COMPANY PROFILE / バイオセンサー
アボット
― 連続グルコース測定のFreeStyle LibreとLingoを持ち、診断事業ではi-STATなど手元で測る検査も手がける総合ヘルスケア企業
バイオセンサーの話題でAbbottの名前が出るのは、世界規模の総合ヘルスケア企業の中に、連続グルコース測定(CGM)の大きな事業と、電気化学センサーを使う手元検査(i-STAT)の事業を併せ持つからです。 2025年の会社全体の売上は443億2,800万ドル、そのうち糖尿病事業(Diabetes Care)は79億9,800万ドル(約18%)でした(年次報告書〔10-K〕)。 FreeStyle LibreやLingo(リンゴ)は製品名で、会社ではありません。 本稿は、会社全体ではなくバイオセンサーに関わる範囲、つまり糖尿病事業の連続グルコース測定と、診断事業のうちPOCT(ポイント・オブ・ケア検査)を、一次資料の範囲で整理します。製品の使用を勧める記事ではありません。
- 30秒でわかるAbbottと、バイオセンサーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- バイオセンサーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
- バイオセンサー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるアボットと、バイオセンサーでの立ち位置
体外診断・POCT(従)会社全体は4つの事業を持つ総合ヘルスケア
全血中の化学・免疫項目FDA文書:Libreはグルコースオキシダーゼによる電流計測
Abbottは「バイオセンサー専業」ではなく、4つの事業のうちの一部(糖尿病と診断)がバイオセンサーに当たる総合企業です。糖尿病事業の売上は会社全体の約18%、医療機器部門の約37%にあたります 本稿の計算(79.98億÷443.28億、79.98億÷213.87億)。 糖尿病事業は、10-Kでは「医療機器(Medical Devices)」部門の一つの売上区分として扱われ、糖尿病事業だけの営業利益や研究開発費は開示されていません 未確定/将来。 一方、診断部門は部門単位で売上・研究開発費・営業利益が開示されています 事実。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Abbott Laboratories で、日本語ではアボットと書きます。糖尿病事業の運営会社は Abbott Diabetes Care(FDA文書の申請者名)で、FDAの文書ではカリフォルニア州アラメダの所在地が記載されます。 FreeStyle Libre(フリースタイル リブレ)、Libre Rio、Libre Duo、Lingo、i-STAT、ID NOW は製品名であって会社ではありません。 ロゴ画像は同社の公式サイト(abbott.com)が公開しているものを取得しました。
公式サイト:https://www.abbott.com/3. バイオセンサーの世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模
Abbottは会社全体が大きいため、会社全体は簡潔に示し、バイオセンサーに関わる範囲(糖尿病事業と診断部門)を中心に見ます。以下は10-Kの値です 事実。
| 指標(百万ドル) | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2025年の前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 会社全体の売上 | 40,109 | 41,950 | 44,328 | +5.7%(本稿の計算) |
| 会社全体の研究開発費 | 2,741 | 2,844 | 2,942 | +3.4%(本稿の計算) |
| 糖尿病事業(Diabetes Care)の売上 | 5,761 | 6,805 | 7,998 | +17.5%(為替を除くと+16.3%。10-K) |
| 診断部門(Diagnostics)の売上 | 9,988 | 9,341 | 8,937 | -4.3%(本稿の計算) |
| 診断部門の研究開発費 | 698 | 656 | 602 | -8.2%(本稿の計算) |
| 診断部門の営業利益 | 2,433 | 2,073 | 1,740 | -16.1%(本稿の計算) |
| 医療機器部門の売上(糖尿病事業を含む) | 16,887 | 18,986 | 21,387 | +12.6%(本稿の計算) |
| 診断部門の売上区分(百万ドル) | 2024年 | 2025年 | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 検査室向け(Core Laboratory) | 5,235 | 5,360 | +2.4% | 免疫測定・臨床化学・血液など |
| 分子診断(Molecular) | 521 | 517 | -0.7% | PCR装置など |
| POC(ポイント・オブ・ケア) | 588 | 606 | +3.1% | i-STATなど |
| 迅速診断(Rapid Diagnostics) | 2,997 | 2,454 | -18.1% | COVID-19関連の売上は2025年2.85億ドル、2024年7.25億ドル |
