COMPANY PROFILE / 接着・封止材
H.B.フラー
― 「接着剤専業」の世界大手。電子・封止は、工業用接着剤の一分野として手がけている
H.B. Fullerは1887年創業の米国の接着剤メーカーで、同社自身が「世界最大の接着剤ピュアプレイ企業」と称しています。 2025会計年度の売上はUS$3,473.6 million。ただし、売上の45%はおむつなどの衛生用品と包装向け、25%は建設向けで、 本稿のテーマである電子材料の封止・接着を含むのは、売上の約3割のEngineering Adhesives事業の中の一分野にとどまります。 本稿では、同社の中で電子・封止がどこにあり、何を確認でき、何を確認できなかったかに絞って整理します。
- 30秒でわかるH.B. Fullerと、接着・封止材での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- 接着・封止材にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は接着・封止材で何を目指しているか
- 接着・封止材分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集
- 出典
- 主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるH.B.フラーと、接着・封止材での立ち位置
セントポール本社と中央研究施設は自社所有(10-K)
メーカー(主)電子・封止は事業の一部分。半導体・電子材料の専業ではない
US$1,061.8 million全社売上の30%。電子単独の売上は非公表
(利益率22.2%)会社定義の非GAAP指標。2024年度は19.9%
H.B. Fullerは「接着剤の会社」ですが、半導体メーカーの工程に入り込む電子材料メーカーというより、 おむつ・包装・自動車・建材・家電まで幅広く売る総合接着剤メーカーです 事実。 電子・封止は、同社が自社サイトで掲げる用途の一つ(回路基板の保護、アンダーフィル、熱を逃がす材料、EV電池向けなど)であり、 売上の中でどれだけを占めるかは公表されていません 未確定/将来。 一方で、半導体パッケージの封止に使うエポキシモールディング材料(EMC)や異方導電フィルム(ACF)を同社が手がけているかどうかは、 今回確認した公式資料では確認できませんでした。本稿は、同社を「電子・封止の周辺領域にも製品を持つ、総合接着剤メーカー」として読みます。
2. ロゴと社名の表記について

H.B. Fullerのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、公式サイトから取得したロゴ画像を
img/hb_fuller_logo.svg として設置しています。
表記の注意:法人名はH.B. Fuller Companyで、「H.B.」は創業者 Harvey Benjamin Fuller の頭文字です(同社の歴史ページ)。 日本語では「H.B.フラー」と表記されることがありますが、本稿では英字表記に統一します。 日本の合弁会社はSekisui-Fuller Company, Ltd.(同社が50%を保有)で、H.B. Fullerの連結子会社ではなく、持分法で会計処理されています。 また、同社は TONSAN、Thermonex など多数のブランドを持ちます(商標の一部は10-Kに列挙)。 ブランドは「同社の製品群」として扱い、本稿では特定製品の優劣を論じません。
公式サイト:https://www.hbfuller.com/3. 接着・封止材の世界で、この会社はどこにいるか
H.B. Fullerの主たる類型は総合接着剤・化学メーカーです。従たる類型として、電子・UV硬化の一部の用途に踏み込んでいますが、 半導体・電子材料メーカーやUV硬化・特殊用途メーカーが「主」ではありません。 どの材料・用途が中心かを、同社の資料で確認できた範囲で整理します。
| 材料・用途 | H.B. Fullerでの位置づけ | 確認できた一次情報 | 区分 |
|---|---|---|---|
| ホットメルト・包装・衛生用品 | 中心。Hygiene, Health and Consumable Adhesives(売上の45%) | 10-Kの事業説明(熱可塑性、熱硬化性、反応型、水性、溶剤型) | 事実 |
| 構造接着・工業用接着剤 | 中心。Engineering Adhesives(30%)。反応型、光硬化、2液、ポリウレタン、シリコーン、フィルム、速硬化 | 10-K | 事実 |
| シーラント・建設・屋根 | 中心。Building Adhesive Solutions(25%)。屋根用の感圧接着剤・テープ・シーラント、断熱・空調向けなど | 10-K | 事実 |
| 回路基板の保護・封止 | 一部。コンフォーマルコーティング、ポッティング、封止。熱・UV・UV+熱・UV+湿気・湿気硬化(RTV)など | 公式サイトの用途ページ | 事実 |
