COMPANY PROFILE / バイオセンサー
PHCホールディングス― 血糖測定器CONTOURの世界的ブランドを持つ日本の上場ヘルスケア企業。連続血糖測定の販売事業は手放し、足元では買収の初期提案を受けたと公表した
バイオセンサーの話題でPHCの名前が出るのは、子会社のAscensia Diabetes Care(アセンシア)が、電気化学式の血糖測定器「CONTOUR(コンター)」を世界90以上の国と地域で展開している(会社概要資料。統合報告書は「100以上の国と地域で販売」と記載)からです。 2026年3月期(2025年度)の連結売上収益は3,644億円で、そのうち糖尿病マネジメント事業が1,016億円(約28%)、営業利益は同事業が201億円と、グループ営業利益227億円の大半を占めました。 一方、同社は皮下埋め込み型の連続血糖測定(CGM)「Eversense」の販売事業をSenseonicsへ譲渡し(米国は2026年1月1日に完了)、CGMから手を引きました。 また、2026年10月1日には、東邦ホールディングスから法的拘束力のない初期的な買収提案を受領したことを会社が公表しています(決定した事実はなし)。 本稿は、何が公式資料で確認でき、何が非公表かを整理します。
- 30秒でわかるPHC Holdingsと、バイオセンサーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- バイオセンサーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
- バイオセンサー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるPHCホールディングスと、バイオセンサーでの立ち位置
(PHC Holdings Corporation)1969年に松下寿電子工業として創業。本社は東京都千代田区
(証券コード6523)KKR系のファンドが議決権の37.96%を保有(2026年3月末)
体外診断・POCT(従)連続血糖測定(CGM)の販売事業は譲渡済み
心筋トロポニンI(化学発光)CONTOUR、PATHFAST
PHC Holdingsは「血糖測定の専業」ではなく、「糖尿病、臨床検査・医療IT、病理・研究機器の3領域を持つ総合ヘルスケア企業で、バイオセンサーの中核は糖尿病マネジメント(血糖測定器CONTOUR)」と見るのが正確です 本稿の計算。 糖尿病マネジメントは連結売上の約28%ですが、営業利益では大半を占めます 事実。 ただし、血糖測定器の売上は単独では開示されておらず、糖尿病マネジメントの中のBGM(血糖測定)事業の売上額も、取得した資料に載っていません 未確定/将来。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は PHCホールディングス株式会社(英語表記は PHC Holdings Corporation)で、グループ全体の呼び名は「PHCグループ」です。もとはパナソニックグループの医療関連事業で、2014年にパナソニックからカーブアウトして発足し、2018年にコーポレートブランドを「PHC」に変えています(会社概要資料)。 CONTOUR(コンター)は、子会社Ascensia Diabetes Care Holdings AG(アセンシア)の血糖測定器のブランド名、PATHFASTは子会社PHC株式会社の免疫測定装置のブランド名で、いずれも会社名ではありません。 ロゴ画像は同社の公式サイトで公開されているもの(PHC GROUP)を取得しました。解像度は小さい(111×57ピクセル)です。
公式サイト:https://www.phchd.com/jp3. バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模
PHCグループは3つの事業領域(糖尿病マネジメント、ヘルスケアソリューション、診断・ライフサイエンス)で構成され、連結売上収益の約6割を海外が占めます。 2027年3月期から、一部の事業部の名称と区分を変更しています(BGM事業部を糖尿病マネジメント事業部に、LSIM事業部を臨床検査事業部に、バイオメディカ事業部と診断薬事業部を統合してライフサイエンス事業部に) 事実。
| 指標(百万円) | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 連結売上収益 | 361,593 | 364,403 | +0.8% |
