COMPANY PROFILE / バイオセンサー
デクスコム
― 皮下のワイヤ型センサーで血糖を連続して測る専業メーカー。処方用のG7に加え、店頭で買えるStelo(OTC)へ広げている
バイオセンサーの話題でDexcomの名前が出るのは、連続グルコース測定(CGM)だけを事業の中心に置く、数少ない専業の上場企業だからです。 2025年の売上は46億6,200万ドル、研究開発費は5億9,910万ドル、従業員は約11,100人(いずれも年次報告書〔10-K〕)。 主力のG7系は処方が必要な医療機器で、2024年に発売したStelo(ステロ)は、インスリンを使わない人向けの市販(OTC)枠として、FDA(米国食品医薬品局)の510(k)適合を受けています。 本稿は、この会社が何を作り、何に投じ、どこと組み、何が課題かを、一次資料の範囲で整理します。製品の使用を勧める記事ではありません。
- 30秒でわかるDexcomと、バイオセンサーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- バイオセンサーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
- バイオセンサー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるデクスコムと、バイオセンサーでの立ち位置
ウェアラブル・消費者向け(従)主力はCGM。Stelo(OTC)が消費者向けの入口
(皮下のワイヤ型センサー)FDA文書:グルコースオキシダーゼによる電流計測(アンペロメトリー)
Dexcomは「センサー本体の製造」と「臨床・規制・保険の枠組み」の両方を自社で抱える専業で、売上の約85%は卸・薬局などの販売業者(distributor)経由です 本稿の計算(2025年:販売業者39億5,900万ドル÷総売上46億6,200万ドル)。 10-Kによると、2025年に売上の10%以上を占めた顧客は匿名の3社です 事実。 つまり測定の技術力だけでなく、規制当局(FDA)の文書、公的・民間の保険償還、少数の大口販売先の動向が、そのまま事業の姿を決めます。 一方、このうち製造現場の詳細(歩留まり、不良率、素材の調達先)は公表されていません 未確定/将来。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:10-Kに載る法人名は DexCom, Inc.(C が大文字)で、ブランドとしては Dexcom と書かれます。本稿は題名とブランドの文脈では Dexcom と書きます。 G7、G7 15 Day、Stelo、Dexcom ONE+ は製品名であって会社ではありません。 ロゴ画像は同社の公式サイト(dexcom.com)が公開しているロゴを取得し、単色(黒)で表示しています。
公式サイト:https://www.dexcom.com/3. バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模
Dexcomは単一の事業(CGM)の会社なので、会社全体の数値がそのままバイオセンサー事業の数値です。以下はすべて10-Kの値です 事実。
| 指標(百万ドル) | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2025年の前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上 | 3,622.3 | 4,033.0 | 4,662.0 | +15.6%(本稿の計算) |
| 売上総利益 | 2,288.9 | 2,438.2 | 2,801.9 | 粗利率60.1%(2024年は60.5%) |
| 研究開発費 | 505.8 | 552.4 | 599.1 | +8%(10-Kの比率) |
| 営業利益 | 597.7 | 600.0 | 911.8 | +52%(10-Kの比率) |
| 純利益 | 541.5 | 576.2 | 836.3 | +45%(10-Kの比率) |
| 2025年の売上の内訳(百万ドル) | 米国 | 米国外 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 販売業者(distributor)経由 | 3,195.7 | 763.3 | 3,959.0 |
| 直販(direct) | 139.2 | 563.8 | 703.0 |
| 合計 | 3,334.9 | 1,327.1 | 4,662.0 |
売上のうち米国が約71.5%、米国外が約28.5%です 本稿の計算。 2026年4〜6月期(第2四半期)は、売上が13億800万ドル(前年同期比+13%)、営業利益が3億1,830万ドル、純利益が2億4,910万ドルでした(10-Q) 事実。従業員は約11,100人で、うち米国が5,300人、米国外が5,800人です(2025年12月31日現在、10-K)。