| アンダーフィル・エッジボンド | 一部。BGA・WLCSP・フリップチップ向けの毛細管アンダーフィルと、フルアンダーフィルの代わりのエッジボンド | 公式サイトのPCB組立ページ | 事実 |
| ダイアタッチ・表面実装・熱伝導接着剤 | 一部。同ページでは基板組立向けの接着剤として列挙 | 公式サイトのPCB組立ページ | 事実 |
| 太陽電池の封止材 | 一部。2021年にSTR Holdingsを買収(Engineering Adhesives)。2009年に太陽電池向けシリコーンシーラントの技術センターを設置 | 2021年度10-K、技術センターのページ | 事実 |
| EV電池向け(接着・シール・TIM) | 一部。EV Bond、EV Seal、EV Protect、EV Thermなどの製品群 | 公式サイト、2025 Sustainability Report | 事実 |
| 半導体封止材(EMC)・ACF・導電ペースト | 同社の資料では確認できず | ― | 未確定/将来 |
4. 会社の規模
会社全体の規模を、表1つで簡潔に示します。会計年度は2025年11月29日に終了した年度(2025会計年度)です 事実。金額の単位は米ドルです。
| 指標(US$ million) | 2024会計年度 | 2025会計年度 |
|---|---|---|
| 売上(Net revenue) | 3,568.7 | 3,473.6 |
| 売上総利益率 | 29.8% | 31.1% |
| 当期純利益(H.B. Fuller帰属) | 130.3 | 152.0 |
| 調整後EBITDA(会社定義の非GAAP指標) | 593.9 | 620.7 |
| 研究開発費(販管費に含まれる) | 49.6 | 62.2 |
| 設備投資(有形固定資産の購入) | 139.2 | 142.3 |
| 営業キャッシュフロー | 302.4 | 263.5 |
2024会計年度の売上には、2024年12月2日に売却した北米フローリング事業($156.7 million)が含まれます。 2025会計年度の売上が前年より2.7%減ったのは、主に買収・売却の影響(-2.1%)です。
接着剤・封止材・電子材料に関わる事業セグメントは次のとおりです。2025会計年度の期首に、断熱ガラス・木工・複合材料の各事業を建設系に統合してBuilding Adhesive Solutionsを新設し、 北米フローリング事業を売却する再編を行ったため、前年の数字は遡って組み替えられています 事実。
| 事業セグメント | 主な用途(10-Kの説明) | 2025年度 売上 | 2025年度 調整後EBITDA(利益率) | 2024年度 売上 | 2024年度 調整後EBITDA(利益率) |
|---|---|---|---|---|---|
| Hygiene, Health and Consumable Adhesives | 包装、紙加工、不織布・衛生用品、医療・美容 | 1,551.8(45%) | 244.4(15.7%) | 1,546.5 | 245.8(15.9%) |
| Engineering Adhesives | 輸送、電子、クリーンエネルギー、航空宇宙・防衛、繊維、家電、重機 | 1,061.8(30%) | 236.0(22.2%) | 1,009.0 | 200.5(19.9%) |
| Building Adhesive Solutions | 屋根、インフラ、道路、通信・5G設備、LNG設備、建物外皮、空調断熱、木工、断熱ガラス | 860.0(25%) | 134.0(15.6%) | 856.5 | 133.2(15.6%) |
最新の2026会計年度第3四半期(2026年8月29日終了)までの9か月では、会社全体の売上がUS$2,659.3 million(前年同期は2,578.8)、 Engineering AdhesivesはUS$804.4 million(前年同期は785.5、+2.4%)、同事業の調整後EBITDAは178.2(前年同期は170.9)でした 事実。
| 項目 | 内容(2025年11月29日時点) |
|---|---|
| 従業員 | 約7,100人(44か国。うち米国約2,500人) |
| 工場 | 米国に33工場、ほかの24か国に44工場(合計77工場。本稿の計算) |
| 販売 | 34か国で販売。売上の約56%(約US$2.0 billion)は米国外 |
| 原料 | 売上原価の約75%が原料費。粘着付与樹脂、ポリマー、合成ゴム、酢酸ビニルモノマー、可塑剤などで、多くが石油・天然ガス由来 |
上の数字は会社全体、または事業セグメント全体のものです。 電子・封止だけの売上、利益、研究開発費、設備投資は公表されていません 未確定/将来。 本稿もこれらを推計しません。なお、10-Kの本文は、断熱ガラスと木工がBuilding Adhesive Solutionsに入るとMD&Aで説明する一方、 財務諸表の注記1の事業説明にはEngineering Adhesivesの用途として木工や断熱ガラスが残っています。 本稿はMD&Aの説明(再編後の区分)に従い、この記載の不一致は10-K側のものとして指摘しておきます。 研究開発費の対売上比は、全社で約1.8%(62.2÷3,473.6)です 本稿の計算。
