COMPANY PROFILE / バイオセンサー
バイオリンク
― 皮膚の浅い層(皮内)で測るグルコースセンサー「Shine」を作る非上場企業。2025年にFDAのDe Novo認可を得たが、対象はインスリンを使わない成人に限られる
バイオセンサーの話題でBiolinqの名前が出るのは、従来のCGM(連続グルコース測定)より浅い、皮膚の「皮内」に7本の微小電極を置く新しい型のセンサーを作り、実際に規制当局の認可を得たからです。 FDAの判断要約によると、製品「Biolinq Shine」は2025年9月23日にDe Novo認可(新しい区分「glucose range monitoring system」)を受けました。ただし、グルコース値の数字は出さず、LEDの色(範囲)で示す半定量の機器で、対象はインスリンを使っていない22歳以上、処方が必要です。 財務は非公開ですが、SECに出した資金調達の書類(Form D)とNIHの助成の記録から、資金の流れがたどれます。 本稿は、この会社の製品が何を測れて何を測れないか、資金をどこから得ているかを、一次資料の範囲で整理します。
- 30秒でわかるBiolinqと、バイオセンサーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- バイオセンサーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
- バイオセンサー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるバイオリンクと、バイオセンサーでの立ち位置
(皮内センサー)処方が必要な医療機器。消費者向けウェアラブルとは区別される
2025年9月23日DEN240080。クラスⅡ、製品コードSFU
22歳以上数値でなくLEDの色で範囲を示す。低血糖の気づきには使わない
グルコースオキシダーゼ皮内(乳頭真皮)の間質液を、電流で測る方式(FDA文書)
Biolinq Shineは「数字を出さないCGM」です。FDAが認可したのは、血糖値の数字ではなく、青(70〜180 mg/dL)、黄(181〜400 mg/dL)、赤(70 mg/dL未満)のLEDの色で範囲(time-in-range)を示す半定量の機器で、アラームも出しません。 FDAの文書は、インスリンを使う人、1型糖尿病の人、重い低血糖のリスクが高い人には使わないこと、低血糖の気づきのために使わないことを明記しています 事実。 会社のサイトは「FDA cleared」と書いていますが、FDAのデータベース上の区分は「De Novo」の認可(granted)で、510(k)のclearanceとは異なります 事実。 市販の開始時期、価格、販売の範囲は、確認した資料に書かれていません 未確定/将来。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Biolinq Incorporated(SECの登録名は Biolinq Inc)です。日本語で定着した表記は確認できなかったため、本稿は英字表記にします。 Biolinq Shine は製品名で、FDAの文書での正式名は「Biolinq Shine Autonomous Time-in-Range Microsensor」です。 ロゴ画像は同社の公式サイトのページ上部で使われている白抜きのロゴ画像を取得しました(暗い背景用のため、本稿でも暗い背景に置いています)。
公式サイト:https://www.biolinq.com/3. バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模
Biolinqは非上場で、売上・利益・従業員数は公表されていません。SECに提出されたForm Dでも、売上の範囲の欄は「開示しない(Decline to Disclose)」です。確認できるのは、調達した資金の規模です 事実。
| Form Dの提出日 | 募集総額(US$) | 販売済み(US$) | 投資家数 | 最初の販売日 |
|---|---|---|---|---|
| 2016年9月28日 | 750,000 | 450,000 | 5 | 2016年9月16日 |
| 2017年11月27日 | 13,115,919 | 8,115,919 | 17 | 2017年11月14日 |
| 2019年3月20日 | 3,000,000 | 3,000,000 | 9 | 2019年3月13日 |
| 2020年4月7日(7月7日に訂正) | 8,000,000(訂正後10,000,000) | 3,554,335 | 17 | 2020年3月25日 |
| 2021年3月23日 | 6,000,000 | 5,223,811 | 21 | 2021年3月16日 |
| 2021年9月17日(2022年6月1日に訂正) | 109,511,762(訂正後105,609,392) | 62,178,431(訂正後77,946,902) | 54(訂正後62) | 2021年9月2日 |
| 2023年12月26日(2024年3月・9月に訂正) | 50,000,000(最終59,139,615) | 35,114,615(最終59,139,615) | 25(最終43) | 2023年12月13日 |
| 2025年3月21日 | 100,000,000 | 90,000,000 | 45 | 2025年3月7日 |