10-Kには、売上の10%以上を占める顧客A・B・Cの比率(A=55%、B=35%、C=46%)が載っていますが、3社の比率を足すと100%を超えます。 10-Kの脚注は、「リベート(払い戻し)の扱いのため、合計が100%を超えることがある」と説明しています。 3社の社名と、どの区分の売上かは開示されていません。本稿は、これらを根拠にした推計をしません 未確定/将来。
5. バイオセンサーにかけているリソース
Dexcomは会社全体がバイオセンサー事業なので、人・金は会社全体の数値がそのまま当てはまります。一方で、研究開発の人員数、センサーの製造コスト、歩留まりなどは公表されていません。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 従業員は約11,100人(2025年12月31日)。米国5,300人、米国外5,800人。10-Kの拠点表では、サンディエゴが本社・研究開発・製造、メサとペナンが製造、アセンリー(建設中)が製造。研究開発だけの人員数は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(研究開発) | 2023年5億580万ドル→2024年5億5,240万ドル→2025年5億9,910万ドル。2026年4〜6月期は1億5,300万ドル(売上比12%)。費用の内容は「センシング技術、臨床試験、規制、品質保証、人件費、業務委託」と10-Kが説明 | 事実 |
| 金(設備投資) | 有形固定資産の購入は2023年2億3,660万ドル→2024年3億5,880万ドル→2025年3億6,350万ドル。2026年上半期は1億6,130万ドル。建設仮勘定(建設中の設備)は2026年6月末に6億1,440万ドル | 事実 |
| 生産拠点 | 米国アリゾナ州メサとマレーシア・ペナンで主に製造。アイルランド・アセンリーに新工場を建設中で、「製造能力を大きく増やす」と10-Kが説明(完成時期の記載は確認できず)。マレーシア工場は2023年に最初の建設段階を終えて商用生産を開始 | 事実/完成時期は未確認 |
| 買収・出資・合弁 | ① 2024年11月 Ouraへ7,500万ドルを出資(Series D。会社の発表)。② 非上場企業への出資(non-marketable equity securities)の残高は2026年6月末に2億950万ドル(社名は非開示)。③ 2026年4〜6月期に、ある企業を取得(10-Q。社名・取得額の内訳は非開示。取得した技術を主とする無形資産4,870万ドルを計上、現金支出は4,120万ドル)。④ 2018年のVerily Life Sciencesとの共同開発・ライセンス契約(2018年11月20日付で改訂再契約)。10-Kの税金の説明に、2024年のVerilyへのマイルストーン支払い(Verily milestone payment)への言及あり(金額は本稿の確認範囲では未確認) | 事実/一部社名非開示 |
| 大学・研究機関・公的資金 | ClinicalTrials.govでDexcomが試験の責任企業(スポンサー)または協力者として登録された試験は171件(2026年10月3日に検索)。代表例のCONNECT試験(NCT06601166)は、Dexcomがスポンサーで、Jaeb Center for Health Research、Scripps Research Digital Trial Center、Precision Data Healthが協力。NIH等の公的資金による助成の記載は10-Kで確認できず | 事実/公的資金は確認できず |
規制上の位置づけ(FDAの公式文書で確認できたもの)
| 製品 | 用途(FDA文書の記載) | 区分・番号 | 日付 |
|---|---|---|---|
| Dexcom G6 | 糖尿病の管理。2歳以上。処方用。指先穿刺の代替として治療判断に使うことを意図 | De Novo認可 DEN170088(21 CFR 862.1355、Class II、製品コードQBJ) | 2018年3月27日 |
| Dexcom G7 | 糖尿病の管理。2歳以上。処方用。自動インスリン投与システムなど他機器との通信も意図 | 510(k)適合(clearance) K213919(製品コードQBJ) | 2022年12月7日 |
| Dexcom G7 15 Day | 糖尿病の管理。18歳以上。処方用。装着期間は15.5日(10-K) | 510(k)適合 K243214(QBJ) | 2025年4月9日 |
| Stelo(初回) | インスリンを使わない18歳以上向けの市販(OTC)の連続グルコース測定器 | 510(k)適合 K234070(製品コードSAF) | 2024年3月5日 |
| Stelo(年齢拡大) | インスリンを使わない2歳以上向けのOTC(18歳未満は保護者の監督が必要とFDA文書にある) | 510(k)適合 K260935(製品コードSBH) | 2026年6月12日 |
| Dexcom Smart Basal | 2型糖尿病で長時間作用型インスリンを使う18歳以上向けの、インスリン用量計算ソフトウェア(処方が必要) | 510(k)適合 K252818(QRX) | 2025年11月18日 |
