COMPANY PROFILE / バイオセンサー
インスレット
― 貼り付け型のインスリン投与システム「Omnipod」の会社。血糖センサーは作らず、他社の連続グルコース測定(CGM)の値を使う「システムの側」から見たバイオセンサー
バイオセンサーの話題でInsuletの名前が出るのは、センサーの会社ではなく、センサーの値を受け取って使う側の会社だからです。 Omnipodは、3日間皮膚に貼る使い捨ての小さな本体(Pod)からインスリンを自動で投与する仕組みで、グルコース値はDexcomやAbbottの他社製CGMから受け取ります(CGMは別売り)。 2025年のForm 10-Kによると、売上はUS$2,708.1百万(前年比+30.7%)、Omnipod製品の推定アクティブユーザーは60万人超です。 本稿は、この会社がセンサーに何を求め、どう連携し、何に投資しているかを、SEC提出書類とFDAの公開文書の範囲で整理します。
- 30秒でわかるInsuletと、バイオセンサーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- バイオセンサーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
- バイオセンサー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるインスレットと、バイオセンサーでの立ち位置
(インスリン投与の側)センサーは作らず、他社のCGMと連携する
インスリンを自動調整Pod(3日間貼る使い捨て)とアルゴリズム、スマートフォンのアプリ
Insuletは「グルコースを測るセンサー」を作っていません。 10-Kは、Omnipod 5が「他社製のCGMと連携する」こと、CGMは「第三者が別売りする」ことを明記しています。連携するのはDexcomのG6・G7とAbbottのFreeStyle Libre 2 Plus(国によって異なる)で、2026年6月にはLibre 3 Plusとの互換性も米国で広げたと10-Qに書かれています 事実。 つまり、バイオセンサー分野でのInsuletの立ち位置は、センサーの精度・通信・装着期間に自社の製品の動きが左右される「使う側」です 本稿の計算。 本稿が扱うのは、その連携の条件(FDAの「iCGM」という区分、契約、アルゴリズムの動作)と、Pod自身の材料や品質の話です。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Insulet Corporation で、日本語では「インスレット」と書きます。 Omnipod(オムニポッド)は製品群の名前で、現行の Omnipod 5(自動インスリン投与システム)、その前の世代の Omnipod DASH、旧来の Classic Omnipod(段階的に終了)があります。 Pod は、皮膚に貼る使い捨ての小さな本体の呼び名です。 ロゴ画像は同社の公式サイト(insulet.com)で使われているロゴ画像(紫色のもの)を取得しました。
公式サイト:https://www.insulet.com/3. バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模
InsuletはOmnipodの専業に近い会社です。売上のほとんどがOmnipod製品で、ほかにAmgen向けの製品(Neulasta Onproキット用のPod)が小さく含まれます 事実。
| 指標(百万米ドル) | 2024年 | 2025年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上合計 | 2,071.6 | 2,708.1 | +30.7%(為替の影響を除くと+29.5%) |
| うち 米国のOmnipod製品 | 1,509.3 | 1,919.8 | +27.2% |
| うち 米国外のOmnipod製品 | 523.4 | 754.3 | +44.1% |
| うち 薬剤送達(Amgen向けなど) | 38.9 | 34.1 | -12.3% |
| 研究開発費 | 219.6 | 301.1 | +37.1% |
| 売上総利益率 | 69.8% | 71.6% | +1.8ポイント |
| 当期純利益 | 418.3 | 247.1 | 下の注を参照 |
2025年の当期純利益は、転換社債の買い戻しに伴う損失US$123.9百万を含みます。2024年の純利益には、繰延税金資産の評価引当金が不要になったことによる税の利益が含まれます(10-Kの記載) 事実。 Omnipodの推定アクティブユーザーは2025年末で60万人超、販売国は25か国(Omnipod 5は19か国)、世界の売上の86%が卸・販売代理店などの仲介を通じたものです。仲介業者3社が売上の27%、26%、25%を占めます(2025年)。