2025年の糖尿病事業の売上のうち、米国は31億8,100万ドル、米国外は48億1,700万ドルです(2025年10〜12月期の決算発表)。 2026年上半期の糖尿病事業の売上は42億6,800万ドル(前年同期比+12.1%)、うち4〜6月期は21億8,800万ドルで、CGMの売上は報告ベースで+11.0%(為替を除く比較で+9.5%)でした 事実。2025年10〜12月期のCGM売上は20億ドル(+15.0%)です(決算発表)。 従業員は約115,000人で、うち69%が米国外です(2025年12月末)。製造拠点は世界で89か所、うち医療機器部門33か所、診断部門21か所です。
2026年からの決算では、診断部門の区分が変わりました(検査室向け、迅速・分子診断、がん診断〔Exact Sciences〕)。2026年4〜6月期の診断部門の売上30億9,200万ドルのうち9億1,900万ドルは、2026年3月に買収したExact Sciences(がんの検査)で、バイオセンサーの範囲ではありません。 このため、2025年と2026年の診断部門の売上は、そのままでは比較できません。i-STATが含まれる「POC」は、2026年の決算では独立した区分として開示されていません(10-Q)。本稿は、その額を推計しません 未確定/将来。
5. バイオセンサーにかけているリソース
Abbottは、バイオセンサーに限った人員・投資の数値をほとんど開示していません。以下は、会社全体または部門単位の値と、確認できなかった点を分けて示します。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 会社全体で約115,000人(2025年12月31日、うち69%が米国外)。製造拠点89か所のうち医療機器部門33、診断部門21。研究開発拠点は、米国ではカリフォルニア、イリノイ、ミネソタ、ニュージャージー、オハイオなど。糖尿病事業・POC事業だけの人員は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(研究開発) | 会社全体:2023年27億4,100万ドル→2024年28億4,400万ドル→2025年29億4,200万ドル。診断部門:2025年6億200万ドル、医療機器部門:同17億5,300万ドル。糖尿病事業だけの研究開発費は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(設備投資) | 会社全体の有形固定資産の取得は2025年21億7,100万ドル(2024年22億700万ドル、2023年22億200万ドル)。糖尿病事業・診断部門だけの額、Libreの工場への投資額は確認できず | 事実/一部確認できず |
| 買収・出資 | 2026年3月23日にExact Sciencesの買収を完了(1株105ドルの現金。2025年11月19日に契約)。2026年上半期の事業買収の現金支出は199億6,200万ドル(10-Q)。2026年2〜3月に総額200億ドルの社債を発行(8-K)。Exact Sciencesはがんの検査会社で、バイオセンサーの範囲ではない。糖尿病事業の買収・出資は、本稿が確認した資料に記載なし | 事実/糖尿病・POCの買収は確認できず |
| 大学・研究機関・公的資金 | ClinicalTrials.govで、Abbott Diabetes Careが試験の責任企業(スポンサー)または協力者として登録された試験は77件(うち責任企業は43件)、Abbott Point of Careは17件(2026年10月4日に検索)。NIH等の公的資金による助成は10-Kで確認できず | 事実/公的資金は確認できず |
規制上の位置づけ(FDAの公式文書で確認できたもの)
| 製品 | 用途(FDA文書の記載) | 区分・番号 | 日付 |
|---|---|---|---|
| FreeStyle Libre 3/Libre 2系(Libre 2 Plus・Libre 3 Plusのセンサーを含む) | 糖尿病の管理。Libre 2 Plusのセンサーは2歳以上、自動インスリン投与システム(AID)を含む他機器との通信を意図。Libre 3は14日、Libre 3 Plusは15日まで装着可能とFDA要約にある | 510(k)適合 K233537(製品コードQBJ)。初期のLibre 3は K212132(製品コードQLG) | 2024年4月23日(K212132は2022年5月26日) |
| Lingo | インスリンを使わない18歳以上向けの市販(OTC)の連続グルコース測定器。血糖の高低の検出と、食事や運動との関係の理解を助ける。「医療者への相談なしに出力に基づく医療行為をしないこと」と記載 | 510(k)適合 K233655(製品コードSAF) | 2024年5月29日 |
| Libre Rio | インスリンを使わない18歳以上向けのOTCの連続グルコース測定器 | 510(k)適合 K233861(製品コードSBH) | 2024年6月7日 |
| Libre Duo 10 Day | グルコースとケトンを連続して測る統合型システム(21 CFR 862.1354、製品コードSJD)。会社の発表では、インスリンまたはSGLT2阻害薬を使う1型・2型糖尿病の2歳以上が対象(FDAの決定要約は本稿では確認できず) | De Novo認可 DEN250049 | 2026年8月25日 |