10-Kはこれらの510(k)を含めて「approval(承認)」という語を使うことがありますが、FDAの区分としてはG7・G7 15 Day・Steloとも510(k)適合(clearance)で、G6はDe Novo認可です。PMA承認ではありません。 欧州では、G7が2022年3月に、Dexcom ONE+が2023年11月にCEマークを得たと10-Kに書かれています。日本の承認・認証の状況は、本稿では確認していません 未確定/将来。
Steloの最初の510(k)(K234070)は、G7を比較対象(predicate)とし、「同一のハードウェア・材料・化学組成・動作原理・エネルギー源をもつ」と書かれています 事実。つまり、センサーの素材と構造を変えずに、用途(誰が・どこで使うか)だけを変えて別の区分で出す方法です。 素材の面では、一度立ち上げた「ワイヤ状センサー+接着パッチ+送信器」の設計と、その生体適合性・滅菌・保管安定性のデータを、複数の製品に再利用できる強みがあると読めます 未確定/将来。ただし、再利用が通る範囲を決めるのはFDAで、会社ではありません。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1999年 | 創業(会社の記載) | グルコースのバイオセンシングで25年以上と会社が記載 |
| 2006年 | 最初の製品をFDAから認可を受けて発売(10-Kの記載。当時の区分は本稿では未確認) | CGMの商用化の出発点 |
| 2018年3月27日 | G6がDe Novo認可(DEN170088)。10-Kは「他の機器と組み合わせる統合型システムとして使うことが認められた最初のCGM」と説明 | 以降、この種の機器は510(k)で出せるようになったと10-Kが記載 |
| 2018年11月20日 | Verily Life Sciencesとの共同開発・ライセンス契約を改訂して再契約(10-Kの契約一覧) | Verilyは旧Google Life Sciences(10-Kの記載)。契約の細部は非公開 |
| 2022年12月7日 | G7が510(k)適合(K213919)。2023年に発売 | 送信器一体型。欧州ではCEマークを2022年3月に取得 |
| 2024年3月5日 | Steloが510(k)適合(K234070)。2024年8月に発売 | 10-Kは「米国初のOTCのグルコースバイオセンサー」と会社の言葉で記載 |
| 2024年11月19日 | Ouraへ7,500万ドルを出資(Series D)。アプリ間の連携と相互販売を発表 | 消費者向けウェアラブルとの接続 |
| 2024年12月20日 | Abbott Diabetes Careとの「機密の和解・特許ライセンス契約」を締結(10-Kの契約一覧) | 競合との係争を整理。内容は非公開 |
| 2025年3月4日 | FDAから警告書(warning letter)を受領。サンディエゴ(2024年10〜11月に査察)とメサ(2024年6月に査察)の製造工程・品質管理の不備 | 会社は「製品の製造・販売・出荷は制限されず、リコールも求められていない」と8-Kで説明 |
| 2025年4月9日 | G7 15 Dayが510(k)適合(K243214)。2025年末に発売 | 装着期間を15.5日に延長。対象は18歳以上 |
| 2025年11月18日 | Smart Basal(インスリン用量計算ソフト)が510(k)適合(K252818) | センサー情報を使うソフトウェアへ範囲を拡大 |
| 2026年5月14日 | 投資家説明会(アリゾナ州メサ)。2030年までの長期目標を公表 | 会社の目標であり実績ではない |
| 2026年5月26〜27日 | G7の特定ロット2つが盗難により流通したとして、訂正通知(correction notification)を発出。FDAのリコールデータベースに2026年5月27日開始で掲載 | 下の「リスク」で事実のみを記載 |
| 2026年6月12日 | Steloの年齢を2歳以上に広げる510(k)適合(K260935) | OTCの対象拡大 |
| 2026年4〜6月期 | ある企業を取得(社名非開示。無形資産4,870万ドル) | 10-Qの記載 |
7. 今後の計画
ほかに、次の計画や予定が一次資料に書かれています 未確定/将来。
- 旧世代の整理:G6の利用者を2026年末までにG7・G7 15 Dayへ移す予定。Dexcom ONEも2026年末までに段階的に終了する見込み。2026年4〜6月期には、G6製造の終了計画を理由の一つとする在庫評価損を計上(上半期で8,420万ドル)
- Steloの強化:新しいアプリ(AIによる傾向の提示、食事記録の強化)を2026年4〜6月期に順次展開開始と発表
- 新しい用途の探索:10-Qは「前糖尿病の人、肥満の人、妊娠中の人、入院中の人」への展開を探ると書き、「将来はグルコース以外の測定に技術を広げる可能性がある」と述べる(計画ではなく探索)