5. 接着・封止材にかけているリソース
電子・封止に絞った投資額・人員は公表されていません。何をどこまで確認できたかを、人・金・外部・大学の4点で整理します。
| 項目 | 確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(研究開発拠点・人員) | 世界に35の技術センター(2025 Sustainability Report)。顧客と並んで、モビリティ・電子・医療・断熱ガラスなどの高成長市場で開発する。SKUの50%超は個別の顧客向けに調整したもの(同社の説明)。中国・北京のTONSAN研究開発センターには70人超の化学者・技術者がいる(同社の技術センターのページ)。研究開発人員の総数、電子・封止の担当人数は非公表 | 事実/非公表 |
| 金(研究開発費・設備投資) | 2025会計年度の研究開発費はUS$62.2 million、設備投資はUS$142.3 million、買収の現金支出はUS$167.0 million(取得現金控除後)。情報システム刷新(Project ONE)は累計約US$265 million(総額見込みUS$300〜320 million)。2023年開始の組織再編計画は費用見込みUS$80.0〜85.0 millionのうち79.2を計上し、2025年11月29日に完了。電子・封止向けの内訳は非公表 | 事実/非公表 |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | 日本の合弁Sekisui-Fuller(50%)。買収:STR Holdings(太陽電池封止材、2021年)、ND Industries(2024年5月、US$254.0 million)とその台湾・トルコ・中国(Dongguan Nako、2026年8月)の各事業、GEM/Medifill(2025年)。買収合意:Advanced Medical Solutions(2026年6月)。売却:北米フローリング事業(2024年12月)。スタートアップ出資は10-Kに記載なし | 事実/確認できず(スタートアップ出資) |
| 大学・研究機関・公的資金 | 10-Kは「大学などの学術機関との関係を活用する」と一般的に述べるのみで、共同研究先の具体名は確認できなかった。技術センターのページには、サステナビリティラボを Association of Plastics Recyclers などとの協力の場にも使える、との記載がある。公的資金は、2021会計年度に中国の工場建設に関連する政府補助金US$5.8 millionを受領したとの記載のみで、接着・封止材の研究開発向けの公的資金(NEDO、EUのプロジェクトなど)は確認できなかった | 確認できず |
10-Kは研究開発について、「プラットフォームの開発は世界の研究所のネットワークで調整し、プロジェクトは各地域の研究所で進める」と説明しています 事実。つまり、電子・封止だけの専用拠点を置く形ではなく、地域の研究所と技術センターが、顧客の用途に合わせて調整する体制です。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1887年 | 創業。同社の歴史ページによると、この年に液状の魚膠(にかわ)接着剤を発売 | 接着剤一筋の長い歴史 |
| 2005年 | 積水化学との50対50の合弁会社を日本に設立(Sekisui-Fuller) | 日本市場への足場。持分法で会計処理 |
| 2009年 | 中国・蘇州に技術センターを設置し、太陽電池向けシリコーンシーラントの市場に対応 | 電子・クリーンエネルギー向けの早い取り組みの一つ |
| 2015年 | 中国のTONSAN Adhesiveを買収 | 同社が「エンジニアリング接着剤」で顧客と取り組む拠点。北京に研究開発センター |
| 2017年 | Royal Adhesives & Sealantsを買収 | 接着剤・シーラント事業の拡大(社名と年のみ歴史ページで確認。事業内容の記載は確認できなかった) |
| 2021年1月 | STR Holdingsの資産を取得(約US$5.4 million)。米コネチカット州の太陽電池用封止材メーカー。Engineering Adhesivesに計上 | 「封止材」そのものを買収で取り込んだ例 |
| 2023年 | 組織再編計画を承認。費用見込みUS$80.0〜85.0 million | 買収した事業の統合と最適化。2025年11月に完了 |
| 2024年5月 | ND Industriesの資産を取得(基本価格US$254.0 million)。自動車・電子・航空宇宙向けに、ねじ部品の固定・シールなどの特殊接着剤を提供 | Engineering Adhesivesの買収として最大級 |