| i-STAT Crea カートリッジ(i-STAT 1) | 動脈・静脈・毛細血管の全血でクレアチニンを定量。ポイント・オブ・ケアまたは検査室で使用。処方用 | 510(k)適合 K261039(製品コードCGL〔酵素電極〕) | 2026年6月26日 |
| i-STAT hs-TnI カートリッジ(i-STAT Alinity) | 全血・血漿中の心筋トロポニンIを定量。心筋梗塞の診断の補助。ポイント・オブ・ケアまたは検査室で使用 | 510(k)適合 K253051(製品コードMMI) | 2026年6月11日 |
Libre系・Lingo・i-STATはいずれも510(k)適合(clearance)で、Libre DuoだけがDe Novo認可です。PMA承認ではありません。Abbottの米国向けLibreのサイトは「処方が必要な製品」と明記しています(会社の記載)。 Libre Duoについては、会社が2026年5月に欧州のCEマークを得たと発表しています(Q2決算発表)。日本での承認・認証の状況は、本稿では確認していません 未確定/将来。
Lingoの510(k)要約は、「Lingoのバイオセンサーのハードウェアと技術は、FDA適合済みのFreeStyle Libre 2のセンサー(K222447)に基づく」と書き、皮膚に触れる材料(パッチ台座、粘着パッド、プラグ部品、導入針、センサー)はLibre 2と同一なので、生体適合性の評価(ISO 10993-1)も流用できるとしています 事実。電子線滅菌の妥当性確認(ISO 11137-1・-2)も、Libre 2で行ったものが適用できるとされています。 素材側から見ると、一度作り込んだ電極・酵素・粘着材・滅菌の組み合わせを、処方用と市販用の複数の製品に再利用していることになります 未確定/将来。
6. これまでの取り組み
Abbottはバイオセンサーに関わる歴史が長い会社ですが、本稿は公的な文書で日付を確認できたできごとに絞って示します。
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2022年5月26日 | FreeStyle Libre 3が510(k)適合(K212132、製品コードQLG=自動インスリン投与システムとの併用を想定しない区分) | センサー一体型の世代。Libre 2は2020年以降に複数の適合あり |
| 2024年4月23日 | Libre 3/Libre 2系(Libre 2 Plus・Libre 3 Plusのセンサーを含む)が510(k)適合(K233537、製品コードQBJ) | 自動インスリン投与システムとの通信を意図した用途を含む |
| 2024年5月29日 | Lingoが510(k)適合(K233655) | インスリンを使わない18歳以上向けのOTC。Libre 2のセンサーに基づく |
| 2024年6月7日 | Libre Rioが510(k)適合(K233861) | 同じくOTCの連続グルコース測定器 |
| 2024年7月24日 | Libre 3センサーについて訂正通知。利用者から「実際より高い測定値が出た」との報告があったとFDAの記録に記載 | FDAの記録上の数量欄は8,174本(該当品番)。下の「リスク」を参照 |
| 2024年12月20日 | DexComとの「機密の和解・特許ライセンス契約」を締結(Dexcom側の10-Kの契約一覧) | 競合との係争を整理。内容は非公開 |
| 2025年11月19日 | Exact Sciences(がんの検査会社)の買収契約を締結 | 10-Kは「がん診断市場への参入を可能にする」と説明。バイオセンサーの範囲ではない |
| 2025年11月24日 | Libre 3/Libre 3 Plusのセンサーについて訂正通知。「センサー内の炭素の蓄積につながりうる製造工程の問題で、実際より低い測定値が出うる」とFDAの記録に記載 | FDAの記録上の数量欄は1,060,723本(該当品番の行) |
| 2026年3月23日 | Exact Sciencesの買収を完了(1株105ドルの現金) | 2026年上半期の事業買収の現金支出は199億6,200万ドル |
| 2026年5月 | Libre Duo(グルコースとケトンを測るセンサー)が欧州のCEマークを取得(会社の発表) | 米国より先に欧州で取得 |
| 2026年6月11日・26日 | i-STATのhs-TnIカートリッジ(i-STAT Alinity用)とi-STAT Creaカートリッジが510(k)適合(K253051、K261039) | POCTのカートリッジ拡充 |
| 2026年8月25日 | Libre Duo 10 DayがDe Novo認可(DEN250049)。FDAの新しい区分(統合型のグルコース・ケトン連続測定器、21 CFR 862.1354) | 2025年9月29日に申請を受理されてから約11か月(openFDAの記録) |
7. 今後の計画
2026年8月25日の発表で、会社は次の予定を述べています 未確定/将来。
- Libre Duoの統合:Beta Bionics(iLet)とSequel Med Tech(twiist)は「今年末まで」、InsuletとTandemは2027年、MiniMedは2027年の見込み。