- 臨床試験:CONNECT試験(2型糖尿病でインスリン非使用の成人、26週)は、2026年5月13日に主要評価の期間を終了(ClinicalTrials.govの実績日)。会社は2026年4〜6月期に「通常診療に比べて有意な血糖管理の改善」を示す結果を発表(会社の説明。数値は本稿で未確認)。全体の完了予定は2026年12月(推定)
- 公的保険の変更(会社の外の動き):米国メディケアは2027年からCGMを競争入札の対象に加え、支払いの変更は2028年1月1日から。CGMの契約業者は10社が選ばれる見込みと10-Kが記載
アセンリー工場の稼働開始時期と投資総額/センサーの歩留まりや不良率/素材・部品の調達先の社名/警告書が解決したかどうか(2026年2月の10-Kは「応答中」と書き、2026年7月の10-Qでは該当の記載を確認できず)/研究開発の人員数/日本での承認・認証の状況。いずれも本稿が確認した一次資料には見当たりません。
8. この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
会社が「目指す」と直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈で、会社の公表内容ではありません。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 血糖の連続測定を、インスリン使用者から、使わない人・健康管理の消費者へ広げる | 10-Qの「New Opportunities」は前糖尿病・肥満・妊娠・入院を挙げる。Stelo(OTC)の発売、2026年のStelo年齢拡大、Ouraへの出資、CONNECT試験(インスリン非使用の2型糖尿病) | 事実(会社の説明)/推測(その狙いの強さ) |
| 製造能力の拡大で、需要の伸びに供給で応える | 設備投資は年3億6,000万ドル規模。マレーシアで商用生産を開始、アイルランドに新工場。10-Kは「製造能力を現在の水準から大幅に増やす必要がある」と書く | 事実/推測 |
| センサーだけでなく、測定値を使うソフトウェア(用量計算、AI分析)に範囲を広げる | Smart Basalの510(k)適合、10-Qの「インテリジェントなインスリン投与を可能にする将来世代」「機械学習で予測的な洞察を作る」との記載 | 事実(記載)/推測(重点度) |
| 他社の自動インスリン投与システムとの連携の網を保つ | 10-Kは「複数のインスリン送達システム企業との連携契約」を述べるが、社名は挙げていない。510(k)文書は他機器との通信を意図した用途を記載 | 事実(連携の存在)/社名は確認できず |
| 旧世代(G6、Dexcom ONE)を終えて、G7系に集約する | G6製造の終了計画、利用者の移行を2026年末までに完了する予定との記載 | 事実(会社の計画) |
「消費者向けに広げる」という読みの根拠は、製品の設計を変えずに区分を増やしていることです。 Steloは、G7を比較対象に「同一のハードウェア・材料・化学組成・動作原理」をもつとして2024年に510(k)適合を受け、2026年には対象年齢を18歳以上から2歳以上へ広げました 事実。 同じセンサーを、処方用(G7)と市販用(Stelo)の二つの窓口で売る形です。 10-Kはさらに、2026年1月6日のFDAのガイダンスが「一般的な健康機器(general wellness device)」の範囲を広げ、血糖を含む生体情報を示すウェアラブルにも及ぶ可能性を、競合上の論点として挙げています 事実。 ただし、Steloの売上や利用者数は10-Kに別掲されていません。消費者向けがどれほどの規模かは確かめられません 未確定/将来。
9. バイオセンサー分野の提携マッピング
10-Kの契約一覧に載る社名つきの契約は、Verily(共同開発・ライセンス)とAbbott(和解・特許ライセンス)の2件です。Ouraは、2024年の同社発表で出資と連携が公表されました 事実。 インスリンポンプやペンの各社との連携については、10-Kが「複数の連携契約がある」と書くだけで、社名は挙げていません。 本稿は、他社の資料から社名を補うことをしません。連携の実際の対応機種は、各社の公式資料で確認が必要です。
10. 提供している技術・製品・サービス
Dexcomの製品は、体に貼るセンサーと送信器、スマートフォンのアプリ(または専用受信器)、クラウドの閲覧ソフト(Dexcom Clarity)、家族などと共有する機能(Dexcom Share/Follow)の組み合わせです 事実。 性能の数値は、メーカー公称とFDAの審査文書を区別して示します。異なる試験・製品の数値を並べた優劣の判断はしません。
| 製品 | 公式資料に載っている内容 | ひとこと |
|---|---|---|
| Dexcom G7 | FDA文書(K213919):間質液のグルコースを、グルコースオキシダーゼの反応で電流として測定(アンペロメトリー)。測定範囲40〜400 mg/dL、ウォームアップ30分以内(27分)、装着最長10日+12時間の猶予、5分ごとに値を送信。滅菌はエチレンオキサイド(EO)。装着部位は上腕(2歳以上)、臀部上部(2〜6歳)。送信器はセンサーと一体で使い切り(10.5日) | 処方用。ワイヤ状の小さな柔軟なセンサーを皮下に挿入 |