2026年上半期(1〜6月)の売上はUS$1,563.4百万(前年同期比+28.4%)、研究開発費はUS$177.8百万(売上の11.4%)でした 事実。
10-Kは、CGMは第三者が別売りすると書いており、Insuletの売上にCGMの販売は含まれないと読めます(本稿の読み取り)。 したがって、バイオセンサー(CGMのセンサー)に関する売上・費用は、Insuletの開示からは分けられません。 研究開発費にはCGM連携の開発費が含まれますが、金額は非公表です 未確定/将来。
5. バイオセンサーにかけているリソース
Insuletの開示は、会社全体(実質1事業)の単位です。センサーとの連携に限った人員・費用の額はありません。確認できた範囲を表にします。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 従業員は約5,400人(2025年末、前年比+38%)。約60%が米国、残りは他の17か国。研究開発部門の人数は非公表(研究開発費の増加の理由に、人員の増加を挙げる)。製造は米国アクトンとマレーシア・ジョホールの自社2工場と、中国の契約製造会社が運営する施設の製造ライン | 事実/一部非公表 |
| 金(研究開発) | 2025年はUS$301.1百万(売上の11.1%)。増加の理由に、2型糖尿病向けの完全閉ループ、Libre 3とOmnipod 5の連携、次世代のOmnipod 6への投資を挙げる。2026年上半期はUS$177.8百万(売上の11.4%) | 事実 |
| 金(設備投資) | 2025年の設備投資はUS$191.6百万(前年US$124.9百万)。主因は3つ目の製造工場(コスタリカ)への投資とマレーシア工場の設備。2026年上半期はUS$56.8百万で、2026年通年は2025年より増える見込み。コスタリカ工場は建設・購入の契約で、2026年4月に売り手の融資の最大US$97百万を保証する契約を結んだ | 事実/未確定/将来(見込み) |
| 買収・出資・提携 | CGMメーカーとの契約:Dexcomとは開発契約(2016年12月7日)、商業化契約(2019年11月21日、2026年1月5日に改定)、データ契約(2020年5月7日)、Abbottとは開発・商業化の契約(2021年9月13日、その後2025年12月15日の第8改定まで)。ほかに、Bigfoot Biomedicalの特許の譲渡・実施許諾の契約(2023年2月9日)、データ管理のGlookoとの提携(契約は2026年12月に満了)。非公開企業への戦略的な出資もあるが社名は非掲載(2024年に持分US$12.0百万など)。部品の購入契約:NXP(2017年10月12日〜)、Sanmina(材料供給の契約、2025年11月14日)、装置のATS | 事実 |
| 大学・研究機関・公的資金 | 10-K・10-Qに、大学や公的助成(NIHなど)の名前・金額の記載は確認できず。ClinicalTrials.govには、Insulet主導の臨床研究が多数あり(例:Omnipod 6とOmnipod 5の比較、完全閉ループのEVOLVE、市販後のレジストリ)、フランスなど各国の研究者が参加する研究も含む | 確認できず(臨床研究は確認) |
規制上の位置づけ(確認できた範囲)
| 製品 | 用途(intended use) | 区分 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| Omnipod 5 ACE Pump (Pod) | インスリンの皮下投与(設定した速度と可変の速度)。互換のデジタル機器(自動インスリン投与ソフトを含む)と通信して指示を実行・確認できる。単独の患者の自宅での使用、処方 | FDA 510(k) clearance(K203768。製品コードQFG) | 2022年1月27日(改定版K231826は2023年10月18日) | 出典3・8 |
| SmartAdjust technology(Omnipod 5のアルゴリズム) | 互換のiCGMとACEポンプと組み合わせ、現在と予測のグルコース値に基づいてインスリン投与を自動で増減・停止する。初版は1型糖尿病の6歳以上 | FDA 510(k) clearance(K203774。製品コードQJI=相互運用可能な自動血糖コントローラー) | 2022年1月27日 | 出典4 |
| SmartAdjust Technology(用途拡大) | 1型糖尿病の2歳以上と、2型糖尿病の18歳以上 | FDA 510(k) clearance(K241777) | 2024年8月26日 | 出典5 |
| Omnipod 5 algorithm | 同上。目標グルコース値に100 mg/dLを追加する変更 | FDA 510(k) clearance(K251779) | 2025年12月3日 | 出典6 |
