TECHNOLOGY EXPLAINER
CCS(二酸化炭素の回収・輸送・貯留)
― ブルー水素の「回収率」は、何の何割なのか
天然ガスなどから水素を作ると、二酸化炭素(CO2)が出ます。そのCO2を回収し、運び、地下に貯めるのが CCS で、これを組み合わせた水素が「ブルー水素」と呼ばれます。 ただし、「90%回収」と言っても、何の90%かで意味は大きく変わります。 この記事は、回収(化学吸収など)・輸送・貯留の流れ、回収率の定義、材料(吸収液・配管・セメント)の劣化、規制を、公的な資料を一次情報として素材技術者の目線で整理した解説です。 法務・投資の助言、設備の設計・運転の助言ではありません。

- CCS とは何か(3行でつかむ)
- 流れの全体像 ― 回収・輸送・貯留・監視・閉鎖
- 回収 ― 化学吸収と、水素製造での CO2の出どころ
- 本稿の計算:「回収率」は何を分母にするか
- 素材技術者の視点①:吸収液は劣化し、設備を腐食させる
- 輸送 ― パイプライン・船と、材料の論点
- 貯留 ― 地層、監視、増進回収(EOR)との違い
- 素材技術者の視点②:井戸のセメントと界面
- 規制・制度 ― EU、日本、米国、規格
- 本稿の計算:45Q は水素1 kgあたりいくらか
- 課題と、本稿で確認できなかったこと
- 用語集/参考資料/出典対応表
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標・検討中の事項で、実績が確認できていないもの
このほか、構造の整理や読み取りは「解説」として区別し、根拠の弱い見立ては推測と明記しています。
制度は提案・採択(成立)・施行(適用開始)を区別し、確認日は2026年10月8日です。
本記事は原理・材料・制度の解説です。CO2の回収・輸送・貯留の設備は、高圧ガス保安法や、二酸化炭素の貯留事業に関する法律などの法令・規格の対象で、設計・施工・運転・保安の個別の助言ではありません。 制度は改正されるため、実際の判断には原文と最新の状況を確認してください。
1. CCS とは何か(3行でつかむ)
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は、排ガスやプロセスガスから CO2を分離して回収し(Capture)、圧縮して運び(Transport)、地下の地層に貯める(Storage)技術の総称です。 IPCC の特別報告書(2005年)は、CCS の対象となる大規模な排出源に、化石燃料由来の水素製造設備を含めています事実[参考資料3]。
- 水素との関係:天然ガスや石炭から水素を作るときに出る CO2を回収・貯留する水素を、一般に「ブルー水素」と呼びます(俗称。本シリーズ『水素の色分けと炭素強度』編)。
- 現状の規模:IEA によれば、2024年の水素の80%超は石炭・石油・天然ガスから作られ、CCUS を備えるのはそのうち1%未満(世界で約16施設、多くは北米)です。累計の回収能力は約12 Mtpa(年間1,200万トン)の CO2ですが、専用の貯留に注入されているのは約1 Mtpa(カナダの Quest)のみで、残りは石油の増進回収(EOR)などに使われています事実[参考資料1]。
- この記事の守備範囲:回収した CO2の「利用」(CCU)は扱いません。
「回収率90%」は、分母を言わないと意味がありません。 既存の水素設備の改造では、濃度の高いプロセスの CO2だけを回収する「部分回収」が中心で、IEA は、2024年末に運転中の施設はすべて部分回収で、そのため水素の0.9〜1.2 Mtpa のうち低排出と見なせるのは約0.6 Mtpaと推計しています事実[参考資料1]。
2. 流れの全体像 ― 回収・輸送・貯留・監視・閉鎖

数値・反応・材料を詳しく示す元のSVG模式図を見る
IPCC の特別報告書は、CCS による排出削減量は、回収した CO2の割合のほか、回収・輸送・貯留に必要な追加エネルギーによる CO2の増加、輸送中の漏れ、貯留層での長期の保持率で決まると述べています事実[参考資料3]。
3. 回収 ― 化学吸収と、水素製造での CO2の出どころ
(1) 回収の方式
IPCC の報告書は、回収の系を、燃焼後回収(排ガスから分離)、燃焼前回収(水素製造や肥料製造を含む。燃料をガス化・改質してから分離)、酸素燃焼などに分けています[参考資料3]。 燃焼後回収で最も成熟した方法が、アルカノールアミンの水溶液による化学吸収です。Kittel と Gonzalez のレビューは、この方法が大規模な排出源に適し、最も成熟した技術の一つで、天然ガスの酸性ガス除去などで類似の用途が既にあると述べています事実[参考資料14]。 吸収塔で CO2を吸収液に溶かし、再生塔で熱をかけて CO2を放出させ、吸収液は循環させます(本記事による一般的な説明)。
(2) 水素製造で、CO2はどこから出るのか
天然ガスの水蒸気改質では、プロセスガス(改質反応の生成物。CO2の濃度が高い)と、改質炉の燃焼排ガス(燃料を燃やした熱源から。CO2の濃度が低い)の、2つの流れで CO2が出ます。 IEA は、2024年に運転中の施設はすべてプロセス排出(濃度が高い)だけを回収する部分回収であると述べています[参考資料1]。 また、自己熱改質(ATR)は単一の濃縮した CO2の流れを作るため、高い回収率が可能で、ATR に CCUS を組み合わせた最初のプラントが米国で建設中(2026年の運転開始を見込む)、カナダの2つ目の案件は FID 済みだが2028年に遅れている、としています事実[参考資料1]。
4. 本稿の計算:「回収率」は何を分母にするか
「回収率」という言葉は、少なくとも三つの意味で使われます。資料を読むときは、どれを指すかを確認する必要があります。
| 呼び方(本稿の整理) | 分母 | 資料での例 |
|---|---|---|