| Dexcom G7 15 Day | FDA文書(K243214):成人の参加者で、静脈血漿のYSI測定を参照に、15日間の装着にわたり評価した臨床試験で、iCGMの特別管理(special controls)を満たすとしている。装着期間は15.5日、ウォームアップ60分(10-K)。会社の記載(10-K):MARD 8.0%、比較対象の±20%以内に94.2%(比較条件の詳細は10-Kに記載なし) | 数値は会社公称。FDA要約にMARDの数値は掲載されていない |
| Dexcom ONE+ | 欧州でCEマーク(2023年11月)。妊娠中の人を含む2歳以上。G7に近い機能と10-Kが説明 | 米国の510(k)文書は本稿では確認していない |
| Stelo | FDA文書(K234070、K260935):OTCの連続グルコース測定器。インスリンを使わない人が対象で、血糖の高低の検出と、食事や運動が血糖の動きに与える影響の理解を助けるとある。透析中、問題となる低血糖がある人、医療者に相談せず薬を調整する人、摂食障害の既往がある人は対象外とFDA文書に記載(K260935) | K234070では「医療者への相談なしに測定値に基づいて医療行為をすることを意図しない」とされていた記載が、K260935で削除 |
| Dexcom Smart Basal | FDA文書(K252818):長時間作用型インスリンを使う2型糖尿病の18歳以上向けの用量計算ソフト。処方と、医療者による初期設定が必要 | 測定値を使うソフトウェア |
| アプリ・クラウド | Dexcom Clarity(クラウドの報告ソフト)、Dexcom Share/Follow(最大10人と共有)、Apple Watchなどの表示、他社のデジタル健康アプリとの連携 | 10-Kの記載。連携先の個別名は挙げていない |
FDAの審査文書は、G6・G7とも、間質液中のグルコースを、グルコースオキシダーゼの酵素反応で測る電流計測と説明しています 事実。この方式では、酵素が固定された電極の表面、血液成分の影響を抑える膜、生体と接する面の材料が、性能と寿命を決めます。 10-Kは、センサーの核となるワイヤは自社製造で、残りの部品は外部調達、そのうち集積回路(ASIC)、アプリケータ用のシール、センサーの高分子膜を合成する一部のポリマーは単一の調達先から買っていると書いています 事実。膜の高分子の調達先が一つであることは、素材の仕様を変えにくく、供給が止まると代替の評価に時間がかかる、という素材面のリスクを意味します 未確定/将来。
FDA文書には、干渉物質(hydroxyurea、アセトアミノフェンの大量摂取など)が測定値に影響しうる、と記載があります。10-Kは、G7の特徴として「一般的な薬剤の通常用量に影響されにくい」ことを挙げますが、これは会社の説明で、条件の詳細は本稿では確認していません。 滅菌が、G6の電子線からG7のEOに変わったことは、酵素や膜の保管安定性を維持する方法が変わったことを意味しますが、その設計判断の理由は公表されていません(推測:酵素の失活や膜への影響の管理に関わると考えられる)。 15日装着では、FDA文書が「機器関連の有害事象として、局所感染、皮膚刺激(浮腫)、痛みや不快感」を挙げ、新しいセンサーパッチがセンサーの「生存率」を高める目的で追加の臨床試験にかけられたとしています(「生存率」の定義はFDA要約に記載なし。装着が保たれる割合と読めますが、これは推測です)。長期装着では、皮膚と接着材の組み合わせが製品の成否を左右します。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| FDAの警告書 | 2025年3月4日に受領。サンディエゴとメサの製造工程と品質管理の不備。会社は、製品の製造・販売を制限せず、リコールも求めていないと説明する一方、「解決までは追加の法的・規制措置がありうる」と述べる。2026年2月の10-Kは応答中と記載。解決したかは本稿では確認できず | 事実/解決の有無は未確認 |
| リコール・訂正通知 | FDAのリコールデータベースに、2025〜2026年に複数件が掲載されている。例:2025年7月24日(アプリが「センサー故障」警報を出さない不具合)、2026年4月14日(アプリの表示遅延)、2026年5月27日開始(廃棄予定だったG7センサーの2ロットが廃棄過程で盗まれ、薬局・販売業者に売られた。1ロットは滅菌が不十分、もう1ロットはセンサーの無反応または不正確のおそれで廃棄指定されていた)。個別の利用者への対応は各通知による。本稿は利用者への助言をしない | 事実(FDA記録の記載) |
| 訴訟 | ① 証券集団訴訟(カリフォルニア南部地区、ニューヨーク南部地区の連邦地裁):2024年の売上見通しなどに関する発言が争点。カリフォルニアの件は2026年1月に一部が訂正の機会つきで退けられ、第2次修正訴状に対して会社が棄却を申し立て中(10-Q)。② 株主代表訴訟が複数(証券集団訴訟の結論まで停止)。③ G6・G7の利用者による消費者集団訴訟(2025年9月〜2026年1月に6件):購入した機器が表示どおりに機能しない、などを原告が主張(原告の主張であり、会社は争う方針)。いずれも結果を見通せない、と10-Qが記載 | 事実(10-Q) |
