |
| 白金族金属(合計) | 3.0 → 0.5 → 0.125 mg/cm²(0.8 → 0.1 → 0.03 g/kW) | 記載なし(過酷条件の設計例:Ir 5 mg/cm²超) | 記載なし |
| 劣化と寿命 | 平均劣化率 4.8 → 2.3 → 2.0 mV/kh。寿命 4万 → 8万 → 8万時間(寿命末期は電圧の10%上昇) | スタック寿命 5万〜8万時間(2020年の範囲)。MW級スタックの信頼性は「検証が必要」 | 記載なし |
| 運転条件 | 記載なし(目標表) | 50〜80 ℃、圧力 30 bar未満(Table 6)/70 bar未満(Table 1)、負荷範囲 5〜120% | 供給圧力 30 barg、出力範囲 20〜100%、起動 8分未満、水素純度 99.95%(標準。ISO 14687:2019 の Type I/II Grade D への適合を記載) |
すべて事実(DOE[参考資料 4]、IRENA[参考資料 1]、Nel[参考資料 7])。DOE と IRENA の値は同じ尺度ではなく、Nel は製品資料です。この表から優劣はつけられません。IRENA の表は Table 1 と Table 6 で圧力の上限の記載が違います(70 bar 未満と30 bar 未満)。
- どの階層か:単セル(実験室)/スタック/システム(整流器・水精製・冷却を含む)。Nel のスタックとシステムの差(53.2 → 56.77 kWh/kg)が、その一例です(約6.7%増、本稿の計算)
- どの水準か:実験室(Kim らの2600時間)/目標(DOE)/整理値(IRENA)/製品の公称(Nel)
- どの時点か:運転開始時の値か、寿命末期か。DOE は寿命末期を電圧10%上昇と定義
- どの条件か:温度、圧力、電流密度、水質、負荷(一定か変動か)
- 発熱量の基準:LHV か HHV か。1.48 V は HHV 基準で、LHV 基準の効率は同じ電圧でも約15ポイント低く見えます(84.6%、本稿の計算)
9. 劣化は何が起きるのか
| 劣化の場所 | 起きること | 出所と条件 |
|---|---|---|
| 膜 | 化学的な攻撃で、高分子の鎖が切れ、官能基(スルホン酸基)が失われる。薄くなる | Babic ら(レビュー)。差圧が大きいと機械的な安定性が下がり、ガスの透過が増える(IRENA) |
| アノード触媒 | イリジウム酸化物が、温度・電圧・電極構造によっては溶け出す | IRENA。対策のひとつは触媒の増量 |
| アノードのチタン | 酸化皮膜が育ち、電気伝導が落ちて性能が下がる | Babic ら。白金コーティングで酸化を抑える(IRENA) |
| 供給水 | 鉄・銅・クロム・ナトリウムなどに敏感。水質の悪さはスタックの故障の主要な理由のひとつ。部分負荷では劣化が目立つ | IRENA(ASTM タイプ II 相当の水を前提) |
| 負荷変動 | 再生可能エネルギーとつなぐと電圧が変動し、腐食を促す可能性が理屈上はある。ただし電解槽での証拠は「ほとんどない」 | IRENA(2020年時点の記述) |
| 安定化の例 | TiO₂ で酸化イリジウムを被覆すると、Ir 0.4 mg/cm²・3 A/cm²でも電圧の劣化が小さかった | Kim ら(2026)、実験室の単セル、80 ℃ |
すべて事実(IRENA[参考資料 1]、Babic ら[参考資料 2]、Kim ら[参考資料 5])。長期運転の実機での劣化率の公表値は、本稿の調査範囲では一次情報から確認できなかったため記載していません。
劣化の速さは、場所ごとに別々の条件に左右されます。IRENA は、膜については差圧、アノードについては温度・電圧・電極構造、供給水については不純物、と別々に挙げています。 このため、「寿命5万時間」のような一つの数字は、どの劣化が支配的か、どの条件で測ったかを添えないと意味を持ちません(本記事による解説)。
10. 評価と標準 ― どう測り、どう比べるか
- 安全の国際規格:ISO 22734:2019「水を電気分解する水素発生装置―産業用・商業用・家庭用」は廃止され、後継のISO 22734-1:2025(第1部:安全)が2025年7月に発行されています事実(ISO、2026年10月5日確認)。旧版の適用範囲は、塩基性水溶液・酸性水溶液・PEM・AEM のイオン輸送媒体を持つ装置でした。本文は有料のため、題名と適用範囲の記載にとどめます
- 系統サービスの試験:ISO/WD TS 22734-2「第2部:電力系統サービスのための試験指針」が、アルカリ形とPEM形を主な対象に策定中です(ワーキングドラフトの段階)未確定/将来(ISO、2026年10月5日確認)
- 性能・耐久の試験方法:欧州委員会の共同研究センター(JRC)は、低温水電解(PEM、AEM、アルカリ)の調和された運転条件、試験プロトコル、手順を示した報告書(EUR 30752 EN、2021年)を出しています事実。異なる研究室・メーカーの結果を比べるための物差しとして作られています