| Omnipod 6 algorithm | 同上(Omnipod 5のアルゴリズムと同じ用途。ボーラス行動への個別化の変更) | FDA 510(k) clearance(K261461) | 2026年6月29日 | 出典7 |
| Omnipod 5(EU) | ― | CE マーク(EUの医療機器規則 MDR)。10-Kに「2022年に取得」と記載 | 2022年 | 出典1 |
| 日本での位置づけ | ― | 10-Kの販売国一覧(25か国)に日本は含まれない。PMDAの承認・認証は確認できなかった | ― | 出典1 |
FDAの「510(k) clearance」は、既に販売されている同等の機器との実質的同等性を認める区分で、「De Novo認可」や「PMA承認(approval)」とは異なります。連携するCGMは、FDAの規則(21 CFR 862.1355)で「iCGM」という区分(クラスⅡ、特別な管理)に位置づけられます。
InsuletにとってのCGMは外から来る部品ですが、Pod自身はインスリンという薬液と皮下組織に触れ続ける材料の塊です。 FDAのK203768の比較表には、Podの流路の材料として、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、フルオロアルキル変性のシロキサン、ステンレス鋼、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリプロピレン、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンが並びます。 滅菌はエチレンオキサイド(EO)、使用期限(シェルフライフ)は18か月、使用温度は5〜40°Cと書かれています 事実。 2026年の是正措置(第11章)は、この材料のうち柔らかいカニューレ(細い管)の製造中の損傷が原因とされており、材料そのものではなく、材料を傷つけない製造工程の管理が品質の中心だと分かります 未確定/将来。詳しくは第10章に書きます。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2016年12月7日 | Dexcomとの開発契約(契約書の日付。10-Kの契約一覧) | CGMの値をポンプ側のアルゴリズムが使う連携の始まり |
| 2019年11月21日・2020年5月7日 | Dexcomとの商業化契約・データ契約 | 契約の内容(金額など)は一覧に書かれていない |
| 2021年9月13日 | Abbott Diabetes Careとの開発・商業化の契約(その後2025年12月15日の第8改定まで) | Libre系センサーとの連携 |
| 2022年1月27日 | Omnipod 5のポンプ(K203768)とアルゴリズム(K203774)がFDAの510(k) clearance。同年にEUでCEマーク(MDR) | 互換のiCGMと組み合わせる自動インスリン投与システムの市場投入 |
| 2023年2月9日 | Bigfoot Biomedicalとの特許の譲渡・実施許諾の契約 | アルゴリズム・システム側の知財 |
| 2023〜2024年 | Omnipod 5を英国・ドイツ(2023年)、オランダ・フランス(2024年)で発売 | 米国外での拡大 |
| 2024年8月26日 | 2型糖尿病(18歳以上)への用途拡大(K241777)。この判断により、基礎インスリンのみの2型向け「Omnipod GO」の商品化は見送りとなり、2024年にUS$13.5百万の費用を計上 | CGMとの組み合わせを前提にした市場の拡大 |
| 2025年 | iPhone向けOmnipod 5アプリをDexcom G7対応で米国発売。Dexcom G7との連携を欧州5か国に、Libre 2 Plusとの連携をオーストラリアに拡大。Omnipod 5を新たに9か国で発売。アルゴリズムの目標グルコース値の下限を下げる変更をFDAが510(k) clearance(K251779、12月3日)。次世代の臨床試験STRIVEが完了。2025年4月24日、EOFlow社らに対するトレードシークレット訴訟で連邦地裁がInsulet勝訴の最終判決 | センサー・スマートフォンの選択肢を広げた年 |
| 2026年3月・5月 | 製造上の問題でPodの柔らかいカニューレ(細い管)が損傷する不具合について、2回の自主的な是正措置(MDC)。FDAのデータベースにもリコール記録がある(第11章) | 2026年上半期に是正措置の費用US$41.0百万を計上 |
| 2026年6月 | AbbottのFreeStyle Libre 3 Plusとの互換性を米国で拡大。目標グルコース値100 mg/dLを含むアルゴリズムの改良を米国で展開。6月29日、Omnipod 6 algorithmがFDAの510(k) clearance(K261461) | 10-Qは「Omnipod 6は開発中」と記載。発売時期は書かれていない |