| 営業利益 | 22,580 | 22,688 | +0.5% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 10,485 | 492 | -95.3%(為替差損などで税引前利益が減少) |
| 糖尿病マネジメントの売上収益 | ― | 101,581 | +2.9% |
| 糖尿病マネジメントの営業利益 | ― | 20,085 | +44.6% |
| ヘルスケアソリューションの売上収益/営業利益 | ― | 128,389/6,234 | +0.1%/-32.8% |
| 診断・ライフサイエンスの売上収益/営業利益 | ― | 128,323/3,893 | -2.0%/-46.3% |
2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は、売上収益906億7,200万円(前年同期比+8.1%)、営業利益104億1,300万円(同+171.0%)。糖尿病マネジメントは売上278億1,400万円(+20.2%)、営業利益91億8,000万円(+132.2%)で、同社は「CGM事業の譲渡に伴う収益改善」などを要因に挙げています。 従業員は8,647人(うち海外3,771人、2026年3月)、資本金は487億8,500万円です 事実。
糖尿病マネジメントは血糖測定(BGM)事業とCGM事業を含んでいましたが、CGMは2026年1月1日付で米国事業の譲渡が完了し、第4四半期(2026年1〜3月)以降は売上への影響がありません(決算短信)。 また、決算短信によると、先進国のBGM市場は縮小が続き、低価格チャネルへの移行も進んでいます。 BGM事業だけの売上・利益は開示されていません。本稿はその額を推計しません 未確定/将来。
5. バイオセンサーにかけているリソース
PHCは、研究開発費と設備投資額をグループ全体で開示しています。血糖測定器や診断機器に限った額、研究開発人員の数は開示されていません。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 連結従業員は8,647人(うち海外3,771人、2026年3月)。グループ会社は80社。糖尿病マネジメントの製造拠点は日本とインドネシアの2か国(会社概要資料)。研究開発人員、糖尿病マネジメントの人員は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(研究開発・設備投資) | グループの研究開発費は107億円(2025年3月期。2024年3月期は120億円)、設備投資額は116億円(同146億円)、減価償却費は279億円(統合報告書のデータ)。2026年3月期の研究開発費は取得した資料で確認できず。糖尿病マネジメントに限った額は非公表 | 事実/一部確認できず |
| 買収・出資・売却 | Bayer AGから糖尿病ケア事業を買収・統合し、Ascensia Diabetes Care Holdings AGを設立(2016年。金額は本稿で確認していない)。Thermo Fisher Scientificから病理事業を買収しEpredia Holdingsを設立(2019年)。2025年9月4日にEversense(CGM)の販売事業をSenseonicsへ譲渡する基本合意、2026年1月1日に取締役会で決議し米国は同日完了。譲渡価額は110万ドルと欧州各国での完了時点の純資産。譲渡事業の2025年3月期の売上は30.6億円、営業損益は-90.0億円(監査を受けていない数字) | 事実 |
| 大学・研究機関・公的資金 | 統合報告書・決算短信・会社概要資料に、バイオセンサーに関わる大学名・公的助成の名称と金額は確認できず。糖尿病マネジメントのCGMはSenseonicsのセンサーを使っていた(共同開発ではなく販売契約) | 確認できず |
| 事業の再編 | 2024年秋に「中期経営計画2027」を発表し、収益基盤強化の構造改革、ポートフォリオ管理強化(事業ごとの成長性とROIC)、診断・ライフサイエンスへの注力を柱とした。2027年度の施策効果は、2024年度比で収益性改善80〜120億円、資本効率改善20〜30億円の見込み(会社の目標) | 事実/未確定/将来 |
規制上の位置づけ(確認できた範囲)
米国は、FDAの510(k)データベース(2026年9月21日更新)と決定文書で確認しました。Ascensiaの名義で13件が登録されています。いずれも510(k)による適合(clearance)で、PMA承認でもDe Novo認可でもありません。日本・EUでの位置づけは本稿では確認できていません 事実。
| 製品 | 用途(FDA文書の記載の要旨) | 区分・日付 | 申請番号 |
|---|---|---|---|