触媒の論文は、回転ディスク電極(RDE)や、小さな単セルで、純水や硫酸の中で測ることが多く、実機の運転とは条件が違います。 Bernt らが「RDEは活性、MEAレベルの加速劣化試験は安定性」と使い分けを求めるのは、そのためです事実。 材料の評価結果を製品の寿命に読み替える前に、どの試験階層の、どの条件の結果かを確かめる――JRC の調和プロトコルは、この「条件をそろえる」ための仕組みです(本記事による解説)。
11. 課題・限界
(1) 実機の長期劣化率の公表値は確認できなかった
本稿が参照した IRENA は、MW級PEMスタックの信頼性と寿命は「まだ検証が必要」としています事実。 長期運転試験の論文はありますが、本稿の調査範囲では、商用システムの劣化率を一次情報で確認できなかったため、数値を載せていません。
(2) 膜メーカーの製品資料は確認できなかった
膜(Nafion)の製品資料はメーカーのサイトが自動取得を受け付けなかったため、確認できませんでした。 膜の厚さは、査読論文(Babic ら、Kim ら)に記載された範囲にとどめています。
(3) PFAS 制限案での電解槽の扱いは確定していない
EU の制限案のうち、電解槽の適用除外は五か国当局の案(13.5年)です未確定/将来。 RAC・SEAC の意見の個別の扱い、欧州委員会の提案、加盟国の投票の結果は、本稿の時点で確認できていません。
(4) 扱っていないこと
他の方式との比較(コスト、規模、導入量)、PEM 以外の膜(炭化水素系など)、ルテニウム系などイリジウムの代替触媒の研究、中国などの導入状況、水素の取扱いは扱っていません。
- PEM水電解は、約0.2 mmのPFSA膜で、1〜3 A/cm²の運転ができる方式です事実
- セル電圧に26.59を掛けるとkWh/kgになります(電流効率100%)。1.8 Vは約47.9 kWh/kgです本稿の計算
- イリジウムは1 GWあたり、担持量2 mg/cm²・3 W/cm²の想定で670 kg。世界の一次供給約7 tの約9.6%です本稿の計算
- 貴金属はIrとPtだけではありません。アノード側のチタン部材にも白金・金のコーティングが使われます事実
- 担持量を減らす、電流密度を上げる、寿命を保つは互いに引っ張り合います。数字は条件・水準・階層とセットで読みます
- PFAS 制限案での電解槽(13.5年の猶予案)は、提案の段階です未確定/将来
12. 用語集
- PEM
- proton exchange membrane(プロトン交換膜)。プロトンを通す固体高分子の膜。
- PFSA
- パーフルオロスルホン酸。フッ素系の主鎖にスルホン酸基を持つ高分子。Nafion が代表例。
- MEA
- 膜電極接合体。膜の両側に触媒層を付けたもの。
- PTL
- 多孔質輸送層。水とガスを通し、電気をつなぐ多孔質の板。
- バイポーラ板
- 隣り合うセルをつなぎ、流路をもつ板。
- OER/HER
- 酸素発生反応/水素発生反応。
- 熱中立電圧
- 外部から熱を足さず、電気だけで反応が進むときの電圧。1.48 V(高位発熱量基準)。
- LHV/HHV
- 低位/高位発熱量。水素1 kgで約33.3/約39.4 kWh。
- クロスオーバー
- 膜を通って水素や酸素が反対側に抜けること。
- mV/kh
- 1000時間あたりのセル電圧の上昇量。劣化率の単位。
- g/kW
- 出力1 kWあたりの貴金属の量。担持量を出力密度で割ったもの。
- RDE
- 回転ディスク電極。触媒の活性を調べる小規模な測定法。
13. 参考資料(一次情報)
- IRENA「Green hydrogen cost reduction: Scaling up electrolysers to meet the 1.5°C climate goal」2020年12月(PDF) — irena.org
- Babic U ほか「Critical Review—Identifying Critical Gaps for Polymer Electrolyte Water Electrolysis Development」J. Electrochem. Soc. 164(4), F387–F399(2017年、査読論文) — doi.org/10.1149/2.1441704jes
- Minke C ほか「Is iridium demand a potential bottleneck in the realization of large-scale PEM water electrolysis?」Int. J. Hydrogen Energy 46(46), 23581–23590(2021年、査読論文) — doi.org/10.1016/j.ijhydene.2021.04.174
- 米国エネルギー省(DOE)「Technical Targets for Proton Exchange Membrane Electrolysis」(Hydrogen and Fuel Cell Technologies Office、2026年10月5日閲覧) — energy.gov
- Kim ET ほか「Dual-interface stabilization of low-iridium anodes for durable proton exchange membrane water electrolysis」Nature Communications 17, 6818(2026年、査読論文) — doi.org/10.1038/s41467-026-75113-6