Form Dは、非公開の資金調達をSECに届ける書類で、募集の総額と販売済みの額が書かれます。回ごとの額を単純に足すと重複する可能性があるため、本稿は合計を計算しません。 会社は、2025年4月22日にシリーズC(US$100百万)の完了を発表しています。技術ページには「120M dollars invested」(累計の投資額と読める)という記載もありますが、時点と内訳は書かれていません 事実。
Biolinqの売上・従業員数・製造拠点・製造委託先は、確認した資料にありません。Form Dの募集額は、企業価値や売上の目安ではありません。 会社の技術ページには「治験中の機器(Investigational device)」という注意書きが繰り返し入っています(ページの作成時期は不明で、Shine以外の多分析物のプラットフォームについての注意と読めますが、明示はされていません)。製品「Shine」の販売の現状は、本稿では確認できませんでした 未確定/将来。
5. バイオセンサーにかけているリソース
Biolinqは非上場で、人員・費用の額は非公表です。確認できた範囲を表にします。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 従業員数は非公表。公式サイトの経営陣のページは、CEO(Rich Yang、DexcomとMedtronicの出身)、共同創業者で社長兼CTOのJared Tangney(UCSDで生体工学の博士)、規制・臨床、研究開発、品質、製造の責任者を載せる。多くがDexcomなどCGM企業の出身と書かれている | 事実/一部非公表 |
| 金(調達) | Form Dの募集額は第4章のとおり。会社は2025年4月22日にシリーズC US$100百万の完了を発表(Alpha Wave Venturesが主導。既存投資家のRiverVest Venture Partners、AXA IM Alts、LifeSci Venture Partners、M Ventures、Hikma Ventures、Aphelion Capital、Taisho Pharmaceutical、Features Capitalが参加)。使途は「米国の規制承認の過程」と「初の自律型皮内グルコースセンサーの市場投入の準備」。研究開発費・設備投資の額は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 買収・出資・合弁 | Biolinqが他社を買収・出資した記録は確認できず。Biolinqへの出資側は上のとおり。事業の売却も確認できず | 確認できず |
| 大学・研究機関・公的資金 | NIHの研究費データベース(RePORTER)に、Biolinq名義の助成が14件・合計US$6,129,929(本稿の計算。2013〜2026年度)。内容:NIDDKの「皮内マイクロニードルによる多分析物センシング」(R43DK097989、2013〜2014年度)、「電解質のセンシング」(R43DK103559)、NIAAAの「血中アルコールのウェアラブル測定」(R44AA024643、2015〜2017年度)、NIAの「水分状態の連続測定」(R43AG048626)、そしてNIDDKの「乳酸とグルコースのウェアラブル測定」(R44DK129875、2021年9月〜2028年5月、2026年度US$861,567)。会社のサイトは「有力な大学・生体工学の研究機関と提携」と書くが機関名は書かれていない | 事実/一部確認できず |
規制上の位置づけ(確認できた範囲)
| 製品 | 用途(intended use) | 区分 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| Biolinq Shine Autonomous Time-in-Range Microsensor | 皮内の連続グルコースセンサー(色が変わる表示灯つき)。LEDの色で、グルコースの変化を質的に示し、血糖に関わる疾患・状態の管理を助ける。22歳以上のインスリンを使っていない人。アプリはより詳しい情報を示す。処方が必要。医療行為は医療従事者への相談なしに行うことを想定しない | FDA De Novo認可(DEN240080。クラスⅡ、製品コードSFU、21 CFR 862.1359「glucose range monitoring system」)。510(k)ではない | 受理 2024年12月27日、判定 2025年9月23日(約9か月、本稿の計算) | 出典1・2 |
| 使わないとされる人(FDA文書) | 1型糖尿病、インスリン使用者、重い低血糖のリスクが高い人、自動インスリン投与システムの利用者、妊娠中の女性、透析中の人、重症患者、22歳未満。低血糖の気づきのために使わない。アラーム・アラートなし | ― | ― | 出典1 |
| EU・日本など | ― | CEマーク、PMDAの承認・認証は確認できなかった | ― | ― |
FDAの「De Novo」は、既存の同等品がない新しい型の低〜中リスクの機器に、新しい分類を作って認める区分です。「510(k) clearance」(既存品との同等性)や「PMA承認(approval)」とは異なります。