| CONTOUR PLUS BLUE/CONTOUR NEXT GEN/CONTOUR NEXT ONE | 指先または手のひらの新鮮な毛細管全血のグルコースを定量。家庭で糖尿病のある人が1人で使い、糖尿病管理の効果の確認に使う。共有しない。糖尿病の診断・スクリーニング、新生児には使わない。電流測定式のバイオセンサーで、全血のグルコースを5秒で測る(メーカーの510(k)概要)。2026年の申請の変更点は、スマートフォン用アプリ(CONTOUR DIABETES App)のユーザーインターフェース、データ管理、クラウド連携 | 510(k) 適合(Traditional)、Class II(21 CFR 862.1345)。2026年8月27日 | K260545 |
| CONTOUR PLUS BLUE/NEXT GEN(前回)、CONTOUR NEXT ONE(初回) | データベースの登録情報のみ(用途の文書は未確認) | 510(k) 適合。2024年8月27日(K241787)/2021年8月11日(K210687、Special)/2016年11月17日(K160682) | K241787/K210687/K160682 |
| PATHFAST hs-cTnI-II | 心筋トロポニンIを、ヘパリンまたはEDTAの全血・血漿で定量する体外診断用の試験。心筋梗塞の診断補助。臨床検査室またはポイントオブケア(POC)で使用。リスク層別化には使わない。化学発光酵素免疫測定(磁性粒子と抗体、アルカリホスファターゼ標識) | 510(k) 適合(Traditional)、Class II(21 CFR 862.1215)。2024年3月20日。申請者PHC Corporation | K231974 |
| Eversense(CGM) | PHC(アセンシア)は販売事業をSenseonicsへ譲渡した。FDAの文書は、製造元のSenseonicsの申請として存在するため、本稿では扱わない | 米国事業の譲渡は2026年1月1日に完了(適時開示) | ― |
日本での血糖測定器・PATHFASTの承認・認証・届出の状況と、欧州のIVDRの下での位置づけは、本稿では確認できませんでした 未確定/将来。 規制の区分や家庭用との違いは、本シリーズの技術解説「医療機器の承認区分と家庭用」を参照してください。
PHCは、統合報告書の「コア技術」に電気化学バイオセンシング技術を挙げています。この技術は、血糖測定器のストリップ(CONTOUR)だけでなく、細胞培養の装置の中で細胞の代謝をその場で測るインラインセンサー(ライブセル代謝分析装置)にも使われると、会社概要資料は述べています 事実。 材料の視点では、酵素・メディエーター・電極の組み合わせを、血液という濃くて変動の大きい試料に合わせるか、培地という別の試料に合わせるかで、設計が変わります 未確定/将来。 また、CGMの「Eversense」は、会社の統合報告書によると特許取得済みの光学式センサを皮下に埋め込む方式で、電気化学式のストリップとは別の系統でした。その販売事業はSenseonicsに譲渡されました。 ただし、CONTOURのストリップの電極の素材、酵素の種類、メディエーターは、取得した資料に記載がありません。本シリーズの技術解説「酵素と電極界面の材料」「電気化学センサー」「埋め込み型センサー」を参照してください。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1969年 | 松下寿電子工業として設立(会社の沿革)。同年に持ち運べる血糖測定器が業界初の製品として挙げられている(糖尿病マネジメントの紹介) | 糖尿病マネジメントの紹介が挙げる業界初の製品。どの会社の製品かは資料に明記がない |
| 1991年 | 電気化学式の自動吸引型血糖値測定システムを発売(業界初と会社が説明) | PHC株式会社の血糖測定の技術基盤 |
| 2003年 | No Coding技術を採用した初の自己血糖測定器「CONTOUR」を発売(会社の説明) | 現在の主力ブランド |
| 2014年 | パナソニックグループからカーブアウトし、パナソニックヘルスケアホールディングスとして事業開始 | ファンド(KKR)の下での再編の始まり |
| 2016年 | Bayer AGから糖尿病ケア事業を買収し、Ascensia Diabetes Care Holdings AGを設立 | CONTOURを獲得 |
| 2018年 | コーポレートブランドを「PHC」に変更 | ― |
| 2019年 | Thermo Fisher Scientificから病理事業を買収し、Epredia Holdingsを設立 | 病理(バイオセンサー以外) |