- Lettenmeier P ほか「Low-Cost and Durable Bipolar Plates for Proton Exchange Membrane Electrolyzers」Scientific Reports 7, 44035(2017年、査読論文) — doi.org/10.1038/srep44035
- Nel Hydrogen「MC Series Modular Plants」製品資料 PD 0600 0145 Rev A(2025年10月、PDF) — nelhydrogen.com
- KemI(スウェーデン化学物質庁)ほか五か国当局「What you need to know about the updated PFAS restriction dossier」2025年10月23日更新(PDF) — kemi.se
- ISO「ISO 22734-1:2025 Hydrogen generators using water electrolysis — Part 1: Safety」 — iso.org
- ISO「ISO 22734:2019 Hydrogen generators using water electrolysis — Industrial, commercial, and residential applications」(廃止) — iso.org
- 欧州委員会 JRC Tsotridis G, Pilenga A「EU harmonised protocols for testing of low temperature water electrolysers」EUR 30752 EN(2021年) — publications.jrc.ec.europa.eu
- IPA(国際白金族金属協会)「PGM Fact Sheet: Iridium」SFA (Oxford) 作成、2026年5月(PDF) — ipa-news.com
- Johnson Matthey「Johnson Matthey responds to new report on critical material supply for clean hydrogen」2022年12月14日 — matthey.com
- Bernt M ほか「Current Challenges in Catalyst Development for PEM Water Electrolyzers」Chem. Ing. Tech. 92(1–2), 31–39(2020年、査読論文) — doi.org/10.1002/cite.201900101
14. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| PEM電解槽は厚さ約0.2 mm の PFSA 膜を使うこと。PFSA が「ポリテトラフルオロエチレンをスルホン化したフッ素系共重合体」と注記されていること。運転温度が50〜80 ℃、圧力が70 bar未満であること。構成部材(PFSA膜、イリジウム酸化物、カーボン担持白金、白金コートの焼結多孔質チタン、白金コートのチタンおよび金コートのチタンのバイポーラ板、PTFE・PSU・ETFE の枠とシール)。チタン系材料・貴金属触媒・保護コーティングが必要でスタックがアルカリ形より高価であること。アノードの Ir は温度・電圧・電極構造で溶ける可能性があり、対策の例が5 mg/cm²超(2.5 g/kW)の触媒と1 mm超の多孔質チタン、1 mg/cm²超(0.5 g/kW)の白金コートであること。穏やかな条件(50〜60 ℃、10 bar、2 A/cm²)と次世代条件(80 ℃、70 bar、5 A/cm²)。供給水の鉄・銅・クロム・ナトリウム等への敏感さと、水質が故障の主要な理由のひとつであること。差圧で膜の機械的安定性が下がりガス透過が増えること、抜けた水素を水に戻す触媒があること。負荷変動の腐食は電解槽では証拠がほとんどないこと。MW級スタックの信頼性・寿命は検証が必要であること。2020年の整理値(公称電流密度1〜2 A/cm²、電圧1.4〜2.5 V、スタック47〜66・システム50〜83 kWh/kg、寿命5万〜8万時間、負荷範囲5〜120%) | IRENA(2020年12月)[参考資料 1]https://www.irena.org/-/media/Files/IRENA/Agency/Publication/2020/Dec/IRENA_Green_hydrogen_cost_2020.pdf | 事実 |
| 薄い高分子電解質により1〜3 A/cm²と高い差圧での運転ができること。熱中立電圧が1.48 V。最新鋭のPEWEセルの膜が比較的厚い(5〜7 mil)PFSA膜、例えば Nafion 115・117であること。薄い膜は電流密度を上げスタック投資を減らすがクロスオーバーが課題になること。電流密度の下限が「酸素中の水素2%」で決まること。アノード部材の材料選択がチタン系多孔質材料に限られるのが普通であること。TiN・Pt・Au のコーティングでステンレスが使える可能性があること。チタン酸化皮膜で電気伝導が下がること。IrO₂が選ばれる材料でありRuO₂は溶出が速いこと。「4 W/cm²・Ir 2 mg/cm² で 500 kg Ir/GW」 | Babic ら(2017年、査読論文)[参考資料 2]https://doi.org/10.1149/2.1441704jes | 事実 |