| 回収プラントの回収効率 | 回収装置に導入したガス中の CO2 | IPCC:「現在の技術は、回収プラントで処理した CO2の約85〜95%を回収する」[参考資料3] |
| 施設全体の回収率 | 施設の全排出量(回収しなかった流れを含む) | IEA:低排出水素の量の推計で、ガス由来は40〜60%、石炭・石油由来は90〜95%の全体の回収率を仮定[参考資料1]。EU:算定式に実際の回収率を考慮[参考資料4] |
| ライフサイクルでの純削減 | CCS なしの基準の排出量(追加エネルギーや漏れを含む) | IPCC:CCS 付き発電所は、追加エネルギーが10〜40%必要で、貯留が確実なら約80〜90%の削減(発電所の例)[参考資料3] |
IPCC の数値は2005年の特別報告書(発電所が主な対象)で、水素製造の値ではありません。IEA の「40〜60%」は、2024年の実施設の構成にもとづく推計の仮定です。
『水素の色分けと炭素強度』編と同じ置き方で、天然ガス由来の水素の直接排出を D = 9 kg-CO2e/kg-H2、上流・中流の排出を U とします(IEA の10〜14 kg と上流1〜5 kg からの逆算[参考資料2])。 回収後の炭素強度は CI = (1 − η) × 9 + U(η は直接排出に対する全体の回収率)です本稿の計算。
- 反応由来の CO2:CH4 + 2H2O → CO2 + 4H2 から、水素 1 kg(約496 mol)に CO2が約124 mol = 約5.46 kg。これは直接排出 9 kg の 約61%です(5.46 ÷ 9 = 0.607)。残りの約3.54 kg は、改質の熱源の燃焼などに由来すると読めます(解説)。
- プロセスガスだけを回収する場合:回収効率が90%でも、全体の回収率は 0.9 × 0.607 = 約55%。IEA が「原料由来の CO2の回収(回収率約60%)」を一つの類型として挙げていることと符合します[参考資料2]。
- 両方を回収する場合:回収効率90%なら全体の回収率も 90%、95%なら95%。
| 場合 | 全体の回収率 η | CI(U = 1 kg) | CI(U = 3 kg) |
|---|---|---|---|
| 回収なし | 0% | 10.0 kg | 12.0 kg |
| プロセスガスだけ(効率90%) | 約55% | 約5.1 kg | 約7.1 kg |
| 両方(効率90%) | 90% | 1.9 kg | 3.9 kg |
| 両方(効率95%) | 95% | 1.45 kg | 3.45 kg |
前提と限界:D = 9 kg は IEA の範囲からの逆算で、個別プラントの値ではありません。回収・圧縮・輸送・圧入のエネルギーと排出(EU の式の eCO2-c、eCO2-t、eCO2-i)は別に差し引く必要があります[参考資料4]。IEA の範囲(回収約60%で 5〜8 kg、90%超で 0.8〜6 kg)と、上の数字は桁が合っています[参考資料2]。日本・EU の閾値 3.4 kg に対しては、上流が3 kg なら 95% の回収でも届かないことが分かります(本記事による解説)。
5. 素材技術者の視点①:吸収液は劣化し、設備を腐食させる
- Gouedard らのレビュー(2012年)は、アミンの劣化を酸化劣化と熱劣化の二つに分け、アミンは酸素・CO2・NOx・SO2・熱のもとで劣化して、溶剤の損失、設備の腐食、揮発性の劣化生成物を生むと整理しています事実[参考資料15]。
- Kittel と Gonzalez のレビュー(2014年)は、アルカノールアミンによる燃焼後回収の運転で腐食の管理が大きな課題であるとして、天然ガスの酸性ガス除去の数十年の経験、燃焼後回収に特有の事情、腐食の緩和策、新しい溶剤の研究を整理し、さらにCO2の輸送と貯留に向けた CO2の品質と不純物濃度への推奨も述べています事実[参考資料14]。
ここから素材技術者が読み取れるのは、次の点です(本記事による解説)。
- 劣化の原因は、「ガスの組成」に由来する。酸素、NOx、SO2は、燃焼排ガスに含まれる成分です。一方、水素製造のプロセスガス(改質後のガス)は高圧・高濃度の CO2で、排ガスとは組成が違います。推測:そのため吸収液の劣化の様相も異なる可能性がありますが、水素製造のプロセスガスでの吸収液の劣化の比較は、本稿では確認できませんでした。
- 吸収液の「損失」は運転費でもあり、劣化生成物は腐食と排出の問題にもなる。溶剤を補充し続ける必要があり、揮発性の劣化生成物は大気への排出の評価対象になりえます。
- 材料の選定は、吸収液・温度・CO2の負荷(吸収液中の CO2量)で変わる。この条件の違いが腐食の程度を左右するため、レビューは腐食の管理に特化した節を設けています[参考資料14]。
6. 輸送 ― パイプライン・船と、材料の論点
- 方式の選択(IPCC、2005年):大量の CO2を約1,000 km までの距離で運ぶにはパイプラインが好まれ、年間数百万トン未満の量や、海を越える長距離では船が経済的に有利なことがある、としています。乾いた CO2は、不純物を含んでいても配管を腐食させず、水分を含む場合は腐食を防ぐために水分を除去する、と述べています事実[参考資料3]。
- 規格(ISO 27913:2024、第2版、2024年10月発行):CO2流を回収地点から貯留施設まで運ぶ剛性の金属パイプライン(陸上・海底、既存管の転用を含む)の要件と推奨事項を定め、気体と高密度相の輸送、CO2流の品質保証、異なる排出源からの流れの合流を含みます。船・鉄道・道路での輸送は対象外です事実[参考資料12]。本文は有料のため、本稿は題名と適用範囲の記載にとどめ、CO2流の組成の許容値などは確認していません。