| 2024年8月 | 英国のHS Butylを買収(約£18.3 million)。ブチルテープメーカー | 建設・インフラ・自動車・再生可能エネルギー向けの防水シール |
| 2024年12月〜2025年1月 | Medifill(2024年12月2日)とGEM(2025年1月15日)を買収(合計約€191.9 million)。傷口閉鎖用の医療用接着剤 | 医療を成長市場として拡大 |
| 2024年12月 | 北米フローリング事業を売却(公正価値US$74.3 million) | 事業ポートフォリオの整理。電子・封止の事業ではない |
| 2025年2月・11月 | ND Industriesの台湾事業(約US$8.3 million)とトルコ事業(約US$7.9 million)を買収 | アジアと中東・欧州・アフリカでの展開 |
| 2025会計年度 | 事業セグメントを再編し、Building Adhesive Solutionsを新設 | 電子・封止を含むEngineering Adhesivesの範囲が変わった |
| 2026年6月 | 英国のAdvanced Medical Solutions Group(AMS)の買収で合意 | 医療用接着剤の大型買収。次章 |
| 2026年8月 | 中国のDongguan Nakoの資産を取得(約US$10.4 million)。ねじ部品の自動プレコート(緩み止め・漏れ止め・振動吸収) | ND Industries系の固定・封止の塗布事業を中国で拡大 |
7. 今後の計画
完了を予定AMS株主は2026年8月12日に承認。規制当局の承認などが条件
20%超年率5%の為替一定の売上成長も目標(会社の目標)
US$655〜670 million2026年9月23日の決算発表時点の会社予想
Scope2を35%削減2024年を基準年とする絶対量。会社の目標
AMSの買収は、1株285ペンスの現金で、企業価値は約£715 million、AMSの発行済株式の評価額は約£659 millionです。 H.B. Fullerは買収後に年間売上が約US$300 million増え、2031年までに約US$55 million(約£41 million)の相乗効果を見込むと述べています 未確定/将来。 AMSは外科用の組織接着剤、テープ・ドレッシング、バイオ外科製品を扱う英国企業で、買収後は医療を新しい報告セグメント(全体の売上・EBITDAの約10%)として開示する計画です。
電子・封止に特化した計画は見当たりませんが、全社の計画として、情報システム刷新(Project ONE)を2026年以降もブラジルとアジア太平洋で続けること、サプライチェーンの再構築(Quantum Leap)を進めることを開示しています 事実。2030年の環境目標(水の使用量20%削減、製造廃棄物の原単位20%削減、廃棄物のリサイクル75%増、主要サプライヤーの70%からのデータ取得)はいずれも会社の目標であり、達成の事実とは区別します 未確定/将来。
次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。
電子・封止専用の設備投資額/半導体パッケージ向け(EMC・ACF)の新製品計画/電子材料の売上目標/電子・封止分野での新たな提携や買収の計画。 同社の公式サイトのPCB組立・回路基板保護のページにも、数値目標や投資計画はありません。
8. この会社は接着・封止材で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 医療を中核の成長市場と位置づけている | AMSの発表で、CEOが「医療は中核の戦略的成長市場」と述べ、2025年にGEM/Medifillを買収。AMSは売上の約10%を占める新セグメントになる計画 | 事実 |
| 電子・封止は、成長戦略の前面には出ていない | 買収の発表資料と決算発表で名前が出るのは医療。電子・封止に絞った数値目標、投資、買収の記載がない | 推測 |
| 電子・封止は既存の工業用接着剤の顧客基盤の中で対応する領域 | 電子は、Engineering Adhesivesが対象とする市場の一つとして列挙されるのみ。電子向けの用途ページは一般的な説明で、製品ごとの数値は掲載されていない | 推測 |
| Engineering Adhesivesは、買収で高収益の領域を足している | 2024年以降、ND Industriesとその3事業を取得。同事業の調整後EBITDA率は19.9%から22.2%に上昇。会社は「最も利益率が高く成長する市場セグメントに資本を配分する」と説明 | 推測 |
| 全社の目標は利益率の底上げ | 長期目標は調整後EBITDA率20%超(2026年第3四半期は19.9%で、会社は過去最高と説明) | 事実 |
