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体液中のバイオマーカー 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

体液中のバイオマーカー
― 血液の「代わり」になる体液は、どこまであるのか

採血を使わずに、汗・唾液・涙・間質液・尿・呼気から体の状態を知りたい――その動機は明快ですが、体液ごとに「血液とどう対応するか」が違います。 総説は、体液の測定の多くが血中濃度の代用(サロゲート)を目指すものである一方、体液そのものが、量・分泌の速さ・ろ過・pH・塩分・分解などの点で最大の難所になると述べています。 この記事は、材料・原理・測定条件・規制の観点から、実用化が当局文書で確認できるものと研究段階のものを区別して整理します。

構成:査読付き論文(Nature、Nature Biotechnology、Diabetes ほか)と FDA の公式文書・米国連邦規則を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

ヒーロー画像:さまざまな体液を扱う道具が並ぶ実験台(汗パッチ、唾液採取、涙の毛細管、尿検査用具、呼気バッグ)
概念図(AI生成イメージ)。汗のパッチ、唾液の採取チューブ、涙を採るガラス毛細管、尿検査の試験紙、呼気の採取バッグなど、体液ごとの採取・測定の道具を実験台に並べた場面を表現したものです(試料は入っていません)。実際の製品・手順を示すものではありません。
この記事の構成
  1. 体液のバイオマーカーとは何か(3行でつかむ)
  2. 体液の地図:血液とどうつながるか
  3. 測定対象の例:グルコース・乳酸・ケトン・コルチゾール・ナトリウム/カリウム
  4. 本稿の計算:間質液の「遅れ」を時間にすると
  5. 測定条件:採取・希釈・pH・温度
  6. 素材技術者の視点①:汗センサーの積層は、少量・汚れ・温度に備えた設計
  7. 素材技術者の視点②:「相関がある」ことと「血液の代わりになる」ことは違う
  8. 実用化済みのもの(当局文書で確認できる範囲)と研究段階の区別
  9. 課題と、本稿で確認できなかったこと
  10. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルールと、お断り

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標であり、実績が確認できていない事項
このほか、材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
本記事は、材料・原理・測定条件・規制の解説です。診断・治療・服薬、測定値の読み方や基準値に関する助言ではなく、特定の製品や企業の優劣を示すものでもありません。 バイオマーカーの定義や臨床評価指標の考え方は、本シリーズ「バイオマーカーと臨床評価指標」編(創薬向け)で扱っており、ここでは重ねて説明しません。

1. 体液のバイオマーカーとは何か(3行でつかむ)

  • 目的:間質液・唾液・涙・汗などの体液の測定は、多くの場合、血中の分析物濃度の「代用」を得ることを目的としています事実[参考資料1]。
  • 難所:同じ総説は、体液そのものが、試料の量、分泌の速さ、ろ過、能動的な輸送経路、変動するpHと塩分、分析物の分解などの点で最大の難所になるとしています事実[参考資料1]。
  • 現状:汗については、血中との相関が確立していない成分が大半で、確立に近いのはエタノールくらいだ、という整理があります事実[参考資料2]。一方、間質液のグルコースを連続して測る装置は、当局に認可された製品が複数あります事実(第8章)。
この記事でいちばん大事な一行

「どの体液を測るか」は、センサーの前に生理学の問題です。センサーが優れていても、体液と血液の関係が定まっていなければ、測れた値が何を表すかは決まりません(本記事による解説)。

2. 体液の地図:血液とどうつながるか

血液を基準にした、体液ごとの「つながり方」と確認できること(概念図) 各箱の下段は、論文・当局文書で確認できる内容です。矢印は一般的な生理学の説明で、量や速さを示すものではありません。 血液 (基準) 間質液(皮膚の下) 毛細血管から組織へ グルコースは血中より 約5〜6分遅れて現れた (健常8人・空腹時) 汗 汗腺が分泌 多くの成分で血中との 相関は未確立 唾液 唾液腺が分泌 コルチゾールは血中の 非結合型に比例と報告 (1983年) 涙 涙腺と眼の表面 グルコースと血糖の相関 の報告あり。反射性の涙 が混ざると関係が弱まる 尿 腎臓でろ過、膀胱にたまる グルコース・ケトンの 試験紙が規制の区分にある 呼気 肺でのガス交換 アルコール・一酸化窒素の 測定装置が規制の区分に ある(アセトンは研究) ※ 間質液の遅れは Basu ら[参考資料7]、汗は Baker ら[参考資料2]、唾液は Vining ら[参考資料8]、  涙は Lane ら[参考資料10]・Park ら[参考資料11]、尿・呼気は米国連邦規則[参考資料22・23・25・26]によります。  矢印と「何が分泌・ろ過されるか」の説明は一般的な生理学の整理(解説)です。
図1 概念図(ベクター作図)。各体液で確認できること[参考資料2・7・8・10・11・22・23・25・26]を、血液を基準にして並べたものです。矢印は一般的な生理学の整理(解説)であり、体液の量・濃度・速さを示すものではありません。

汗:「多くの成分で血中との相関は確立していない」

Baker と Wolfe(2020)は、汗の組成を決める生理学的な仕組みを整理し、血液との相関は、おそらくエタノールを除いて、大半の成分で確立していないとしています事実[参考資料2]。 汗のナトリウムと塩化物の上昇が嚢胞性線維症のスクリーニングに有用なことは広く認められている一方、汗の電解質濃度は水分状態や発汗量を予測せず、汗の代謝物濃度は運動強度などの指標として信頼できないと述べています。グルコース・サイトカイン・コルチゾールの研究は、汗が血液の代用になると言うには限られているとしています。 最終的な汗の組成は、血中の溶質濃度だけでなく、分泌・再吸収の仕組み、発汗の速さ、汗腺の代謝産物、皮膚表面の汚れ、皮脂などの影響を受けます。