- 水分と不純物:CO2は水があると炭酸になり、鋼を腐食させる(一般的な説明)。IPCC が「水分は除去する」とするのはこのためです[参考資料3]。Kairy ら(2023年)のレビュー論文は、不純物を含む高密度相の CO2中での配管鋼の腐食の試験方法を批判的に整理しています(題名・主題のみ確認)[参考資料19]。
- 高密度相での破壊:高圧の CO2配管が破断したときの延性き裂の伝ぱ(running ductile fracture)は、鋼材の靭性と減圧の挙動で決まる課題として、高密度相・超臨界相の配管で確率的な評価の研究が進んでいます(Zhou ら、2024年。題名・主題のみ確認)[参考資料18]。
- 混ざる不純物:異なる排出源の流れが合流する場合の品質保証は、ISO 27913 の対象です[参考資料12]。水素製造由来の流れに、水素・一酸化炭素・メタンなどが残るかどうかは、本稿では確認できませんでした。
- シール材:高圧ガスが浸透したゴムは、急な減圧でふくれや割れ(急速ガス減圧)を起こしうる、という問題が、一般にエラストマー製シールで知られています。CO2配管での具体的な評価は、本稿では確認できませんでした(推測)。本シリーズ『ポリウレタンとエラストマー』『シリコーン』編もご覧ください。
7. 貯留 ― 地層、監視、増進回収(EOR)との違い
- 地層の種類:IPCC は、地中貯留の対象として油田・ガス田、採掘不能な炭層、深部の塩水層を挙げています[参考資料3]。日本の法律は、貯留層を「内部及び周辺の地層の温度、圧力その他の性質が、CO2の安定的な貯蔵に適している地下の地層」と定義しています[参考資料7]。
- 保持率(IPCC、2005年):適切に選ばれ、管理された地中の貯留層では、100年間で99%超が保持される可能性が「非常に高い」(very likely)、1,000年間でも99%超の可能性が「高い」(likely)としています事実[参考資料3]。これは2005年時点の評価で、個々の案件の保証ではありません。
- 規格(ISO 27914:2026、第2版、2026年3月発行):CO2の損失のリスクを最小化する地中貯留の要件(候補地の調査、特性評価、設計・開発、運転、終了の準備)と、貯留層に貯蔵された CO2の正味の質量を定量する方法論を定めます。石油などの増進回収(EOR)のための注入、およびそれに伴う貯留は対象外で、EOR に伴う貯留は ISO 27916 が扱うとされています事実[参考資料13]。
- EOR との違い(IEA):EOR に注入された CO2の多くは、プロジェクトの期間にわたって貯留層に留まりうるが、恒久的に貯留されたことを確認するには追加の監視と検証が必要、としています[参考資料1]。実際、水素製造に付随して回収された CO2のうち、専用の貯留に注入されているのは約1 Mtpa(カナダの Quest)で、残りは EOR などに使われています[参考資料1]。Quest は2015年の運転開始以来、9 Mt 超の CO2を貯留したとされます[参考資料1]。
- EU の算定での扱い:委任規則(EU)2025/2359 は、CCS による削減に数えるのは、指令 2009/31/EC などで許可された地中貯留で、増進回収に使わないものに限ると定めます。漏えいは削減に数えず、繰り返し漏れる貯留層は注入を受け入れるべきでないと前文で述べています[参考資料4]。
8. 素材技術者の視点②:井戸のセメントと界面

CO2を貯める地層そのものよりも、そこへ通じる井戸が、漏れの経路になりうると考えられています。Carey らは、米国テキサス州の SACROC(CO2を用いた石油増進回収の油田)で、55年前に掘られ、30年間 CO2にさらされた井戸から回収したセメントを分析しました。
- 回収したセメントはミリダルシー(mD)の桁の透水性で、CO2の流れを妨げる能力を保っていたと報告されています事実[参考資料16]。
- ただし、頁岩との接触面から約1 cm 以内のセメントは強く炭酸化され、方解石・アラゴナイト・バテライトなどに変わり、橙色を呈していました[参考資料16・17]。炭酸化した領域と、あまり変質していないセメントのあいだには、シリカと炭酸塩の緻密な層がありました[参考資料16]。
- Carey の講演資料(米国環境保護庁のサイトに掲載)は、観察の要点として、CO2の移動の証拠が、セメントと上部の岩盤の界面、およびケーシング(鋼管)とセメントの界面で見られたこと、鋼管は腐食していなかった(ただし電気防食が施されていた)こと、セメントの割れが自己修復していたことを挙げています[参考資料17]。
- 同じ資料は、井戸が漏れる理由として、掘削時の地層の損傷、セメントの不完全な充填、セメントと地層・ケーシングの接着不良、セメントの収縮、機械的・熱的な応力による微小な環状の隙間と割れに加え、化学的な攻撃(鋼管の腐食、ポルトランドセメントの劣化、炭酸化、硫化水素、硫酸塩、酸)を挙げています[参考資料17]。
素材技術者の見方としては、セメントそのものの化学的な劣化(炭酸化など)と、界面の接着・応力による隙間を、分けて考える必要があります(本記事による解説)。SACROC の例は「セメントが30年で機能を失ったわけではない」ことを示す一方、変質が界面に集中することも示しています。1か所の井戸の事例であり、他の地層・温度・流体の組成には一般化できません。
9. 規制・制度 ― EU、日本、米国、規格
(1) EU
- 算定の扱い:委任規則(EU)2025/2359(2025年7月8日採択、官報 2025年11月21日)は、CCS による削減を許可された地中貯留に限り、漏えい検知・修復を保証する法令のもとで、増進回収に使わないものを数える、としています。前文は、現在、EU の排出量取引で排出枠の返納を免れるのは、指令 2009/31/EC により許可された貯留施設に貯留された排出に限る、と述べています事実[参考資料4]。指令の本文は、本稿では確認していません。