| イリジウム担持量が現状で約1〜2 mg/cm²であること。2 mg/cm²・3 W/cm²で0.67 g/kW、1 mg/cm²・3 W/cm²で0.33 g/kW、0.4 mg/cm²・8 W/cm²で0.05 g/kW という三つの想定(「2020年の状況」「2020年の目標」「2035年の目標」)。将来の需要を満たすには担持量の大幅な削減と90%以上の回収率のリサイクルが前提であること | Minke ら(2021年、査読論文)[参考資料 3]https://doi.org/10.1016/j.ijhydene.2021.04.174 | 事実 |
| DOE の表の全項目(白金族金属の合計 3.0/0.5/0.125 mg/cm² と 0.8/0.1/0.03 g/kW、2.0 A/cm² @ 1.9 V/3.0 A/cm² @ 1.8 V/3.0 A/cm² @ 1.6 V、スタック 51/48/43 kWh/kg(65/69/77% LHV)、システム 55/51/46 kWh/kg、劣化率 4.8/2.3/2.0 mV/kh、寿命 4万/8万/8万時間)と、目標を同時に満たすこと・電力価格0.03 $/kWh 以下・稼働率90%超・寿命末期が電圧10%上昇という条件 | 米国 DOE(2026年10月5日閲覧)[参考資料 4]https://www.energy.gov/eere/fuelcells/technical-targets-proton-exchange-membrane-electrolysis | 事実 |
| Ir 0.4 mg/cm²・3.0 A/cm²・80 ℃の単セルで、2600時間、劣化がほとんどなかったこと(運転と休止を繰り返す試験)。被覆しない IrO₂ が1000時間にわたり31.5 mV/kh で劣化したこと。MEA に Nafion N115(127 µm、Chemours)と Gore M275.80(80 µm)が使われたこと | Kim ら(2026年、Nature Communications)[参考資料 5]https://doi.org/10.1038/s41467-026-75113-6 | 事実 |
| チタン系部材(バイポーラ板など)が設備費への寄与が最も大きいこと。ステンレス鋼に Nb(PVD)と Ti(真空プラズマ溶射、50 µm)を被覆した板で、Nb が50分の1の薄さで接触抵抗をほぼ1桁下げ、アノード環境で1000時間超耐えたこと | Lettenmeier ら(2017年、Scientific Reports)[参考資料 6]https://doi.org/10.1038/srep44035 | 事実 |
| Nel MC シリーズのスタックの消費電力が53.2 kWh/kg(4.7 kWh/Nm³)、システムが56.77 kWh/kg(5.04 kWh/Nm³)(定格100%)、供給圧力30 barg、出力範囲20〜100%、起動8分未満、水素純度99.95%(ISO 14687:2019 の Type I/II Grade D と記載)であること | Nel Hydrogen 製品資料(メーカー公称値、2025年10月版)[参考資料 7]https://nelhydrogen.com/wp-content/uploads/2025/10/MC-Series-Modular-Plants-PD-0600-0145-Rev-A-1.pdf | 事実 |
| EU の PFAS 制限案の更新版背景文書で、「燃料電池と電解槽」(6.k)に発効後13.5年の猶予が提案され、旧版(2023年)の PEM 燃料電池から範囲が広げられたこと | KemI ほか五か国当局の概要資料(2025年10月23日更新)。提案者の案であり、採択・施行はされていない[参考資料 8]https://www.kemi.se/download/18.64e3bd9619a0f45982cfff/1761213262828/What%20you%20need%20to%20know%20about%20the%20updated%20PFAS%20restriction%20dossier-Updated-2025-10-23.pdf | 未確定/将来 |
| ISO 22734:2019 が廃止され、ISO 22734-1:2025(第1部:安全、2025年7月)に置き換わったこと。旧版の適用範囲(塩基性水溶液・酸性水溶液・PEM・AEM) | ISO のページ(2026年10月5日確認)[参考資料 9]https://www.iso.org/standard/82766.html [参考資料 10]https://www.iso.org/standard/69212.html | 事実 |