FDAの判断要約によると、Biolinq Shineはグルコースオキシダーゼ(酵素)でグルコースを酸化し、電子を電極に渡して電流を測る方式(アンペロメトリー)で、7本の微小電極(マイクロセンサー)のアレイを皮内の乳頭真皮に置きます。装置本体は工場で較正済みで、ユーザーは較正できません。装着後2時間で測定を始め、データは最大5日分保存されます 事実。 会社は、アレイを「半導体の製造技術」で作り、従来の皮下型より「最大20倍浅い」と説明しています(会社の主張)。技術ページは、複数の独立したセンサーが協調して信頼性を高める設計だと説明しています 未確定/将来。詳しくは第10章に書きます。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2013〜2015年度 | NIHの中小企業向け研究費(SBIR)の最初期の助成:皮内マイクロニードルによる多分析物センシング(NIDDK、R43DK097989)、電解質のセンシング(NIDDK、R43DK103559)、水分状態の連続測定(NIA、R43AG048626) | 公的資金による初期の技術検証。血糖に限らない多分析物の発想が当初からある |
| 2015〜2017年度 | 血中アルコールのウェアラブル測定の助成(NIAAA、R44AA024643、第2段階) | 糖尿病以外の測定対象での開発 |
| 2016年9月28日 | 最初のForm D(募集総額US$750,000) | SECの書類で確認できる最も古い資金調達 |
| 2021年9月 | US$105〜110百万規模のForm D(最初の販売日2021年9月2日)。同月、NIDDKの助成「乳酸とグルコースのウェアラブル測定」(R44DK129875)が開始 | 乳酸・活動量・グルコースを同時に測る構想 |
| 2023年12月13日 | US$50百万規模のForm D(最初の販売日。最終的にUS$59.1百万を販売) | 公式サイトのニュース欄には、2024年4月の約US$58百万の調達を伝える外部の報道が並ぶ。時期と規模はForm Dの額と近いが、会社自身のリリース本文は本稿で確認していない |
| 2024年2月29日〜6月10日 | 米国6施設での重要な臨床試験(NCT06229743)。247人が登録、202人がBiolinq Shineを装着 | FDAの判断を支えたデータ |
| 2024年9月10日〜27日 | 外部の干渉物質の臨床研究(NCT06560177、31人。アセトアミノフェン1,000 mgを単回投与) | 干渉物質の影響の確認 |
| 2024年12月27日 | FDAがDe Novo申請を受理 | |
| 2025年3月・4月 | Form D(2025年3月21日提出、US$100百万規模・US$90百万販売済み)。4月22日にシリーズC(US$100百万)の完了を発表 | 認可前の最終の資金調達 |
| 2025年9月23日 | FDAがDe Novo認可(DEN240080)。9月25日に会社が発表 | 新しい分類「glucose range monitoring system」の最初の機器(FDA文書による分類。「first」は会社の主張) |
| 2026年 | NIHの助成(R44DK129875)の2026年度分(US$861,567)。公式サイトは「Now FDA cleared」と表示 | 会社の表記は「cleared」だが、FDAの区分は「De Novo」 |
7. 今後の計画
以下は会社の発表や助成の計画に書かれた内容であり、達成された事実ではありません。販売や多分析物の計画の具体的な日付は、確認できた資料にありません 未確定/将来。
Shineの発売日・価格・販売経路・保険の扱い、販売数、製造拠点と製造委託先、従業員数、売上、センサーの電極・酵素・膜の材料、特許の件数、インスリン使用者向けの適応拡大の計画、米国外(EU・日本)での申請、グルコース以外の測定項目の具体的な開発状況。
8. この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
会社が資料に直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 治療判断ではなく、生活習慣の気づきのための市場から入る | FDAの用途は「インスリンを使わない22歳以上」「医療行為は医療従事者への相談なしに行わない」「acute behavior and lifestyle modifications」。会社も「最初はインスリンに依存しない2型糖尿病」と書く | 事実(用途・発表)/推測(市場の選び方) |
| 将来は、グルコース以外の測定(乳酸など)と、自動インスリン投与との連携を視野に入れている | NIHの助成の概要は、AIDとCGMの利用者の負担、乳酸と活動量とグルコースを測るセンサーによる低血糖の低減を目的に挙げる。技術ページは多分析物のプラットフォームを強調 | 事実(助成の目的)/推測(製品化の方向) |
| 半導体の製造技術で、大量に作れるセンサーを目指す | 会社のリリースは「state-of-the-art semiconductor technology」でアレイを作ると説明し、技術ページは「Designed for scale」と書く。製造拠点や数量は不明 | 事実(主張)/推測(規模の見込み) |
| 表示のためにスマートフォンを要らなくする | FDA文書:本体のLEDが主な表示で、アプリは必須でなく補助。会社は「works with and without a phone」と説明 | 事実 |