一方、Moyer ら(2012)は、糖尿病のある7人の前腕から灌流法で汗を回収し、23回の試験で汗中グルコースと血糖計の値に強い相関があったと報告しました。ただし、著者らは「皮膚表面のグルコースが測定を乱しうる」ため、他の汚染を防いで回収する必要があるとしています事実[参考資料5]。

間質液:血液より少し遅れる

連続グルコース測定(CGM)が測る間質液は、血液より遅れてグルコースが現れます。Basu ら(2013)は、健常な成人8人で、一晩絶食した状態で、腹部の皮下に微小透析カテーテルを入れ、静脈内に標識グルコースを投与して、血漿と間質液を経時的に採取しました。 血漿から間質液への平均の時間遅れは5.3〜6.2分でした事実[参考資料7]。 これはこの条件(健常者・絶食・腹部皮下)での値です。食後や運動後、他の部位、疾患のある人での値とは、同じとは限りません。

唾液・涙・尿・呼気

  • 唾液:Vining ら(1983)は、唾液中のコルチゾール濃度が、血清中の非結合(遊離)コルチゾール濃度に比例すること、血清の総コルチゾールとの関係は強い非線形であること、血液と唾液の平衡が5分未満と非常に速いことを報告しました事実[参考資料8]。
  • 涙:Lane ら(2006)は、121人(糖尿病のある人とない人)で糖負荷後の涙グルコースを測り、毛細血管の血糖と相関が見られたと報告しましたが、臨床の場では技術的な制約のため実用的でない可能性があると述べています事実[参考資料10]。Park ら(2024)は、スマートコンタクトレンズで、反射性の涙が血糖との関係を弱めることを避けて基礎涙を測り、個人ごとの遅れ時間を推定しました[参考資料11]。Kim ら(2017)は、涙のグルコースと眼圧を同時に測るコンタクトレンズセンサーを、生きたウサギとウシの眼球で試験しました[参考資料12]。
  • 尿:尿のグルコース・ケトンの試験紙は、米国連邦規則に規制の区分があります(第8章)。尿は膀胱にたまった液を排出するため、採取した時点の血中ではなく、ある時間にわたる平均に近い情報になると考えられます(本記事による解説)。
  • 呼気:呼気アセトンは、食事の組成、カロリー制限、運動、肺の要因など多くの因子で変わると総説は述べています事実[参考資料13]。

3. 測定対象の例:グルコース・乳酸・ケトン・コルチゾール・ナトリウム/カリウム

測定対象と体液の組み合わせごとに、論文・当局文書で確認できる内容を並べます。各研究は対象・条件が異なり、数値を並べて優劣を比べるものではありません。

測定対象体液確認できること区分
グルコース間質液連続グルコース測定(CGM)は間質液を測る[参考資料1]。「統合型CGM(iCGM)」は米国連邦規則に区分がある[参考資料21]当局文書で確認
グルコース汗灌流法で回収した汗と血糖計の値に強い相関(糖尿病のある7人、23回)。皮膚表面のグルコースが測定を乱しうる[参考資料5]。ウェアラブル汗センサーの報告[参考資料4]。「グルコースの研究は、汗が血液の代用になると言うには限られている」[参考資料2]研究段階
グルコース涙121人で涙グルコースと毛細血管の血糖に相関。実用上は技術的制約[参考資料10]。スマートレンズの報告(反射性の涙の影響)[参考資料11]研究段階
グルコース尿尿グルコース(非定量)試験システムが米国連邦規則(21 CFR 862.1340)にクラスIIとして規定[参考資料22]当局文書で確認
乳酸汗ウェアラブル汗センサーで測定した報告[参考資料4]。ランナー6人の試験では、通常環境では血中と汗の乳酸に相関があったが、暑熱環境では相関がなく、「汗の乳酸は血中乳酸を一貫して反映しない」と結論[参考資料6]研究段階
ケトン間質液(連続)FDA は2026年8月に、グルコースとケトン(β-ヒドロキシ酪酸)を連続して測る統合型システムを De Novo で認可(DEN250049、処方)[参考資料18]当局文書で確認
ケトン尿ケトン(非定量)試験システムは21 CFR 862.1435にクラスI(市販前届出の免除)として規定[参考資料23]当局文書で確認
ケトン呼気呼気アセトンは、食事・カロリー制限・運動・肺の要因などで変わる[参考資料13]研究段階
コルチゾール唾液唾液コルチゾールは血清の非結合型に比例し、総コルチゾールとは非線形(1983年の報告)[参考資料8]研究報告
コルチゾール汗汗中は低ナノモルレベル。唾液と汗の相関と、FETアプタマーのスマートウォッチ型試作機[参考資料9]。MIPを使った汗センサー[参考資料15]。「コルチゾールの研究は、汗が血液の代用になると言うには限られている」[参考資料2]研究段階
ナトリウム/カリウム汗(診断)汗のナトリウム・塩化物の上昇は嚢胞性線維症のスクリーニングとして有用と広く認められている[参考資料2]。イオントフォレーシス装置(汗の刺激・採取)と塩化物の試験システムが米国連邦規則に区分[参考資料16・24・27]当局文書で確認
ナトリウム/カリウム汗(ウェアラブル)Na⁺・K⁺のセンサーを含む汗センサーアレイの報告[参考資料4]。一方、「汗の電解質濃度は水分状態や発汗量を予測しない」とする整理もある[参考資料2]研究段階

すべて事実(各論文・当局文書)。「当局文書で確認」は、その装置の種類・用途が当局の区分にあるという意味で、個別のウェアラブル汗センサーなどが認可されたことを意味しません。FDA の clearance(510(k))・De Novo・approval(PMA)は別の制度です。

4. 本稿の計算:間質液の「遅れ」を時間にすると

本稿の計算

Basu らが示した平均の時間遅れ(5.3〜6.2分)[参考資料7]を、一次遅れ(指数関数的に追いつく)の時定数 τ と仮定して、血中のグルコースが段階的に変わったときの間質液側の到達度を見積もります本稿の計算。