| 2026年2月・7月 | 中東5か国(2月)とスペイン(7月)でOmnipod 5を発売 | 10-Qの記載 |
7. 今後の計画
以下はいずれも会社の計画・目標であり、達成された事実ではありません。2026年8月の10-Qと2026年2月の10-K、ClinicalTrials.govの予定日に基づきます 未確定/将来。
- 是正措置の費用:会社は、2026年の2回の是正措置に関する費用の総額をUS$60百万〜70百万と見積もり、大半を2026年に、残りを2027年(自動検査システムが入るまでの追加の目視検査)に計上する見込みとしています。
- データ管理:Glookoとの契約は2026年12月に満了し、更新しなければ代わりの仕組みの契約か自社開発が必要になる、と10-Kにあります。2026年にはデータ分析の「Omnipod Discover」を発売しました。
- 訴訟:EOFlow社らとの訴訟では、2024年12月の陪審がUS$452百万の損害賠償を認め、2025年4月に連邦地裁が差し止めを命じました。相手が控訴し、2026年1月5日に口頭弁論がありました。損害賠償は会計上は計上されていません。
Omnipod 6の発売時期、完全閉ループ(Omnipod M)のFDAでの位置づけ(申請は2027年予定)、DexcomやAbbottとの契約の金額・期間・独占条件(契約書は一部非公開)、 Podと連携するCGMごとの利用者数、日本(PMDA)での位置づけ、CGMセンサーの精度に関するInsulet自身の要求仕様、コスタリカ工場の稼働時期、研究開発費のうちセンサー連携分の内訳。
8. この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
会社が資料に直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 特定のセンサーに縛られず、複数のCGMと連携する方針をとる | 10-Kは「CGMとスマートフォンの選択肢」を開発の柱とし、DexcomのG6・G7、AbbottのLibre 2 Plus・3 Plusと連携。両社と個別の契約を結んでいる | 事実(連携・契約)/推測(方針の狙い) |
| センサーが標準化されるほど、アルゴリズムとPodの差で勝負する | FDAは連携先を「iCGM」の区分に限定している(K203774ほか)。自社の特許約1,000件超は、駆動系、カニューレの挿入、アルゴリズムを対象と10-Kに記載 | 推測 |
| 2型糖尿病へ広げる | 2024年に2型の用途拡大、2026年に完全閉ループの2型向け試験EVOLVEを開始。「Omnipod GO」の商品化は見送り | 事実 |
| 米国外のCGM連携を増やして販売国を広げる | 2025年に新たに9か国、2026年に中東5か国とスペインで発売。連携はDexcom G7を欧州5か国、Libre 2 Plusをオーストラリアに拡大 | 事実 |
| 将来、CGMのデータ品質が投与の制約になる点を強く意識している | アルゴリズムは、CGMのデータが20分以上届かないか、センサーのウォームアップ中は「Limited」モードに入る(FDA文書) | 事実(動作)/推測(意識の強さ) |
「センサーが標準化されるほど、アルゴリズムとPodで競う」という読みの根拠は、FDAの文書の構造です。 Insuletのアルゴリズム(SmartAdjust、Omnipod 5 algorithm、Omnipod 6 algorithm)の用途は、いずれも「互換のiCGMとACEポンプと組み合わせて使う」と書かれています。iCGMは21 CFR 862.1355で、「自動インスリン投与システムなどに、グルコース値を確実かつ安全に送る」ことと、成人での精度の基準などの特別な管理が定められたCGMの区分です 事実。 センサー側の要件が規則で決まっていれば、Insuletは特定のセンサー会社を内製せず、規則を満たす複数社のセンサーを使える形になります。 ただし、どのセンサーを使うかは、契約と商業的な条件にも左右され、その条件の中身は開示されていません 未確定/将来。
9. バイオセンサー分野の提携マッピング
10-Kで社名が確認できる関係は、CGMの2社(DexcomとAbbott)、データ管理のGlooko、部品の購入先(NXP、Sanmina)、装置のATSです 事実。 DexcomとAbbottの契約は、契約書そのものは金額や条件を黒塗りにして提出されており、独占的か、期間はいつまでかは本稿で確認できませんでした 未確定/将来。
10. 提供している技術・製品・サービス
InsuletのOmnipodは、Pod(皮膚に貼る使い捨ての小型ポンプ)、アルゴリズム、スマートフォンのアプリまたは専用コントローラーの3つで構成され、CGMは別売りの第三者の製品です。 性能値はFDA文書や10-Kの記載で、測定の精度を示すものではなく、異なる試験の値を並べて優劣をつけることはできません。