「インスリン使用者を含む将来の適応拡大を視野に入れている」という読みの根拠は、NIHの助成の概要です。 NIDDKの助成R44DK129875(2021年9月〜2028年5月)の概要は、自動インスリン投与(AID)とCGMが進歩する一方で、食事や運動の情報を手入力する負担が大きいこと、運動(加速度計)と乳酸、グルコースを測るセンサーが低血糖を減らし、目標範囲に入る時間を延ばしうることを述べます。第Ⅱb相の資金は、最終の技術最適化、パイロット工程、FDAとの最終要件の確認、初期の商業化計画に使うとあります 事実。 一方、2025年のFDA認可の用途はインスリンを使う人と自動インスリン投与の利用者を明確に除外しており、この助成が目指す製品が実際にどの規制区分になるか、いつになるかは書かれていません 未確定/将来。
9. バイオセンサー分野の提携マッピング
Biolinqの資料で社名が確認できる関係は、シリーズCの出資者(会社のリリースが列記)とNIHの助成です 事実。 共同開発や導入・導出の提携、センサーの部材(電極、酵素、膜、半導体の製造)の供給元・製造委託先は、確認した資料にありません 未確定/将来。
10. 提供している技術・製品・サービス
Biolinq Shineは、皮膚に貼る本体(センサー、LED、加速度計、環境光センサー、電池)とアプリで構成されます。以下の性能値はFDAの判断要約に載る臨床試験の結果で、参照法・対象・条件とセットで読む必要があり、他社の製品と数値を並べて優劣をつけることはできません。
| 区分 | 公式資料に載っている内容 | ひとこと |
|---|---|---|
| センサー | 7本の微小電極のアレイ。皮内の乳頭真皮に置く。グルコースオキシダーゼによるアンペロメトリー(FDA文書)。測定範囲70〜400 mg/dL。装着部位は前腕の内側のみ | 会社は「皮下に挿す導入針がない」「最大20倍浅い」と説明(会社の主張) |
| 表示 | 本体のLED:青=70〜180 mg/dL、黄=181〜400 mg/dL、赤=70 mg/dL未満。急上昇や400 mg/dL超は点滅で示す。エラーは白の点滅、使用期限は紫 | 数値は出さない半定量。アラーム・アラートはない |
| 使い方・仕様 | 工場較正で、ユーザーによる較正はできない。装着後2時間で測定開始。データは最大5日分を保存。防水:水深2 mで30分まで。使用温度10〜42°C、標高3,200 m以下。1回使い切り | 装着後2時間で測定を開始する(FDA文書の記載) |
| アプリ | より詳しいグルコース情報と、食事・休息・活動との相関を示す。加速度計による活動、睡眠時間の記録 | 必須ではなく補助 |
| プラットフォーム | 複数の分析物を測る構想。技術ページは「治験中の機器」の注意つきで記載 | Shineとは別の、現時点で認可のない領域 |
臨床試験の結果(FDAの判断要約。メーカー公称ではなく当局文書の値)
| 項目 | 値 | 条件・出所 |
|---|---|---|
| 試験の設計 | 247人登録、202人が装着 | 米国6施設、2024年2月29日〜6月10日。成人(22歳以上)の糖尿病。1型66.8%、インスリン強化療法の2型20.3%、基礎インスリンのみの2型5.9%、インスリンを使わない2型6.9%(1型は表示範囲のデータを十分に得るために含めた)。比較は研究室用の血糖測定器(YSI 2300 STAT Plus)による静脈血、15分ごと。装置は盲検。グルコースは試験の手順で上下させた |
| 本体の表示と比較値の一致率 | 比較値が70未満で73.9%、70〜180で79.8%、181〜400で86.2%、400超で78.6% | 同じ試験。比較値の範囲ごとに、本体の表示が同じ範囲だった割合(FDA表の対角成分、本稿の読み取り)。比較値70〜180のうち6.7%は赤、13.5%は黄と表示された |
| 2台同時装着の一致率 | 70〜180の表示で90.8% | 77人が2台を装着し、うち68人・77,311組を解析。表示範囲の一致 |
| センサーの生存率 | 5日間で84.7% | 1日目96.3%、3日目91.1%、4日目88.9%。装着した190台のうち、5日間の意図した期間を完了した割合 |
| 表示率 | 平均93.9%(中央値98.4%) | 表示できたグルコース読み取りの割合。85%以上の本体は88.9% |
| 干渉物質 | アセトアミノフェン、ヒドロキシウレア、キシロース | ベンチ試験で正のバイアス。アセトアミノフェンは31人の臨床研究(1,000 mg単回)でも確認され、本体が高い範囲を示す傾向があった。FDA文書の使用上の注意に反映 |
FDA文書から、素材に関わる次の点が読み取れます 事実。
- グルコースオキシダーゼの電気化学:酵素の反応を電流に変える点は、他の電気化学式のCGMと共通です(本シリーズの技術解説「電気化学センサー」「酵素と電極界面の材料」を参照)。違いは電極を皮内の浅い層に置く点で、組織の液(間質液)の量が少ない位置で測ることになります(本稿の解説)。
- 干渉物質:アセトアミノフェン、ヒドロキシウレア、キシロースが測定値を高く見せると書かれています。電極で反応しやすい物質の影響を受ける電気化学式に共通の課題です(本稿の解説)。
- 滅菌と保管:電子線(e-beam)滅菌(20〜35 kGy、無菌性保証水準10の-6乗)、保管の有効期間は6か月(2〜30°C)。酵素を含む部材の安定性が、保管期間を決めている可能性があります(推測。理由は書かれていません)。
- 生体適合性:患者に触れる部品について、細胞毒性、感作、刺激、全身毒性、発熱性、亜慢性毒性、遺伝毒性、埋植、慢性毒性・発がん性の評価を実施(ISO 10993-1に沿う)。