| 2021年10月14日 | 東京証券取引所に新規上場(会社概要資料) | ― |
| 2024年3月20日 | PATHFAST hs-cTnI-IIがFDAの510(k)適合 | POCにも使える高感度心筋トロポニンIの免疫測定 |
| 2024年10月 | 世界で唯一の1年間使用できるCGM「Eversense 365」を米国で発売(会社の説明) | CGMの新製品。しかし1年後に事業を譲渡 |
| 2024年秋 | 「中期経営計画2027」を発表 | 構造改革、ポートフォリオ管理、診断・ライフサイエンスへの注力 |
| 2025年9月4日 | Eversense販売事業のSenseonicsへの譲渡に関する基本合意書を締結 | 投資効率の観点と会社が説明 |
| 2026年1月1日 | 取締役会で譲渡を決議し、米国事業の譲渡が完了 | CGMから手を引いた |
| 2026年5月13日 | 2026年3月期の決算を発表。糖尿病マネジメントの営業利益が+44.6% | BGMの販売の堅調とCGM譲渡による改善 |
| 2026年8月27日 | CONTOUR PLUS BLUE/NEXT GEN/NEXT ONEの510(k)適合(アプリの変更) | ― |
| 2026年9月2日 | 三井物産が保有株の一部を売却し、主要株主ではなくなった(11.05%→9.92%) | 株主構成の変化 |
| 2026年10月1日 | 報道について、東邦ホールディングスから法的拘束力のない初期的な提案を受領したと公表。現時点で決定した事実はない | 会社の公表。買収が成立するかは不明 |
7. 今後の計画
ほかに、次の計画が一次資料に書かれています 未確定/将来。
- 「中期経営計画2027」(2025〜2027年度)の構造改革。2027年度の施策効果は、2024年度比で収益性改善80〜120億円、資本効率改善20〜30億円(会社の目標)
- BGM事業は、欧米での更なるシェア拡大を見込むが、先進国市場の縮小の影響が続く見通し。減収幅を縮小させることが中計期間の大きな課題と、統合報告書が述べる
- 2030年までを2つのフェーズに分け、フェーズ2(2028〜2030年度)で診断・ライフサイエンス領域を核とした成長を実現するとの方針
BGM事業だけの売上・利益/血糖測定器の販売台数/2026年3月期の研究開発費/研究開発人員/日本・EUでのCONTOUR・PATHFASTの位置づけ/ CONTOURのストリップの素材と酵素/東邦ホールディングスの提案の条件。いずれも、取得できた公式資料に記載がありませんでした。
8. この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
会社が「目指す」と直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| BGMをキャッシュを生む基盤事業として維持する | 統合報告書が、BGM事業を「基盤事業」と位置づけ、市場が縮小する中で減収幅を縮小して安定してキャッシュを創出する事業にすると説明 | 事実(会社の説明) |
| CGMへの投資をやめた | 「更なる成長のためには継続的な投資が必要」との理由で、Eversense販売事業を譲渡(2026年1月1日) | 事実(会社の説明) |
| 成長の軸を診断・ライフサイエンスに置く | 中期経営計画2027の重点施策③。コア技術に電気化学バイオセンシング技術を含む | 事実(会社の説明) |
| BGMのブランドCONTOURにデジタルを組み合わせる | FDAに2026年にアプリ(CONTOUR DIABETES App)の変更を申請し、適合を得た | 事実 |
| 買収の提案を受領した(企業価値向上のための選択肢の1つとして) | 会社の公表は、提案を「企業価値向上のための選択肢の一つとして」受領したと述べ、決定した事実はないとする | 事実(会社の説明)/推測(その先の姿) |
「CGMへの投資をやめた」という読みは、推測ではなく会社の説明ですが、その理由の読み方は推測です。 会社は、Eversense 365を2024年10月に米国で発売して成長を実現したとしながら、譲渡を決めました 事実。 譲渡事業の2025年3月期は、売上30.6億円に対して営業損益が-90.0億円(監査を受けていない数字)でした。この大きな赤字が、「投資効率の観点」という説明の背景にあると読めます 未確定/将来。 ただし、会社は赤字を理由とは明記していません。また、譲渡価額は110万ドル(と純資産)と小さいため、事業の価値を高く見積もったとは言えません。