- 貯留量の目標:欧州委員会は、2030年までに年間少なくとも5,000万トンの回収 CO2を地下に貯留できるようにするという目標を示しています(気候行動総局のページ、2025年11月19日更新)未確定/将来[参考資料6]。目標の法的根拠は、本稿では確認していません。
(2) 日本
- 二酸化炭素の貯留事業に関する法律(令和6年法律第38号)は、2024年5月24日に公布されました。施行は段階的で、公布から3か月以内の政令で定める日(第1章・第4章など)、6か月以内の政令で定める日(試掘に関する部分)に続き、全体は「令和8年5月22日」と、令和8年政令第151号(施行期日を定める政令)が定めています事実[参考資料7・8]。したがって、本稿の確認日(2026年10月8日)には、この法律は全面的に施行済みです。
- 許可と計画:経済産業大臣は、貯留層がある区域を特定区域に指定し、事業者を募集・選定できます(第3条)。貯留事業者は、許可貯留区域ごとに貯留事業実施計画を定め、事業の開始前に認可を受けます。計画には、CO2の貯蔵方法、保安、漏えいを防止する措置、貯蔵状況の監視、貯蔵する CO2の特性などを記載し、基準に適合することが認可の条件です(第38条)。海域の貯留では、貯蔵する CO2が政令で定める基準に適合すること、および海域での貯蔵以外に適切な処分の方法がないことが必要です(同条第2項第5号)[参考資料7]。
- 輸送:導管による輸送(導管輸送事業)は、届出制で、保安の義務・工事計画・検査の規定があります(第78条以下)[参考資料7]。
- 閉鎖と管理の引継ぎ:貯留事業を廃止するには、閉鎖措置(坑口の閉塞など)の計画の認可を受け、完了後に確認を受け、CO2の貯蔵状況が安定しているなどの基準を満たして、廃止の許可を得る必要があります(第53条)。許可後、貯留権は独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に移転し、機構が通知貯留区域の管理を行います。その費用に充てるため、貯留事業者は機構に拠出金を納付します(第45条、第54〜55条)。漏えいの発生またはそのおそれがあるときは、機構が応急措置をとり報告します(第56条)[参考資料7]。
- 損害賠償:貯留層への CO2の貯蔵・試掘のための掘削、坑水の放流、または貯蔵した CO2の漏えいによって他人に損害を与えたときは、損害の発生時の貯留事業者等(機構に貯留権が移転済みの場合は、移転の時の貯留事業者)が賠償責任を負います(第124条)[参考資料7]。
- 国の目標:水素基本戦略(2023年6月)は、2030年までの CCS 事業開始に向けた事業環境の整備と、2030年までに年間貯留量600万〜1,200万トンの確保にめどをつけることを目指す、としています未確定/将来[参考資料9]。
(3) 米国
- 45Q(炭素酸化物の隔離の税額控除):現行条文の「適用される金額」は、2025〜2026年に1トンあたり17ドル(2027年以降はインフレ調整)で、賃金・見習い要件を満たす場合は5倍(85ドル)です。CO2を地中貯留する場合も、EOR に使って貯留する場合も、利用する場合も、同じ金額が適用される構造になっています。直接空気回収は 36ドル(5倍で180ドル)。期間は設備の運転開始から12年間、施設の建設の着工は2033年1月1日より前です。この構造は、2025年7月4日の法律(Pub. L. 119-21 §70522)による改正の結果です事実[参考資料10]。なお IEA の2025年の報告書は、貯留に85ドル、利用に60ドルと書いており[参考資料1]、条文の改正との関係は、本稿では確認できていません。
- 45V との関係:CO2の回収設備について45Qの控除が認められている施設の水素には、45V の控除は認められません(§45V(d)(2))[参考資料11]。IEA も「両者は併用できない」としています[参考資料1]。
(4) 規格
ISO/TC 265 が、ISO 27913:2024(パイプライン輸送)、ISO 27914:2026(地中貯留)を発行しています[参考資料12・13]。本文は有料のため、本稿は範囲の記載にとどめます。
10. 本稿の計算:45Q は水素1 kgあたりいくらか
IEA が示す前提(天然ガス由来の水素 1 Nm³ あたり CO2を 0.9105 kg 排出[参考資料1])と、45Q の 85ドル/t(賃金・見習い要件を満たす場合)で換算します本稿の計算。
- 水素1 kgあたりの CO2:水素の密度を 0.0899 kg/Nm³(標準状態、本稿の仮定)とすると、1 kg = 約11.1 Nm³。排出 = 0.9105 × 11.1 = 約10.1 kg-CO2/kg-H2(第4章の D + 上流 ≒ 10 kg と同じ桁)
- 全体の回収率90%:回収 = 約9.1 kg。× 0.085 ドル/kg = 約0.78ドル/kg-H2(IEA は「約0.8ドル」と記載[参考資料1])
- 全体の回収率55%(プロセスガスだけを回収):回収 = 約5.6 kg。× 0.085 = 約0.47ドル/kg-H2
- 比較:第4章の表で、両方を回収する(効率90%、U = 1 kg)と CI ≒ 1.9 kg で、45V では「1.5〜2.5 kg」の段階(25%)に当たり、5倍の要件を満たすと基準額 0.60 × 25% × 5 = 0.75ドル/kg(インフレ調整前)です。
前提と限界:水素の密度、IEA の排出量、回収率は仮定で、実際の施設の値ではありません。45Q と45V は併用できないため、上の2つはどちらか一方の目安です。金額はインフレ調整前で、45Q の「17ドル」は2026年までの値です。IEA の記載と条文の関係には上記の注意があります。排出の算定(45V)は上流のメタン排出を含み、IEA は上流・中流だけで平均約1.8 kg あるとしています[参考資料1]。