- 電池と粘着:封止された使い捨てのリチウム二酸化マンガン電池。粘着パッドで前腕に固定(本シリーズの技術解説「パッチ型センサーと皮膚接着」を参照)。5日間の生存率が84.7%という結果は、粘着・電極・通信のどこが原因かまでは書かれていません。
一方、電極の金属、酵素の固定法、拡散を制限する膜、微小電極の材質は、確認した資料に書かれていません。本稿は推測で補いません。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 対象が限られる | FDAの用途は22歳以上のインスリンを使わない人に限られ、1型糖尿病、インスリンや自動インスリン投与システムの利用者、重い低血糖のリスクが高い人、妊娠中・透析中・重症の人は対象外。低血糖の気づきのために使わず、アラーム・アラートもない | 事実 |
| 半定量(範囲表示)であること | グルコースの数値を出さず、LEDの色で範囲を示す。利用者・医療従事者・保険者が、数値のない表示をどう評価するかは、確認した資料に書かれていない | 事実(仕様)/未確定/将来 |
| センサーの持続 | 意図した5日間まで動作した割合は84.7%(FDA文書、190台)。装着期間そのものも5日と短い。他社製品との比較は、条件が異なるため本稿では行わない | 事実 |
| 干渉物質 | アセトアミノフェン、ヒドロキシウレアで高く、キシロースを使う検査の際にも影響する可能性。FDA文書は使用上の注意に反映 | 事実 |
| 資金に依存する非上場企業 | 収益は非開示で、Form Dが示すように繰り返し外部資金を調達してきた。2025年に認可を得たが、販売の開始と収益の見通しは確認できなかった | 事実/推測(資金への依存) |
| 表記の食い違い | 会社のサイトの「Now FDA cleared」と、FDAの区分「De Novo認可」が異なる。規制の用語は当局の文書で確認する必要がある | 事実 |
| 市場投入の不確実さ | 発売日、価格、保険の扱い、製造拠点、量産体制は確認できなかった。多分析物の製品は治験中で、時期は不明 | 未確定/将来 |
| 米国外の位置づけ | EU・日本などでの承認・認証・申請は確認できなかった | 未確定/将来 |
12. 用語集
- 皮内(intradermal)
- 皮膚の表皮の下、真皮の中。皮下(真皮のさらに下の脂肪の層)より浅い。
- 乳頭真皮
- 真皮の浅い部分で、毛細血管のある層。FDA文書がセンサーを置く位置として書く。
- De Novo
- 既存の同等品がない新しい型の低〜中リスクの機器に、FDAが新しい分類を作って認める区分。510(k)やPMA承認とは異なる。
- Glucose range monitoring system
- FDAがこの機器のために設けた分類(21 CFR 862.1359、製品コードSFU)。グルコースの範囲を示す。
- 半定量
- 数値ではなく、範囲やレベルで示す測定。
- time-in-range(TIR)
- 一定の目標範囲に入っていた時間の割合。
- アンペロメトリー
- 電極に一定の電圧をかけ、酵素の反応で流れる電流の大きさから濃度を求める電気化学の測定方式。
- Form D
- 米国で、証券法上の登録免除を受けて非公開で資金を調達するときにSECに提出する書類。募集総額と販売済みの額が書かれる。
- SBIR
- 米国の中小企業向けの研究費の制度。NIHなどが助成する。第Ⅰ相・第Ⅱ相など段階がある。

13. 出典
- FDA De Novo DEN240080 Decision Summary「Biolinq Shine Autonomous Time-in-Range Microsensor」。用途、測定原理、性能、臨床試験、滅菌・保管、生体適合性、リスクとベネフィット。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/reviews/DEN240080.pdf
- FDA De Novo データベース DEN240080(受理 2024年12月27日、判定 2025年9月23日、認可)。 https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpmn/denovo.cfm?ID=DEN240080
- Biolinq 公式サイト(トップページ。ロゴ画像の取得元)。 https://www.biolinq.com/
- Biolinq 公式サイト Technology ページ。プラットフォームの説明(治験中の機器の注意書きつき)。 https://www.biolinq.com/technology
- Biolinq 公式サイト Team ページ。経営陣・取締役会。 https://www.biolinq.com/team
- Biolinq 公式サイトのニュース:Globe Newswire「Biolinq Shine Granted De Novo Classification by U.S. FDA…」(2025年9月25日、会社のリリース)。 https://www.biolinq.com/news/biolinq-shine-tm-granted-de-novo