9. バイオセンサー分野の提携マッピング
PHC株式会社の会社概要資料は、国内の協業パートナー向けのOEM供給として、血糖自己測定システムの納入先にアークレイ株式会社、病院・診療所向け血糖測定システムと採血用穿刺器具の納入先に三和化学研究所を挙げ、診断・ライフサイエンスではPOC生化学分析装置(HbA1c、脂質、CRP)の納入先にロシュ・ダイアグノスティックスを挙げています 事実。 このほかに電動式の医薬品注入器をJCRファーマ、ファイザー、帝人ファーマへ、呼気一酸化窒素測定装置をNIOXへ納入しています。 一方、CONTOURの試験紙の部材の供給元の社名は、取得した資料に出てきません。Eversenseのセンサーは、Senseonicsが開発・製造し、アセンシアが販売する関係でした(統合報告書)。KKR系のファンドは株主であり、技術提携の相手ではありません。
10. 提供している技術・製品・サービス
公式の会社概要資料は、事業を糖尿病マネジメント、ヘルスケアソリューション、診断・ライフサイエンスに分けて説明しています。バイオセンサーに近いものを中心に整理します。数値はメーカー公称(FDAに提出された概要や会社資料)で、検査条件や版が異なるため、製品どうしや他社品との優劣はつけません 事実。
| 区分 | 公式資料に載っている内容 | ひとこと |
|---|---|---|
| 糖尿病:血糖測定器 CONTOUR | CONTOUR PLUS BLUE、CONTOUR NEXT GEN、CONTOUR NEXT ONE。全血のグルコースを5秒で測る電流測定式のバイオセンサー(FDAに提出された概要)。Bluetoothでスマートフォンのアプリ(CONTOUR DIABETES App)に測定値を送れる。目標範囲の上下を色で示す機能(smartCOLOR)。会社は、100以上の国と地域で販売し、約1,000万人に提供と述べる(統合報告書。会社概要資料は90以上と記載) | メーカー公称。個人の測定値の読み方は、医療従事者の指示による |
| 糖尿病:デジタル管理 | 患者、介護者、医療従事者がデータを共有する糖尿病の一元管理ソリューション(会社概要資料) | 測定器とアプリの連携 |
| 糖尿病:Eversense(CGM) | 皮下に埋め込む光学式のセンサで、最長1年間使えるEversense 365。Senseonicsが開発し、アセンシアが販売していた。販売事業は2026年1月1日に(米国は同日)Senseonicsへ譲渡 | 現在はPHCの製品ではない |
| 診断:PATHFAST(パスファースト) | 移動式の免疫発光測定装置。心疾患、敗血症、性腺関連マーカーなどを測る。hs-cTnI-IIは、試薬カートリッジに全血または血漿を入れ、5分間反応させ、磁性粒子で未結合の試薬を除いてから発光を測る。1キットで60回測定(FDAに提出された概要)。米国では販売代理店と契約(統合報告書) | メーカー公称。臨床検査室またはPOCで使う |
| 診断:診断薬・OEM | ラテックス凝集法の診断薬(業界初の装置は1982年)、全自動血液凝固検査システム、インフルエンザ・新型コロナの迅速検査試薬。ロシュ向けにPOC生化学分析装置(HbA1c、脂質、CRP)をOEM供給 | 診断薬事業は2026年3月期に前年比-7.6% |
| 研究・病理 | CO2インキュベーター、超低温フリーザー、細胞培養のライブセル代謝分析装置(独自のインラインセンサー)、病理検査の機器・消耗品(Epredia) | バイオセンサー技術を細胞培養に応用 |
| ヘルスケアソリューション | 臨床検査(LSIメディエンス)、電子カルテ・レセプト(ウィーメックス)、治験・非臨床試験(メディフォード) | センサー製品ではない。ヘルスケアソリューションは連結売上の約35%(本稿の計算) |
PATHFAST hs-cTnI-IIのFDA概要によると、測定は抗体を付けた磁性粒子が試料中の心筋トロポニンIを捕まえ、アルカリホスファターゼ標識の抗体が結合し、磁力で未結合の成分を取り除いた(Magtration技術)あとで、化学発光の基質(CDP-Star)が発する光を光電子増倍管で数える、という流れです 事実。 材料の視点では、粒子の表面に抗体をどう固定するか、磁性粒子の凝集のしにくさ、基質と酵素の安定性が、感度と再現性に効くと考えられます 未確定/将来。 血糖測定器のストリップ(CONTOUR)は電気化学式で、PATHFASTは発光式と、同じ会社でも検出の方式が別です。いずれも、粒子やストリップの具体的な材料は取得した資料に記載がありません。 免疫測定の材料の考え方は、本シリーズの技術解説「体液中のバイオマーカー」「ラベルフリー検出と検出限界」を参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| BGM市場の縮小 | 決算短信は、先進国でBGM市場の縮小と低価格チャネルへの移行が続くと説明。統合報告書は、米国での販売協業の終了で、市場の傾向以上に売上が減少していたとする | 事実 |