- AbbottとMiniMed(Medtronicの糖尿病事業)は、Abbottが製造するグルコース・ケトンのセンサーとMiniMedの用量調整システムの独占的な統合で協力していると記載。
- Libre Duo 10 Dayの装着期間は最長10日で、会社の発表によると成人用センサーの84.1%、小児用センサーの68.8%が最後まで持続(試験の条件は本稿で未確認)。
糖尿病事業だけの営業利益・研究開発費・設備投資/Libreの製造拠点ごとの生産能力/POC事業(i-STAT)の2026年の売上額(区分が変わったため)/Libre Duoに関するFDAの決定要約(2026年10月4日時点でFDAサイトに見当たらず)/日本での承認・認証の状況/公的資金による助成。本稿が確認した一次資料には記載がありません。
8. この会社はバイオセンサーで何を目指しているか
会社が「目指す」と直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈で、会社の公表内容ではありません。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 測る物質をグルコースだけでなくケトンにも広げる | Libre DuoのDe Novo認可(FDAの新区分862.1354)、CEマーク取得(会社の発表)。会社は「世界初のグルコース・ケトンの同時測定」と述べる(会社の主張) | 事実(認可)/推測(今後の注力) |
| 処方用に加えて市販(OTC)の製品を持つ | LingoとLibre RioのOTC向け510(k)適合(2024年)。Lingoの要約は「Libre 2のセンサーに基づく」と記載 | 事実 |
| 自動インスリン投与システムの複数社と接続する | 2026年8月の発表:Beta Bionics、Sequel Med Tech、Insulet、Tandem、MiniMedとの統合予定 | 事実(会社の予定) |
| 手元で測る検査(POCT)のカートリッジを項目で広げる | 2024〜2026年にi-STATのhs-TnI、Creaなどの510(k)適合。10-Kの診断部門の説明にi-STATが載る | 事実(適合)/推測(方針) |
| 診断部門の重心を検査室向け・がん診断側へ広げる | Exact Sciencesの買収(バイオセンサーではない)。迅速診断は2025年に-18.1%(COVID-19関連の減少) | 事実/推測 |
「測る物質を広げ、売る窓口も広げている」という読みの根拠は、同じ会社が、処方(Libre)、市販(Lingo・Libre Rio)、ケトン(Libre Duo)の三つの方向に、2年間で順に認可を得ていることです。 LingoのFDA要約は、「ハードウェアと技術はLibre 2のセンサーに基づき、皮膚に触れる材料は同一」と書いており、センサーの基本設計を使い回しながら対象を変えていることが読めます 事実。 ただし、Libre Duoのセンサーの構造(ケトンをどう測るか)は、本稿が確認したFDA文書・会社の資料には書かれていません。「Libreの設計の延長か、新設計か」は確かめられません 未確定/将来。
9. バイオセンサー分野の提携マッピング
統合の相手として社名が挙がっているのは、2026年8月25日のLibre Duoの発表に書かれた会社です。MiniMedについては、Dexcomの10-Kが「Medtronicの糖尿病事業の分離先」として記載しています。Abbottの発表は「Abbott製のセンサーとMiniMedのシステムの独占的な統合」と述べるだけで、供給の実績や契約の条件は本稿では確認できていません 未確定/将来。 Libre Rio、Lingoなど既存製品の他社との連携先は、本稿が確認した一次資料には列挙されていません。
10. 提供している技術・製品・サービス
Abbottのバイオセンサーに関わる製品は、体に貼る連続測定のセンサー(Libre、Lingo)と、全血を数分で測るカートリッジ式の検査(i-STAT)に大きく分かれます。10-Kはこれらを、糖尿病事業(医療機器部門)とPOC(診断部門)の製品として挙げています 事実。 性能の数値は、メーカー公称とFDAの審査文書を区別して示し、異なる試験・製品の数値を並べた優劣の判断はしません。
| 製品 | 公式資料に載っている内容 | ひとこと |
|---|---|---|
| FreeStyle Libre 3/3 Plus | FDA文書(K233537):間質液のグルコースをグルコースオキシダーゼの反応で電流として測定(アンペロメトリー)。測定範囲40〜400 mg/dL。センサーは使い切りで酸化銀電池で動作。上腕の後ろ側に、針で挿入したセンサーの先端を医療グレードの粘着材で固定。Libre 3は最長14日、Libre 3 Plusは最長15日。スマートフォンのアプリとはNFCで開始、BLEで受信 | 処方用(会社のサイトに「処方のみ」とある) |
| FreeStyle Libre 2/2 Plus | FDA文書(K233537):リアルタイムのアラーム機能をもつCGM。Libre 2 Plusのセンサーは2歳以上。センサーは8時間のメモリ容量をもつ | 他機器との通信を意図した用途を含む |
| Lingo | FDA文書(K233655):OTCの連続グルコース測定器。インスリンを使わない18歳以上が対象。ハードウェアと技術はFreeStyle Libre 2(K222447)のセンサーに基づく | 血糖の高低の検出と、食事や運動との関係の理解を助ける、とされる |