  • 式:到達度 = 1 − exp(−t/τ)。t=τ で約63%、t=2.3τ で90%
  • 90%に達する時間:τ=5.3分 → 2.3026×5.3 ≒ 12.2分。τ=6.2分 → 2.3026×6.2 ≒ 14.3分

前提と限界:「平均の時間遅れ」を一次遅れの時定数とみなすのは本稿が置いた仮定で、論文が示した解釈ではありません。実際の遅れは、同じ人でも状況(食後、運動後など)や部位で変わりえます。 さらに、実際のCGMの値は、この生理的な遅れに加えて、センサーの応答や信号処理の遅れを含みます(本記事による解説)。ここでの計算は、遅れの桁のイメージを示すもので、装置の性能や使い方を示すものではありません。

血中が段階的に変わったとき、間質液側がどう追いつくか(一次遅れの仮定・本稿の計算) 時間遅れの値(5.3分、6.2分)は Basu らの平均[参考資料7]。一次遅れで表すのは本稿の仮定です。 0 10 20 30(分) 100% 90% 0% 血中が段階的に変わってからの経過時間 τ=5.3分:90%に約12.2分 τ=6.2分:90%に約14.3分 破線:血中(段階的な変化) ※ 到達度=1−exp(−t/τ)。τ=5.3分と6.2分は Basu らの平均の時間遅れの範囲[参考資料7](健常8人、一晩絶食、腹部皮下の微小透析)。 ※ 平均の時間遅れを一次遅れの時定数とみなしたのは本稿の仮定です。実際のCGMの値は、センサーの応答や信号処理の遅れも含みます。 ※ この図は遅れの桁を示すもので、装置の性能や、値の読み方・使い方を示すものではありません。
図2 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。時間遅れの範囲は Basu ら[参考資料7]の平均値、曲線は一次遅れを仮定した本稿の計算です。仮定は本稿が置いたもので、実際の遅れの形や、他の条件での値を示すものではありません。

5. 測定条件:採取・希釈・pH・温度

体液の測定では、センサーの性能とは別に、試料の側の条件が信号を動かします。論文・総説で確認できるものを整理します。

条件論文・当局文書の記述出所
採取:皮膚表面皮膚表面のグルコースが汗の測定を乱しうる。汗の組成は皮膚表面の汚れ・皮脂の影響も受ける。ウェアラブルの試験では、装着前にアルコール綿などで皮膚を清拭したMoyer ら[参考資料5]、Baker ら[参考資料2]、Gao ら[参考資料4]
採取:刺激と回収診断では、ピロカルピンのイオントフォレーシスで汗を刺激して採取する装置(臨床検査室での使用に限定)が FDA に認められている(Macroduct Advanced、510(k) K180627)。直流で薬剤のイオンを導入して発汗を誘導し、汗の組成と重量を調べると規則に記載FDA[参考資料16]、21 CFR 890.5525[参考資料27]
採取:涙反射性の涙は血糖との関係を弱めるため、基礎涙だけを測る設計としたPark ら[参考資料11]
量と分泌の速さ試料の量、分泌の速さ、ろ過、能動的な輸送経路、変動するpHと塩分、分析物の分解が難所。汗の取り込みに微細流路を使うと速やかに信号が出たが、穴あきテープでは6分間は有意な信号が出なかったHeikenfeld ら[参考資料1]、Parlak ら[参考資料15]
希釈発汗が増えると汗中の乳酸・グルコース濃度が下がるのは希釈効果で予想されると、著者が説明。汗の組成は発汗の速さの影響も受けるGao ら[参考資料4]、Baker ら[参考資料2]
pH体液のpHは変動する。装着中の汗では、カルシウム濃度がpHの低下とともに上がることを報告Heikenfeld ら[参考資料1]、Nyein ら[参考資料14]
温度皮膚温を同時に測り、センサーの応答を補正する設計(オンボードの温度補償)。暑熱環境(30 ℃)では、通常環境(20 ℃)にあった汗と血中の乳酸の相関が見られなかった(ランナー6人)Gao ら[参考資料4]、Takei ら[参考資料6]
較正Na⁺・K⁺センサーは使用前に標準液(1 mM KCl、10 mM NaCl)での1点較正を実施。グルコース・乳酸のセンサーは較正不要と著者が記述Gao ら[参考資料4]
呼気の条件呼気アセトンは、食事・カロリー制限・運動・肺の要因(ガス交換)などで変わる。肺の要因は、測定用の試料を最適化するため制御すべきとされるAnderson[参考資料13]

すべて事実(各論文・当局文書)。各条件の影響の大きさは、体液・装置・個人・時間で変わり、ここから一般的な補正量を導くことはできません。

センサーの出力には、「知りたい量」以外の条件が入り込む(論文の記述の整理) 左=出力を動かす条件/右=論文で報告された対処 体液中の分析物の量(知りたいもの) 発汗の速さ(希釈) 皮膚表面の汚れ・皮脂 pH・塩分の変動 温度(皮膚・環境) センサーの出力 (電流・電位など) 対処の例(論文の報告) 汗の取り込みを微細流路で制御 装着前の清拭、灌流で回収 pHのセンサーを同時に搭載 皮膚温を測りオンボード補正 ※ 条件と対処は Heikenfeld ら[参考資料1]、Gao ら[参考資料4]、Moyer ら[参考資料5]、  Takei ら[参考資料6]、Nyein ら[参考資料14]、Parlak ら[参考資料15]の記述の整理です。 ※ 5つの条件への整理は本記事によるものです。影響の大きさは体液・装置・個人・時間で変わり、補正量を示すものではありません。
図3 概念図(ベクター作図)。センサー出力に入り込む条件と、論文で報告された対処[参考資料1・4〜6・14・15]を整理したものです。5つへの整理は本記事によるもので、影響の大きさや補正のしかたを示すものではありません。