| 公的保険の制度変更 | メディケアが2027年の契約手続きからCGMを競争入札に加え、支払い変更は2028年1月1日から。CGMの契約は10件の見込み。医療機器の売上は保険の償還条件に大きく左右される | 事実(10-K)/影響は推測 |
| 大口販売先への集中 | 売上の10%以上を占める顧客が匿名の3社。販売業者経由が売上の約85% | 事実/本稿の計算 |
| 競合と市場の定義の変化 | 10-Kは、Abbott、MiniMed(Medtronicの糖尿病事業)、Roche、中国の新規参入者などを競合に挙げ、Steloの競合はAbbottと記載。2026年1月のFDAガイダンスで「一般的な健康機器」の範囲が広がり、血糖を含む生体情報を示すウェアラブルに有利に働く可能性があるとも述べる | 事実 |
| 製造拡張の難しさ | 新工場の立ち上げ、設備、歩留まり、品質管理、単一調達先の素材。10-Kは、製造能力が足りないと成長が制限されうる、と書く | 事実(会社のリスク認識) |
| 旧世代の整理費用 | 2026年上半期の在庫評価損は8,420万ドル(前年同期3,700万ドル)。G6製造の終了計画などを反映 | 事実 |
| 消費者向けの規模の確認 | Steloの売上・利用者数は別掲されていない。消費者向けが事業にどれほど寄与しているか、外部から確かめにくい | 未確定/将来 |
12. 用語集
- CGM(連続グルコース測定)
- 皮下の間質液中のグルコース濃度を、数分ごとに自動で測り続ける方式。指先から採血する血糖測定とは別の方式。
- iCGM
- 他の機器(自動インスリン投与システムなど)と安全に接続して使うことを前提に、FDAが特別管理(special controls)を定めたCGMの区分。21 CFR 862.1355。
- MARD
- 平均絶対相対差。CGMの値と参照値のずれの平均的な大きさ。参照法・対象者・条件が違うと比べられない。
- 510(k)適合(clearance)
- 既に市場にある類似の機器(比較対象)と実質的に同等であることをFDAが認める手続き。PMA承認(approval)とは別。
- De Novo認可
- 比較対象がない新しい種類の低〜中リスク機器を、FDAが新たに分類して認める手続き。
- OTC(市販)
- 処方箋なしで購入できる区分。使う対象や禁忌は、FDA文書の用途の記載どおり。
- グルコースオキシダーゼ
- グルコースを酸化して過酸化水素を作る酵素。その反応で生じる電流からグルコース濃度を求める。
- 警告書(Warning Letter)
- FDAが査察後に、法令違反の疑いを文書で通知するもの。Form 483(査察所見)への応答が不十分と判断されたときなどに出る。
- DMEPOS競争入札
- 米国メディケアが、耐久医療機器などの供給業者を入札で選ぶ制度。CGMが2027年の手続きから対象になる。
- 非GAAP
- 会計基準(GAAP)の数値から、一部の費用を除いて会社が示す指標。比較には定義の確認が必要。

13. 出典
- Dexcom Form 10-K(2025年12月期、2026年2月12日提出)。事業概要、製品、規制上の位置づけ、売上・費用、従業員、製造、競合、リスク、訴訟、契約一覧。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1093557/000109355726000027/dxcm-20251231.htm
- Dexcom Form 10-Q(2026年6月30日終了の四半期、2026年7月30日提出)。2026年4〜6月期の業績、将来の開発計画、企業取得、在庫評価損。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1093557/000109355726000143/dxcm-20260630.htm
- Dexcom Form 8-K Exhibit 99.1「Dexcom Reports Second Quarter 2026 Financial Results」(2026年7月30日)。2026年の見通し、Steloの新アプリ、CONNECT試験の発表。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1093557/000109355726000142/dxcm06302026-exhibit991.htm
- Dexcom Form 8-K(2026年5月14日、2026 Investor Day)。2030年までの長期目標。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1093557/000109355726000085/dxcm-20260514.htm
- Dexcom Form 8-K(2025年3月4日)。FDA警告書の受領と会社の説明。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1093557/000109355725000047/dxcm-20250304.htm