- Biolinq 公式サイトのニュース:Business Wire「Biolinq Announces Close of $100M Series C Financing…」(2025年4月22日、会社のリリース)。 https://www.biolinq.com/news/biolinq-announces-close-of-100m-series-c-financing-to-advance-its-biowearable-platform-for-metabolic-health
- SEC EDGAR Biolinq Inc(CIK 0001685406)の Form D 提出一覧(2016年〜2025年の12件)。 https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0001685406&type=D&dateb=&owner=include&count=40
- SEC EDGAR Form D(2025年3月21日提出)。募集総額US$100,000,000、販売済みUS$90,000,000、投資家45名、最初の販売日2025年3月7日。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1685406/000168540625000001/primary_doc.xml
- SEC EDGAR Form D/A(2024年9月13日提出)。募集総額・販売済みともUS$59,139,615、投資家43名、最初の販売日2023年12月13日。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1685406/000168540624000002/primary_doc.xml
- SEC EDGAR Form D(2023年12月26日提出)。募集総額US$50,000,000、販売済みUS$35,114,615、投資家25名。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1685406/000168540623000003/primary_doc.xml
- SEC EDGAR Form D/A(2022年6月1日提出)。募集総額US$105,609,392、販売済みUS$77,946,902、投資家62名、最初の販売日2021年9月2日。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1685406/000168540622000001/primary_doc.xml
- ClinicalTrials.gov NCT06229743:Biolinq Safety and Effectiveness Trial(Biolinq主導、2024年2月29日開始、完了、247人)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06229743
- ClinicalTrials.gov NCT06560177:Biolinq External Interferent Protocol(Biolinq主導、完了、31人)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06560177
- NIH RePORTER R44DK129875「Wearable Metabolic Sensor for Monitoring of Lactate and Glucose for People with Diabetes」(NIDDK、2021年9月1日〜2028年5月31日、2026年度US$861,567)。 https://reporter.nih.gov/project-details/11352574
- NIH RePORTER R43DK097989「Microneedle arrays for non-invasive continuous multianalyte sensing in diabetes」(NIDDK、2013〜2014年度)。 https://reporter.nih.gov/project-details/8735938
- NIH RePORTER R44AA024643「Wearable Biosensors for Real-time Blood Alcohol Monitoring」(NIAAA、2015〜2017年度)。 https://reporter.nih.gov/project-details/9334673
- NIH RePORTER R43AG048626「Non-invasive Continuous Hydration Monitoring」(NIA、2014〜2015年度)。 https://reporter.nih.gov/project-details/8915602
- NIH RePORTER R43DK103559「Microneedle-based Transdermal Sensing of Electrolytes」(NIDDK、2014〜2015年度)。 https://reporter.nih.gov/project-details/8881174
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値は、FDAの公開文書、会社の公式サイト、SECのForm D、ClinicalTrials.gov、NIH RePORTERに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は製品の使用を勧めるものではなく、治療や測定値の読み方に関する助言ではありません。