「電子・封止は成長戦略の前面に出ていない」と読む根拠は、会社が自ら大きく語る場面に、電子・封止の名前が出てこないことです。 2026年6月のAMS買収の発表では、「医療が中核の成長市場」であること、AMSがもたらす売上の増加、相乗効果、セグメントの新設が語られました。 2026年9月の第3四半期の決算発表でも、成長の話題は価格改定、リストラの効果、AMSの完了に集中しています 事実。 一方、10-Kと公式サイトでは、電子はEngineering Adhesivesが対象とする市場の一つとして並べられているだけです。 もちろん、これは「電子・封止に力を入れていない」という意味ではありません。売上が非公表のため、重要度を外部から測れないというのが正確なところです 未確定/将来。
9. 接着・封止材分野の提携マッピング
H.B. Fullerの関係は、共同開発や製造受託よりも、出資と買収で広げる形が目立ちます。 10-Kでは、「単一の顧客が連結売上の10%を超えることはない」と述べており、特定の顧客との関係に依存しない構造です。 一方で、電子・封止の分野で、特定の顧客や研究機関と共同開発した事例は、今回の一次資料では確認できませんでした 未確定/将来。
10. 提供している技術・製品・サービス
製品ごとの数値(粘度、ガラス転移点、熱膨張係数、硬化条件)を示す技術データシートは、同社の製品ページが自動アクセスを制限しているため、今回は確認できませんでした 未確定/将来。以下は、同社の用途ページに書かれた特徴の記述です(メーカー公称の位置づけで、試験条件は記載がありません)。
| 分野 | 同社ページの記述 |
|---|---|
| 回路基板の保護・封止 | コンフォーマルコーティング、封止(エンキャプシュレーション)、ポッティング。硬化は熱、UV、UV+熱、UV+湿気、RTV(湿気硬化)。1液・2液。特徴として低収縮、高Tg、低CTE、低背(低い塗布高さ)を挙げる |
| PCB組立 | ウレタン、アクリル、エポキシ、シリコーンの化学系統。コンフォーマルコーティング、接着剤(ダイアタッチ、表面実装、熱伝導)、ポッティング・封止材。アンダーフィル(BGA・WLCSP・フリップチップ向けの毛細管アンダーフィル)とエッジボンド。信頼性は落下、衝撃、オートクレーブ、温度サイクルで示す |
| 電子市場の用途 | 構造接着・部品固定、シールと環境保護、電気絶縁・回路保護、放熱、振動吸収・衝撃対策。車載電子、民生電子(スマートフォン、ディスプレイ、ウェアラブル)、医療電子、航空電子、スマート家電 |
| EV電池 | 接着剤、難燃フォーム、熱界面材料(TIM)、コーティング。EV Bond(強度)、EV Seal(水分の侵入防止)、EV Protect(難燃の安全障壁)、EV Therm(熱管理)の製品群。UV硬化のコーティングは「数秒で硬化でき、熱硬化や粉体塗装に比べて工程時間を大幅に短縮できる」と説明 |
| 太陽光 | 太陽電池向けのシリコーン接着剤・シーラント。2021年にSTR Holdingsを買収(太陽電池用封止材) |
アンダーフィルについて、同社の2018年のブログ記事(マイクロエレクトロニクス実装の主任研究員による執筆)は、 熱サイクル時にBGAやCSPとプリント基板が相対的に動いてはんだ接合部が疲労すること、 アンダーフィル(通常はエポキシ系)が毛細管現象で流れ込み、加熱して硬化することで、はんだ接合部を機械的に補強することを説明しています。 同記事は、CSP、WLCSP、フリップチップで落下性能が高まり、熱サイクル性能が約7〜10倍になると述べますが、試験条件の記載はなく、 メーカー公称の一般的な説明として扱います 事実。
同社のページが特徴として挙げる低収縮・高Tg・低CTEは、封止・保護材料の設計でそのまま効く3点です。 硬化するときに収縮すると、基板や部品との界面に残留応力が生じ、剥離やクラックの原因になります。 また、基板(FR-4など)・チップ・はんだ・封止材の熱膨張率(CTE)がずれていると、温度サイクルのたびに接合部にひずみが集中します。 アンダーフィルは、このひずみをはんだ接合部から樹脂側に分散させる材料です(本シリーズの技術解説『エポキシ樹脂』『ガラス転移点とクリープ』『熱膨張係数』『アンダーフィル』も参照)。 Tgを高くすると、使用温度で樹脂が硬い状態を保ちやすい一方、硬いほど応力は伝わりやすく、ここに設計のトレードオフがあります。 以上は一般的な技術の説明であり、同社の個別製品の値ではありません。
もう一つは硬化機構の選び方です。同社が挙げる「UV+湿気」の二重硬化は、光が届く部分をUVで短時間に固め、光が届かない陰の部分は湿気で硬化させるという考え方で、 部品が密集した基板の保護に向きます(一般的な説明)。熱硬化は炉が必要ですが陰の部分も硬化でき、UV硬化は秒単位で終わりますが光が当たらない所は固まりません。 工程の速さと、硬化の確実さのどちらを取るかが、塗布ラインの設計に直結します。