| CGM撤退の影響 | CGMの販売事業は譲渡され、2026年4月以降は売上に影響がない。2027年3月期の糖尿病マネジメントは、CGM譲渡で減収の予想 | 事実(会社予想) |
| 買収提案と株主構成 | 東邦ホールディングスの初期的な提案を受領(決定した事実はない)。KKR系のファンドが議決権の37.96%を保有し、三井物産は2026年9月に主要株主ではなくなった。経営方針や事業の扱いへの影響は現時点で確認できない | 未確定/将来 |
| 為替と関税 | 2026年3月期の税引前利益は、為替差損などで前期比-66.1%。診断・ライフサイエンスは、米国関税の影響(約10億円)で減益。2027年3月期第1四半期は関税還付の影響で増益に寄与 | 事実 |
| 子会社の不適切事案 | 2023年12月に、子会社LSIメディエンスの中央総合ラボラトリーでの品質管理に係る不適切事案を公表。2024年7月にISO 15189認定の取消し、2025年12月に再取得を公表(適時開示の件名)。バイオセンサー製品の事案ではない | 事実(件名と日付のみ) |
| 利益の偏り | 2026年3月期の営業利益227億円のうち、糖尿病マネジメントが201億円。ほかの2領域の営業利益は合計で約101億円(本社・その他の調整がある) | 事実(本稿の整理) |
| 外部検証の難しさ | BGM事業だけの売上・利益、研究開発費(糖尿病・診断)が開示されていない | 未確定/将来 |
12. 用語集
- BGM(血糖測定)
- 指先などの少量の血液で血糖値を測ること。測定器と使い捨てのストリップ(センサー)を使う。結果の読み方や治療への使い方は、医療従事者の指示による。
- CGM(持続血糖測定)
- 体に装着または埋め込んだセンサーで、血糖に相当する値を連続して測る仕組み。
- アンペロメトリー(電流測定)
- 電極に電圧をかけ、反応で流れる電流の大きさから濃度を求める方法。血糖測定器で広く使われる。
- OEM供給
- 相手先の製品として売られる製品を、製造して納入すること。
- 化学発光酵素免疫測定
- 抗体で目的の物質を捉え、酵素の反応で出る光の強さから量を測る方法。PATHFASTで使われる。
- 高感度トロポニンI(hs-cTnI)
- 心筋の細胞に由来するタンパク質の血中濃度を、ごく低い濃度から測る検査。結果の読み方は医療従事者が判断する。
- POC(ポイントオブケア)
- 患者の近くで行う検査。結果が早く出る一方、精度管理や記録の仕組みが別に必要になる。
- 510(k) 適合(clearance)
- 米国FDAが、すでに市場にある機器と実質的に同等と認める手続き。PMA承認やDe Novo認可とは別。
- IFRS/調整後EBITDA
- PHCが開示に使う国際会計基準と、一時的な収益・費用を除いた利益の指標。調整後EBITDAはIFRSの指標ではない。
- ROIC
- 投下資本利益率。PHCが事業ごとの位置づけの判断に使う指標。
- カーブアウト
- 会社の一部の事業を、独立して運営できる形に切り離すこと。

13. 出典
- PHCホールディングス 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年5月13日)。連結業績、セグメント別の売上・営業利益、2027年3月期の予想、事業区分の変更。 https://www2.jpx.co.jp/disc/65230/140120260512525855.pdf
- PHCホールディングス 2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年8月6日)。第1四半期の売上・営業利益、糖尿病マネジメントの状況。 https://www2.jpx.co.jp/disc/65230/140120260730503873.pdf
- PHCホールディングス 連結子会社の事業譲渡に関する基本合意書締結のお知らせ(2025年9月4日)。Eversense販売事業のSenseonicsへの譲渡の基本合意、譲渡事業の売上・営業損益、理由。 https://www2.jpx.co.jp/disc/65230/140120250820544998.pdf