6. 素材技術者の視点①:汗センサーの積層は、少量・汚れ・温度に備えた設計

素材技術者の読みどころ:一つのパッチの中で、酵素・イオン選択膜・絶縁膜・温度センサーが共存する

Gao ら(2016)は、汗の代謝物(グルコース・乳酸)と電解質(Na⁺・K⁺)、皮膚温を同時に測る、柔軟で完全に統合されたセンサーアレイを報告しています事実[参考資料4]。論文の方法の記載から、材料の構成を取り出すと次のとおりです。

  • 基板:厚さ100 µm の防湿PET。クロム30 nm/金50 nm を電子ビーム蒸着し、パリレンC(500 nm)で絶縁、電極部(直径3 mm)をプラズマで開口
  • グルコース・乳酸センサー:グルコースオキシダーゼ/乳酸オキシダーゼを、キトサンとカーボンナノチューブの透過性の膜に固定。メディエーターにプルシアンブルーを使い、還元電位を約0 V(対 Ag/AgCl)にして、外部電源なしで動作
  • Na⁺・K⁺センサー:ナトリウム用のイオノフォアXとカリウム用のバリノマイシンを含む、PVC/セバシン酸エステル系の膜のイオン選択電極
  • 基準電極:Ag/AgCl。イオン選択電極側は PVB(ポリビニルブチラール)でコーティングした基準電極を共有
  • 補正:皮膚温を測り、温度変化に応じて読み値をリアルタイムで補償。Na⁺・K⁺は使用前に1点較正

ここから読めるのは、次の3点です(本記事による解説)。

  • 汗は「少量・遅い・変動する」試料:酵素の固定膜は、物質の出入りを調整する透過性の膜でもあります。著者は、プルシアンブルー層が薄いほど感度が高いことが、汗中の低いグルコースの測定に必要だと述べています[参考資料4]
  • 温度補償は材料の問題でもある:酵素反応は温度に依存するため、温度センサーを同じ基板に載せて補正する設計になっています。皮膚との熱的接触(基板・接着)が補正の質を左右します
  • 汚れと密着:皮膚表面の汚れが測定を乱す[参考資料5]ため、皮膚との密着・封止・洗浄が、センサー以前の設計課題になります。皮膚接着は本シリーズ「パッチ型センサーと皮膚接着」編で、電極界面と酵素の固定は「酵素と電極界面の材料」編で扱います
体液中のバイオマーカーの仕組みを表した概念画像
図4 概念画像(AI生成)。汗を利用するセンサーでは、皮膚から出た汗を流路で導き、柔軟な基材上の測定部へ届けます。流路、電極、封止、粘着層はそれぞれ試料採取・測定・保護・固定の役割を担います。 AI生成の概念画像で、実製品の構造・寸法や顕微鏡像を示しません。
出典・数値・構成を示す元の模式図(SVG)を確認する
統合型の汗センサーアレイの構成(論文の方法の記載の整理) 左=電極配置の概念(平面)/右=酵素電極の積層(断面、厚さは模式) グルコース 乳酸 Na⁺ K⁺ Ag/AgCl 参照 温度 PET基板の上の5種のセンサー 電極は直径3 mm(論文の記載) キトサン+カーボンナノチューブ+酵素の膜 プルシアンブルー(メディエーター) 金 50 nm / クロム 30 nm パリレンC絶縁 500 nm(電極部は開口) 防湿PET基板 100 µm 汗が上から入り、酵素の膜を拡散する(模式) ※ 材料と厚さは Gao ら[参考資料4]の方法の記載によります。基板・金・パリレンの厚さは記載値で、層の描画の厚さは模式です。 ※ 左の配置は論文の図の概念を簡略化したもので、実際の位置・大きさを示すものではありません。 ※ Na⁺・K⁺は、PVC系のイオン選択膜を使う電極です(積層は酵素電極と異なります)。
図4 概念図(ベクター作図)。統合型の汗センサーアレイの構成[参考資料4]を、方法の記載から整理したものです。層の厚さの描画は模式で、電極の配置は簡略化しています。製品の構造を示すものではありません。
図5:前腕に貼ったセンサーパッチの切り欠き断面(皮膚、汗腺、粘着、微細流路、電極)
図5 概念図(AI生成イメージ)。前腕の皮膚に貼ったセンサーパッチの一部を切り欠いて、皮膚(汗腺)、粘着層、汗を導く微細流路、電極のフィルムを見せた様子を表現したものです。実際の製品・皮膚の構造・各層の厚さを示すものではありません。

7. 素材技術者の視点②:「相関がある」ことと「血液の代わりになる」ことは違う

素材技術者の読みどころ:代用と呼べるかは、相関の強さより「条件のそろえ方」で決まる

体液と血液の関係を示す報告を読むとき、次の点を確認します(本記事による整理。根拠となる論文を併記します)。

  • 何に比例しているか:唾液コルチゾールは、血清の総コルチゾールではなく非結合型に比例し、総コルチゾールとの関係は非線形でした[参考資料8]。「血中」と一口に言っても、測っている画分が違うことがあります
  • どれだけ遅れるか:間質液は約5〜6分、涙では個人ごとの遅れ時間が推定されました[参考資料7・11]。遅れは条件と個人で変わりえます
  • 条件が変わっても成り立つか:汗の乳酸は、通常環境では血中と相関したのに、暑熱環境では相関しませんでした(6人の小規模な試験)[参考資料6]
  • 汚れや採取法を制御したか:汗のグルコースは、皮膚表面の汚れを避けて回収した条件での結果です[参考資料5]
  • 参照法と同時採取で比べたか:統合型CGMの規則は、並行して採取した血中のグルコースを、FDAが認めた検査室の測定法(正確で、より高次の基準に遡れるもの)で測った値との比較を、臨床データに求めています事実[参考資料21]。体液の値を血液と対応づける責任は、個別の論文の相関ではなく、同時採取の比較と、その結果の許容基準にあります

材料の世界では、劣化試験の結果を実機の寿命に結びつけるとき、「加速条件で効く機構が、実使用でも同じか」を確かめます。それと同じ姿勢です。 本シリーズ「バイオマーカーと臨床評価指標」編の、代替エンドポイントの考え方とも重なります。