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K213919(Dexcom G7、2022年12月7日)。用途、動作原理、仕様。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf21/K213919.pdf
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K243214(Dexcom G7 15 Day、2025年4月9日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf24/K243214.pdf
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K234070(Stelo、2024年3月5日適合)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf23/K234070.pdf
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K260935(Stelo、2026年6月12日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf26/K260935.pdf
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K252818(Dexcom Smart Basal、2025年11月18日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf25/K252818.pdf
- 米国FDA De Novo Decision Summary DEN170088(Dexcom G6)。用途と動作原理。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/reviews/DEN170088.pdf
- 米国FDA(openFDA) DEN170088の決定日(2018年3月27日)の記録。 https://api.fda.gov/device/510k.json?search=k_number:DEN170088
- 米国FDA(openFDA) リコール記録 event 98968(G7センサー2ロット、2026年5月27日開始)。 https://api.fda.gov/device/recall.json?search=res_event_number:98968
- 米国FDA(openFDA) リコール記録 event 98639(G7アプリ、2026年4月14日開始)。 https://api.fda.gov/device/recall.json?search=res_event_number:98639
- 米国FDA(openFDA) リコール記録 event 97262(G7・ONE+アプリ、2025年7月24日開始)。 https://api.fda.gov/device/recall.json?search=res_event_number:97262
- ClinicalTrials.gov NCT06601166(CONNECT試験。スポンサー:DexCom, Inc.、協力:Jaeb Center for Health Research ほか)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06601166
- ClinicalTrials.gov スポンサー/協力者「Dexcom」で登録された試験の件数(API。2026年10月3日に総数171件を確認)。 https://clinicaltrials.gov/api/v2/studies?query.spons=Dexcom&countTotal=true&pageSize=1&fields=NCTId
- Dexcom 投資家向けニュース「Dexcom and ŌURA Announce Strategic Partnership」(2024年11月19日)。 https://investors.dexcom.com/news/news-details/2024/Dexcom-and-URA-Announce-Strategic-Partnership/default.aspx
- Dexcom 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.dexcom.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月4日/Troy Technical
本稿の数値は、Dexcomの法定開示書類(SEC提出書類)、米国FDAの公開文書、ClinicalTrials.gov、会社の公式発表に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は製品の使用や医療上の判断を勧めるものではありません。