11. 課題と、本稿で確認できなかったこと
- 部分回収の限界:既存設備の改造は濃いプロセスガスだけの回収が中心で、全体の回収率は約55〜60%にとどまる[参考資料1・2]
- 上流メタン:回収率が高くても、上流・中流の排出(1〜5 kg)が閾値への到達を左右する[参考資料2]
- 貯留の実績の偏り:水素製造に付随する CO2のうち、専用貯留は約1 Mtpa で、EOR が大半[参考資料1]
- 材料・界面の長期の健全性:吸収液の劣化、配管の腐食、井戸のセメントと界面の変質は、条件依存で、一般化しにくい[参考資料14〜17]
(1) 水素製造向けの吸収液の劣化・腐食の比較は確認できなかった
本稿が参照したレビューは、主に燃焼排ガスからの回収を対象としています。水素製造のプロセスガスでの吸収液の劣化や機器の腐食の比較は、確認できませんでした。
(2) CO2流の組成の許容値と、配管の材料の仕様は確認できなかった
ISO 27913 の本文は有料で、CO2流の不純物の許容値、鋼材の靭性や被覆の仕様、シール材の選定は本稿では扱っていません。高密度相の腐食と延性き裂の研究は、題名・主題の確認にとどまります。
(3) EU の指令 2009/31/EC と、2030年の貯留目標の法的根拠は確認できなかった
EU の官報の閲覧が一時的に制限され、指令 2009/31/EC と、域内の貯留能力に関する規則の本文は読めませんでした。EU についての記述は、委任規則 2025/2359 の条文・前文と、欧州委員会のページにもとづきます。
(4) 日本の個別案件の許可状況、コスト、費用の実績は確認できなかった
貯留事業の許可・特定区域の指定の実績、貯留事業者、輸送・貯留のコスト、拠出金の額は、本稿では確認できませんでした。
(5) 回収した CO2の利用(CCU)、直接空気回収、海洋貯留は扱っていない
これらは本稿の範囲外です。IPCC の2005年の特別報告書の数値(回収効率、保持率、パイプラインの距離・量)は当時の評価であり、現在の実績とは異なる可能性があります。
- CCS は回収・圧縮・輸送・貯留・監視・閉鎖の連鎖で、排出削減は回収量ではなく純減で決まります事実
- 世界の水素の1%未満が CCUS 付きで、専用貯留は約1 Mtpa、残りは EOR 等です事実
- 回収率は分母で意味が変わります。プロセスガスだけを効率90%で回収しても、直接排出の約55%の削減にとどまります本稿の計算
- 上流3 kg なら、95%の回収でも日本・EU の閾値 3.4 kg に届きません本稿の計算
- 材料では、吸収液の劣化と腐食、配管の水分・不純物、井戸のセメントと界面が論点です事実
- 日本の貯留事業法は2026年5月22日に全面施行、米国の45Qは2025年7月に貯留・EOR・利用が同額の構造になり、45V とは併用できません事実
12. 用語集
- CCS/CCUS
- CO₂の回収・貯留/回収・利用・貯留。
- 化学吸収
- アミンなどの水溶液に CO₂を化学的に吸収させ、加熱して放出させる方式。
- プロセスガス
- 改質反応で得られるガス。CO₂の濃度が高い。
- 部分回収
- 排出の一部(例:濃度の高いプロセス排出)だけを回収すること。
- ATR(自己熱改質)
- 酸素を加えて改質する方式。単一の濃縮した CO₂流が得られ、高い回収率が可能とされる。
- 高密度相
- 高圧で液体に近い密度になった CO₂の状態。パイプライン輸送で使われる。
- EOR
- 石油増進回収。CO₂を油層に注入して回収量を増やす方法。
- 貯留層
- CO₂を安定的に貯蔵できる地下の地層(塩水層、枯渇した油田・ガス田など)。
- 45Q
- 米国の炭素酸化物の隔離の税額控除の条文。
- ケーシング
- 井戸の壁を保護する鋼管。周囲をセメントで固める。
- 透水性(mD)
- 岩石やセメントの流体の通しやすさ。ミリダルシー(mD)で表す。
- JOGMEC
- 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構。日本の貯留事業法で、閉鎖後の貯留区域の管理を担う。
13. 参考資料(一次情報)
- 国際エネルギー機関(IEA)"Global Hydrogen Review 2025"(改訂版 2025年10月) — iea.org
- 国際エネルギー機関(IEA)"Towards hydrogen definitions based on their emissions intensity"(2023年、G7 向け) — iea.org
- IPCC"Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage — Summary for Policymakers"(2005年、PDF) — ipcc.ch
- 欧州委員会委任規則(EU)2025/2359(低炭素燃料の削減率の算定方法)、2025年7月8日、官報 2025年11月21日 — eur-lex.europa.eu
- 欧州委員会委任規則(EU)2023/1185(RFNBO・再生利用炭素燃料の削減率の算定方法)、2023年2月10日、官報 2023年6月20日 — eur-lex.europa.eu
- 欧州委員会 気候行動総局"Industrial Carbon Management"(2030年の貯留目標への言及。2025年11月19日更新) — climate.ec.europa.eu
- 日本国二酸化炭素の貯留事業に関する法律(令和6年法律第38号)、2024年5月24日公布(e-Gov 法令検索) — laws.e-gov.go.jp
- 日本国二酸化炭素の貯留事業に関する法律の施行期日を定める政令(令和8年政令第151号)(e-Gov 法令検索) — laws.e-gov.go.jp