8. 実用化済みのもの(当局文書で確認できる範囲)と研究段階の区別

「実用化」は、装置の種類と用途が当局の区分にあるか、個別の製品が認可されているかで意味が違います。確認できたものを、当局文書の記載どおりに並べます。

体液・用途当局文書で確認できること区分・出所
間質液のグルコース(統合型CGM)21 CFR 862.1355:統合型連続グルコースモニタリングシステム(iCGM)は「体液中のグルコースを連続または頻繁に自動で測る」装置で、クラスII(特別管理)。臨床データに、並行採取した血中グルコースを検査室法で測った値との比較を求める。
Dexcom G6:De Novo DEN170088、決定日2018年3月27日(分類名:統合型CGM〔工場校正〕、製品コードQBJ)。
Stelo:510(k) K234070、2024年3月5日に clearance(FDA は同年8月15日付で、決定日の誤記を訂正する管理上の書簡を発行)。処方なしで買える(OTC)の iCGM で、「インスリンを使っていない18歳以上」が対象。FDA の書式には「医療上の対応は、医療専門家への相談なしに行うことを意図しない」とある
米国連邦規則[参考資料21]、FDA De Novo データベース[参考資料19]、FDA 510(k)[参考資料20]。De Novo と 510(k) は別の制度
間質液のグルコース+ケトンLibre Duo 10 Day:De Novo DEN250049。FDA の分類命令は2026年8月25日(8月26日付で表示上の不整合を訂正)。処方のデバイスで、2歳以上の糖尿病の管理が対象。グルコースとケトン(β-ヒドロキシ酪酸)を実時間で測る。分類名:統合型連続グルコース・ケトンモニタリングシステム(21 CFR 862.1354、クラスII)。ケトンについても、並行採取した血中ケトンとの比較を臨床データに求めるFDA の分類命令[参考資料18]
汗の診断(嚢胞性線維症)Macroduct Advanced Model 3710:510(k) K180627、2018年7月27日。臨床検査室での使用に限定し、「嚢胞性線維症の診断のための分析に向けて、汗の刺激と採取」を行う。21 CFR 890.5525(イオントフォレーシス装置、クラスII)。塩化物の測定は21 CFR 862.1170(血漿・血清・汗・尿の塩化物、クラスII)。汗の塩化物分析装置として Wescor の510(k) K121823(2013年3月27日)が記録されているFDA[参考資料16・17]、米国連邦規則[参考資料24・27]
呼気NIOX MINO:510(k) K072816、2008年3月3日。呼気中の一酸化窒素を測る。21 CFR 862.3080(呼気一酸化窒素試験システム、クラスII):「喘息の抗炎症療法への反応の評価を、既存の臨床・検査室の評価の補助として助ける」。呼気アルコール試験システムは21 CFR 862.3050(クラスI、市販前届出の免除)FDA[参考資料28]、米国連邦規則[参考資料25・26]
尿尿グルコース(非定量)試験システム:21 CFR 862.1340(クラスII)。ケトン(非定量)試験システム:21 CFR 862.1435(クラスI、市販前届出の免除。「尿などの体液中のケトン」の識別)米国連邦規則[参考資料22・23]
汗・涙・唾液のウェアラブルセンサー(グルコース・乳酸・コルチゾールなど)当局の認可・clearance は、本稿の調査では確認できませんでした。本稿は2026年10月3日に、FDA の公開データベース(openFDA の510(k))で製品名に「sweat」を含む18件を調べ、汗の刺激・採取装置、塩化物の分析装置、薬物検査用の汗パッチ容器、多汗症の治療用パッチなどで、汗中のグルコース・乳酸を測るウェアラブルセンサーはなかった。名称による検索であり、網羅的な確認ではありません本稿の確認(解説)。研究報告は[参考資料4・9・11・12・15]

承認や適合は、特定の使用目的に対する判断で、「どんな使い方でも安全・正確」を意味しません。FDA の clearance(510(k))・De Novo・approval(PMA)は別の制度です。米国連邦規則に装置の種類が載っていることは、個別の製品の認可を意味しません。

体液ごとの「実用化」の段階(当局文書で確認できる範囲、本稿の整理) 緑=当局の区分または認可を文書で確認/橙=研究報告のみ/破線=本稿では確認できなかった 体液 当局文書で確認できる例 研究段階の例 間質液 汗 呼気 尿 唾液 涙 統合型CGM(グルコース)、 グルコース+ケトンの連続測定 嚢胞性線維症の診断用の 汗の刺激・採取と塩化物の分析 一酸化窒素の測定装置、 アルコールの試験システム グルコース・ケトンの 非定量の試験システム コルチゾール用センサーの 認可は確認できなかった 涙グルコース用レンズの 認可は確認できなかった 血中との時間差の定量 (健常者・絶食時の試験) ウェアラブルのグルコース・乳酸・ Na⁺・K⁺・コルチゾールのセンサー 呼気アセトン (多くの因子で変わる) (本稿では研究段階の 新規例を取り上げていない) コルチゾールのセンサー、 唾液と汗の相関 スマートコンタクトレンズ (動物・ヒトでの報告) ※ 左の列の整理は本記事によるもので、「進んだ順」や「次に実現する順」ではありません。出所は第8章の表と参考資料1〜28です。
図6 概念図(ベクター作図)。体液ごとに、当局文書で確認できた例と研究段階の例[参考資料1〜28]を並べたものです。「確認できなかった」は、本稿の調査範囲での結果で、存在しないことの証明ではありません。

9. 課題と、本稿で確認できなかったこと

(1) 汗と血液の対応は、成分ごとに検証が必要

汗については、血中との相関が確立していない成分が大半で[参考資料2]、グルコース・サイトカイン・コルチゾールは研究が限られているとされています。別の総説(2019年)も、汗の組成を生理指標のバイオマーカーとして使うことは「現時点では限られており、汗と血中の溶質濃度の関係をさらに調べる必要がある」と述べています[参考資料3]。 一方、灌流法のグルコース[参考資料5]や、Na⁺・Cl⁻の診断[参考資料2]のように、条件つきで有用性が確認されたものもあります。