| Libre Rio | FDA文書(K233861):OTCの統合型CGM。インスリンを使わない18歳以上が対象 | 米国での販売状況は本稿では未確認 |
| Libre Duo 10 Day | FDA:De Novo認可(DEN250049)。グルコースとケトンを連続して測る統合型システム。会社の発表:最長10日、成人用の84.1%・小児用の68.8%のセンサーが最後まで持続 | 米国発売は2026年内の予定(会社)。数値は会社の発表で、条件は未確認 |
| 血糖測定器・試験紙(FreeStyleなど) | 10-K:「FreeStyle」「Libre」ブランドの連続・自己血糖測定システム、試験紙、付属品 | 個別の製品・性能は本稿では扱わない |
| i-STAT/i-STAT Alinity | 10-K:血液ガス、化学、電解質、凝固、免疫測定のカートリッジ。FDA文書(K261039):クレアチニンのカートリッジの分類は「酵素を使うイオン選択電極」(製品コードCGL)。K253051:hs-TnIは心筋梗塞の診断の補助 | 全血を手元で測る。電気化学センサーを使うカートリッジが中心(K261039の分類名に基づく読み) |
| ID NOW、BinaxNOW、Afinionなど | 10-K:迅速分子(等温核酸増幅)、ラテラルフロー、心代謝の検査。ID NOWの呼吸器ウイルス検査は2026年8月31日に510(k)適合(K262747、製品コードOCC他) | バイオセンサーというより免疫・分子の迅速検査。本稿では範囲外 |
FDAの審査文書によると、Libreは酵素(グルコースオキシダーゼ)の反応で生じた電流を測る電極を、酸化銀電池で動かす使い切りのセンサーです。皮膚への固定は医療グレードの粘着材、導入具の部品は電子線で滅菌されます 事実。 センサーの先端は、針で皮下に入れた後に針を引き抜く構造で、粘着材は本体を皮膚に最長14〜15日つなぎとめる役を担います。 同じ設計の使い回しは、LingoのFDA要約で確認できます。「皮膚に触れる材料(パッチ台座、粘着パッド、プラグ部品、導入針、センサー)はLibre 2と同一」とされ、生体適合性や電子線滅菌の妥当性確認を流用しています 事実。
一方、製造工程の管理は性能に直結します。FDAのリコール記録は、2025年11月の訂正通知の原因を「センサー内の炭素の蓄積につながりうる製造工程上の問題で、実際より低い測定値が出うる」と記しています(工程の分類は「process control」)。2024年7月の通知では、原因の分類は「process design」で、実際より高い測定値の報告が発端でした 事実。どの工程のどの材料が関わったかは、公表されていません。電極材料や印刷・成膜の工程が関わった可能性は考えられますが、これは推測で、確認できていません。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| リコール・訂正通知 | FDAのリコールデータベースに、Libreのセンサーについて2024年7月24日開始(実際より高い測定値の報告)と2025年11月24日開始(炭素の蓄積につながりうる製造工程の問題。実際より低い測定値が出うる)の訂正通知が掲載されている。数量欄は前者8,174本、後者1,060,723本(いずれも該当品番の行)。通知は、影響を受ける可能性のあるセンサーの確認と交換の手順を案内している。個別の利用者への対応は各通知による。本稿は利用者への助言をしない | 事実(FDA記録の記載) |
| 診断部門の縮小傾向 | 診断部門の売上は2023年99.88億ドル→2025年89.37億ドル。迅速診断はCOVID-19関連の需要減で2025年に-18.1%。診断部門の営業利益は2023年24.33億ドル→2025年17.40億ドル(本稿の計算で-28.5%) | 事実/本稿の計算 |
| 買収に伴う負債 | 10-Kは、2025年12月末の連結債務が約129億ドルで、Exact Sciencesの買収資金として約200億ドルを借り入れる計画と記載。2026年2〜3月に総額200億ドルの社債を発行(8-K)。バイオセンサー事業の資金への影響は、本稿では評価しない | 事実 |
| 会社全体の係争 | 10-Kは乳児用調製粉乳をめぐる訴訟などを記載。バイオセンサー事業とは別の事案で、本稿の範囲外 | 事実(範囲外) |
| 競合と市場の変化 | Dexcomの10-Kは、AbbottのDiabetes Careを主要な競合の一つに挙げる(Steloの競合も同じ)。2026年1月のFDAガイダンスの「一般的な健康機器」の範囲の拡大は、市販の測定器の位置づけにも関わる可能性がある(Dexcomの10-Kの記載) | 事実(他社の記載) |
| 統合の多くが予定 | Libre Duoと各社システムの統合は2026年末〜2027年の予定。実現・延期は未確定 | 未確定/将来 |
| 事業単位の外部検証の難しさ | 糖尿病事業は部門内の売上区分で、営業利益・研究開発費・設備投資が開示されない。POCも2026年の決算では独立した区分ではない | 未確定/将来 |
| 通商・為替など会社全体のリスク | 10-Kは関税などの通商措置、為替、物価変動を会社全体のリスクとして挙げる(バイオセンサー固有の影響は記載なし) | 事実(一般論) |
12. 用語集
- CGM(連続グルコース測定)