- 再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議「水素基本戦略」令和5年6月6日(PDF) — meti.go.jp
- 米国26 U.S. Code § 45Q(炭素酸化物の隔離の控除)、Pub. L. 119-21 §70522(2025年7月4日)で改正 — law.cornell.edu
- 米国26 U.S. Code § 45V(クリーン水素製造の控除) — law.cornell.edu
- ISO"ISO 27913:2024 Carbon dioxide capture, transportation and geological storage — Pipeline transportation systems"(第2版、2024年10月。題名と範囲のみ。本文は有料) — committee.iso.org
- ISO"ISO 27914:2026 Carbon dioxide capture, transportation and storage — Geological storage"(第2版、2026年3月。題名と範囲のみ。本文は有料) — committee.iso.org
- Kittel, Gonzalez"Corrosion in CO2 Post-Combustion Capture with Alkanolamines – A Review", Oil & Gas Science and Technology – Rev. IFP Energies nouvelles 69, 915–929 (2014)(要旨を確認) — doi.org/10.2516/ogst/2013161
- Gouedard, Picq, Launay ら"Amine degradation in CO2 capture. I. A review", International Journal of Greenhouse Gas Control 10, 244–270 (2012)(要旨の内容を確認) — doi.org/10.1016/j.ijggc.2012.06.015
- Carey, Wigand, Chipera ら"Analysis and performance of oil well cement with 30 years of CO2 exposure from the SACROC Unit, West Texas, USA", International Journal of Greenhouse Gas Control 1, 75–85 (2007)(要旨の内容を確認) — doi.org/10.1016/s1750-5836(06)00004-1
- Carey(ロスアラモス国立研究所)"Well Integrity and Long-Term Well Performance Assessment (Insights from work on CO2 Sequestration)"(講演資料、米国環境保護庁のサイトに掲載、PDF) — epa.gov
- Zhou, Ghoraishi, Hu ら"Probabilistic assessments of running ductile fractures in dense-phase and supercritical CO2 pipelines", Process Safety and Environmental Protection 191, 2034–2043 (2024)(題名・主題のみ確認) — doi.org/10.1016/j.psep.2024.09.083
- Kairy, Zhou, Turnbull"Corrosion of pipeline steel in dense phase CO2 containing impurities: A critical review of test methodologies", Corrosion Science 214, 110986 (2023)(題名・主題のみ確認) — doi.org/10.1016/j.corsci.2023.110986
14. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| 2024年の水素の80%超は化石燃料由来で、CCUS を備えるのは1%未満(世界で約16施設)。累計の回収能力は約12 Mtpa で、専用貯留は約1 Mtpa(Quest)、残りは EOR 等。2024年末の施設はすべて部分回収(プロセス排出のみ)で、低排出と見なせる水素は約0.6 Mtpa(0.9〜1.2 Mtpa のうち)。ガス由来は全体の回収率40〜60%と仮定。ATR は単一の濃縮 CO2 流で高い回収率が可能、米国で建設中(2026年見込み)、カナダの案件は FID 済みで2028年に遅れ。Quest は2015年以来9 Mt 超を貯留。EOR は追加の監視が必要。45Q は貯留85ドル/t・利用60ドル/t(IEA の記載)、45V と併用不可、上流・中流の排出が平均約1.8 kg、0.9105 kg-CO2/Nm3 H2・回収率90%で約0.8ドル/kg H2 | IEA Global Hydrogen Review 2025[参考資料 1]https://www.iea.org/reports/global-hydrogen-review-2025 | 事実 |
| IEA(2023):天然ガス(回収なし)10〜14 kg-CO2e/kg-H2、上流・中流 1〜5 kg、回収率約60%で 5〜8 kg、90%超で 0.8〜6 kg(当時、実稼働なし)、一般的な許容上限を示さない、原料由来 CO2 の回収(回収率約60%)の類型 | IEA の報告書[参考資料 2]https://www.iea.org/reports/towards-hydrogen-definitions-based-on-their-emissions-intensity | 事実 |