- PHCホールディングス (開示事項の経過)連結子会社の事業譲渡に関するお知らせ(2026年1月5日)。譲渡の決議、譲渡価額。 https://www2.jpx.co.jp/disc/65230/140120260105528388.pdf
- PHCホールディングス 当社に関する一部報道について(2026年10月1日)。東邦ホールディングスからの初期的な提案の受領。 https://www2.jpx.co.jp/disc/65230/140120260930543785.pdf
- PHCホールディングス 支配株主等に関する事項について(2026年6月12日)。KKR PHC Investment L.P.の議決権所有割合37.96%(2026年3月31日現在)。 https://www2.jpx.co.jp/disc/65230/140120260528552357.pdf
- PHCホールディングス 主要株主の異動に関するお知らせ(2026年9月2日)。三井物産の保有割合の変動。 https://www2.jpx.co.jp/disc/65230/140120260821524633.pdf
- PHCホールディングス PHC GROUP Integrated Report 2025(統合報告書2025)。中期経営計画2027、事業の位置づけ、研究開発費・設備投資額、CONTOUR・Eversenseの説明、コア技術。 https://www.phchd.com/~/Media/phchd/sustainability/integratedreport2025/pdf/integratedreport2025.pdf
- PHCホールディングス PHCグループ会社概要(2026年5月発行の会社概要資料)。沿革、従業員数、事業領域、OEMパートナーシップ(アークレイ、三和化学研究所、ロシュ・ダイアグノスティックスなど)、ライブセル代謝分析装置。 https://www.phchd.com/jp/~/Media/phchd/about/PHC_Group_Overview_Presentation_Slide.pdf
- PHCホールディングス 会社概要(公式サイト)。連結売上収益、従業員数、グループ会社数。 https://www.phchd.com/jp/about/overview
- PHCホールディングス 株式情報(公式サイト)。上場市場(東京証券取引所プライム市場)と証券コード6523。 https://www.phchd.com/jp/ir/overview
- 米国FDA 510(k) K260545「CONTOUR PLUS BLUE/CONTOUR NEXT GEN/CONTOUR NEXT ONE Blood Glucose Monitoring System」の適合通知と概要(2026年8月27日)。用途、測定原理(電流測定式バイオセンサー)、5秒。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf26/K260545.pdf
- 米国FDA 510(k) K231974「PATHFAST hs-cTnI-II」の適合通知と概要(2024年3月20日)。用途、測定原理(化学発光酵素免疫測定)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf23/K231974.pdf
- 米国FDA(openFDA) 510(k)データベースのAPI(申請者名にAscensiaを含む13件の記録。データベースの最終更新は2026年9月21日)。K241787、K210687、K160682などの登録情報。 https://api.fda.gov/device/510k.json?search=applicant:Ascensia&limit=20
- PHCホールディングス 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.phchd.com/jp
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月4日/Troy Technical
本稿の数値は、PHCホールディングスの決算短信・適時開示・統合報告書・会社概要資料と、FDAの公開文書に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません(2026年10月1日の報道は、会社の公表に基づく範囲のみ記載)。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。会社の予想・目標(2027年3月期の予想、中期経営計画2027)は会社の見通しであり、達成の事実ではありません。