| ISO/WD TS 22734-2(電力系統サービスの試験指針)が策定中であること | ISO の検索結果ページ(2026年10月5日確認、ワーキングドラフトの段階)。成立するかは未確定[参考資料 9]https://www.iso.org/standard/82766.html | 未確定/将来 |
| JRC が低温水電解(PEM・AEM・アルカリ)の調和された運転条件・試験プロトコル・手順の報告書(EUR 30752 EN、2021年)を出していること | JRC 出版物リポジトリ[参考資料 11]https://publications.jrc.ec.europa.eu/repository/handle/JRC122565 | 事実 |
| 2025年の世界のイリジウムの一次生産が約7トン、南アフリカが約80%、オープンループのリサイクルがほぼないこと | IPA の資料(SFA Oxford 作成、2026年5月)[参考資料 12]https://ipa-news.com/assets/pdfs/factsheets/2026-05-ipa-iridium-factsheet.pdf | 事実 |
| Johnson Matthey が、イリジウム年1.5トン(一次供給の約20%)で2030年までに100 GW超の設備を実現できるとしたこと | Johnson Matthey の声明(2022年12月14日)。同社の見解であり、前提は確認できていない[参考資料 13]https://matthey.com/johnson-matthey-responds-to-new-report-on-critical-material-supply-for-clean-hydrogen | 未確定/将来 |
| イリジウム量の削減には充填密度の低い高度に構造化した触媒が必要であること。活性は回転ディスク電極、安定性はMEAレベルの加速劣化試験で評価する必要があること | Bernt ら(2020年、査読論文の要旨)[参考資料 14]https://doi.org/10.1002/cite.201900101 | 事実 |
| セル電圧×26.59=kWh/kg の換算(水素1 kg=496 mol、電子2個、ファラデー定数96,485 C/mol、電流効率100%)、1.23 V→32.7、1.48 V→39.4、1.6 V→42.5、1.8 V→47.9、1.9 V→50.5、2.0 V→53.2 kWh/kg。LHV 33.3 kWh/kgを基準にした電圧効率(1.8 V で69.6% など)。Nel のスタック53.2 kWh/kg から平均約2.0 V・LHV効率約62.6%への逆算。システムとスタックの差(56.77÷53.2=約6.7%増)。1.48 V の LHV 効率84.6% | 本稿の計算。電流効率100%、LHV 33.3 kWh/kgは本稿が置いた前提で、スタックの値でありシステムの値ではない。DOE の表の値と整合することを確認した | 本稿の計算 |
| g/kW=担持量÷出力密度。0.67/0.33/0.05 g/kW から 1 GW あたり670/330/50 kg、約7 tに対する9.6%/4.7%/0.7%、年10 GW設置なら6.7/3.3/0.5 t(96%/47%/7%)。DOE の mg/cm² を電流密度×電圧で割った g/kW(0.79/0.093/0.026)が DOE の g/kW と整合すること | 本稿の計算。三つの組は Minke らの想定で、実在製品の値ではない。7 tは全用途の一次供給で、PEMだけの枠ではなく、リサイクル・他の貴金属・設備の交換は考慮していない | 本稿の計算 |
| 実機(商用システム)の長期劣化率、Nafion の製品資料(メーカー)、PFAS 制限案への RAC・SEAC の意見での電解槽の個別の扱い | 本稿の調査範囲では一次情報で確認できなかったため記載していない | 解説 |
| 反応式と可逆電圧1.23 V。膜の厚さが運転範囲の下限に効くという理由づけ。三つ巴(担持量・電流密度・寿命)の整理。Ir だけでなく部材の貴金属も数える必要があるという読み取り。数字を見るときの五つの確認 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない | 解説 |
| 図2・図3・図4・図6が実際の設計図・測定図ではなく説明のための作図であること。図1と図5がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月6日/出典は一次情報(国際機関・政府機関・規格団体・メーカーの公式資料、査読論文)に限定しています。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 商用システムの長期劣化率、膜メーカーの製品資料、PFAS 制限案での電解槽の個別の扱いは、確認できなかったため記載していません。 第8章の表は、出所・水準・階層の違う数字を並べたもので、優劣を示すものではありません。 図は説明用の概念図・作図です。図2・図3・図4・図6はベクター作図、図1と図5はAI生成イメージであり、いずれも実際の断面写真・装置・製品を示すものではありません。