(2) 小規模な試験と、条件の限定

汗の乳酸の試験は6人[参考資料6]、間質液の遅れの測定は健常な8人(絶食時)[参考資料7]、汗のグルコースは7人[参考資料5]でした。これらを、食後・運動時・疾患のある人・長期の装着に広げた結果は、本稿が参照した一次情報では確認できませんでした。

(3) 汗や涙のウェアラブルセンサーの当局認可

本稿の調査範囲では確認できませんでした。未確定/将来

(4) 値の読み方・基準値

本記事は、測定値の読み方や基準値を扱いません。体液ごと・条件ごとに意味が異なり、個別の判断は、医療専門家に相談する必要があります。

この記事のまとめ
  • 体液測定の多くは血中の「代用」を目指しますが、体液そのものが最大の難所です事実
  • 間質液は血中のグルコースより約5〜6分遅れ(健常8人・絶食・腹部皮下)。一次遅れを仮定すると、90%の到達に約12〜14分です本稿の計算
  • 汗は、多くの成分で血中との相関が未確立です。診断に使われるのは嚢胞性線維症の汗の電解質などです事実
  • 採取・希釈・pH・温度が信号を動かします。汗センサーは、温度センサーとの同時搭載などで備えています事実
  • 「相関がある」と「代わりになる」は違います。何に比例するか、遅れ、条件、参照法との同時採取を確認します(本記事による解説)
  • 当局文書で確認できる実用化は、間質液CGM、汗の診断用装置、呼気・尿の試験システムなど。汗・涙・唾液のウェアラブルセンサーの認可は確認できませんでした事実

10. 用語集

バイオマーカー
体の状態を示す指標として測る分子。定義と臨床評価指標との関係は、本シリーズ「バイオマーカーと臨床評価指標」編を参照。
サロゲート(代用)
血液で測りたい値の代わりに、別の体液で測った値を使うこと。
間質液(ISF)
皮膚の下で、細胞のすき間を満たす液体。CGMが測る。
時間遅れ
血液で変化が起きてから、体液側で現れるまでのずれ。
一次遅れ
変化に指数関数的に追いつく単純なモデル。時定数 τ で表す。
反射性の涙
刺激で一時的に増える涙。基礎涙と区別される。
遊離(非結合)コルチゾール
血中でタンパク質と結合していないコルチゾール。唾液中の濃度と比例すると報告された。
イオントフォレーシス
微弱な直流で薬剤のイオンを皮膚から導入する方法。汗の診断では発汗の誘導に使う。
iCGM
統合型連続グルコースモニタリングシステム。米国連邦規則に区分のあるCGMの一種。
510(k)/De Novo
FDA の医療機器の市販前の制度。既存機器との実質的同等性を示す510(k)と、新しい種類の機器を分類するDe Novo。
イオン選択電極
特定のイオンに応答する膜を使った電極。Na⁺やK⁺の測定に使う。
プルシアンブルー
酵素反応で生じる過酸化水素の測定を低い電位で可能にする、メディエーターに使われる顔料。
パリレンC
気相で成膜するポリマーの絶縁膜。薄く均一に電極を覆う。
希釈効果
汗の量が増えると、溶けている成分の濃度が下がること。
オンボード補償
センサーの基板上で、温度などの影響を計算して補正すること。

11. 参考資料(一次情報)

  1. Heikenfeld J ほか「Accessing analytes in biofluids for peripheral biochemical monitoring」Nat Biotechnol 2019;37:407-419 — doi.org
  2. Baker LB, Wolfe AS「Physiological mechanisms determining eccrine sweat composition」Eur J Appl Physiol 2020;120:719-752 — doi.org
  3. Baker LB「Physiology of sweat gland function: the roles of sweating and sweat composition in human health」Temperature 2019;6:211-259 — doi.org
  4. Gao W ほか「Fully integrated wearable sensor arrays for multiplexed in situ perspiration analysis」Nature 2016;529:509-514 — doi.org
  5. Moyer J ほか「Correlation between sweat glucose and blood glucose in subjects with diabetes」Diabetes Technol Ther 2012;14:398-402 — doi.org
  6. Takei N ほか「Differential patterns of sweat and blood lactate concentration response during incremental exercise in varied ambient temperatures: a pilot study」Temperature 2024;11:247-253 — doi.org
  7. Basu A ほか「Time lag of glucose from intravascular to interstitial compartment in humans」Diabetes 2013;62:4083-4087 — doi.org
  8. Vining RF ほか「Salivary cortisol: a better measure of adrenal cortical function than serum cortisol」Ann Clin Biochem 1983;20:329-335 — doi.org
  9. Wang B ほか「Wearable aptamer-field-effect transistor sensing system for noninvasive cortisol monitoring」Sci Adv 2022;8:eabk0967 — doi.org
  10. Lane JD ほか「Tear glucose dynamics in diabetes mellitus」Curr Eye Res 2006;31:895-901 — doi.org
  11. Park ほか「In-depth correlation analysis between tear glucose and blood glucose using a wireless smart contact lens」Nat Commun 2024;15:2828 — doi.org
  12. Kim J ほか「Wearable smart sensor systems integrated on soft contact lenses for wireless ocular diagnostics」Nat Commun 2017;8:14997 — doi.org
  13. Anderson JC「Measuring breath acetone for monitoring fat loss: review」Obesity 2015;23:2327-2334 — doi.org
  14. Nyein HYY ほか「A wearable electrochemical platform for noninvasive simultaneous monitoring of Ca2+ and pH」ACS Nano 2016;10:7216-7224 — doi.org
  15. Parlak O ほか「Molecularly selective nanoporous membrane-based wearable organic electrochemical device for noninvasive cortisol sensing」Sci Adv 2018;4:eaar2904 — doi.org
  16. FDA510(k) K180627(Macroduct Advanced Model 3710)の書簡・適応・要約、2018年7月27日(PDF) — www.accessdata.fda.gov
  17. FDA510(k) データベース:K121823(Wescor 塩化物分析装置)、2013年3月27日 — www.accessdata.fda.gov
  18. FDADe Novo DEN250049(Libre Duo 10 Day)の分類命令、2026年8月(8月26日訂正版)(PDF) — www.accessdata.fda.gov
  19. FDADe Novo データベース:DEN170088(Dexcom G6)、2018年3月27日 — www.accessdata.fda.gov
  20. FDA510(k) K234070(Stelo Glucose Biosensor System)の書簡・適応(PDF) — www.accessdata.fda.gov
  21. 米国連邦規則21 CFR 862.1355 統合型連続グルコースモニタリングシステム — www.ecfr.gov
  22. 米国連邦規則21 CFR 862.1340 尿グルコース(非定量)試験システム — www.ecfr.gov
  23. 米国連邦規則21 CFR 862.1435 ケトン(非定量)試験システム — www.ecfr.gov
  24. 米国連邦規則21 CFR 862.1170 塩化物試験システム — www.ecfr.gov
  25. 米国連邦規則21 CFR 862.3050 呼気アルコール試験システム — www.ecfr.gov
  26. 米国連邦規則21 CFR 862.3080 呼気一酸化窒素試験システム — www.ecfr.gov
  27. 米国連邦規則21 CFR 890.5525 イオントフォレーシス装置 — www.ecfr.gov
  28. FDA510(k) K072816(NIOX MINO)の書簡・要約、2008年3月3日(PDF) — www.accessdata.fda.gov

12. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
体液の測定の多くが、血中の分析物濃度の代用(サロゲート)を目指すこと。CGM が間質液を測ること。体液が量・分泌の速さ・ろ過・能動輸送・変動するpHと塩分・分解などの点で最大の難所になることNat Biotechnol 2019 の要旨[参考資料 1]https://doi.org/10.1038/s41587-019-0040-3事実
汗の成分で血中との相関が確立していないものが大半(エタノールを除く)であること。嚢胞性線維症のスクリーニングに汗のナトリウム・塩化物が有用と広く認められていること。汗の電解質は水分状態や発汗量を予測しないこと。グルコース・サイトカイン・コルチゾールの研究が限られていること。汗の組成が分泌・再吸収、発汗の速さ、汗腺の代謝産物、皮膚表面の汚れ、皮脂の影響を受けることEur J Appl Physiol 2020 の要旨[参考資料 2]https://doi.org/10.1007/s00421-020-04323-7事実
汗の組成を生理指標のバイオマーカーとして使うことが現時点で限られており、汗と血中の溶質濃度の関係の研究がさらに必要という総説の結論Temperature 2019 の要旨[参考資料 3]https://doi.org/10.1080/23328940.2019.1632145事実
統合型のウェアラブル汗センサーアレイ:グルコース・乳酸・Na⁺・K⁺と皮膚温の同時測定、PET基板(100 µm)、クロム30 nm/金50 nm、パリレンC 500 nm、電極直径3 mm、キトサン+カーボンナノチューブ+酵素の膜、プルシアンブルー、Na⁺・K⁺のイオン選択膜(PVC/セバシン酸エステル)、PVB被覆の基準電極、皮膚温によるオンボード補償、Na⁺・K⁺の1点較正(1 mM KCl、10 mM NaCl)、グルコース・乳酸は較正不要との記述、希釈効果の説明、装着前の皮膚の清拭、汗速度の引用値Nature 2016 の要旨および本文(PMC 公開版)[参考資料 4]https://doi.org/10.1038/nature16521事実
灌流法で回収した汗のグルコースと血糖計の値に、糖尿病のある7人・23回の試験で強い相関があったこと。皮膚表面のグルコースが測定を乱しうることDiabetes Technol Ther 2012 の要旨[参考資料 5]https://doi.org/10.1089/dia.2011.0262事実
ランナー6人の試験で、通常環境(20 ℃)では血中と汗の乳酸に相関があり、暑熱環境(30 ℃)では相関がなく、汗の乳酸が血中乳酸を一貫して反映しないと結論されたことTemperature 2024 の要旨[参考資料 6]https://doi.org/10.1080/23328940.2024.2375693事実
健常な成人8人、一晩絶食、腹部皮下の微小透析、静脈内の標識グルコース投与で、血漿から間質液への平均の時間遅れが5.3〜6.2分であったことDiabetes 2013 の要旨[参考資料 7]https://doi.org/10.2337/db13-1132事実
唾液コルチゾールが血清の非結合コルチゾールに比例し、総コルチゾールとの関係は非線形で、血液と唾液の平衡が5分未満と速いことAnn Clin Biochem 1983 の要旨[参考資料 8]https://doi.org/10.1177/000456328302000601事実
汗中コルチゾールが低ナノモルレベルであること。唾液と汗の相関と、FETアプタマーを組み込んだスマートウォッチ型の試作機Sci Adv 2022 の要旨[参考資料 9]https://doi.org/10.1126/sciadv.abk0967事実
121人で糖負荷後の涙グルコースと毛細血管の血糖に相関があり、臨床の場では技術的な制約により実用的でない可能性があることCurr Eye Res 2006 の要旨[参考資料 10]https://doi.org/10.1080/02713680600976552事実
スマートコンタクトレンズで、反射性の涙の影響を除いた基礎涙を測り、個人ごとの遅れ時間を推定したことNat Commun 2024 の要旨[参考資料 11]https://doi.org/10.1038/s41467-024-47123-9事実
涙のグルコースと眼圧を同時に測るコンタクトレンズセンサーを、生きたウサギとウシの眼球で試験したことNat Commun 2017 の要旨[参考資料 12]https://doi.org/10.1038/ncomms14997事実
呼気アセトンが、食事の組成・カロリー制限・運動・肺の要因などで変わり、肺の要因を制御して試料を最適化すべきことObesity 2015 の要旨[参考資料 13]https://doi.org/10.1002/oby.21242事実
汗・尿・涙でCa2+とpHを同時に測るウェアラブルのプラットフォームと、装着中の汗でカルシウム濃度がpHの低下とともに上がったことACS Nano 2016 の要旨[参考資料 14]https://doi.org/10.1021/acsnano.6b04005事実
コルチゾールMIPのウェアラブル汗センサーでの微細流路の効果(穴あきテープでは貼ってから6分まで有意な信号が出ない)、汗中コルチゾール濃度0.02〜0.5 µMの引用Sci Adv 2018 の本文(PMC 公開版)[参考資料 15]https://doi.org/10.1126/sciadv.aar2904事実
Macroduct Advanced Model 3710:510(k) K180627、2018年7月27日、21 CFR 890.5525、臨床検査室での使用に限定し、嚢胞性線維症の診断のための分析に向けて汗の刺激・採取を行う適応。ピロカルピンのイオントフォレーシスFDA の510(k)書簡・適応[参考資料 16]https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf18/K180627.pdf事実