| IPCC(2005):CCS の対象に化石燃料由来の水素製造設備を含む。回収系(燃焼後・燃焼前・酸素燃焼)。回収プラントで処理した CO2 の約85〜95%を回収。発電所では追加エネルギー10〜40%、純削減約80〜90%。削減量は回収率・追加エネルギー・漏れ・保持率で決まる。地中貯留の保持率は100年で99%超が「非常に高い」可能性、1,000年で「高い」可能性。貯留の対象(油田・ガス田、炭層、塩水層)。パイプラインは約1,000 km までが好まれ、船は少量・長距離で有利。乾いた CO2 は腐食性がなく、水分は除去 | IPCC SRCCS の政策決定者向け要約[参考資料 3]https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/03/srccs_summaryforpolicymakers-1.pdf | 事実 |
| 委任規則 2025/2359:算定式 E = e_i+e_p+e_td+e_u−e_ccs−e_ccu、e_ccs の項(回収・輸送・圧入の排出)、実際の回収率と上流メタンの考慮、許可された地中貯留(増進回収に使わない)のみ削減に算入、漏えいは削減に数えない、繰り返し漏れる貯留層は受け入れない旨の前文、指令 2009/31/EC により許可された貯留施設に限り排出枠の返納を免れる旨の前文。2025年7月8日採択、官報2025年11月21日 | 委任規則(EU)2025/2359[参考資料 4]https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_del/2025/2359/oj | 事実 |
| 委任規則 2023/1185:算定式に e_ccs(回収・地中貯留による削減)を含む | 委任規則(EU)2023/1185[参考資料 5]https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_del/2023/1185/oj | 事実 |
| 欧州委員会:2030年までに年間少なくとも5,000万トンの回収 CO2 を地下に貯留する目標への言及(2025年11月19日更新) | 気候行動総局のページ[参考資料 6]https://climate.ec.europa.eu/eu-action/carbon-capture-use-and-storage_en | 事実 |
| 二酸化炭素の貯留事業に関する法律:令和6年法律第38号、2024年5月24日公布。第2条(貯留層・貯留事業・試掘等の定義)、第3条(特定区域)、第38条(貯留事業実施計画の認可、海域の基準)、第45条(機構への拠出金)、第53〜56条(閉鎖措置、廃止の許可、貯留権の機構への移転、漏えい時の措置)、第66条以下(保安)、第78条以下(導管輸送事業)、第124条(損害賠償)、附則第1条(施行期日)・第2条(5年後の検討) | e-Gov 法令検索(法律)[参考資料 7]https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000038 | 事実 |
| 施行期日を定める政令(令和8年政令第151号):法律の施行期日を令和8年5月22日とする | e-Gov 法令検索(政令)[参考資料 8]https://laws.e-gov.go.jp/law/508CO0000000151 | 事実 |
| 水素基本戦略(令和5年6月6日):2030年までの CCS 事業開始に向けた環境整備、2030年までに年間貯留量600万〜1,200万トンの確保にめど。低炭素水素 3.4 kg-CO2e 以下(Well to Production Gate) | 水素基本戦略[参考資料 9]https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/suiso_seisaku/pdf/20230606_2.pdf | 事実 |
| 26 U.S.C. §45Q:適用金額 2025〜2026年に17ドル(2027年以降インフレ調整)、賃金・見習い要件で5倍、貯留・EOR・利用が同額の構造(Pub. L. 119-21 §70522 による改正)、直接空気回収36ドル、12年間、建設の着工は2033年1月1日より前 | 26 U.S.C. §45Q[参考資料 10]https://www.law.cornell.edu/uscode/text/26/45Q | 事実 |
| 26 U.S.C. §45V:4 kg 以下の段階(20%・25%・33.4%・100%)、基準額0.60ドル、5倍、§45V(d)(2) の45Q との併用不可 | 26 U.S.C. §45V[参考資料 11]https://www.law.cornell.edu/uscode/text/26/45V | 事実 |
| ISO 27913:2024(第2版、2024年10月):剛性金属パイプライン、気体・高密度相、CO2 流の品質保証、合流、船・鉄道・道路は対象外 | ISO の規格ページ[参考資料 12]https://committee.iso.org/standard/84840.html | 事実 |
| ISO 27914:2026(第2版、2026年3月):地中貯留の要件、正味の貯蔵質量の定量方法、EOR のための注入と EOR に伴う貯留は対象外(ISO 27916 が扱う) | ISO の規格ページ[参考資料 13]https://committee.iso.org/standard/84578.html | 事実 |