逆に、同社の中心であるホットメルトなどの工業用接着剤では、原料の選び方が利益を左右します。 10-Kは、原料費が売上原価の約75%を占め、粘着付与樹脂・ポリマー・合成ゴム・酢酸ビニルモノマー・可塑剤が主要原料だと書いています。 電子向けの封止材とは原料の系統が違い、同じ「接着剤」でも、原料価格の影響の受け方が事業ごとに違うと考えられます(推測。電子向けの原料費率は非公表)。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 原料価格 | 原料費は売上原価の約75%。原料費が1%変わると純利益が約US$12.6 million変わると10-Kが試算 | 事実 |
| 電子・封止の規模が見えない | 電子・封止の売上・投資・人員がいずれも非公表で、この分野の進捗を外部から確かめる手段がない | 未確定/将来 |
| 大型買収の統合と財務 | AMSの買収は2026年内の完了を予定。買収後に純有利子負債の対EBITDA倍率を2年以内に目標の2.5〜3倍まで下げる計画。2026年第3四半期末は3.0倍、純有利子負債はUS$1,957 million | 事実 |
| 買収が続くことによる減損 | のれんは各事業で毎年減損テストを実施。2025年のテストでは、公正価値が帳簿価額を33%〜80%上回った | 事実 |
| PFAS規制 | 10-Kは、米国EPAによるTSCA・TRI・CERCLAのもとでのPFAS規制の提案や規則、各州の法律により、評価・報告、場合によっては製品からの排除の義務が生じうるとして、リスクに挙げている。環境規制への対応費用は今後2年で約US$22.6 million(うち設備投資約US$2.6 million)と見積もる | 事実 |
| 売却した事業の製品クレーム | 売却した北米フローリング事業のグラウト(目地材)をめぐる訴訟(Rouse et al.)で、2025年10月に最大US$75.0 millionでの和解に原則合意。同社は和解に備えてUS$34.8 millionを計上。電子・封止とは別の事業の問題 | 事実 |
| 地政学・為替 | 売上の約56%が米国外。2026年第3四半期には、Quantum Leapの支援と、中東の混乱が続くなかでの顧客への供給継続のため、在庫への戦略的な投資を行ったと説明 | 事実 |
| リストラの実行 | サプライチェーンの再構築(Quantum Leap)などの遅れや想定外の費用で、期待した効果が得られない可能性があると10-Kが述べる | 事実 |
12. 用語集
- ピュアプレイ
- 特定の事業だけを行う会社。H.B. Fullerは接着剤・シーラント・機能性コーティングに特化していると自称する。
- ホットメルト接着剤
- 加熱して溶かして塗り、冷えて固まる接着剤。包装や衛生用品に多く使われる。
- アンダーフィル
- チップと基板の隙間に流し込む樹脂。はんだ接合部を補強し、熱ひずみや落下の衝撃から守る。
- エッジボンド
- チップの周囲だけを接着して固定する方法。フルアンダーフィルより工程が簡単で、手直しもしやすい。
- コンフォーマルコーティング
- 基板全体を薄い膜で覆い、湿気・ほこり・薬品から守る保護膜。
- ポッティング
- 部品や基板を樹脂の中に埋めて固める封止の方法。
- TIM(熱界面材料)
- 発熱する部品と放熱部の間を埋めて熱を伝える材料。
- 二重硬化
- 光と湿気、光と熱など、2つの仕組みを組み合わせて固める方式。
- Tg(ガラス転移点)
- 樹脂が硬い状態からやわらかい状態に変わる温度の目安。
- CTE(熱膨張係数)
- 温度が上がったときの材料の伸びの割合。部品間でずれるとひずみが生じる。
- 調整後EBITDA
- 会社が定義する利益指標(非GAAP)。利息・税・減価償却前の利益から、一時的な項目を除いたもの。
- Form 10-K
- 米国の上場企業がSECに提出する年次報告書。

13. 出典
- H.B. Fuller Form 10-K for the fiscal year ended November 29, 2025(米国SEC提出、2026年1月22日)。事業内容、事業セグメント、売上・調整後EBITDA、研究開発費、設備投資、従業員・工場、買収・売却、リスク要因(原料・PFAS・訴訟)、のれん減損テスト、顧客集中度。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/39368/000143774926001767/ful20251130_10k.htm
- H.B. Fuller Form 10-Q for the quarterly period ended August 29, 2026(米国SEC提出、2026年9月24日)。9か月の売上・Engineering Adhesives、AMS買収の概要、Dongguan Nako、ブリッジ融資。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/39368/000143774926031145/ful20260831c_10q.htm
- H.B. Fuller Form 8-K(2026年6月25日付)。AMS買収の英国買収規則Rule 2.7発表、1株285ペンスの現金、完了見込み。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/39368/000143774926021844/ful20260625_8k.htm