Wescor の塩化物分析装置(汗の塩化物分析装置を含む名称)の510(k) K121823、2013年3月27日FDA 510(k) データベースの記録[参考資料 17]https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpmn/pmn.cfm?ID=K121823事実
Libre Duo 10 Day:De Novo DEN250049、分類命令2026年8月25日(8月26日付の訂正版)、処方、2歳以上、グルコースとケトン(β-ヒドロキシ酪酸)の実時間測定、分類名・21 CFR 862.1354・クラスII、並行採取した血中ケトンとの比較を求める特別管理FDA の De Novo 分類命令[参考資料 18]https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf25/DEN250049.pdf事実
Dexcom G6:De Novo DEN170088、決定日2018年3月27日、分類名(統合型CGM〔工場校正〕)、製品コードQBJFDA De Novo データベース[参考資料 19]https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpmn/denovo.cfm?ID=DEN170088事実
Stelo:510(k) K234070、2024年3月5日に clearance、8月15日付の管理上の書簡、OTCのiCGM、インスリンを使っていない18歳以上、医療専門家への相談なしに医療上の対応を行うことを意図しない旨FDA の510(k)書簡・適応[参考資料 20]https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf23/K234070.pdf事実
21 CFR 862.1355:iCGMの識別、クラスII、特別管理(並行採取した血中グルコースをFDAが認めた検査室法で測った値との比較を臨床データに求める)米国連邦規則[参考資料 21]https://www.ecfr.gov/current/title-21/section-862.1355事実
21 CFR 862.1340(尿グルコース〔非定量〕、クラスII)、862.1435(ケトン〔非定量〕、クラスI・市販前届出の免除、尿などの体液)、862.1170(塩化物、血漿・血清・汗・尿、クラスII)米国連邦規則[参考資料 22]https://www.ecfr.gov/current/title-21/section-862.1340[参考資料 23]https://www.ecfr.gov/current/title-21/section-862.1435[参考資料 24]https://www.ecfr.gov/current/title-21/section-862.1170事実
21 CFR 862.3050(呼気アルコール、クラスI・免除)、862.3080(呼気一酸化窒素、クラスII)、890.5525(イオントフォレーシス装置、クラスII〔performance standards〕)米国連邦規則[参考資料 25]https://www.ecfr.gov/current/title-21/section-862.3050[参考資料 26]https://www.ecfr.gov/current/title-21/section-862.3080[参考資料 27]https://www.ecfr.gov/current/title-21/section-890.5525事実
NIOX MINO:510(k) K072816、2008年3月3日、呼気中の一酸化窒素を測る、21 CFR 862.3080、ATS のガイドラインにもとづく測定FDA の510(k)書簡・要約[参考資料 28]https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf7/K072816.pdf事実
一次遅れの式(到達度=1−exp(−t/τ))、τ=5.3分と6.2分から90%到達に約12.2分と約14.3分本稿の計算。平均の時間遅れを一次遅れの時定数とみなすのは本稿の仮定であり、論文の解釈ではない。実際の遅れは条件と個人で変わりうる。装置の性能や値の読み方を示すものではない本稿の計算
汗・涙・唾液のウェアラブルセンサーの当局認可本稿の調査(2026年10月3日、openFDA の510(k)で製品名に sweat を含む18件を確認し、汗中のグルコース・乳酸を測るウェアラブルセンサーはなかった。涙・唾液のウェアラブルも確認できなかった)。名称による検索であり、網羅的な確認ではない未確定/将来
食後・運動時・疾患のある人・長期装着での、汗・涙・唾液と血液の関係の広い検証本稿が参照した一次情報では確認できなかった未確定/将来
「どの体液を測るかは生理学の問題」「尿は平均に近い情報になる」「代用と呼べるかは条件のそろえ方で決まる」「温度補償は材料の問題でもある」「汗センサーの積層の読み取り」「測定条件5つの整理」「体液の矢印の説明」公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各論文・当局が表明した見解ではない解説
図1・図3・図4・図6が説明のための作図であること。図2が本稿の計算を含む作図であること。ヒーロー画像と図5がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月3日/出典は一次情報(査読付き論文、FDA の公式文書、米国連邦規則)に限定しています。材料設計上の読み取りは「解説」として、出典付きの事実と区別しています。汗・涙・唾液のウェアラブルセンサーの当局認可、食後・運動時・疾患のある人・長期装着での体液と血液の関係の広い検証は、一次情報で確認できなかったため記載していません。本記事は測定値の読み方や基準値を扱いません。第4章の計算は遅れの桁を示す仮定つきの見積もりです。図はすべて説明用の概念図です。図1・図2・図3・図4・図6はベクター作図、ヒーロー画像と図5はAI生成イメージであり、いずれも実際の製品・皮膚の構造・測定結果を示すものではありません。