| 区分 | 公式資料に載っている内容 | ひとこと |
|---|---|---|
| Pod(Omnipod 5・DASH) | 粘着パッドで皮膚に貼る、使い捨て・チューブなしの本体。最長3日間装着。防水はIP28(25フィート=約7.6 mで60分)。カニューレ(細い管)の挿入は自動。腹部、腰、上腕の後ろ、大腿、腰の後ろなどに装着できる | 10-Kの記載。連続測定のセンサーとは別の、投与側の機器 |
| アルゴリズム(SmartAdjust→Omnipod 5 algorithm→Omnipod 6 algorithm) | CGMから5分ごとの値を受け取り、先のグルコースを予測して、5分ごとにインスリン投与を自動で増減・停止する(Omnipod 6のFDA文書では60分先の予測)。ユーザーが設定する目標グルコース値の範囲は100〜150 mg/dL(Omnipod 6のFDA文書)。CGMの値が20分以上届かないか、ウォームアップ中は「Limited」モードで、基礎の量までに制限 | FDAの区分は「相互運用可能な自動血糖コントローラー(iAGC)」 |
| 連携するCGM | Dexcom G6・G7、Abbott FreeStyle Libre 2 Plus、2026年6月から米国でLibre 3 Plusも(10-K・10-Q)。通信はBluetooth Low Energy(FDA文書) | 「どのCGMが使えるか」は国と時期で異なる |
| アプリ・データ | スマートフォンのアプリ(米国ではiOS・Android)と専用コントローラー。クラウドにSIMカードまたはWi-Fiで送信。Glookoとの連携、2026年のOmnipod Discover | データを見る側。測定そのものではない |
| 薬剤送達(Amgen向け) | Neulasta Onproキット用のPodの製造。2025年の売上US$34.1百万 | 糖尿病とは別の用途 |
Podは、CGMの値を受けて投与を変える機器なので、センサーの側の性質が、そのまま投与の動きを制約します。FDA文書によると、CGMの値が20分以上届かないとき、またはセンサーのウォームアップ中は、自動の増減をやめて基礎の量までに制限する動作になります 事実。センサー側の接着の剥がれ、通信の途切れ、立ち上がりの遅さが、投与側の動作に直結するということです(本稿の解説)。
Pod自身の材料では、次の点がFDA文書と10-Kから読み取れます 事実。
- 薬液に触れる流路:FEP、フルオロアルキル変性のシロキサン、ステンレス鋼、PDMS、ポリプロピレン、COC、ポリエチレンの組み合わせ。インスリンの吸着や変性を避けつつ、約3日間の使用に耐える必要があります(本稿の解説。理由は書かれていません)。
- 皮下に入るカニューレ:細く柔らかい管で、2026年の是正措置はその製造中の損傷(内部の裂け、外部の損傷)が原因と、FDAの記録に書かれています。材料の選択に加えて、損傷を見つける検査(自動検査の導入)が品質の鍵です。
- 粘着パッドと防水:最長3日間の装着とIP28の防水。CGMのセンサーも同様に皮膚に貼るため、両者の装着位置・粘着の相性は設計の課題です(本シリーズの技術解説「パッチ型センサーと皮膚接着」を参照)。
- 滅菌と保管:EO滅菌、使用期限18か月、使用温度5〜40°C(K203768)。
一方、カニューレの材質、粘着パッドの材質、センサーとの電気的な干渉への対策は、確認した資料に書かれていません。本稿は推測で補いません。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 製造上の不具合と是正措置 | 2026年3月と5月に、Podの柔らかいカニューレの損傷に関する自主的な是正措置を2回実施。10-Qは、2026年上半期に費用US$41.0百万、総額US$60百万〜70百万と見積もる。FDAの記録では、3月12日開始の分(Z-1797-2026、49ロットの内部のカニューレの裂け、約124万台)と、5月20日開始の分(Z-2603-2026ほか、外部のカニューレの損傷、台数は記録ごとに約29万〜約494万台)で、いずれもインスリンの漏れによる投与不足の可能性が理由として書かれている。台数は記録の値で、重複を含む可能性がある | 事実 |
| 過去のソフトウェアの是正 | 2025年にもiOSアプリの入力に関する是正が2件ある(小数点の区切りが認識されない問題、拡大表示時に数字が重複する問題。Z-2016-2025、Z-0132-2026)。いずれもFDAの記録による | 事実 |
| センサー会社との契約への依存 | 10-Kは、DexcomとAbbottとの商業契約により各社のCGMと連携して販売できること、その権利を失えば製品の機能や販売に重大な影響が出うることをリスクに挙げる。契約の内容は黒塗りで提出されている | 事実 |