| Kittel と Gonzalez:アルカノールアミンによる燃焼後回収は大規模排出源に適し最も成熟した技術の一つ、腐食管理が大きな課題、天然ガス処理の経験、腐食の緩和策、CO2 の輸送・貯留に向けた品質と不純物の推奨 | Kittel と Gonzalez(2014)の要旨[参考資料 14]https://doi.org/10.2516/ogst/2013161 | 事実 |
| Gouedard ら:アミンの劣化は酸化劣化と熱劣化、酸素・CO2・NOx・SO2・熱のもとで劣化し、溶剤の損失・設備の腐食・揮発性の劣化生成物を生む | Gouedard らのレビューの内容(要旨の内容を確認)[参考資料 15]https://doi.org/10.1016/j.ijggc.2012.06.015 | 事実 |
| Carey ら(2007):55年前の井戸、30年の CO2 暴露(SACROC)。回収セメントの透水性は mD の桁で CO2 の流れを妨げる能力を保持。頁岩との接触面の約1 cm は強く炭酸化(方解石・アラゴナイト・バテライト、橙色)、緻密なシリカ・炭酸塩の層 | Carey ら(2007)の内容(要旨の内容を確認)[参考資料 16]https://doi.org/10.1016/s1750-5836(06)00004-1 | 事実 |
| Carey の講演資料:CO2 の移動の証拠がセメントと岩盤の界面、ケーシングとセメントの界面にあること、鋼管は腐食していなかった(電気防食あり)、割れの自己修復、井戸が漏れる理由の一覧 | ロスアラモス国立研究所の講演資料[参考資料 17]https://19january2021snapshot.epa.gov/sites/static/files/documents/carey.pdf | 事実 |
| 高密度相・超臨界相の CO2 配管での延性き裂の伝ぱの確率的評価の研究が存在すること(題名・主題のみ確認) | Zhou ら(2024)[参考資料 18]https://doi.org/10.1016/j.psep.2024.09.083 | 事実 |
| 不純物を含む高密度相の CO2 中での配管鋼の腐食の試験方法を批判的に整理した論文が存在すること(題名・主題のみ確認) | Kairy ら(2023)[参考資料 19]https://doi.org/10.1016/j.corsci.2023.110986 | 事実 |
| 反応式からの CO2 約5.46 kg/kg-H2(≒直接排出 9 kg の61%)。プロセスガスだけを効率90%で回収した場合の全体の回収率約55%。CI = (1−η)×9+U の表(10.0/12.0、約5.1/約7.1、1.9/3.9、1.45/3.45)。0.9105 kg/Nm3 ÷ 0.0899 kg/Nm3 = 約10.1 kg/kg-H2、回収90%で約9.1 kg、× 85ドル/t = 約0.78ドル/kg。回収55%で約5.6 kg、約0.47ドル/kg。45V の0.60 × 25% × 5 = 0.75ドル/kg | 本稿の計算。D = 9 kg は IEA の範囲からの逆算で、個別プラントの値ではない。水素の密度 0.0899 kg/Nm3 は本稿の仮定。回収・輸送・圧入の排出は含まない。金額はインフレ調整前で、45Q と45V は併用できない。IEA の記載(貯留85・利用60ドル)と条文の改正の関係は確認できていない | 本稿の計算 |
| EU の2030年の貯留目標、日本の2030年の CCS 事業開始・貯留量600万〜1,200万トンのめど、日本の法律の5年後の検討(附則第2条)、ATR+CCUS プラントの運転開始見込み | 計画・目標であり、実績は確認できていない。見通し | 未確定/将来 |
| 水素製造向けの吸収液の劣化・腐食の比較、CO2 流の組成の許容値、配管の材料の仕様、EU 指令 2009/31/EC の本文と貯留目標の法的根拠、日本の貯留事業の許可・特定区域の実績とコスト、水素製造由来の CO2 流の不純物 | 本稿の調査範囲では公開された一次情報に確認できなかったため記載していない(2026年10月8日時点)。EU の官報は閲覧が一時的に制限された | 解説 |
| 回収率の三つの意味の整理。プロセスガスの回収は直接排出の約6割を占め部分回収の限界を説明するという読み取り。吸収液の劣化の様相が排ガスとプロセスガスで異なりうるという見立て(推測)。漏れの経路は人工物と界面という整理。セメントの化学的劣化と界面の隙間を分けて考えるという整理 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない | 解説 |
| 図1・図2・図3が説明のための作図であること。ヒーロー画像と図4がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月8日/制度の確認日も同日です。出典は一次情報(IEA、IPCC、EU の官報、e-Gov 法令検索、水素基本戦略、米国連邦法典、ISO の規格ページ、査読論文)に限定しています。 構造の整理や読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 水素製造向けの吸収液・機器の劣化の比較、CO2 流の組成の許容値、EU 指令 2009/31/EC の本文、日本の貯留事業の実績とコストについては、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 IPCC の数値は2005年の評価です。制度は改正されるため、実際の判断には原文と最新の状況の確認が必要で、本記事は法務・投資・設計の助言ではありません。 図はすべて説明用の概念図です。図1〜図3はベクター作図、ヒーロー画像と図4はAI生成イメージで、いずれも実在の設備・井戸を示すものではありません。