- 皮下の間質液中のグルコース濃度を、数分ごとに自動で測り続ける方式。指先から採血する血糖測定とは別の方式。
- iCGM/iCGK
- 他の機器(自動インスリン投与システムなど)と安全に接続して使うことを前提に、FDAが特別管理を定めた連続測定器の区分。iCGKはグルコースとケトンの両方を測る区分(21 CFR 862.1354)。
- OTC(市販)
- 処方箋なしで購入できる区分。対象者や禁忌は、FDA文書の用途の記載どおり。
- 510(k)適合(clearance)
- 既に市場にある類似の機器(比較対象)と実質的に同等であることをFDAが認める手続き。PMA承認(approval)とは別。
- De Novo認可
- 比較対象がない新しい種類の低〜中リスク機器を、FDAが新たに分類して認める手続き。
- POCT(ポイント・オブ・ケア検査)
- 検査室ではなく、診察室・救急・病棟など患者のそばで行う検査。
- グルコースオキシダーゼ
- グルコースを酸化して過酸化水素を作る酵素。その反応で生じる電流からグルコース濃度を求める。
- アンペロメトリー
- 電極に一定の電圧をかけたときに流れる電流の大きさから、物質の濃度を求める方法。
- De Novoの「統合型」
- iCGMのように、他のデジタル医療機器と接続して使うことを前提に設計・審査された機器のこと。
- 調整後EPS
- 会計基準の1株利益から、買収関連費用などの特定項目を除いて会社が示す指標。比較には定義の確認が必要。

13. 出典
- Abbott Form 10-K(2025年12月期、2026年2月20日提出)。事業の説明、セグメントと売上区分、従業員、研究開発費、設備投資、製造拠点、Exact Sciences買収の計画、リスク。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1800/000162828026010185/abt-20251231.htm
- Abbott Form 10-Q(2026年6月30日終了の四半期、2026年7月28日提出)。2026年4〜6月期・上半期の売上区分、事業買収の現金支出、診断部門の区分変更。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1800/000162828026050134/abt-20260630.htm
- Abbott Form 8-K Exhibit 99.1「Abbott Reports Second-Quarter 2026 Results」(2026年7月16日)。2026年の見通し、糖尿病事業の売上、Libre DuoのCEマーク。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1800/000162828026048377/abt-2026q2xexhibitx991.htm
- Abbott Form 8-K Exhibit 99.1(2026年1月22日、2025年10〜12月期の決算発表)。CGMの売上、2025年の糖尿病事業の米国・米国外の売上。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1800/000162828026002982/abt-2025q4xexhibitx991.htm
- Abbott Form 8-K(2026年3月23日)。Exact Sciences買収の完了と1株105ドルの対価。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1800/000110465926033079/tm268709d2_8k.htm
- Abbott Form 8-K(2026年3月9日)。総額200億ドルの社債発行の完了。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1800/000110465926025240/tm264905d8_8k.htm
- Abbott プレスリリース「Abbott receives FDA authorization for world's first dual glucose-ketone sensing technology for people with diabetes」(2026年8月25日)。Libre Duoの対象、装着期間、発売と統合の予定、利用者数。 https://abbott.mediaroom.com/2026-08-25-Abbott-receives-FDA-authorization-for-worlds-first-dual-glucose-ketone-sensing-technology-for-people-with-diabetes
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K233537(FreeStyle Libre 3/Libre 2系、2024年4月23日)。用途、動作原理、構造。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf23/K233537.pdf