- H.B. Fuller H.B. Fuller Announces Offer to Acquire Advanced Medical Solutions(8-Kの添付プレスリリース、2026年6月25日)。買収の狙い、相乗効果、長期目標、財務。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/39368/000143774926021844/ex_981232.htm
- H.B. Fuller H.B. Fuller Reports Third Quarter 2026 Results(8-Kの添付プレスリリース、2026年9月23日)。第3四半期の業績、2026会計年度の見通し、純有利子負債。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/39368/000143774926031113/ex_1019044.htm
- H.B. Fuller Form 10-K for the fiscal year ended November 27, 2021(米国SEC提出、2022年1月25日)。STR Holdingsの取得。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/39368/000143774922001550/ful20210928_10k.htm
- H.B. Fuller Electronics Adhesives and Sealants(公式サイト、市場ページ)。電子分野の用途。 https://www.hbfuller.com/en/markets/electronics
- H.B. Fuller Circuit Board Protection(公式サイト、用途ページ)。コンフォーマルコーティング・ポッティング・封止。 https://www.hbfuller.com/en/applications/circuit-board-protection
- H.B. Fuller PCB Assembly(公式サイト、用途ページ)。基板組立向けの接着剤、アンダーフィル、エッジボンド。 https://www.hbfuller.com/en/applications/pcb-assembly
- H.B. Fuller Technology Centers(公式サイト)。技術センター、TONSAN北京研究開発センター、蘇州技術センター。 https://www.hbfuller.com/en/about-us/technology-centers
- H.B. Fuller History(公式サイト)。創業と買収・合弁の年表。 https://www.hbfuller.com/en/about-us/our-history
- H.B. Fuller Electric Vehicles(公式サイト、市場ページ)。EV電池向けの材料。 https://www.hbfuller.com/en/markets/electric-vehicles
- H.B. Fuller 2025 Sustainability Report(公式サイト掲載のPDF)。技術センター数、SKUの個別調整、EV向け製品群、2030年の環境目標。 https://www.hbfuller.com/-/media/project/hbfuller/hbfuller/sustainability/files/h-b-fuller-sustainability-report-2025.pdf?sc_lang=en
- H.B. Fuller Understanding Underfill(The Glue Talk Blog、2018年12月13日)。アンダーフィルの仕組み。 https://www.hbfuller.com/en/blog/thegluetalkblog/2018/december/understanding-underfill
- H.B. Fuller 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.hbfuller.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月3日/Troy Technical
本稿の数値は、H.B. Fullerが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類と、同社の公式サイト・公式プレスリリースに基づきます。調査会社の市場推計や報道ベースの数値は使用していません(AMSの買収発表にある市場規模の推計も採用していません)。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。製品の特徴は同社の用途ページの記述(メーカー公称)で、試験条件は記載がありません。