| データ管理の契約 | Glookoとの契約は2026年12月に満了。更新できず代替も用意できなければ重大な影響がありうると10-Kに記載 | 事実 |
| 製造拠点の集中と関税 | 製造は米国、マレーシア、中国の契約製造会社の3か所。米国の在庫は単一の拠点に集中。医療機器の関税の免除が外れた場合は、将来の年に利益に重大な影響が出うると10-Kに記載 | 事実 |
| 競合の動き | チューブ式ポンプ(Medtronic Diabetes〔分離・上場の予定〕、Tandem)、新しいパッチポンプ(Beta Bionicsなど)、スマートペンを含むMDI、2型糖尿病でのGLP-1製品の使用増加を挙げる | 事実 |
| 知的財産をめぐる訴訟 | EOFlow社らのトレードシークレット流用をめぐり、2024年12月の陪審がUS$452百万を認め、2025年4月に差し止め命令。相手が控訴し、2026年1月5日に口頭弁論。損害賠償は未計上 | 事実 |
| 地域の制約 | 10-Kの販売国一覧(25か国)に日本は含まれない。日本での規制上の位置づけは確認できなかった | 事実/未確定/将来 |
| センサーの性能・供給への間接的な依存 | CGMの精度、通信、供給の不安定さは、Omnipodの自動投与の動作や利用者の体験に影響しうる。Insulet自身はセンサーの要求仕様を開示していない | 推測 |
12. 用語集
- Pod
- Omnipodの皮膚に貼る使い捨ての本体。インスリンを入れるリザーバーとカニューレの挿入機構を持つ。
- AID(自動インスリン投与)
- CGMの値をもとに、アルゴリズムがインスリンの投与量を自動で調整するシステム。
- ACEポンプ
- Alternate controller enabled のポンプ。互換のデジタル機器の指示を受けて動くインスリンポンプのFDAの区分。
- iAGC
- Interoperable automated glycemic controller(相互運用可能な自動血糖コントローラー)。InsuletのSmartAdjustなどのアルゴリズムのFDAの区分(製品コードQJI)。
- iCGM
- Integrated continuous glucose monitoring system。自動インスリン投与システムなどにグルコース値を安全に送れるCGMとして、FDAがクラスⅡ(特別な管理)に位置づけた区分。
- 510(k) clearance
- FDAが、すでに販売されている同等の機器との実質的同等性を認める区分。De Novo認可やPMA承認(approval)とは異なる。
- MDI
- 1日複数回のインスリン注射(シリンジまたはペン)による療法。
- MDC
- Medical Device Correction。製造者が行う自主的な是正措置の呼び名。
- カニューレ
- インスリンを皮下に届ける細くて柔らかい管。

13. 出典
- Insulet Form 10-K(2025年12月期、2026年2月18日提出)。事業の概要、Omnipodの構成、CGMとの連携、規制、製造拠点、従業員数、売上・研究開発費・設備投資、リスク要因、契約の一覧。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145197/000114519726000028/podd-20251231.htm
- Insulet Form 10-Q(2026年6月30日の四半期、2026年8月5日提出)。2026年上半期の売上・研究開発費・設備投資、Libre 3 Plus連携、Omnipod 6、EVOLVE、医療機器の是正措置(MDC)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1145197/000114519726000169/podd-20260630.htm
- FDA 510(k) K203768 Omnipod 5 ACE Pump (Pod)(2022年1月27日)。ポンプ(Pod)の用途と、薬液・患者に触れる材料に関する記載。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf20/K203768.pdf
- FDA 510(k) K203774 SmartAdjust technology(2022年1月27日)。互換のiCGMと組み合わせるアルゴリズムの用途と動作。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf20/K203774.pdf
- FDA 510(k) K241777 SmartAdjust Technology(2024年8月26日)。2型糖尿病(18歳以上)への用途拡大。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf24/K241777.pdf