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K233655(Lingo、2024年5月29日)。用途、Libre 2との同一性、生体適合性・滅菌。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf23/K233655.pdf
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K233861(Libre Rio、2024年6月7日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf23/K233861.pdf
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K261039(i-STAT Crea カートリッジ、2026年6月26日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf26/K261039.pdf
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K253051(i-STAT hs-TnI カートリッジ、i-STAT Alinity用、2026年6月11日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf25/K253051.pdf
- 米国FDA(openFDA) DEN250049(Libre Duo 10 Day、決定日2026年8月25日、受理日2025年9月29日)の記録。 https://api.fda.gov/device/510k.json?search=k_number:DEN250049
- 米国FDA(openFDA) 製品コードSJD(統合型グルコース・ケトン連続測定器、21 CFR 862.1354)の分類。 https://api.fda.gov/device/classification.json?search=product_code:SJD
- 米国FDA(openFDA) K212132(FreeStyle Libre 3、決定日2022年5月26日)の記録。 https://api.fda.gov/device/510k.json?search=k_number:K212132
- 米国FDA(openFDA) リコール記録 event 98049(Libre 3/3 Plusのセンサー、2025年11月24日開始)。 https://api.fda.gov/device/recall.json?search=res_event_number:98049
- 米国FDA(openFDA) リコール記録 event 95047(Libre 3のセンサー、2024年7月24日開始)。 https://api.fda.gov/device/recall.json?search=res_event_number:95047
- ClinicalTrials.gov スポンサー/協力者「Abbott Diabetes Care」で登録された試験の件数(API。総数77件を確認)。 https://clinicaltrials.gov/api/v2/studies?query.spons=Abbott%20Diabetes%20Care&countTotal=true&pageSize=1&fields=NCTId
- ClinicalTrials.gov スポンサー/協力者「Abbott Point of Care」で登録された試験の件数(API。総数17件を確認)。 https://clinicaltrials.gov/api/v2/studies?query.spons=Abbott%20Point%20of%20Care&countTotal=true&pageSize=1&fields=NCTId
- Dexcom Form 10-K(2025年12月期)。契約一覧(Abbott Diabetes Careとの和解・特許ライセンス契約、2024年12月20日付)と、MiniMedの記載。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1093557/000109355726000027/dxcm-20251231.htm
- Abbott FreeStyle Libre 米国向け公式サイト。「処方のみの製品」との記載。 https://www.freestyle.abbott/us-en/home.html
- Abbott 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.abbott.com/
- 米国FDA 510(k) 適合通知と要約 K262747(ID NOW呼吸器ウイルス検査、2026年8月31日)。 https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf26/K262747.pdf
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月4日/Troy Technical
本稿の数値は、Abbottの法定開示書類(SEC提出書類)、米国FDAの公開文書、ClinicalTrials.gov、会社の公式発表に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は製品の使用や医療上の判断を勧めるものではありません。