- FDA 510(k) K251779 Omnipod 5 algorithm(2025年12月3日)。目標グルコース値100 mg/dLの追加。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf25/K251779.pdf
- FDA 510(k) K261461 Omnipod 6 algorithm(2026年6月29日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf26/K261461.pdf
- FDA 510(k) K231826 Omnipod 5 ACE Pump(2023年10月18日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf23/K231826.pdf
- eCFR 21 CFR 862.1355 Integrated continuous glucose monitoring system(iCGMの定義と特別な管理)。 https://www.ecfr.gov/current/title-21/chapter-I/subchapter-H/part-862/subpart-B/section-862.1355
- FDA Medical Device Recalls:Z-1797-2026(Omnipod 5 Pods、2026年3月12日開始)。 https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfres/res.cfm?id=219130
- FDA(openFDA) Medical Device Recalls:Z-2603-2026(Omnipod 5 Pods、2026年5月20日開始)の記録。 https://api.fda.gov/device/recall.json?search=product_res_number:%22Z-2603-2026%22
- FDA(openFDA) Device Recall データベースでの Insulet の記録(2024年以降、検索結果)。 https://api.fda.gov/device/recall.json?search=recalling_firm:%22Insulet%22&limit=30
- FDA(openFDA) 510(k) データベースでの Insulet の記録(検索結果)。 https://api.fda.gov/device/510k.json?search=applicant:%22Insulet%22&limit=30
- ClinicalTrials.gov NCT07579702:Omnipod 6 と Omnipod 5 の比較(Insulet主導、募集中)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT07579702
- ClinicalTrials.gov NCT07521475:EVOLVE、2型糖尿病の完全閉ループ Omnipod M(Insulet主導、募集中)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT07521475
- ClinicalTrials.gov NCT06144554:Omnipod 5 の市販後レジストリ(1型糖尿病、Insulet主導)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06144554
- ClinicalTrials.gov NCT05923827:Omnipod 5 と Libre 2 の組み合わせとMDIの比較(完了)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT05923827
- Insulet 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.insulet.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値は、InsuletのForm 10-K・10-Q、FDAの公開文書、eCFR、ClinicalTrials.govに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません(「推定アクティブユーザー数」は会社自身の推計と断って使用)。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は製品の使用を勧めるものではなく、治療や測定値の読み方に関する助言ではありません。